説明

焼成パンの冷却方法及び装置

焼成パンを焼成後冷却処理する場合に、水分蒸散を防止して食味の改善を図り、歩留まりを改善して製造原価を低減するとともに、焼成パンの芯温を確実に低下させて、切削性を向上し、冷却時間の短縮を図るため、焼成後の焼成パンfをコンベア2に載置して冷却室内1に搬入し、該冷却室に必要時間滞留して冷却処理した後、冷却室1外に搬出する焼成パンの冷却方法において、冷却室1内の温度を5〜20℃に保持し、冷却室1に搬入された焼成パンfの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気mを供給して焼成パンの搬送路の周囲に高絶対湿度領域を形成することにより、コンベア2の搬送路を囲む搬送空間3を相対湿度60%以上の高加湿冷却空間とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成パンを焼成後冷却して包装、冷凍等の次工程に移行する場合の焼成パンの冷却方法及び装置に関し、温度調整及び湿度調整された冷却室内をコンベアで搬送しながら冷却することにより、冷却時間を短縮し、水分蒸散防止等による食味の改善及び製品歩留まりの改善等を達成可能な冷却方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来食パン等焼成直後のパンを急速に冷却する方法として、真空冷却が行なわれている。真空冷却とは、食品の中に含まれている水分が真空中へ蒸発・移動する際に、その水分によって食品から潜熱を奪うことにより、食品を冷却する方法であり、急速冷却が可能となる。
この方法を採用したものとして、例えば特許文献1(特開平6−269266号公報)がある。特許文献1に開示された方法は、冷却槽内に食品類を収容して真空冷却し、食品類の温度が所定温度に低下した後、冷却槽内に空気を導入する時に、空気中の雑菌を蒸気により殺菌しながら導入することにより、食品類に雑菌が付着することを防止するようにしたものである。
【0003】
しかしながら真空冷却法は、冷却を行なうときに食品中水分が奪われることにより二次凝固が発生するなどして、食品の品質が損なわれるという欠点がある。また食品を真空にして冷却する場合、食品を連続的に処理することが難しく、作業効率があまり良いとは言えなかった。
【0004】
そこで食品を容易にかつ迅速に冷却することができる常圧下での冷却方法も提案されている。
例えば特許文献2(特開平6−217750号公報)には、常圧下での食品冷却装置が開示されている。
この装置は、冷水を貯留するためのタンク内の空気流通路と食品冷却室とを連絡する管路により冷気循環路を形成し、この冷気循環路に冷水の噴射により負圧を発生するエジェクタを設け、その負圧を利用して前記タンクと冷却室との間で冷気を循環させている。この構成により、空気流通室内の高湿度状態の冷気が管路を介して冷却室に供給され、供給された冷気によって食品の潜熱が奪われて食品が冷却される。
この方法によれば、食品を真空条件に曝す必要がないため、食品に物理的変化が生じることはほとんどなく、その品質が維持される。
【0005】
また特許文献3(特開2002−318051号公報)には、一つのチャンバーで常圧の冷風冷却と真空冷却の二つの方式で冷却できるようにした冷却装置が開示されている。即ち常圧の冷風冷却及び真空冷却に共用できる気密構造の冷却チャンバーを設け、該冷却チャンバーに冷風冷却及び真空冷却に必要な付帯設備を設置したものである。
しかしながら前述の冷却方法又は装置は、いずれもバッチ方式であり、食品の冷却チャンバーへの出し入れ時には運転を止めねばならず、作業効率はそれほど良いものではない。
【0006】
そこで最近は食品をスパイラルコンベア又はバーチカルコンベアに載置したまま気密構造の冷却室に搬入し、冷却室内で冷却する方式が採用されている。即ち冷却室内での滞留時間が必要滞留時間となるように搬送速度を調節しながら食品を冷却し、食品を必要温度まで冷却した後、コンベアに載置したまま冷却室の外に搬出し、包装、冷凍等次の工程に搬送するようにしている。この方式だと、食品を連続的に冷却処理することができ、作業効率が大幅に向上する。
【0007】
スパイラルコンベアを用いた焼成食品の冷却方法の一例を図10により説明する。図10において、fは食パン等の焼成直後のパンであり、図示しないオーブン等で焼成されて、表面温度が95℃前後、中心温度(芯温)が77℃前後を有する。01は、気密構造を有し焼成パンfを冷却する冷却室で、冷却室01の内部には、焼成食品fが載置されて冷却されるスパイラルコンベア02、及び外気oを導入して外気oに水をシャワリングし、水を蒸発させて水の蒸発潜熱により外気oを冷却するとともに、外気oを高加湿空気にするクーリング装置03が設置されている。
【0008】
スパイラルコンベア02は、焼成パンfを載置した状態で冷却室01の入口01aから入り、焼成パンfの冷却に必要な時間だけ焼成パンfを冷却室内に滞留するように搬送速度を調整されている。
またクーリング装置03は、外気oを通すダクト04内にファン05と外気oに水をシャワリングするシャワリング装置06を設け、ダクト04を通る外気oに水をシャワリングし、水を蒸発させて水の蒸発潜熱により外気oを冷却するとともに、外気oを高加湿空気にして冷却室01内に供給する。
【0009】
かかる構成により、冷却室01内では、クーリング装置03により冷却された外気oにより冷却空間を形成するとともに、クーリング装置03で蒸発した水蒸気により高加湿空間を形成している。焼成パンfは、スパイラルコンベア02に載置された状態で冷却室01内を搬送され、冷却室01内に約120分滞留され、冷却室01内の低温高加湿雰囲気により冷却され、かつ歩留まり率の低下を防ぐため焼成パンfの表面からの水分の蒸散を抑えられた状態で冷却室01の出口01bから外部に搬出される。
【0010】
図11は、スパイラルコンベアによる焼成パンの冷却方法の別の一例を示し、図11において、図10のクーリング装置03の代わりに冷凍機07が設置され、冷凍機07によって冷却室01内の空気を15〜20℃程度に冷却して循環させる低温循環流cを形成させるようにしたものである。
また図12は、バーチカルコンベアを用いた焼成パンの冷却方法の例を示し、図12において、08は冷却室01の内部に設置されたバーチカルコンベアであり、焼成パンfを載置して入口01aから冷却室01内に入り、焼成パンfの冷却に必要な時間だけ冷却室01内に焼成パンfが滞留するように搬送速度が調整されている。
【0011】
図12において、冷却室01には外気供給路09が配置されており、ここから外気oが導入されるが、入口に水をシャワリングして、水の蒸発潜熱により外気oを冷却するとともに高加湿空気を生成するクーリング装置03が設置され、これによって冷却室01内を低温の高加湿雰囲気とし、かつ冷却室01内に冷凍機07が設置されて、室内の空気を冷却している。
【0012】
しかしながら実際は、図10のようなクーリング装置03では、外気oと水のミキシングを木目細かく行なうことは困難であり、従って水を蒸発させながら外気oを冷却させることはほとんどなされていない。
外気oは、平均して冬期は15℃、夏期は30℃ぐらいとなっているが、クーリング装置03を経ても実際はあまり冷却されず、外気温度に近い温度となっており、夏期の場合30℃に近いため焼成パンfを冷却することはできない。また冷却室01内の相対湿度も25〜35%にしかならず、焼成パンfの表面からの水分の蒸散を抑えることができず、歩留まり率が低下してしまう欠点がある。
【0013】
また図11に示す別な従来方式では、冷却室01内の湿度コントロールがされていないため、冷却室01内で焼成パンに含まれる水分の蒸散が起こり、入口部01aでの焼成パンfの重量を100とすると、出口部01bでの重量は97から98に低下し、パサパサ感が出るなど食味が劣化してしまうという問題がある。
水分の蒸散を防止する対策として、冷却する前に焼成パンfを適当な大きさに切断し包装した上で冷却するという方法もあるが、高温状態で切断すると、切断面の肌荒れが発生し、外観並びに食味が低下するという問題がある。
【0014】
また図12に示す従来方式では、クーリング装置03で水をシャワリングしても、図10と同様に実際は湿度は高くならず、またクーリング装置03を経た外気oは、冷却室01内に搬入された直後の高温を呈する焼成パンfが搬送される区域に導入されるため、加熱されて高温となり、そのため相対湿度が低下してしまい、焼成パンfからの水分の蒸散を抑えられないという問題がある。
【特許文献1】特開平6−269266号公報
【特許文献2】特開平6−217750号公報
【特許文献3】特開2002−318051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、焼成パンを焼成後冷却工程を経て包装、冷凍等の次工程に移行するに際し、前記冷却工程において、水分蒸散を防止して食味の改善を図るとともに、歩留まりを改善して製造原価を低減することを目的とする。即ち食味が最適となる歩留まり率である99.4〜99.6%に制御することを目的とする。
また冷却工程において焼成パンの芯温を確実に低下させて、切削性を向上し、肌荒れを防止するとともに、冷却時間の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、本発明の焼成パンの冷却方法の第1の構成は、
焼成後の焼成パンをコンベアに載置して冷却室内に搬入し、該冷却室に必要時間滞留して冷却処理した後、前記冷却室外に搬出する焼成食品の冷却方法において、
前記冷却室内の温度を5〜20℃に、好ましくは10〜20℃に保持し、
前記冷却室に搬入された焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給して焼成パンの搬送路の周囲に高絶対湿度領域を形成することにより、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を相対湿度60%以上の高加湿冷却空間とすることを特徴とする。
【0017】
図10〜図12に示す従来方式では、冷却室に焼成パンを搬入した直後においては、焼成パンの保有熱により焼成パンの周囲の雰囲気温度が上がり、これによって逆に相対湿度が低下してしまい、焼成パンからの水分蒸散を早めてしまうという問題があるが、本発明方法の第1の構成では、焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を放出することにより、焼成パンの周囲に絶対湿度の高い領域を形成する。
【0018】
同じ相対湿度における絶対湿度は、温度が高いほど急激に増大するため、温度の高い部位に加湿空気を放出することにより、高い絶対温度雰囲気を形成することができる。これによってコンベア搬送路の下流側で焼成パンの温度が低下してきてもコンベアの搬送路を囲む搬送空間の相対湿度は低下せず、焼成パンを高相対湿度雰囲気中で冷却処理することができる。
【0019】
前記第1の構成において、好ましくは、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を相対湿度90〜100%に保持する。搬送空間の相対湿度が100%でさらに余分の水分を含む雰囲気になると、焼成パンへの必要以上の水分の吸着が起こり、べとべと感が出て食味が劣化するためである。なお本発明方法の前記第1の構成は、通常のパンに適する。
【0020】
イギリスパン、あるいはローフブレッドと称する山形パン等500g以上の重量を有する大型パンに対しては、冷却に時間がかかり、伝熱面積も広いので、前記第1の構成のように1段式の冷却室で冷却処理しても、水分の蒸散をなかなか抑えられず、歩留まり率の減少が2.5%を越える事態も発生している。この課題を解決したのが本発明方法の第2構成であり、本発明方法の第2の構成は、
焼成後の焼成パンをコンベアに載置して冷却室内に搬入し、該冷却室に必要時間滞留して冷却処理した後、前記冷却室外に搬出する焼成パンの冷却方法において、
前記冷却室を低温度に保持された表面急速冷却域と該表面急速冷却域より高温度に保持された中心緩慢冷却域とに仕切り、
焼成パンをまず低温度に保持された前記表面急速冷却域内に搬送し、
前記表面急速冷却域内で焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給し焼成パンの周囲に高絶対湿度領域を形成して、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を高い相対湿度雰囲気(ここで高い相対湿度とは、相対湿度60〜100%であることを意味する。)としながら焼成パンを急速冷却し、
次に焼成パンを前記表面急速冷却域より前記中心緩慢冷却域内に搬送し、
前記中心緩慢冷却域内で焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給し焼成パンの周囲に高絶対湿度領域を形成して、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を前記表面急速冷却域より高い相対湿度雰囲気としながら焼成パンを加湿処理することを特徴とする。
【0021】
本発明方法の第2の構成においては、好ましくは、前記表面急速冷却域内の前記搬送空間の温度を5〜15℃に、相対湿度を60〜80%に保持し、前記中心緩慢冷却域内の前記搬送空間の温度を15〜25℃に、相対湿度を80〜100%に保持する。
オーブンで焼成された直後の焼成パンの表面温度は、約95℃前後あり、表面急速冷却域では、焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給し焼成パンの周囲に高絶対湿度領域を形成して、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を高い相対湿度雰囲気、好ましくは相対湿度60〜80%の高湿度雰囲気に維持して焼成パンからの水分の蒸散を抑えた状態で、雰囲気温度を5〜15℃に保持し、焼成パンの表面温度との温度差を大きくして急速冷却を行なう。
【0022】
その後焼成パンを中心緩慢冷却域に導入して加湿処理する。即ち中心緩慢冷却域の入口では、焼成パンの表面温度は、15〜25℃、芯温は35〜45℃ぐらいになっており、相対湿度80〜100%の高湿度雰囲気中で、焼成パン表面からの水分の蒸散を防ぎながら、搬送空間の温度を表面急速冷却域よりも高温度、好ましくは15〜25℃に保持して、焼成パンの表面温度と雰囲気温度との差をなくした雰囲気の中で、焼成パンの表面にて高湿度雰囲気からの水分の吸着を促し、表面急速冷却域で蒸散した水分を回復させる加湿処理を行う。
【0023】
また本発明装置は、
内部に冷却空間を形成する冷却室と、
焼成後の焼成パンを載置して前記冷却室に出入りするコンベアとを備え、
前記コンベアの搬送速度を調整して焼成パンを冷却処理に必要な時間だけ前記冷却室内に滞留するように構成した焼成パンの冷却装置において、
前記冷却室内に焼成パンの搬送始端部に向けて冷却空気流を放出する冷凍機と、
前記冷却室に搬入された焼成パンの保有熱により最も温度の高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を放出する加湿器とを備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明装置においては、前記加湿器から放出される加湿空気は、冷却室に搬入された後の高い保有熱を有する焼成パンからの輻射伝熱を含む伝熱により加熱されて、加湿空気中の水分は蒸発し、焼成パンの周囲に絶対湿度の高い雰囲気を形成する。一旦絶対湿度の高い雰囲気が形成されると、その搬送方向下流側で温度が低下しても高い相対湿度が維持される。これによってコンベアで搬送中の焼成パンを囲む搬送空間を冷却室の出口付近まで60%以上の高い相対湿度に維持することによって、冷却処理中の焼成パンからの水分の蒸散を抑えながら急速冷却を可能とする。
なお本発明装置において、好ましくは、前記コンベアとしてスパイラルコンベア又はバーチカルコンベアを用いる。
【0025】
本発明装置において、好ましくは、コンベアとしてスパイラルコンベアを用いた場合、焼成パンをスパイラルコンベアで螺旋状に上下方向に搬送する搬送空間を形成し、前記加湿器を前記搬送空間の始端部近傍に設け、前記冷却空気流を前記搬送空間の始端部から搬送方向下流側に向くように構成するとよい。これによって焼成パンの保有熱が最も高い部位に加湿空気を放出することができ、これによって焼成パンの周囲を相対湿度60%以上の高湿度空間に保持できる。
また前記冷却空気流を前記搬送空間を始端部から搬送方向下流側に向くように構成すれば、冷凍機によって作り出される冷却空気流が最も温度が低いときに保有熱が最も高い焼成パンに接触するので、焼成パン表面の急速な冷却が可能になる。
【0026】
本発明装置において、好ましくは、コンベアとしてバーチカルコンベアを用いた場合、加湿器をバーチカルコンベアが前記冷却室に進入した進入部位における水平搬送部と最初の垂直搬送部との接続部近傍に設け、前記冷凍機の冷却空気流をバーチカルコンベアの入口側から出口側に向くように構成するとよい。これによって加湿空気を焼成パンの保有熱によって最も温度が高い部位に放出することができ、また冷凍機から放出されたばかりの低温の冷却空気流を冷却室に搬入された直後の最も高温の焼成パンに接触させることができ、急速冷却が可能となる。
なお前記本発明装置は、通常のパンに適する。
【0027】
イギリスパン、あるいはローフブレッドと称する山形パン等500g以上の重量を有する大型パンに対しては、冷却に時間がかかり、伝熱面積も広いので、前記本発明装置のように1段式の冷却室で冷却処理しても、水分の蒸散をなかなか抑えられず、歩留まり率の減少が2.5%を越える事態も発生している。
この課題を解決するため、本発明装置において、好ましくは、前記冷却室を表面急速冷却域と中心緩慢冷却域とに仕切り、前記コンベアをまず前記表面急速冷却域に進入しその後前記表面急速冷却域を出て前記中心緩慢冷却域に進入するように配置し、前記冷凍機及び前記加湿器を前記表面急速冷却域及び前記中心緩慢冷却域の内部にそれぞれ設けた構成とし、これによって大型パンに対しても水分の蒸散を抑えながら急速冷却を可能にしている。
【0028】
前記表面急速冷却域では、冷却室に搬入直後の最も高温状態の焼成パンからの輻射伝熱を含む伝熱により加熱されて加湿器から放出される加湿空気中の水分が蒸発し、焼成パンの周囲で高い絶対湿度雰囲気を形成しながら、冷凍機から放出された直後の冷却空気流を焼成パンに接触できるので、焼成パンからの水分の蒸散を抑えながら急速冷却を可能とする。
また表面急速冷却域で急速冷却された焼成パンは、コンベアにより搬送されて次に中心緩慢冷却域に入り、ここでもまた搬送路の始端部で加湿器から加湿空気が放出されるので、焼成パンを囲む搬送空間を表面急速冷却域よりも高い相対湿度に維持し、高湿度雰囲気からの水分の吸着を促し、蒸散した水分を回復することができる。ここで焼成パンの芯温を25℃まで冷却することができる。
このように冷却室を表面急速冷却域と中心緩慢冷却域とに仕切り、2段式の冷却を行なうことにより、大型パンに対しても水分の蒸散を抑えながら急速冷却を可能とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明方法の第1の構成によれば、冷却室内の温度を5〜20℃に、好ましくは10〜20℃に保持し、前記冷却室に搬入された焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給して焼成パンの搬送路の周囲に高絶対湿度領域を形成することにより、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を相対湿度60%以上の高加湿冷却空間とするため、焼成パン表面からの水分の蒸散を抑えて歩留まり率の低下を最小に抑えることができ、製造原価が低減するとともに、焼成パンをしっとり感、もちもち感を保持した食味に改善することができる。
また従来臭気、にがみ等による食味低下の原因となっていた保湿剤を不要とすることができる。
【0030】
焼成工程終了後の自然放冷システムでは、工場内環境温度以下の冷却ができないため、焼成パンの芯温が下がりきらず(38℃程度)、断面の肌荒れが発生し、外観及び食味が低下していたが、本発明方法では、冷却室内の温度を5〜20℃の低温に保持しているので、冷却時間の短縮が可能になり、芯温25℃が確保され、このため切削性が向上し、肌荒れを防止することができる。
前記自然放冷システムでは、芯温38℃までの冷却に2〜3時間以上必要であったが、本発明方法では芯温25℃まで80分しかかからなかった。
【0031】
また本発明方法の第2の構成によれば、冷却室を低温度に保持された表面急速冷却域と該表面急速冷却域より高温度に保持された中心緩慢冷却域とに仕切り、焼成パンをまず低温度に保持された前記表面急速冷却域内に搬送し、前記表面急速冷却域内で焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給し焼成パンの周囲に高絶対湿度領域を形成して、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を高い相対湿度雰囲気としながら焼成パンを急速冷却し、次に焼成パンを前記表面急速冷却域より前記中心緩慢冷却域内に搬送し、前記中心緩慢冷却域内で焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給し焼成パンの周囲に高絶対湿度領域を形成して、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を前記表面急速冷却域より高い相対湿度雰囲気としながら焼成パンを加湿処理することにより、重量が500g以上の大型パンの冷却に対しても、水分の蒸散を抑えた冷却処理を可能とし、歩留まり率の低下を最小に抑えることができ、製造原価が低減するとともに、焼成パンをしっとり感、もちもち感を保持した食味に改善することができる。
【0032】
また本発明装置によれば、冷却室内に焼成パンの搬送始端部に向けて冷却空気流を放出する冷凍機と、前記冷却室に搬入された焼成パンの保有熱により最も温度の高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を放出する加湿器とを備えたことにより、冷却室内を焼成パンの冷却処理に好適な低温高湿度雰囲気に保持することができ、これによって焼成パン表面からの水分の蒸散を抑えて歩留まり率の低下を最小に抑えることができ、焼成パンをしっとり感、もちもち感を保持した食味に改善することができるとともに、冷却時間の短縮が可能になる冷却処理を行うことができる。
【0033】
また本発明装置によれば、好ましくは、冷却室を表面急速冷却域と中心緩慢冷却域とに仕切り、コンベアをまず前記表面急速冷却域に進入しその後前記表面急速冷却域を出て前記中心緩慢冷却域に進入するように配置し、冷凍機及び加湿器を前記表面急速冷却域及び前記中心緩慢冷却域の内部にそれぞれ設けるようにすれば、前記表面急速冷却域で焼成パンの表面温度と雰囲気温度との差を大きく取って急速冷却を可能とし、前記中心緩慢冷却域で焼成パンの表面温度と雰囲気温度との差をなくし、逆に加湿を促し、かつ高加湿雰囲気とすることにより、大型パンの冷却に対しても焼成パンからの水分の蒸散を防止しつつ、歩留まり率を向上させ、食味を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
図1は、本発明の第1実施例の全体構成図、図2は図1中のII−II矢視図、図3は、第1実施例の制御系を示す系統図、図4は、本発明の第2実施例の全体構成図、図5は、本発明の第3実施例の全体構成図、図6は、本発明の第4実施例の全体構成図、図7は、前記第4実施例の温度及び湿度分布図、図8は前記第4実施例の制御系を示す系統図、図9は、本発明の第5実施例の全体構成図である。
【実施例1】
【0035】
本発明の第1実施例を示す図1〜3において、1は焼成パンを冷却する冷却室、2は冷却室1の内部に垂直方向に螺旋状に配設されたスパイラルコンベアであり、スパイラルコンベア2は、冷却室1の外側で焼成直後で表面温度が約95℃の焼成パンfを載置して、入口1aから冷却室1内に搬送し、冷却室1内で焼成パンfを螺旋状に搬送した後、上部出口1bから冷却室1外に搬出する。
4は、冷却室1内の雰囲気を冷却して10℃の冷気の循環流cを形成する冷凍機であり、これによって冷却室1内は12〜15℃に保持される。5及び6は、スパイラルコンベア2の螺旋状に配置された部分の内側及び外側に垂直に配置された仕切り壁5及び6で、これら仕切り壁で焼成パンの搬送面を囲むドーナツ状の搬送空間3を形成する。
【0036】
7は、スパイラルコンベア2の下端部近傍に配置された加湿器で、搬入直後の焼成パンfの保有熱によって最も温度の高くなる搬送空間3の下端部近傍に設置する。この下端部の雰囲気は、焼成パンからの輻射伝熱を含む伝熱により60℃程度に加熱されており、ここに加湿器5を設置して加湿空気mを放出することにより、高い絶対湿度を形成することができる。例えば温度20℃、相対湿度70%における絶対湿度は12.0mmg/mであるのに対し、温度35℃、相対湿度70%における絶対湿度は27.4mmg/mであり、絶対温度は温度が高いほど大きく増加する。
加湿器7から放出された加湿空気は焼成パンfの輻射伝熱を含む伝熱により加熱され、生成した水蒸気によって加湿器7周辺に絶対湿度が高い雰囲気が形成され、これによってその下流側の円筒空間3内を相対湿度が90〜100%に保持される。相対湿度が100%でさらに余分の水分を含む雰囲気になると、焼成パンへの必要以上の水分の吸着が起こり、べとべと感が出て食味が劣化する。
【0037】
かかる構成において、冷凍機4から加湿器7に向かって冷気cが放出されて冷気循環流cを形成するが、冷気cは、搬送空間3の下端部で焼成パンfとの大きな温度差によって焼成パンfを急速に冷却し、冷気cは温度が上昇して搬送空間3を上昇する流れを形成する。スパイラルコンベア2上に載置された焼成パンfは、冷却室1内に搬送された直後から搬送空間3内を上昇するにつれてその温度は低下していくが、搬送空間3の上端まで相対湿度の高い雰囲気となっているので、焼成パンfは冷却室1の出口付近まで高湿度雰囲気に曝されながら冷却され、表面からの水分の蒸散が抑えられる。
【0038】
また図1及び図3に示すように、冷凍機4の上流側及び下流側に温度センサT1及びT2を設置し、また前記搬送空間3の下端及び上端に温度センサT3、T4及び湿度センサM1及びM2を設置し、これらセンサの検出値に基づいて、コントローラ8によって冷凍機4のファン41をインバータ制御し、あるいは加湿器7をオンオフスイッチ10によりオンオフ制御することにより、冷却室1内の温度及び湿度を制御することができる。
あるいはインバータ制御の代わりにファン41をオンオフ制御又はステップ制御してもよく、あるいは複数の冷凍機を設け、台数制御してもよい。また加湿器7を複数設置し台数制御してもよい。このように冷凍機4のファン41及び加湿器7を最適制御して冷却室1内の温度及び湿度を設定値に制御する。
【0039】
このように第1実施例によれば、冷却室1内で焼成パンfの周囲を高加湿雰囲気に保持することができるので、水分の蒸散を抑えることができ、歩留まり率の低下を最小に抑えることができるとともに、しっとり感、もちもち感を保持した食味に改善することができる。
また冷凍機4により冷却室1内の冷却温度を制御しているので、冷却時間の短縮が可能になるとともに、冷却後の焼成パンの芯温を25℃以下に押えることができる。従って切削性が向上し、切削面の肌荒れが発生しない。
また冷却室1内の温度及び湿度を自動コントロールしているので、省人化を促進できるとともに、大量生産及び焼成パンの品質の安定、冷却による衛生管理の向上が図れる。
【実施例2】
【0040】
次に本発明の第2実施例を図4に基づいて説明する。図4において、第2実施例は、スパイラルコンベア2の入口部1aを冷却室1の上部に、出口部1bを冷却室1の下部に設け、冷却室1内でスパイラルコンベア2上の焼成パンfを上方から下方へ搬送するとともに、仕切り壁5及び6によって形成される搬送空間3の上方に加湿器7を設置し、かつ冷凍機4によって形成される冷気循環流cを図1とは逆にスパイラルコンベア2の上方から下方へ向くようにしたものである。
なお第2実施例の制御系は、図3に示す第1実施例の制御系と同一である。
【0041】
かかる構成において、搬送空間3の上端部で冷却室1内へ搬入された直後の高温の焼成パンfが、冷凍機4から放出された冷気循環流cに接して急速に冷却されるとともに、焼成パンfの周囲の雰囲気は焼成パンfからの輻射伝熱を含む伝熱により加熱される。また加熱された冷気は加湿器7から放出される加湿空気mによって高い絶対温度雰囲気を形成して焼成パンfとともに搬送方向下流側に流れていく。
焼成パンfは、スパイラルコンベア2上を螺旋状に下方に搬送されながら冷却されるが、焼成パンfを取り巻く搬送空間3が高い相対湿度の雰囲気を形成しているので、焼成パンfからの水分の蒸散を抑えることができる。
【0042】
このように第2実施例によれば、冷却室1の上部に搬入された高温の焼成パンfが冷気循環流cと熱交換して急速に冷却されるとともに、暖められた冷気cに加湿器7から加湿空気を供給することにより絶対湿度の高い雰囲気を形成することができ、これによって焼成パンfを取り巻く搬送空間3を常に高い相対湿度雰囲気とすることができるので、冷却時間を短縮することができるとともに、歩留まりの減少を最小に抑えることができ、また焼成パンfに十分なしっとり感を保持でき、良好な食味を得ることができる。
【実施例3】
【0043】
次に本発明の第3実施例を図5に基づいて説明する。第3実施例は焼成パンfの搬送にバーチカルコンベアを用いた実施例である。図5において、12は、冷却室11内に配置されたバーチカルコンベアで、焼成パンfを冷却室11の入口11aから搬入し、出口11bから搬出する。14は、入口11aから出口11bに向かってバーチカルコンベア11の搬送方向と同一の冷気循環流cを形成する冷凍機である。また17は、入口11aから最初の水平搬送部12aと最初の垂直搬送部12bとの接続部近傍に設けられた加湿器である。なお制御系は、図3に示す第1実施例の制御系と同一である。
【0044】
かかる構成において、入口11aから冷却室11の内部に入った焼成パンfは、冷凍機14から放出された冷気循環流cと熱交換して急速に冷却される。一方焼成パンfによって暖められた冷気は、加湿器17から放出される加湿空気mによって絶対湿度の高い雰囲気となる。この絶対湿度の高い雰囲気がバーチカルコンベア12の搬送方向下流側に流れることによって、焼成パンfを取り巻く搬送空間は常に相対湿度の高い雰囲気を形成する。
【0045】
このように第3実施例によれば、焼成パンfの搬送方向と冷気の循環流cの向きを同一方向としたことにより、冷凍機14を出た直後の冷気を最も温度の高い領域の焼成パンfに当てることによって冷却効果を高めることができるとともに、焼成パンfの周囲に形成された高加湿雰囲気を乱すことなく、焼成パンfを高い相対湿度の雰囲気で包んだまま焼成パンの冷却を行なうことができるという利点がある。
これによって焼成パンfの芯温25℃までの急速冷却が可能となるとともに、焼成パンfの水分を蒸散することなく冷却することができるので、歩留まりの減少を最小にすることができ、従ってしっとり感、もちもち感を保持した食味に改善することができる。
【実施例4】
【0046】
イギリスパン、あるいはローフブレッドと称する山形パン等500g以上の重量を有する大型パンに対しては、冷却に時間がかかり、伝熱面積も広いので、前記第1から第3実施例のような1段冷却では水分の蒸散を抑えることが難しい。従って冷却室を直列2段階にして前記課題を達成したものが次に説明する第4実施例である。本発明の第4実施例を図6〜8に基づいて説明する。図6において、21は冷却室であり、焼成パンfが入口21aから導入され出口21bから出て行くようにスパイラルコンベア22が、冷却室21内で搬送路を形成して配置されている。冷却室21は、仕切り壁21dにより搬送路の上流側が表面急速冷却室23aに、下流側が中心緩慢冷却室23bに分けられている。
表面急速冷却室23aには、入り口21aから上方にスパイラルコンベア22の上昇搬送部22aが設けられ、その下方に冷凍機24a及び加湿器27aが設置されている。また均湿化室23bには、仕切り壁21dの開口21cを通して上昇搬送部22aと連続した下降搬送部22bが形成され、その上方には冷凍機24b及び加湿器27bが設置されている。
【0047】
また図6及び図8に示すように、表面急速冷却室23aの冷凍機24aの上流側及び下流側に温度センサT1及びT2を設置し、中心緩慢冷却室23bの冷凍機24bの上流側及び下流側に温度センサT4及びT5を設置し、また上昇搬送部22aの下端部に湿度センサM1を、上端部に温度センサT3及び湿度センサM2を設置し、下降搬送部22bの上端部に湿度センサM3を、下端部に湿度センサM4及び温度センサT6を設置し、これらセンサ群の検出値に基づいて、コントローラ28によって冷凍機24aのファン25a及び冷凍機24bのファン25bをインバータ制御し、あるいは加湿器27a及び27bをオンオフスイッチ30によりオンオフ制御することにより、冷却室21内の温度及び湿度を制御することができる。
【0048】
あるいはインバータ制御の代わりにファン25a、25bをオンオフ制御又はステップ制御してもよく、あるいは複数の冷凍機を設け、台数制御してもよい。また加湿器27a、27bを複数設置し台数制御してもよい。このように冷凍機24a、24b及び加湿器27a、27bを最適制御して冷却室21内の温度及び湿度を制御する。
【0049】
図7は、第4実施例の冷却室21の表面急速冷却室23a及び中心緩慢冷却室23bの温度条件及び湿度条件を示す線図である。図7に示すように、表面急速冷却室23aにおいては、冷凍機24aから放出される冷気cによって10℃に保持され、加湿器27aから放出される加湿空気によって相対湿度が60%RHに保持されている。また中心緩慢冷却室23bにおいては、冷凍機24bから放出される冷気cによって15℃に保持され、加湿器27bから放出される加湿空気によって相対湿度が90%RHに保持されている。
【0050】
かかる第4実施例において、バーチカルコンベア22上に載置され入口21aから表面急速冷却室23a内に搬入された焼成パンfは、表面温度が約95℃であり、表面急速冷却室23a内の10℃の雰囲気温度との差が大であるため、急速に冷却される。一方入口21a近傍の搬送路を取り巻く空間は、焼成パンfからの輻射伝熱を含む伝熱により暖められ、ここに加湿器27aから放出される加湿空気により絶対湿度の高い雰囲気が形成される。
【0051】
その後焼成パンfは、上昇搬送部22aに移って上昇していくが、入口21a近傍の搬送路付近で形成された高絶対湿度雰囲気も上昇していくので、焼成パンfの温度が徐々に下がっても搬送路の周囲は表面冷却室23a内の上部まで相対湿度の高い雰囲気で覆われる。従って焼成パンfは表面からの水分の蒸散が抑えられた状態で急速に冷却され、図7に示すように、焼成パンfの表面温度は中心緩慢冷却室23b内の設定温度である15℃まで低下する。
【0052】
表面急速冷却室23a内の上部まで達した焼成パンfは、開口21cを通って中心緩慢冷却室23bに入り、下降搬送部22bを通って下降し、出口21bから中心緩慢冷却室23b外に出る。
中心緩慢冷却室23bでは、冷凍機24bから放出される冷気cが下方に流れるが、その流れに乗って加湿器27bから放出される加湿空気が下降搬送部22bを通って下方に流れるので、下降搬送部22bは高相対湿度雰囲気に包まれる。焼成パンfの表面温度が下がって室内温度15℃との差がなくなり、また90%RHの高湿度雰囲気に保持されているので、焼成パンfの表面からの水分の蒸散が抑えられ、逆に高湿度雰囲気からの水分の吸着を促し、表面急速冷却室23aで蒸散した水分を回復する。
【0053】
このように第4実施例によれば、冷却室21が上流側の表面急速冷却室23a及び下流側の中心緩慢冷却室23bに仕切られ、表面急速冷却室23aでは60%RHの比較的高い相対湿度下で焼成パンf表面温度と室内雰囲気温度との大きな差により急速冷却を行い、また中心緩慢冷却室23bでは、雰囲気温度と焼成パン表面温度との差をなくし、90%RHの高相対湿度雰囲気下で焼成パンの水分の回復を行ないながら、芯温を25℃以下に冷却するので、焼成パンfの急速冷却が可能になり、切削性が向上し、肌荒れを防止することができるとともに、歩留まり減少を最小に抑えて、しっとり感、もちもち感を保持した食味に改善することができる。
【実施例5】
【0054】
次に本発明の第5実施例を図9に基づいて説明する。図9において、31は冷却室で、仕切り壁36によって表面急速冷却室33aと中心緩慢冷却室33bとに仕切られている。32はバーチカルコンベアで、水平搬送部32aと垂直搬送部32bとからなり、載置された焼成パンfが冷却室31の入口31aから表面急速冷却室33aの内部に導入され、水平搬送部32a及び垂直搬送部32bを経て仕切り壁36の開口36aを通って中心緩慢冷却室33bに搬送され、最後に出口31bから室外に搬出されるように構成されている。
【0055】
表面急速冷却室33aの入口31a近傍には加湿器35aが設けられ、冷凍機34aによって冷気循環流cが形成されている。また中心緩慢冷却室33bにも開口36a近傍に加湿器35bが設けられ、冷凍機34bによって冷気循環流cが形成されている。
また冷凍機34aの上流側及び下流側には温度センサT1及びT2が設けられ、表面急速冷却室33a内の搬送始端部には湿度センサM1が、開口36aの搬送終端部には温度センサT3及び湿度センサM2が設置されている。中心緩慢冷却室33bにも同じ位置に温度センサT4〜T6及び湿度センサM3及びM4が設置され、図8に示す第4実施例と同様の制御系を具備し、この制御系によって表面急速冷却室33a及び中心緩慢冷却室33bは図7と同じ温度条件及び湿度条件に保持されている。
【0056】
かかる構成において、焼成パンfがバーチカルコンベア32上に載置されて入口31aから表面急速冷却室33a内の搬入されると、搬入直後においては高温状態の焼成パンfからの輻射伝熱を含む伝熱によって周囲の空気が暖められ、そこに加湿器35aから加湿空気が放出されて熱によって蒸発し、焼成パンfの周囲に絶対湿度の高い雰囲気が形成される。また冷凍機34aから放出される冷気cと焼成パンとの温度差が大きいために焼成パンfは急速に冷却される。
焼成パンfは表面急速冷却室33a内を下流側に搬送されるに従って徐々に冷却されるが、上流側で形成された絶対温度の高い雰囲気が冷気循環流cに乗って焼成パンを取り巻いた状態で冷却されるため、水分の蒸散が抑えられる。
【0057】
焼成パンfが開口36aを通って中心緩慢冷却室33bに搬入されると、中心緩慢冷却室33b内は、加湿器35b及び冷凍機34bによって相対湿度が90%RH、温度が表面急速冷却室33aより若干高い15℃に保持され、焼成パンfの表面温度は中心緩慢冷却室33bの入口でほぼ15℃に冷却されているため、焼成パンfの温度と雰囲気温度との差がない状態で、焼成パンの表面にて高湿度雰囲気からの水分の吸着を促し、焼成パンfは表面急速冷却室33aで蒸散した水分を回復することができる。
これによって焼成パンは、水分の蒸散が極力抑えられた状態で冷却処理がなされるため、歩留まり減少を最小限に抑えることができるとともに、しっとり感、もちもち感を保持した食味に改善される。また冷却時間を短縮できて、芯温を25℃まで冷却できるので、切削性を向上でき、肌荒れを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、焼成パンを焼成後冷却して包装、冷凍等の次工程に移行する場合に、温度調整及び湿度調整された冷却室内をコンベアで搬送しながら冷却することにより、従来のバッチ式と比べて操作性が良く、冷却時間を短縮でき、水分の蒸散をなくして食味の改善及び歩留まりの改善等を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施例の全体構成図である。
【図2】図1中のII−II矢視図である。
【図3】前記第1実施例の制御系を示す系統図である。
【図4】本発明の第2実施例の全体構成図である。
【図5】本発明の第3実施例の全体構成図である。
【図6】本発明の第4実施例の全体構成図である。
【図7】前記第4実施例の温度及び湿度分布図である。
【図8】前記第4実施例の制御系を示す系統図である。
【図9】本発明の第5実施例の全体構成図である。
【図10】従来の焼成パンの冷却設備の構成図である。
【図11】従来の別な焼成パンの冷却設備の構成図である。
【図12】従来に更に別な焼成パンの冷却設備の構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成後の焼成パンをコンベアに載置して冷却室内に搬入し、該冷却室に必要時間滞留して冷却処理した後、前記冷却室外に搬出する焼成パンの冷却方法において、
前記冷却室内の温度を5〜20℃に保持し、
前記冷却室に搬入された焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給して焼成パンの周囲に高絶対湿度領域を形成することにより、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を相対湿度60%以上の高加湿冷却空間とすることを特徴とする焼成パンの冷却方法。
【請求項2】
前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を相対湿度90〜100%に保持することを特徴とする請求項1記載の焼成パンの冷却方法。
【請求項3】
焼成後の焼成パンをコンベアに載置して冷却室内に搬入し、該冷却室に必要時間滞留して冷却処理した後、前記冷却室外に搬出する焼成パンの冷却方法において、
前記冷却室を低温度に保持された表面急速冷却域と該表面急速冷却域より高温度に保持された中心緩慢冷却域とに仕切り、
焼成パンをまず低温度に保持された前記表面急速冷却域内に搬送し、
前記表面急速冷却域内で焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給し焼成パンの周囲に高絶対湿度領域を形成して、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を高い相対湿度雰囲気としながら焼成パンを急速冷却し、
次に焼成パンを前記表面急速冷却域より前記中心緩慢冷却域内に搬送し、
前記中心緩慢冷却域内で焼成パンの保有熱により最も温度が高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を供給し焼成パンの周囲に高絶対湿度領域を形成して、前記コンベアの搬送路を囲む搬送空間を前記表面急速冷却域より高い相対湿度雰囲気としながら焼成パンを加湿処理することを特徴とする焼成パンの冷却方法。
【請求項4】
前記表面急速冷却域内の前記搬送空間の温度を5〜15℃に、相対湿度を60〜80%に保持し、
前記中心緩慢冷却域内の前記搬送空間の温度を15〜25℃に、相対湿度を80〜100%に保持することを特徴とする請求項3記載の焼成パンの冷却方法。
【請求項5】
内部に冷却空間を形成する冷却室と、
焼成後の焼成パンを載置して前記冷却室に出入りするコンベアとを備え、
前記コンベアの搬送速度を調整して焼成パンを冷却処理に必要な時間だけ前記冷却室内に滞留するように構成した焼成パンの冷却装置において、
前記冷却室内に焼成パンの搬送始端部に向けて冷却空気流を放出する冷凍機と、
前記冷却室に搬入された焼成パンの保有熱により最も温度の高くなるコンベア搬送方向上流側の部位に加湿空気を放出する加湿器とを備えたことを特徴とする焼成パンの冷却装置。
【請求項6】
前記コンベアが上下方向に配置されたスパイラルコンベアであり、焼成パンを前記スパイラルコンベアで螺旋状に上下方向に搬送する搬送空間を形成し、
前記加湿器を前記搬送空間の始端部近傍に設け、
前記冷凍機の冷却空気流を前記搬送空間の始端部から搬送方向下流側に向くように構成したことを特徴とする請求項5記載の焼成パンの冷却装置。
【請求項7】
前記コンベアがバーチカルコンベアであり、
前記加湿器を前記バーチカルコンベアが前記冷却室に進入した進入部位における水平搬送部と最初の垂直搬送部との接続部近傍に設け、
前記冷凍機の冷却空気流を前記バーチカルコンベアの入口側から出口側に向くように構成したことを特徴とする請求項5記載の焼成パンの冷却装置。
【請求項8】
前記冷却室を表面急速冷却域と中心緩慢冷却域とに仕切り、
前記コンベアをまず前記表面急速冷却域に進入しその後前記表面急速冷却域を出て前記中心緩慢冷却域に進入するように配置し、
前記冷凍機及び前記加湿器を前記表面急速冷却域及び前記中心緩慢冷却域の内部にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項5記載の焼成パンの冷却装置。
【請求項9】
前記コンベアがスパイラルコンベア又はバーチカルコンベアであることを特徴とする請求項8記載の焼成パンの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−510996(P2009−510996A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518229(P2008−518229)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/JP2005/020668
【国際公開番号】WO2007/052365
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】