説明

無電解メッキ方法および装置

【課題】無電解メッキ液の使用に伴い減少する金属イオンを補給し、生成する不要な陰イオンの蓄積を減少し、メッキ液を安定して長期間使用することができる無電解メッキ装置を提供する。
【解決手段】無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段とを有する無電解メッキ装置であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられたイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室または陰極室からメッキ槽に補給する無電解メッキ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオンと還元剤を有する無電解メッキ液を用いた無電解メッキ方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無電解メッキ方法においては、無電解メッキ液は使用に伴い金属イオンが減少するために、金属イオンを含む化合物を補給して、メッキ液の目的とする金属イオン濃度を維持管理している。
【0003】
その補給する化合物は経済的理由により、例えば、硫酸・酢酸・塩化物等の金属塩を用いるが、使用に伴い金属塩の陰イオンはメッキ液中に蓄積し、その蓄積に伴い種々の影響を受ける。その影響は、例えばメッキ被膜の析出速度、皮膜応力、耐食性や外観等が低下する。
【0004】
一方、メッキ液中の陰イオンの蓄積の影響を無くすには、無電解メッキ液を構成するイオン種として、例えばホルマリンや次亜燐酸等の還元剤に金属イオンを化合した化合物、またはクエン酸やリンゴ酸等の有機酸の金属化合物を用いる方法が挙げられる。この方法では、無電解メッキ液中に不要の陰イオンの蓄積を生ずる事はないが、費用が高く現実的ではない。
【0005】
また、特許文献1では、メッキ液中の不純物妨害イオンを除去するために、カチオン交換膜を用いて電解することで、メッキ液の不安定要因を取り除き、長期使用が可能である提案がなされているが、蓄積陰イオンに関する記載は無い。更に金属イオンの減少と同時に還元剤が酸化消耗し、一定の反応速度を得るために別途金属イオンと還元剤を一定量ずつ補給することが必要である。
【特許文献1】特開2005−344208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、無電解メッキ液の使用に伴い減少する金属イオンを補給し、生成する不要な陰イオンの蓄積を減少し、メッキ液を安定して長期間使用することができる無電解メッキ方法および無電解メッキ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する無電解メッキ方法は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環手段を用いて循環させて無電解メッキを行う無電解メッキ方法であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられたイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室からメッキ槽に補給することを特徴とする。
【0008】
また、上記の課題を解決する無電解メッキ方法は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環手段を用いて循環させて無電解メッキを行う無電解メッキ方法であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられた中間室と、前記陽極室と中間室との間および前記陰極室と中間室との間に設けられた各々のイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを中間室からメッキ槽に補給することを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決する無電解メッキ装置は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段とを有する無電解メッキ装置であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられたイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室からメッキ槽に補給することを特徴とする。
【0010】
また、上記の課題を解決する無電解メッキ装置は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段とを有する無電解メッキ装置であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられた中間室と、前記陽極室と中間室との間および前記陰極室と中間室との間に設けられた各々のイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを中間室からメッキ槽に補給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無電解メッキ液の使用に伴い減少する金属イオンを補給し、生成する不要な陰イオンの蓄積を減少し、メッキ液を安定して長期間使用することができる無電解メッキ方法および無電解メッキ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る無電解メッキ方法は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環手段を用いて循環させて無電解メッキを行う無電解メッキ方法であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられたイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室からメッキ槽に補給することを特徴とする。
【0013】
前記イオン交換膜は陰イオンを通過させる陰イオン交換膜からなり、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室に保持し、陽極室から循環手段を用いてメッキ槽に補給することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る無電解メッキ方法は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環手段を用いて循環させて無電解メッキを行う無電解メッキ方法であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられた中間室と、前記陽極室と中間室との間および前記陰極室と中間室との間に設けられた各々のイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを中間室からメッキ槽に補給することを特徴とする。
【0015】
前記陽極室と中間室との間に設けられたイオン交換膜は陽イオンを通過させる陽イオン交換膜からなり、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽イオン交換膜を通過させて中間室に移動させ、中間室から循環手段を用いてメッキ槽に補給することが好ましい。
【0016】
前記陰極室と中間室との間に設けられたイオン交換膜は陰イオンを通過させる陰イオン交換膜からなり、電気分解により前記陰極室から生成した陰イオンを陰イオン交換膜を通過させて中間室に移動させることが好ましい。
【0017】
本発明に係る無電解メッキ装置は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段とを有する無電解メッキ装置であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられたイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室からメッキ槽に補給することを特徴とする。
【0018】
前記イオン交換膜は陰イオンを通過させる陰イオン交換膜からなり、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室に保持し、陽極室から循環手段を用いてメッキ槽に補給することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る無電解メッキ装置は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段とを有する無電解メッキ装置であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられた中間室と、前記陽極室と中間室との間および前記陰極室と中間室との間に設けられた各々のイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを中間室からメッキ槽に補給することを特徴とする。
【0020】
前記陽極室と中間室との間に設けられたイオン交換膜は陽イオンを通過させる陽イオン交換膜からなり、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽イオン交換膜を通過させて中間室に移動させ、中間室から循環手段を用いてメッキ槽に補給することが好ましい。
【0021】
前記陰極室と中間室との間に設けられたイオン交換膜は陰イオンを通過させる陰イオン交換膜からなり、電気分解により前記陰極室から生成した陰イオンを陰イオン交換膜を通過させて中間室に移動させることが好ましい。
【0022】
上記の様にイオン交換膜は、陰イオン交換膜または陽イオン交換膜が用いられる。
前記無電解メッキに使用する金属が、ニッケルであることが好ましい。
前記無電解メッキに使用する金属の対イオンである陰イオンに還元剤を用いることが好ましい。
【0023】
図1は本発明の無電解メッキ装置の一実施態様を示す概略図である。
図1に示す本発明の無電解メッキ装置は、補給槽に陰イオン交換膜を用いた例を示す。本発明の無電解メッキ装置は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽1と、前記メッキ槽1に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽2と、前記補給槽2とメッキ槽1とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段3とを有する。循環手段3は2つの流路4a、4bを有し、各流路4a、4bには循環ポンプ5a、5bが設けられている。
【0024】
補給槽2は、電気分解をするための直流電源6からなる電源と、前記無電解メッキに使用する金属(M)からなる陽極電極7を有する陽極室9と、陰極電極8を有する陰極室10と、前記陽極室9と陰極室10との間に設けられたイオン交換膜とを有する。イオン交換膜として陰イオン交換膜11が用いられる。
【0025】
メッキ槽1の無電解メッキ液は使用に伴い金属イオンが減少する。その無電解メッキ液を、メッキ槽1から循環手段3を用いて補給槽2の陽極室9に補給する。陽極室9では電気分解により前記陽極室の陽極電極7から金属イオン(M+)を生成し、生成した金属イオン(M+)を陽極室9から循環手段3を用いてメッキ槽1に補給する。これによりメッキ槽1の無電解メッキ液の使用に伴う金属イオンの減少を防止することができる。A-はアニオンを示す。
【0026】
例えば、メッキ槽1でニッケルと次亜燐酸を含む無電解メッキ液を用いて無電解メッキを行う。補給槽2の陽極室の陽極電極7にニッケルを、陰極電極8にSUSを、陰極室10には次亜燐酸ナトリウム溶液を用いる。メッキ槽1の無電解メッキ液は使用に伴いニッケルイオンが減少する。その無電解メッキ液を補給槽2の陽極室9に補給すると、補給槽2では電気分解により陽極電極7のニッケルが溶解してニッケルイオンとなり、ニッケルイオンは陰イオン交換膜11を通過しないので陽極室に留まり、陰極室10からは陰イオン交換膜11を通過して次亜燐酸イオンが陽極室に入ってきて、陽極室には次亜燐酸ニッケル溶液が生成する。この陽極室の次亜燐酸ニッケル溶液を循環手段3を用いてメッキ槽1に補給する。これによりメッキ槽1の無電解メッキ液の使用に伴うニッケルイオンの減少を防止することができる。
【0027】
図2は本発明の無電解メッキ装置の他の実施態様を示す概略図である。
図2に示す本発明の無電解メッキ装置は、補給槽に陽イオン交換膜を用いた例を示す。本発明の無電解メッキ装置は、無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽1と、前記メッキ槽1に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽2と、前記補給槽2とメッキ槽1とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段3とを有する。循環手段3は2つの流路4a、4bを有し、各流路4a、4bには循環ポンプ5a、5bが設けられている。
【0028】
補給槽2は、電気分解をするための直流電源6からなる電源と、前記無電解メッキに使用する金属(M)からなる陽極電極7を有する陽極室9と、陰極電極8を有する陰極室10と、前記陽極室7と陰極室10との間に設けられた中間室13と、前記陽極室7と中間室13との間に設けられた陽イオン交換膜12と、前記陰極室10と中間室13との間に設けられた陰イオン交換膜11とを有する。
【0029】
メッキ槽1の無電解メッキ液は使用に伴い金属イオンが減少する。その無電解メッキ液を、メッキ槽1から循環手段3を用いて補給槽2の中間室13に補給する。陽極室9では電気分解により前記陽極室の陽極電極7から金属イオン(M+)を生成し、生成した金属イオン(M+)を陽イオン交換膜12を通過させ中間室13に移動させる。生成した金属イオンは中間室13から循環手段3を用いてメッキ槽1に補給する。これによりメッキ槽1の無電解メッキ液の使用に伴う金属イオンの減少を防止することができる。A-はアニオンを示す。更に中間室の金属イオンは陰極室10との間に形成された陰イオン交換膜によりブロックされ陰極での還元損失を防止する。
【0030】
例えば、メッキ槽1でニッケルと次亜燐酸を含む無電解メッキ液を用いて無電解メッキを行う。補給槽2の陽極室の陽極電極7にニッケルを、陰極電極8にPtを、陽極室9には硫酸ニッケル溶液を用いる。メッキ槽1の無電解メッキ液は使用に伴いニッケルイオンが減少する。その無電解メッキ液を補給槽2の中間室13に補給する。補給槽2では電気分解により陽極電極7のニッケルが溶解してニッケルイオンとなり、ニッケルイオンは陽イオン交換膜12を通過して中間室13に移動する。陰極室10からは陰イオン交換膜11を通過して次亜燐酸イオンが中間室13に入ってきて、中間室13にはニッケルイオンが補充された次亜燐酸ニッケル溶液が生成する。この中間室13の次亜燐酸ニッケル溶液を循環手段3を用いてメッキ槽1に補給する。これによりメッキ槽1の無電解メッキ液の使用に伴うニッケルイオンの減少を防止することができる。
【0031】
本発明では、無電解メッキの進行につれて、無電解メッキ液に不足した金属イオンの補給を、該金属イオンの金属を陽極とし電気分解してイオン化して金属イオンを得て、該金属イオンをメッキ液に補給して不足する金属イオンを補充する方法を骨格としている。そして、補給槽における電気分解において、イオン交換膜を陽極室と中間室との間および陰極室と中間室との間に設置することで、金属イオンの溶解の為の陽極室、溶解金属イオンの還元損失を防止する中間室を構成することを特徴としている。
【0032】
例えば、陰イオン交換膜で分離された陽極室には、メッキ液が導入され上述の電気分解にてメッキ液中にその金属イオンが所定濃度供給される。また、陰極室はメッキ有効成分の陰イオンにて構成することで、陰イオン交換膜を通じて有効陰イオンが補給され、電解がスムーズに行なわれる。
【0033】
更に陰イオンとしてメッキ液を構成する還元剤を用いることにより、酸化消耗した還元剤が定量メッキ液に導入され、所定濃度が維持される。また、本発明では金属イオンを分析することで、金属イオンの濃度を知り、電解条件(電流量・時間等)を制御し、金属イオン濃度を管理することで一定の金属イオンを得ることができる。以上により無電解メッキ液に不安定要因となる蓄積イオンの増加を防ぎ長期に渡り安定性を与えることができる。
【0034】
本発明で用いられる無電解メッキ液は、その金属種としてNi・銅・金・銀・Sn等が用いられる。
金属イオン溶解の為の電気分解は上記金属を陽極とし、陰極には対象溶液に対して化学的に損傷を受けない金属がもちいられ、例えばSUSや白金等が挙げられる。電気分解は直流法が一般的であるがパルス法でも可能である。
【0035】
溶解した金属イオンの陰極室での還元析出を防止する為、陰イオン交換膜により、無電解メッキ液が遮られる。陰イオン交換膜は市販の膜が使用でき、例えばアストム株式会社製のネオセプタ(AHA・ACM・ACS)や旭硝子エンジニアリング株式会社製のセレミオン(AMD・AMV・ASV)等が用いられる。
【0036】
陰イオン交換膜により遮られた陰極室側には通電のため、無電解メッキ液を構成する陰イオンを含む電解質溶液が用いられが、溶液を構成する還元剤、例えば次亜燐酸やホルマリンを用いることは更に有効である。
【0037】
金属イオン濃度を知り所定濃度を維持する為には、一般的な分析法で良く、例えばカニゼン株式会社や石原薬品株式会社の無電解メッキ液管理装置が用いられる。
得られた濃度を元に通電処理(時間と電気量の積)で金属イオンを溶解し所定濃度に管理可能である。また陰イオン交換膜面積は還元剤の消耗量を通電と同時に補給する場合は膜固有の移動量を求めその量に応じて決定される。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
以下のメッキ液組成
メッキ液組成
Ni:5g/L(+硫酸:8g/L)
次亜燐酸:20g/L(+Na:7.5g/L)
リンゴ酸:20g/L(+Na:5.8g/L)
の無電解Niメッキ液10Lを、90℃でメッキ被面積20dm2で、図1の無電解メッキ装置を用いてメッキ処理を行うと同時に、循環ポンプにより陽極室にメッキ液を導入した。陰極室に次亜燐酸:100g/L(+Na:37.5g/L)とリンゴ酸:100g/L(+Na:29g/L)を混合させた溶液を入れ、両極室の間に陰イオン交換膜(旭硝子エンジニアリング社製、セレミオンAMV膜)を、膜面積180cm2用いて、陽極室にNi金属電極と陰極室にSUS電極を設置し電解処理を行ない陽極室にNIを溶解補給した。メッキ処理の結果、液組成変化として下記の液組成の消耗量を得た。
【0039】
液組成の消耗量
Ni:0.5g/分
次亜燐酸:2g/分
リンゴ酸:2g/分
NI消耗に応じた量を電気分解で得るためには概算以下より求めることが出来る。
【0040】
0.5g/分÷0.0182g/A・分=27.5A・分
27.5A/分の電気量で陰イオン交換膜を通過する次亜燐酸とリンゴ酸イオン量は以下で与えられる。但し下記イオンの単位当たりの移動量は実験的に得た。ここで用いられている0.0182g/A・分は陰極電流効率100%としての溶解係数である。
【0041】
次亜燐酸の交換能力は0.02g/A・分/50cm2
リンゴ酸の交換能力は0.015g/A・分/50cm2
前述の電気量27.5A・分でのめっき液中への次亜燐酸とリンゴ酸イオンの供給量は
次亜燐酸の交換量は1分間あたり0.02g/A・分/50cm2×180cm2×27.5=1.98g
リンゴ酸の交換量は1分間あたり0.015g/A・分/50cm2×180cm2×27.5=1.5g
以上によりNiの溶解と同時に還元剤である次亜燐酸イオンが同時に供給される。なお、1分あたり0.5g不足するリンゴ酸は別途補給を行なうことでめっき液の組成が一定に保持される。
【0042】
前述の方法を用いてめっき液の稼働を以下行ない図3に示す結果を得た。
図3の結果より、10ターンを使用した時点で析出速度が初期比60%になり液を交換した。
【0043】
後述の比較例1に比べて液寿命が2倍となった。
比較例1
実施例1で用いた図1の無電解メッキ装置から、補給槽2の部分を除いた装置を用いて、実施例1と同様なめっき条件でめっき稼働を行った。その結果を図4に示す。
【0044】
めっき稼働時の消耗補給分はNiイオンは硫酸Niで次亜燐酸イオンは次亜燐酸Naでリンゴ酸はリンゴ酸として随時補給した。
図4の結果より、5ターン相当で析出速度が初期比57%になり液を交換した。
【0045】
実施例2
実施例1で用いた無電解メッキ装置を用いてめっきを行なった。めっき中はNi濃度をカニゼン株式会社のコントローラーSACP−3を用いて測定し、Niの溶解時間を決定した。Ni溶解電流密度は10A/dm2で行い通電OnとOffで制御した。
【0046】
以上により、陰イオン交換膜を用いて濃度制御することでめっき液の阻害要因である妨害イオンをめっき液から排除することで液の寿命が延びかつ高精度の液管理が可能となった。
【0047】
実施例3
実施例1と同様な液組成と液量で図2の装置を用いてメッキ処理を行うと同時に、循環ポンプにより中間室にメッキ液を導入する。陽極室に硫酸Na10g/L、陰極室に次亜燐酸:100g/L(+Na:37.5g/L)とリンゴ酸:100g/L(+Na:29g/L)を混合させた溶液を入れる。陽極室と中間室の間に、陽イオン交換膜(アストム社製、ネオセプタCM1膜)を膜面積90cm2と、中間室と陰極室の間に、陰イオン交換膜(旭硝子エンジニアリング社製、セレミオンAMV膜)を、膜面積180cm2用いる。陽極室にNi金属電極と、陰極室にSUS電極を設置し電解処理を行ない、陽極室にNIを溶解補給した。液組成変化として実施例1と同様な消耗量を得た。NI消耗に応じた量を電気分解で得るためには概算以下より求めることが出来る。
【0048】
0.5g/分÷0.0182g/A・分=27.5A・分
27.5A/分の電気量で陽イオン交換膜を通過するニッケル量は以下で与えられる。但し下記イオンの単位当たりの移動量は実験的に得た。
【0049】
Niの交換能力は0.01g/A・分/50cm2
Niの交換量は1分間あたり0.01g/A・分/50cm2×90cm2×27.5=0.5gとなり、陽極室から中間室にNiが0.5g/分供給される。中間質のNiイオンは陰極室の間に設置された陰イオン交換膜によりブロックされ移動しない。さらに、陰極室の次亜燐酸とリンゴ酸は実施例1と同様に陰イオン交換膜により中間室に移動しメッキ液に供給される。この場合その陰イオンは陽極室との間に設置された陽イオン交換膜によりブロックされ陽極室には移動しない。以上により実施例1と同様な効果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の無電解メッキ方法および装置は、無電解メッキ液の使用に伴い減少する金属イオンを補給し、生成する不要な陰イオンの蓄積を減少し、メッキ液を安定して長期間使用することができるので、プリンター等の搬送ローラー用の無電解Niメッキやプリント板のスルホール形成用の無電解Cuメッキ等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の無電解メッキ装置の一実施態様を示す概略図である。
【図2】本発明の無電解メッキ装置の他の実施態様を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例1の無電解メッキ方法の結果を示す図である。
【図4】比較例1の無電解メッキ方法の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 メッキ槽
2 補給槽
3 循環手段
4a、4b 流路
5a、5b 循環ポンプ
6 直流電源
7 陽極電極
8 陰極電極
9 陽極室
10 陰極室
11 陰イオン交換膜
12 陽イオン交換膜
13 中間室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環手段を用いて循環させて無電解メッキを行う無電解メッキ方法であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられたイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室からメッキ槽に補給することを特徴とする無電解メッキ方法。
【請求項2】
前記イオン交換膜は陰イオンを通過させる陰イオン交換膜からなり、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室に保持し、陽極室から循環手段を用いてメッキ槽に補給することを特徴とする請求項1に記載の無電解メッキ方法。
【請求項3】
無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環手段を用いて循環させて無電解メッキを行う無電解メッキ方法であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられた中間室と、前記陽極室と中間室との間および前記陰極室と中間室との間に設けられた各々のイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを中間室からメッキ槽に補給することを特徴とする無電解メッキ方法。
【請求項4】
前記陽極室と中間室との間に設けられたイオン交換膜は陽イオンを通過させる陽イオン交換膜からなり、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽イオン交換膜を通過させて中間室に移動させ、中間室から循環手段を用いてメッキ槽に補給することを特徴とする請求項3に記載の無電解メッキ方法。
【請求項5】
前記陰極室と中間室との間に設けられたイオン交換膜は陰イオンを通過させる陰イオン交換膜からなり、電気分解により前記陰極室から生成した陰イオンを陰イオン交換膜を通過させて中間室に移動させることを特徴とする請求項4に記載の無電解メッキ方法。
【請求項6】
前記無電解メッキに使用する金属が、ニッケルであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の無電解メッキ方法。
【請求項7】
前記無電解メッキに使用する金属の対イオンである陰イオンに還元剤を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の無電解メッキ方法。
【請求項8】
無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段とを有する無電解メッキ装置であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられたイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室からメッキ槽に補給することを特徴とする無電解メッキ装置。
【請求項9】
前記イオン交換膜は陰イオンを通過させる陰イオン交換膜からなり、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽極室に保持し、陽極室から循環手段を用いてメッキ槽に補給することを特徴とする請求項8に記載の無電解メッキ装置。
【請求項10】
無電解メッキをするためのメッキ液を有するメッキ槽と、前記メッキ槽に無電解メッキに使用する金属を補給するための補給槽と、前記補給槽とメッキ槽とを連結してメッキ液を循環させるための循環手段とを有する無電解メッキ装置であって、前記補給槽は、電気分解をするための電源と、前記無電解メッキに使用する金属からなる陽極電極を有する陽極室と、陰極電極を有する陰極室と、前記陽極室と陰極室との間に設けられた中間室と、前記陽極室と中間室との間および前記陰極室と中間室との間に設けられた各々のイオン交換膜とを有し、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを中間室からメッキ槽に補給することを特徴とする無電解メッキ装置。
【請求項11】
前記陽極室と中間室との間に設けられたイオン交換膜は陽イオンを通過させる陽イオン交換膜からなり、電気分解により前記陽極室の陽極電極から生成した金属イオンを陽イオン交換膜を通過させて中間室に移動させ、中間室から循環手段を用いてメッキ槽に補給することを特徴とする請求項9に記載の無電解メッキ装置。
【請求項12】
前記陰極室と中間室との間に設けられたイオン交換膜は陰イオンを通過させる陰イオン交換膜からなり、電気分解により前記陰極室から生成した陰イオンを陰イオン交換膜を通過させて中間室に移動させることを特徴とする請求項9に記載の無電解メッキ装置。
【請求項13】
前記無電解メッキに使用する金属が、ニッケルであることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかの項に記載の無電解メッキ装置。
【請求項14】
前記無電解メッキに使用する金属の対イオンである陰イオンに還元剤を用いることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかの項に記載の無電解メッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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