説明

無電解めっき方法および無電解めっき液

【課題】めっき金属中にカーボンナノチューブもしくはその誘導体を常温で混入させることのできる無電解めっき方法を提供する。
【解決手段】無電解めっき方法は、無電解ニッケルめっき液もしくは無電解銅めっき液中に、カーボンナノチューブ10もしくはその誘導体を添加して、該めっき液を用いて基材12上に無電解めっきを施して、基材12表面に、前記カーボンナノチューブ10もしくはその誘導体が混入しているめっき皮膜14を形成する無電解めっき方法であって、前記めっき液中に分散剤としてポリアクリル酸もしくはその塩を添加して、カーボンナノチューブ10もしくはその誘導体をめっき液中に分散させて無電解めっきを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無電解めっき方法および無電解めっき液に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(直径200nm以下、アスペクト比10以上)は、炭素の基本骨格(6員環)が軸方向に配列していることが特徴であり、その特徴に由来する、熱伝導性、電気伝導性、摺動特性、機械的強度等の特性に優れていることが期待でき、幅広い用途に用いられようとしている。
上記CNTの製造方法は種々知られているが、量産性の点から気相成長法が有利とされている(田中一義[編]「カーボンナノチューブ」化学同人出版、2001年1月30日、P.67−77)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】田中一義[編]「カーボンナノチューブ」化学同人出版、2001年1月30日、P.67−77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記カーボンナノチューブは、例えば金属中に混入した複合材料として、各種摺動材や放熱材などに用いられている。
この複合材料の製法は、溶融金属中にカーボンナノチューブを添加し、撹拌、混合するという手法が一般的である。
しかしながら、上記方法では、金属とカーボンナノチューブとでは比重が大きく異なることから、カーボンナノチューブを均一に溶融金属中に分散するのは極めて困難であるという課題がある。
また、カーボンナノチューブその他の混合物に対して熱的負荷が大きく、場合によって混合が不可能となる素材も存在する。
【0005】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、めっき金属中にカーボンナノチューブもしくはその誘導体を常温で均一に混入させることのできる無電解めっき方法および無電解めっき液を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る無電解めっき方法は、無電解ニッケルめっき液もしくは無電解銅めっき液中に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体を添加して、該めっき液を用いて基材上に無電解めっきを施して、基材表面に、前記カーボンナノチューブもしくはその誘導体が混入しているめっき皮膜を形成する無電解めっき方法であって、前記めっき液中に分散剤としてポリアクリル酸もしくはその塩を添加して、カーボンナノチューブもしくはその誘導体をめっき液中に分散させて無電解めっきを行うことを特徴とする。
分子量が3000〜40000のポリアクリル酸を用いると好適である。
【0007】
カーボンナノチューブの誘導体にフッ素化カーボンナノチューブを用いることができる。
また、めっき液中に、さらに樹脂材を分散させ、基材表面に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体と共に樹脂材が混入しているめっき皮膜を形成することができる。
また、カーボンナノチューブもしくはその誘導体の先端がめっき皮膜表面から突出するようにめっきを行うことができる。
また、基材表面にレジストパターンを形成し、このレジストパターンの凹部内にめっき皮膜を形成することもできる。
【0008】
本発明に係る無電解めっき液は、無電解ニッケルめっき液もしくは電解銅めっき液であって、該めっき液中に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体と、このカーボンナノチューブもしくはその誘導体を分散させるための分散剤としての、ポリアクリル酸もしくはその塩を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る分散剤は、無電解ニッケルめっき液もしくは無電解銅めっき液中に添加して、該めっき液中に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体を分散させるための分散剤であって、ポリアクリル酸もしくはその塩からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、めっき金属中に微細なカーボンナノチューブもしくはその誘導体を均一に混入させることができる無電解めっき方法および無電解めっき液を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
本発明では、めっき液中に分散剤とカーボンナノチューブもしくはその誘導体を添加して、該分散剤によりめっき液中にカーボンナノチューブもしくはその誘導体を分散させ、めっきを施すことにより、基材表面に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体(以下カーボンナノチューブ等、あるいは単にカーボンナノチューブということがある)がめっき金属に混入しているめっき皮膜を形成するのである。
【0012】
図1は、分散電気めっきの模式図である。
カーボンナノチューブ10もしくはその誘導体は、分散剤の存在によりめっき液中に均一に分散する。めっき中には、めっき液を撹拌するのが好ましく、これによりカーボンナノチューブ10等が、沈降することなく、めっき液中を浮遊する。
この状態で電解めっきを行うことによって、めっき金属が基材12表面に析出する際、基材12表面に位置しているカーボンナノチューブ10等がめっき皮膜14中に取り込まれ、金属とカーボンナノチューブ等との複合材(めっき構造物)が基材12表面に形成される。
なお、めっき方法は、直流めっきに限らず、電流反転めっき法やパルスめっき法も採用できる。
【0013】
カーボンナノチューブ10は多少の撥水性を有し、単独ではめっき液中に分散しにくい。特にフッ素化炭素繊維の場合には分散しにくい。
そこで、分散剤を添加し、カーボンナノチューブ等をめっき液中に分散させるのである。
分散剤としては、特に限定されないが、電解めっきによるときは、カチオン系もしくはノニオン系の界面活性剤を用いるとよい。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウムなどを好適に用いることができる。
また、フッ素化炭素繊維を分散させるには、N−[(3−ペルフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムヨ−ダイド等のカチオン系界面活性剤を好適に用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸トリエタノールアミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、モノアルキルリン酸ナトリウム等を好適に用いることができる。
フッ素化炭素繊維を分散させるには、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩、N−プロピル−N−ペルフルオロオクチルスルホニルグリシンカリウム塩、リン酸ビス[2−(N−プロピルペルフルオロオクチルスルホニルアミノ)エチル]アンモニウム塩、ペルフルオロカプリル酸、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム等のアニオン系界面活性剤を好適に用いることができる。
【0014】
またノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルポリグルコシド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどを好適に用いることができる。
フッ素化炭素繊維を分散させるには、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロオクタンスルホンアミド、N−ポリオキシエチレン−N−プロピルペルフルオロオクタンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−ペルフルオロオクチルスルホニルベンジルアミン等のノニオン系界面活性剤を好適に用いることができる。
これら界面活性剤は、単独でも、あるいは併用して用いてもよい。
また、分散剤として、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸もしくはその塩を用いて好適であった。ポリアクリル酸の場合、分子量は3000〜40000位のものが、均一分散性に優れていた。
【0015】
めっき液は特に限定されないが、ニッケルめっき、銅めっきが特に好適であった。
あるいは、種々の金属の合金めっきであってもよい。
また、電解めっきに限らず、無電解めっきであってもよい。
無電解めっきの場合にも、図1に示すように、めっき金属が基板(基材)12表面に析出する際、めっき皮膜14中に巻き込まれるようにしてカーボンナノチューブ等が取り込まれる。
【0016】
カーボンナノチューブは高熱伝導性、高電気伝導性を有することから、上記のようにして得られためっき構造物も、高熱伝導性、高電気伝導性を有するものとなる。したがって放熱板、電気材料などの種々の用途に用いることができる。
また、図2に示すように、カーボンナノチューブ10の先端がめっき皮膜14表面から突出するようにしてめっき皮膜14に固定される状況が生じる。特にめっき皮膜14が銅めっき皮膜の場合に図2に示す状況が顕著に生じた。
【0017】
図2に示されるように、多数のカーボンナノチューブ10が先端を突出してめっき皮膜14に固定されためっき構造物は、電解放出用エミッタとして好適に使用できる。
カーボンナノチューブ(CNT)からの電界放出(field emission)が検討され、ディスプレー用材料としての有用性に注目されているところである。
この電界放出を実現するためには、強電界を得る必要がある。そのためにエミッタ材料として先端を鋭く尖らせる必要がある。この点、CNTは、アスペクト比が大きく、鋭い先端をもち、化学的に安定で機械的にも強靭であって、かつ高温での安定性にも優れていて、電界放出のエミッタ材料として有用である。
【0018】
従来、CNTは、多数本のCNTを、基板上にスクリーン印刷法などによって向きを揃えて固定されることによって、発光デバイスにおける、大きな面積を有する冷陰極に形成されていた。
しかし、上記のように、多数本のCNTを、基板上にスクリーン印刷法などによって向きを揃えてするのは、必ずしも容易ではない。この点、本実施の形態におけるめっき法によれば、めっき工程中において、CNT(カーボンナノチューブ)が起立した状態でめっき皮膜に固定されるので、多数の電界放出端を有する電界放出エミッタを容易に形成できる。
【0019】
図3〜図5は微小な機械部品の製造工程を示す。
図3に示すように、基板12上にフォトリソグラフィーにより、凹部17を有するレジストパターン16を形成する。次に図4に示すように、この凹部17内にカーボンナノチューブ10が混入するめっき構造物18を上記のようにして形成し、次に図5に示すようにレジストパターン16を除去することによって、基板12上に柱状のめっき構造物18を形成することができる。基板12からめっき構造物18を剥離することによって、例えば図6に示すような、極めて微細な歯車20を形成することができる。これらめっき構造物18(20)は、カーボンナノチューブが含有されていることから、極めて強度が高く、耐久性に優れる柱状部品とすることができる。
【0020】
図7〜図8は電子部品の一例たる多層回路基板を形成する場合の説明図である。
図7に示すように、下層の配線パターン21上に絶縁層22を絶縁性樹脂を塗布するなどして形成し、この絶縁層22にレーザー加工等によって配線パターン21が底面に露出するビアホール23を形成し、このビアホール23内に、上記と同様のめっき工程によりカーボンナノチューブが混入するめっき構造物(ビア)24を形成する。
次に図8に示すように、絶縁層22上にビア24が露出する所要のレジストパターン25をフォトリソグラフィーにより形成し、次いで上記と同様のめっき工程により、無電解めっき、次いで電解めっきを施して(アディティブ法)、ビア24に電気的に接続する、カーボンナノチューブを含有するめっき構造物からなる配線パターン26を形成する。このようにして、カーボンナノチューブを含有するめっき構造物からなる配線パターンを有する多層の回路基板を形成することができる。
【0021】
上記カーボンナノチューブを含有する配線パターン26は電気伝導性に優れるものである。
なお、アディティブ法でなく、無電解めっき、電解めっきにより上記めっき皮膜(めっき構造物)を全面に形成し、このめっき皮膜をエッチングして所要の配線パターンに形成するようにしてもよい(サブトラクティブ法)。
なお、図示しないが、半導体チップ上にポリイミド樹脂層(絶縁層)を形成し、このポリイミド樹脂層上に、半導体チップの電極に接続する再配線パターンを、上記カーボンナノチューブを含有するめっき構造物によって形成するようにしてもよい。この再配線パターンの適所に外部接続用のバンプを形成することによって、半導体チップの電極位置を再配置するものである。
この場合の再配線パターンは、電気伝導性ばかりでなく、熱伝導性にも極めて優れるので、半導体チップの放熱経路となり、放熱性を高めることができる。
【0022】
図9は放熱体に適用した例を示す。
まず、上記カーボンナノチューブを含むめっき構造物からなるめっき層(例えばCNTを含む銅めっき層)31と、このめっき層31とは異なる金属(例えばニッケル)からなるめっき層(カーボンナノチューブを含んでも含まなくともよい)32とが交互に多数積層されるように積層物をめっきにより形成する。この積層体自身、めっき層の積層方向と、これと直交する方向(層が伸びている方向)とで熱伝導率の異なる異方性熱伝導体として用いることができる。特にめっき層32にカーボンナノチューブを含まない場合、カーボンナノチューブを含むめっき層31の方が熱伝導率が高いので、好適な異方性熱伝導体となる。なお、この積層体は、3つ以上の異なる金属からなるめっき層の積層体であってもよい。
この積層体の、例えばめっき層32の周縁部をエッチングにより除去することによって、カーボンナノチューブを含むめっき構造物からなるめっき層31が微小空間を介して多数並列している構造をなす放熱体30を形成できる。めっき層31が極めて放熱性に優れるものであり、このめっき層31が多数並列されて表面積が大なるものであることから、この放熱体30は極めて高い放熱性を示す。
【0023】
次に、カーボンナノチューブは、フッ素化することによって、フッ素化炭素繊維になることが知られている。
例えば次の条件によってフッ素化する。
すなわち、カーボンナノチューブ(CNT)をニッケルボートに充填し、フッ素化用のニッケル管中に設置し、フッ素との反応温度を340℃、フッ素分圧460mmHg、窒素分圧310mmHgで、72時間程度フッ素と反応させることによってCで表される構造をもつフッ素化カーボンナノチューブが形成される。
なお、フッ素化を促進させるために、フッ化銀などの触媒を用いることができる。
【0024】
このフッ素化カーボンナノチューブは、撥水性に優れることが知られている。
このフッ素化カーボンナノチューブを、上記と同様にして、上記と同様の分散剤と共にめっき液に添加し、めっき液中に均一に分散させ、めっき液を撹拌しつつめっきを行うことによって、図1と同様にして、めっき金属が基材12表面に析出する際、基材12表面に位置しているフッ素化カーボンナノチューブがめっき皮膜14中に取り込まれ、金属とフッ素化カーボンナノチューブとの複合材(めっき構造物)が基材12表面に形成される。
この複合材も撥水性に優れたものとなった。
【0025】
また、めっき液中に、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂などの、樹脂からなる微粉末あるいは微細繊維を分散させ、めっきを行うことによって、フッ素化カーボンナノチューブと共に樹脂の微粉末、微細繊維をめっき皮膜中に取り込むことができる。この3つの素材からなる複合材も撥水性に優れる。
なお、フッ素化カーボンナノチューブでなく、上記カーボンナノチューブと、微粉末、微細繊維からなる樹脂と、めっき金属との3種混合物からなる複合材とすることもできる。
【0026】
図10は、カーボンナノチューブ(CNT)10の表面に、めっき皮膜34を形成した炭素繊維を示す。
このめっき皮膜34は、無電解めっき液中に上記と同様の分散剤と共にCNTを分散させて、CNT表面に無電解めっき皮膜34を形成したものである。CNT10をめっき液中に分散させることによって、CNT10表面に無電解めっき皮膜34を均一厚さに形成することができる。
このように表面にめっき金属皮膜を形成したカーボンナノチューブは、比重もそれなりに大きくなり、金属との相応性も良好なことから、溶融金属中に均一に分散させることができ、金属との均一な複合材を形成することができる。また、樹脂中に分散させて、樹脂との複合材とすることもできる。さらには、表面に上記めっき皮膜が形成されたカーボンナノチューブを接着剤樹脂中に混入して導電性樹脂とすることもできる。
【実施例】
【0027】
ベース浴1
NiSO・6HO 1M
NiCl・6HO 0.2M
HBO 0.5M
実施例1
ベース浴1 +
PA5000 2×10−4
実施例2
ベース浴1 +
PA5000 2×10−4
CNT 2g/l
(なお、PA5000は、分子量5000のポリアクリル酸)
上記ベース浴1、実施例1、実施例2の浴を用いて、撹拌下、2A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図11(a)、(a´)、図11(b)、(b´)、図11(c)、(c´)に示す(なおa、b、cは500倍、a´、b´、c´は5000倍)。また図12は図11(c´)のさらなる拡大図である。
図11(a)、(a´)から明らかなように、ニッケルめっき皮膜の表面は比較的荒れているが、図11(b)、(b´)に示されるように、ポリアクリル酸を添加することによって表面の平滑性が生じ、光沢めっき皮膜が得られた。ポリアクリル酸はCNTの分散剤として作用すると共に、光沢剤としても作用する。図11(c)、(c´)から明らかなように、CNTはニッケルめっき皮膜中に取り込まれている。特に図11(c´)、図12から明らかなように、ニッケルめっき金属はCNT表面に粒状に成長し、CNTを覆い、やがて、粒状のめっき金属が連続し、CNTがニッケルめっき皮膜中に取り込まれる状態となるのである。
図13(a)、(a´)、図13(b)、(b´)、図13(c)、(c´)は(なおa、b、cは500倍、a´、b´、c´は5000倍)、上記ベース浴1、実施例1、実施例2の浴を用いて、撹拌下、5A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ示す。図14は図13(c´)のさらなる拡大図である。このように電流密度を変えても、図11に示す場合とほとんど同様の結果が得られた。
【0028】
実施例3
ベース浴1 +
PA25000 2×10−4
実施例4
ベース浴1 +
PA25000 2×10−4
CNT 2g/l
(なお、PA25000は、分子量25000のポリアクリル酸)
実施例3、実施例4は、ポリアクリル酸に分子量25000のものを用いた他はそれぞれ実施例1、実施例2と同じである。
図15(a)、(a´)、図15(b)、(b´)、図15(c)、(c´)は(なおa、b、cは500倍、a´、b´、c´は5000倍)、上記ベース浴1、実施例3、実施例4の浴を用いて、撹拌下、2A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ示す。図16は図15(c´)のさらなる拡大図である。このようにポリアクリル酸に分子量25000のものを用いても、図11に示す場合とほとんど同様の結果が得られた。
また、電流密度を5A/dmに変更した場合も同様の結果が得られた。
【0029】
ベース浴2
CuSO・5HO 0.85M
HSO 0.55M
実施例5
ベース浴2 +
PA5000 2×10−4
実施例6
ベース浴2 +
PA5000 2×10−4
CNT 2g/l
(なお、PA5000は、分子量5000のポリアクリル酸)
上記ベース浴2、実施例5、実施例6の浴を用いて、撹拌下、2A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図17(a)、(a´)、図17(b)、(b´)、図17(c)、(c´)に示す(なおa、b、cは500倍、a´、b´、c´は5000倍)。
図17(b)、(b´)、図17(c)、(c´)から明らかなように、ポリアクリル酸を添加した場合、2A/dmの電流密度の条件下では、めっき皮膜の表面が荒れてしまい、実用に至らなかった。
図18(a)、(a´)、図18(b)、(b´)、図18(c)、(c´)は(なおa、b、cは500倍、a´、b´、c´は5000倍)、上記ベース浴2、実施例5、実施例6の浴を用いて、撹拌下、5A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ示す。図19は図18(c´)のさらなる拡大図である。 図18(a)、(a´)から明らかなように、銅めっき皮膜の表面は比較的荒れているが、図18(b)、(b´)に示されるように、ポリアクリル酸を添加することによって、また電流密度を5A/dmと上げることによって、表面の平滑性が生じ、光沢めっき皮膜が得られた。ポリアクリル酸はCNTの分散剤として作用すると共に、光沢剤としても作用する。図18(c)、(c´)から明らかなように、CNTはニッケルめっき皮膜中に取り込まれている。なお、図19に示すように、ニッケルめっきの場合とは異なり、銅めっきの場合には、めっき金属がCNT表面にはほとんど粒状に成長せず、直接基板上に析出して、この析出銅めっき皮膜内にCNTが巻き込まれるかたちで固定されることが判明した。また、図19に示されるように、銅めっき皮膜の表面では、該表面からCNTの先端が突出していることが顕著に観察される。この突出端が電界電子放出端として機能する。
【0030】
実施例7
ベース浴2 +
PA25000 2×10−4
実施例8
ベース浴2 +
PA25000 2×10−4
CNT 2g/l
(なお、PA25000は、分子量25000のポリアクリル酸)
上記ベース浴2、実施例7、実施例8の浴を用いて、撹拌下、2A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図20(a)、(a´)、図20(b)、(b´)、図20(c)、(c´)に示す(なおa、b、cは500倍、a´、b´、c´は5000倍)。
図20(b)、(b´)、図20(c)、(c´)から明らかなように、ポリアクリル酸に分子量25000のものを用いても、2A/dmの電流密度の条件下では、めっき皮膜の表面が荒れてしまい、実用に至らなかった。
【0031】
図21(a)、(a´)、図21(b)、(b´)、図21(c)、(c´)は(なおa、b、cは500倍、a´、b´、c´は5000倍)、上記ベース浴2、実施例7、実施例8の浴を用いて、撹拌下、5A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ示す。図22は図21(c´)のさらなる拡大図である。 図21(a)、(a´)から明らかなように、銅めっき皮膜の表面は比較的荒れているが、図21(b)、(b´)に示されるように、ポリアクリル酸を添加することによって、また電流密度を5A/dmと上げることによって、表面の平滑性が生じ、光沢めっき皮膜が得られた。ポリアクリル酸はCNTの分散剤として作用すると共に、光沢剤としても作用する。図21(c)、(c´)から明らかなように、CNTはニッケルめっき皮膜中に取り込まれている。なお、図22に示すように、ニッケルめっきの場合とは異なり、銅めっきの場合には、めっき金属がCNT表面にはほとんど粒状に成長せず、直接基板上に析出して、この析出銅めっき皮膜内にCNTが巻き込まれるかたちで固定されることが判明した。また、図22に示されるように、銅めっき皮膜の表面では、該表面からCNTの先端が突出していることが顕著に観察される。この突出端が電界電子放出端として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】分散電気めっきの原理を示す説明図である。
【図2】CNTの先端が突出している状態を示す説明図である。
【図3】フォトレジストパターンを形成した状態の説明図である。
【図4】凹部内にめっき構造物を形成した状態の説明図である。
【図5】フォトレジストパターンを除去した状態の説明図である。
【図6】微細歯車の説明図である。
【図7】ビアを形成した状態の説明図である。
【図8】多層配線パターンに形成した状態の説明図である。
【図9】放熱フィンの説明図である。
【図10】めっき皮膜を形成した状態の炭素繊維の説明図である。
【図11】ベース浴1、実施例1、実施例2の浴を用いて、撹拌下、2A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図12】図11の拡大図である。
【図13】ベース浴1、実施例1、実施例2の浴を用いて、撹拌下、5A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図14】図13の拡大図である。
【図15】ベース浴1、実施例3、実施例4の浴を用いて、撹拌下、2A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図16】図15の拡大図である。
【図17】ベース浴2、実施例5、実施例6の浴を用いて、撹拌下、2A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図18】ベース浴2、実施例5、実施例6の浴を用いて、撹拌下、5A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図19】図18の拡大図である。
【図20】ベース浴2、実施例7、実施例8の浴を用いて、撹拌下、2A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図21】ベース浴2、実施例7、実施例8の浴を用いて、撹拌下、5A/dmの電流密度で電解めっきした場合のめっき皮膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図22】図21の拡大図である。
【符号の説明】
【0033】
10 カーボンナノチューブ
12 基板(基材)
14 めっき皮膜
16 フォトレジストパターン
17 凹部
18 めっき構造物
20 歯車
21 配線パターン
22 絶縁層
23 ビアホール
24 ビア
25 レジストパターン
26 配線パターン
30 放熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解ニッケルめっき液もしくは無電解銅めっき液中に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体を添加して、該めっき液を用いて基材上に無電解めっきを施して、基材表面に、前記カーボンナノチューブもしくはその誘導体が混入しているめっき皮膜を形成する無電解めっき方法であって、
前記めっき液中に分散剤としてポリアクリル酸もしくはその塩を添加して、カーボンナノチューブもしくはその誘導体をめっき液中に分散させて無電解めっきを行うことを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項2】
分子量が3000〜40000のポリアクリル酸を用いることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき方法。
【請求項3】
カーボンナノチューブの誘導体にフッ素化カーボンナノチューブを用いることを特徴とする請求項1または2記載の無電解めっき方法。
【請求項4】
めっき液中に、さらに樹脂材を分散させ、基材表面に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体と共に樹脂材が混入しているめっき皮膜を形成することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の無電解めっき方法。
【請求項5】
カーボンナノチューブもしくはその誘導体の先端がめっき皮膜表面から突出するようにめっきを行うことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の無電解めっき方法。
【請求項6】
基材表面にレジストパターンを形成し、このレジストパターンの凹部内にめっき皮膜を形成することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の無電解めっき方法。
【請求項7】
無電解ニッケルめっき液もしくは電解銅めっき液であって、該めっき液中に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体と、このカーボンナノチューブもしくはその誘導体を分散させるための分散剤としての、ポリアクリル酸もしくはその塩を含むことを特徴とする無電解めっき液。
【請求項8】
ポリアクリル酸の分子量が3000〜40000であることを特徴とする請求項7記載の無電解めっき液。
【請求項9】
無電解ニッケルめっき液もしくは無電解銅めっき液中に添加して、該めっき液中に、カーボンナノチューブもしくはその誘導体を分散させるための分散剤であって、ポリアクリル酸もしくはその塩からなることを特徴とする分散剤。
【請求項10】
分子量が3000〜40000であることを特徴とする請求項9記載の分散剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−222707(P2010−222707A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129903(P2010−129903)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【分割の表示】特願2006−287668(P2006−287668)の分割
【原出願日】平成14年11月1日(2002.11.1)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】