説明

無電極放電ランプおよび照明器具

【課題】内部に突出した有底筒状部を有するバルブの内側における有底筒状部に対応する部位以外の部位に形成された第1蛍光体層と、有底筒状部に対応する部位に形成された第2蛍光体層とを備え、第2蛍光体層が発する可視光のうちバルブの外側に取り出すことができる可視光の光量を向上させた無電極放電ランプおよび照明器具を提供することにある。
【解決手段】無電極放電ランプ1は、内部に突出した有底筒状部4を有するバルブ2と、バルブ2の内側における有底筒状部4に対応する部位以外の部位に形成された第1蛍光体層3aと、バルブ2の内側における有底筒状部4に対応する部位に形成された第2蛍光体層3bとを備える。第2蛍光体層3bから発せられた可視光が配光される第1蛍光体層3aの配光領域2aaの膜厚が、第1蛍光体層3aの配光領域2aa以外の領域の膜厚に比べて薄く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電ランプおよび照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、透光性のガラスにより形成されるとともに内部にアルゴンなどの希ガスからなる放電ガスおよび水銀蒸気が封入されるバルブと、バルブの内部に高周波電磁界を発生させるための誘導コイルとを備える無電極放電ランプが提案されている(特許文献1乃至5参照)。ここにおいて、この類の無電極放電ランプでは、誘導コイルに高周波電流を通電するとバルブの内部に高周波電磁界が発生し、当該高周波電磁界によってバルブの内部に封入された放電ガスおよび水銀が励起され紫外線が放射される。当該紫外線が、バルブの内側に形成された蛍光体材料よりなる蛍光体層によって可視光に変換される。
【0003】
無電極放電ランプは、バルブの内部に電極を設けない構造を有する。従って、バルブの内部に設けられた電極が劣化することにより点灯しなくなることがなく、バルブの内部に電極が設けられた一般の蛍光灯に比べて長寿命という特徴がある。
【0004】
特許文献1や特許文献2に記載された無電極放電ランプ1’では、図7に示すように、透光性材料により形成され且つ一部から内側に突出した有底筒状部4’を有するとともに内部に放電ガスおよび水銀蒸気が封入されるバルブ2’を備え、第1蛍光体層3a’がバルブ2’の内側における有底筒状部4’以外の部位に形成され、第2蛍光体層3b’がバルブ2’の内側における有底筒状部4’の外周側面に形成されている。また、第1蛍光体層3a’とバルブ2’の周壁2a’との間、および第2蛍光体層3b’と有底筒状部4’との間には、バルブ2’の内部で発生するプラズマからバルブ2’の周壁2a’を保護するための保護膜23’が形成されている。ここで、第1蛍光体層3a’と第2蛍光体層3b’とは同じ蛍光体材料で形成してもよい。なお、図7では、第1蛍光体層3a’、第2蛍光体層3b’および保護膜23’の一部のみを図示してある。ここにおいて、第2蛍光体層3a’が発する可視光は、第1蛍光体層3a’、保護膜23’およびバルブ2’の周壁2a’を透過してバルブ2’の外側に取り出される。
【0005】
また、特許文献3に記載されているように、バルブの内側に前記バルブの内部で発生した紫外線を可視光に変換するUV−可視変換層(以下、第1蛍光体層と称す)が形成されるとともに、内部に配設された内曲管(以下、有底筒状部と称す)の外周側面にも前記UV−可視変換層(以下、第2蛍光体層と称す)が形成され、前記有底筒状部の前記外周側面に形成された前記第2蛍光体層が発する可視光が前記バルブの外側に取り出される無電極放電ランプも提案されている。
【0006】
ところで、第2蛍光体層3b’が発する可視光のうちバルブ2’の外側に取り出すことができる可視光の光量(以下、利用光量と称す)は、バルブ2’の内面の形状、有底筒状部4’の形状や、有底筒状部4’の外周側面の光学的特性(例えば、可視光の反射率等)により異なる。
【0007】
例えば、特許文献4に記載されているように、バルブの内側に前記バルブの内部で発生する紫外線を可視光に変換する蛍光体からなる第1蛍光体層を形成するとともに、前記バルブの内部に配設され側面に前記蛍光体からなる第2蛍光体層が形成された蛍光体塗布部材を備え、前記蛍光体塗布部材の形状を変えることで前記第2蛍光体層が発する可視光の前記利用光量を向上させることができる無電極蛍光ランプが提案されている。
【0008】
また、特許文献5に記載されているように、バルブの周壁の内側に断面が矩形の複数の溝状構造を形成して、バルブの周壁の内側に形成された第1蛍光体層(図示せず)が発する可視光の光量低下を抑制しつつ蛍光体層およびバルブの周壁の可視光の透過率を向上させることで前記利用光量を向上させることができる無電極放電ランプが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−269229号公報
【特許文献2】特開2008−153023号公報
【特許文献3】特開2002−319373号公報
【特許文献4】特開平8−129990号公報
【特許文献5】特開2000−36288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献4に記載された無電極放電ランプ1’では、第2蛍光体層3b’が発する可視光がバルブ2’の外側に取り出される際に、第1蛍光体層3a’で吸収されたり反射されたりするため、第2蛍光体層3b’が発する可視光の前記利用光量を向上させることが難しかった。
【0011】
また、特許文献5に記載された無電極放電ランプでは、前記バルブの周壁の可視光の透過率を向上させる効果を維持するために、前記バルブの周壁の内側に形成する前記第1蛍光体層の膜厚を数μmに設定する必要がある。一方、前記第1蛍光体層は、膜厚を十数μmに設定すると前記第1蛍光体層が発する可視光の前記利用光量が最大となる。ここで、前記バルブ全体から放射される可視光の光量を増加させるために、前記バルブの周壁の内側に形成された前記第1蛍光体層の膜厚を十数μm(例えば、17μm)に設定した場合、前記バルブの周壁の可視光の透過率が減少し、前記利用光量が低下するおそれがあった。
【0012】
本願発明は、前記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、内部に突出した有底筒状部を有するバルブと、バルブの内側における有底筒状部に対応する部位以外の部位に形成された第1蛍光体層と、バルブの内側における有底円筒状部に対応する部位に形成された第2蛍光体層とを備え、バルブ全体から放射される可視光の光量低下を抑制しつつ第2蛍光体層が発する可視光のうちバルブの外側に取り出すことができる可視光の光量を向上させることができる無電極放電ランプおよび照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、透光性材料により形成され且つ一部から内部に突出した有底筒状部を有するとともに前記内部に放電ガスおよび水銀蒸気が封入されるバルブと、バルブの内側における前記有底筒状部に対応する部位以外の部位に形成された第1蛍光体層と、前記バルブの内側における前記有底筒状部に対応する部位に形成された前記第1蛍光体層と同じ蛍光体材料からなる第2蛍光体層と、前記有底筒状部の内側に配設され且つバルブの内部に高周波電磁界を発生させるための誘導コイルおよび誘導コイルが巻回されたフェライトコアを有するパワーカプラとを備え、誘導コイルで発生した高周波電磁界が放電ガスおよび水銀蒸気に作用して放電ガスおよび水銀を励起して紫外線を発生させるとともに前記紫外線が第1蛍光体層および第2蛍光体層により可視光に変換されてバルブの外側に取り出されるものであって、第1蛍光体層のうち第2蛍光体層から発せられた可視光が配光される配光領域における膜厚が、第1蛍光体層の前記配光領域以外の領域における膜厚に比べて薄く設定されてなることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、内部に突出した有底筒状部を有するバルブと、バルブの周壁の内側における有底筒状部に対応する部位以外の部位に形成された第1蛍光体層と、バルブの周壁の内側における有底円筒状部に対応する部位に形成された第2蛍光体層とを備える無電極放電ランプにおいて、第1蛍光体層のうち第2蛍光体層から発せられた可視光が配光される配光領域における膜厚が、第1蛍光体層の前記配光領域以外の領域における膜厚に比べて薄く設定されてなることにより、バルブ全体から放射される可視光の光量低下を抑制しつつ第2蛍光体層から発する可視光のうち前記配光領域からバルブの外側に取り出すことができる可視光の光量を向上させることができる。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記バルブの内部に、前記第2の蛍光体層が発する可視光を反射して前記第2蛍光体層が発する可視光が配光される前記第1蛍光体層の前記配光領域を制限する反射部材を備えることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前記反射部材によって、前記配光領域を制限することにより、前記第1蛍光体層が発する可視光の光量の低下を抑制することができるので、前記バルブ全体から放射される可視光の光量の低下を抑制することができる。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記反射部材は、紫外線を透過する透光性材料により形成されてなることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、前記有底筒状部の近傍で発生した紫外線が前記反射部材により遮られることがないので、前記有底筒状部の近傍で発生した紫外線を前記第1蛍光体層により効率よく照射される。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記バルブが、前記有底筒状部の中心軸に対して軸対称となる形に形成され、前記有底筒状部の外周側面の少なくとも一部が、前記中心軸方向における前記有底筒状部の底部とは反対側ほど前記中心軸に直交する方向への突出量が大きくなる形で傾斜した面から構成されてなることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、前記有底筒状部の外周側面の少なくとも一部を、前記中心軸方向における前記有底筒状部の底部とは反対側ほど前記中心軸に直交する方向への突出量が大きくなる形で傾斜した面で構成してあるので、請求項2または請求項3の発明における反射部材を用いることなく前記配光領域を制限できるから、請求項2または請求項3の無電極放電ランプに比べて部品点数を削減できる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の無電極放電ランプを備えることを特徴とする照明器具。
【0022】
この発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の無電極放電ランプを備えることにより、第2蛍光体層から放射される可視光の光量を向上させて所定の光量を得るために必要な供給電力を抑制することができるので、省エネルギ化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、第1蛍光体層の配光領域における膜厚が、第1蛍光体層の前記配光領域以外の領域における膜厚に比べて薄く設定されてなることにより、バルブ全体から放射される可視光の光量低下を抑制しつつ第2蛍光体層から発する可視光のうち前記配光領域からバルブの外側に取り出すことができる可視光の光量を向上させることができるという効果がある。
【0024】
請求項5の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の無電極放電ランプを備えることにより、前記第2蛍光体層が発する可視光のうち前記バルブの外側に取り出すことができる可視光の光量を向上させて、所定の光量を得るために必要な供給電力を抑制することができるので、省エネルギ化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態1の無電極放電ランプの概略断面図である。
【図2】同上の説明図である。
【図3】実施形態2の無電極放電ランプを示し、(a)は概略断面図、(b)は要部概略斜視図である。
【図4】同上の他の実施例の無電極放電ランプを示し、(a)は概略断面図、(b)は要部概略斜視図である。
【図5】実施形態3の無電極放電ランプの概略断面図である。
【図6】実施形態4の照明器具の概略斜視図である。
【図7】従来例の無電極放電ランプを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
以下、本実施形態の無電極放電ランプ1について、図1に基づいて説明する。
【0027】
本実施形態1の無電極放電ランプ1は、透光性材料であるガラスにより形成され且つ一部から内部に突出した有底筒状部4を有するとともに内部に放電ガスおよび水銀蒸気が封入されたバルブ2と、バルブ2の内側における有底筒状部4に対応する部位以外の部位に形成された第1蛍光体層3aと、バルブ2の内側における有底筒状部4に対応する部位に形成された第1蛍光体層3aと同じ蛍光体材料からなる第2蛍光体層3bと、有底筒状部4の内側に挿入されるパワーカプラ11とを備える。また、バルブ2の周壁2aとバルブ2の内側に形成された第1蛍光体層3aとの間、および第2蛍光体層3bと有底筒状部4との間には、バルブ2の内部で発生するプラズマからバルブ2の周壁2aおよび有底筒状部4を保護するための保護膜23が形成されている。なお、図1では、第1蛍光体層3a、第2蛍光体層3bおよび保護膜23の一部のみを図示してある。
【0028】
バルブ2は、透光性材料であるガラスにより形成され且つ一部に開口部21aが形成された電球形状部材21と、透光性材料であるガラスにより形成され且つ一端側に底部4aを有するとともに他端側の周縁から外側に突出した外鍔部22aが形成された有底筒状部材22(本実施形態では、有底円筒状部材)とから構成されている。ここで、バルブ2は、電球形状部材21の一部に穿設された開口部21aに、有底筒状部材22を前記一端側から挿入し開口部21aの周縁と有底筒状部材22の外鍔部22aとを溶着することにより形成される。ここに、バルブ2に有底筒状部4が形成されるとともに、バルブ2の内部に密閉された放電空間2bが形成される。また、電球形状のバルブ2の頚部2cには口金6が設けられている。
【0029】
口金6は、円筒状部材で形成され、内周面の周方向に沿って内側に突出した係合凸部6aが形成されており、当該口金6の一端側の開口部6bから電球形状のバルブ2の頚部2cが挿入され、バルブ2の頚部2cの周方向全体に亘って形成された係合凹部2dと係合凸部6aとが係合することにより、バルブ2に口金6が固定されている。
【0030】
しかして、バルブ2は、口金6によってパワーカプラ11に着脱自在に装着することができる。なお、バルブ2とパワーカプラ11とは、パワーカプラ11を有底筒状部4の長手方向においてバルブ2から離れる方向へ抜脱することにより分離することができる。また、バルブ2の内部には、無電極放電ランプ1の始動性を向上させるための始動補助剤(図示せず)が封入されている。
【0031】
有底筒状部4の内側には、バルブ2の製造時にバルブ2の内部に残留する空気を排気するための排気管5が設けられている。排気管5は、有底筒状部4の底部4aの略中央部に溶着されるとともに底部4aから有底筒状部4の前記他端側に延出している。なお、排気管5は、有底筒状部4の内部が前記一端側でバルブ2の内部に連通するとともに、有底筒状部4の底部4aに溶着される側とは反対側が封止されている。また、排気管5の長手方向の略中央部には、水銀アマルガムが収納された金属容器9が配置されており、金属容器9に穿設された通気穴(図示せず)を通してバルブ2の内部の放電空間2bに水銀蒸気を供給することで、バルブ2の内部の放電空間2bの水銀蒸気の蒸気圧を制御することができる。ここに、金属容器9を排気管5の長手方向の略中央部に固定するために、排気管5の内側にガラスロッド10が配置されるとともに排気管5の内周面に突起5aが形成されている。
【0032】
第1蛍光体層3aと第2蛍光体層3bとは、例えば、赤色蛍光体(Y:Eu3+)、緑色蛍光体(LaPO:Ce3+,Tb3+)、青色蛍光体(BaMgAl1627:Eu2+)等の蛍光体により形成することができる。また、保護膜23は、AlやSiO等の金属酸化物により形成することができる。
【0033】
パワーカプラ11は、有底筒状部4の内側に配設され且つバルブ2の内部に高周波電磁界を発生させるための誘導コイル12と、誘導コイル12が巻回されたフェライトコア13と、誘導コイル12で発生した熱をバルブ2の外側に放熱するための熱伝導体である放熱シリンダ14と、放熱シリンダ14を内側に支持するとともにバルブ2の口金6が嵌着される支持部15とを有する。フェライトコア13は、円筒状に形成され、フェライトコア13の外径が有底筒状部4の内径よりも小さくなるように形成されている。また、放熱シリンダ14は円筒状に形成され、内径が排気管5の外径と略等しくなるように形成されている。
【0034】
フェライトコア13は、放熱シリンダ12に装着されている。なお、フェライトコア13は、例えば、亜鉛、マンガン、ニッケル、鉄等の金属化合物である磁性材料で形成されている。
【0035】
放熱体シリンダ14は、例えば、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属で形成されている。また、放熱シリンダ14は、一端部が有底筒状部4の底部4a側に配置され他端部が有底筒状部4の外側に配置されることにより、誘導コイル14で発生した熱を有底筒状部4の外側へ放熱することができる。
【0036】
次に、本実施形態の無電極放電ランプ1の動作について説明する。
【0037】
パワーカプラ11が有する誘導コイル12に、外部の高周波電源(図示せず)から高周波電流が通電されると、誘導コイル12から高周波電磁界が発生する。すると、誘導コイル12で発生した高周波電磁界が、バルブ2の内部に充填された放電ガスおよび水銀蒸気に作用して放電ガスおよび水銀を励起して紫外線を発生させる。この紫外線がバルブ2の内側に形成された第1蛍光体層3aおよび第2蛍光体層3bに照射されると、第1蛍光体層3aおよび第2蛍光体層3bは可視光を発する。
【0038】
本実施形態の無電極放電ランプ1は、バルブ2の内部に電極を設けないため、電極の劣化による不点灯が生じず、一般的な蛍光ランプ(図示せず)に比べて寿命が長いという利点がある。
【0039】
また、本実施形態のパワーカプラ11は、フェライトコア13を使用して結合効率を高くすることにより、フェライトコア13を使用しないパワーカプラ(図示せず)に比べて低い周波数でも無電極放電ランプ1を始動させることができるので、フェライトコア13を使用しないパワーカプラ11に比べて電力を節約でき低コスト化が図れる。また、誘導コイル12がバルブ2の有底筒状部4の内側に収納されるので、外観もよい。
【0040】
次に、本実施形態における第1蛍光体層3aが発する可視光のうちバルブ2の外側に取り出すことができる可視光の光量(以下、利用光量と称す)、および第2蛍光体層3bが発する可視光のうちバルブ2の外側に取り出すことができる可視光の光量と、第1蛍光体層3aの膜厚との関係について図2に基づいて説明する。ここに、図2は、本実施形態の無電極放電ランプ1の一実施例について、第1蛍光体層3aの膜厚と前記利用光量との関係を示し、横軸は第1蛍光体層3aの膜厚、縦軸は、第1蛍光体層3aが発する可視光の前記利用光量および第2蛍光体層3bが発する可視光の前記利用光量の和(以下、総利用光量と称す)の最大値に対する、第1蛍光体層3aが発する可視光の前記利用光量、第2蛍光体層3bが発する可視光の前記利用光量、および前記総利用光量の相対値を示している。
【0041】
図2に示すように、第1蛍光体層3aから発する可視光の前記利用光量は、第1蛍光体層3aの膜厚に依存する。これは、第1蛍光体層3aを形成する蛍光体の量、および第1蛍光体層3aのうち厚み方向におけるバルブ2の周壁2a側とは反対側の蛍光体から発せられた光のうち第1の蛍光体層3aを透過してバルブ2の外側へ取り出される光量が、第1蛍光体層3aの膜厚によって変化することによる。また、図2に示すように、第1蛍光体層3aの膜厚が薄くなると前記利用光量が減少するのは、バルブ2内で発生し第1蛍光体層3aを透過してバルブ2の周壁2aに到達する紫外線がバルブ2の周壁で吸収される割合が増加して、第1蛍光体層3aの発光に利用される紫外線の量が減少することも一因となっている。通常、第1蛍光体層3aから発する可視光の前記利用光量が最大となる第1蛍光体層3aの膜厚t1は十数μmであり、図2に示した実施例では、第1蛍光体層3aの膜厚t1は17μmである。
【0042】
第2蛍光体層3bで発する可視光は、第1蛍光体層3a、保護膜23、およびバルブ2の周壁2aを透過してバルブ2の外側に取り出される。従って、第2蛍光体層3bで発する可視光の前記利用光量は、第1蛍光体層3aの膜厚を薄くして第1蛍光体層3aの透過率が高くなるほど大きくなる。
【0043】
ここで、前述のように、第1蛍光体層3aが発する可視光の前記利用光量を大きくするには、第1蛍光体層3aの膜厚が膜厚t1以下においては、第1蛍光体層3aの膜厚を厚くする必要がある。一方、第2蛍光体層3bで発する可視光の前記利用光量を大きくするには、第1蛍光体層3aの膜厚を薄くする必要がある。即ち、第1蛍光体層3aの膜厚が膜厚t1以下においては、第1蛍光体層3aが発する可視光の前記利用光量と第2蛍光体層3bが発する可視光の前記利用光量とは、第1蛍光体層3aの膜厚に対して、トレードオフの関係にある。ここで、第1蛍光体層3aの膜厚を前記膜厚t1よりも薄い膜厚t2に設定すると、前記総利用光量が最大となる。図2に示した実施例では、第1蛍光体層3aの膜厚t2は、14μmである。
【0044】
ところで、本実施形態の無電極放電ランプ1では、第2蛍光体層3bで発する可視光は、図1の一点鎖線に示すような配光特性Aを有する。そして、第1蛍光体層3aのうち第2蛍光体層3bからの可視光が配光される配光領域2aa(図1参照)の膜厚を、膜厚t2(例えば、14μm)に設定し、第1蛍光体層3aの配光領域2aa以外の領域の膜厚を、膜厚t1(例えば、17μm)に設定している。つまり、第1蛍光体層3aの配光領域2aa(図1参照)の膜厚を、第1蛍光体層3aの配光領域2aa以外の領域の膜厚に比べて薄くなるように設定している。しかして、第2蛍光体層3bから発する可視光の前記利用光量を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の無電極放電ランプ1では、第1蛍光体層3aの配光領域2aa以外の領域の膜厚を、第1蛍光体層3aの配光領域2aaの膜厚よりも厚く設定することができる。例えば、第1蛍光体層3aの配光領域2aaの膜厚を14μmに設定し、第1蛍光体層3aの配光領域2aa以外の領域の膜厚を17μmに設定することができる。しかして、バルブ2全体から放射される可視光の光量低下を抑制することができる。
【0046】
(実施形態2)
図3(a)に示す本実施形態の無電極放電ランプ1は、実施形態1と同様に、バルブ2と、第1蛍光体層3aと、第2蛍光体層3bと、パワーカプラ11とを備える。そして、バルブ2の内部には、第2蛍光体層3bが発する可視光を反射して第2蛍光体層3bが発する可視光が配光される第1蛍光体層3aの配光領域2abを制限する反射部材であるミラー8が設けられている点が実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。また、図3(a)では、第1蛍光体層3a、第2蛍光体層3bおよび保護膜23の一部のみを図示してある。
【0047】
ミラー8は、図3(b)に示すように、ガラスにより形成され且つ一方向に拡径する断面円環状の部材により形成されている。本実施形態では、6つのミラー8,8,・・・,8が有底筒状部4に嵌装されている。また、ミラー8は、第2蛍光体層3bが発する可視光を反射するとともに有底筒状部4の近傍で発生した紫外線を透過するという光学的特性を有する。ここに、ミラー8は、前記円筒状部材4の外周側面にSiOやTiO等からなる光学薄膜(図示せず)を積層することにより形成することができる。しかして、第2蛍光体層3bに紫外線を効率的に照射できるとともに、第2蛍光体層3bが発する可視光を反射することができる。
【0048】
ところで、無電極放電ランプ1から放射される可視光の光量は、第1蛍光体層3aおよび第2蛍光体層3bに使用される蛍光体の量に依存する。また、本実施形態では、実施形態1と同様に、第1蛍光体層3aの配光領域2abの膜厚は、第1蛍光体層3aの配光領域2ab以外の領域の膜厚に比べて薄く設定されている。従って、配光領域2abが大きくなると、第1蛍光体層3aに使用される蛍光体の量が減少することにより、第1蛍光体層3aが発する可視光の光量の低下を抑制できるので、バルブ2全体から放射される可視光の光量が減少することになる。
【0049】
これに対して、本実施形態の無電極放電ランプ1は、ミラー8が設けられていることにより、第2蛍光体層3bが発する可視光がミラー8によって有底筒状部4の突出する方向に反射され、図3(a)に示すような配光特性Bを示す。従って、第1蛍光体層3aにおける第2蛍光体層3bが発する可視光が配光される配光領域2ab(図3(a)参照)が制限され、実施形態1における配光領域2aa(図1参照)に比べて小さくなる。
【0050】
しかして、第2蛍光体層3bが発する可視光が配光される第1蛍光体層3aの配光領域2abを小さくすることにより、第1蛍光体層3aに使用される蛍光体の量の減少を抑えることができ、第1蛍光体層3aが発する可視光の光量の低下を抑制できるので、バルブ2全体から放射される可視光の光量の低下を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の無電極放電ランプ1の他の実施例として、図4(a)に示すように、内径が有底筒状部4の外径よりも大きいガラスからなる有底筒状の部材で形成されたミラー28を使用してもよい。ここにおいて、ミラー28は、図4(b)に示すように、底部28aに有底筒状部4が挿通される筒状部挿通穴28bが穿設されており、筒状部挿通穴28bの内径の寸法が有底筒状部4の外径の寸法と略同じになるように設定されている。また、ミラー28の長手方向における底部28aとは反対側の端部には、第2蛍光体層3bが発しミラー28の内側で反射される可視光が出射される光出射用開口部28cが設けられている。従って、第2蛍光体層3bが発する可視光は、ミラー28の底部28aから漏れることがなく、ミラー28の長手方向における底部28aとは反対側の光出射用開口部28cから放射される。
【0052】
本実施例では、第2蛍光体層3bが発する可視光が、図5に示すような配光特性Cを示す。従って、本実施例では、第2蛍光体層3bが発する可視光が配光される第1蛍光体層3aの配光領域2ac(図4(a)参照)が、ミラー28によって制限され、図3に示す実施例の無電極放電ランプ1に比べて更に小さくなる。
【0053】
しかして、第1蛍光体層3aの配光領域2acを更に小さくすることにより、第1蛍光体層3aに使用される蛍光体の量の減少を抑えることができ、第1蛍光体層3aが発する可視光の光量の低下を抑制できるので、バルブ2全体から放射される可視光の光量の低下を更に抑制することができる。
【0054】
(実施形態3)
図5に示す本実施形態の無電極放電ランプ1は、実施形態1と同様に、バルブ2と、第1蛍光体層3aと、第2蛍光体層3bと、パワーカプラ11とを備える。そして、バルブ2が、有底筒状部4の中心軸に対して軸対称となる形に形成され、有底筒状部4の外周側面に、前記中心軸方向における有底筒状部4の底部4aとは反対側ほど前記中心軸に直交する方向への突出量が大きくなる形で傾斜した6つの曲面が有底筒状部4の長手方向に沿って並設されている点が実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。また、図5では、第1蛍光体層3a、第2蛍光体層3bおよび保護膜23の一部のみを図示してある。
【0055】
本実施形態の無電極放電ランプ1では、第2蛍光体層から発する可視光は、図5に示すような配光特性Dを示す。即ち、第1蛍光体層3aにおける第2蛍光体層が発する可視光が配光される配光領域2ad(図5参照)が制限され、実施形態1の無電極放電ランプ1における第1蛍光体層3aの配光領域2aaに比べて小さくなる。しかして、第1蛍光体層3aの配光領域2adを小さくすることにより、第1蛍光体層3aに使用される蛍光体の量の減少を抑えることができ、第1蛍光体層3aが発する可視光の光量の低下を抑制できるので、バルブ2全体から放射される可視光の光量の低下を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態の無電極放電ランプ1では、実施形態2のように、バルブ2の内部に反射部材であるミラー8,28を用いることなく配光領域2adを制限する。つまり、実施形態2における反射部材であるミラー8,28を用いることなく、実施形態2に比べて、部品点数を削減することができる。
【0057】
(実施形態4)
図6に実施形態1で説明した無電極放電ランプ1を使用した照明器具を示す。
【0058】
本実施形態の照明器具は、椀状の反射板31aとガラス等の透光性材料で形成された前面パネル31bとで構成された筐体31と、筐体31の内部に配置された無電極放電ランプ1と、筐体31とは別の場所に配置され無電極放電ランプ1のパワーカプラ11(図1参照)に高周波電流を通電することで無電極放電ランプ1を点灯させる高周波電源を含む点灯装置32とを備え、点灯装置32とパワーカプラ11とが管灯線33を介して電気的に接続されてなる。また、点灯装置32に電源線34を介して電源プラグ35が接続されている。電源プラグ35を商用電源(図示せず)に接続することで、商用電源から点灯装置32に電力が供給される。なお、無電極放電ランプ1から出射される光は前面パネル31bを透過して筐体31の外側に放射される。
【0059】
本実施形態の照明器具は、実施形態1の無電極放電ランプ1を備えることにより、第2蛍光体層3bが発する可視光の前記利用光量を向上させて、所定の光量を得るために必要な供給電力を抑制することができるので、省エネルギ化を図ることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、実施形態1の無電極放電ランプ1を備える例について説明したが、実施形態2または実施形態3で説明した無電極放電ランプ1を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 無電極放電ランプ
2 バルブ
2aa 配光領域
3a 第1蛍光体層
3b 第2蛍光体層
4 有底筒状部
11 パワーカプラ
12 誘導コイル
13 フェライトコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性材料により形成され且つ一部から内部に突出した有底筒状部を有するとともに前記内部に放電ガスおよび水銀蒸気が封入されるバルブと、バルブの内側における前記有底筒状部に対応する部位以外の部位に形成された第1蛍光体層と、前記バルブの内側における前記有底筒状部に対応する部位に形成された前記第1蛍光体層と同じ蛍光体材料からなる第2蛍光体層と、前記有底筒状部の内側に配設され且つバルブの内部に高周波電磁界を発生させるための誘導コイルおよび誘導コイルが巻回されたフェライトコアを有するパワーカプラとを備え、誘導コイルで発生した高周波電磁界が放電ガスおよび水銀蒸気に作用して放電ガスおよび水銀を励起して紫外線を発生させるとともに前記紫外線が第1蛍光体層および第2蛍光体層により可視光に変換されてバルブの外側に取り出されるものであって、第1蛍光体層のうち第2蛍光体層から発せられた可視光が配光される配光領域における膜厚が、第1蛍光体層の前記配光領域以外の領域における膜厚に比べて薄く設定されてなることを特徴とする無電極放電ランプ。
【請求項2】
前記バルブの内部に、前記第2の蛍光体層が発する可視光を反射して前記第2蛍光体層が発する可視光が配光される前記第1蛍光体層の前記配光領域を制限する反射部材を備えることを特徴とする請求項1記載の無電極放電ランプ。
【請求項3】
前記反射部材は、紫外線を透過する透光性材料により形成されてなることを特徴とする請求項2記載の無電極放電ランプ。
【請求項4】
前記バルブが、前記有底筒状部の中心軸に対して軸対称となる形に形成され、前記有底筒状部の外周側面の少なくとも一部が、前記中心軸方向における前記有底筒状部の底部とは反対側ほど前記中心軸に直交する方向への突出量が大きくなる形で傾斜した面から構成されてなることを特徴とする請求項1記載の無電極放電ランプ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の無電極放電ランプを備えることを特徴とする照明器具。






















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−192400(P2010−192400A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38113(P2009−38113)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】