説明

焼成窯

【課題】ピザの焼成に適した鉄製焼成窯を提供する。
【解決手段】鉄製焼成窯は,鉄製の第一の窯本体と,第一の窯本体の少なくとも正面部,背面部,側面部,上面部を覆うように配設される断熱材と,断熱材が配設された第一の窯本体との間に空気層である間隔を設けて,第一の窯本体の外側に被せられる鉄製の第二の窯本体とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,パンやピザなどの焼成食品を加熱して焼成するための焼成窯,特に,鉄製の焼成窯に関する。
【背景技術】
【0002】
パンやピザなどを焼成に使用される石窯は,煉瓦などを積み上げて作られるので,頑丈で耐久性に優れており,断熱性,蓄熱性,遠赤外線効果も高い。ガス,電気,若しくは薪などを熱源として,石窯内を加熱するが,特に,薪を燃料として用いると,ガスや電気などの熱源と比較して,窯内の温度を高温にすることができ,ピザの焼成に適している。ピザは,パンの焼成温度(300℃程度)よりも高温(450℃程度)で焼成することで,ピザ生地の内部まで十分に加熱し,表面をパリッとした食感の焼き上がりを可能とする。
【0003】
このように,石窯は,ピザを焼成するのに適した構造であるが,煉瓦を一つずつ積み上げて制作するので,比較的に長い制作工程を必要とし,また,制作コストも高い。さらに,重量が重く,石窯が置かれる土台の位置も制限され,施工条件も厳しい。もちろん,石窯を移動させることもできない。
【0004】
このため,石窯に代わって,別の材料による焼成用窯が提案されている。例えば,特許文献1及び2は,セラミックスで形成される窯が提案されている。また,特許文献3及び4は,鉄を用いて構成される窯が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−274917号公報
【特許文献2】特開平11−253091号公報
【特許文献3】特開2002−247946号公報
【特許文献4】登録実用新案第3138839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,セラミック製窯は,石窯と同程度の蓄熱性,遠赤外線効果が期待できるが,加工が容易ではなく,その制作コストは高価である。
【0007】
また,従来の鉄製窯は,加工が容易であり,制作コストも比較的安価である反面,蓄熱性が比較的低く,ピザの焼成に適した遠赤外線効果も得づらいという問題がある。そのため,例えば,特許文献3では,鉄板の内側に,煉瓦などの石窯の材料を配設する構成とし,結果的に,構造が複雑化し,制作コストの上昇を招く。
【0008】
そこで,本発明の目的は,上記問題点に鑑み,ピザの焼成に適した鉄製焼成窯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の鉄製焼成窯は,鉄製の第一の窯本体と,第一の窯本体の少なくとも正面部,背面部,側面部,上面部を覆うように配設される断熱材と,断熱材が配設された第一の窯本体との間に空気層である間隔を設けて,第一の窯本体の外側に被せられる鉄製の第二の窯本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,鉄製の窯本体の二重構造とし,2つの窯本体の間に,断熱材と空気層を設けることで,従来の石窯と比較して,低コストで軽量の鉄製焼成窯を制作することができ,導入コストが低く,安価で食感のよいピザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態における鉄製焼成窯の概観図である。
【図2】本実施の形態における鉄製焼成窯の断面図である。
【図3】本実施の形態における鉄製焼成窯の外側窯の正面図,背面図,上面図,側面図である。
【図4】本実施の形態における鉄製焼成窯の内側窯の正面図,背面図,上面図,側面図である。
【図5】本実施の形態における鉄製焼成窯の排気ダクトに強制排気装置を接続した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら,かかる実施の形態例が,本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
図1は,本実施の形態における鉄製焼成窯の概観図であり,図2は,本実施の形態における鉄製焼成窯の断面図である。本実施の形態における鉄製焼成窯は,窯本体を二重構造とし,底面を除いて,内側鉄製窯本体10の周囲を断熱材11で覆い,さらに,外側鉄製窯本体20が,内側鉄窯本体10を覆うように,内側鉄製窯本体10に被される。
【0014】
図3は,外側鉄製窯本体20の正面図(a),背面図(b),上面図(c),側面図(d)であり,図4は,内側鉄製窯本体10の正面図(a),背面図(b),上面図(c),側面図(d)である。図2(a)は,図3及び図4のA−A線の断面を示すものであり,図2(b)は,図3及び図4のB−B線の断面を示すものである。
【0015】
内側鉄製窯本体10の少なくとも正面部,背面部,上面部及び左右の側面部に断熱材11が配設される。各部の所定の開口部分は,断熱材11で塞がれない。図2に示すように,外側鉄製窯本体20と断熱材11で覆われた内側鉄製窯本体10との間は,底面を除いて,間隔部分(空気層)12が設けられる。断熱材11は,例えば,セラミックファイバーで構成される耐火性を有する断熱材(いわゆるセラミックウール)である。シート状で可撓性を有する繊維状断熱材であるセラミックウールを用いることにより,内側鉄製窯本体10の任意の形状に自在に合わせることができ,内側鉄製窯本体10の形状に沿って,焼成窯の周囲を隙間なく張り付けることができ,高い断熱性能を確保でき,施工も容易である。また,断熱材の厚みに応じて,必要な断熱性能を確保できる。
【0016】
内側鉄製窯本体10と外側鉄製窯本体20は共通の底面部13に固定され,底面部13も鉄板で形成される。内側鉄製窯本体10内部は燃焼室14であり,その燃焼室内部の底面には,好ましくは,耐火煉瓦などの耐火材15が敷かれる。
【0017】
寸法の一例としては,内側鉄製窯本体10及び外側鉄製窯本体20の鉄板の厚さは約9mm程度であり,外側鉄製窯本体20は,幅1000mm,奥行き800mm,高さ650mm程度である。内側鉄製窯本体10は,外側鉄製窯本体20の各寸法より100mm程度小さい寸法で構成され,断熱材11は,20〜30mm程度の厚さで,内側鉄製窯本体10に張り付けられる。
【0018】
本実施の形態における鉄製焼成窯は,薪を燃料として用い,薪51は,燃焼室14内の側部に載置され,燃焼させる。燃焼室14内は,薪51の燃焼により加熱され,燃焼室14内に内地されたピザ生地52を加熱,焼成する。
【0019】
本実施の形態では,鉄製焼成窯を,鉄製の窯本体の二重構造とし,さらに,内側鉄製窯本体10を断熱材で覆い,さらに,内側鉄製窯本体10と外側鉄製窯本体との間に空気層12を確保することで,内側鉄製窯本体10内の燃焼室14の加熱効率が向上し,燃焼室14の内部温度を,ピザの焼成に適した約450℃程度まで昇温することができる。また,薪による燃焼は,遠赤外線を大量に放出し,燃焼室14内で薪を直に燃焼させることで,その遠赤外線効果と,450℃もの高温による加熱により,表面を焦がさずに(適度な焦げ目をつけるとともに),ピザ生地の内部まで十分に加熱し,パリッとした食感のピザを焼成することができる。
【0020】
内側鉄製窯本体10及び外側鉄製窯本体20の正面部には,それぞれ連通する内側開口部16,外側開口部21が設けられ,外側鉄製窯本体20の外側開口部21には,耐熱ガラスを有して構成される開閉可能な扉(参照符号21は,該扉をも表す)が取り付けられる。扉の開閉により,薪やピザ生地の出し入れを行い,耐熱ガラスを通じて,外部から燃焼室14内の状態を確認することができる。また,扉の開閉により,吸気量調節及び燃焼室14内の温度調節も可能である。
【0021】
内側鉄製窯本体10及び外側鉄製窯本体20の上面部には,それぞれ連通する内側排気口18,外側排気口22が設けられる。外側排気口22は,排気ダクト(図示せず)接続可能なフランジ部を備えていてもよく,燃焼室14内からの排気は,内側排気口18から外側排気口22に接続する排気ダクトから外部に排出される。また,燃焼室14内からの排気は,内側排気口18から,内側鉄製窯本体10と外側鉄製窯本体20間の隙間(空気層)12にも広がり,その排気熱が内側鉄製窯本体10を覆い,断熱材11とともに,外部との熱遮断を行い,燃焼室14内を効率的に加熱することができる。
【0022】
内側鉄製窯本体10及び外側鉄製窯本体20の背面部及び左右の側面部には,それぞれ連通する内側吸気口19,外側吸気口23が設けられる。外側鉄製窯本体20に設けられる外側吸気口23には,吸気量調節,さらには,燃焼室14内の温度調節のために,その開口面積を自在に調整可能な蓋(参照符号23は,該蓋をも表す)が取り付けられる。吸気口の位置及び数は,適宜設定可能である。
【0023】
内側鉄製窯本体10の内側開口部16及び内側吸気口19には,それを囲うように所定長さ突出する鍔部16a,19aが設けられる。鍔部16a,19aは,断熱材11の張り付けが内側開口部16及び吸気口19にはみ出ないようにするのを補助する。
【0024】
本実施の形態における焼成窯は,鉄製窯で構成されるため,石窯と比較して重量を大幅に軽量化することができる。軽量化により,自動車(トラック)にも搭載可能であり,例えば,移動店舗用にも適用可能である。また,加工が容易で,工場生産可能であるから,低コストで制作することができる。二重構造の鉄製窯とし,また,その内側と外側の間に,断熱材及び空気層を設けることで,ピザの焼成に必要な高温の加熱を実現可能であり,同一性能の石窯と比較しても,重量及びコストともに半減程度に抑えることができる。
【0025】
図5は,本実施の形態における鉄製焼成窯の排気ダクトに強制排気装置を接続した状態を示す図である。排気口22に接続された排気ダクト24の途中位置に穴をあけ,排気方向に空気の流れを供給するように管部材30の一端を挿入,接続し,管部材30の他端側から,ファン31の回転による空気の流れを管部材30の一端側に送る。これにより,排気ダクト24内の排気の流れが加速し,効率的に排気を行うことができる。また,外部から排気ダクト24に強制排気装置を接続する構成とすることで,鉄製焼成窯の構造を簡素化でき,制作・加工を容易とすることができる
本実施の形態における鉄製焼成窯は,ピザの焼成に最適であるが,ピザに限らず,パンや他の焼成食品(例えば,ハンバーグやステーキなど)の焼成にも,もちろん適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
10:内側鉄製窯本体,11:断熱材,12:空気層(間隔部分),13:底面部,14:燃焼室,15:耐火材,16:内側開口部,16a:鍔部,18:内側排気口,19:内側吸気口,19a:鍔部,20:外側鉄製窯本体,21:外側開口部(扉),22:外側排気口,23:外側吸気口(蓋),24:排気ダクト,30:管部材,31:ファン,51:薪,52:ピザ生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄製の第一の窯本体と,
前記第一の窯本体の少なくとも正面部,背面部,側面部,上面部を覆うように配設される断熱材と,
前記断熱材が配設された前記第一の窯本体との間に空気層である間隔を設けて,前記第一の窯本体の外側に被せられる鉄製の第二の窯本体とを備えることを特徴とする鉄製焼成窯。
【請求項2】
請求項1において,
前記第一の窯本体及び前記第二の窯本体のそれぞれ上面部に設けられる排気口に接続される排気ダクトと,
管とファンとを有する強制排気装置とをさらに備え,
前記排気ダクト内に外部から前記管の一端側が挿入され,前記管の他端側から前記ファンにより空気を供給して,前記排気ダクト内を強制排気させることを特徴とする鉄製焼成窯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−115220(P2012−115220A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269322(P2010−269322)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(510318653)ほーむず珈琲株式会社 (1)