無電解めっき装置、無電解めっき方法およびコンピュータ読取可能な記憶媒体
【課題】 良好な膜質のめっき皮膜を形成することができる無電解めっき装置を提供すること。
【解決手段】 基板Wを支持する基板支持部46と、基板Wの表面に供給されるめっき液を貯留するめっき液貯留部と、めっき液貯留部からのめっき液を、基板支持部46に支持された基板Wの表面に向けて供給するめっき液供給管と、めっき液供給管に設けられ、めっき液を基板Wの表面に吐出するめっき液吐出ノズルと、基板支持部46に支持された基板Wの裏面側に設けられ、基板Wの温度を制御するための基板温度制御部材48´と、基板温度制御部材48´と基板Wとの間に相対的な昇降移動を生じさせる移動機構とを具備し、基板温度制御部材48´は、移動機構により基板Wとの間の距離を調節することによって基板Wの温度を制御するように構成されている。
【解決手段】 基板Wを支持する基板支持部46と、基板Wの表面に供給されるめっき液を貯留するめっき液貯留部と、めっき液貯留部からのめっき液を、基板支持部46に支持された基板Wの表面に向けて供給するめっき液供給管と、めっき液供給管に設けられ、めっき液を基板Wの表面に吐出するめっき液吐出ノズルと、基板支持部46に支持された基板Wの裏面側に設けられ、基板Wの温度を制御するための基板温度制御部材48´と、基板温度制御部材48´と基板Wとの間に相対的な昇降移動を生じさせる移動機構とを具備し、基板温度制御部材48´は、移動機構により基板Wとの間の距離を調節することによって基板Wの温度を制御するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置、無電解めっき方法およびコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、基板としての半導体ウエハ上に形成される配線には、半導体デバイスの動作速度を向上させるためにCu(銅)が用いられつつある。このようなCu配線の基板上への形成は通常、絶縁膜に配線を埋め込むためのビアおよびトレンチをエッチングにより形成し、それらの中に銅配線を埋め込むダマシン法により行われる。
【0003】
このようなCu配線を有する半導体デバイスは、近時、益々微細化および高集積化してきており、そのため電流密度が増加して電流によるCu原子の輸送、いわゆるエレクトロマイグレーションが増大し、配線の断線を引き起こして信頼性の低下を招くおそれがある。
【0004】
このため、キャップメタルと称される金属めっき膜を無電解めっきによってCu配線の表面に被覆して、半導体デバイスのエレクトロマイグレーション耐性を向上させる試みがなされている。無電解めっき方法としては、めっき液を貯留した層に被めっき物を浸漬する方法が知られているが、このような方法を基板上に形成された配線のめっき処理に採用すると、基板である半導体ウエハの下面(裏面)にもめっき液が付着してコンタミネーションの原因となる。
【0005】
そこで、コンタミネーションを抑止しつつ基板上の配線に無電解めっきを施す装置として、基板を支持するチャックと、チャックに支持された基板を所定の温度に加熱する下部プレートと、所定の温度に加熱されためっき液を内部に流通させて、下部プレートにより加熱された基板上に供給するめっき液供給管(処理液流入部)とを具備した無電解めっき装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
ところで、無電解めっき処理では一般的に、めっき液を50℃以上沸点以下の温度で加熱して被めっき物に接触させる必要があるが、めっき液は、加熱されることで化学的な不安定さが増して、その後の時間の経過等により変質して劣化してしまうため、極力低い加熱温度、例えば60〜80℃程度で基板上に供給されることが好ましい。
【0007】
しかしながら、上記の無電解めっき装置は、めっき液供給管内を通過する間の温度低下を考慮してめっき液の加熱温度を比較的高く設定せざるを得ず、しかも、めっき液の供給停止等によってめっき液供給管内の通過時間にもばらつきが生じる。このため、めっき液の温度を高く保持しておく必要があり、めっき液を高品質に保持することが困難である。
【0008】
また、無電解めっき技術においては、めっき皮膜の膜質を良好なものとするために、めっき処理を行う際の基板の温度管制御を厳密に行うことが好ましいが、上記特許文献1の無電解めっき装置では必ずしも十分な温度制御を実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−124235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、良好な膜質のめっき皮膜を形成することができる無電解めっき装置および無電解めっき方法を提供することを目的とする。
さらに、このような無電解めっき方法を実行することができる制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点では、基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置であって、基板を支持する基板支持部と、基板の表面に供給されるめっき液を貯留するめっき液貯留部と、前記めっき液貯留部からのめっき液を、前記基板支持部に支持された基板の表面に向けて供給するめっき液供給管と、前記めっき液供給管に設けられ、前記めっき液を基板の表面に吐出するめっき液吐出ノズルと、前記基板支持部に支持された基板の裏面側に設けられ、基板の温度を制御するための基板温度制御部材と、前記基板温度制御部材と基板との間に相対的な昇降移動を生じさせる移動機構とを具備し、前記基板温度制御部材は、前記移動機構により基板との間の距離を調節することによって基板の温度を制御するように構成されていることを特徴とする無電解めっき装置を提供する。
【0012】
上記第1の観点において、前記基板温度制御部材は、ヒータを内蔵し、輻射熱により基板を加熱して所定温度に制御するように構成することができる。さらに、基板温度制御部材は、前記ヒータと、基板に加熱された流体を供給する流体供給口との両方を備えていてもよい。この場合に、前記基板温度制御部材は、前記ヒータの輻射熱により基板を加熱し、その後、前記流体供給口から前記ヒータの輻射熱により加熱された基板に、前記加熱された流体を供給し、前記基板の温度をさらに上昇させることができる。また、前記基板温度制御部材は、前記めっき液供給の開始時点の基板の温度よりも、前記めっき液の供給を停止した時点の基板の温度のほうが高くなるように基板の温度を制御することができる。
【0013】
また、上記第1の観点において、基板の表面へのめっき液の供給に先立って基板に所定の液を供給して前処理を行う前処理液供給機構と、基板の表面へのめっき液の供給の後に基板に所定の液を供給して後処理を行う後処理液供給機構をさらに具備する構成とすることができる。
【0014】
本発明の第2の観点では、めっき液貯留部に貯留されためっき液をめっき液供給管およびめっき液吐出ノズルを介して基板の表面に供給して無電解めっきを施す無電解めっき方法であって、基板の裏面側に配置された基板温度制御部材と基板との間の距離を調整して基板の温度を制御する工程と、前記めっき液供給管内を流通するめっき液を基板の表面に供給する工程とを含むことを特徴とする無電解めっき方法を提供する。
【0015】
上記第2の観点において、前記めっき液供給の開始時点の基板の温度よりも、前記めっき液の供給を停止した時点の基板の温度のほうが高くなるように基板の温度を制御するように制御することができる。また、基板の表面へのめっき液の供給に先立って基板の表面に所定の液を供給して前処理を行う工程と、基板の表面へのめっき液の供給の後に基板に所定の液を供給して後処理を行う工程とをさらに含むことができる。
【0016】
本発明の第3の観点では、基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置をコンピュータに制御させる制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第2の観点の無電解めっき方法が行われるように、コンピュータに前記無電解めっき装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の裏面側に基板との間で相対的に昇降可能な基板温度制御部材を設けたので、きめ細かな温度制御が実現され、良好な膜質のめっき皮膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る無電解めっき装置を具備した無電解めっきシステムの概略構造を示す平面図。
【図2】無電解めっきシステムの概略構造を示す側面図。
【図3】無電解めっきシステムの概略構造を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る無電解めっきユニットの概略平面図。
【図5】図4の無電解めっきユニットの概略断面図。
【図6】図4の無電解めっき装置に設けられたノズル部およびノズル部にめっき液等の処理流体を送るための処理流体供給システムの概略構成を示す図。
【図7】図4の無電解めっき装置に設けられた薬液ノズルの概略構造を示す断面図。
【図8】図4の無電解めっき装置に設けられためっき液ノズルの概略構造を示す断面図である。
【図9】図8のめっき液ノズルのめっき液の供給動作を説明するための図。
【図10】図4の無電解めっきユニットに設けられたノズル部の動作態様(移動態様)を説明するための図。
【図11】図1の無電解めっきシステムにおけるウエハの処理工程の概略を示すフローチャート。
【図12】図4の無電解めっき装置におけるウエハの処理工程の概略を示すフローチャート。
【図13】無電解めっきユニットに用いられるアンダープレートの他の例を示す図。
【図14】無電解めっきユニットの変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る無電解めっき装置を搭載した無電解めっきシステムの概略構造を示す平面図、図2はその側面図、図3はその断面図である。
【0020】
無電解めっきシステム1は、処理部2と搬入出部3とを備えている。処理部2は、処理対象基板としての半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wに無電解めっき処理および無電解めっき処理前後の熱的処理を施すものである。搬入出部3は、処理部2へのウエハWの搬入および処理部2からのウエハWの搬出を行う。ウエハWとしては、その表面に金属からなる配線部(図示せず)を有するものが用いられ、処理部2はこの配線部に無電解めっき処理を施す。
【0021】
搬入出部3は、ウエハ収容容器であるフープ(FOUP;front opening unified pod)Fを載置するための載置台6が設けられたイン・アウトポート4と、載置台6に載置されたフープFと処理部2との間でウエハWの受け渡しを行うウエハ搬送機構7が設けられたウエハ搬送部5から構成されている。
【0022】
フープFは、複数枚、例えば25枚のウエハWを水平姿勢で鉛直方向に積層した状態で収容可能であり、一側面にウエハWを搬入出するための搬入出口を有し、搬入出口を開閉可能な蓋体が設けられている。フープF内には、ウエハWを収容するための複数のスロットが上下方向に沿って形成されており、各スロットは、ウエハWを一枚ずつ、その表面(配線部が形成された面)を上側にした状態で収容する。
【0023】
イン・アウトポート4の載置台6は、フープFが無電解めっきシステム1の幅方向(Y方向)に複数個、例えば3個並列に載置されるようになっており、フープFが、搬入出口を有する側面をイン・アウトポート4とウエハ搬送部5との境界壁8側に向けて載置される。境界壁8には、フープFの載置場所に対応する位置に窓部9が形成され、ウエハ搬送部5側に窓部9を開閉するシャッター10が設けられている。
【0024】
シャッター10は、窓部9の開閉と同時に、フープFに設けられた蓋体の開閉をも行えるようになっている。シャッター10は、フープFが載置台6の所定位置に載置されていないときに動作しないように、インターロックを有して構成されることが好ましい。シャッター10が窓部9を開放状態としてフープFの搬入出口とウエハ搬送部5とが連通すると、ウエハ搬送部5に設けられたウエハ搬送機構7のフープFへのアクセスが可能となる。なお、窓部9の上部には図示しないウエハ検査機構が設けられており、フープF内に収納されたウエハWの枚数および状態をスロット毎に検出することができるようになっている。このようなウエハ検査機構は、シャッター10に装着させることも可能である。
【0025】
ウエハ搬送部5に設けられたウエハ搬送機構7は、ウエハWを保持する搬送ピック11を有し、Y方向に移動可能である。搬送ピック11は、無電解めっきシステム1の長さ方向(X方向)に沿った進退動作、無電解めっきシステム1の高さ方向(Z方向)に沿った昇降動作、およびX−Y平面内(θ方向)での回転動作が可能となっている。これにより、ウエハ搬送機構7は、載置台6に載置された任意のフープFと対向する位置に移動して、搬送ピック11を対向しているフープFの任意の高さのスロットにアクセスさせることができ、かつ処理部2に設けられた後述するウエハ受渡ユニット(TRS)16と対向する位置に移動して、搬送ピック11をウエハ受渡ユニット(TRS)16にアクセスさせることができるようになっている。すなわち、ウエハ搬送機構7は、フープFと処理部2との間でウエハWを搬送するように構成されている。
【0026】
処理部2は、ウエハ搬送部5との間でウエハWの受け渡しを行うためにウエハWを一時的に載置するウエハ受渡ユニット(TRS)16と、ウエハWにめっき処理を施す無電解めっきユニット(PW)12と、無電解めっきユニット(PW)12でのめっき処理前後のウエハWを加熱処理するホットプレートユニット(HP)19と、ホットプレートユニット(HP)19で加熱されたウエハWを冷却する冷却ユニット(COL)22と、これらのユニット間でウエハWの搬送を行う主ウエハ搬送機構18とを備えている。また、処理部2の無電解めっきユニット(PW)12の下側には、無電解めっきユニット(PW)12に送液するめっき液等の所定の流体を貯蔵する流体貯蔵ユニット(CTU)25が設けられている。なお、本実施形態の無電解めっき装置は、無電解めっきユニット(PW)12と流体貯蔵ユニット(CTU)25に設けられた後述する処理流体供給機構60とにより構成される。
【0027】
ウエハ受渡ユニット(TRS)16は、2つ設けられており、これらは、処理部2の略中央部に設置された主ウエハ搬送機構18とウエハ搬送部5との間に、上下2段に積み重ねられている。下段のウエハ受渡ユニット(TRS)16は、搬入出部3から処理部2に搬送されるウエハWを載置するために用いられ、上段のウエハ受渡ユニット(TRS)16は、処理部2から搬入出部3へ搬送されるウエハWを載置するために用いられる。
【0028】
ホットプレートユニット(HP)19は、ウエハ受渡ユニット(TRS)16のY方向両側にそれぞれ、上下4段に積み重ねられて設けられている。冷却ユニット(COL)22は、ホットプレートユニット(HP)19と隣接するように、主ウエハ搬送機構18のY方向両側にそれぞれ、上下4段に積み重ねられて設けられている。
【0029】
無電解めっきユニット(PW)12は、冷却ユニット(COL)22および主ウエハ搬送機構18に隣接するように、Y方向に2列に並んで、かつ、上下2段に積み重ねられて設けられており、Y方向に並列する無電解めっきユニット(PW)12同士は、その境界をなしている壁面41に対してほぼ対称な構造を有している。無電解めっきユニット(PW)12の詳細については後に説明する。
主ウエハ搬送機構18は、Z方向に延在する垂直壁27、28およびこれらの間の側面開口部29を有する筒状支持体30と、その内側に筒状支持体30に沿ってZ方向に昇降自在に設けられたウエハ搬送体31とを有している。筒状支持体30は、モータ32の回転駆動力によって回転可能であり、それに伴ってウエハ搬送体31も一体的に回転するように構成されている。
【0030】
ウエハ搬送体31は、搬送基台33と、搬送基台33に沿って前後に移動可能な3本の搬送アーム34、35、36とを備えており、搬送アーム34、35、36は、筒状支持体30の側面開口部29を通過可能な大きさを有している。これら搬送アーム34、35、36は、搬送基台33内に内蔵されたモータおよびベルト機構によってそれぞれ独立して進退移動することが可能となっている。ウエハ搬送体31は、モータ37によってベルト38を駆動させることにより昇降する。なお、参照符号39は駆動プーリー、40は従動プーリーである。
処理部2の天井には、各ユニットおよび主ウエハ搬送機構18に清浄な空気をダウンフローするためのフィルターファンユニット(FFU)26が設けられている。
【0031】
無電解めっきシステム1の各構成部は、CPUを備えたプロセスコントローラ111に接続されて制御されるように構成されている。プロセスコントローラ111には、工程管理者が無電解めっきシステム1の各部または各ユニットを管理するためのコマンドの入力操作等を行うキーボードや、各部または各ユニットの稼動状況を可視化して表示するディスプレイなどからなるユーザインターフェース112と、無電解めっきシステム1で実行される各処理をプロセスコントローラ111の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等を記録したレシピが格納された記憶部113とが接続されている。
【0032】
そして、必要に応じて、ユーザインターフェース112からの指示等を受けて、任意のレシピを記憶部113から呼び出してプロセスコントローラ111に実行させることで、プロセスコントローラ111の制御下で無電解めっきシステム1において所望の各処理が行われる。また、前記レシピは、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、不揮発性メモリ等の読み出し可能な記憶媒体に格納されたものを利用したり、または、無電解めっきシステム1の各部もしくは各ユニット間あるいは外部の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0033】
次に、無電解めっきユニット(PW)12の詳細について説明する。
図4は本実施形態に係る無電解めっき装置(無電解めっきユニット)12の概略平面図であり、図5はその概略断面図である。
【0034】
無電解めっきユニット(PW)12は、ハウジング42と、ハウジング42内に設けられたアウターチャンバ43と、アウターチャンバ43内に設けられたインナーカップ47と、インナーカップ47内に設けられた、ウエハWを支持するスピンチャック(支持部)46と、ウエハWの温度を調節するためのアンダープレート(基板温調部材)48と、スピンチャック46に支持されたウエハW上にめっき液や洗浄液等の液体および気体を供給するノズル部51とを備えている。ノズル部51には、流体貯蔵ユニット(CTU)25に設けられためっき液や他の流体を供給するための後述する処理流体供給機構60が接続されている。スピンチャック46は、ウエハWの表面を上にした状態でウエハWを保持するようになっている。また、アンダープレート48は、スピンチャック46に支持されたウエハWの裏面(下面)と対向するように設けられ、昇降可能となっている。
【0035】
ハウジング42の側壁には窓部44aが形成されており、窓部44aは第1シャッター44により開閉自在となっている。搬送アーム34、35、36のそれぞれは、窓部44aを通してウエハWの無電解めっきユニット(PW)12への搬入および無電解めっきユニット(PW)12からの搬出を行うようになっている。窓部44aは、ウエハWの搬入出時以外には、第1シャッター44によって閉塞された状態に保たれる。第1シャッター44は、ハウジング42の内部から窓部44aを開閉するようになっている。
【0036】
アウターチャンバ43は、スピンチャック46に支持されたウエハWを囲う高さ位置に、内壁が下方から上方に向かってテーパー状に形成されたテーパー部43cを有している。このテーパー部43cには、ハウジング42の窓部44aに対向するように窓部45aが形成され、窓部45aは第2シャッター45によって開閉自在となっている。搬送アーム34、35、36のそれぞれは、窓部44aおよび窓部45aを通してアウターチャンバ43内外に進退し、スピンチャック46との間でウエハWの受け渡しを行うようになっている。窓部45aは、ウエハWの受け渡し時以外には、第2シャッター45によって閉塞された状態に保たれる。第2シャッター45は、アウターチャンバ43の内部から窓部45aを開閉するようになっている。
【0037】
アウターチャンバ43の上壁には、アウターチャンバ43内に窒素(N2)ガスを供給してダウンフローを形成するためのガス供給部89が設けられている。アウターチャンバ43の底壁には、排気・排液を行うドレイン配管85が設けられている。
【0038】
インナーカップ47は、アウターチャンバ43のテーパー部43cと対応するように、下方から上方に向かってテーパー状に形成されたテーパー部47aを上端部に有し、底壁にドレイン配管88を有している。インナーカップ47は、ガスシリンダー等の昇降機構により、上端がスピンチャック46に支持されたウエハWよりも上側となり、かつ、テーパー部47aがウエハWを囲繞する処理位置(図5において実線で示される位置)と、上端がスピンチャック46に支持されたウエハWよりも下側となる退避位置(図5において仮想線で示される位置)との間で昇降自在となっている。
【0039】
インナーカップ47は、搬送アーム34、35、36のそれぞれがスピンチャック46との間でウエハWの受け渡しを行う際に、各搬送アームの進退を妨げないように退避位置に保持され、スピンチャック46に支持されたウエハWに無電解めっき処理が施される際に処理位置に保持される。したがって、インナーカップ47によりウエハWに供給されためっき液の周囲への飛散が防止される。また、ウエハW上から直接落下しためっき液、あるいはウエハW上を跳ねてインナーカップ47またはインナーカップ47のテーパー部47aにあたっためっき液は下方のドレイン88配管へと導かれる。ドレイン配管88には、図示しないめっき液回収ラインおよびめっき液廃棄ラインが切り替え可能に接続されており、めっき液回収ラインを介してめっき液が回収されるか、またはめっき液廃棄ラインを介して廃棄されるようになっている。
【0040】
スピンチャック46は、水平方向に回転可能な回転筒体62と、回転筒体62の上端部から水平に広がる環状の回転プレート61と、回転プレート61の外縁部に設けられた、ウエハWを載置して支持する載置ピン63と、回転プレート61の外縁部に設けられた、載置ピン63に支持されたウエハWの縁部を押圧してウエハWを支持する押圧ピン64とを有している。
【0041】
搬送アーム34、35、36のそれぞれとスピンチャック46との間のウエハWの受け渡しは、載置ピン63を利用して行われる。載置ピン63は、ウエハWを確実に支持する観点から、少なくとも周方向に3箇所、好ましくは等間隔で設けることが好ましい。
【0042】
押圧ピン64は、搬送アーム34、35、36のそれぞれとスピンチャック46との間でのウエハWの受け渡しを妨げないように、図示しない押圧機構によって回転プレート61の下部に位置する部分を回転プレート61側に押し当てることにより、上端部(先端部)が回転プレート61の外側に移動して傾斜することができるようになっている。押圧ピン64も、ウエハWを確実に支持する観点から、少なくとも周方向に3箇所、好ましくは等間隔で設けることが好ましい。
【0043】
回転筒体62の外周面には、モータ66の駆動によって回転するベルト65が巻きかけられており、これにより、回転筒体62が回転して載置ピン63および押圧ピン64に支持されたウエハWが水平に回転するようになっている。押圧ピン64は、重心の位置が調整されることにより、ウエハWの回転時に、ウエハWを押圧する力が調整されるようになっている。例えば、重心が回転プレート61よりも下側に設けられると、回転プレート61よりも下側の部分に遠心力が掛かって上端部が内側に移動しようとするため、ウエハWを押圧する力が高められる。
【0044】
アンダープレート48は、回転プレート61の上側でかつ載置ピン63および押圧ピン64で囲まれた空間内に配置され、回転筒体62内を貫通して設けられたシャフト67に接続されている。アンダープレート48が接続されたシャフト67は、回転筒体62の下側に設けられた水平板68を介して、エアシリンダ等の昇降機構69に接続されており、この昇降機構69によりアンダープレート48とともに昇降可能となっている。アンダープレート48の上面には、ウエハWの裏面に向かって純水や乾燥ガス等の処理流体を供給する複数の処理流体供給口81が設けられ、アンダープレート48内およびシャフト67内には、純水や乾燥ガス等の処理流体を処理流体供給口81に流通させる処理流体供給路87が設けられている。シャフト67内の処理流体供給路87の一部分には、その周囲に熱交換器84が設けられており、処理流体供給路87を流れる処理流体が、熱交換器84によって所定の温度に加熱されて処理流体供給口81からウエハWの裏面に向かって供給されるように構成されている。
【0045】
アンダープレート48は、スピンチャック46と搬送アーム34、35、36のそれぞれとの間でウエハWの受け渡しが行われる際に、各搬送アームと衝突しないように回転プレート61に近接するように下降し、スピンチャック46に支持されたウエハWにめっき処理が施される際に、ウエハWに近接する図5の仮想線位置まで上昇し、所定の温度に調節された純水等の温調流体を処理流体供給口81からウエハWの裏面に供給してウエハWを加熱し所定の温度に制御する。
【0046】
アウターチャンバ43の側壁には、アウターチャンバ43と連通するようにノズル部格納室50が設けられている。上記ノズル部51は水平に延び、ノズル部格納室50内に挿通されており、ノズル昇降機構56aにより昇降可能となっており、ノズルスライド機構56bによりスライド可能となっている。そして、ノズルスライド機構56bによりノズル部51をスライドさせ、処理時には、図4、5に示すように、ノズル部51の先端部(めっき液等をウエハW上に吐出する側)がノズル格納室50から突出してアウターチャンバ43内のウエハWの上方位置に達するようになっており、温調時には後述するようにノズル部51の先端部がノズル部格納室50に格納されるようになっている。また、ノズル部51は、薬液と純水と窒素ガスとをウエハW上に供給可能な薬液ノズル51aと、乾燥ガスとしての窒素ガスをウエハW上に供給可能な乾燥ノズル51bと、めっき液をウエハW上に供給可能なめっき液ノズル51cとを一体的に有している。
【0047】
次に、処理流体供給機構60について説明する。図6は処理流体供給機構の概略構成を示す図、図7は薬液ノズル51aの概略構成を示す断面図、図8はめっき液ノズル51cの概略構成を示す断面図である。
【0048】
図6に示すように、処理流体供給機構60は、薬液ノズル51aに薬液等を送るための薬液供給機構70と、めっき液ノズル51cにめっき液を送るためのめっき液供給機構90とを有している。
【0049】
薬液供給機構70は、液体貯蔵ユニット(CTU)25に配置された、薬液を所定の温度に加熱調節して貯留する薬液貯留タンク71と、薬液貯留タンク71内の薬液を汲み上げるポンプ73と、ポンプ73によって汲み上げられた薬液を薬液ノズル51aへの送液に切り替えるバルブ74aとを有している。薬液ノズル51aへは、薬液供給機構70による薬液の他、所定の温度に加熱調節された純水および窒素ガスが送られるようになっており、バルブ74a、74b、74cの開閉を切り替えることによって、薬液、純水、窒素ガスのいずれかが選択されて送られるように構成されている。薬液ノズル51aおよび乾燥ノズル51bに送られる窒素ガス供給源は例えば同一のものとすることができ、乾燥ノズル51bへの窒素ガスの供給は、別途設けたバルブ74dの開閉によって制御することができる。
【0050】
めっき液供給機構90は、液体貯蔵ユニット(CTU)25に配置された、めっき液を貯留するめっき液貯留タンク(めっき液貯留部)91と、めっき液貯留タンク91内のめっき液を汲み上げるポンプ92と、ポンプ92によって汲み上げられためっき液をめっき液ノズル51cへの送液に切り替えるバルブ93と、バルブ93を通過してめっき液ノズル51cに送られるめっき液を所定の温度に加熱する加熱源94と、めっき液ノズル51cからのウエハW上へのめっき液の供給が停止された際に、めっき液ノズル51cに送られためっき液を吸引する吸引機構95とを有している。加熱源94はヒータや熱交換器等で構成され、吸引機構95はアスピレータやポンプ等で構成される。
【0051】
図7に示すように、薬液ノズル51aは、薬液供給機構70から送られた薬液等を導いてウエハW上に供給する薬液供給管52と、薬液供給管52を囲繞するように設けられた薬液温調管53とを有している。薬液温調管53は、薬液供給管52の長さ方向ほぼ全体をカバーしている。薬液供給管52の先端部には、薬液等を下方に向かってウエハW上に吐出するノズルチップ52aが設けられている。
【0052】
薬液温調管53は、所定の温度に加熱調節された温調流体、例えば温調水が内部を流通することによって、薬液供給管52内を流れる薬液等の温度変化または温度低下を抑止するものである。これにより、薬液の性能を最大限に引き出した処理が行われる。薬液温調管53は、内管および外管を備えた二重管構造を有しており、内管内を流通した温調水が先端部で折り返して外管内を流通するように構成されている。これにより、薬液温調管53内を流通する温調水の温度を安定させることができる。
【0053】
図8に示すように、めっき液ノズル51cは、めっき液供給機構90から送られためっき液を導いてウエハW上に供給するめっき液供給管96と、めっき液供給管96を囲うように設けられためっき液温調管97とを有している。めっき液温調管97は、めっき液供給管96の先端側をほぼカバーしているが、めっき液供給管96は、めっき液温調管97よりも上流側(めっき液貯留タンク91との接続側)に突出して延びている。めっき液供給管96の先端部には、めっき液を下方に向かってウエハW上に吐出するノズルチップ96aが設けられている。
【0054】
めっき液温調管97は、所定の温度に加熱調節された温調流体、例えば温調水が内部を流通することによって、めっき液供給管96内を流れるめっき液の温度変化または温度低下を抑止するものである。これにより、めっき液の性能を最大限に引き出しためっき処理が行われ、めっき皮膜の膜質を高めることができる。めっき液温調管97は、薬液温調管53と同様に、内管および外管を備えた二重管構造を有し、内管内を流通した温調水が先端部で折り返して外管内を流通するように構成されており、これにより、めっき液温調管97内を流通する温調水の温度を安定させることができる。
【0055】
なお、めっき液温調管97および薬液温調管53は、外管内を流通した温調水が先端部で折り返して内管内を流通するように構成してもよい。めっき液温調管97および薬液温調管53を流通される温調水は、循環させてもよく、流通後に廃棄されるようにしてもよい。また、めっき液温調管97および薬液温調管53の周囲にガラスウール等の保温材を設け、めっき液温調管97および薬液温調管53の保温性を高めることも好ましい。
【0056】
加熱源94は、めっき液温調管97よりも突出するめっき液供給管96の上流側に設けられており、吸引機構95は、めっき液供給管96の加熱源94よりもさらに上流側に設けられている。加熱源94は熱伝導率の高い材料で構成されることが好ましい。加熱源94およびめっき液温調管97は、めっき液供給管96内を流通するめっき液の温度を調節するためのめっき液温調機構を構成する。このめっき液温調機構は、図示しない温度制御システムによってめっき液を設定された温度に調節するように働く。なお、常温のめっき液を例えば60〜80℃に加熱するためには、加熱源94またはめっき液温調機構における熱交換の長さを十分にとる必要がある。加熱源94で温められためっき液が、めっき液温調管97によってノズルチップ96aから吐出されるまで冷やされないように保温されることとなる。
【0057】
図9はめっき液ノズル51cのめっき液の供給動作を説明するための図であるが、吸引機構95は、図9(a)に示すように、めっき液ノズル51cからのウエハWへのめっき液の供給される際に停止した状態となり、図9(b)に示すように、めっき液ノズル51cからのウエハWへのめっき液の供給が停止された際に稼動し、図9(c)に示すように、めっき液供給管96内のめっき液を、少なくとも加熱源94を通過するまでめっき液貯留タンク91に向かって吸引して停止するように構成されている。吸引機構95により吸引されためっき液は、めっき液供給管96に分岐接続された分岐管98内に送られてめっき液供給管96内の上流側に戻される。このような構成により、使用前のめっき液の劣化が抑止されるとともに、めっき液の使用量を低く抑えることができる。
【0058】
ノズル部51は、ノズル格納室50の外壁を構成する壁部50aに設けられた環状をなすノズル保持部材54に保持されている。ノズル保持部材54は、壁部50aに形成された挿通孔57を閉塞するように、かつ、上下方向にスライド可能に設けられており、外周に3枚の板状部材54a、54b、54cを所定の間隔をあけて有している。一方、壁部50aの挿通孔57の縁部には、板状部材54a、54b、54cと厚さ方向に密封的に係合する係合部50bが形成されており、板状部材54a、54b、54cと係合部50bとが密封的に係合することにより、ノズル格納室50内の雰囲気が外部に漏れ難くなっている。
【0059】
ノズル保持部材54には、ノズル格納室50の外側に略L字型のアーム55を介して上記ノズル昇降機構56aが接続されており、このノズル昇降機構56aにより、ノズル保持部材54を介してノズル部51が昇降される。また、ノズル保持部材54には、ノズル格納室50の内側に、ノズル部51を囲繞する蛇腹状の伸縮部54dが設けられている。ノズル部51は、上記ノズルスライド機構56bにより水平方向にスライド可能であり、ノズル部51のスライドに伴って伸縮部54dが伸縮する。
【0060】
ノズル格納室50とアウターチャンバ43との境界の壁部には、ノズル部51を出入りさせるための窓部43aが設けられており、この窓部43aは、扉機構43bによって開閉自在となっている。ノズル部51は、窓部43aが開放され、ノズル昇降機構56aによって窓部43aと対応する高さに調整された状態になると、ノズルスライド機構56bによって先端側部がアウターチャンバ43の内外に進退可能となる。
【0061】
図10に示すように、ノズル部51は、最大限退避すると、実線に示すように、先端側部がノズル格納室50内に格納された状態となり(実線参照)、最大限進出すると、ノズルチップ96a、52aがウエハWの略中心に配置された状態となる(仮想線参照)。また、ノズル部51は、ノズルチップ96a、52aがインナーカップ47内に配置された状態で、ノズル昇降機構56aにより昇降することで、ノズルチップ96a、52aの先端とウエハWとの距離が調整され、ノズルスライド機構56bによりノズルチップ96a、52aがウエハWの略中心と周縁との間で直線的にスライドすることで、ウエハWの所望の径方向位置にめっき液等を供給することができる。
【0062】
なお、ノズル部51の表面には、ウエハWの洗浄処理に使用される酸性の薬液およびアルカリ性のめっき液に対する耐食性に優れた樹脂、例えば、フッ素樹脂によるコーティングを施しておくことが好ましく、ノズル格納室50の内壁やアウターチャンバ43の内壁、アウターチャンバ43内に配置される下部テーブル48等の種々の部品についても、このようなコーティングを施しておくことが好ましい。また、ノズル格納室50には、ノズル部51の先端部を洗浄する洗浄機構を設けておくことも好ましい。
【0063】
無電解めっきシステム1では、無電解めっきユニット(PW)12内よりもウエハ受渡ユニット(TRS)16および主ウエハ搬送機構18が設けられたクリーンルーム内のほうが陽圧に保持され、クリーンルーム内よりもホットプレートユニット(HP)19および冷却ユニット(COL)22内のほうが陽圧に保持されている。これにより、無電解めっきユニット(PW)12内の雰囲気およびパーティクルが、クリーンルーム内に流入してしまうことが防止され、クリーンルーム内の雰囲気およびパーティクルが、ホットプレートユニット(HP)19および冷却ユニット(COL)22内に流入してしまうことが防止される。
【0064】
次に、無電解めっきシステム1におけるウエハWの処理工程について説明する。
図11は無電解めっきシステム1におけるウエハWの処理工程の概略を示すフローチャートであり、図12は無電解めっき装置12におけるウエハWの処理工程の概略を示すフローチャートである。
【0065】
最初に、搬送ロボットやオペレータ等によって、処理前のウエハWが収納されたフープFがイン・アウトポート4の載置台6上の所定位置に載置される(ステップ1)。次に、搬送ピック11により、フープFからウエハWが1枚ずつ取り出され、取り出されたウエハWが2つのウエハ受渡ユニット(TRS)16のいずれかに搬送される(ステップ2)。
【0066】
搬送ピック11によりウエハ受渡ユニット(TRS)16に搬送されたウエハWは、主ウエハ搬送装置18の搬送アーム34〜36のいずれか、例えば、搬送アーム34によりウエハ受渡ユニット(TRS)16上のウエハWを複数のホットプレートユニット(HP)19のいずれかに搬送される。ウエハWは、ホットプレートユニット(HP)19においてプリベーク処理され(ステップ3)、これにより、Cu配線を防食するためにウエハW上に設けられた有機系膜が昇華される。そして、主ウエハ搬送装置18によりホットプレートユニット(HP)19内のウエハWが複数の冷却ユニット(COL)22のいずれかに搬送され、ウエハWに冷却処理が施される(ステップ4)。
【0067】
冷却ユニット(COL)22でのウエハWの冷却処理が終了すると、主ウエハ搬送装置18により、冷却ユニット(COL)22内のウエハWが複数の無電解めっきユニット(PW)12のいずれかに搬送され、ウエハWにめっき処理が施される(ステップ5)。この際の詳細な手順は後述する。
【0068】
無電解めっきユニット(PW)12でのウエハWの無電解めっき処理が終了すると、主搬送装置18によりウエハWがホットプレートユニット(HP)19に搬送され、ホットプレートユニット(HP)19でウエハWがポストベーク処理される(ステップ6)、これにより、ウエハW上の配線部に被覆されためっき膜に含有する有機物を昇華させるとともに、ウエハW上の配線部とめっき膜との付着性を高める。次いで、主ウエハ搬送装置18によりホットプレートユニット(HP)19内のウエハWが冷却ユニット(COL)22に搬送され、ウエハWが冷却処理される(ステップ7)。
【0069】
冷却ユニット(COL)22でのウエハWの冷却処理が終了すると、主ウエハ搬送装置18によりウエハWがウエハ受渡ユニット(TRS)16に搬送される(ステップ8)。そして、搬送ピック11によりウエハ受渡ユニット(TRS)16に載置されたウエハWが受け取られ、そのウエハWが収納されていたフープFの元のスロットに収納される(ステップ9)。
【0070】
次に、上記ステップ5の無電解めっきユニット(PW)12でのウエハWのめっき処理の手順について詳細に説明する。
【0071】
まず、主ウエハ搬送装置18により冷却ユニット(COL)22から搬送されてきたウエハWが無電解めっきユニット(PW)12内に搬入される(ステップ5−1)。この際には、ハウジング42に設けられた第1シャッター44およびアウターチャンバ43に設けられた第2シャッター45が開にされ、窓部44aおよび窓部45aが開放されるとともに、インナーカップ47は退避位置に下降され、アンダープレート48は回転プレート61に近接した位置に降下した状態とされる。この状態で、主ウエハ搬送装置18のいずれかの搬送アームをアウターチャンバ43内に進入させ、スピンチャック46に設けられた載置ピン63にウエハWを受け渡し、押圧ピン64によりウエハWを支持する。その後、搬送アームをアウターチャンバ43から退出させ、第1シャッター44および第2シャッター45が窓部44aおよび窓部45aを閉塞した状態とする。
【0072】
なお、このような一連の動作が終了する前に、薬液ノズル51aの薬液温調管53内およびめっき液ノズル51cのめっき液温調管97内に温調水を循環させて、薬液ノズル51aおよびめっき液ノズル51cの温度を調整しておくことが好ましい。
【0073】
次に、窓部43aが開放され、ノズル部51の先端側部がアウターチャンバ43内に進入してウエハW上に配置される。そして、薬液ノズル51aによりウエハW上に純水が供給されて、ウエハWのプリウエット処理が行われる(ステップ5−2)。ウエハWのプリウエット処理は、例えば、ウエハWを静止またはゆっくりした回転数で回転させた状態でウエハW上に処理液、ここでは純水のパドルを形成し、所定時間保持したり、ウエハWを所定の回転数で回転させた状態でノズル部51、ここでは薬液ノズル51aから所定量の純水をウエハWに吐出しながら、薬液ノズル51aのノズルチップ52aをウエハWの中心部と周縁部との間で直線的にスキャンさせるように、ノズル部51を移動させたりして行われる。後述するウエハWの洗浄処理、リンス処理、無電解めっき処理および乾燥処理も同様に、このような方法で行うことができる。ウエハWの回転数も、洗浄処理や無電解めっき処理等の処理条件によって適宜選定される。
【0074】
ウエハWのプリウエット処理が終了して、スピンチャック46の回転によりウエハWに付着した純水がある程度振り切られると、薬液ノズル51aによりウエハW上に薬液貯留タンク71からの薬液が供給され、ウエハWの前洗浄処理が行われる(ステップ5−3)。これにより、ウエハWの配線部に付着していた酸化膜が除去される。ウエハWから振り切られたり流れ落ちたりした薬液は、ドレイン85から排液され、再利用または廃棄される。
【0075】
ウエハWの前洗浄処理が終了すると、薬液ノズル51aによりウエハW上に純水が供給され、ウエハWのリンス処理が行われる(ステップ5−4)。ウエハWのリンス処理中またはリンス処理後には、アンダープレート48を上昇させてウエハWに近接させ、処理流体供給口81から所定の温度に加熱された純水を供給して、ウエハWをその温度に加熱し温度制御する(ステップ5−5)。ここで、アンダープレート48、処理流体供給口81から供給される純水、加熱源94、およびめっき液温調管97を流通する温調水の温度は同一に設定することが望ましい。めっき反応は温度に敏感であり、ウエハW面内で温度均一性が悪いと、後述する無電解めっき処理において、析出しためっき膜の膜厚に直接影響を及ぼすためである。
【0076】
ウエハWのリンス処理が終了して、スピンチャック46の回転によりウエハWに付着した純水がある程度振り切られると、インナーカップ47を処理位置に上昇させる。そして、アンダープレート48により加熱され温度制御されたウエハW上に、めっき液貯留タンク91からのめっき液がめっき液ノズル51cにより供給され、ウエハWの無電解めっき処理が行われる(ステップ5−6)。
【0077】
無電解めっき処理においては、ウエハWを所定の温度まで上昇させた後にめっきプロセスを開始するよりも、ウエハWを所定の温度まで上昇させる途中でめっきプロセスを開始したほうが、析出しためっき膜のモフォロジーが良くなる傾向にある。このため、めっき液ノズル51cによってウエハWにめっき液を供給するタイミングは、ウエハWの温度が上昇し始めてから所定の温度に達する前が好ましい。換言すれば、めっき液の供給開始時よりもめっき液の供給終了時のほうがウエハWの温度が高いことが好ましい。
【0078】
無電解めっき処理の際には、めっき液ノズル51cのめっき液温調管97内を通流する温調水によって、めっき液供給管96内を流通するめっき液を所定の温度に保持することができるため、ウエハW上に供給されるめっき液の温度低下が防止され、所定の温度、例えば60〜80℃程度のめっき液によりウエハW上の配線部に無電解めっきを施すことができる。洗浄処理の際にも同様に、薬液ノズル51aの薬液温調管53内を流通する温調水によって、薬液供給管52内を流通する薬液を所定の温度に保持することができるため、ウエハW上に供給される薬液の温度低下が防止され、所定の温度の薬液によりウエハWを洗浄することができる。
【0079】
めっき液ノズル51cからのウエハW上へのめっき液の供給が終了すると、吸引機構95によりめっき液ノズル51c内のめっき液を吸引してめっき液貯留タンク91へ戻す(ステップ5−7)。具体的には、上記図9B、9Cに示すように、吸引機構95をONにし、めっき液供給管96内を流通するめっき液を、少なくとも加熱源94を通過するまでめっき液貯留タンク91に向かって吸引した後、吸引機構95をOFFにする。これにより、めっき液供給管96内を通過するめっき液が必要以上に加熱し続けられてしまうことが防止されるため、めっき液供給管96内の劣化しためっき液がウエハW上に供給されるおそれがない。あるいは、ウエハWにめっき液を供給する前にめっき液供給管96内の劣化しためっき液を廃棄する必要がなくなり、めっき液の劣化が抑止されてめっき液のランニングコストを高めることができる。
【0080】
ウエハWの無電解めっき処理が終了すると、アンダープレート48の処理流体供給口81からの加熱された純水の供給が停止されるとともに、インナーカップ47が退避位置に下降する。そして、薬液ノズル51aによりウエハW上に薬液貯留タンク71からの薬液が供給され、ウエハWの後洗浄処理が行われる(ステップ5−8)。これにより、ウエハW上に付着していためっき液の残渣が除去されてコンタミネーションが防止される。ウエハWから振り切られたり流れ落ちたりした薬液は、ドレイン85から排液され、再利用または廃棄される。
【0081】
ウエハWの後洗浄処理が終了すると、薬液ノズル51aによりウエハW上に純水が供給されて、ウエハWのリンス処理が行われる(ステップ5−9)。リンス処理時には、最初に薬液ノズル51a内に残留していた薬液が吐出されて薬液ノズル51a内の洗浄が同時に行われる。薬液ノズル51aおよび薬液供給機構70は、無電解めっき処理後のウエハW上に薬液および純水を供給する後処理液供給機構を構成する。
【0082】
なお、リンス処理においては、薬液ノズル51aからの純水の供給を一時的に停止してウエハWを高速回転させ、ウエハW上の純水を一旦除去した後に、ウエハWの回転数を戻して再びウエハW上に純水を供給するという手順を繰り返して行ってもよい。また、リンス処理は、薬液温調管53内に温調水を流した状態で行ってもよく、温調水の流れを止めて行ってもよい。
【0083】
リンス処理時またはリンス処理後には、アンダープレート48を下降させてウエハWから離間させる。そして、リンス処理が完全に終了すると、スピンチャック46によってウエハWを回転させるとともに、薬液ノズル51aからウエハW上に窒素ガスを供給してウエハWの乾燥処理を行う(ステップ5−10)。なお、薬液ノズル51aからウエハW上に窒素ガスを供給した際に、最初に薬液ノズル51a内に残っている純水がウエハW上に吐出されるが、ウエハW上には純水の液膜が残っているために、供給された窒素ガスに純水が混じっていても、それが原因でウエハWの表面にウォーターマークが発生することはない。
【0084】
また、乾燥処理の際には、下降したアンダープレート48の処理流体供給口81からウエハWの裏面に窒素ガスを供給するとともに、アンダープレート48が再び上昇してウエハWに近接し、ウエハWの裏面を乾燥する。ここで、アンダープレート48を一旦下降させてから再び上昇させるのは、ウエハWの回転の圧力変動により、処理流体供給路87内に残存していた純水が吐出してウエハWの裏面を濡らしてしまうことを防止するとともに、処理流体供給口81からウエハWの裏面に窒素ガスを供給した際に、処理流体供給路87内に残存していた純水が急激に吐出してウエハWが損傷してしまうことを防止するためである。しかも、これにより、ウエハWの裏面へのウォーターマークの発生も防止される。
【0085】
なお、ウエハWの乾燥処理は、例えば、ウエハWを所定の時間低速回転してから所定の時間高速回転させることにより行うことができる。
【0086】
ウエハWの乾燥処理が終了すると、ウエハWが無電解めっきユニット(PW)12から搬出される(ステップ5−11)。具体的には、まず、必要に応じてノズル昇降機構56aによりノズル部51が所定の高さに移動され、ノズルスライド機構56bによりノズル部51の先端部分がノズル格納室50内に格納され、窓部43aが閉じられる。次に、アンダープレート48が降下されてウエハWから離間され、その状態でウエハWが押圧ピン64による押圧から開放されて載置ピン63のみで支持される状態とされる。続いて、窓部44aおよび窓部45aが開放され、いずれかの搬送アームがアウターチャンバ43内に進入し、搬送アームにより載置ピン63に支持されたウエハWが受け取られる。その後、ウエハWを受け取った搬送アームが無電解めっきユニット(PW)12から退出し、窓部44aおよび窓部45aが閉塞される。
【0087】
次に、ウエハWの温度制御のためのアンダープレートの他の例について説明する。上記アンダープレート48では、ウエハWと近接した近接位置およびウエハWと離間した離間位置の2箇所のみで停止させ、近接位置において温調流体をウエハWの裏面に供給してウエハWの温度制御を行うようにしたが、図13に示すように、ヒータ99を内蔵したアンダープレート48′を用いることもできる。これにより、ウエハWとアンダープレート48′との間の距離を任意に設定してウエハWの温度を制御することができる。これにより、ウエハWの温度および温度上昇の速度等を細かく制御することができる。したがって、よりモフォロジーの良いめっき膜が得られる温度条件でウエハWを処理することが可能となる。なお、アンダープレート48のウエハWに対しての昇降は、複数の段階に分けて行われるようにしてもよく、近接位置と離間位置との間で一定の速度で行われるようにしてもよい。
【0088】
また、アンダープレートとして流体供給口とヒータとを両方備えたものを用いれば、アンダープレートを上昇させてウエハWから所定の距離の位置で停止させ、最初にヒータの輻射熱でウエハWを所定の温度まで加熱し、その後、処理流体供給口81からウエハWに加熱された純水を供給することで、さらにウエハWの温度を上昇させてからめっき膜を形成するようにすることもできる。
【0089】
次に、上記無電解めっきユニット(PW)の変形例について説明する。
図14は、上記無電解めっきユニット(PW)の変形例を示す断面図である。図14に示す 無電解めっきユニット(PW)12′は、例えば、アウターチャンバ43内に、スピンチャック46に支持されたウエハW上と対向するトッププレート49を設けた構成を有している。トッププレート49は、枢軸100の下端に接続されており、モータ102によって回転可能となっている。枢軸100は、水平板101の下面に回転自在に支持され、水平板101は、アウターチャンバ43の上壁に固定されたエアシリンダ等からなる昇降機構103により昇降可能である。枢軸100およびトッププレート49には、スピンチャック46に支持されたウエハW上に純水を供給することができる純水供給孔105が設けられている。
【0090】
スピンチャック46といずれかの搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われる際には、トッププレート49は、搬送アーム34と衝突しないようにアウターチャンバ43の上壁に近い位置に保持される。ウエハW上の洗浄処理または無電解めっき処理を行う際には、薬液ノズル51aまたはめっき液ノズル51cによってウエハW上に薬液またはめっき液が供給されてパドルが形成された後に、トッププレート49を降下させてパドルに接触させ、ウエハW上とトッププレート49の間に薬液層またはめっき液層を形成する。この際に、薬液またはめっき液の温度が低下しないように、トッププレート49には図示しないヒータを内蔵させることが好ましい。また、ウエハWのリンス処理は、例えば、純水供給孔105からウエハWに純水を供給しながら、トッププレート49とウエハWを所定の回転数で回転させることによって行うことができる。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態ではアンダープレートを昇降するようにしたが、アンダープレートを所定高さに固定しておき、スピンチャックを昇降させることによって、スピンチャックに支持された基板とアンダープレートとの間隔をめっき処理の進行に合わせて調整するように構成してもよい。すなわち、アンダープレートとスピンチャックに支持された基板とは、一方が他方に対して相対的に昇降可能であればよい。また、上記実施形態では、基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、それに限らず、例えばLCD用ガラス基板やセラミック基板のような他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
12;無電解めっきユニット(PW)(無電解めっき装置)
46;スピンチャック(支持部)
48;アンダープレート(基板温調部材)
81;処理流体供給口
91;めっき液貯留タンク(めっき液貯留部)
94;加熱源
95;吸引機構
96;めっき液供給管
97;めっき液温調管
W;ウエハ(基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置、無電解めっき方法およびコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、基板としての半導体ウエハ上に形成される配線には、半導体デバイスの動作速度を向上させるためにCu(銅)が用いられつつある。このようなCu配線の基板上への形成は通常、絶縁膜に配線を埋め込むためのビアおよびトレンチをエッチングにより形成し、それらの中に銅配線を埋め込むダマシン法により行われる。
【0003】
このようなCu配線を有する半導体デバイスは、近時、益々微細化および高集積化してきており、そのため電流密度が増加して電流によるCu原子の輸送、いわゆるエレクトロマイグレーションが増大し、配線の断線を引き起こして信頼性の低下を招くおそれがある。
【0004】
このため、キャップメタルと称される金属めっき膜を無電解めっきによってCu配線の表面に被覆して、半導体デバイスのエレクトロマイグレーション耐性を向上させる試みがなされている。無電解めっき方法としては、めっき液を貯留した層に被めっき物を浸漬する方法が知られているが、このような方法を基板上に形成された配線のめっき処理に採用すると、基板である半導体ウエハの下面(裏面)にもめっき液が付着してコンタミネーションの原因となる。
【0005】
そこで、コンタミネーションを抑止しつつ基板上の配線に無電解めっきを施す装置として、基板を支持するチャックと、チャックに支持された基板を所定の温度に加熱する下部プレートと、所定の温度に加熱されためっき液を内部に流通させて、下部プレートにより加熱された基板上に供給するめっき液供給管(処理液流入部)とを具備した無電解めっき装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
ところで、無電解めっき処理では一般的に、めっき液を50℃以上沸点以下の温度で加熱して被めっき物に接触させる必要があるが、めっき液は、加熱されることで化学的な不安定さが増して、その後の時間の経過等により変質して劣化してしまうため、極力低い加熱温度、例えば60〜80℃程度で基板上に供給されることが好ましい。
【0007】
しかしながら、上記の無電解めっき装置は、めっき液供給管内を通過する間の温度低下を考慮してめっき液の加熱温度を比較的高く設定せざるを得ず、しかも、めっき液の供給停止等によってめっき液供給管内の通過時間にもばらつきが生じる。このため、めっき液の温度を高く保持しておく必要があり、めっき液を高品質に保持することが困難である。
【0008】
また、無電解めっき技術においては、めっき皮膜の膜質を良好なものとするために、めっき処理を行う際の基板の温度管制御を厳密に行うことが好ましいが、上記特許文献1の無電解めっき装置では必ずしも十分な温度制御を実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−124235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、良好な膜質のめっき皮膜を形成することができる無電解めっき装置および無電解めっき方法を提供することを目的とする。
さらに、このような無電解めっき方法を実行することができる制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点では、基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置であって、基板を支持する基板支持部と、基板の表面に供給されるめっき液を貯留するめっき液貯留部と、前記めっき液貯留部からのめっき液を、前記基板支持部に支持された基板の表面に向けて供給するめっき液供給管と、前記めっき液供給管に設けられ、前記めっき液を基板の表面に吐出するめっき液吐出ノズルと、前記基板支持部に支持された基板の裏面側に設けられ、基板の温度を制御するための基板温度制御部材と、前記基板温度制御部材と基板との間に相対的な昇降移動を生じさせる移動機構とを具備し、前記基板温度制御部材は、前記移動機構により基板との間の距離を調節することによって基板の温度を制御するように構成されていることを特徴とする無電解めっき装置を提供する。
【0012】
上記第1の観点において、前記基板温度制御部材は、ヒータを内蔵し、輻射熱により基板を加熱して所定温度に制御するように構成することができる。さらに、基板温度制御部材は、前記ヒータと、基板に加熱された流体を供給する流体供給口との両方を備えていてもよい。この場合に、前記基板温度制御部材は、前記ヒータの輻射熱により基板を加熱し、その後、前記流体供給口から前記ヒータの輻射熱により加熱された基板に、前記加熱された流体を供給し、前記基板の温度をさらに上昇させることができる。また、前記基板温度制御部材は、前記めっき液供給の開始時点の基板の温度よりも、前記めっき液の供給を停止した時点の基板の温度のほうが高くなるように基板の温度を制御することができる。
【0013】
また、上記第1の観点において、基板の表面へのめっき液の供給に先立って基板に所定の液を供給して前処理を行う前処理液供給機構と、基板の表面へのめっき液の供給の後に基板に所定の液を供給して後処理を行う後処理液供給機構をさらに具備する構成とすることができる。
【0014】
本発明の第2の観点では、めっき液貯留部に貯留されためっき液をめっき液供給管およびめっき液吐出ノズルを介して基板の表面に供給して無電解めっきを施す無電解めっき方法であって、基板の裏面側に配置された基板温度制御部材と基板との間の距離を調整して基板の温度を制御する工程と、前記めっき液供給管内を流通するめっき液を基板の表面に供給する工程とを含むことを特徴とする無電解めっき方法を提供する。
【0015】
上記第2の観点において、前記めっき液供給の開始時点の基板の温度よりも、前記めっき液の供給を停止した時点の基板の温度のほうが高くなるように基板の温度を制御するように制御することができる。また、基板の表面へのめっき液の供給に先立って基板の表面に所定の液を供給して前処理を行う工程と、基板の表面へのめっき液の供給の後に基板に所定の液を供給して後処理を行う工程とをさらに含むことができる。
【0016】
本発明の第3の観点では、基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置をコンピュータに制御させる制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第2の観点の無電解めっき方法が行われるように、コンピュータに前記無電解めっき装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の裏面側に基板との間で相対的に昇降可能な基板温度制御部材を設けたので、きめ細かな温度制御が実現され、良好な膜質のめっき皮膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る無電解めっき装置を具備した無電解めっきシステムの概略構造を示す平面図。
【図2】無電解めっきシステムの概略構造を示す側面図。
【図3】無電解めっきシステムの概略構造を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る無電解めっきユニットの概略平面図。
【図5】図4の無電解めっきユニットの概略断面図。
【図6】図4の無電解めっき装置に設けられたノズル部およびノズル部にめっき液等の処理流体を送るための処理流体供給システムの概略構成を示す図。
【図7】図4の無電解めっき装置に設けられた薬液ノズルの概略構造を示す断面図。
【図8】図4の無電解めっき装置に設けられためっき液ノズルの概略構造を示す断面図である。
【図9】図8のめっき液ノズルのめっき液の供給動作を説明するための図。
【図10】図4の無電解めっきユニットに設けられたノズル部の動作態様(移動態様)を説明するための図。
【図11】図1の無電解めっきシステムにおけるウエハの処理工程の概略を示すフローチャート。
【図12】図4の無電解めっき装置におけるウエハの処理工程の概略を示すフローチャート。
【図13】無電解めっきユニットに用いられるアンダープレートの他の例を示す図。
【図14】無電解めっきユニットの変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る無電解めっき装置を搭載した無電解めっきシステムの概略構造を示す平面図、図2はその側面図、図3はその断面図である。
【0020】
無電解めっきシステム1は、処理部2と搬入出部3とを備えている。処理部2は、処理対象基板としての半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wに無電解めっき処理および無電解めっき処理前後の熱的処理を施すものである。搬入出部3は、処理部2へのウエハWの搬入および処理部2からのウエハWの搬出を行う。ウエハWとしては、その表面に金属からなる配線部(図示せず)を有するものが用いられ、処理部2はこの配線部に無電解めっき処理を施す。
【0021】
搬入出部3は、ウエハ収容容器であるフープ(FOUP;front opening unified pod)Fを載置するための載置台6が設けられたイン・アウトポート4と、載置台6に載置されたフープFと処理部2との間でウエハWの受け渡しを行うウエハ搬送機構7が設けられたウエハ搬送部5から構成されている。
【0022】
フープFは、複数枚、例えば25枚のウエハWを水平姿勢で鉛直方向に積層した状態で収容可能であり、一側面にウエハWを搬入出するための搬入出口を有し、搬入出口を開閉可能な蓋体が設けられている。フープF内には、ウエハWを収容するための複数のスロットが上下方向に沿って形成されており、各スロットは、ウエハWを一枚ずつ、その表面(配線部が形成された面)を上側にした状態で収容する。
【0023】
イン・アウトポート4の載置台6は、フープFが無電解めっきシステム1の幅方向(Y方向)に複数個、例えば3個並列に載置されるようになっており、フープFが、搬入出口を有する側面をイン・アウトポート4とウエハ搬送部5との境界壁8側に向けて載置される。境界壁8には、フープFの載置場所に対応する位置に窓部9が形成され、ウエハ搬送部5側に窓部9を開閉するシャッター10が設けられている。
【0024】
シャッター10は、窓部9の開閉と同時に、フープFに設けられた蓋体の開閉をも行えるようになっている。シャッター10は、フープFが載置台6の所定位置に載置されていないときに動作しないように、インターロックを有して構成されることが好ましい。シャッター10が窓部9を開放状態としてフープFの搬入出口とウエハ搬送部5とが連通すると、ウエハ搬送部5に設けられたウエハ搬送機構7のフープFへのアクセスが可能となる。なお、窓部9の上部には図示しないウエハ検査機構が設けられており、フープF内に収納されたウエハWの枚数および状態をスロット毎に検出することができるようになっている。このようなウエハ検査機構は、シャッター10に装着させることも可能である。
【0025】
ウエハ搬送部5に設けられたウエハ搬送機構7は、ウエハWを保持する搬送ピック11を有し、Y方向に移動可能である。搬送ピック11は、無電解めっきシステム1の長さ方向(X方向)に沿った進退動作、無電解めっきシステム1の高さ方向(Z方向)に沿った昇降動作、およびX−Y平面内(θ方向)での回転動作が可能となっている。これにより、ウエハ搬送機構7は、載置台6に載置された任意のフープFと対向する位置に移動して、搬送ピック11を対向しているフープFの任意の高さのスロットにアクセスさせることができ、かつ処理部2に設けられた後述するウエハ受渡ユニット(TRS)16と対向する位置に移動して、搬送ピック11をウエハ受渡ユニット(TRS)16にアクセスさせることができるようになっている。すなわち、ウエハ搬送機構7は、フープFと処理部2との間でウエハWを搬送するように構成されている。
【0026】
処理部2は、ウエハ搬送部5との間でウエハWの受け渡しを行うためにウエハWを一時的に載置するウエハ受渡ユニット(TRS)16と、ウエハWにめっき処理を施す無電解めっきユニット(PW)12と、無電解めっきユニット(PW)12でのめっき処理前後のウエハWを加熱処理するホットプレートユニット(HP)19と、ホットプレートユニット(HP)19で加熱されたウエハWを冷却する冷却ユニット(COL)22と、これらのユニット間でウエハWの搬送を行う主ウエハ搬送機構18とを備えている。また、処理部2の無電解めっきユニット(PW)12の下側には、無電解めっきユニット(PW)12に送液するめっき液等の所定の流体を貯蔵する流体貯蔵ユニット(CTU)25が設けられている。なお、本実施形態の無電解めっき装置は、無電解めっきユニット(PW)12と流体貯蔵ユニット(CTU)25に設けられた後述する処理流体供給機構60とにより構成される。
【0027】
ウエハ受渡ユニット(TRS)16は、2つ設けられており、これらは、処理部2の略中央部に設置された主ウエハ搬送機構18とウエハ搬送部5との間に、上下2段に積み重ねられている。下段のウエハ受渡ユニット(TRS)16は、搬入出部3から処理部2に搬送されるウエハWを載置するために用いられ、上段のウエハ受渡ユニット(TRS)16は、処理部2から搬入出部3へ搬送されるウエハWを載置するために用いられる。
【0028】
ホットプレートユニット(HP)19は、ウエハ受渡ユニット(TRS)16のY方向両側にそれぞれ、上下4段に積み重ねられて設けられている。冷却ユニット(COL)22は、ホットプレートユニット(HP)19と隣接するように、主ウエハ搬送機構18のY方向両側にそれぞれ、上下4段に積み重ねられて設けられている。
【0029】
無電解めっきユニット(PW)12は、冷却ユニット(COL)22および主ウエハ搬送機構18に隣接するように、Y方向に2列に並んで、かつ、上下2段に積み重ねられて設けられており、Y方向に並列する無電解めっきユニット(PW)12同士は、その境界をなしている壁面41に対してほぼ対称な構造を有している。無電解めっきユニット(PW)12の詳細については後に説明する。
主ウエハ搬送機構18は、Z方向に延在する垂直壁27、28およびこれらの間の側面開口部29を有する筒状支持体30と、その内側に筒状支持体30に沿ってZ方向に昇降自在に設けられたウエハ搬送体31とを有している。筒状支持体30は、モータ32の回転駆動力によって回転可能であり、それに伴ってウエハ搬送体31も一体的に回転するように構成されている。
【0030】
ウエハ搬送体31は、搬送基台33と、搬送基台33に沿って前後に移動可能な3本の搬送アーム34、35、36とを備えており、搬送アーム34、35、36は、筒状支持体30の側面開口部29を通過可能な大きさを有している。これら搬送アーム34、35、36は、搬送基台33内に内蔵されたモータおよびベルト機構によってそれぞれ独立して進退移動することが可能となっている。ウエハ搬送体31は、モータ37によってベルト38を駆動させることにより昇降する。なお、参照符号39は駆動プーリー、40は従動プーリーである。
処理部2の天井には、各ユニットおよび主ウエハ搬送機構18に清浄な空気をダウンフローするためのフィルターファンユニット(FFU)26が設けられている。
【0031】
無電解めっきシステム1の各構成部は、CPUを備えたプロセスコントローラ111に接続されて制御されるように構成されている。プロセスコントローラ111には、工程管理者が無電解めっきシステム1の各部または各ユニットを管理するためのコマンドの入力操作等を行うキーボードや、各部または各ユニットの稼動状況を可視化して表示するディスプレイなどからなるユーザインターフェース112と、無電解めっきシステム1で実行される各処理をプロセスコントローラ111の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等を記録したレシピが格納された記憶部113とが接続されている。
【0032】
そして、必要に応じて、ユーザインターフェース112からの指示等を受けて、任意のレシピを記憶部113から呼び出してプロセスコントローラ111に実行させることで、プロセスコントローラ111の制御下で無電解めっきシステム1において所望の各処理が行われる。また、前記レシピは、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、不揮発性メモリ等の読み出し可能な記憶媒体に格納されたものを利用したり、または、無電解めっきシステム1の各部もしくは各ユニット間あるいは外部の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0033】
次に、無電解めっきユニット(PW)12の詳細について説明する。
図4は本実施形態に係る無電解めっき装置(無電解めっきユニット)12の概略平面図であり、図5はその概略断面図である。
【0034】
無電解めっきユニット(PW)12は、ハウジング42と、ハウジング42内に設けられたアウターチャンバ43と、アウターチャンバ43内に設けられたインナーカップ47と、インナーカップ47内に設けられた、ウエハWを支持するスピンチャック(支持部)46と、ウエハWの温度を調節するためのアンダープレート(基板温調部材)48と、スピンチャック46に支持されたウエハW上にめっき液や洗浄液等の液体および気体を供給するノズル部51とを備えている。ノズル部51には、流体貯蔵ユニット(CTU)25に設けられためっき液や他の流体を供給するための後述する処理流体供給機構60が接続されている。スピンチャック46は、ウエハWの表面を上にした状態でウエハWを保持するようになっている。また、アンダープレート48は、スピンチャック46に支持されたウエハWの裏面(下面)と対向するように設けられ、昇降可能となっている。
【0035】
ハウジング42の側壁には窓部44aが形成されており、窓部44aは第1シャッター44により開閉自在となっている。搬送アーム34、35、36のそれぞれは、窓部44aを通してウエハWの無電解めっきユニット(PW)12への搬入および無電解めっきユニット(PW)12からの搬出を行うようになっている。窓部44aは、ウエハWの搬入出時以外には、第1シャッター44によって閉塞された状態に保たれる。第1シャッター44は、ハウジング42の内部から窓部44aを開閉するようになっている。
【0036】
アウターチャンバ43は、スピンチャック46に支持されたウエハWを囲う高さ位置に、内壁が下方から上方に向かってテーパー状に形成されたテーパー部43cを有している。このテーパー部43cには、ハウジング42の窓部44aに対向するように窓部45aが形成され、窓部45aは第2シャッター45によって開閉自在となっている。搬送アーム34、35、36のそれぞれは、窓部44aおよび窓部45aを通してアウターチャンバ43内外に進退し、スピンチャック46との間でウエハWの受け渡しを行うようになっている。窓部45aは、ウエハWの受け渡し時以外には、第2シャッター45によって閉塞された状態に保たれる。第2シャッター45は、アウターチャンバ43の内部から窓部45aを開閉するようになっている。
【0037】
アウターチャンバ43の上壁には、アウターチャンバ43内に窒素(N2)ガスを供給してダウンフローを形成するためのガス供給部89が設けられている。アウターチャンバ43の底壁には、排気・排液を行うドレイン配管85が設けられている。
【0038】
インナーカップ47は、アウターチャンバ43のテーパー部43cと対応するように、下方から上方に向かってテーパー状に形成されたテーパー部47aを上端部に有し、底壁にドレイン配管88を有している。インナーカップ47は、ガスシリンダー等の昇降機構により、上端がスピンチャック46に支持されたウエハWよりも上側となり、かつ、テーパー部47aがウエハWを囲繞する処理位置(図5において実線で示される位置)と、上端がスピンチャック46に支持されたウエハWよりも下側となる退避位置(図5において仮想線で示される位置)との間で昇降自在となっている。
【0039】
インナーカップ47は、搬送アーム34、35、36のそれぞれがスピンチャック46との間でウエハWの受け渡しを行う際に、各搬送アームの進退を妨げないように退避位置に保持され、スピンチャック46に支持されたウエハWに無電解めっき処理が施される際に処理位置に保持される。したがって、インナーカップ47によりウエハWに供給されためっき液の周囲への飛散が防止される。また、ウエハW上から直接落下しためっき液、あるいはウエハW上を跳ねてインナーカップ47またはインナーカップ47のテーパー部47aにあたっためっき液は下方のドレイン88配管へと導かれる。ドレイン配管88には、図示しないめっき液回収ラインおよびめっき液廃棄ラインが切り替え可能に接続されており、めっき液回収ラインを介してめっき液が回収されるか、またはめっき液廃棄ラインを介して廃棄されるようになっている。
【0040】
スピンチャック46は、水平方向に回転可能な回転筒体62と、回転筒体62の上端部から水平に広がる環状の回転プレート61と、回転プレート61の外縁部に設けられた、ウエハWを載置して支持する載置ピン63と、回転プレート61の外縁部に設けられた、載置ピン63に支持されたウエハWの縁部を押圧してウエハWを支持する押圧ピン64とを有している。
【0041】
搬送アーム34、35、36のそれぞれとスピンチャック46との間のウエハWの受け渡しは、載置ピン63を利用して行われる。載置ピン63は、ウエハWを確実に支持する観点から、少なくとも周方向に3箇所、好ましくは等間隔で設けることが好ましい。
【0042】
押圧ピン64は、搬送アーム34、35、36のそれぞれとスピンチャック46との間でのウエハWの受け渡しを妨げないように、図示しない押圧機構によって回転プレート61の下部に位置する部分を回転プレート61側に押し当てることにより、上端部(先端部)が回転プレート61の外側に移動して傾斜することができるようになっている。押圧ピン64も、ウエハWを確実に支持する観点から、少なくとも周方向に3箇所、好ましくは等間隔で設けることが好ましい。
【0043】
回転筒体62の外周面には、モータ66の駆動によって回転するベルト65が巻きかけられており、これにより、回転筒体62が回転して載置ピン63および押圧ピン64に支持されたウエハWが水平に回転するようになっている。押圧ピン64は、重心の位置が調整されることにより、ウエハWの回転時に、ウエハWを押圧する力が調整されるようになっている。例えば、重心が回転プレート61よりも下側に設けられると、回転プレート61よりも下側の部分に遠心力が掛かって上端部が内側に移動しようとするため、ウエハWを押圧する力が高められる。
【0044】
アンダープレート48は、回転プレート61の上側でかつ載置ピン63および押圧ピン64で囲まれた空間内に配置され、回転筒体62内を貫通して設けられたシャフト67に接続されている。アンダープレート48が接続されたシャフト67は、回転筒体62の下側に設けられた水平板68を介して、エアシリンダ等の昇降機構69に接続されており、この昇降機構69によりアンダープレート48とともに昇降可能となっている。アンダープレート48の上面には、ウエハWの裏面に向かって純水や乾燥ガス等の処理流体を供給する複数の処理流体供給口81が設けられ、アンダープレート48内およびシャフト67内には、純水や乾燥ガス等の処理流体を処理流体供給口81に流通させる処理流体供給路87が設けられている。シャフト67内の処理流体供給路87の一部分には、その周囲に熱交換器84が設けられており、処理流体供給路87を流れる処理流体が、熱交換器84によって所定の温度に加熱されて処理流体供給口81からウエハWの裏面に向かって供給されるように構成されている。
【0045】
アンダープレート48は、スピンチャック46と搬送アーム34、35、36のそれぞれとの間でウエハWの受け渡しが行われる際に、各搬送アームと衝突しないように回転プレート61に近接するように下降し、スピンチャック46に支持されたウエハWにめっき処理が施される際に、ウエハWに近接する図5の仮想線位置まで上昇し、所定の温度に調節された純水等の温調流体を処理流体供給口81からウエハWの裏面に供給してウエハWを加熱し所定の温度に制御する。
【0046】
アウターチャンバ43の側壁には、アウターチャンバ43と連通するようにノズル部格納室50が設けられている。上記ノズル部51は水平に延び、ノズル部格納室50内に挿通されており、ノズル昇降機構56aにより昇降可能となっており、ノズルスライド機構56bによりスライド可能となっている。そして、ノズルスライド機構56bによりノズル部51をスライドさせ、処理時には、図4、5に示すように、ノズル部51の先端部(めっき液等をウエハW上に吐出する側)がノズル格納室50から突出してアウターチャンバ43内のウエハWの上方位置に達するようになっており、温調時には後述するようにノズル部51の先端部がノズル部格納室50に格納されるようになっている。また、ノズル部51は、薬液と純水と窒素ガスとをウエハW上に供給可能な薬液ノズル51aと、乾燥ガスとしての窒素ガスをウエハW上に供給可能な乾燥ノズル51bと、めっき液をウエハW上に供給可能なめっき液ノズル51cとを一体的に有している。
【0047】
次に、処理流体供給機構60について説明する。図6は処理流体供給機構の概略構成を示す図、図7は薬液ノズル51aの概略構成を示す断面図、図8はめっき液ノズル51cの概略構成を示す断面図である。
【0048】
図6に示すように、処理流体供給機構60は、薬液ノズル51aに薬液等を送るための薬液供給機構70と、めっき液ノズル51cにめっき液を送るためのめっき液供給機構90とを有している。
【0049】
薬液供給機構70は、液体貯蔵ユニット(CTU)25に配置された、薬液を所定の温度に加熱調節して貯留する薬液貯留タンク71と、薬液貯留タンク71内の薬液を汲み上げるポンプ73と、ポンプ73によって汲み上げられた薬液を薬液ノズル51aへの送液に切り替えるバルブ74aとを有している。薬液ノズル51aへは、薬液供給機構70による薬液の他、所定の温度に加熱調節された純水および窒素ガスが送られるようになっており、バルブ74a、74b、74cの開閉を切り替えることによって、薬液、純水、窒素ガスのいずれかが選択されて送られるように構成されている。薬液ノズル51aおよび乾燥ノズル51bに送られる窒素ガス供給源は例えば同一のものとすることができ、乾燥ノズル51bへの窒素ガスの供給は、別途設けたバルブ74dの開閉によって制御することができる。
【0050】
めっき液供給機構90は、液体貯蔵ユニット(CTU)25に配置された、めっき液を貯留するめっき液貯留タンク(めっき液貯留部)91と、めっき液貯留タンク91内のめっき液を汲み上げるポンプ92と、ポンプ92によって汲み上げられためっき液をめっき液ノズル51cへの送液に切り替えるバルブ93と、バルブ93を通過してめっき液ノズル51cに送られるめっき液を所定の温度に加熱する加熱源94と、めっき液ノズル51cからのウエハW上へのめっき液の供給が停止された際に、めっき液ノズル51cに送られためっき液を吸引する吸引機構95とを有している。加熱源94はヒータや熱交換器等で構成され、吸引機構95はアスピレータやポンプ等で構成される。
【0051】
図7に示すように、薬液ノズル51aは、薬液供給機構70から送られた薬液等を導いてウエハW上に供給する薬液供給管52と、薬液供給管52を囲繞するように設けられた薬液温調管53とを有している。薬液温調管53は、薬液供給管52の長さ方向ほぼ全体をカバーしている。薬液供給管52の先端部には、薬液等を下方に向かってウエハW上に吐出するノズルチップ52aが設けられている。
【0052】
薬液温調管53は、所定の温度に加熱調節された温調流体、例えば温調水が内部を流通することによって、薬液供給管52内を流れる薬液等の温度変化または温度低下を抑止するものである。これにより、薬液の性能を最大限に引き出した処理が行われる。薬液温調管53は、内管および外管を備えた二重管構造を有しており、内管内を流通した温調水が先端部で折り返して外管内を流通するように構成されている。これにより、薬液温調管53内を流通する温調水の温度を安定させることができる。
【0053】
図8に示すように、めっき液ノズル51cは、めっき液供給機構90から送られためっき液を導いてウエハW上に供給するめっき液供給管96と、めっき液供給管96を囲うように設けられためっき液温調管97とを有している。めっき液温調管97は、めっき液供給管96の先端側をほぼカバーしているが、めっき液供給管96は、めっき液温調管97よりも上流側(めっき液貯留タンク91との接続側)に突出して延びている。めっき液供給管96の先端部には、めっき液を下方に向かってウエハW上に吐出するノズルチップ96aが設けられている。
【0054】
めっき液温調管97は、所定の温度に加熱調節された温調流体、例えば温調水が内部を流通することによって、めっき液供給管96内を流れるめっき液の温度変化または温度低下を抑止するものである。これにより、めっき液の性能を最大限に引き出しためっき処理が行われ、めっき皮膜の膜質を高めることができる。めっき液温調管97は、薬液温調管53と同様に、内管および外管を備えた二重管構造を有し、内管内を流通した温調水が先端部で折り返して外管内を流通するように構成されており、これにより、めっき液温調管97内を流通する温調水の温度を安定させることができる。
【0055】
なお、めっき液温調管97および薬液温調管53は、外管内を流通した温調水が先端部で折り返して内管内を流通するように構成してもよい。めっき液温調管97および薬液温調管53を流通される温調水は、循環させてもよく、流通後に廃棄されるようにしてもよい。また、めっき液温調管97および薬液温調管53の周囲にガラスウール等の保温材を設け、めっき液温調管97および薬液温調管53の保温性を高めることも好ましい。
【0056】
加熱源94は、めっき液温調管97よりも突出するめっき液供給管96の上流側に設けられており、吸引機構95は、めっき液供給管96の加熱源94よりもさらに上流側に設けられている。加熱源94は熱伝導率の高い材料で構成されることが好ましい。加熱源94およびめっき液温調管97は、めっき液供給管96内を流通するめっき液の温度を調節するためのめっき液温調機構を構成する。このめっき液温調機構は、図示しない温度制御システムによってめっき液を設定された温度に調節するように働く。なお、常温のめっき液を例えば60〜80℃に加熱するためには、加熱源94またはめっき液温調機構における熱交換の長さを十分にとる必要がある。加熱源94で温められためっき液が、めっき液温調管97によってノズルチップ96aから吐出されるまで冷やされないように保温されることとなる。
【0057】
図9はめっき液ノズル51cのめっき液の供給動作を説明するための図であるが、吸引機構95は、図9(a)に示すように、めっき液ノズル51cからのウエハWへのめっき液の供給される際に停止した状態となり、図9(b)に示すように、めっき液ノズル51cからのウエハWへのめっき液の供給が停止された際に稼動し、図9(c)に示すように、めっき液供給管96内のめっき液を、少なくとも加熱源94を通過するまでめっき液貯留タンク91に向かって吸引して停止するように構成されている。吸引機構95により吸引されためっき液は、めっき液供給管96に分岐接続された分岐管98内に送られてめっき液供給管96内の上流側に戻される。このような構成により、使用前のめっき液の劣化が抑止されるとともに、めっき液の使用量を低く抑えることができる。
【0058】
ノズル部51は、ノズル格納室50の外壁を構成する壁部50aに設けられた環状をなすノズル保持部材54に保持されている。ノズル保持部材54は、壁部50aに形成された挿通孔57を閉塞するように、かつ、上下方向にスライド可能に設けられており、外周に3枚の板状部材54a、54b、54cを所定の間隔をあけて有している。一方、壁部50aの挿通孔57の縁部には、板状部材54a、54b、54cと厚さ方向に密封的に係合する係合部50bが形成されており、板状部材54a、54b、54cと係合部50bとが密封的に係合することにより、ノズル格納室50内の雰囲気が外部に漏れ難くなっている。
【0059】
ノズル保持部材54には、ノズル格納室50の外側に略L字型のアーム55を介して上記ノズル昇降機構56aが接続されており、このノズル昇降機構56aにより、ノズル保持部材54を介してノズル部51が昇降される。また、ノズル保持部材54には、ノズル格納室50の内側に、ノズル部51を囲繞する蛇腹状の伸縮部54dが設けられている。ノズル部51は、上記ノズルスライド機構56bにより水平方向にスライド可能であり、ノズル部51のスライドに伴って伸縮部54dが伸縮する。
【0060】
ノズル格納室50とアウターチャンバ43との境界の壁部には、ノズル部51を出入りさせるための窓部43aが設けられており、この窓部43aは、扉機構43bによって開閉自在となっている。ノズル部51は、窓部43aが開放され、ノズル昇降機構56aによって窓部43aと対応する高さに調整された状態になると、ノズルスライド機構56bによって先端側部がアウターチャンバ43の内外に進退可能となる。
【0061】
図10に示すように、ノズル部51は、最大限退避すると、実線に示すように、先端側部がノズル格納室50内に格納された状態となり(実線参照)、最大限進出すると、ノズルチップ96a、52aがウエハWの略中心に配置された状態となる(仮想線参照)。また、ノズル部51は、ノズルチップ96a、52aがインナーカップ47内に配置された状態で、ノズル昇降機構56aにより昇降することで、ノズルチップ96a、52aの先端とウエハWとの距離が調整され、ノズルスライド機構56bによりノズルチップ96a、52aがウエハWの略中心と周縁との間で直線的にスライドすることで、ウエハWの所望の径方向位置にめっき液等を供給することができる。
【0062】
なお、ノズル部51の表面には、ウエハWの洗浄処理に使用される酸性の薬液およびアルカリ性のめっき液に対する耐食性に優れた樹脂、例えば、フッ素樹脂によるコーティングを施しておくことが好ましく、ノズル格納室50の内壁やアウターチャンバ43の内壁、アウターチャンバ43内に配置される下部テーブル48等の種々の部品についても、このようなコーティングを施しておくことが好ましい。また、ノズル格納室50には、ノズル部51の先端部を洗浄する洗浄機構を設けておくことも好ましい。
【0063】
無電解めっきシステム1では、無電解めっきユニット(PW)12内よりもウエハ受渡ユニット(TRS)16および主ウエハ搬送機構18が設けられたクリーンルーム内のほうが陽圧に保持され、クリーンルーム内よりもホットプレートユニット(HP)19および冷却ユニット(COL)22内のほうが陽圧に保持されている。これにより、無電解めっきユニット(PW)12内の雰囲気およびパーティクルが、クリーンルーム内に流入してしまうことが防止され、クリーンルーム内の雰囲気およびパーティクルが、ホットプレートユニット(HP)19および冷却ユニット(COL)22内に流入してしまうことが防止される。
【0064】
次に、無電解めっきシステム1におけるウエハWの処理工程について説明する。
図11は無電解めっきシステム1におけるウエハWの処理工程の概略を示すフローチャートであり、図12は無電解めっき装置12におけるウエハWの処理工程の概略を示すフローチャートである。
【0065】
最初に、搬送ロボットやオペレータ等によって、処理前のウエハWが収納されたフープFがイン・アウトポート4の載置台6上の所定位置に載置される(ステップ1)。次に、搬送ピック11により、フープFからウエハWが1枚ずつ取り出され、取り出されたウエハWが2つのウエハ受渡ユニット(TRS)16のいずれかに搬送される(ステップ2)。
【0066】
搬送ピック11によりウエハ受渡ユニット(TRS)16に搬送されたウエハWは、主ウエハ搬送装置18の搬送アーム34〜36のいずれか、例えば、搬送アーム34によりウエハ受渡ユニット(TRS)16上のウエハWを複数のホットプレートユニット(HP)19のいずれかに搬送される。ウエハWは、ホットプレートユニット(HP)19においてプリベーク処理され(ステップ3)、これにより、Cu配線を防食するためにウエハW上に設けられた有機系膜が昇華される。そして、主ウエハ搬送装置18によりホットプレートユニット(HP)19内のウエハWが複数の冷却ユニット(COL)22のいずれかに搬送され、ウエハWに冷却処理が施される(ステップ4)。
【0067】
冷却ユニット(COL)22でのウエハWの冷却処理が終了すると、主ウエハ搬送装置18により、冷却ユニット(COL)22内のウエハWが複数の無電解めっきユニット(PW)12のいずれかに搬送され、ウエハWにめっき処理が施される(ステップ5)。この際の詳細な手順は後述する。
【0068】
無電解めっきユニット(PW)12でのウエハWの無電解めっき処理が終了すると、主搬送装置18によりウエハWがホットプレートユニット(HP)19に搬送され、ホットプレートユニット(HP)19でウエハWがポストベーク処理される(ステップ6)、これにより、ウエハW上の配線部に被覆されためっき膜に含有する有機物を昇華させるとともに、ウエハW上の配線部とめっき膜との付着性を高める。次いで、主ウエハ搬送装置18によりホットプレートユニット(HP)19内のウエハWが冷却ユニット(COL)22に搬送され、ウエハWが冷却処理される(ステップ7)。
【0069】
冷却ユニット(COL)22でのウエハWの冷却処理が終了すると、主ウエハ搬送装置18によりウエハWがウエハ受渡ユニット(TRS)16に搬送される(ステップ8)。そして、搬送ピック11によりウエハ受渡ユニット(TRS)16に載置されたウエハWが受け取られ、そのウエハWが収納されていたフープFの元のスロットに収納される(ステップ9)。
【0070】
次に、上記ステップ5の無電解めっきユニット(PW)12でのウエハWのめっき処理の手順について詳細に説明する。
【0071】
まず、主ウエハ搬送装置18により冷却ユニット(COL)22から搬送されてきたウエハWが無電解めっきユニット(PW)12内に搬入される(ステップ5−1)。この際には、ハウジング42に設けられた第1シャッター44およびアウターチャンバ43に設けられた第2シャッター45が開にされ、窓部44aおよび窓部45aが開放されるとともに、インナーカップ47は退避位置に下降され、アンダープレート48は回転プレート61に近接した位置に降下した状態とされる。この状態で、主ウエハ搬送装置18のいずれかの搬送アームをアウターチャンバ43内に進入させ、スピンチャック46に設けられた載置ピン63にウエハWを受け渡し、押圧ピン64によりウエハWを支持する。その後、搬送アームをアウターチャンバ43から退出させ、第1シャッター44および第2シャッター45が窓部44aおよび窓部45aを閉塞した状態とする。
【0072】
なお、このような一連の動作が終了する前に、薬液ノズル51aの薬液温調管53内およびめっき液ノズル51cのめっき液温調管97内に温調水を循環させて、薬液ノズル51aおよびめっき液ノズル51cの温度を調整しておくことが好ましい。
【0073】
次に、窓部43aが開放され、ノズル部51の先端側部がアウターチャンバ43内に進入してウエハW上に配置される。そして、薬液ノズル51aによりウエハW上に純水が供給されて、ウエハWのプリウエット処理が行われる(ステップ5−2)。ウエハWのプリウエット処理は、例えば、ウエハWを静止またはゆっくりした回転数で回転させた状態でウエハW上に処理液、ここでは純水のパドルを形成し、所定時間保持したり、ウエハWを所定の回転数で回転させた状態でノズル部51、ここでは薬液ノズル51aから所定量の純水をウエハWに吐出しながら、薬液ノズル51aのノズルチップ52aをウエハWの中心部と周縁部との間で直線的にスキャンさせるように、ノズル部51を移動させたりして行われる。後述するウエハWの洗浄処理、リンス処理、無電解めっき処理および乾燥処理も同様に、このような方法で行うことができる。ウエハWの回転数も、洗浄処理や無電解めっき処理等の処理条件によって適宜選定される。
【0074】
ウエハWのプリウエット処理が終了して、スピンチャック46の回転によりウエハWに付着した純水がある程度振り切られると、薬液ノズル51aによりウエハW上に薬液貯留タンク71からの薬液が供給され、ウエハWの前洗浄処理が行われる(ステップ5−3)。これにより、ウエハWの配線部に付着していた酸化膜が除去される。ウエハWから振り切られたり流れ落ちたりした薬液は、ドレイン85から排液され、再利用または廃棄される。
【0075】
ウエハWの前洗浄処理が終了すると、薬液ノズル51aによりウエハW上に純水が供給され、ウエハWのリンス処理が行われる(ステップ5−4)。ウエハWのリンス処理中またはリンス処理後には、アンダープレート48を上昇させてウエハWに近接させ、処理流体供給口81から所定の温度に加熱された純水を供給して、ウエハWをその温度に加熱し温度制御する(ステップ5−5)。ここで、アンダープレート48、処理流体供給口81から供給される純水、加熱源94、およびめっき液温調管97を流通する温調水の温度は同一に設定することが望ましい。めっき反応は温度に敏感であり、ウエハW面内で温度均一性が悪いと、後述する無電解めっき処理において、析出しためっき膜の膜厚に直接影響を及ぼすためである。
【0076】
ウエハWのリンス処理が終了して、スピンチャック46の回転によりウエハWに付着した純水がある程度振り切られると、インナーカップ47を処理位置に上昇させる。そして、アンダープレート48により加熱され温度制御されたウエハW上に、めっき液貯留タンク91からのめっき液がめっき液ノズル51cにより供給され、ウエハWの無電解めっき処理が行われる(ステップ5−6)。
【0077】
無電解めっき処理においては、ウエハWを所定の温度まで上昇させた後にめっきプロセスを開始するよりも、ウエハWを所定の温度まで上昇させる途中でめっきプロセスを開始したほうが、析出しためっき膜のモフォロジーが良くなる傾向にある。このため、めっき液ノズル51cによってウエハWにめっき液を供給するタイミングは、ウエハWの温度が上昇し始めてから所定の温度に達する前が好ましい。換言すれば、めっき液の供給開始時よりもめっき液の供給終了時のほうがウエハWの温度が高いことが好ましい。
【0078】
無電解めっき処理の際には、めっき液ノズル51cのめっき液温調管97内を通流する温調水によって、めっき液供給管96内を流通するめっき液を所定の温度に保持することができるため、ウエハW上に供給されるめっき液の温度低下が防止され、所定の温度、例えば60〜80℃程度のめっき液によりウエハW上の配線部に無電解めっきを施すことができる。洗浄処理の際にも同様に、薬液ノズル51aの薬液温調管53内を流通する温調水によって、薬液供給管52内を流通する薬液を所定の温度に保持することができるため、ウエハW上に供給される薬液の温度低下が防止され、所定の温度の薬液によりウエハWを洗浄することができる。
【0079】
めっき液ノズル51cからのウエハW上へのめっき液の供給が終了すると、吸引機構95によりめっき液ノズル51c内のめっき液を吸引してめっき液貯留タンク91へ戻す(ステップ5−7)。具体的には、上記図9B、9Cに示すように、吸引機構95をONにし、めっき液供給管96内を流通するめっき液を、少なくとも加熱源94を通過するまでめっき液貯留タンク91に向かって吸引した後、吸引機構95をOFFにする。これにより、めっき液供給管96内を通過するめっき液が必要以上に加熱し続けられてしまうことが防止されるため、めっき液供給管96内の劣化しためっき液がウエハW上に供給されるおそれがない。あるいは、ウエハWにめっき液を供給する前にめっき液供給管96内の劣化しためっき液を廃棄する必要がなくなり、めっき液の劣化が抑止されてめっき液のランニングコストを高めることができる。
【0080】
ウエハWの無電解めっき処理が終了すると、アンダープレート48の処理流体供給口81からの加熱された純水の供給が停止されるとともに、インナーカップ47が退避位置に下降する。そして、薬液ノズル51aによりウエハW上に薬液貯留タンク71からの薬液が供給され、ウエハWの後洗浄処理が行われる(ステップ5−8)。これにより、ウエハW上に付着していためっき液の残渣が除去されてコンタミネーションが防止される。ウエハWから振り切られたり流れ落ちたりした薬液は、ドレイン85から排液され、再利用または廃棄される。
【0081】
ウエハWの後洗浄処理が終了すると、薬液ノズル51aによりウエハW上に純水が供給されて、ウエハWのリンス処理が行われる(ステップ5−9)。リンス処理時には、最初に薬液ノズル51a内に残留していた薬液が吐出されて薬液ノズル51a内の洗浄が同時に行われる。薬液ノズル51aおよび薬液供給機構70は、無電解めっき処理後のウエハW上に薬液および純水を供給する後処理液供給機構を構成する。
【0082】
なお、リンス処理においては、薬液ノズル51aからの純水の供給を一時的に停止してウエハWを高速回転させ、ウエハW上の純水を一旦除去した後に、ウエハWの回転数を戻して再びウエハW上に純水を供給するという手順を繰り返して行ってもよい。また、リンス処理は、薬液温調管53内に温調水を流した状態で行ってもよく、温調水の流れを止めて行ってもよい。
【0083】
リンス処理時またはリンス処理後には、アンダープレート48を下降させてウエハWから離間させる。そして、リンス処理が完全に終了すると、スピンチャック46によってウエハWを回転させるとともに、薬液ノズル51aからウエハW上に窒素ガスを供給してウエハWの乾燥処理を行う(ステップ5−10)。なお、薬液ノズル51aからウエハW上に窒素ガスを供給した際に、最初に薬液ノズル51a内に残っている純水がウエハW上に吐出されるが、ウエハW上には純水の液膜が残っているために、供給された窒素ガスに純水が混じっていても、それが原因でウエハWの表面にウォーターマークが発生することはない。
【0084】
また、乾燥処理の際には、下降したアンダープレート48の処理流体供給口81からウエハWの裏面に窒素ガスを供給するとともに、アンダープレート48が再び上昇してウエハWに近接し、ウエハWの裏面を乾燥する。ここで、アンダープレート48を一旦下降させてから再び上昇させるのは、ウエハWの回転の圧力変動により、処理流体供給路87内に残存していた純水が吐出してウエハWの裏面を濡らしてしまうことを防止するとともに、処理流体供給口81からウエハWの裏面に窒素ガスを供給した際に、処理流体供給路87内に残存していた純水が急激に吐出してウエハWが損傷してしまうことを防止するためである。しかも、これにより、ウエハWの裏面へのウォーターマークの発生も防止される。
【0085】
なお、ウエハWの乾燥処理は、例えば、ウエハWを所定の時間低速回転してから所定の時間高速回転させることにより行うことができる。
【0086】
ウエハWの乾燥処理が終了すると、ウエハWが無電解めっきユニット(PW)12から搬出される(ステップ5−11)。具体的には、まず、必要に応じてノズル昇降機構56aによりノズル部51が所定の高さに移動され、ノズルスライド機構56bによりノズル部51の先端部分がノズル格納室50内に格納され、窓部43aが閉じられる。次に、アンダープレート48が降下されてウエハWから離間され、その状態でウエハWが押圧ピン64による押圧から開放されて載置ピン63のみで支持される状態とされる。続いて、窓部44aおよび窓部45aが開放され、いずれかの搬送アームがアウターチャンバ43内に進入し、搬送アームにより載置ピン63に支持されたウエハWが受け取られる。その後、ウエハWを受け取った搬送アームが無電解めっきユニット(PW)12から退出し、窓部44aおよび窓部45aが閉塞される。
【0087】
次に、ウエハWの温度制御のためのアンダープレートの他の例について説明する。上記アンダープレート48では、ウエハWと近接した近接位置およびウエハWと離間した離間位置の2箇所のみで停止させ、近接位置において温調流体をウエハWの裏面に供給してウエハWの温度制御を行うようにしたが、図13に示すように、ヒータ99を内蔵したアンダープレート48′を用いることもできる。これにより、ウエハWとアンダープレート48′との間の距離を任意に設定してウエハWの温度を制御することができる。これにより、ウエハWの温度および温度上昇の速度等を細かく制御することができる。したがって、よりモフォロジーの良いめっき膜が得られる温度条件でウエハWを処理することが可能となる。なお、アンダープレート48のウエハWに対しての昇降は、複数の段階に分けて行われるようにしてもよく、近接位置と離間位置との間で一定の速度で行われるようにしてもよい。
【0088】
また、アンダープレートとして流体供給口とヒータとを両方備えたものを用いれば、アンダープレートを上昇させてウエハWから所定の距離の位置で停止させ、最初にヒータの輻射熱でウエハWを所定の温度まで加熱し、その後、処理流体供給口81からウエハWに加熱された純水を供給することで、さらにウエハWの温度を上昇させてからめっき膜を形成するようにすることもできる。
【0089】
次に、上記無電解めっきユニット(PW)の変形例について説明する。
図14は、上記無電解めっきユニット(PW)の変形例を示す断面図である。図14に示す 無電解めっきユニット(PW)12′は、例えば、アウターチャンバ43内に、スピンチャック46に支持されたウエハW上と対向するトッププレート49を設けた構成を有している。トッププレート49は、枢軸100の下端に接続されており、モータ102によって回転可能となっている。枢軸100は、水平板101の下面に回転自在に支持され、水平板101は、アウターチャンバ43の上壁に固定されたエアシリンダ等からなる昇降機構103により昇降可能である。枢軸100およびトッププレート49には、スピンチャック46に支持されたウエハW上に純水を供給することができる純水供給孔105が設けられている。
【0090】
スピンチャック46といずれかの搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われる際には、トッププレート49は、搬送アーム34と衝突しないようにアウターチャンバ43の上壁に近い位置に保持される。ウエハW上の洗浄処理または無電解めっき処理を行う際には、薬液ノズル51aまたはめっき液ノズル51cによってウエハW上に薬液またはめっき液が供給されてパドルが形成された後に、トッププレート49を降下させてパドルに接触させ、ウエハW上とトッププレート49の間に薬液層またはめっき液層を形成する。この際に、薬液またはめっき液の温度が低下しないように、トッププレート49には図示しないヒータを内蔵させることが好ましい。また、ウエハWのリンス処理は、例えば、純水供給孔105からウエハWに純水を供給しながら、トッププレート49とウエハWを所定の回転数で回転させることによって行うことができる。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態ではアンダープレートを昇降するようにしたが、アンダープレートを所定高さに固定しておき、スピンチャックを昇降させることによって、スピンチャックに支持された基板とアンダープレートとの間隔をめっき処理の進行に合わせて調整するように構成してもよい。すなわち、アンダープレートとスピンチャックに支持された基板とは、一方が他方に対して相対的に昇降可能であればよい。また、上記実施形態では、基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、それに限らず、例えばLCD用ガラス基板やセラミック基板のような他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
12;無電解めっきユニット(PW)(無電解めっき装置)
46;スピンチャック(支持部)
48;アンダープレート(基板温調部材)
81;処理流体供給口
91;めっき液貯留タンク(めっき液貯留部)
94;加熱源
95;吸引機構
96;めっき液供給管
97;めっき液温調管
W;ウエハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置であって、
基板を支持する基板支持部と、
基板の表面に供給されるめっき液を貯留するめっき液貯留部と、
前記めっき液貯留部からのめっき液を、前記基板支持部に支持された基板の表面に向けて供給するめっき液供給管と、
前記めっき液供給管に設けられ、前記めっき液を基板の表面に吐出するめっき液吐出ノズルと、
前記基板支持部に支持された基板の裏面側に設けられ、基板の温度を制御するための基板温度制御部材と、
前記基板温度制御部材と基板との間に相対的な昇降移動を生じさせる移動機構と
を具備し、
前記基板温度制御部材は、前記移動機構により基板との間の距離を調節することによって基板の温度を制御するように構成されていることを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項2】
前記基板温度制御部材は、ヒータを内蔵し、輻射熱により基板を加熱して所定温度に制御することを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき装置。
【請求項3】
前記基板温度制御部材は、前記ヒータと、基板に加熱された流体を供給する流体供給口との両方を備えていることを特徴とする請求項2に記載の無電解めっき装置。
【請求項4】
前記基板温度制御部材は、前記ヒータの輻射熱により基板を加熱し、その後、前記流体供給口から前記ヒータの輻射熱により加熱された基板に、前記加熱された流体を供給し、前記基板の温度をさらに上昇させることを特徴とする請求項3に記載の無電解めっき装置。
【請求項5】
前記基板温度制御部材は、前記めっき液供給の開始時点の基板の温度よりも、前記めっき液の供給を停止した時点の基板の温度のほうが高くなるように基板の温度を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無電解めっき装置。
【請求項6】
基板の表面へのめっき液の供給に先立って基板に所定の液を供給して前処理を行う前処理液供給機構と、基板の表面へのめっき液の供給の後に基板に所定の液を供給して後処理を行う後処理液供給機構をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無電解めっき装置。
【請求項7】
めっき液貯留部に貯留されためっき液をめっき液供給管およびめっき液吐出ノズルを介して基板の表面に供給して無電解めっきを施す無電解めっき方法であって、
基板の裏面側に配置された基板温度制御部材と基板との間の距離を調整して基板の温度を制御する工程と、
前記めっき液供給管内を流通するめっき液を基板の表面に供給する工程と
を含むことを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項8】
前記めっき液供給の開始時点の基板の温度よりも、前記めっき液の供給を停止した時点の基板の温度のほうが高くなるように基板の温度を制御することを特徴とする請求項7に記載の無電解めっき方法。
【請求項9】
基板の表面へのめっき液の供給に先立って基板の表面に所定の液を供給して前処理を行う工程と、基板の表面へのめっき液の供給の後に基板に所定の液を供給して後処理を行う工程とをさらに含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の無電解めっき方法。
【請求項10】
基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置をコンピュータに制御させる制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、実行時に、請求項7から請求項9のいずれかの無電解めっき方法が行われるように、コンピュータに前記無電解めっき装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【請求項1】
基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置であって、
基板を支持する基板支持部と、
基板の表面に供給されるめっき液を貯留するめっき液貯留部と、
前記めっき液貯留部からのめっき液を、前記基板支持部に支持された基板の表面に向けて供給するめっき液供給管と、
前記めっき液供給管に設けられ、前記めっき液を基板の表面に吐出するめっき液吐出ノズルと、
前記基板支持部に支持された基板の裏面側に設けられ、基板の温度を制御するための基板温度制御部材と、
前記基板温度制御部材と基板との間に相対的な昇降移動を生じさせる移動機構と
を具備し、
前記基板温度制御部材は、前記移動機構により基板との間の距離を調節することによって基板の温度を制御するように構成されていることを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項2】
前記基板温度制御部材は、ヒータを内蔵し、輻射熱により基板を加熱して所定温度に制御することを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき装置。
【請求項3】
前記基板温度制御部材は、前記ヒータと、基板に加熱された流体を供給する流体供給口との両方を備えていることを特徴とする請求項2に記載の無電解めっき装置。
【請求項4】
前記基板温度制御部材は、前記ヒータの輻射熱により基板を加熱し、その後、前記流体供給口から前記ヒータの輻射熱により加熱された基板に、前記加熱された流体を供給し、前記基板の温度をさらに上昇させることを特徴とする請求項3に記載の無電解めっき装置。
【請求項5】
前記基板温度制御部材は、前記めっき液供給の開始時点の基板の温度よりも、前記めっき液の供給を停止した時点の基板の温度のほうが高くなるように基板の温度を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無電解めっき装置。
【請求項6】
基板の表面へのめっき液の供給に先立って基板に所定の液を供給して前処理を行う前処理液供給機構と、基板の表面へのめっき液の供給の後に基板に所定の液を供給して後処理を行う後処理液供給機構をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無電解めっき装置。
【請求項7】
めっき液貯留部に貯留されためっき液をめっき液供給管およびめっき液吐出ノズルを介して基板の表面に供給して無電解めっきを施す無電解めっき方法であって、
基板の裏面側に配置された基板温度制御部材と基板との間の距離を調整して基板の温度を制御する工程と、
前記めっき液供給管内を流通するめっき液を基板の表面に供給する工程と
を含むことを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項8】
前記めっき液供給の開始時点の基板の温度よりも、前記めっき液の供給を停止した時点の基板の温度のほうが高くなるように基板の温度を制御することを特徴とする請求項7に記載の無電解めっき方法。
【請求項9】
基板の表面へのめっき液の供給に先立って基板の表面に所定の液を供給して前処理を行う工程と、基板の表面へのめっき液の供給の後に基板に所定の液を供給して後処理を行う工程とをさらに含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の無電解めっき方法。
【請求項10】
基板の表面にめっき液を供給して無電解めっきを施す無電解めっき装置をコンピュータに制御させる制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、実行時に、請求項7から請求項9のいずれかの無電解めっき方法が行われるように、コンピュータに前記無電解めっき装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
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【図14】
【公開番号】特開2012−136783(P2012−136783A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96998(P2012−96998)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2006−311547(P2006−311547)の分割
【原出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2006−311547(P2006−311547)の分割
【原出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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