焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理法および装置
【課題】 ごみ焼却灰や下水汚泥乾燥粉等の溶融スラグから、無害化されかつ緻密に再結晶したコンクリート用人工骨材としての人工岩石を合成すること。
【解決手段】 焼却灰を還元溶融する際に、溶融スラグ4のMgO含有量が5%〜20%となるように冶金滓または天然鉱物類を焼却灰に添加し成分調整する。焼却灰を還元溶融することにより焼却灰中のFe系酸化物を還元して溶融銑鉄2を滞留させると同時に、重金属類等を可及的に含まない溶融スラグ4を生成して溶融銑鉄2の上部に滞留させる。溶融スラグ4を溶融銑鉄2とは独立して出滓した後に徐冷した状態で共晶凝固現象に基づいて一次再結晶させる。一次再結晶した鋳造スラグ4Aを約1,000℃の温度雰囲気に保持して、鋳造スラグ4A中に残留する非晶質部分を二次再結晶させることにより、緻密な再結晶した人工岩石24が生成される。
【解決手段】 焼却灰を還元溶融する際に、溶融スラグ4のMgO含有量が5%〜20%となるように冶金滓または天然鉱物類を焼却灰に添加し成分調整する。焼却灰を還元溶融することにより焼却灰中のFe系酸化物を還元して溶融銑鉄2を滞留させると同時に、重金属類等を可及的に含まない溶融スラグ4を生成して溶融銑鉄2の上部に滞留させる。溶融スラグ4を溶融銑鉄2とは独立して出滓した後に徐冷した状態で共晶凝固現象に基づいて一次再結晶させる。一次再結晶した鋳造スラグ4Aを約1,000℃の温度雰囲気に保持して、鋳造スラグ4A中に残留する非晶質部分を二次再結晶させることにより、緻密な再結晶した人工岩石24が生成される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理法および装置に係り、詳しくは、生活ごみや産業廃棄物の焼却灰または下水汚泥乾燥粉等を溶融し、焼却灰等に含まれる重金属類や還元可能な酸化物を溶融還元して除去すると共にSiO2 等の鉱物質を主成分とする溶融スラグを生成する技術であって、特に溶融スラグから有害金属を可及的に含まない天然岩石に極めて近い組成のコンクリート用人工骨材として供することができる人工岩石を製造する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】家庭から出るごみや産業廃棄物は焼却され下水汚泥等は乾燥粉とされることによって減容化され、埋立地等に廃棄される。しかし、投棄地の容量にも限界があり、より一層の減容化や再資源化の努力が払われるようになってきている。最近では、資源のリサイクル化の観点に立った研究が進み、堆肥化や有価物の回収といったことも行われる。このような再資源化には無害化処理が重要であるが、特に注目を浴びるようになってきているごみ焼却灰や下水汚泥乾燥粉、産業廃棄物焼却灰等(以下焼却灰という)の溶融スラグから建築資材等を再生する場合も同様である。
【0003】焼却灰を1,500℃以上の温度で溶融すると、焼却灰中の可燃物が燃焼しダイオキシンは完全に分解されること、重金属類はガラス質のスラグ中に閉じ込められること、焼却灰を1/3以下に減容できることなどの利点が挙げられる。これは、焼却灰中の無機分も溶けて融液となり、それを冷却すると固化したスラグとすることができるからである。
【0004】ところで、そのスラグは、路盤材や建築土木用骨材として使用されたり、成形することによってタイルや装飾品に加工することができる。いずれにおいても、無害化や化学的安定性が要求されることは言うまでもないが、そのような溶融スラグを生成させて人工骨材を製造する方法や装置が種々提案されている。溶融スラグを生成する代表的なものとして、旋回溶融法,電気溶融法,コークス燃焼還元溶融法,表面溶融法といったものが採用されている。
【0005】旋回溶融法は、焼却灰をアノルサイトCaO・2SiO2 ・Al2 O3 の結晶が析出しやすい組成に成分調整し、旋回炉を用いて焼却灰を1,400℃ないし1,450℃の雰囲気で溶融させ、それを急冷してガラスとし、その非晶質なスラグを再加熱してアノルサイトを均一に析出させ、石材化する方法である。これは、焼却灰に含まれている鉄分と硫黄分から硫化鉄を生成させ、それを結晶核形成物質として利用している。
【0006】ところで、焼却灰を溶融したときのスラグの主成分はCaO,SiO2 ,Al2 O3 ,FeO,MgOである。FeOおよびMgOは比較的少ないのでスラグをCaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系とみなすと、Al2 O3 の多い焼却灰ではスラグ融点が非常に高くなりまた粘性も増大する。したがって、流動性の良いスラグの生成は妨げられ、炉からの出滓が困難となりまた組成分の結晶化も得られにくい。
【0007】上記した電気溶融炉においてスラグ融点を低下させかつ流動性を改善するようにしたものが、特開平4−354575号公報や特開平4−358584号公報に記載されている。これは、金属溶湯上に焼却灰を投入してアーク加熱により溶融するが、溶融スラグの粘度が高くなるから、前者では溶融スラグにFeOを添加している。また、後者では金属溶湯の表面および溶融スラグの表面を酸化性雰囲気にすることによって、溶融スラグ中にFeOが生成されるようにしている。このような操作によれば、スラグに残存する5%ないし20%のFeOによってCaO−SiO2 −Al2 O3 −FeO系を形成させることができ、スラグ融点は低下し、スラグの流動性も改善される。
【0008】コークス燃焼還元溶融法の例としては、特開平4−132642号公報に記載された結晶化スラグの製造法がある。溶融炉で溶融させたスラグに石灰または珪酸分の多い砕石を添加し、ガラス化を経ることなく、Al2 O3 が10%ないし22%、CaOが24%ないし44%、Fe2 O3 が2%ないし20%、SiO2 が28%ないし45%の組成をなすようにした結晶化スラグを直接生成させることができるようにしている。
【0009】ところで、塩基度(CaO/SiO2 の重量比)が低くすぎると溶融スラグの粘性は高くなって結晶化が進みにくくなり、高すぎるとスラグ融点が高くなって溶融処理のためのエネルギ消費は増大する。したがって、上記の溶融炉中のスラグの塩基度が低いときにはCaOを添加し、高いときにはSiO2 を添加して塩基度が0.6ないし1.5となるように調整される。
【0010】上記した表面溶融法では、焼却灰を高温で処理する際に有機物が熱分解して燃焼するときのエネルギを使用することにより無機物を溶融させている。炉頂に燃焼装置を備えた垂直軸回りに回転する炉体と、焼却灰が装入された炉体の上方を覆うアーチ形反射天蓋とを備える竪型回転炉が使用され、その天蓋を上下させて炉負荷が調整されるようになっている。炉体の下方には二次燃焼炉があり、排出された溶融スラグはさらに加熱される。このような表面溶融炉においては、可燃物の燃焼によって発生する熱を利用するので、低燃費の操業が実現される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記した旋回溶融法では焼却灰に予熱空気を吹き込んで旋回させ、ガスやオイルの燃焼によって加熱するようにしている。酸化性雰囲気で焼却灰を溶融するのでスラグにはFeOが混入し、それを急冷させるとガラス状になる。また、生成されたスラグには気泡が混じり、そのまま固化させると多孔質なスラグとなりやすい。そのため、溶融スラグを脱泡処理した後に熱処理しなければならず、スラグ生成設備は複雑化する。しかも、ガラス状スラグを再結晶させるためには1,200℃以上の雰囲気に保持する必要があり、結晶化炉において多大のエネルギ消費を伴う。なお、ガラス化したスラグは熱伝導性が極めて低く、それゆえ結晶化のエネルギ節減を図るため固化スラグを小粒化しておく必要があり、コンクリート用骨材として要求される粒の大きい石材を得ることができない。
【0012】電気溶融法では、酸化性雰囲気で生成される溶融スラグ中のFeOが6%ないし15%と高いので炉床部や出滓部近傍の耐火物は侵蝕されやすく、炉の寿命が短くなる。また、FeOを添加してCaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系のスラグを四元系に改質しスラグ融点を低下させているが、溶融スラグを水砕した場合には粒状水砕スラグとなって非常に脆弱な非晶質となる一方、徐冷した場合はスラグ中のFeOが再結晶化を阻み、天然岩石からかけ離れたスラグ塊となる。それのみならず、スラグにFe等の重金属が残留することになり、それらをスラグに固定させることができるといえども、いずれは溶出する不安定さが残る。
【0013】コークス燃焼還元溶融法は竪型シャフト炉に投入したコークスによって形成されるコークスベッド中で焼却灰を溶融還元するので、溶融スラグ中のFeOは減少する。しかし、コークス灰中のAl2 O3 が溶融スラグに溶解し、Al2 O3の含有率は高くなってCaO−SiO2 −Al2 O3 系のスラグ融点が高くなりまたスラグの流動性も悪化し、炉体からのスラグ排出は円滑とならず操業が阻害される。そこで、この還元溶融法においては、スラグ融点が高くならない範囲で石灰石を添加し、流動性を改善している。しかし、この成分調整によって生成されたスラグはCaOの含有量が多くなることから消化しやすくなり、長期にわたる性状の安定や機械的強度の維持が要求されるコンクリート用人工骨材として使用するためには不適当である。
【0014】表面溶融法では、無機物を溶融させるため電気溶融法と同様にFeOを焼却灰に添加して、溶融スラグの流動性の向上が促されるが、溶融スラグ中に金属酸化物を残留させることになる。その結果、溶融スラグを徐冷しても組成分の結晶化が十分に進まず、重金属類の溶出は不可避であって、コンクリート用人工骨材にふさわしい天然岩石とはかけ離れた石材となる。
【0015】以上の説明から把握されるように、焼却灰の各種溶融法は、焼却灰の組成を是認して溶融処理し石材としての利用を実現するものである。すなわち、スラグ中に有害物質や金属成分の封じ込めを図って安全性を確保しようとしている。しかし、固化スラグ中に重金属類が含有されるのでそれらがいずれは溶出する可能性があって、スラグの無害化は十分でない。それのみならず、焼却灰中の金属資源の回収がなされず、焼却灰の完全な再資源化が阻まれる。
【0016】また、溶融スラグを固化させる際にスラグ組成分を可及的完全に再結晶させる処理が施されておらず、天然岩石からはほど遠い非晶質な部分を残した石材となる。これは、溶融スラグの流動性を向上させるためにFeOやCaOを添加したり、スラグ融点の低下を促進するためにSiO2 を配合する結果、多元系相平衡状態における共晶凝固現象を考慮した熱処理をすることができなくなることに基因している。したがって、このような固化スラグは建築資材としての良質なコンクリート用人工骨材とはなり難く、非晶質(ガラス質)のままで使用することが可能な路盤材や緑農地化の資材として利用できるにすぎない。
【0017】ちなみに、特開平4−139040号公報には、連続した金型に溶融スラグを鋳込み、移送しながら外気温により徐冷してスラグブロックを成形させるようにした装置が記載されている。しかし、コンベアによる搬送中には溶融スラグがメタル面に接触するときの初期冷却速度を制御することが困難であり、結局は急激に冷却されるために非晶質化し、方向性のある脆い組織となることは避けられない。
【0018】本発明は上記した背景に鑑みなされたもので、その目的は、焼却灰の溶融に投入したエネルギの放散を少なくして溶融スラグの結晶化に要するエネルギの節減を図ることができること、溶融スラグ中の還元容易な金属分を分離してその再利用を可能にすると共に、有害物質の含有を可及的に少なくして安全性が高く、天然岩石に極めて近い硬質な塊状の建設資材を製造できること、を実現した焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理法および装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、ごみ焼却灰,下水汚泥乾燥粉,産業廃棄物焼却灰等の溶融スラグから人工岩石を合成する処理法に適用される。その特徴とするところは、まず、還元剤を用いることにより焼却灰を還元溶融して溶融スラグを生成する際もしくはそれに先だち、その溶融スラグのMgO含有量が5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%となるようにMgOを含有する冶金滓または天然鉱物類を焼却灰に添加し、可及的に低融点となりかつ共晶凝固する組成を有した溶融スラグが得られるように成分調整する。次に、成分調整された焼却灰を還元溶融することにより焼却灰中のFe系酸化物を還元して生成された溶融銑鉄を滞留させ、他の重金属類および還元可能な酸化物類を還元して生じた元素を溶融銑鉄中に溶解させると共に、ガス含有率が極めて低く重金属類等を可及的に含まない溶融スラグを生成して溶融銑鉄の上部に滞留させる。溶融スラグを溶融銑鉄とは独立して出滓した後に、溶融スラグを徐冷した状態で共晶凝固現象に基づいて一次再結晶させる。そして、一次再結晶した鋳造スラグを900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に保持することにより、その鋳造スラグ中に残留する非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、溶融スラグからガス含有率の極めて低い、組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成させることである。
【0020】上記の一次再結晶させる鋳造工程と二次再結晶させる熱処理工程とに代えて、前記溶融スラグを前記溶融銑鉄とは独立して出滓した後に900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に保持し、共晶凝固現象に基づいて溶融スラグを一次再結晶させ、かつ、残留する非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する鋳造熱処理工程としてもよい。
【0021】人工岩石合成処理装置の発明にあっては、図1を参照して、還元剤を用いることにより焼却灰を還元溶融し焼却灰中のFe系酸化物を還元して生成された溶融銑鉄2に、他の重金属類および還元可能な酸化物類を元素に還元して溶解させることができるように溶湯を貯溜すると共に溶湯を排出する出銑口3aを有して炉床に形成される溶湯溜め部3と、ガス含有率が極めて低く重金属類等を可及的に含まない溶融スラグ4を溶湯上に滞留させると共にその溶融スラグ4を排出する出滓口5aを有した溶融スラグ溜め部5とを備える還元溶融炉1と、出滓口5aから排出された溶融スラグ4が鋳込まれ、共晶凝固現象に基づいてスラグを一次再結晶させるための断熱性耐火物により形成されたスラグブロック成形鋳型10と、スラグブロック成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aが投入される炉体15とその炉体内の保温を図る加熱手段16とを有し、保温作用と炉体内に堆積する鋳造スラグ4Aの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石24を生成する熱処理炉14とを備えることである。
【0022】上記したスラグブロック成形鋳型10から脱型した鋳造スラグ4Aが投入される熱処理炉14に代えて、図5に示すように、溶融スラグ4が鋳込まれたスラグブロック成形鋳型10を通過させる炉体61Aとその炉体内の保温を図る加熱手段63とを有し、共晶凝固現象に基づいてスラグを一次再結晶させると共に、加熱手段63による保温作用とスラグブロック成形鋳型10に鋳込まれて一次再結晶した鋳造スラグ4Aの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石24を生成する鋳造熱処理炉61としてもよい。
【0023】還元溶融炉は電気溶融炉1A(図1を参照)や竪型シャフト炉1B(図3を参照)を採用することができる。
【0024】熱処理炉は、スラグブロック成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aが投入される回転炉体15Aと、その回転炉体の裏張り耐火壁15aおよび堆積する鋳造スラグ4Aを加温する加熱バーナ16Aとを有し、炉体の回転により堆積する鋳造スラグ4Aの下方へ回り込んだ耐火壁15aによる加温作用と鋳造スラグ4A内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する回転炉14Aとしておくことができる。また、スラグブロック成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aが投入される裏張り耐火壁を備えた炉体51Aと、その炉体内で堆積する鋳造スラグ4Aを加温する熱ガス発生装置55とを有し、鋳造スラグ内部からの復熱作用によって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する竪型シャフト炉51としておいてもよい。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、焼却灰の還元溶融によりFe系酸化物ならびにその他の重金属類や還元可能な酸化物類を含まず、また、CaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系の限られた共晶点の範囲をMgOを添加した四元系に改質することにより拡大し、四元系相平衡状態で共晶凝固可能な溶融スラグを生成しやすくすることができる。共晶凝固した一次再結晶スラグを熱処理によって僅かな残余非晶質部分をさらに二次再結晶させるから、天然岩石に極めて近似した人造石材を得ることができる。その際、一次再結晶に消費したエネルギの大部分は二次再結晶に利用され、固化スラグを小粒化しておかなくても、エネルギ消費を可及的に低減することができる。
【0026】焼却灰は還元性雰囲気で溶融されるので、溶融スラグが炉床部や出滓部近傍の耐火物を侵蝕させることもなく、炉寿命は長く保たれる。そして、焼却灰中のFe系酸化物を還元し、他の重金属類および還元可能な酸化物類も除去され、ガス含有率の極めて低い溶融スラグが得られる。還元によって生成された溶融銑鉄は回収して再資源化も可能である一方、重金属類の溶出しないまでに無害化されたコンクリート用人工骨材を得ることができる。焼却灰にMgOを添加することによって溶融スラグの流動性も改善され、CaOを過剰に添加する必要もなくスラグ融点の低下にも寄与する。したがって、溶融スラグから人工岩石を合成するための工程における取り扱いが容易となる。生成された合成岩石は消化性を伴うことなく長期間の性状安定や機械的強度が確保される。鋳造工程と該鋳造工程に続く熱処理工程とに代えて鋳造熱処理工程とすれば、岩石合成処理工程が少なくなり、そのための装置も簡素化することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理法および装置を、その実施の形態を表した図面をもとに詳細に説明する。図1は、ごみ焼却灰や下水汚泥乾燥粉または産業廃棄物焼却灰等(以下焼却灰という)の溶融スラグをコンクリート用人工骨材とするための人工岩石合成処理装置の例であり、その主たる構成は還元溶融炉1,スラグブロック成形鋳型10,熱処理炉14とからなる。
【0028】還元溶融炉1は少なくとも溶湯を貯溜する部分および溶融スラグを滞留させる部分を確保した炉体を備えるもので、図の例では、比重の大きい溶融銑鉄2を貯溜する溶湯溜め部3、生成された溶融スラグ4を溶融銑鉄2上に滞留させる溶融スラグ溜め部5、溶融スラグ4の上方空間であって焼却灰が堆積する原料収容部6を備えた電気溶融炉1Aが採用されている。
【0029】電気溶融炉1Aは、三相,単相の交流電気炉もしくは直流の電気炉のいずれのタイプでもよいが、図では簡略化して描かれたサブマージドアーク直流抵抗炉の例となっている。その原料収容部6には、焼却灰に予めコークスブリーズや造滓材としての副資材を配合した粉粒状の原料7が投入され、後述するサブマージドアーク電気溶融法により時間をかけて還元溶融されるようになっている。
【0030】炉蓋1aには、その中央で昇降する可動電極8が配置される。炉体1bには溶湯溜め部3の溶融銑鉄2を意図的に少し残して排出する出銑口3aが設けられる一方、溶融銑鉄2の上部に滞留した溶融スラグ4を排出する出滓口5aも設けられ、出滓栓5bを抜いて後述する工程で必要な量を短時間のうちに流出させることができる。なお、出滓栓5bにガス供給孔5cを設けて、溶融処理中に出滓口5aの近傍の溶融スラグ4を攪拌するためのガスを送り、出滓時のスラグ閉塞を防止するようにしておくこともできる。
【0031】このような電気溶融炉1Aでは、焼却灰中のFe系酸化物が還元され溶融銑鉄2を生成して溶湯溜め部3に貯溜すると共に、他の重金属類Cr,Ni,Co,Cu,Mn,Mo等および還元可能なP2 O5 やAs酸化物等を還元して生じた元素P,As等を溶融銑鉄2に溶解させることができるようになっている。同時に、上記の重金属類等を可及的に含まない溶融スラグ4を生成して溶融銑鉄2の上部に滞留させ、その滞留時間を十分に確保して脱泡し、ガス含有率が極めて低い溶融スラグ4とする。
【0032】上記の還元溶融精錬においては一般的にSiO2 ,CaO,Al2 O3 を主成分とする溶融スラグが生成されるが、その溶融スラグ4のMgO含有量が5重量%ないし20重量%(以下%と表示する)までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%となるように、MgOを含有する冶金滓や天然鉱物類が焼却灰に副資材として添加される。これによって、CaO−SiO2 −Al2O3 −MgOの四元系とみなすことができるスラグが得られる。そして、四元系相平衡状態における共晶点に可及的に近似した成分組成に調整すれば、溶融スラグ4の融点は最も低下しかつ共晶凝固現象を呈しやすくなる。すなわち、CaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系にMgOを添加すると、該三元系の限られた共晶点の発生領域を拡大することが可能となる。
【0033】上記したMgOを含有する冶金滓としては、高炉滓,製鋼滓,フェロニッケル製錬滓やCu製錬滓等の非鉄冶金滓などであり、天然鉱物類としてはMgOの含有率が34%と高い橄欖石(Mg・Fe)2 SiO4 ,蛇紋岩およびこれらの焼成品が使用される。なお、MgOを添加するという意味からは、54%前後のSiO2 を含有するが36%前後のMgOを含有しそれらが一旦溶融したフェロニッケル製錬滓が最も好ましく、その製錬滓の再利用の途も図られて都合がよい。ちなみに、必要に応じて石灰石CaCO3 やドロマイトCaCO3 ・MgCO3またはそれらの焼成物などが添加される。
【0034】電気溶融炉1Aの近くには、出滓口5aから2時間ないし3時間ごとに間歇的に排出された溶融スラグ4を受けるスラグ受け樋9が配置され、それを介して熱放散を抑制すべく短時間のうちに溶融スラグ4が鋳込まれるスラグブロック成形鋳型10が多数配列される。この鋳型10はスラグ内に共晶凝固現象に基づいた一次再結晶を図るためのものであり、断熱性耐火物により形成され、溶融スラグ4が内部まで急速に凝固しないように保温してブロック状の鋳造スラグ4Aを成形させるような大きさとなっている。すなわち、急冷による非晶質の発生を抑制したりスラグの内部保有熱の消散を可及的に少なくすることができればよいので鋳型は金属製でもよいが、鋳込み面は断熱材耐火物などで覆われ、徐冷作用の有するものが採用される。
【0035】スラグブロック成形鋳型10は溶融スラグ4の排出量に見あった数が必要であり、しかも、スラグ受け樋9から流下する溶融スラグ4を連続して鋳込まなければならない。そのため、各鋳型10はコンベア11に一列に配置して固定されている。コンベア11は成形鋳型10を搬送する間に所定量の溶融スラグ4を鋳込むことができると共に、共晶凝固させかつその一次再結晶が完了した直後の鋳造スラグ4Aを脱型させることができる長さに選定される。
【0036】上記の成形鋳型10は、例えば図2(a)に示すように、所望するサイズの鋳造スラグを成形するに必要な大きさの器であり、(b)示すように、隣りあう鋳型10の端部とは重なりあって連続している。各鋳型10は、その底面に固定されるブラケット10aに取り付けた無端状チェーン12によって移動される。コンベア11の一端まで搬送された鋳型10はチェーン12が反転する際に図1のごとく転倒姿勢となり、鋳造スラグ4Aは成形鋳型10からシュート13上に落とされるようになっている。
【0037】シュート13の出口側には、熱処理炉14が設置されている。これは、成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aが投入される炉体15とその炉体15内の保温を図る加熱手段16とを有している。そして、加熱手段16による保温作用と鋳造スラグ4Aの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に、鋳造による残留内部歪を除去して固化したスラグの脆弱性を回避し、ガス含有率が極めて低く組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成させるようになっている。
【0038】図1の例では熱処理炉14は回転炉14Aであり、成形鋳型10から脱型された800℃ないし1,200℃の鋳造スラグ4Aを収容する回転炉体15Aと、鋳造スラグ4Aを保温するための加熱バーナ16Aとを有している。そして、一次再結晶している鋳造スラグ4Aは、二次再結晶のために900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に1時間ないし2時間保持される。
【0039】もう少し詳しく述べると、回転炉体15Aは外周を前後のタイヤ15tによって支持され、ギヤー15m,リングギヤー15nを介して炉体の軸線回りに矢印17のように例えば1rpm程度で回転される。加熱バーナ16Aは大きい火炎16aを発生させ、炉体の裏張り耐火壁15aおよび鋳造スラグ4Aの堆積する表層を加温するものであり、空気供給管を伴って炉体15Aの軸線上の炉底部に設置される。炉体は通常水平な姿勢であるが、鋳造スラグ4Aの装入や二次再結晶の完了した固化スラグを排出するために、仮想線で示したトラニオン軸15bを中心に破線のごとく傾動できるようになっている。
【0040】このような装置によれば、以下のようにして、焼却灰を還元溶融しまた共晶凝固による一次再結晶ならびに非晶質部分の熱処理による二次再結晶により、ガス含有率の極めて低い組織の緻密な良質のコンクリート用人工骨材としての人工岩石を合成することができる。
【0041】まず、焼却灰に予めコークスブリーズを配合した粉粒状の原料7を、炉蓋1aの装入孔(図示せず)から炉体1bに降ろされた可動電極8を覆うように供給する。焼却灰を還元溶融精錬すればSiO2 ,CaO,Al2 O3 を主成分とする溶融スラグが生成されるが、MgOが5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%の溶融スラグとなるようにして共晶凝固現象を発現させやすくすべく、フェロニッケル製錬滓もしくは橄欖石等が、その他の造滓材と共に焼却灰に添加される。
【0042】ちなみに、MgOの目標%が5%ないし20%の範囲としているのは、5%以下であるとMgOを添加する余地が少なく成分調整の範囲に限りが生じるからであり、20%を越えるとスラグの溶融温度が高くなり、溶解エネルギが増大するからである。また、必要に応じて若干量の石灰石等も加えられ、CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可及的に近似した状態で共晶凝固させることができる組成を有した溶融スラグが得られように成分調整する。
【0043】可動電極8に通電し、原料7を後述するサブマージドアーク電気溶融により2時間ないし3時間をかけて溶融還元する。このときの約1,500℃の熱により可燃物が燃焼しダイオキシンは分解されまた有害なZn等の低沸点物質はガス化して排出される。焼却灰の粉粒体は比重が小さくかつ電気伝導度も低いが、原料中にコークスブリーズが配合されているので、そのカーボンが原料7の導電性を向上させて焼却灰が溶融される。
【0044】その際に焼却灰中のFe系酸化物を還元して溶融銑鉄2が生成され、溶湯溜め部3に滞留する。他の重金属類および還元可能な酸化物類を還元して生じた元素は溶融銑鉄2中に溶解すると共に、溶融スラグ4が溶融銑鉄2上に生成される。還元反応によって発生するCOガスは、スラグのフォーミングを促進する。溶融スラグ4上にフォーミングスラグ18が形成され、それと原料層との境界にカーボン浮遊層19が発生する。
【0045】炉体1bに降ろされた可動電極8の下部位はカーボン浮遊層19で覆われたフォーミングスラグ18に臨むように制御され、かつ、アークは常時原料7やフォーミングスラグ18に覆われたサブマージドの状態となる。カーボン浮遊層19で発生するアークにより原料7の加熱のみならず、フォーミングスラグ18から溶融銑鉄2に至る間での電気抵抗ジュール熱による効率よい溶融も実現される。このフォーミングスラグ18の生成によりアークの発生は極めて少なく、電気抵抗ジュール熱による電力伝達効率の飛躍的に高い値を示す溶融製錬が可能となるので、電力原単位の低減も図られる。
【0046】焼却灰が還元溶融されると、サブマージドアーク状態を維持させるべく、原料7が炉蓋1aを経て可動電極8の周囲に分布するよう逐次追加供給される。炉床に溜まった溶融銑鉄2は意図的に少量を残し、出銑口3aから1日ないし2日ごとに溶湯受鍋23に出湯される。その溶融銑鉄2は、鉄源材として別途利用される。
【0047】一方、溶融スラグ4は溶融銑鉄化した金属成分等を含まず、その主成分がSiO2 ,Al2 O3 ,CaO,MgOとなり、サブマージドアーク溶融法の採用により溶融銑鉄2上に時間を掛けて滞留させることによって、ガスをほとんど含まない状態となる。したがって、爾後的に脱泡処理を施す必要もなくなる。溶融スラグ4は出滓口5aから排出されるが、出滓栓5bを抜いて例えば2時間ごとに20分という短時間のうちに排出される。それゆえ、生成された溶融スラグを少しずつ連続的に排出する場合に比較して、出滓時の溶融スラグ4からの熱エネルギの放散量も可及的に抑制される。
【0048】コンベア11により矢印20方向へ移動するスラグブロック成形鋳型10に、高い熱エネルギを保有した溶融スラグ4がスラグ受け樋9から熱放散を抑制すべく短時間のうちに注入される。成形鋳型10は断熱性耐火物で構成されており、移動している間の溶融スラグの急激な冷却は防止され、CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可及的に近似した状態で共晶凝固した鋳造スラグ4Aが鋳造される。
【0049】例えば、CaOが5%ないし36%、SiO2 が38%ないし55%、Al2O3 が10%ないし25%、MgOが5%ないし20%であれば、その共晶点は1,300℃以下である。1,500℃以上の溶融スラグはスラグブロック成形鋳型10内において1,300℃以下まで液状で降温するが、共晶点の温度になると一斉に析出を開始し、「相律」に基づいて全組成が再結晶するまで温度がおのずと保持される。スラグの温度が低下することのない再結晶中の時間帯は鋳型10が移動しているコンベア11上にある。再結晶が完了して降温しはじめた時点で鋳型10が反転部位に到達するようにコンベア11の移動速度および搬送距離が定められているので、一次再結晶した鋳造スラグ4Aは脱型された時点でも高温を保っている。
【0050】上記のようにして鋳造スラグ4Aは共晶凝固しているとはいえ、現実には95%ないし97%の再結晶となっている。残余は非晶質であって細かいガラスが点在するので、比較的小さな力を掛けるだけで砕け、その破片は尖ったものとなりやすい。そこで、成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aはシュート13を経て直ちに二点鎖線のように持ち上げられた炉体15Aに装入される。
【0051】回転炉体15Aは加熱バーナ16Aによって予め加熱された状態にあり、鋳造スラグ4Aが所定量投入されるとシュート13が退避し、回転炉体15Aが実線の位置に降ろされて1rpm程度の速度でゆっくりと回転する。加熱バーナ16Aから火炎16aを発生させ、耐火壁15aおよび鋳造スラグ4Aの堆積表層が加温される。炉体15Aの回転により堆積した鋳造スラグ4Aの下方へ回り込んだ加熱されている耐火壁15aに触れたり火炎に直接触れた鋳造スラグ4Aは、例えば900℃の均一な温度雰囲気に2時間または1,200℃の温度雰囲気に1時間保持される。
【0052】鋳造スラグ4Aが回転炉14Aに装入されるとき、その表層が800℃ないし900℃程度まで降温していても内部は1,100℃ないし1,200℃の高温であり、加熱バーナ16Aによる1,000℃の保温中に内部熱が外表に向けて復熱し、表層部に至るまで残余の非晶質部分の再結晶が図られる。このようにして二次再結晶の際に鋳造時に生じた内部歪も除去され、ガス含有率の極めて低い組織の緻密な再結晶した人工岩石が生成される。
【0053】所定の時間が経過すると加熱バーナ16Aを止めて、回転炉体15Aを破線のように持ち上げてトラニオン軸15bを中心に傾動し、装入口15cを下方に向ければ、天然岩石に極めて近い固化スラグ24が排出される。非晶質を含まない固化スラグは極めて硬く、破砕しても角が余り立たず表面に凹凸を呈する均質なものとなる。なお、コンクリート用人工骨材として使用する場合には、適当なサイズに破砕される。
【0054】このようにして得られた人工岩石24は、電気溶融炉1Aにおいて還元容易な金属分が除去されており、しかも、ガス含有量が極めて少なくなっている。電気溶融炉で溶融スラグに付与された熱エネルギは、「相律」による温度保持作用もあいまって途中での消失が少ない状態で熱処理工程まで迅速に持ち込まれ、再結晶のための熱エネルギ消費量も大幅に低減される。
【0055】以上の説明から分かるように、焼却灰等を還元溶融することによって溶融銑鉄と溶融スラグを生成し、その溶融スラグにはFe系酸化物ならびにその他の重金属類や還元可能な酸化物類が可及的に少なくなり、重金属類の溶出しないまでに無害化された良質のコンクリート用人工骨材を製造することができる。その際に生成した溶融銑鉄は別途利用できるので、金属資源の回収が図られる。
【0056】また、CaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系の限られた共晶点の範囲がMgOを添加した四元系に改質することにより拡大され、四元系相平衡状態で共晶凝固可能な溶融スラグを生成することができる。MgOを添加することによって溶融スラグの流動性も改善され、CaOを過剰に添加する必要もなくスラグ融点の低下にも寄与させることができる。したがって、溶融スラグから人工岩石を合成するための後続工程における取り扱いが容易となり、生成された合成岩石は消化性を伴うことなく長期間の性状安定や機械的強度が確保される。共晶凝固した一次再結晶スラグを熱処理によって僅かな残余非晶質部分をさらに二次再結晶させるので、天然岩石に極めて近似した人工岩石を合成することができる。
【0057】焼却灰にはコークスブリーズが配合され、原料の導電性が高くなって溶融化が促進され、また、カーボンによる還元が実現される。焼却灰は還元性雰囲気で溶融されるので、溶融スラグが炉床部や出滓部近傍の耐火物を侵蝕させることもなく、炉寿命は長く保たれる。それのみならず、フォーミングスラグの発生を促して電力伝達効率の向上による電力原単位の低減に大きく寄与する。溶融スラグは溶融銑鉄上に時間を掛けて滞留されるので、その間の脱泡作用によりガス含有率が極めて低くなり、溶融スラグの爾後的な脱泡操作も不要となる。
【0058】さらに、溶融スラグは所定時間ごとの短時間出滓と迅速な移行形態により、その間での保有熱エネルギの消散が可及的に抑制される。一次再結晶に消費したエネルギの大部分は二次再結晶に利用される。それゆえ、固化スラグを小粒化しておかなくても、エネルギ消費を可及的に低減することができ、再結晶のための加熱エネルギの低減も図られる。
【0059】ちなみに、上記の説明においては、焼却灰に予めコークスブリーズを配合した粉粒状の原料を電気溶融炉に装入しているが、焼却灰は極めて細かい粉体であることが多い。そこで、MgOが5%ないし20%含有するまでの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%の溶融スラグとなるように粉状のフェロニッケル製錬滓もしくは橄欖石等や他の副原料を混入させた後にペレタイザーを用いてペレット状原料としておけば、装入時の取扱が容易となり都合がよい。このように、その造粒操作の段階でCaO−SiO2 −Al2 O3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可及的に近似した状態で共晶凝固させることができる組成を有した溶融スラグが得られように成分調整しておいてもよいことは述べるまでもない。
【0060】さらに、電気溶融炉に装入される原料が焼却灰をすでに溶融してスラグ化したものであれば、それを電気溶融炉で還元溶融するに先立ち、焼却灰の固化スラグと共にコークスブリーズやMgO増補材ならびに副原料を電気溶融炉に装入したり、予め焼却灰の固化スラグにコークスブリーズ,MgO増補材,副原料を配合しておいたうえで装入するか、それらをペレット化した後に装入するというような装入形態を採ることもできる。
【0061】ところで、電気溶融炉1Aはサブマージドアーク抵抗炉であれば三相または単相交流形や直流形のいずれの形式を採用してもよい。しかし、三相交流形は電極間でアークの発生する方向に偏りが生じたり、原料の堆積表層のみを加熱する傾向がある。すなわち、各電極下で形成される溶融ゾーンのバランスが悪くなり、とりわけ比重の小さい電気伝導度の低い粉粒状原料の場合に要求される穏やかな還元溶融は実現されがたく、その結果、均一な加熱状態を得ることができなくなる。また、単相交流形では常に交流電力が往復するので、原料の加熱が局部的となる。そこで、炉の構造が簡単で制御しやすく、また、後述する理由によって電気エネルギの供給が最も安定する直流電気炉を採用するのが最適である。
【0062】図1の電気溶融炉1Aは焼却灰の還元溶融に適したサブマージドアーク直流抵抗炉を簡略化して描いたものであり、炉体1bには可動電極8が挿入されるが、装入される焼却灰にはFe系酸化物等の還元すべき酸化物の含有量が少ないのが一般的であり、電極の消耗量は少ない。そこで、人造黒鉛電極よりも操作が容易で安価な他の種の電極が採用される。なお、炉底にも図示しない電極が配置されることは言うまでもない。
【0063】このような電気溶融炉1Aによれば、炉底の電極から給電されて可動電極8との間に印加される電圧が炉床部にかかり、焼却灰に配合されたコークスブリーズによる導電効果と、比重が小さい電気伝導度の低い粉粒状焼却灰の還元溶融に必要な静かな加熱溶融作用とにより、原料の溶融が実現される。もちろん、前述したフォーミングスラグの形成による電力伝達効率の向上に基因して電力消費も著しく低減する。
【0064】還元溶融炉としては電気溶融炉に限らず、図3に示す竪型シャフト炉1Bを採用してもよい。本発明は、コークス燃焼還元溶融法と同様に、還元剤を用いて焼却灰を還元溶融して溶融スラグを生成することができればよいからであり、電気溶融炉に比べれば大型化させることが容易であり、溶融スラグ4を連続出滓することもできるようになる。しかし、従来技術のところで述べたコークス燃焼還元法において使用される竪型シャフト炉の場合とは異なり、少なくとも、溶湯を貯溜する溶湯溜め部3と、生成した溶融スラグ4を溶湯上部に滞留させる溶融スラグ溜め部5とを備えた構造にしておく必要がある。
【0065】この竪型シャフト炉1Bにおいても溶融スラグ4を溶融銑鉄2とは独立して排出しなければならず、出銑口3aの上方となるように出滓口5aが設けられている。副資材を添加したペレット状の原料7やコークス塊40はベル41が仮想線のように下げられた状態で炉体上方から投入され、コークス塊と原料が堆積するコークスベッド42が形成される。上方部は乾燥・予熱ゾーン43であり、耐火壁44に開口する空気供給口45の近傍は原料の分解・燃焼ゾーン46および溶融ゾーン47が上下に形成される。なお、運転中はベル41によって炉上部が閉止され、排ガスはダクト48を経て排出されるようになっている。
【0066】焼却灰はコークスによって還元されるので溶融スラグ中のFe系酸化物は減少し、溶融銑鉄2は溶湯溜め部3に溜まる一方、溶融スラグ4は溶融銑鉄2上で脱泡されるに十分な時間滞留する。電気溶融炉の場合と同様に副原料としてフェロニッケル製錬滓等が原料7に混入されるので溶融スラグ4中のMgOが増加し、たとえコークス中のAl2 O3 が溶融スラグ4に溶解しても、スラグの流動性の低下は抑制される。すなわち、石灰石を過剰に添加する必要がなく、それゆえ、出滓した溶融スラグを上記したように鋳造し熱処理して人工岩石としても、消化性のない長期にわたって性状の安定した機械的強度の高い石材とすることができる。
【0067】ところで、図1においては熱処理炉として回転炉14Aを採用しているが、それに代えて図4に示す公知の竪型シャフト炉51を採用することもできる。スラグブロック成形鋳型から脱型された鋳造スラグ4Aは、内面の全てが裏張り耐火壁で覆われた炉体51Aに装入シュート52を用いて天井から装入され、熱処理後の固化スラグ24は炉底部の排出口に設けたクラムシェル式の開閉蓋53を仮想線のように開いて適宜の量が取り出される。鋳造スラグ4Aの収容量は回転炉の場合よりも多くすることが容易であり、それに伴って炉内へ持ち込まれる熱エネルギも多くなるので、加熱量を節減することができる。
【0068】このような炉によっても、前述した場合と同様に、鋳造スラグ4A内部からの復熱作用によって非晶質部分の二次再結晶が可能となる。竪型シャフト炉51は可動部材がないので大型化が容易であり、処理量を多くしたり処理時間を長くとることができる。炉内を火炎で加熱してもよいが鋳造スラグ4Aは堆積状態にあるので、炉体51Aを取り巻く下部環状通路54から熱ガス発生装置55で発生させた高温ガス56を供給するようにしてもよい。排ガスは上部環状通路57を経て熱ガス発生装置55等へ戻される。
【0069】上記したいずれの例においても、熱処理炉14,51はスラグブロック成形鋳型から脱型した鋳造スラグが投入されるが、図5に示すような鋳造熱処理炉61を採用し、鋳造工程と熱処理工程とを一つの保温炉において行わせることもできる。これは、溶融スラグが鋳込まれたスラグブロック成形鋳型10をコンベア62によって通過させるトンネル状の炉体61Aと、炉体内の保温を図る多数の加熱バーナ63とを有する。そして、加熱バーナ63によって生じた900℃ないし1,200℃の雰囲気での保温作用とスラグブロック成形鋳型10に鋳込まれて一次再結晶した鋳造スラグ4Aの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石24を生成させることができる。もちろん、炉体61Aやコンベア62の長さやコンベア62の矢印64方向への移動速度は、溶融スラグ4を一次再結晶させて鋳造スラグ4Aとし、鋳型10に入れたまま二次再結晶を完了させることができるように決定される。
【0070】
【実施例】本発明は、SiO2 ,CaO,Al2 O3 を主成分とする溶融スラグを生成するに際し、溶融スラグのMgO含有量が5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%となるように、MgOを含有する冶金滓等を添加してCaO−SiO2 −Al2 O3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可及的に近似した状態で共晶凝固する組成を有した溶融スラグが得られるようにしている。そこで、以下に幾つかの例を挙げる。
【0071】図6は、CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の15%Al2 O3 面の液相温度における相関係である。辺71の数字はCaOの含有%、辺72の数字はSiO2 の含有%、辺73はMgOの含有%を示し、実線や破線は岩石質の境界を表している。数字を含んだ細い破線上の数字は凝固温度である。そして、点Aは共晶点であり、点Aから点a1 ,a2 ,a3 (図6の要部を拡大した図7を参照)までの部分は凝固時に再結晶を誘発させやすい領域にある共晶線である。なお、図6R>6をはじめとして後述する図8,図10,図12,図13R>3は、E. F. Osborn, R. C. DeVries, K. H. Gee, and H. M. Kraner. ■ Optimum Compositionof Blast Furnace Slag as Deduced from Liquidus Data for the Quaternary System CaO-MgO-Al2O3-SiO2 ' Trans. AIME, 1954, v. 200, pp. 33-45. (E.F.オズボーン・R.C.デブリーズ・K.H.ギー・H.M.クラナー共著「CaO−MgO−Al2 O3 −SiO2 四元系液相データから推論した高炉スラグの最適組成」AIME紀要第200巻33頁ないし45頁)に記載された四元系相平衡状態図である。
【0072】前記した断熱性のある鋳型内で容易に再結晶させるためには、その共晶凝固温度が1,300℃以下であることや、溶融スラグの高い流動性に基づいた結晶分子の移動が容易であることが不可欠となる。そのような観点からはSiO2 が約55%以下であることや、人工骨材として使用した場合にアルカリ骨材反応が出やすくなるフォルステライト結晶が出ないようにすることが重要である。したがって、アノルサイト・パイロキシン・メリライト三元共晶点の近傍である図中に表示の線Aa1 ,Aa2 ,Aa3 上の組成となるように造滓材を調節配合することが必要となることが分かる。
【0073】上記した点A,a1 ,a2 ,a3 を含む幾つかの黒い点および他の点B等は凝固温度が最低の1,300℃以下を示した共晶点もしくはそれに極めて近似した点の選択例であり、それぞれは表1のような組成となっている。なお、表中の選択点A,BにおけるMgO含有%は前述した目標%であり、選択点a1 ,a2 ,a3 ,b1 ,b2 は目標%に極めて近似した含有%に相当する。
【表1】
図8は10%Al2 O3 の場合であり、同様にして纏めると表2のようになる。いずれの点も四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点であり、凝固温度すなわち融点の最低温度は1,300℃以下である。なお、図9は図8中の選択点の近傍を拡大したものである。
【表2】
同様に、20%Al2 O3 の場合が図10および図11に表されている。これを纏めると、表3のようになる。いずれの点も四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点であり、凝固温度は1,300℃以下である。なお、点g2 も四元系相平衡状態における共晶点に極めて近似した点であるが、この場合の凝固温度は1,330℃ないし1,350℃となっている。
【表3】
同様に、25%Al2 O3 の場合が図12に表されている。これを纏めると、表4のようになる。いずれの点も四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点であり、凝固温度は1,400℃以下である。
【表4】
【0074】以上をまとめると、CaOが16%ないし35%、SiO2 が36%ないし54%、Al2 O3 が10%ないし25%、MgOが5%ないし19%であると、四元系相平衡状態における共晶点に可及的に近似した状態で共晶凝固する組成を有した溶融スラグの得られることが分かる。なお、Al2 O3 の含有率は少なすぎても多すぎても溶融スラグの融点が上がることはよく知られており、5%以下であったり30%を越えると凝固点の最低温度は約1,400℃以上となる。そのような場合には焼却灰の溶解温度を上げる必要があり、熱エネルギの消費が増大することになるので避けるべきである。
【0075】ところで、上記した図6ないし図12において、他にも四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点が存在する。図6および図7の15%Al2 O3 の場合、共晶点Cならびに選択点c1 ,c11を表5のように拾い挙げることができ、その凝固温度は1,300℃以下である。
【表5】
同様に、図10および図11の20%Al2 O3 の場合、共晶点Hを表6のように拾い挙げることができ、その凝固温度も1,300℃以下である。
【表6】
同様に、図12の25%Al2 O3 の場合、共晶点Kを表7のように拾い挙げることができ、その凝固温度は1,400℃より低い。
【表7】
しかし、いずれもSiO2 の含有率の高いことに基因して、溶融スラグの粘性も高くなり、次工程である鋳造のための溶融スラグの還元溶融炉からの流出操作が不便なものとなる。したがって、四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点といえども、好ましくない共晶点の存在することにも注意しておくべきである。
【0076】ちなみに、焼却灰の組成は一定しないが、例えば表8のような組成である。例1および例2は、従来技術の項で述べた電気溶融法等によって得られたスラグの組成として公表されているデータである。そして、例3は本発明者らのテストに供された焼却灰の組成である。
【表8】
上記した焼却灰を溶融してスラグ化すると、表9のような組成になる。なお、例1および例2は若干成分調整されているようであり、公表値をそのまま掲げている。
【表9】
これらのスラグを再度溶融すると共に還元したスラグの主たる組成がCaO,SiO2 ,Al2 O3 ,MgOとなると、そのスラグの組成は表10のように書き換えられる。
【表10】
例1のAl2 O3 を20%とみなすと図10の点Sとなり、例2のAl2 O3 を25%とみなせば図12の点Tとなる。点Sは共晶点Fから大きく外れ、点Tは共晶点Jとはかけ離れている。いずれも凝固するとアノルサイトとなり、凝固温度は高い。例3はAl2 O3 が高く好ましいスラグとは言えない。Al2 O3 を30%とみなすと図13の点Uとなる。
【0077】上記の例1においてMgOの含有量が状態図中の共晶点となるようにフェロニッケル製錬滓や適量の造滓材を添加して調整すると、表11の例1Aのようになる。例2においても同様に調整すると、例2Aを得ることができる。また、例3においても同様に調整すると、例3Aを得ることができる。
【表11】
例1Aは図8の点sとなり、例2Aは図6の点tとなる。例3Aは図10中の点uとなり、いずれも共晶点D,A,Fに一致している。
【0078】上記の表11の例1A,例2Aおよび例3Aは、それらを成分調整する前の表10の例1,例2および例3のスラグに比べてMgOの多いことが分かる。逆に言うと、例1,例2および例3は、多元系相平衡状態における共晶点に可及的に近似した状態で共晶凝固させることができる組成を有していない。それゆえ、それらのスラグは凝固温度が高くて加熱エネルギを大量に要求し、また、出滓後の空冷で急速に冷却が進み、非晶質を多く残した再結晶の不十分な石材となる。
【0079】ちなみに、図6においてはMgOが約6%ないし約14%であり、図8では約7%ないし約19%である。図10においては約6%ないし約17%であり、さらには、図12において約3%ないし約8%であることが分かる。それゆえ、Al2 O3 を約10%ないし約25%の範囲に止めておくならば、その条件を満たして溶融スラグを共晶凝固させることができるMgOは、3%ないし19%となる。しかし、上掲した図6ないし図12は例示であって、詳細な研究データと、前述したようにMgOが5%以下であればMgOを添加する余地が少なく成分調整の範囲に限りが生じることを考慮すると、溶融スラグのMgOの含有目標%を5%ないし20%までの範囲における値としておけばよいことを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置の全体概略構成図。
【図2】 (a)は連続して配置されたスラグブロック成形鋳型の部分平面図、(b)はコンベアのチェーンに取り付けられた成形鋳型の断面図。
【図3】 還元溶融炉の他例としての竪型シャフト炉の断面図。
【図4】 熱処理炉の他例としての竪型シャフト炉の断面図。
【図5】 鋳造熱処理炉の概略構成図。
【図6】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の15%Al2 O3 面の液相温度における相関係図。
【図7】 図9の要部拡大図。
【図8】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の10%Al2 O3 面の液相温度における相関係図。
【図9】 図10の要部拡大図。
【図10】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の20%Al2 O3面の液相温度における相関係図。
【図11】 図13の要部拡大図。
【図12】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の25%Al2 O3面の液相温度における相関係図。
【図13】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の30%Al2 O3面の液相温度における相関係図。
【符号の説明】
1…還元溶融炉、1A…電気溶融炉、1B…竪型シャフト炉、2…溶融銑鉄、3…溶湯溜め部、3a…出銑口、4…溶融スラグ、4A…鋳造スラグ、5…溶融スラグ溜め部、5a…出滓口、7…原料、10…スラグブロック成形鋳型、14…熱処理炉、14A…回転炉、15…炉体、15A…回転炉体、15a…裏張り耐火壁、16…加熱手段、16A…加熱バーナ、24…人工岩石、51…竪型シャフト炉、55…熱ガス発生装置、61…鋳造熱処理炉、61A…炉体、63…加熱手段(加熱バーナ)。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理法および装置に係り、詳しくは、生活ごみや産業廃棄物の焼却灰または下水汚泥乾燥粉等を溶融し、焼却灰等に含まれる重金属類や還元可能な酸化物を溶融還元して除去すると共にSiO2 等の鉱物質を主成分とする溶融スラグを生成する技術であって、特に溶融スラグから有害金属を可及的に含まない天然岩石に極めて近い組成のコンクリート用人工骨材として供することができる人工岩石を製造する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】家庭から出るごみや産業廃棄物は焼却され下水汚泥等は乾燥粉とされることによって減容化され、埋立地等に廃棄される。しかし、投棄地の容量にも限界があり、より一層の減容化や再資源化の努力が払われるようになってきている。最近では、資源のリサイクル化の観点に立った研究が進み、堆肥化や有価物の回収といったことも行われる。このような再資源化には無害化処理が重要であるが、特に注目を浴びるようになってきているごみ焼却灰や下水汚泥乾燥粉、産業廃棄物焼却灰等(以下焼却灰という)の溶融スラグから建築資材等を再生する場合も同様である。
【0003】焼却灰を1,500℃以上の温度で溶融すると、焼却灰中の可燃物が燃焼しダイオキシンは完全に分解されること、重金属類はガラス質のスラグ中に閉じ込められること、焼却灰を1/3以下に減容できることなどの利点が挙げられる。これは、焼却灰中の無機分も溶けて融液となり、それを冷却すると固化したスラグとすることができるからである。
【0004】ところで、そのスラグは、路盤材や建築土木用骨材として使用されたり、成形することによってタイルや装飾品に加工することができる。いずれにおいても、無害化や化学的安定性が要求されることは言うまでもないが、そのような溶融スラグを生成させて人工骨材を製造する方法や装置が種々提案されている。溶融スラグを生成する代表的なものとして、旋回溶融法,電気溶融法,コークス燃焼還元溶融法,表面溶融法といったものが採用されている。
【0005】旋回溶融法は、焼却灰をアノルサイトCaO・2SiO2 ・Al2 O3 の結晶が析出しやすい組成に成分調整し、旋回炉を用いて焼却灰を1,400℃ないし1,450℃の雰囲気で溶融させ、それを急冷してガラスとし、その非晶質なスラグを再加熱してアノルサイトを均一に析出させ、石材化する方法である。これは、焼却灰に含まれている鉄分と硫黄分から硫化鉄を生成させ、それを結晶核形成物質として利用している。
【0006】ところで、焼却灰を溶融したときのスラグの主成分はCaO,SiO2 ,Al2 O3 ,FeO,MgOである。FeOおよびMgOは比較的少ないのでスラグをCaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系とみなすと、Al2 O3 の多い焼却灰ではスラグ融点が非常に高くなりまた粘性も増大する。したがって、流動性の良いスラグの生成は妨げられ、炉からの出滓が困難となりまた組成分の結晶化も得られにくい。
【0007】上記した電気溶融炉においてスラグ融点を低下させかつ流動性を改善するようにしたものが、特開平4−354575号公報や特開平4−358584号公報に記載されている。これは、金属溶湯上に焼却灰を投入してアーク加熱により溶融するが、溶融スラグの粘度が高くなるから、前者では溶融スラグにFeOを添加している。また、後者では金属溶湯の表面および溶融スラグの表面を酸化性雰囲気にすることによって、溶融スラグ中にFeOが生成されるようにしている。このような操作によれば、スラグに残存する5%ないし20%のFeOによってCaO−SiO2 −Al2 O3 −FeO系を形成させることができ、スラグ融点は低下し、スラグの流動性も改善される。
【0008】コークス燃焼還元溶融法の例としては、特開平4−132642号公報に記載された結晶化スラグの製造法がある。溶融炉で溶融させたスラグに石灰または珪酸分の多い砕石を添加し、ガラス化を経ることなく、Al2 O3 が10%ないし22%、CaOが24%ないし44%、Fe2 O3 が2%ないし20%、SiO2 が28%ないし45%の組成をなすようにした結晶化スラグを直接生成させることができるようにしている。
【0009】ところで、塩基度(CaO/SiO2 の重量比)が低くすぎると溶融スラグの粘性は高くなって結晶化が進みにくくなり、高すぎるとスラグ融点が高くなって溶融処理のためのエネルギ消費は増大する。したがって、上記の溶融炉中のスラグの塩基度が低いときにはCaOを添加し、高いときにはSiO2 を添加して塩基度が0.6ないし1.5となるように調整される。
【0010】上記した表面溶融法では、焼却灰を高温で処理する際に有機物が熱分解して燃焼するときのエネルギを使用することにより無機物を溶融させている。炉頂に燃焼装置を備えた垂直軸回りに回転する炉体と、焼却灰が装入された炉体の上方を覆うアーチ形反射天蓋とを備える竪型回転炉が使用され、その天蓋を上下させて炉負荷が調整されるようになっている。炉体の下方には二次燃焼炉があり、排出された溶融スラグはさらに加熱される。このような表面溶融炉においては、可燃物の燃焼によって発生する熱を利用するので、低燃費の操業が実現される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記した旋回溶融法では焼却灰に予熱空気を吹き込んで旋回させ、ガスやオイルの燃焼によって加熱するようにしている。酸化性雰囲気で焼却灰を溶融するのでスラグにはFeOが混入し、それを急冷させるとガラス状になる。また、生成されたスラグには気泡が混じり、そのまま固化させると多孔質なスラグとなりやすい。そのため、溶融スラグを脱泡処理した後に熱処理しなければならず、スラグ生成設備は複雑化する。しかも、ガラス状スラグを再結晶させるためには1,200℃以上の雰囲気に保持する必要があり、結晶化炉において多大のエネルギ消費を伴う。なお、ガラス化したスラグは熱伝導性が極めて低く、それゆえ結晶化のエネルギ節減を図るため固化スラグを小粒化しておく必要があり、コンクリート用骨材として要求される粒の大きい石材を得ることができない。
【0012】電気溶融法では、酸化性雰囲気で生成される溶融スラグ中のFeOが6%ないし15%と高いので炉床部や出滓部近傍の耐火物は侵蝕されやすく、炉の寿命が短くなる。また、FeOを添加してCaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系のスラグを四元系に改質しスラグ融点を低下させているが、溶融スラグを水砕した場合には粒状水砕スラグとなって非常に脆弱な非晶質となる一方、徐冷した場合はスラグ中のFeOが再結晶化を阻み、天然岩石からかけ離れたスラグ塊となる。それのみならず、スラグにFe等の重金属が残留することになり、それらをスラグに固定させることができるといえども、いずれは溶出する不安定さが残る。
【0013】コークス燃焼還元溶融法は竪型シャフト炉に投入したコークスによって形成されるコークスベッド中で焼却灰を溶融還元するので、溶融スラグ中のFeOは減少する。しかし、コークス灰中のAl2 O3 が溶融スラグに溶解し、Al2 O3の含有率は高くなってCaO−SiO2 −Al2 O3 系のスラグ融点が高くなりまたスラグの流動性も悪化し、炉体からのスラグ排出は円滑とならず操業が阻害される。そこで、この還元溶融法においては、スラグ融点が高くならない範囲で石灰石を添加し、流動性を改善している。しかし、この成分調整によって生成されたスラグはCaOの含有量が多くなることから消化しやすくなり、長期にわたる性状の安定や機械的強度の維持が要求されるコンクリート用人工骨材として使用するためには不適当である。
【0014】表面溶融法では、無機物を溶融させるため電気溶融法と同様にFeOを焼却灰に添加して、溶融スラグの流動性の向上が促されるが、溶融スラグ中に金属酸化物を残留させることになる。その結果、溶融スラグを徐冷しても組成分の結晶化が十分に進まず、重金属類の溶出は不可避であって、コンクリート用人工骨材にふさわしい天然岩石とはかけ離れた石材となる。
【0015】以上の説明から把握されるように、焼却灰の各種溶融法は、焼却灰の組成を是認して溶融処理し石材としての利用を実現するものである。すなわち、スラグ中に有害物質や金属成分の封じ込めを図って安全性を確保しようとしている。しかし、固化スラグ中に重金属類が含有されるのでそれらがいずれは溶出する可能性があって、スラグの無害化は十分でない。それのみならず、焼却灰中の金属資源の回収がなされず、焼却灰の完全な再資源化が阻まれる。
【0016】また、溶融スラグを固化させる際にスラグ組成分を可及的完全に再結晶させる処理が施されておらず、天然岩石からはほど遠い非晶質な部分を残した石材となる。これは、溶融スラグの流動性を向上させるためにFeOやCaOを添加したり、スラグ融点の低下を促進するためにSiO2 を配合する結果、多元系相平衡状態における共晶凝固現象を考慮した熱処理をすることができなくなることに基因している。したがって、このような固化スラグは建築資材としての良質なコンクリート用人工骨材とはなり難く、非晶質(ガラス質)のままで使用することが可能な路盤材や緑農地化の資材として利用できるにすぎない。
【0017】ちなみに、特開平4−139040号公報には、連続した金型に溶融スラグを鋳込み、移送しながら外気温により徐冷してスラグブロックを成形させるようにした装置が記載されている。しかし、コンベアによる搬送中には溶融スラグがメタル面に接触するときの初期冷却速度を制御することが困難であり、結局は急激に冷却されるために非晶質化し、方向性のある脆い組織となることは避けられない。
【0018】本発明は上記した背景に鑑みなされたもので、その目的は、焼却灰の溶融に投入したエネルギの放散を少なくして溶融スラグの結晶化に要するエネルギの節減を図ることができること、溶融スラグ中の還元容易な金属分を分離してその再利用を可能にすると共に、有害物質の含有を可及的に少なくして安全性が高く、天然岩石に極めて近い硬質な塊状の建設資材を製造できること、を実現した焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理法および装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、ごみ焼却灰,下水汚泥乾燥粉,産業廃棄物焼却灰等の溶融スラグから人工岩石を合成する処理法に適用される。その特徴とするところは、まず、還元剤を用いることにより焼却灰を還元溶融して溶融スラグを生成する際もしくはそれに先だち、その溶融スラグのMgO含有量が5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%となるようにMgOを含有する冶金滓または天然鉱物類を焼却灰に添加し、可及的に低融点となりかつ共晶凝固する組成を有した溶融スラグが得られるように成分調整する。次に、成分調整された焼却灰を還元溶融することにより焼却灰中のFe系酸化物を還元して生成された溶融銑鉄を滞留させ、他の重金属類および還元可能な酸化物類を還元して生じた元素を溶融銑鉄中に溶解させると共に、ガス含有率が極めて低く重金属類等を可及的に含まない溶融スラグを生成して溶融銑鉄の上部に滞留させる。溶融スラグを溶融銑鉄とは独立して出滓した後に、溶融スラグを徐冷した状態で共晶凝固現象に基づいて一次再結晶させる。そして、一次再結晶した鋳造スラグを900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に保持することにより、その鋳造スラグ中に残留する非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、溶融スラグからガス含有率の極めて低い、組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成させることである。
【0020】上記の一次再結晶させる鋳造工程と二次再結晶させる熱処理工程とに代えて、前記溶融スラグを前記溶融銑鉄とは独立して出滓した後に900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に保持し、共晶凝固現象に基づいて溶融スラグを一次再結晶させ、かつ、残留する非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する鋳造熱処理工程としてもよい。
【0021】人工岩石合成処理装置の発明にあっては、図1を参照して、還元剤を用いることにより焼却灰を還元溶融し焼却灰中のFe系酸化物を還元して生成された溶融銑鉄2に、他の重金属類および還元可能な酸化物類を元素に還元して溶解させることができるように溶湯を貯溜すると共に溶湯を排出する出銑口3aを有して炉床に形成される溶湯溜め部3と、ガス含有率が極めて低く重金属類等を可及的に含まない溶融スラグ4を溶湯上に滞留させると共にその溶融スラグ4を排出する出滓口5aを有した溶融スラグ溜め部5とを備える還元溶融炉1と、出滓口5aから排出された溶融スラグ4が鋳込まれ、共晶凝固現象に基づいてスラグを一次再結晶させるための断熱性耐火物により形成されたスラグブロック成形鋳型10と、スラグブロック成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aが投入される炉体15とその炉体内の保温を図る加熱手段16とを有し、保温作用と炉体内に堆積する鋳造スラグ4Aの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石24を生成する熱処理炉14とを備えることである。
【0022】上記したスラグブロック成形鋳型10から脱型した鋳造スラグ4Aが投入される熱処理炉14に代えて、図5に示すように、溶融スラグ4が鋳込まれたスラグブロック成形鋳型10を通過させる炉体61Aとその炉体内の保温を図る加熱手段63とを有し、共晶凝固現象に基づいてスラグを一次再結晶させると共に、加熱手段63による保温作用とスラグブロック成形鋳型10に鋳込まれて一次再結晶した鋳造スラグ4Aの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石24を生成する鋳造熱処理炉61としてもよい。
【0023】還元溶融炉は電気溶融炉1A(図1を参照)や竪型シャフト炉1B(図3を参照)を採用することができる。
【0024】熱処理炉は、スラグブロック成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aが投入される回転炉体15Aと、その回転炉体の裏張り耐火壁15aおよび堆積する鋳造スラグ4Aを加温する加熱バーナ16Aとを有し、炉体の回転により堆積する鋳造スラグ4Aの下方へ回り込んだ耐火壁15aによる加温作用と鋳造スラグ4A内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する回転炉14Aとしておくことができる。また、スラグブロック成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aが投入される裏張り耐火壁を備えた炉体51Aと、その炉体内で堆積する鋳造スラグ4Aを加温する熱ガス発生装置55とを有し、鋳造スラグ内部からの復熱作用によって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する竪型シャフト炉51としておいてもよい。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、焼却灰の還元溶融によりFe系酸化物ならびにその他の重金属類や還元可能な酸化物類を含まず、また、CaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系の限られた共晶点の範囲をMgOを添加した四元系に改質することにより拡大し、四元系相平衡状態で共晶凝固可能な溶融スラグを生成しやすくすることができる。共晶凝固した一次再結晶スラグを熱処理によって僅かな残余非晶質部分をさらに二次再結晶させるから、天然岩石に極めて近似した人造石材を得ることができる。その際、一次再結晶に消費したエネルギの大部分は二次再結晶に利用され、固化スラグを小粒化しておかなくても、エネルギ消費を可及的に低減することができる。
【0026】焼却灰は還元性雰囲気で溶融されるので、溶融スラグが炉床部や出滓部近傍の耐火物を侵蝕させることもなく、炉寿命は長く保たれる。そして、焼却灰中のFe系酸化物を還元し、他の重金属類および還元可能な酸化物類も除去され、ガス含有率の極めて低い溶融スラグが得られる。還元によって生成された溶融銑鉄は回収して再資源化も可能である一方、重金属類の溶出しないまでに無害化されたコンクリート用人工骨材を得ることができる。焼却灰にMgOを添加することによって溶融スラグの流動性も改善され、CaOを過剰に添加する必要もなくスラグ融点の低下にも寄与する。したがって、溶融スラグから人工岩石を合成するための工程における取り扱いが容易となる。生成された合成岩石は消化性を伴うことなく長期間の性状安定や機械的強度が確保される。鋳造工程と該鋳造工程に続く熱処理工程とに代えて鋳造熱処理工程とすれば、岩石合成処理工程が少なくなり、そのための装置も簡素化することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理法および装置を、その実施の形態を表した図面をもとに詳細に説明する。図1は、ごみ焼却灰や下水汚泥乾燥粉または産業廃棄物焼却灰等(以下焼却灰という)の溶融スラグをコンクリート用人工骨材とするための人工岩石合成処理装置の例であり、その主たる構成は還元溶融炉1,スラグブロック成形鋳型10,熱処理炉14とからなる。
【0028】還元溶融炉1は少なくとも溶湯を貯溜する部分および溶融スラグを滞留させる部分を確保した炉体を備えるもので、図の例では、比重の大きい溶融銑鉄2を貯溜する溶湯溜め部3、生成された溶融スラグ4を溶融銑鉄2上に滞留させる溶融スラグ溜め部5、溶融スラグ4の上方空間であって焼却灰が堆積する原料収容部6を備えた電気溶融炉1Aが採用されている。
【0029】電気溶融炉1Aは、三相,単相の交流電気炉もしくは直流の電気炉のいずれのタイプでもよいが、図では簡略化して描かれたサブマージドアーク直流抵抗炉の例となっている。その原料収容部6には、焼却灰に予めコークスブリーズや造滓材としての副資材を配合した粉粒状の原料7が投入され、後述するサブマージドアーク電気溶融法により時間をかけて還元溶融されるようになっている。
【0030】炉蓋1aには、その中央で昇降する可動電極8が配置される。炉体1bには溶湯溜め部3の溶融銑鉄2を意図的に少し残して排出する出銑口3aが設けられる一方、溶融銑鉄2の上部に滞留した溶融スラグ4を排出する出滓口5aも設けられ、出滓栓5bを抜いて後述する工程で必要な量を短時間のうちに流出させることができる。なお、出滓栓5bにガス供給孔5cを設けて、溶融処理中に出滓口5aの近傍の溶融スラグ4を攪拌するためのガスを送り、出滓時のスラグ閉塞を防止するようにしておくこともできる。
【0031】このような電気溶融炉1Aでは、焼却灰中のFe系酸化物が還元され溶融銑鉄2を生成して溶湯溜め部3に貯溜すると共に、他の重金属類Cr,Ni,Co,Cu,Mn,Mo等および還元可能なP2 O5 やAs酸化物等を還元して生じた元素P,As等を溶融銑鉄2に溶解させることができるようになっている。同時に、上記の重金属類等を可及的に含まない溶融スラグ4を生成して溶融銑鉄2の上部に滞留させ、その滞留時間を十分に確保して脱泡し、ガス含有率が極めて低い溶融スラグ4とする。
【0032】上記の還元溶融精錬においては一般的にSiO2 ,CaO,Al2 O3 を主成分とする溶融スラグが生成されるが、その溶融スラグ4のMgO含有量が5重量%ないし20重量%(以下%と表示する)までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%となるように、MgOを含有する冶金滓や天然鉱物類が焼却灰に副資材として添加される。これによって、CaO−SiO2 −Al2O3 −MgOの四元系とみなすことができるスラグが得られる。そして、四元系相平衡状態における共晶点に可及的に近似した成分組成に調整すれば、溶融スラグ4の融点は最も低下しかつ共晶凝固現象を呈しやすくなる。すなわち、CaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系にMgOを添加すると、該三元系の限られた共晶点の発生領域を拡大することが可能となる。
【0033】上記したMgOを含有する冶金滓としては、高炉滓,製鋼滓,フェロニッケル製錬滓やCu製錬滓等の非鉄冶金滓などであり、天然鉱物類としてはMgOの含有率が34%と高い橄欖石(Mg・Fe)2 SiO4 ,蛇紋岩およびこれらの焼成品が使用される。なお、MgOを添加するという意味からは、54%前後のSiO2 を含有するが36%前後のMgOを含有しそれらが一旦溶融したフェロニッケル製錬滓が最も好ましく、その製錬滓の再利用の途も図られて都合がよい。ちなみに、必要に応じて石灰石CaCO3 やドロマイトCaCO3 ・MgCO3またはそれらの焼成物などが添加される。
【0034】電気溶融炉1Aの近くには、出滓口5aから2時間ないし3時間ごとに間歇的に排出された溶融スラグ4を受けるスラグ受け樋9が配置され、それを介して熱放散を抑制すべく短時間のうちに溶融スラグ4が鋳込まれるスラグブロック成形鋳型10が多数配列される。この鋳型10はスラグ内に共晶凝固現象に基づいた一次再結晶を図るためのものであり、断熱性耐火物により形成され、溶融スラグ4が内部まで急速に凝固しないように保温してブロック状の鋳造スラグ4Aを成形させるような大きさとなっている。すなわち、急冷による非晶質の発生を抑制したりスラグの内部保有熱の消散を可及的に少なくすることができればよいので鋳型は金属製でもよいが、鋳込み面は断熱材耐火物などで覆われ、徐冷作用の有するものが採用される。
【0035】スラグブロック成形鋳型10は溶融スラグ4の排出量に見あった数が必要であり、しかも、スラグ受け樋9から流下する溶融スラグ4を連続して鋳込まなければならない。そのため、各鋳型10はコンベア11に一列に配置して固定されている。コンベア11は成形鋳型10を搬送する間に所定量の溶融スラグ4を鋳込むことができると共に、共晶凝固させかつその一次再結晶が完了した直後の鋳造スラグ4Aを脱型させることができる長さに選定される。
【0036】上記の成形鋳型10は、例えば図2(a)に示すように、所望するサイズの鋳造スラグを成形するに必要な大きさの器であり、(b)示すように、隣りあう鋳型10の端部とは重なりあって連続している。各鋳型10は、その底面に固定されるブラケット10aに取り付けた無端状チェーン12によって移動される。コンベア11の一端まで搬送された鋳型10はチェーン12が反転する際に図1のごとく転倒姿勢となり、鋳造スラグ4Aは成形鋳型10からシュート13上に落とされるようになっている。
【0037】シュート13の出口側には、熱処理炉14が設置されている。これは、成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aが投入される炉体15とその炉体15内の保温を図る加熱手段16とを有している。そして、加熱手段16による保温作用と鋳造スラグ4Aの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に、鋳造による残留内部歪を除去して固化したスラグの脆弱性を回避し、ガス含有率が極めて低く組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成させるようになっている。
【0038】図1の例では熱処理炉14は回転炉14Aであり、成形鋳型10から脱型された800℃ないし1,200℃の鋳造スラグ4Aを収容する回転炉体15Aと、鋳造スラグ4Aを保温するための加熱バーナ16Aとを有している。そして、一次再結晶している鋳造スラグ4Aは、二次再結晶のために900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に1時間ないし2時間保持される。
【0039】もう少し詳しく述べると、回転炉体15Aは外周を前後のタイヤ15tによって支持され、ギヤー15m,リングギヤー15nを介して炉体の軸線回りに矢印17のように例えば1rpm程度で回転される。加熱バーナ16Aは大きい火炎16aを発生させ、炉体の裏張り耐火壁15aおよび鋳造スラグ4Aの堆積する表層を加温するものであり、空気供給管を伴って炉体15Aの軸線上の炉底部に設置される。炉体は通常水平な姿勢であるが、鋳造スラグ4Aの装入や二次再結晶の完了した固化スラグを排出するために、仮想線で示したトラニオン軸15bを中心に破線のごとく傾動できるようになっている。
【0040】このような装置によれば、以下のようにして、焼却灰を還元溶融しまた共晶凝固による一次再結晶ならびに非晶質部分の熱処理による二次再結晶により、ガス含有率の極めて低い組織の緻密な良質のコンクリート用人工骨材としての人工岩石を合成することができる。
【0041】まず、焼却灰に予めコークスブリーズを配合した粉粒状の原料7を、炉蓋1aの装入孔(図示せず)から炉体1bに降ろされた可動電極8を覆うように供給する。焼却灰を還元溶融精錬すればSiO2 ,CaO,Al2 O3 を主成分とする溶融スラグが生成されるが、MgOが5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%の溶融スラグとなるようにして共晶凝固現象を発現させやすくすべく、フェロニッケル製錬滓もしくは橄欖石等が、その他の造滓材と共に焼却灰に添加される。
【0042】ちなみに、MgOの目標%が5%ないし20%の範囲としているのは、5%以下であるとMgOを添加する余地が少なく成分調整の範囲に限りが生じるからであり、20%を越えるとスラグの溶融温度が高くなり、溶解エネルギが増大するからである。また、必要に応じて若干量の石灰石等も加えられ、CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可及的に近似した状態で共晶凝固させることができる組成を有した溶融スラグが得られように成分調整する。
【0043】可動電極8に通電し、原料7を後述するサブマージドアーク電気溶融により2時間ないし3時間をかけて溶融還元する。このときの約1,500℃の熱により可燃物が燃焼しダイオキシンは分解されまた有害なZn等の低沸点物質はガス化して排出される。焼却灰の粉粒体は比重が小さくかつ電気伝導度も低いが、原料中にコークスブリーズが配合されているので、そのカーボンが原料7の導電性を向上させて焼却灰が溶融される。
【0044】その際に焼却灰中のFe系酸化物を還元して溶融銑鉄2が生成され、溶湯溜め部3に滞留する。他の重金属類および還元可能な酸化物類を還元して生じた元素は溶融銑鉄2中に溶解すると共に、溶融スラグ4が溶融銑鉄2上に生成される。還元反応によって発生するCOガスは、スラグのフォーミングを促進する。溶融スラグ4上にフォーミングスラグ18が形成され、それと原料層との境界にカーボン浮遊層19が発生する。
【0045】炉体1bに降ろされた可動電極8の下部位はカーボン浮遊層19で覆われたフォーミングスラグ18に臨むように制御され、かつ、アークは常時原料7やフォーミングスラグ18に覆われたサブマージドの状態となる。カーボン浮遊層19で発生するアークにより原料7の加熱のみならず、フォーミングスラグ18から溶融銑鉄2に至る間での電気抵抗ジュール熱による効率よい溶融も実現される。このフォーミングスラグ18の生成によりアークの発生は極めて少なく、電気抵抗ジュール熱による電力伝達効率の飛躍的に高い値を示す溶融製錬が可能となるので、電力原単位の低減も図られる。
【0046】焼却灰が還元溶融されると、サブマージドアーク状態を維持させるべく、原料7が炉蓋1aを経て可動電極8の周囲に分布するよう逐次追加供給される。炉床に溜まった溶融銑鉄2は意図的に少量を残し、出銑口3aから1日ないし2日ごとに溶湯受鍋23に出湯される。その溶融銑鉄2は、鉄源材として別途利用される。
【0047】一方、溶融スラグ4は溶融銑鉄化した金属成分等を含まず、その主成分がSiO2 ,Al2 O3 ,CaO,MgOとなり、サブマージドアーク溶融法の採用により溶融銑鉄2上に時間を掛けて滞留させることによって、ガスをほとんど含まない状態となる。したがって、爾後的に脱泡処理を施す必要もなくなる。溶融スラグ4は出滓口5aから排出されるが、出滓栓5bを抜いて例えば2時間ごとに20分という短時間のうちに排出される。それゆえ、生成された溶融スラグを少しずつ連続的に排出する場合に比較して、出滓時の溶融スラグ4からの熱エネルギの放散量も可及的に抑制される。
【0048】コンベア11により矢印20方向へ移動するスラグブロック成形鋳型10に、高い熱エネルギを保有した溶融スラグ4がスラグ受け樋9から熱放散を抑制すべく短時間のうちに注入される。成形鋳型10は断熱性耐火物で構成されており、移動している間の溶融スラグの急激な冷却は防止され、CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可及的に近似した状態で共晶凝固した鋳造スラグ4Aが鋳造される。
【0049】例えば、CaOが5%ないし36%、SiO2 が38%ないし55%、Al2O3 が10%ないし25%、MgOが5%ないし20%であれば、その共晶点は1,300℃以下である。1,500℃以上の溶融スラグはスラグブロック成形鋳型10内において1,300℃以下まで液状で降温するが、共晶点の温度になると一斉に析出を開始し、「相律」に基づいて全組成が再結晶するまで温度がおのずと保持される。スラグの温度が低下することのない再結晶中の時間帯は鋳型10が移動しているコンベア11上にある。再結晶が完了して降温しはじめた時点で鋳型10が反転部位に到達するようにコンベア11の移動速度および搬送距離が定められているので、一次再結晶した鋳造スラグ4Aは脱型された時点でも高温を保っている。
【0050】上記のようにして鋳造スラグ4Aは共晶凝固しているとはいえ、現実には95%ないし97%の再結晶となっている。残余は非晶質であって細かいガラスが点在するので、比較的小さな力を掛けるだけで砕け、その破片は尖ったものとなりやすい。そこで、成形鋳型10から脱型された鋳造スラグ4Aはシュート13を経て直ちに二点鎖線のように持ち上げられた炉体15Aに装入される。
【0051】回転炉体15Aは加熱バーナ16Aによって予め加熱された状態にあり、鋳造スラグ4Aが所定量投入されるとシュート13が退避し、回転炉体15Aが実線の位置に降ろされて1rpm程度の速度でゆっくりと回転する。加熱バーナ16Aから火炎16aを発生させ、耐火壁15aおよび鋳造スラグ4Aの堆積表層が加温される。炉体15Aの回転により堆積した鋳造スラグ4Aの下方へ回り込んだ加熱されている耐火壁15aに触れたり火炎に直接触れた鋳造スラグ4Aは、例えば900℃の均一な温度雰囲気に2時間または1,200℃の温度雰囲気に1時間保持される。
【0052】鋳造スラグ4Aが回転炉14Aに装入されるとき、その表層が800℃ないし900℃程度まで降温していても内部は1,100℃ないし1,200℃の高温であり、加熱バーナ16Aによる1,000℃の保温中に内部熱が外表に向けて復熱し、表層部に至るまで残余の非晶質部分の再結晶が図られる。このようにして二次再結晶の際に鋳造時に生じた内部歪も除去され、ガス含有率の極めて低い組織の緻密な再結晶した人工岩石が生成される。
【0053】所定の時間が経過すると加熱バーナ16Aを止めて、回転炉体15Aを破線のように持ち上げてトラニオン軸15bを中心に傾動し、装入口15cを下方に向ければ、天然岩石に極めて近い固化スラグ24が排出される。非晶質を含まない固化スラグは極めて硬く、破砕しても角が余り立たず表面に凹凸を呈する均質なものとなる。なお、コンクリート用人工骨材として使用する場合には、適当なサイズに破砕される。
【0054】このようにして得られた人工岩石24は、電気溶融炉1Aにおいて還元容易な金属分が除去されており、しかも、ガス含有量が極めて少なくなっている。電気溶融炉で溶融スラグに付与された熱エネルギは、「相律」による温度保持作用もあいまって途中での消失が少ない状態で熱処理工程まで迅速に持ち込まれ、再結晶のための熱エネルギ消費量も大幅に低減される。
【0055】以上の説明から分かるように、焼却灰等を還元溶融することによって溶融銑鉄と溶融スラグを生成し、その溶融スラグにはFe系酸化物ならびにその他の重金属類や還元可能な酸化物類が可及的に少なくなり、重金属類の溶出しないまでに無害化された良質のコンクリート用人工骨材を製造することができる。その際に生成した溶融銑鉄は別途利用できるので、金属資源の回収が図られる。
【0056】また、CaO−SiO2 −Al2 O3 の三元系の限られた共晶点の範囲がMgOを添加した四元系に改質することにより拡大され、四元系相平衡状態で共晶凝固可能な溶融スラグを生成することができる。MgOを添加することによって溶融スラグの流動性も改善され、CaOを過剰に添加する必要もなくスラグ融点の低下にも寄与させることができる。したがって、溶融スラグから人工岩石を合成するための後続工程における取り扱いが容易となり、生成された合成岩石は消化性を伴うことなく長期間の性状安定や機械的強度が確保される。共晶凝固した一次再結晶スラグを熱処理によって僅かな残余非晶質部分をさらに二次再結晶させるので、天然岩石に極めて近似した人工岩石を合成することができる。
【0057】焼却灰にはコークスブリーズが配合され、原料の導電性が高くなって溶融化が促進され、また、カーボンによる還元が実現される。焼却灰は還元性雰囲気で溶融されるので、溶融スラグが炉床部や出滓部近傍の耐火物を侵蝕させることもなく、炉寿命は長く保たれる。それのみならず、フォーミングスラグの発生を促して電力伝達効率の向上による電力原単位の低減に大きく寄与する。溶融スラグは溶融銑鉄上に時間を掛けて滞留されるので、その間の脱泡作用によりガス含有率が極めて低くなり、溶融スラグの爾後的な脱泡操作も不要となる。
【0058】さらに、溶融スラグは所定時間ごとの短時間出滓と迅速な移行形態により、その間での保有熱エネルギの消散が可及的に抑制される。一次再結晶に消費したエネルギの大部分は二次再結晶に利用される。それゆえ、固化スラグを小粒化しておかなくても、エネルギ消費を可及的に低減することができ、再結晶のための加熱エネルギの低減も図られる。
【0059】ちなみに、上記の説明においては、焼却灰に予めコークスブリーズを配合した粉粒状の原料を電気溶融炉に装入しているが、焼却灰は極めて細かい粉体であることが多い。そこで、MgOが5%ないし20%含有するまでの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%の溶融スラグとなるように粉状のフェロニッケル製錬滓もしくは橄欖石等や他の副原料を混入させた後にペレタイザーを用いてペレット状原料としておけば、装入時の取扱が容易となり都合がよい。このように、その造粒操作の段階でCaO−SiO2 −Al2 O3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可及的に近似した状態で共晶凝固させることができる組成を有した溶融スラグが得られように成分調整しておいてもよいことは述べるまでもない。
【0060】さらに、電気溶融炉に装入される原料が焼却灰をすでに溶融してスラグ化したものであれば、それを電気溶融炉で還元溶融するに先立ち、焼却灰の固化スラグと共にコークスブリーズやMgO増補材ならびに副原料を電気溶融炉に装入したり、予め焼却灰の固化スラグにコークスブリーズ,MgO増補材,副原料を配合しておいたうえで装入するか、それらをペレット化した後に装入するというような装入形態を採ることもできる。
【0061】ところで、電気溶融炉1Aはサブマージドアーク抵抗炉であれば三相または単相交流形や直流形のいずれの形式を採用してもよい。しかし、三相交流形は電極間でアークの発生する方向に偏りが生じたり、原料の堆積表層のみを加熱する傾向がある。すなわち、各電極下で形成される溶融ゾーンのバランスが悪くなり、とりわけ比重の小さい電気伝導度の低い粉粒状原料の場合に要求される穏やかな還元溶融は実現されがたく、その結果、均一な加熱状態を得ることができなくなる。また、単相交流形では常に交流電力が往復するので、原料の加熱が局部的となる。そこで、炉の構造が簡単で制御しやすく、また、後述する理由によって電気エネルギの供給が最も安定する直流電気炉を採用するのが最適である。
【0062】図1の電気溶融炉1Aは焼却灰の還元溶融に適したサブマージドアーク直流抵抗炉を簡略化して描いたものであり、炉体1bには可動電極8が挿入されるが、装入される焼却灰にはFe系酸化物等の還元すべき酸化物の含有量が少ないのが一般的であり、電極の消耗量は少ない。そこで、人造黒鉛電極よりも操作が容易で安価な他の種の電極が採用される。なお、炉底にも図示しない電極が配置されることは言うまでもない。
【0063】このような電気溶融炉1Aによれば、炉底の電極から給電されて可動電極8との間に印加される電圧が炉床部にかかり、焼却灰に配合されたコークスブリーズによる導電効果と、比重が小さい電気伝導度の低い粉粒状焼却灰の還元溶融に必要な静かな加熱溶融作用とにより、原料の溶融が実現される。もちろん、前述したフォーミングスラグの形成による電力伝達効率の向上に基因して電力消費も著しく低減する。
【0064】還元溶融炉としては電気溶融炉に限らず、図3に示す竪型シャフト炉1Bを採用してもよい。本発明は、コークス燃焼還元溶融法と同様に、還元剤を用いて焼却灰を還元溶融して溶融スラグを生成することができればよいからであり、電気溶融炉に比べれば大型化させることが容易であり、溶融スラグ4を連続出滓することもできるようになる。しかし、従来技術のところで述べたコークス燃焼還元法において使用される竪型シャフト炉の場合とは異なり、少なくとも、溶湯を貯溜する溶湯溜め部3と、生成した溶融スラグ4を溶湯上部に滞留させる溶融スラグ溜め部5とを備えた構造にしておく必要がある。
【0065】この竪型シャフト炉1Bにおいても溶融スラグ4を溶融銑鉄2とは独立して排出しなければならず、出銑口3aの上方となるように出滓口5aが設けられている。副資材を添加したペレット状の原料7やコークス塊40はベル41が仮想線のように下げられた状態で炉体上方から投入され、コークス塊と原料が堆積するコークスベッド42が形成される。上方部は乾燥・予熱ゾーン43であり、耐火壁44に開口する空気供給口45の近傍は原料の分解・燃焼ゾーン46および溶融ゾーン47が上下に形成される。なお、運転中はベル41によって炉上部が閉止され、排ガスはダクト48を経て排出されるようになっている。
【0066】焼却灰はコークスによって還元されるので溶融スラグ中のFe系酸化物は減少し、溶融銑鉄2は溶湯溜め部3に溜まる一方、溶融スラグ4は溶融銑鉄2上で脱泡されるに十分な時間滞留する。電気溶融炉の場合と同様に副原料としてフェロニッケル製錬滓等が原料7に混入されるので溶融スラグ4中のMgOが増加し、たとえコークス中のAl2 O3 が溶融スラグ4に溶解しても、スラグの流動性の低下は抑制される。すなわち、石灰石を過剰に添加する必要がなく、それゆえ、出滓した溶融スラグを上記したように鋳造し熱処理して人工岩石としても、消化性のない長期にわたって性状の安定した機械的強度の高い石材とすることができる。
【0067】ところで、図1においては熱処理炉として回転炉14Aを採用しているが、それに代えて図4に示す公知の竪型シャフト炉51を採用することもできる。スラグブロック成形鋳型から脱型された鋳造スラグ4Aは、内面の全てが裏張り耐火壁で覆われた炉体51Aに装入シュート52を用いて天井から装入され、熱処理後の固化スラグ24は炉底部の排出口に設けたクラムシェル式の開閉蓋53を仮想線のように開いて適宜の量が取り出される。鋳造スラグ4Aの収容量は回転炉の場合よりも多くすることが容易であり、それに伴って炉内へ持ち込まれる熱エネルギも多くなるので、加熱量を節減することができる。
【0068】このような炉によっても、前述した場合と同様に、鋳造スラグ4A内部からの復熱作用によって非晶質部分の二次再結晶が可能となる。竪型シャフト炉51は可動部材がないので大型化が容易であり、処理量を多くしたり処理時間を長くとることができる。炉内を火炎で加熱してもよいが鋳造スラグ4Aは堆積状態にあるので、炉体51Aを取り巻く下部環状通路54から熱ガス発生装置55で発生させた高温ガス56を供給するようにしてもよい。排ガスは上部環状通路57を経て熱ガス発生装置55等へ戻される。
【0069】上記したいずれの例においても、熱処理炉14,51はスラグブロック成形鋳型から脱型した鋳造スラグが投入されるが、図5に示すような鋳造熱処理炉61を採用し、鋳造工程と熱処理工程とを一つの保温炉において行わせることもできる。これは、溶融スラグが鋳込まれたスラグブロック成形鋳型10をコンベア62によって通過させるトンネル状の炉体61Aと、炉体内の保温を図る多数の加熱バーナ63とを有する。そして、加熱バーナ63によって生じた900℃ないし1,200℃の雰囲気での保温作用とスラグブロック成形鋳型10に鋳込まれて一次再結晶した鋳造スラグ4Aの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石24を生成させることができる。もちろん、炉体61Aやコンベア62の長さやコンベア62の矢印64方向への移動速度は、溶融スラグ4を一次再結晶させて鋳造スラグ4Aとし、鋳型10に入れたまま二次再結晶を完了させることができるように決定される。
【0070】
【実施例】本発明は、SiO2 ,CaO,Al2 O3 を主成分とする溶融スラグを生成するに際し、溶融スラグのMgO含有量が5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%となるように、MgOを含有する冶金滓等を添加してCaO−SiO2 −Al2 O3 −MgOの四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに可及的に近似した状態で共晶凝固する組成を有した溶融スラグが得られるようにしている。そこで、以下に幾つかの例を挙げる。
【0071】図6は、CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の15%Al2 O3 面の液相温度における相関係である。辺71の数字はCaOの含有%、辺72の数字はSiO2 の含有%、辺73はMgOの含有%を示し、実線や破線は岩石質の境界を表している。数字を含んだ細い破線上の数字は凝固温度である。そして、点Aは共晶点であり、点Aから点a1 ,a2 ,a3 (図6の要部を拡大した図7を参照)までの部分は凝固時に再結晶を誘発させやすい領域にある共晶線である。なお、図6R>6をはじめとして後述する図8,図10,図12,図13R>3は、E. F. Osborn, R. C. DeVries, K. H. Gee, and H. M. Kraner. ■ Optimum Compositionof Blast Furnace Slag as Deduced from Liquidus Data for the Quaternary System CaO-MgO-Al2O3-SiO2 ' Trans. AIME, 1954, v. 200, pp. 33-45. (E.F.オズボーン・R.C.デブリーズ・K.H.ギー・H.M.クラナー共著「CaO−MgO−Al2 O3 −SiO2 四元系液相データから推論した高炉スラグの最適組成」AIME紀要第200巻33頁ないし45頁)に記載された四元系相平衡状態図である。
【0072】前記した断熱性のある鋳型内で容易に再結晶させるためには、その共晶凝固温度が1,300℃以下であることや、溶融スラグの高い流動性に基づいた結晶分子の移動が容易であることが不可欠となる。そのような観点からはSiO2 が約55%以下であることや、人工骨材として使用した場合にアルカリ骨材反応が出やすくなるフォルステライト結晶が出ないようにすることが重要である。したがって、アノルサイト・パイロキシン・メリライト三元共晶点の近傍である図中に表示の線Aa1 ,Aa2 ,Aa3 上の組成となるように造滓材を調節配合することが必要となることが分かる。
【0073】上記した点A,a1 ,a2 ,a3 を含む幾つかの黒い点および他の点B等は凝固温度が最低の1,300℃以下を示した共晶点もしくはそれに極めて近似した点の選択例であり、それぞれは表1のような組成となっている。なお、表中の選択点A,BにおけるMgO含有%は前述した目標%であり、選択点a1 ,a2 ,a3 ,b1 ,b2 は目標%に極めて近似した含有%に相当する。
【表1】
図8は10%Al2 O3 の場合であり、同様にして纏めると表2のようになる。いずれの点も四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点であり、凝固温度すなわち融点の最低温度は1,300℃以下である。なお、図9は図8中の選択点の近傍を拡大したものである。
【表2】
同様に、20%Al2 O3 の場合が図10および図11に表されている。これを纏めると、表3のようになる。いずれの点も四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点であり、凝固温度は1,300℃以下である。なお、点g2 も四元系相平衡状態における共晶点に極めて近似した点であるが、この場合の凝固温度は1,330℃ないし1,350℃となっている。
【表3】
同様に、25%Al2 O3 の場合が図12に表されている。これを纏めると、表4のようになる。いずれの点も四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点であり、凝固温度は1,400℃以下である。
【表4】
【0074】以上をまとめると、CaOが16%ないし35%、SiO2 が36%ないし54%、Al2 O3 が10%ないし25%、MgOが5%ないし19%であると、四元系相平衡状態における共晶点に可及的に近似した状態で共晶凝固する組成を有した溶融スラグの得られることが分かる。なお、Al2 O3 の含有率は少なすぎても多すぎても溶融スラグの融点が上がることはよく知られており、5%以下であったり30%を越えると凝固点の最低温度は約1,400℃以上となる。そのような場合には焼却灰の溶解温度を上げる必要があり、熱エネルギの消費が増大することになるので避けるべきである。
【0075】ところで、上記した図6ないし図12において、他にも四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点が存在する。図6および図7の15%Al2 O3 の場合、共晶点Cならびに選択点c1 ,c11を表5のように拾い挙げることができ、その凝固温度は1,300℃以下である。
【表5】
同様に、図10および図11の20%Al2 O3 の場合、共晶点Hを表6のように拾い挙げることができ、その凝固温度も1,300℃以下である。
【表6】
同様に、図12の25%Al2 O3 の場合、共晶点Kを表7のように拾い挙げることができ、その凝固温度は1,400℃より低い。
【表7】
しかし、いずれもSiO2 の含有率の高いことに基因して、溶融スラグの粘性も高くなり、次工程である鋳造のための溶融スラグの還元溶融炉からの流出操作が不便なものとなる。したがって、四元系相平衡状態における共晶点もしくはそれに極めて近似した点といえども、好ましくない共晶点の存在することにも注意しておくべきである。
【0076】ちなみに、焼却灰の組成は一定しないが、例えば表8のような組成である。例1および例2は、従来技術の項で述べた電気溶融法等によって得られたスラグの組成として公表されているデータである。そして、例3は本発明者らのテストに供された焼却灰の組成である。
【表8】
上記した焼却灰を溶融してスラグ化すると、表9のような組成になる。なお、例1および例2は若干成分調整されているようであり、公表値をそのまま掲げている。
【表9】
これらのスラグを再度溶融すると共に還元したスラグの主たる組成がCaO,SiO2 ,Al2 O3 ,MgOとなると、そのスラグの組成は表10のように書き換えられる。
【表10】
例1のAl2 O3 を20%とみなすと図10の点Sとなり、例2のAl2 O3 を25%とみなせば図12の点Tとなる。点Sは共晶点Fから大きく外れ、点Tは共晶点Jとはかけ離れている。いずれも凝固するとアノルサイトとなり、凝固温度は高い。例3はAl2 O3 が高く好ましいスラグとは言えない。Al2 O3 を30%とみなすと図13の点Uとなる。
【0077】上記の例1においてMgOの含有量が状態図中の共晶点となるようにフェロニッケル製錬滓や適量の造滓材を添加して調整すると、表11の例1Aのようになる。例2においても同様に調整すると、例2Aを得ることができる。また、例3においても同様に調整すると、例3Aを得ることができる。
【表11】
例1Aは図8の点sとなり、例2Aは図6の点tとなる。例3Aは図10中の点uとなり、いずれも共晶点D,A,Fに一致している。
【0078】上記の表11の例1A,例2Aおよび例3Aは、それらを成分調整する前の表10の例1,例2および例3のスラグに比べてMgOの多いことが分かる。逆に言うと、例1,例2および例3は、多元系相平衡状態における共晶点に可及的に近似した状態で共晶凝固させることができる組成を有していない。それゆえ、それらのスラグは凝固温度が高くて加熱エネルギを大量に要求し、また、出滓後の空冷で急速に冷却が進み、非晶質を多く残した再結晶の不十分な石材となる。
【0079】ちなみに、図6においてはMgOが約6%ないし約14%であり、図8では約7%ないし約19%である。図10においては約6%ないし約17%であり、さらには、図12において約3%ないし約8%であることが分かる。それゆえ、Al2 O3 を約10%ないし約25%の範囲に止めておくならば、その条件を満たして溶融スラグを共晶凝固させることができるMgOは、3%ないし19%となる。しかし、上掲した図6ないし図12は例示であって、詳細な研究データと、前述したようにMgOが5%以下であればMgOを添加する余地が少なく成分調整の範囲に限りが生じることを考慮すると、溶融スラグのMgOの含有目標%を5%ないし20%までの範囲における値としておけばよいことを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置の全体概略構成図。
【図2】 (a)は連続して配置されたスラグブロック成形鋳型の部分平面図、(b)はコンベアのチェーンに取り付けられた成形鋳型の断面図。
【図3】 還元溶融炉の他例としての竪型シャフト炉の断面図。
【図4】 熱処理炉の他例としての竪型シャフト炉の断面図。
【図5】 鋳造熱処理炉の概略構成図。
【図6】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の15%Al2 O3 面の液相温度における相関係図。
【図7】 図9の要部拡大図。
【図8】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の10%Al2 O3 面の液相温度における相関係図。
【図9】 図10の要部拡大図。
【図10】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の20%Al2 O3面の液相温度における相関係図。
【図11】 図13の要部拡大図。
【図12】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の25%Al2 O3面の液相温度における相関係図。
【図13】 CaO−SiO2 −Al2 O3 −MgO系の30%Al2 O3面の液相温度における相関係図。
【符号の説明】
1…還元溶融炉、1A…電気溶融炉、1B…竪型シャフト炉、2…溶融銑鉄、3…溶湯溜め部、3a…出銑口、4…溶融スラグ、4A…鋳造スラグ、5…溶融スラグ溜め部、5a…出滓口、7…原料、10…スラグブロック成形鋳型、14…熱処理炉、14A…回転炉、15…炉体、15A…回転炉体、15a…裏張り耐火壁、16…加熱手段、16A…加熱バーナ、24…人工岩石、51…竪型シャフト炉、55…熱ガス発生装置、61…鋳造熱処理炉、61A…炉体、63…加熱手段(加熱バーナ)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ごみ焼却灰,下水汚泥乾燥粉,産業廃棄物焼却灰等の溶融スラグから人工岩石を合成する処理法において、還元剤を用いることにより焼却灰を還元溶融して溶融スラグを生成する際もしくはそれに先だち、該溶融スラグのMgO含有量が5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%となるようにMgOを含有する冶金滓または天然鉱物類を前記焼却灰に添加し、可及的に低融点となりかつ共晶凝固する組成を有した溶融スラグが得られるように成分調整する工程と、成分調整された上記焼却灰を還元溶融することにより該焼却灰中のFe系酸化物を還元して生成された溶融銑鉄を滞留させ、他の重金属類および還元可能な酸化物類を還元して生じた元素を前記溶融銑鉄中に溶解させると共に、ガス含有率が極めて低く上記重金属類等を可及的に含まない溶融スラグを生成して前記溶融銑鉄の上部に滞留させる還元溶融工程と、上記溶融スラグを前記溶融銑鉄とは独立して出滓した後に、溶融スラグを徐冷した状態で共晶凝固現象に基づいて一次再結晶させる鋳造工程と、一次再結晶した鋳造スラグを900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に保持することにより、該鋳造スラグ中に残留する非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する熱処理工程と、を有し、前記溶融スラグからガス含有率の極めて低い、組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成させることを特徴とする焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理方法。
【請求項2】 請求項1に記載の鋳造工程と該鋳造工程に続く熱処理工程とに代えて、前記溶融スラグを前記溶融銑鉄とは独立して出滓した後に900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に保持し、共晶凝固現象に基づいて溶融スラグを一次再結晶させ、かつ、残留する非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する鋳造熱処理工程としたことを特徴とする焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理方法。
【請求項3】 ごみ焼却灰,下水汚泥乾燥粉,産業廃棄物焼却灰等の溶融スラグから人工岩石を合成する処理装置において、還元剤を用いることにより焼却灰を還元溶融し該焼却灰中のFe系酸化物を還元して生成された溶融銑鉄に、他の重金属類および還元可能な酸化物類を元素に還元して溶解させることができるように溶湯を貯溜すると共に該溶湯を排出する出銑口を有して炉床に形成される溶湯溜め部と、ガス含有率が極めて低く上記重金属類等を可及的に含まない溶融スラグを溶湯上に滞留させると共にその溶融スラグを排出する出滓口を有した溶融スラグ溜め部とを備える還元溶融炉と、上記出滓口から排出された溶融スラグが鋳込まれ、共晶凝固現象に基づいてスラグを一次再結晶させるための断熱性耐火物により形成されたスラグブロック成形鋳型と、該スラグブロック成形鋳型から脱型された鋳造スラグが投入される炉体と該炉体内の保温を図る加熱手段とを有し、該保温作用と炉体内に堆積する鋳造スラグの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成する熱処理炉と、を備えることを特徴とする焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項4】 請求項3に記載の前記スラグブロック成形鋳型から脱型した鋳造スラグが投入される熱処理炉に代えて、溶融スラグが鋳込まれた前記スラグブロック成形鋳型を通過させる炉体と該炉体内の保温を図る加熱手段とを有し、共晶凝固現象に基づいてスラグを一次再結晶させると共に、前記加熱手段による保温作用と前記スラグブロック成形鋳型に鋳込まれて一次再結晶した鋳造スラグの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成する鋳造熱処理炉としたことを特徴とする焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項5】 前記還元溶融炉は、電気溶融炉であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載された焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項6】 前記還元溶融炉は竪型シャフト炉であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載された焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項7】 前記熱処理炉は、前記スラグブロック成形鋳型から脱型された鋳造スラグが投入される回転炉体と、該回転炉体の裏張り耐火壁および堆積する鋳造スラグを加温する加熱バーナとを有し、炉体の回転により堆積する鋳造スラグの下方へ回り込んだ前記耐火壁による加温作用と鋳造スラグ内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する回転炉であることを特徴とする請求項3、請求項5または請求項6のいずれかに記載された焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項8】 前記熱処理炉は、前記スラグブロック成形鋳型から脱型された鋳造スラグが投入される裏張り耐火壁を備えた炉体と、該炉体内で堆積する鋳造スラグを加温する熱ガス発生装置とを有し、前記鋳造スラグ内部からの復熱作用によって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する竪型シャフト炉であることを特徴とする請求項3、請求項5または請求項6のいずれかに記載された焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項1】 ごみ焼却灰,下水汚泥乾燥粉,産業廃棄物焼却灰等の溶融スラグから人工岩石を合成する処理法において、還元剤を用いることにより焼却灰を還元溶融して溶融スラグを生成する際もしくはそれに先だち、該溶融スラグのMgO含有量が5%ないし20%までの範囲における目標%もしくはそれに極めて近似した含有%となるようにMgOを含有する冶金滓または天然鉱物類を前記焼却灰に添加し、可及的に低融点となりかつ共晶凝固する組成を有した溶融スラグが得られるように成分調整する工程と、成分調整された上記焼却灰を還元溶融することにより該焼却灰中のFe系酸化物を還元して生成された溶融銑鉄を滞留させ、他の重金属類および還元可能な酸化物類を還元して生じた元素を前記溶融銑鉄中に溶解させると共に、ガス含有率が極めて低く上記重金属類等を可及的に含まない溶融スラグを生成して前記溶融銑鉄の上部に滞留させる還元溶融工程と、上記溶融スラグを前記溶融銑鉄とは独立して出滓した後に、溶融スラグを徐冷した状態で共晶凝固現象に基づいて一次再結晶させる鋳造工程と、一次再結晶した鋳造スラグを900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に保持することにより、該鋳造スラグ中に残留する非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する熱処理工程と、を有し、前記溶融スラグからガス含有率の極めて低い、組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成させることを特徴とする焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理方法。
【請求項2】 請求項1に記載の鋳造工程と該鋳造工程に続く熱処理工程とに代えて、前記溶融スラグを前記溶融銑鉄とは独立して出滓した後に900℃ないし1,200℃の温度雰囲気に保持し、共晶凝固現象に基づいて溶融スラグを一次再結晶させ、かつ、残留する非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する鋳造熱処理工程としたことを特徴とする焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理方法。
【請求項3】 ごみ焼却灰,下水汚泥乾燥粉,産業廃棄物焼却灰等の溶融スラグから人工岩石を合成する処理装置において、還元剤を用いることにより焼却灰を還元溶融し該焼却灰中のFe系酸化物を還元して生成された溶融銑鉄に、他の重金属類および還元可能な酸化物類を元素に還元して溶解させることができるように溶湯を貯溜すると共に該溶湯を排出する出銑口を有して炉床に形成される溶湯溜め部と、ガス含有率が極めて低く上記重金属類等を可及的に含まない溶融スラグを溶湯上に滞留させると共にその溶融スラグを排出する出滓口を有した溶融スラグ溜め部とを備える還元溶融炉と、上記出滓口から排出された溶融スラグが鋳込まれ、共晶凝固現象に基づいてスラグを一次再結晶させるための断熱性耐火物により形成されたスラグブロック成形鋳型と、該スラグブロック成形鋳型から脱型された鋳造スラグが投入される炉体と該炉体内の保温を図る加熱手段とを有し、該保温作用と炉体内に堆積する鋳造スラグの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成する熱処理炉と、を備えることを特徴とする焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項4】 請求項3に記載の前記スラグブロック成形鋳型から脱型した鋳造スラグが投入される熱処理炉に代えて、溶融スラグが鋳込まれた前記スラグブロック成形鋳型を通過させる炉体と該炉体内の保温を図る加熱手段とを有し、共晶凝固現象に基づいてスラグを一次再結晶させると共に、前記加熱手段による保温作用と前記スラグブロック成形鋳型に鋳込まれて一次再結晶した鋳造スラグの内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去し、組織の緻密な再結晶した人工岩石を生成する鋳造熱処理炉としたことを特徴とする焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項5】 前記還元溶融炉は、電気溶融炉であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載された焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項6】 前記還元溶融炉は竪型シャフト炉であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載された焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項7】 前記熱処理炉は、前記スラグブロック成形鋳型から脱型された鋳造スラグが投入される回転炉体と、該回転炉体の裏張り耐火壁および堆積する鋳造スラグを加温する加熱バーナとを有し、炉体の回転により堆積する鋳造スラグの下方へ回り込んだ前記耐火壁による加温作用と鋳造スラグ内部からの復熱作用とによって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する回転炉であることを特徴とする請求項3、請求項5または請求項6のいずれかに記載された焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【請求項8】 前記熱処理炉は、前記スラグブロック成形鋳型から脱型された鋳造スラグが投入される裏張り耐火壁を備えた炉体と、該炉体内で堆積する鋳造スラグを加温する熱ガス発生装置とを有し、前記鋳造スラグ内部からの復熱作用によって残留非晶質部分を二次再結晶させると共に残留内部歪を除去する竪型シャフト炉であることを特徴とする請求項3、請求項5または請求項6のいずれかに記載された焼却灰溶融スラグからの人工岩石合成処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図12】
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【公開番号】特開平9−156991
【公開日】平成9年(1997)6月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−26154
【出願日】平成8年(1996)1月18日
【出願人】(591071805)ラサ商事株式会社 (7)
【出願人】(000207735)大平洋金属株式会社 (10)
【公開日】平成9年(1997)6月17日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)1月18日
【出願人】(591071805)ラサ商事株式会社 (7)
【出願人】(000207735)大平洋金属株式会社 (10)
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