説明

焼却灰搬送用スクリュー

【課題】耐熱性に優れ長寿命化を達成できる焼却灰搬送用スクリューを得る。
【解決手段】内部に冷却手段を含む円筒形状の軸部材13と、該軸部材13の外周部に螺旋状に取り付けたスクリュー羽根14とからなる焼却灰搬送用スクリュー。スクリュー羽根14はNi系合金にて形成されており、かつ、軸部材13の外周部にNi系合金にて溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰搬送用スクリュー、特に、製紙スラッジなどの焼却灰を搬送するためのスクリューに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製紙工場で発生する製紙スラッジなどは焼却廃棄しており、その焼却炉では850℃以上の高温の半溶融状態にある焼却灰をスクリューにて搬送していた。この種のスクリューは、ステンレス製の搬送筒内に設置され、ステンレス製の軸部材の外周部に同じくステンレス製のスクリュー羽根を溶接したものが用いられていた。
【0003】
しかしながら、850℃以上の高温での腐食環境下においては、耐熱性を考慮する必要があり、軸部材には水冷式の冷却手段を内蔵することで一応解決可能であるが、ステンレス製のスクリュー羽根では水冷効果が作用せず、羽根自体に熱変形や亀裂が早期に発生し、また、軸部材との間にも亀裂や摩耗が生じ、半年間の使用で交換せざるを得ないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、耐熱性に優れ長寿命化を達成できる焼却灰搬送用スクリューを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態である焼却灰搬送用スクリューは、
内部に冷却手段を含む円筒形状の軸部材と、該軸部材の外周部に螺旋状に取り付けたスクリュー羽根とからなる焼却灰搬送用スクリューにおいて、
前記スクリュー羽根はNi系合金にて形成されており、かつ、前記軸部材の外周部にNi系合金にて溶接されていること、
を特徴とする。
【0006】
Ni系合金は、熱伝導度、線膨脹率、耐熱性、耐溶融塩性などがステンレスよりも優れている。前記焼却灰搬送用スクリューにおいて、スクリュー羽根はNi系合金にて形成されており、かつ、軸部材の外周部にNi系合金にて溶接されているため、耐熱性に優れ、使用によって早期に変形や亀裂が発生することがなく、従来のものより長寿命化を達成することができる。
【0007】
前記焼却灰搬送用スクリューにおいては、前記軸部材の端部にNi系合金が肉盛り溶接されていてもよい。軸部材の耐熱性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る焼却灰搬送用スクリューの実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、製紙スラッジの焼却炉の要部を示し、1はサイクロン、2はダストホルダ、3はサイクロン灰クーラである。半溶融状態にある焼却灰は、サイクロン1に投入され、ダストホルダ2からサイクロン灰クーラ3に受け渡され、サイクロン灰クーラ3内を矢印A方向に搬送される。
【0010】
サイクロン灰クーラ3は、搬送筒11と、該搬送筒11内に同軸上に取り付けた焼却灰搬送用スクリュー12(図2参照)とで構成されている。焼却灰搬送用スクリュー12は、内部に水冷式の冷却手段を含む円筒形状の軸部材13と、該軸部材13の外周部に螺旋状に取り付けたスクリュー羽根14とからなる。軸部材13の本体部分の長さは約4800mm、直径は約400mmである。スクリュー羽根14の外径は約700mmである。
【0011】
軸部材13は、ステンレス(SUS316)からなり、両端部の軸受け部13a,13bにて搬送筒11に回転自在に支持されており、軸受け部13b側から駆動力が伝達される。また、軸受け部13aから供給された冷却水は軸部材13の内部を矢印A方向に流れ、軸受け部13bから排出される。
【0012】
スクリュー羽根14は、Ni系合金(例えば、インコネル600やインコネル625、なお、インコネルはインコ社の登録商標)にて形成されており、かつ、軸部材13の外周部にNi系合金にて溶接されている。ここでの溶接は、PTA法(プラズマ粉体溶接)にて、スクリュー羽根14と軸部材13の接合部の全長にわたって行われている。
【0013】
また、軸部材13に関しては、図2に示す領域Y1,Y2において、前記同様のNi系合金にて肉盛り溶接が施されている。肉盛りは1層であり、厚みは約1.8mmである。
【0014】
ここで、以下の表1に、従来から使用されているステンレス(表1では材料1で示す)、本願発明で使用されているNi系合金(表1では材料2、材料3で示す)の諸性能を示す。
【0015】
【表1】

【0016】
前記スクリュー羽根14を製作し、製紙スラッジの焼却炉において、高温状態の焼却灰を連続的に冷却させる設備(図1参照)に設け、実験的に稼働させたところ、半年たっても、スクリュー羽根14自体に熱変形や亀裂の発生は見られなかった。また、スクリュー羽根14の軸部材13に対する溶接部分にも亀裂や摩耗の発生は見られなかった。さらに、軸部材13の肉盛り領域Y1,Y2での摩耗も見られなかった。焼却灰搬送用スクリュー12の寿命は4倍以上であると推定される。
【0017】
(他の実施例)
なお、本発明に係る焼却灰搬送用スクリューは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0018】
特に、軸部材へのNi系合金の肉盛り溶接は前記領域Y1,Y2に限定するものではなく、また、実施例で挙げた寸法などの数値はあくまで例示である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る焼却灰搬送用スクリューの一実施例を備えた焼却炉の要部を示す立面図である。
【図2】本発明に係る焼却灰搬送用スクリューの一実施例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0020】
12…焼却灰搬送用スクリュー
13…軸部材
14…スクリュー羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却手段を含む円筒形状の軸部材と、該軸部材の外周部に螺旋状に取り付けたスクリュー羽根とからなる焼却灰搬送用スクリューにおいて、
前記スクリュー羽根はNi系合金にて形成されており、かつ、前記軸部材の外周部にNi系合金にて溶接されていること、
を特徴とする焼却灰搬送用スクリュー。
【請求項2】
さらに、前記軸部材の端部にNi系合金が肉盛り溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の焼却灰搬送用スクリュー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−30739(P2010−30739A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194776(P2008−194776)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(390001801)大阪富士工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】