焦点検出装置
【課題】 余計なスペースやコストを必要とせずに、焦点検出における高精度な温度補正を可能にする焦点検出装置を提供する。
【解決手段】 焦点検出装置は焦点検出光学系を構成する結像レンズ138および位相差検出部139を備える。予め測定した温度検出器135による温度と、結像レンズ138の実温度の差分の最大値と最小値、焦点検出装置を起動してからの時間に応じて、温度検出器135の出力を補正する。補正された温度を用いて、位相差検出部139での像信号の像ずれ量を温度補正することで、被写体距離を算出する。フォーカス制御部133は、算出された被写体距離情報を用いてフォーカスレンズ131を駆動して焦点調節制御を行う。
【解決手段】 焦点検出装置は焦点検出光学系を構成する結像レンズ138および位相差検出部139を備える。予め測定した温度検出器135による温度と、結像レンズ138の実温度の差分の最大値と最小値、焦点検出装置を起動してからの時間に応じて、温度検出器135の出力を補正する。補正された温度を用いて、位相差検出部139での像信号の像ずれ量を温度補正することで、被写体距離を算出する。フォーカス制御部133は、算出された被写体距離情報を用いてフォーカスレンズ131を駆動して焦点調節制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像装置に搭載されるオートフォーカス(AF)方式の一つとして、位相差検出方式(以下、位相差AFという)がある。位相差AFでは、撮影レンズの内部あるいは外部に設けられた焦点状態検出センサにより、被写体までの距離情報を検出する。具体的には、焦点状態検出センサのレンズによって光束を2分割し、2分割した光束を一組の位相差検出部によりそれぞれ受光する。その受光量に応じて出力される信号のずれ量、すなわち、光束の分割方向の相対的位置ずれ量を検出することで、被写体までの距離、ひいては撮影レンズのピント方向のずれ量を求める。従って、位相差検出部により一度電荷蓄積動作を行えば、ピントずれの量と方向が得られ、高速な焦点調節動作が可能となる。
【0003】
位相差AFでは、焦点状態検出センサのレンズが撮像装置の置かれた環境温度によって膨張収縮する影響により、焦点検出に誤差を生じる場合がある。この誤差を打ち消すために、特許文献1では、焦点状態検出センサのレンズ近傍に温度センサを設け、温度センサの出力に基づいて温度補正を行っている。また、特許文献2では、焦点状態検出センサ近傍の他に、撮像装置外装近傍にも温度センサを設けることで、環境温度だけではなく、撮像装置自身の発熱による影響も考慮した温度補正を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−38312号公報
【特許文献2】特開2010−39373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、焦点状態検出センサのレンズ近傍に温度センサを設置するための構造が必要なので、焦点状態検出センサが大きくなるという課題があった。また、特許文献2では、複数の温度センサを設置することが必要なため、スペースが必要になる、コストがかかるという課題があった。
【0006】
上記の課題に対し、本発明は、余計なスペースやコストを必要とせずに、焦点検出における高精度な温度補正を可能にする焦点検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みて、本発明は、光学系を通過した被写体からの光束の分割方向の相対的位置ずれ量を検出する検出部と、前記検出部の出力に基づいて、焦点状態を検出する焦点検出手段と、前記検出部の近傍に設けられ、温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記焦点検出手段により検出された焦点状態を補正する補正手段とを有する焦点検出装置であって、前記補正手段は、予め測定された、前記温度検出手段により検出された温度と前記光学系の温度の差分のうち、最小値と最大値の間の所定値および前記焦点検出装置の電源が投入されてからの時間に基づいて、前記温度検出手段により検出された温度を補正し、該補正された温度に基づいて、前記焦点状態を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位相差検出部と同一チップ上に設けられた温度検出部の出力を用いて焦点検出における高精度な温度補正を行うことが可能となるため、別途温度センサを設ける必要が無く、焦点状態検出センサ付近のスペースの有効利用とコストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態における撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】(A)焦点状態検出センサの構成例を示す図および(B)位相差AFにおける像信号を例示する図である。
【図3】焦点検出の環境温度と像ずれ量の関係を示す図である。
【図4】焦点状態検出センサの温度上昇傾向を示す図である。
【図5】温度差補正量の時間に応じたカーブの一例を示す図である。
【図6】フォーカス制御部の構成例を示す図である。
【図7】第1実施形態における、ビデオカメラの動作を説明するフローチャートである。
【図8】焦点調節制御を説明するフローチャートである。
【図9】焦点検出を説明するフローチャートである。
【図10】温度補正を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第1実施形態を実施した場合の、焦点検出結果の一例を示す図である。
【図12】第2実施形態における、焦点検出を説明するフローチャートである。
【図13】第2実施形態における、初期値設定方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1は焦点調節制御装置を搭載した撮像装置の構成例を示す図である。ここで言う撮像装置は、被写体を撮影して、動画や静止画のデータをテープや固体メモリ、光ディスクや磁気ディスク等の各種メディアに記録する、いわゆるビデオカメラやデジタルスチルカメラ等を含む。装置内の各ユニットは、バス160を介して接続されており、各ユニットはメインCPU(中央演算処理装置)151によって制御される。
【0011】
レンズユニット101は、固定1群レンズ102、ズームレンズ111、絞り103、固定3群レンズ121、フォーカスレンズ131を含む。これらの光学部材を通して、撮像素子141上に結像する被写体像は、電気信号に変換される。ズーム制御部113は、メインCPU151の指示に従い、ズームモータ112を介してズームレンズ111を駆動して焦点距離を変更する。また、フォーカスレンズ131は、フォーカスモータ132によって駆動され、焦点調節状態が制御される。フォーカスレンズ131は焦点調節用レンズであり、図1には単レンズで簡略的に示している。
【0012】
撮像素子141上に結像されて光電変換された画像は、撮像信号処理部142で画像信号として整えられ、撮像信号(TVS)がAF信号処理部134に出力される。AF信号処理部134は、撮像信号TVSから測距ゲートにて画面内の一部のみを抽出し、不図示のバンドパスフィルタおよび検波部によってAF評価値(FV)を示す信号を生成し、フォーカス制御部133へ出力する。AF評価値FVは、撮像信号を処理して得た焦点調節用の評価値であり、後述する撮像信号AF制御部302で使用される。
【0013】
レンズユニット101の外部に設けられている焦点状態検出センサ130は、光学部材を通過した被写体からの光束の分割方向における相対的位置ずれ量を検出する。結像レンズは焦点検出光学系138を構成し、該レンズを通した像を位相差検出部139が検出する。また、位相差検出部139と同一チップ上には、温度検出部135が実装されている。この温度検出部135は、抵抗回路からなり、温度の変化に伴う抵抗値の変化を、電圧値をAD変換することによって取得し、温度の変化量に換算するというものである。
【0014】
焦点状態検出センサ130は、フォーカスレンズ131を合焦位置に移動させるための制御に用いる焦点状態の検出情報として、撮像装置から被写体までの検出距離Lを示す信号を算出し、フォーカス制御部133へ出力する。フォーカス制御部133は、位相差AFによる検出距離Lと、前記AF評価値FVに基づいてフォーカスモータ132を駆動する。フォーカスレンズ131の移動制御により、AF機能が実現される。
【0015】
撮像信号処理部142の出力する画像データは撮像制御部143に送られ、一時的にRAM(ランダム・アクセス・メモリ)154に蓄積される。RAM154に蓄積された画像データは画像圧縮解凍部153にて圧縮された後で画像記録媒体157に記録される。これと並行して、RAM154に蓄積された画像データは、画像処理部152にて最適なサイズへの縮小・拡大処理が行われる。最適なサイズに処理された画像データは、モニタディスプレイ150に送られて画像表示されることで、リアルタイムでユーザが撮影画像が観察できる。また、撮影直後にはモニタディスプレイ150が所定時間だけ撮影画像を表示することで、ユーザは撮影画像を確認できる。
【0016】
操作部156はユーザが装置への指示を行うために使用する。操作指示信号はバス160を介してメインCPU151に送られる。バッテリ159は、電源管理部158により適切に管理されて撮像装置全体に安定した電源供給を行う。フラッシュメモリ155には撮像装置の動作に必要な制御プログラムが記憶されている。ユーザ操作により撮像装置がOFF状態から起動すると、フラッシュメモリ155に格納されていたプログラムがRAM154の一部にロードされる。メインCPU151はRAM154にロードされたプログラムに従って動作制御を行う。
【0017】
図2(A)は焦点状態検出センサ130の構成例を示す図である。
【0018】
第1の検出部203と第2の検出部205は、基線長Bだけ互いに離れて設置されている。被写体201からの光のうち、第1の結像レンズ202を通った光は、第1の検出部203上に結像する。また、第2の結像レンズ204を通った光は第2の検出部205上に結像する。第1の検出部203、第2の検出部205はそれぞれ90個の画素から構成されるものとする。第1の検出部203、第2の検出部205は不図示のAGC(自動利得制御)回路を有しており、該回路は検出部203、205の出力するデータのサンプリングおよびゲイン調整を行う。なお、各検出部を構成する画素から、AGC回路で用いる画素を自由に設定できるものとする。
【0019】
図2(B)は、第1の検出部203、第2の検出部205の出力信号(以下、像信号という)を例示する。縦軸は像信号のレベルを表し、横軸は画素位置を表す。図中のグラフ曲線P1は第1の検出部203からの像信号を表し、グラフ曲線P2は第2の検出部205からの像信号を表す。
【0020】
第1の検出部203と第2の検出部205は基線長Bだけ離れているため、第1の検出部203からの像信号(P1参照)と第2の検出部205からの像信号(P2参照)は、画素数Xだけずれた信号となる。そこで、2つの像信号に対して相関演算が行われる。この相関演算では、画素をずらしながら2つの像信号の相関値が演算され、相関値が最大になる位置同士の差が相対的位置ずれ量Xとして算出される。相関演算はメインCPU151で行われる。
【0021】
ここで、背景技術で説明したように、撮像装置の置かれた環境温度によって、焦点検出光学系138が膨張、収縮し、第1の結像レンズ202と第2の結像レンズ204の間の距離が変化する。このレンズ間の距離の変化分は、そのまま相対的位置ずれ量Xに反映されてしまうため、相関演算によって得られた相対的位置ずれ量Xに温度補正を行い、像ずれ量Xaを求める。図3は、焦点検出の温度と像ずれ量の関係を示す図であり、縦軸は像ずれ量を表し、横軸は温度を表す。撮像装置が調整された時の温度を基準温度(Tbと記す)、焦点検出時の温度(Teと記す)を用いて、像ずれ量の温度補正量ΔXtは、「ΔXt=k1・(Tb−Te)」で表される。ここで、k1は、レンズを形成する素材の線膨張係数、第1の検出部203、第2の検出部205の画素ピッチなどから求められる比例係数である。
【0022】
像ずれ量Xaと基線長B、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の焦点距離(fと記す)を用いて、三角測距の原理で被写体までの距離(被写体距離)Lは、「L=B・(f/Xa)」の関係式から求められる。被写体までの検出距離に基づいて、メインCPU151は被写体に対して合焦状態を得るためのフォーカスレンズ位置を算出する。この算出には計算式を用いた演算だけでなく、予め不図示のメモリに記憶された、被写体距離に対する合焦位置のデータを読み出すことも含む。
【0023】
以上のように、焦点状態検出センサの第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204によって2分割した光束の分割方向の相対的位置ずれ量を相関演算によって求め、結像レンズの温度膨張、収縮の影響を考慮して、相対的位置ずれ量を温度補正することによって、像ずれ量Xa、被写体距離Lを求める。
【0024】
ここで、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の温度膨張、収縮の影響を考慮して高精度に温度補正を行うためには、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の温度を精度良く検出する必要がある。位相差検出部139と同一チップ上に設けた温度検出部135は、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の温度を直接測定するものではなく、撮像装置自身の発熱の影響を受けて、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の実際の温度との間に誤差が生じる。
【0025】
図4は、環境温度20℃下で、撮像装置を起動した場合の、温度検出部135から算出した温度と、第1の結像レンズ202に熱電対などの温度計を取り付けて測定した結像レンズの実温度の上昇傾向を表した図である。縦軸は温度を表し、横軸は撮像装置を起動してからの時間を表す。図中のグラフ曲線T1は温度検出部135からの出力を表し、グラフ曲線T2は結像レンズの実温度を表す。図4(A)は、撮像装置を起動する前の状態が、長時間電源を切られた状態であり、撮像装置が十分に冷めきっている状態から、撮像装置を起動し、焦点検出を開始した時(以下、冷起動という)の温度変化を表した図である。図4(B)は、撮像装置を長時間使用し、十分に暖まりきった後、リセットなどの目的で電源を一瞬切られ、すぐに撮像装置を再起動し、焦点検出を開始した時(以下、温起動という)の温度変化を表した図である。
【0026】
図4より、温度検出部135の出力が、第1の結像レンズ202の実際の温度とずれているため、温度検出部135による温度を用いて温度補正を行うと、像ずれ量Xaに誤差を生じる。なぜなら、「ΔXt=k1・(Tb−Te)」の内のTeが第1の結像レンズ202の実温度より大きく得られるため、実際の補正量よりも、温度補正量ΔXtが大きくなるからである。
【0027】
また、この温度差は、撮像装置の起動時間、撮像装置の起動時の状況によって変化する。例えば図4(A)のように撮像装置を冷起動した場合、起動直後は温度検出部135の出力と結像レンズ202の実温度はほぼ等温で、時間が経過するにつれて温度差が大きくなり、起動後の経過時間10分以降は該温度差がほぼ一定になる。一方、図4(B)のように撮像装置を温起動した場合、起動直後から温度検出部135の出力と結像レンズ202の実温度との温度差はほぼ一定である。
【0028】
本実施例では、このような点を考慮して、結像レンズの温度と温度検出部135による温度の差分を補正する温度差補正を行う。
【0029】
温度差補正量の算出方法について説明する。予め、一定温度環境下にて30分間、温度検出部135による温度と、結像レンズの実温度の差分の時間変化を取得する。なお、レンズの実温度は、必ずしも毎回測定する必要はなく、例えば機種毎になど、同じ温度上昇傾向を示すことが想定される撮像装置で測定しておけば良い。この測定された温度差の内、最大の温度差ΔTmaxと最小の温度差ΔTmin、温度差が最大の温度差の60%となる時間τを、撮像装置の不揮発性のメモリに記憶する。
【0030】
焦点検出時には、不揮発性のメモリに記憶した温度差の最大値ΔTmax、最小値ΔTmin、温度差が最大の温度差の60%となる時間τと、撮像装置を起動してからの時間tに基づいて、温度差補正量ΔTを、「ΔT=(ΔTmax+ΔTmin)/2+(ΔTmax−ΔTmin)・(1−EXP(−t/τ))/2」の関係式から求める。この関係式によれば、t=0のときの温度差補正量ΔTは所定の値(ΔTmax+ΔTmin)/2になる。
【0031】
図5は、温度差補正量ΔTの、時間に応じたカーブを表す図である。縦軸は温度差を表し、横軸は撮像装置を起動してからの時間を表す。図中のグラフ曲線ΔT1は、冷起動時の温度検出部135による温度と第1の結像レンズ202の実温度との差分(図4中、T1−T2)を表し、グラフ曲線ΔT2は温起動時の温度差を表す。グラフ曲線ΔT3が、時間に応じた温度差補正量ΔTである。撮像装置を起動してから時間に応じて、温度差の最大値ΔTmax、最小値ΔTminの平均値から、温度差の最大値ΔTmaxへ変化するカーブを描く曲線に則って温度差補正量を決定する。焦点検出時の温度検出部の出力Ttから温度差補正量ΔTを減算することで、温度検出部の出力とレンズの実温度の差分を軽減させた温度Teを算出する。
【0032】
撮像装置の起動直後に、温度差補正量ΔTを(ΔTmax+ΔTmin)/2として、冷起動時、温起動時における温度差の中間をとることで、撮像装置の起動方法に依らず、誤差を一定に抑え、以後の時間は、時定数τとして温度差補正量ΔTを決定する。
【0033】
なお、カーブの計算を予め行っておき、1分置きの温度差補正量ΔTの値をテーブルとしてメモリに記憶しておき、焦点検出時には、撮像装置を起動してからの時間tに応じて、その前後の時間に相当するΔTから、直線補間によって、温度差補正量を算出しても良い。
【0034】
以上が、温度差補正の方法であり、温度検出部の出力を温度差補正量ΔTを加算することによりTeを補正し、該補正したTeより算出された温度差(Tb−Te)を用いて、相対的位置ずれ量を温度補正することで、像ずれ量Xa、被写体距離Lを算出する。
【0035】
図6はフォーカス制御部133の構成例を示す。
【0036】
焦点状態検出センサ130は、撮像装置から被写体までの検出距離Lを示す情報(該検出距離に基づく合焦フォーカスレンズ位置の情報を含む)を、AF方式選択部301に出力する。AF信号処理部134は、AF評価値FVの情報(現在のフォーカスレンズ位置の情報を含む)を、撮像信号AF制御部302とAF方式選択部301に出力する。
【0037】
撮像信号AF制御部302は、いわゆる微小駆動および山登り駆動の動作制御を行う。微小駆動の動作ではフォーカスレンズ131を微小量で駆動し、微小駆動する前の状態と、微小駆動後の状態とでAF評価値FVを比較する。AF評価値FVを比較した結果、AF評価値が増加している場合、フォーカスレンズ131をさらに同一方向に動かし、またAF評価値が減少している場合にはフォーカスレンズ131を逆方向に動かす制御が実行される。この繰り返しにより、同一方向への連続した駆動の場合には、その方向に合焦点があると見なすことができる。また、山登り駆動の動作では、合焦方向の判別後に、フォーカスレンズ131を大きな移動量で動かす制御が実行される。
【0038】
AF方式選択部301は、位相差AFと撮像信号AFを選択できるように切り換え部(図にはスイッチの記号で示す)303を制御する。被写体距離Lに基づいてフォーカスレンズ131を駆動した場合、現在のフォーカスレンズ位置が被写体距離Lに基づく合焦フォーカスレンズ位置と一致するならば、撮像信号AFに切り換わる。
【0039】
図7は、本実施例における撮像装置のフローチャートである。S701において、撮像装置の電源がONにされると、CPU151が演算を開始する。以下の処理は、CPU151が演算を行うことで実現される。
【0040】
S702において、撮像装置のフラグや制御変数等を初期化する。本実施例では、AFモードを特定するAFMODE(変数)が用意されており、初期値としてAFMODEに1が設定される他、この時に温度差補正カーブを算出する。S703において、フォーカスレンズ131などの撮像光学部材を初期位置へ移動する。S704において、ユーザの電源OFF操作検出を行う。電源OFF操作を検出した場合は、S705において、撮像装置の電源を切るため、撮像光学部材を初期位置へ移動し、各種フラグや制御変数等のクリアなど、後処理を行う。S706において、撮像装置の処理を終了する。電源OFF操作が検出されなかった場合は、S708において、焦点調節制御処理を行う。S709において、フォーカス制御部133は、S708で決定した駆動方向、速度、位置でモータを駆動し、フォーカスレンズ131を所望の位置へ移動させる。
【0041】
S710において、撮像素子141は被写体像を光電変換し、撮像信号処理部142は光電変換された被写体像に処理を施して画像信号として出力する。S711において、ユーザの記録ボタン押下を検出し、記録中であるか否かを確認する。記録中でない場合は、S704へ戻り、記録中である場合は、撮像信号処理部142から出力された画像信号を画像圧縮解凍部153が圧縮処理し、画像記録媒体157へ記録した後、S704へ戻る。
【0042】
図8は、本実施形態における焦点調節制御処理例を示すフローチャートである。
【0043】
S801で焦点調節制御処理が開始すると、S802において、焦点検出を行う。S803において、焦点状態検出センサ130から、焦点検出結果である被写体距離Lとその信頼性を取得する。S804において、AF信号処理部134からAF評価値FVを取得する。
【0044】
S805に進み、AFMODEの値に応じて3つの条件分岐処理が実行される。AFMODEの値が1の場合(第1の制御モード)、位相差AFによる合焦制御を行うためにS811へ移行する。また、AFMODEの値が2の場合(第2の制御モード)、撮像信号AFによる合焦制御を行うためにS821へ移行する。AFMODEの値が3の場合(第3の制御モード)には、S831へ移行する。この場合、合焦動作が完了した状態から変化が起きたか否かが監視され、状態に変化があった場合、AFMODEの値を1または2に設定する処理が実行される。
【0045】
まず、第1の制御モード(AFMODEの値が1の場合)を説明する。S811にてフォーカス制御部133は、被写体距離Lと、現在のフォーカスレンズ位置に基づいてレンズ駆動方向と速度を決定する。次のS812では、被写体距離Lに対応する合焦位置と現在のフォーカスレンズ位置が一致したか否かについて判定される。両者が一致したと判定された場合、S813へ移行し、不一致と判定された場合、S841へ移行する。S813にて、位相差AFの後、合焦近傍にて撮像信号AFを行うため、AFMODEに2が設定された後、リターン処理となる。
【0046】
次に第2の制御モード(AFMODEの値が2の場合)を説明する。S821において、微小駆動動作を行い、AF評価値が増加しているかを確認する。AF評価値が増加している場合は、S841へステップを移す。AF評価値が増加していない場合は、S822において、微小駆動動作の駆動方向を逆転させる。S823において、AF評価値がピークを通過したかを確認し、ピークを通過していない場合はS841へステップを移す。ピークを通過した場合は、S824において、合焦位置を見つけたと判断し、AFMODEに3を設定された後、リターン処理となる。
【0047】
次に第3の制御モード(AFMODEの値が3の場合)を説明する。S831において、フォーカスレンズ131は、AF評価値FVのピーク位置へと戻って停止する。S832でフォーカス制御部133はAF評価値FVが所定値(閾値)以上変化したか否かについて監視する。FVの値が閾値以上変化した場合、S833へ移行し、閾値未満の場合、S841へ移行する。S833において、被写体距離Lが、合焦位置での値から変化したか否かについて判定される。検出距離の変化量が所定の閾値以上である場合、S834へ移行し、閾値未満の場合、S835へ移行する。S834では、被写体距離LおよびAF評価値FVがともに変化しているため、被写体像のボケ量が大きいと判断され、AFMODEの値として1が設定される。そしてS841へ移行する、また、S835では、AF評価値FVは変化しているが、被写体距離Lは変化していないため、被写体像のボケ量が小さいと判断され、AFMODEの値として2が設定され、S841へ移行し、リターン処理となる。
【0048】
図9は、本実施形態における焦点検出動作のフローチャートである。
【0049】
S901にて、焦点検出処理が開始されると、S902で位相差検出部139の画素蓄積が開始し、AGC領域における像信号のモニタリング処理が実行される。S903は、像信号が一定のレベルに達したか否かを確認することで、蓄積が終了したか否かを判定する処理である。画素の蓄積が終了した場合、S904へ移行し、蓄積が未終了の場合には、S902に戻る。S904にて、画素値から像信号を取得し、S905において、相関演算が行われ、相対的位置ずれ量Xが算出される。S906において、得られた相対的位置ずれ量Xの温度補正を行う。
【0050】
図10は、温度補正のフローチャートである。S1001において、温度補正処理が開始されると、S1002において、相対的位置ずれ量を取得する。S1003において、温度検出部135からの出力Ttを取得し、S1004において、撮像装置の起動からの時間tを取得する。S1005において、起動時間tに基づいて、前述の方法により、温度差補正量ΔTを算出する。S1006において、温度検出部の出力Ttから温度差補正量ΔTを減算することによって、焦点検出時温度Teを算出し、S1007において、焦点検出時温度Teと、撮像装置のメモリに記憶されている調整時温度Tbに基づいて温度補正量ΔXtを算出する。S1008において、相対的位置ずれ量に温度補正量ΔXtを加算し、像ずれ量を算出し、S1009において、リターン処理を行う。
【0051】
図9に戻り、S907において、像ずれ量Xaより、被写体距離Lを算出し、信頼性を算出して、S908において、焦点検出処理のリターン処理となる。信頼性は、像信号のコントラストおよび相関演算を行った際の像の一致度から算出される。
【0052】
以上のように、第1実施形態では、温度検出部の出力を温度差補正した温度を算出し、その温度を用いて、相対的位置ずれ量を温度補正し、像ずれ量、被写体距離を算出する。この構成によれば、位相差検出部と同一チップ上に設けられた温度検出部の出力を用いて、焦点検出の温度補正を行うことが可能となる。これにより、焦点状態検出センサの結像レンズ近傍に別途温度センサを設ける必要がなく、コストダウンが可能となり、また、別途温度センサを設けるための構造が不要なため、焦点状態検出センサ付近のスペースの有効利用が可能となる。また、温度検出部の出力と、結像レンズの実温度の誤差を補正することによって、焦点検出にかかる誤差を抑えることが可能となる。図11は、第1実施形態での温度補正を行った場合の、一定温度環境下での、像ずれ量Xaの時間経過を示したものである。冷起動、温起動の場合ともに、起動直後の過渡状態では、誤差を伴うが、時間経過とともに、実際の被写体距離に相当する像ずれ量に収束していく。また、冷起動、温起動で誤差がプラス側、マイナス側に振れるように配分したことにより、定常状態で実際の被写体距離に相当する像ずれ量に合うようにオフセットをとったものに対して、起動直後の過渡状態での誤差量が半分程度で済む。本実施例では、位相差AFの他に撮像信号AFを行うハイブリッドAFを行っており、位相差AFでの誤差を軽減することにより、合焦近傍での撮像信号AFに要する時間を短くでき、焦点調節制御にかかる時間を短くすることが可能である。
【0053】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、第1実施形態との相違のみを説明し、第1実施形態の場合と同様の構成要素については既に使用した符号と同じ符号を用いることにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0054】
第1実施形態では、図5に示すように、温度差補正量は、「ΔT=(ΔTmax+ΔTmin)/2+(ΔTmax−ΔTmin)・(1−EXP(−t/τ))/2」で表され、撮像装置の起動直後の温度差補正量(以下、初期値という)は、(ΔTmax+ΔTmin)/2であった。第2実施形態では、撮像装置の起動時間からのみではなく、撮像装置の動作モード、動作状態を考慮し、初期値を変化させることで、高精度に温度差補正を行う。
【0055】
図12は第2実施形態での焦点検出のフローチャートである。S1201において、撮像装置の起動後、最初に行われる焦点検出であるか否かを判別する。最初に行われた焦点検出でない場合は、S1205にステップを移す。最初に行われた焦点検出である場合、S1203にステップを移す。S1203において、カメラを起動してから、最初に焦点検出を行うまでの時間tdを取得する。S1204において、温度差補正の初期値設定を行う。
【0056】
図13は、温度差補正の初期値設定のフローチャートである。S1301で初期値設定が開始されると、S1301において、第1実施形態と同様、撮像装置に記憶された温度差の最小値ΔTminと最大値ΔTmaxの平均Tstを求める。S1303において、撮像装置の起動後、最初に焦点検出を行うまでの時間tdが所定時間より短いか否かを判別する。所定時間より短い場合は、S1305へステップを移す。時間tdが所定時間より長い場合は、S1304へステップを移す。S1304に進んだ場合、撮像装置が再生モードやマニュアルフォーカスで起動され、焦点検出が動いていなくとも、撮像装置の電源が入っている状態である。撮像装置を起動してから焦点検出開始まで十分時間が経っているため、焦点検出開始時は温起動に近い状態となる。そこで、S1304において、撮像装置が起動されてから最初に焦点検出を行うまでの時間tdに基づいて、初期値Tsを大きくする。焦点検出を行うまでの時間tdに比例定数k2を乗じた値Aを最小値ΔTminと最大値ΔTmaxの平均Tstに加算することで、初期値Tsが算出される。ここで、k2は、時間から温度に変換する比例係数である。なお、加算後の値がΔTmaxを超える場合には、TsをΔTmaxに制限する。
【0057】
また、S1305において、撮像装置の電源をOFFにしていた時間が長ければ、撮像装置は冷めており、冷起動に近い状態となるため、撮像装置の電源をOFFにしている時間に応じて、初期値Tsを小さくする。撮像装置の電源をOFFにしていた時間をtfとすると、tfは、次のようにして取得可能である。図7中のS705の後処理において、システム時間に基づいて撮像装置の電源を切った時間を記憶しておく。次回撮像装置の電源を入れた際に、S702の初期化において撮像装置の起動時の時間を記憶すれば、撮像装置の電源を切った時間との差分によってtfを取得することができる。電源をOFFにしていた時間tdに比例定数k3を乗じた値Bを最小値ΔTminと最大値ΔTmaxの平均Tstから減算することで、初期値Tsが算出される。ここでk3は、k2と同様、時間から温度に変換する比例係数である。なお、減算後の値がΔTminを下回る場合には、TsをΔTminに制限する。
【0058】
以後、図12に戻り、S1205以降のステップを行う。S1205以降の処理は、図9のS902以降の処理と同様である。ただし、初期値を可変にしたため、温度差補正量は、初期値Tsを用いて、「ΔT=Ts+(ΔTmax−Ts)・(1−EXP(−t/τ))」と求める。
【0059】
以上のように、第2実施形態では、撮像装置の動作モード、動作状態を考慮し、初期値Tsを可変とし、温度差補正量のカーブを可変にする。これにより、撮像装置が再生モードで起動された後、撮影モードに入り、焦点調節制御を開始した場合や、撮像装置がマニュアルフォーカスで起動された後、AFモードに入り、焦点調節制御を開始した場合に、焦点検出時の温度補正誤差を軽減することができる。
【0060】
また、温度検出部による温度と、レンズの実温度との差が大きい場合には、撮像装置の起動直後の一定時間は焦点検出の結果を利用しないようにしても良い。その場合は、カメラの起動直後のAFは撮像信号AFのみで駆動する。
【0061】
また、温度差の最小値ΔTminと最大値ΔTmaxは、焦点検出の結果を利用しない一定時間を除いた範囲で求めるようにしても良い。
【0062】
また、本実施例では、温度差補正量の算出方法を、最大の温度差の60%の温度差となる時間を時定数とするカーブによって求めたが、数値は60%に限定されない。また、温度差補正量を線形で算出するようにしても良い。
【0063】
また、本実施例では、位相差検出部と同一チップ上に実装された温度検出部の形態で説明を行ったが、温度検出部は必ずしも位相差検出部と同一チップ上にある必要はなく、結像レンズの温度と温度検出部の温度に差を生じる構成ならば、本手法の適用が可能である。
【0064】
また、本実施例では、外部測距方式の位相差AFの形態で説明を行ったが、撮像レンズを通った光束を2分割する、いわゆるTTL方式の位相差AFでも同様に実施することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
101 レンズユニット
130 焦点状態検出センサ
131 フォーカスレンズ
133 フォーカス制御部
134 AF信号処理部
135 温度検出部
138 結像レンズ
139 位相差検出部
141 撮像素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像装置に搭載されるオートフォーカス(AF)方式の一つとして、位相差検出方式(以下、位相差AFという)がある。位相差AFでは、撮影レンズの内部あるいは外部に設けられた焦点状態検出センサにより、被写体までの距離情報を検出する。具体的には、焦点状態検出センサのレンズによって光束を2分割し、2分割した光束を一組の位相差検出部によりそれぞれ受光する。その受光量に応じて出力される信号のずれ量、すなわち、光束の分割方向の相対的位置ずれ量を検出することで、被写体までの距離、ひいては撮影レンズのピント方向のずれ量を求める。従って、位相差検出部により一度電荷蓄積動作を行えば、ピントずれの量と方向が得られ、高速な焦点調節動作が可能となる。
【0003】
位相差AFでは、焦点状態検出センサのレンズが撮像装置の置かれた環境温度によって膨張収縮する影響により、焦点検出に誤差を生じる場合がある。この誤差を打ち消すために、特許文献1では、焦点状態検出センサのレンズ近傍に温度センサを設け、温度センサの出力に基づいて温度補正を行っている。また、特許文献2では、焦点状態検出センサ近傍の他に、撮像装置外装近傍にも温度センサを設けることで、環境温度だけではなく、撮像装置自身の発熱による影響も考慮した温度補正を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−38312号公報
【特許文献2】特開2010−39373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、焦点状態検出センサのレンズ近傍に温度センサを設置するための構造が必要なので、焦点状態検出センサが大きくなるという課題があった。また、特許文献2では、複数の温度センサを設置することが必要なため、スペースが必要になる、コストがかかるという課題があった。
【0006】
上記の課題に対し、本発明は、余計なスペースやコストを必要とせずに、焦点検出における高精度な温度補正を可能にする焦点検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みて、本発明は、光学系を通過した被写体からの光束の分割方向の相対的位置ずれ量を検出する検出部と、前記検出部の出力に基づいて、焦点状態を検出する焦点検出手段と、前記検出部の近傍に設けられ、温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記焦点検出手段により検出された焦点状態を補正する補正手段とを有する焦点検出装置であって、前記補正手段は、予め測定された、前記温度検出手段により検出された温度と前記光学系の温度の差分のうち、最小値と最大値の間の所定値および前記焦点検出装置の電源が投入されてからの時間に基づいて、前記温度検出手段により検出された温度を補正し、該補正された温度に基づいて、前記焦点状態を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位相差検出部と同一チップ上に設けられた温度検出部の出力を用いて焦点検出における高精度な温度補正を行うことが可能となるため、別途温度センサを設ける必要が無く、焦点状態検出センサ付近のスペースの有効利用とコストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態における撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】(A)焦点状態検出センサの構成例を示す図および(B)位相差AFにおける像信号を例示する図である。
【図3】焦点検出の環境温度と像ずれ量の関係を示す図である。
【図4】焦点状態検出センサの温度上昇傾向を示す図である。
【図5】温度差補正量の時間に応じたカーブの一例を示す図である。
【図6】フォーカス制御部の構成例を示す図である。
【図7】第1実施形態における、ビデオカメラの動作を説明するフローチャートである。
【図8】焦点調節制御を説明するフローチャートである。
【図9】焦点検出を説明するフローチャートである。
【図10】温度補正を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第1実施形態を実施した場合の、焦点検出結果の一例を示す図である。
【図12】第2実施形態における、焦点検出を説明するフローチャートである。
【図13】第2実施形態における、初期値設定方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1は焦点調節制御装置を搭載した撮像装置の構成例を示す図である。ここで言う撮像装置は、被写体を撮影して、動画や静止画のデータをテープや固体メモリ、光ディスクや磁気ディスク等の各種メディアに記録する、いわゆるビデオカメラやデジタルスチルカメラ等を含む。装置内の各ユニットは、バス160を介して接続されており、各ユニットはメインCPU(中央演算処理装置)151によって制御される。
【0011】
レンズユニット101は、固定1群レンズ102、ズームレンズ111、絞り103、固定3群レンズ121、フォーカスレンズ131を含む。これらの光学部材を通して、撮像素子141上に結像する被写体像は、電気信号に変換される。ズーム制御部113は、メインCPU151の指示に従い、ズームモータ112を介してズームレンズ111を駆動して焦点距離を変更する。また、フォーカスレンズ131は、フォーカスモータ132によって駆動され、焦点調節状態が制御される。フォーカスレンズ131は焦点調節用レンズであり、図1には単レンズで簡略的に示している。
【0012】
撮像素子141上に結像されて光電変換された画像は、撮像信号処理部142で画像信号として整えられ、撮像信号(TVS)がAF信号処理部134に出力される。AF信号処理部134は、撮像信号TVSから測距ゲートにて画面内の一部のみを抽出し、不図示のバンドパスフィルタおよび検波部によってAF評価値(FV)を示す信号を生成し、フォーカス制御部133へ出力する。AF評価値FVは、撮像信号を処理して得た焦点調節用の評価値であり、後述する撮像信号AF制御部302で使用される。
【0013】
レンズユニット101の外部に設けられている焦点状態検出センサ130は、光学部材を通過した被写体からの光束の分割方向における相対的位置ずれ量を検出する。結像レンズは焦点検出光学系138を構成し、該レンズを通した像を位相差検出部139が検出する。また、位相差検出部139と同一チップ上には、温度検出部135が実装されている。この温度検出部135は、抵抗回路からなり、温度の変化に伴う抵抗値の変化を、電圧値をAD変換することによって取得し、温度の変化量に換算するというものである。
【0014】
焦点状態検出センサ130は、フォーカスレンズ131を合焦位置に移動させるための制御に用いる焦点状態の検出情報として、撮像装置から被写体までの検出距離Lを示す信号を算出し、フォーカス制御部133へ出力する。フォーカス制御部133は、位相差AFによる検出距離Lと、前記AF評価値FVに基づいてフォーカスモータ132を駆動する。フォーカスレンズ131の移動制御により、AF機能が実現される。
【0015】
撮像信号処理部142の出力する画像データは撮像制御部143に送られ、一時的にRAM(ランダム・アクセス・メモリ)154に蓄積される。RAM154に蓄積された画像データは画像圧縮解凍部153にて圧縮された後で画像記録媒体157に記録される。これと並行して、RAM154に蓄積された画像データは、画像処理部152にて最適なサイズへの縮小・拡大処理が行われる。最適なサイズに処理された画像データは、モニタディスプレイ150に送られて画像表示されることで、リアルタイムでユーザが撮影画像が観察できる。また、撮影直後にはモニタディスプレイ150が所定時間だけ撮影画像を表示することで、ユーザは撮影画像を確認できる。
【0016】
操作部156はユーザが装置への指示を行うために使用する。操作指示信号はバス160を介してメインCPU151に送られる。バッテリ159は、電源管理部158により適切に管理されて撮像装置全体に安定した電源供給を行う。フラッシュメモリ155には撮像装置の動作に必要な制御プログラムが記憶されている。ユーザ操作により撮像装置がOFF状態から起動すると、フラッシュメモリ155に格納されていたプログラムがRAM154の一部にロードされる。メインCPU151はRAM154にロードされたプログラムに従って動作制御を行う。
【0017】
図2(A)は焦点状態検出センサ130の構成例を示す図である。
【0018】
第1の検出部203と第2の検出部205は、基線長Bだけ互いに離れて設置されている。被写体201からの光のうち、第1の結像レンズ202を通った光は、第1の検出部203上に結像する。また、第2の結像レンズ204を通った光は第2の検出部205上に結像する。第1の検出部203、第2の検出部205はそれぞれ90個の画素から構成されるものとする。第1の検出部203、第2の検出部205は不図示のAGC(自動利得制御)回路を有しており、該回路は検出部203、205の出力するデータのサンプリングおよびゲイン調整を行う。なお、各検出部を構成する画素から、AGC回路で用いる画素を自由に設定できるものとする。
【0019】
図2(B)は、第1の検出部203、第2の検出部205の出力信号(以下、像信号という)を例示する。縦軸は像信号のレベルを表し、横軸は画素位置を表す。図中のグラフ曲線P1は第1の検出部203からの像信号を表し、グラフ曲線P2は第2の検出部205からの像信号を表す。
【0020】
第1の検出部203と第2の検出部205は基線長Bだけ離れているため、第1の検出部203からの像信号(P1参照)と第2の検出部205からの像信号(P2参照)は、画素数Xだけずれた信号となる。そこで、2つの像信号に対して相関演算が行われる。この相関演算では、画素をずらしながら2つの像信号の相関値が演算され、相関値が最大になる位置同士の差が相対的位置ずれ量Xとして算出される。相関演算はメインCPU151で行われる。
【0021】
ここで、背景技術で説明したように、撮像装置の置かれた環境温度によって、焦点検出光学系138が膨張、収縮し、第1の結像レンズ202と第2の結像レンズ204の間の距離が変化する。このレンズ間の距離の変化分は、そのまま相対的位置ずれ量Xに反映されてしまうため、相関演算によって得られた相対的位置ずれ量Xに温度補正を行い、像ずれ量Xaを求める。図3は、焦点検出の温度と像ずれ量の関係を示す図であり、縦軸は像ずれ量を表し、横軸は温度を表す。撮像装置が調整された時の温度を基準温度(Tbと記す)、焦点検出時の温度(Teと記す)を用いて、像ずれ量の温度補正量ΔXtは、「ΔXt=k1・(Tb−Te)」で表される。ここで、k1は、レンズを形成する素材の線膨張係数、第1の検出部203、第2の検出部205の画素ピッチなどから求められる比例係数である。
【0022】
像ずれ量Xaと基線長B、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の焦点距離(fと記す)を用いて、三角測距の原理で被写体までの距離(被写体距離)Lは、「L=B・(f/Xa)」の関係式から求められる。被写体までの検出距離に基づいて、メインCPU151は被写体に対して合焦状態を得るためのフォーカスレンズ位置を算出する。この算出には計算式を用いた演算だけでなく、予め不図示のメモリに記憶された、被写体距離に対する合焦位置のデータを読み出すことも含む。
【0023】
以上のように、焦点状態検出センサの第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204によって2分割した光束の分割方向の相対的位置ずれ量を相関演算によって求め、結像レンズの温度膨張、収縮の影響を考慮して、相対的位置ずれ量を温度補正することによって、像ずれ量Xa、被写体距離Lを求める。
【0024】
ここで、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の温度膨張、収縮の影響を考慮して高精度に温度補正を行うためには、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の温度を精度良く検出する必要がある。位相差検出部139と同一チップ上に設けた温度検出部135は、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の温度を直接測定するものではなく、撮像装置自身の発熱の影響を受けて、第1の結像レンズ202、第2の結像レンズ204の実際の温度との間に誤差が生じる。
【0025】
図4は、環境温度20℃下で、撮像装置を起動した場合の、温度検出部135から算出した温度と、第1の結像レンズ202に熱電対などの温度計を取り付けて測定した結像レンズの実温度の上昇傾向を表した図である。縦軸は温度を表し、横軸は撮像装置を起動してからの時間を表す。図中のグラフ曲線T1は温度検出部135からの出力を表し、グラフ曲線T2は結像レンズの実温度を表す。図4(A)は、撮像装置を起動する前の状態が、長時間電源を切られた状態であり、撮像装置が十分に冷めきっている状態から、撮像装置を起動し、焦点検出を開始した時(以下、冷起動という)の温度変化を表した図である。図4(B)は、撮像装置を長時間使用し、十分に暖まりきった後、リセットなどの目的で電源を一瞬切られ、すぐに撮像装置を再起動し、焦点検出を開始した時(以下、温起動という)の温度変化を表した図である。
【0026】
図4より、温度検出部135の出力が、第1の結像レンズ202の実際の温度とずれているため、温度検出部135による温度を用いて温度補正を行うと、像ずれ量Xaに誤差を生じる。なぜなら、「ΔXt=k1・(Tb−Te)」の内のTeが第1の結像レンズ202の実温度より大きく得られるため、実際の補正量よりも、温度補正量ΔXtが大きくなるからである。
【0027】
また、この温度差は、撮像装置の起動時間、撮像装置の起動時の状況によって変化する。例えば図4(A)のように撮像装置を冷起動した場合、起動直後は温度検出部135の出力と結像レンズ202の実温度はほぼ等温で、時間が経過するにつれて温度差が大きくなり、起動後の経過時間10分以降は該温度差がほぼ一定になる。一方、図4(B)のように撮像装置を温起動した場合、起動直後から温度検出部135の出力と結像レンズ202の実温度との温度差はほぼ一定である。
【0028】
本実施例では、このような点を考慮して、結像レンズの温度と温度検出部135による温度の差分を補正する温度差補正を行う。
【0029】
温度差補正量の算出方法について説明する。予め、一定温度環境下にて30分間、温度検出部135による温度と、結像レンズの実温度の差分の時間変化を取得する。なお、レンズの実温度は、必ずしも毎回測定する必要はなく、例えば機種毎になど、同じ温度上昇傾向を示すことが想定される撮像装置で測定しておけば良い。この測定された温度差の内、最大の温度差ΔTmaxと最小の温度差ΔTmin、温度差が最大の温度差の60%となる時間τを、撮像装置の不揮発性のメモリに記憶する。
【0030】
焦点検出時には、不揮発性のメモリに記憶した温度差の最大値ΔTmax、最小値ΔTmin、温度差が最大の温度差の60%となる時間τと、撮像装置を起動してからの時間tに基づいて、温度差補正量ΔTを、「ΔT=(ΔTmax+ΔTmin)/2+(ΔTmax−ΔTmin)・(1−EXP(−t/τ))/2」の関係式から求める。この関係式によれば、t=0のときの温度差補正量ΔTは所定の値(ΔTmax+ΔTmin)/2になる。
【0031】
図5は、温度差補正量ΔTの、時間に応じたカーブを表す図である。縦軸は温度差を表し、横軸は撮像装置を起動してからの時間を表す。図中のグラフ曲線ΔT1は、冷起動時の温度検出部135による温度と第1の結像レンズ202の実温度との差分(図4中、T1−T2)を表し、グラフ曲線ΔT2は温起動時の温度差を表す。グラフ曲線ΔT3が、時間に応じた温度差補正量ΔTである。撮像装置を起動してから時間に応じて、温度差の最大値ΔTmax、最小値ΔTminの平均値から、温度差の最大値ΔTmaxへ変化するカーブを描く曲線に則って温度差補正量を決定する。焦点検出時の温度検出部の出力Ttから温度差補正量ΔTを減算することで、温度検出部の出力とレンズの実温度の差分を軽減させた温度Teを算出する。
【0032】
撮像装置の起動直後に、温度差補正量ΔTを(ΔTmax+ΔTmin)/2として、冷起動時、温起動時における温度差の中間をとることで、撮像装置の起動方法に依らず、誤差を一定に抑え、以後の時間は、時定数τとして温度差補正量ΔTを決定する。
【0033】
なお、カーブの計算を予め行っておき、1分置きの温度差補正量ΔTの値をテーブルとしてメモリに記憶しておき、焦点検出時には、撮像装置を起動してからの時間tに応じて、その前後の時間に相当するΔTから、直線補間によって、温度差補正量を算出しても良い。
【0034】
以上が、温度差補正の方法であり、温度検出部の出力を温度差補正量ΔTを加算することによりTeを補正し、該補正したTeより算出された温度差(Tb−Te)を用いて、相対的位置ずれ量を温度補正することで、像ずれ量Xa、被写体距離Lを算出する。
【0035】
図6はフォーカス制御部133の構成例を示す。
【0036】
焦点状態検出センサ130は、撮像装置から被写体までの検出距離Lを示す情報(該検出距離に基づく合焦フォーカスレンズ位置の情報を含む)を、AF方式選択部301に出力する。AF信号処理部134は、AF評価値FVの情報(現在のフォーカスレンズ位置の情報を含む)を、撮像信号AF制御部302とAF方式選択部301に出力する。
【0037】
撮像信号AF制御部302は、いわゆる微小駆動および山登り駆動の動作制御を行う。微小駆動の動作ではフォーカスレンズ131を微小量で駆動し、微小駆動する前の状態と、微小駆動後の状態とでAF評価値FVを比較する。AF評価値FVを比較した結果、AF評価値が増加している場合、フォーカスレンズ131をさらに同一方向に動かし、またAF評価値が減少している場合にはフォーカスレンズ131を逆方向に動かす制御が実行される。この繰り返しにより、同一方向への連続した駆動の場合には、その方向に合焦点があると見なすことができる。また、山登り駆動の動作では、合焦方向の判別後に、フォーカスレンズ131を大きな移動量で動かす制御が実行される。
【0038】
AF方式選択部301は、位相差AFと撮像信号AFを選択できるように切り換え部(図にはスイッチの記号で示す)303を制御する。被写体距離Lに基づいてフォーカスレンズ131を駆動した場合、現在のフォーカスレンズ位置が被写体距離Lに基づく合焦フォーカスレンズ位置と一致するならば、撮像信号AFに切り換わる。
【0039】
図7は、本実施例における撮像装置のフローチャートである。S701において、撮像装置の電源がONにされると、CPU151が演算を開始する。以下の処理は、CPU151が演算を行うことで実現される。
【0040】
S702において、撮像装置のフラグや制御変数等を初期化する。本実施例では、AFモードを特定するAFMODE(変数)が用意されており、初期値としてAFMODEに1が設定される他、この時に温度差補正カーブを算出する。S703において、フォーカスレンズ131などの撮像光学部材を初期位置へ移動する。S704において、ユーザの電源OFF操作検出を行う。電源OFF操作を検出した場合は、S705において、撮像装置の電源を切るため、撮像光学部材を初期位置へ移動し、各種フラグや制御変数等のクリアなど、後処理を行う。S706において、撮像装置の処理を終了する。電源OFF操作が検出されなかった場合は、S708において、焦点調節制御処理を行う。S709において、フォーカス制御部133は、S708で決定した駆動方向、速度、位置でモータを駆動し、フォーカスレンズ131を所望の位置へ移動させる。
【0041】
S710において、撮像素子141は被写体像を光電変換し、撮像信号処理部142は光電変換された被写体像に処理を施して画像信号として出力する。S711において、ユーザの記録ボタン押下を検出し、記録中であるか否かを確認する。記録中でない場合は、S704へ戻り、記録中である場合は、撮像信号処理部142から出力された画像信号を画像圧縮解凍部153が圧縮処理し、画像記録媒体157へ記録した後、S704へ戻る。
【0042】
図8は、本実施形態における焦点調節制御処理例を示すフローチャートである。
【0043】
S801で焦点調節制御処理が開始すると、S802において、焦点検出を行う。S803において、焦点状態検出センサ130から、焦点検出結果である被写体距離Lとその信頼性を取得する。S804において、AF信号処理部134からAF評価値FVを取得する。
【0044】
S805に進み、AFMODEの値に応じて3つの条件分岐処理が実行される。AFMODEの値が1の場合(第1の制御モード)、位相差AFによる合焦制御を行うためにS811へ移行する。また、AFMODEの値が2の場合(第2の制御モード)、撮像信号AFによる合焦制御を行うためにS821へ移行する。AFMODEの値が3の場合(第3の制御モード)には、S831へ移行する。この場合、合焦動作が完了した状態から変化が起きたか否かが監視され、状態に変化があった場合、AFMODEの値を1または2に設定する処理が実行される。
【0045】
まず、第1の制御モード(AFMODEの値が1の場合)を説明する。S811にてフォーカス制御部133は、被写体距離Lと、現在のフォーカスレンズ位置に基づいてレンズ駆動方向と速度を決定する。次のS812では、被写体距離Lに対応する合焦位置と現在のフォーカスレンズ位置が一致したか否かについて判定される。両者が一致したと判定された場合、S813へ移行し、不一致と判定された場合、S841へ移行する。S813にて、位相差AFの後、合焦近傍にて撮像信号AFを行うため、AFMODEに2が設定された後、リターン処理となる。
【0046】
次に第2の制御モード(AFMODEの値が2の場合)を説明する。S821において、微小駆動動作を行い、AF評価値が増加しているかを確認する。AF評価値が増加している場合は、S841へステップを移す。AF評価値が増加していない場合は、S822において、微小駆動動作の駆動方向を逆転させる。S823において、AF評価値がピークを通過したかを確認し、ピークを通過していない場合はS841へステップを移す。ピークを通過した場合は、S824において、合焦位置を見つけたと判断し、AFMODEに3を設定された後、リターン処理となる。
【0047】
次に第3の制御モード(AFMODEの値が3の場合)を説明する。S831において、フォーカスレンズ131は、AF評価値FVのピーク位置へと戻って停止する。S832でフォーカス制御部133はAF評価値FVが所定値(閾値)以上変化したか否かについて監視する。FVの値が閾値以上変化した場合、S833へ移行し、閾値未満の場合、S841へ移行する。S833において、被写体距離Lが、合焦位置での値から変化したか否かについて判定される。検出距離の変化量が所定の閾値以上である場合、S834へ移行し、閾値未満の場合、S835へ移行する。S834では、被写体距離LおよびAF評価値FVがともに変化しているため、被写体像のボケ量が大きいと判断され、AFMODEの値として1が設定される。そしてS841へ移行する、また、S835では、AF評価値FVは変化しているが、被写体距離Lは変化していないため、被写体像のボケ量が小さいと判断され、AFMODEの値として2が設定され、S841へ移行し、リターン処理となる。
【0048】
図9は、本実施形態における焦点検出動作のフローチャートである。
【0049】
S901にて、焦点検出処理が開始されると、S902で位相差検出部139の画素蓄積が開始し、AGC領域における像信号のモニタリング処理が実行される。S903は、像信号が一定のレベルに達したか否かを確認することで、蓄積が終了したか否かを判定する処理である。画素の蓄積が終了した場合、S904へ移行し、蓄積が未終了の場合には、S902に戻る。S904にて、画素値から像信号を取得し、S905において、相関演算が行われ、相対的位置ずれ量Xが算出される。S906において、得られた相対的位置ずれ量Xの温度補正を行う。
【0050】
図10は、温度補正のフローチャートである。S1001において、温度補正処理が開始されると、S1002において、相対的位置ずれ量を取得する。S1003において、温度検出部135からの出力Ttを取得し、S1004において、撮像装置の起動からの時間tを取得する。S1005において、起動時間tに基づいて、前述の方法により、温度差補正量ΔTを算出する。S1006において、温度検出部の出力Ttから温度差補正量ΔTを減算することによって、焦点検出時温度Teを算出し、S1007において、焦点検出時温度Teと、撮像装置のメモリに記憶されている調整時温度Tbに基づいて温度補正量ΔXtを算出する。S1008において、相対的位置ずれ量に温度補正量ΔXtを加算し、像ずれ量を算出し、S1009において、リターン処理を行う。
【0051】
図9に戻り、S907において、像ずれ量Xaより、被写体距離Lを算出し、信頼性を算出して、S908において、焦点検出処理のリターン処理となる。信頼性は、像信号のコントラストおよび相関演算を行った際の像の一致度から算出される。
【0052】
以上のように、第1実施形態では、温度検出部の出力を温度差補正した温度を算出し、その温度を用いて、相対的位置ずれ量を温度補正し、像ずれ量、被写体距離を算出する。この構成によれば、位相差検出部と同一チップ上に設けられた温度検出部の出力を用いて、焦点検出の温度補正を行うことが可能となる。これにより、焦点状態検出センサの結像レンズ近傍に別途温度センサを設ける必要がなく、コストダウンが可能となり、また、別途温度センサを設けるための構造が不要なため、焦点状態検出センサ付近のスペースの有効利用が可能となる。また、温度検出部の出力と、結像レンズの実温度の誤差を補正することによって、焦点検出にかかる誤差を抑えることが可能となる。図11は、第1実施形態での温度補正を行った場合の、一定温度環境下での、像ずれ量Xaの時間経過を示したものである。冷起動、温起動の場合ともに、起動直後の過渡状態では、誤差を伴うが、時間経過とともに、実際の被写体距離に相当する像ずれ量に収束していく。また、冷起動、温起動で誤差がプラス側、マイナス側に振れるように配分したことにより、定常状態で実際の被写体距離に相当する像ずれ量に合うようにオフセットをとったものに対して、起動直後の過渡状態での誤差量が半分程度で済む。本実施例では、位相差AFの他に撮像信号AFを行うハイブリッドAFを行っており、位相差AFでの誤差を軽減することにより、合焦近傍での撮像信号AFに要する時間を短くでき、焦点調節制御にかかる時間を短くすることが可能である。
【0053】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、第1実施形態との相違のみを説明し、第1実施形態の場合と同様の構成要素については既に使用した符号と同じ符号を用いることにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0054】
第1実施形態では、図5に示すように、温度差補正量は、「ΔT=(ΔTmax+ΔTmin)/2+(ΔTmax−ΔTmin)・(1−EXP(−t/τ))/2」で表され、撮像装置の起動直後の温度差補正量(以下、初期値という)は、(ΔTmax+ΔTmin)/2であった。第2実施形態では、撮像装置の起動時間からのみではなく、撮像装置の動作モード、動作状態を考慮し、初期値を変化させることで、高精度に温度差補正を行う。
【0055】
図12は第2実施形態での焦点検出のフローチャートである。S1201において、撮像装置の起動後、最初に行われる焦点検出であるか否かを判別する。最初に行われた焦点検出でない場合は、S1205にステップを移す。最初に行われた焦点検出である場合、S1203にステップを移す。S1203において、カメラを起動してから、最初に焦点検出を行うまでの時間tdを取得する。S1204において、温度差補正の初期値設定を行う。
【0056】
図13は、温度差補正の初期値設定のフローチャートである。S1301で初期値設定が開始されると、S1301において、第1実施形態と同様、撮像装置に記憶された温度差の最小値ΔTminと最大値ΔTmaxの平均Tstを求める。S1303において、撮像装置の起動後、最初に焦点検出を行うまでの時間tdが所定時間より短いか否かを判別する。所定時間より短い場合は、S1305へステップを移す。時間tdが所定時間より長い場合は、S1304へステップを移す。S1304に進んだ場合、撮像装置が再生モードやマニュアルフォーカスで起動され、焦点検出が動いていなくとも、撮像装置の電源が入っている状態である。撮像装置を起動してから焦点検出開始まで十分時間が経っているため、焦点検出開始時は温起動に近い状態となる。そこで、S1304において、撮像装置が起動されてから最初に焦点検出を行うまでの時間tdに基づいて、初期値Tsを大きくする。焦点検出を行うまでの時間tdに比例定数k2を乗じた値Aを最小値ΔTminと最大値ΔTmaxの平均Tstに加算することで、初期値Tsが算出される。ここで、k2は、時間から温度に変換する比例係数である。なお、加算後の値がΔTmaxを超える場合には、TsをΔTmaxに制限する。
【0057】
また、S1305において、撮像装置の電源をOFFにしていた時間が長ければ、撮像装置は冷めており、冷起動に近い状態となるため、撮像装置の電源をOFFにしている時間に応じて、初期値Tsを小さくする。撮像装置の電源をOFFにしていた時間をtfとすると、tfは、次のようにして取得可能である。図7中のS705の後処理において、システム時間に基づいて撮像装置の電源を切った時間を記憶しておく。次回撮像装置の電源を入れた際に、S702の初期化において撮像装置の起動時の時間を記憶すれば、撮像装置の電源を切った時間との差分によってtfを取得することができる。電源をOFFにしていた時間tdに比例定数k3を乗じた値Bを最小値ΔTminと最大値ΔTmaxの平均Tstから減算することで、初期値Tsが算出される。ここでk3は、k2と同様、時間から温度に変換する比例係数である。なお、減算後の値がΔTminを下回る場合には、TsをΔTminに制限する。
【0058】
以後、図12に戻り、S1205以降のステップを行う。S1205以降の処理は、図9のS902以降の処理と同様である。ただし、初期値を可変にしたため、温度差補正量は、初期値Tsを用いて、「ΔT=Ts+(ΔTmax−Ts)・(1−EXP(−t/τ))」と求める。
【0059】
以上のように、第2実施形態では、撮像装置の動作モード、動作状態を考慮し、初期値Tsを可変とし、温度差補正量のカーブを可変にする。これにより、撮像装置が再生モードで起動された後、撮影モードに入り、焦点調節制御を開始した場合や、撮像装置がマニュアルフォーカスで起動された後、AFモードに入り、焦点調節制御を開始した場合に、焦点検出時の温度補正誤差を軽減することができる。
【0060】
また、温度検出部による温度と、レンズの実温度との差が大きい場合には、撮像装置の起動直後の一定時間は焦点検出の結果を利用しないようにしても良い。その場合は、カメラの起動直後のAFは撮像信号AFのみで駆動する。
【0061】
また、温度差の最小値ΔTminと最大値ΔTmaxは、焦点検出の結果を利用しない一定時間を除いた範囲で求めるようにしても良い。
【0062】
また、本実施例では、温度差補正量の算出方法を、最大の温度差の60%の温度差となる時間を時定数とするカーブによって求めたが、数値は60%に限定されない。また、温度差補正量を線形で算出するようにしても良い。
【0063】
また、本実施例では、位相差検出部と同一チップ上に実装された温度検出部の形態で説明を行ったが、温度検出部は必ずしも位相差検出部と同一チップ上にある必要はなく、結像レンズの温度と温度検出部の温度に差を生じる構成ならば、本手法の適用が可能である。
【0064】
また、本実施例では、外部測距方式の位相差AFの形態で説明を行ったが、撮像レンズを通った光束を2分割する、いわゆるTTL方式の位相差AFでも同様に実施することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
101 レンズユニット
130 焦点状態検出センサ
131 フォーカスレンズ
133 フォーカス制御部
134 AF信号処理部
135 温度検出部
138 結像レンズ
139 位相差検出部
141 撮像素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を通過した被写体からの光束の分割方向の相対的位置ずれ量を検出する検出部と、
前記検出部の出力に基づいて、焦点状態を検出する焦点検出手段と、
前記検出部の近傍に設けられ、温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記焦点検出手段により検出された焦点状態を補正する補正手段とを有する焦点検出装置であって、
前記補正手段は、予め測定された、前記温度検出手段により検出された温度と前記光学系の温度の差分のうち、最小値と最大値の間の所定値および前記焦点検出装置の電源が投入されてからの時間に基づいて、前記温度検出手段により検出された温度を補正し、該補正された温度に基づいて、前記焦点状態を補正することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
前記温度検出手段は、前記焦点検出手段と同一のチップ上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項3】
前記補正手段は、予め測定された、温度検出手段により検出された温度と前記光学系の温度の差分のうち、最小値と最大値の平均を前記所定値として設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の焦点検出装置。
【請求項4】
前記焦点検出装置の電源が投入されてからの時間が第1の時間より長い第2の時間の場合、前記補正手段は、前記温度検出手段により検出された温度の補正量を前記第1の時間の場合より小さくすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記焦点検出装置の電源が投入されてから前記焦点検出手段による焦点検出を開始するまでの時間に応じて、前記所定値を設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記焦点検出装置の電源が切断されてから、新たに電源投入されるまでの時間に応じて、前記所定値を設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項1】
光学系を通過した被写体からの光束の分割方向の相対的位置ずれ量を検出する検出部と、
前記検出部の出力に基づいて、焦点状態を検出する焦点検出手段と、
前記検出部の近傍に設けられ、温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記焦点検出手段により検出された焦点状態を補正する補正手段とを有する焦点検出装置であって、
前記補正手段は、予め測定された、前記温度検出手段により検出された温度と前記光学系の温度の差分のうち、最小値と最大値の間の所定値および前記焦点検出装置の電源が投入されてからの時間に基づいて、前記温度検出手段により検出された温度を補正し、該補正された温度に基づいて、前記焦点状態を補正することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
前記温度検出手段は、前記焦点検出手段と同一のチップ上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項3】
前記補正手段は、予め測定された、温度検出手段により検出された温度と前記光学系の温度の差分のうち、最小値と最大値の平均を前記所定値として設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の焦点検出装置。
【請求項4】
前記焦点検出装置の電源が投入されてからの時間が第1の時間より長い第2の時間の場合、前記補正手段は、前記温度検出手段により検出された温度の補正量を前記第1の時間の場合より小さくすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記焦点検出装置の電源が投入されてから前記焦点検出手段による焦点検出を開始するまでの時間に応じて、前記所定値を設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記焦点検出装置の電源が切断されてから、新たに電源投入されるまでの時間に応じて、前記所定値を設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−83717(P2013−83717A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222031(P2011−222031)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]