説明

無電極放電ランプ、無電極放電ランプを用いた照明器具

【課題】バルブ破損時のバルブ片の飛散を防止し、かつ光透過損失を抑制できる無電極放電ランプ、および無電極放電ランプを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】無電極放電ランプ1は、ランプ部2とカプラ部3とで構成される。ランプ部2は、外形が電球形状のバルブ20と、バルブ20の首部に装着される円筒状の口金21とを備える。ランプ部2に設けた口金21にはカプラ部3が結合される。バルブ20は、球状の頭部に連続する首部を備えた電球状の外管22と、外管22の首部に形成された開口部から外管22の内側に延びる有底円筒状の内管23とにより構成される。内管23の外管22への衝突により外管22が割れないように、その外表面に飛散防止膜222が設けられている。飛散防止膜222としては、十分な膜強度とガラスへの密着強度を有し、さらに耐熱性を有するものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの内部には電極を備えず、バルブに封入した放電ガスに高周波電磁界を作用させて放電ガスを励起することにより点灯させる無電極放電ランプ、及びこの無電極放電ランプを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バルブの内部に電極を設けず、バルブに封入された放電ガスを、バルブの外部に配置した誘導コイルの周囲に形成される高周波電磁界で励起することにより点灯させる無電極放電ランプが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されるような無電極放電灯の概略図を図3に示す。図3に示すように、無電極放電ランプ10は、ランプ部2とカプラ部3とで構成されている。
【0004】
ランプ部2は、電球状に形成された外管22と、外管22の一部に形成された開口部と接合し外管22の内側に延びる有底円筒形の内管23とを接合したバルブ20を備える。バルブ20には高周波電磁界で励起されることにより紫外光を発生させる水銀を含む放電ガスが封入される。また、バルブ20の管壁内側面(外管22の内側面および内管23の外側面)には紫外光により励起されて可視光領域の光を放出する蛍光体膜25が形成される。
【0005】
一方、カプラ部3は、内管23の内に挿入されるフェライトコア32と高周波電流が流されることにより周囲に高周波電磁界を形成する誘導コイル33とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−12641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バルブ20は、外管22と内管23とをガラス加工によって封止することにより形成される。しかし、外管22と内管23とは熱膨張率が異なる場合がある。このような外管22と内管23とを封止したとき、その接合部分である封止接合部232には残留歪みや応力が発生する。このような残留歪みや応力は、アニールなどの工程によっても完全には除去することは不可能である。また、熱膨張率が同じ材質の外管22と内管23とを用いた場合であっても、異なる工程で製造された部材は組成などが若干異なるため、上記と同様の問題が生じる。
【0008】
さらに、封止接合部232が製造工程において微小な粉塵を巻き込み、微小な気泡が起点となるマイクロクラックの発生が問題となる。このようなマイクロクラックの成長は確率的な現象であり、マイクロクラックの発生を完全に防止することは難しい。そのため、出荷納入後に成長し、バルブ20内の気密が保持できなくなる場合も発生する。
【0009】
また、バルブ20には、発光効率や始動性の観点から低圧の希ガスを封入するため、バルブ20内は減圧されており、外部に比べて気圧が低くなっている。そのため、マイクロクラックが封止接合部232の全周に亘って一気に発生した場合、内管23がその口軸方向にバルブ20の内部へ引き込まれ、外管22に衝突し、バルブ20が破損することが稀に発生する。
【0010】
そのため、従来から、バルブに飛散防止膜を塗布することにより、バルブの破損時にバルブ片が飛散するなどを防止している。飛散防止膜としては、例えば、透光性のフッ素樹脂などが用いられる。しかし、飛散防止膜により光透過損失が発生するなどの問題があった。
【0011】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、バルブ破損時のバルブ片の飛散を防止し、かつ光透過損失を抑制した無電極放電ランプおよびそれを用いた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無電極放電ランプは、光透過性材料で形成された外管、および外管の一部に形成した開口部と接合し外管内に延びる有底円筒状の内管を備えるとともに放電ガスが封入されたバルブと、ソレノイド状に形成され軸方向を内管の口軸方向と合わせて内管の内側に配置され、高周波電流が流されることによりバルブ内に高周波電磁界を形成するとともに内管の周方向に発光領域を形成する誘導コイルと、内管の口軸方向の中心軸と交差する箇所を中心として外管の外周面に設けられ外管を補強する飛散防止膜とを備え、飛散防止膜は、内管の外管への衝突により外管が割れないように、少なくとも外管の厚みとバルブ内の管内気圧とにより規定される大きさ以上、かつ発光領域からの光が目的とする範囲に取り出せる大きさ以下で設けられていることを特徴とする。
【0013】
この無電極放電ランプにおいて、外管と内管とは、内管の底壁の反対面の端縁の外周部と外管の開口部の端縁から外周部へ延びる延伸部とにより接合されることが望ましい。
【0014】
この無電極放電ランプにおいて、内管の底壁からは、底壁の反対面に向かって細管状の排気管が延びることがより望ましい。
【0015】
この無電極放電ランプにおいて、飛散防止膜は、透光性を有するフッ素樹脂からなることがより望ましい。
【0016】
この無電極放電ランプにおいて、飛散防止膜は、可視光を反射することがより望ましい。
【0017】
本発明の照明器具は、上記いずれかの無電極放電ランプと、無電極放電ランプを保持する器具本体とを備え、器具本体は、外管の飛散防止膜と対向する面が開口しており、器具本体の内面には反射鏡が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、バルブ破損時のバルブ片の飛散を防止し、かつ光透過損失を抑制できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の無電極放電ランプを示す一部破断した側面図である。
【図2】同上の無電極放電ランプを用いた照明器具を示す断面図である。
【図3】従来の無電極放電ランプを示す一部破断した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態の無電極放電ランプ1は、図1に示すように、ランプ部2とカプラ部3とで構成される。
【0021】
ランプ部2は、外形が電球状のバルブ20と、バルブ20の首部に装着される円筒状の口金21とを備える。ランプ部2に設けた口金21にカプラ部3が結合されることにより、無電極放電ランプ1を形成する。
【0022】
バルブ20は、球状の頭部に連続する首部を備えた電球状の外管22と、外管22の首部に形成された開口部から外管22の内側に延びる有底円筒状の内管23とにより構成される。外管22および内管23は、ガラスなどの透明性材料により形成され、ガラス加工により接合されバルブ20を形成する。
【0023】
外管22の首部の端縁から延びる延伸部221と内管23の端縁の外周部である封止接合部232とを接合することにより、外管22と内管23とは封止される。また、バルブ20には、発光効率や始動性の観点から低圧の希ガスを封入するため、バルブ20の内部は減圧され、外部に比べて気圧が低くなる。
【0024】
外管22の外表面には、内管23の口軸方向の中心軸と交差する箇所を中心として飛散防止膜222が設けられている。飛散防止膜222には、十分な膜強度とガラスへの密着強度を有し、さらに耐熱性を有する材料を用いる。飛散防止膜222は、透光性を有する。ただし、非透光性であり反射率の高い飛散防止膜222を用いる場合もある。飛散防止膜222は、内管23の外管22への衝突により外管22が割れないように、少なくとも外管22の厚みとバルブ20内の管内気圧とにより規定される範囲以上であり、かつ後述する発光領域からの光が目的とする範囲に取り出すことを妨げない範囲に配置される。各飛散防止膜222を用いた場合の具体的な配置範囲については後述する。
【0025】
図1の内管22は封止接合部232の全周に亘ってクラックが発生した場合、バルブ20の内部が外部に比べて低圧であるため、内管23の口軸方向(図1においては上方向)にバルブ20の内部へ引き込まれる虞がある。しかし、飛散防止膜222により、たとえ内管23が外管22に衝突しても、外管22を突き破ることを防止でき、安全性が高まる。また、飛散防止膜222の配置範囲を限定しているので、光透過損失を抑制することができる。
【0026】
バルブ20の管壁内側面(外管22の内側面と内管23の外側面)には、光透過率の低下を防止するために保護膜24が形成される。保護膜24には、酸化アルミニウムや二酸化ケイ素などが用いられる。また、バルブ20の内側面には保護膜24に重ねて、後述する水銀の励起により放射される紫外線を可視光に変換する蛍光体膜25が形成される。
【0027】
内管23の底壁231の中央部に設けられた排気管接合部233には、バルブ20の内部空間に連通するガラス細管である排気管26の一端がガラス加工により接合される。排気管26は、内管23の内部を通り内管23の底壁231の反対面に向かって延びる。排気管26には、水銀を収納した金属容器27とガラスロッド28とが挿入され、排気管26が封止されることにより、バルブ20が密閉される。
【0028】
排気管26は、排気管接合部233にクラックが発生した場合、内管23の口軸方向(図1においては上方向)にバルブ20の内部へ引き込まれる虞がある。しかし、飛散防止膜222により、たとえ排気管26が外管22に衝突しても外管22を突き破ることを防止でき、安全性が高まる。
【0029】
カプラ部3は、円筒状に形成されたフェライトコア32と、フェライトコア32の外周にソレノイド状に巻回された誘導コイル33とを備える。さらに、カプラ部3は、円筒状であって軸方向の一端部に外鍔部311が形成された放熱シリンダ31を備え、放熱シリンダ31の他端面にフェライトコア32の軸方向の一端が固定される。また、カプラ部3は、フェライトコア32および放熱シリンダ31の内周に沿って配置される円筒状の放熱パイプ34を備える。
【0030】
ランプ部2にカプラ部3を結合するにあたっては、フェライトコア32に排気管26を挿通し、フェライトコア32及び誘導コイル33を内管23の中に挿入する。ここに、放熱シリンダ31の外鍔部311が口金21に挿入され、ランプ部2とカプラ部3とが結合される。
【0031】
上述した構成の無電極放電ランプ1において、高周波電源(図示せず)から誘導コイル33に高周波電流を流すと、誘導コイル33の周囲に高周波電磁界が形成される。この高周波電磁界がバルブ20に封入されている金属容器27の水銀を励起させ、内管23の周方向に発光領域(図示せず)を形成する。励起により水銀から放射された紫外線は、バルブ20の内側面に形成されている蛍光体膜25によって可視光に変換される。
【0032】
本実施形態の無電極放電ランプ1は、図2に示すように、器具本体4に保持される。図2に示す器具本体4おいては、飛散防止膜222を設けた部分が上方を向いているが、照明器具の使用時における向きを規定するものではなく、飛散防止膜222を設けた部分を下方に向むけて設置するなど、いずれの方向に照明器具を設置してもよい。
【0033】
器具本体4は、一面開口する椀状に形成された反射鏡41と、反射鏡41の開口を覆う透光性を有したパネル42と、無電極放電ランプ1に電力を供給する点灯装置43と、無電極放電ランプ1の口金21と当接する放熱板44とを備える。無電極放電ランプ1は、飛散防止膜222をパネル42に向けて、反射鏡41の中央部に配置される。点灯装置43と無電極放電ランプ1とはケーブル431により接続される。また、無電極放電ランプ1から反射鏡41に照射された光は反射し、器具本体4の外へと放射される。
【0034】
図2に示す照明器具においては、非透光性でありかつ高反射率である飛散防止膜222を用いる。飛散防止膜222は、内管23の外管22への衝突により外管22が割れないように、かつバルブ20からの光が目的とする範囲に取り出せるような範囲に配置する。そのため、図2に示す照明器具においては、バルブ20からの光が器具本体4の外へ直接放射されず、反射鏡41へ照射され、その反射光が器具本体4の外へ放射されるように、飛散防止膜222の配置範囲を設定することが望ましい。飛散防止膜222により、無電極放電ランプ1からの直接光を抑制できることから、照明器具の配光特性の改善が実現できる。
【0035】
一方、飛散防止膜222として透光性のフッ素樹脂を用いてもよい。透光性のフッ素樹脂を用いた場合、飛散防止膜222は、内管23の外管22への衝突により外管22が割れないように、かつ発光領域から内管23の口軸方向(図1においては、上方向)へ放射される光を妨げない範囲に配置される。飛散防止膜222は透光性を有するが、飛散防止膜222を設けていない他の外管22の部分に比べると透過率が低いため、できるだけ狭い配置範囲であることが望ましい。また、飛散防止膜222としては、透光性のフッ素樹脂に限らず、透光性と十分な膜強度とガラスへの密着強度とを有し、さらに耐熱性を有する材料であればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 無電極放電ランプ
20 バルブ
22 外管
221 延伸部
222 飛散防止膜
23 内管
231 底壁
232 封止接合部(外周部)
26 排気管
33 誘導コイル
4 器具本体
41 反射鏡


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性材料で形成された外管、および前記外管の一部に形成した開口部と接合し前記外管内に延びる有底円筒状の内管を備えるとともに放電ガスが封入されたバルブと、ソレノイド状に形成され軸方向を前記内管の口軸方向と合わせて前記内管の内側に配置され、高周波電流が流されることにより前記バルブ内に高周波電磁界を形成するとともに前記内管の周方向に発光領域を形成する誘導コイルと、前記内管の口軸方向の中心軸と交差する箇所を中心として前記外管の外周面に設けられ前記外管を補強する飛散防止膜とを備え、前記飛散防止膜は、前記内管の前記外管への衝突により前記外管が割れないように、少なくとも前記外管の厚みと前記バルブ内の管内気圧とにより規定される大きさ以上、かつ前記発光領域からの光が目的とする範囲に取り出せる大きさ以下で設けられていることを特徴とする無電極放電ランプ。
【請求項2】
前記外管と前記内管とは、前記内管の底壁の反対面の端縁の外周部と前記外管の前記開口部の端縁から前記外周部へ延びる延伸部とにより接合されることを特徴とする請求項1に記載の無電極放電ランプ。
【請求項3】
前記内管の前記底壁からは、前記底壁の反対面に向かって細管状の排気管が延びることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無電極放電ランプ。
【請求項4】
前記飛散防止膜は、透光性を有するフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3に記載の無電極放電ランプ。
【請求項5】
前記飛散防止膜は、可視光を反射することを特徴とする請求項1〜3に記載の無電極放電ランプ。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の無電極放電ランプと、前記無電極放電ランプを保持する器具本体とを備え、前記器具本体は、前記外管の前記飛散防止膜と対向する面が開口しており、前記器具本体の内面には反射鏡が設けられていることを特徴とする照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−155970(P2012−155970A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13290(P2011−13290)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】