説明

煙警告システム

煙警告システムにおいて、周囲条件が、煙警告送信器の状態の評価に含まれ、又は、煙警告送信器における内部信号評価が、影響を受ける。この手順において、煙警告送信器自体の感度をより低く設定したままで、システムのアラーム閾値が、特定の周囲条件の下で、上げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2004年7月19日出願の米国特許仮出願第60/589,272号及び2004年7月19日出願のドイツ特許出願第10 2004 034 904.5−32号の優先日の利益を主張し、これらの開示内容を参考資料としてここに援用する。
【0002】
本発明は、特に航空機で使用される煙警告システムに関する。
【背景技術】
【0003】
一般に使用される煙警告システムは、光学煙警告送信器により機能する。これらの煙警告送信器は、特定のアラーム閾値を用いるいわゆる散光原理を適用する。煙及び粒子がない場合、受信器は、光源とその受信器との間にバリアがあるために、信号を受信しない。しかしながら、煙粒子(又はその他の粒子)がこの領域に入ると、光が散乱され、受信器は、対応する信号の上昇を登録する。この信号の上昇が、特定の閾値を超えると、煙警告送信器は、アラームを発する。
【0004】
しかしながら、上述した機能原理は、煙粒子だけでなく全てのエアロゾルもが、光の散乱を招き、その結果、煙警告送信器が、アラーム状態を想定する恐れがあるという点で、欠点を有している。実際の用途では、例えば、霧、ほこり、又は、殺虫剤の使用さえも、誤認アラームを招くことが示されている。
【0005】
殆どの用途では、このような誤認アラームは、安全性のリスクを引き起こす。このため、誤認の発生の確率を最小限に抑えることに、高い優先順位が与えられる。
【0006】
上述した問題は、場合により急激に変化する周囲条件に直面する移動型煙警告システムの場合には、更に深刻である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、変化していく周囲条件において誤認アラームの確率を最小限に抑える煙警告システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的は、請求項1に示されたように、達成される。本発明の有益な改良は、従属請求項に示される。
【0009】
本発明に係る煙警告システムは、航空機で使用されるのが好ましく、アラームが発せられるべきかどうかに関する判断において、煙警告送信器により送信される状態信号の評価に、例えば、温度、大気湿度、風、輸送される荷物の種類等の周囲条件が、含まれる。
【0010】
本発明の一例としての実施の形態によると、本発明に係るシステムは、煙警告送信器から煙の状況の特性である状態を受信し、取込デバイスにより取り込まれた周囲条件を考慮して、この状態を評価し、その評価結果に基づき、出力デバイスを介してアラームを発するようにする評価デバイスを備える。
【0011】
これにより、煙警告送信器自体を調節可能にしなくてもよいという利点を得ることができる。煙警告送信器により供給される信号が、周囲条件を考慮して、別個のデバイスにより評価されるため、誤認アラームの発生の確率を最小限に抑えることができる。
【0012】
本発明に係るシステムの別の一例としての実施の形態によると、感度が調節可能な煙警告送信器が使用される。その感度は、取込デバイスにより受信された周囲条件に基づいて設定される。
【0013】
本発明の一例としての実施の形態によると、以下、入力パラメータとも呼ばれる周囲条件は、少なくとも1つのセンサを介して、継続的に取り込まれる。
【0014】
このようにして、煙警告システムを、現在妥当な周囲条件に合わせて、迅速に調節することができる。
【0015】
したがって、本発明の一側面によると、煙警告送信器自体の感度をより低く設定したままで、システムのアラーム閾値が、特定の周囲条件の下で、上げられる。このようにして、アラーム閾値が固定された煙警告システムと比較して、「汚れた」周囲条件(例えば、ほこり、霧)の下での誤認アラームの発生の確率をかなり低減することができる。これは、移動型の用途(例えば、航空機、列車、潜水艦システム)におけるシステムで、特に有益である。これは、これらのシステムが、場合により急激に変化する周囲条件にさらされるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の有益な一例としての実施の形態を、図1を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、システム1は、例えば航空機(図示せず)の重要な位置に配置される2つのグループの煙警告送信器2、3を備える。
【0018】
図1によると、煙警告送信器のグループ2は、例えば航空機の貨物室に配置される3つの煙警告送信器2a乃至2cを備える。煙警告送信器2a乃至2cは、バスライン4を介して電気的に相互接続され、例えば、このバスライン4を介して、これらの間でデータを交換することができる。
【0019】
その一例としての実施の形態によると、図1に示す煙警告送信器の第二のグループ3は、航空機の客室スペースに配置される3つの煙警告送信器3a乃至3cを備える。煙警告送信器3a乃至3cは、バスライン5を介して電気的に相互接続され、例えば、このバスライン5を介して、これらの間でデータを交換することができる。
【0020】
当然ながら、煙警告送信器の2つのグループ2、3も、これらの間でデータを交換するために、相互接続されていてもよい。
【0021】
煙警告送信器2a乃至2c及び3a乃至3cは、各煙警告送信器の近傍に存在する煙の状況の特性である状態情報を提供する。
【0022】
図1に示すように、煙警告送信器のグループ2は、データライン6を介してデバイス8に接続され、客室スペースの煙警告送信器のグループ3は、データライン7を介してそのデバイス8に接続される。
【0023】
デバイス8は、煙警告システム1のアラーム閾値を設定するのに使用され、このデバイス8は、例えば、評価デバイス9を備える。この評価デバイス9は、バスライン4及びデータライン6を介して、煙警告送信器2a乃至2cの状態に関する情報を受信する。同様に、評価デバイス9は、バスライン5及びデータライン7を介して、煙警告送信器3a乃至3cの状態に関する情報を受信する。受信された情報は、例えば、デバイス8の内側又は外側の記憶デバイス(図示せず)に記憶してもよい。また、データライン及びバスラインの代わりに、単一のバスラインを提供してもよい。
【0024】
更に、この好ましい実施の形態に係るデバイス8は、航空機データネットワーク10に接続される。この接続は、無線接続でも有線接続でもよい。航空機データネットワーク10は、様々な取込デバイス11a乃至11eからデータを受信し、取込デバイス11a乃至11eは、周囲条件に関する情報を収集する。
【0025】
取込デバイス11aは、例えば、接続部12aを介して飛行中に航空機データネットワーク10に飛行データを送信する中央保守システムである。
【0026】
取込デバイス11bは、例えば、接続部12bを介して航空機データネットワーク10に目的地に関する情報を送信する飛行管理システムである。
【0027】
取込デバイス11cは、例えば、接続部12cを介して航空機データネットワーク10にドア(例えば、貨物室のドア)の状態に関する情報を提供するドア制御システムである。
【0028】
取込デバイス11dは、例えば、接続部12dを介して航空機データネットワーク10に例えば気温、湿度、気圧等に関する情報を提供する空気データシステムである。
【0029】
取込デバイス11eは、例えば、接続部12eを介して航空機データネットワーク10に対応する情報を提供する飛行警告システムである。
【0030】
図1に破線で示されているように、システム1には、所望の数の取込デバイスを提供してもよい。
【0031】
本発明によると、取込デバイス11a乃至11eは、例えば、現在のデータを航空機データネットワーク10に継続的に提供し、航空機データネットワーク10は、このデータを、接続インタフェース13を介して、自動的又は要求に応じて、デバイス8に送信する。各取込デバイス11a乃至11eが航空機データネットワークに接続される仲介をする接続部12a乃至12eは、無線接続でも有線接続でもよい。
【0032】
同様に、航空機データネットワーク10とデバイス8との間の接続インタフェース13は、無線接続でも有線接続でもよい。
【0033】
この一例としての実施の形態によると、図1に示すように、評価デバイス9は、接続インタフェース13及び航空機データネットワーク10を介して、取込デバイス11a乃至11eから周囲条件に関する情報を受信する。
【0034】
更に、図1に示すように、デバイス8は、例えばディスプレイである出力デバイス14に接続され、出力デバイス14は、航空機の操縦室(図示せず)に配置される。
【0035】
上述したように、周囲条件は、取込デバイス11a乃至11eにより取り込まれ、継続的に提供され、例えば、デバイス8により要求される。これらの周囲条件(以下、入力パラメータともいう)及び煙警告送信器2a乃至2c及び3a乃至3cの状態に関する情報に基づいて、評価部9は、システム1のアラーム閾値を適応させるための対応するコマンドを計算する。又は、評価デバイス9は、各煙警告送信器の感度を設定するために、各煙警告送信器に対応するコマンドを提供してもよい。
【0036】
アラーム閾値の適応は、以下のパラメータにより行われるのが好ましい。
目的地における各周囲パラメータ(温度、大気湿度、風力等)及び特別な特性、
貨物室のドアの状態(閉、開)、及び、
荷物の種類(例えば、動物、工業製品、腐敗しやすい物品)。
【0037】
この一例としての実施の形態によると、従うべき手順は、以下の状態表に定められた通りである。煙警告送信器の状態1乃至3は、感度レベルを指す。
1.高感度、即ち、アラームは、光強度が1分当たり3%減少している場合に発せられる、
2.中感度、即ち、アラームは、光強度が1分当たり6%減少している場合に発せられる、
3.低感度、即ち、アラームは、光強度が1分当たり9%減少している場合に発せられる。
【0038】
【表1】

【0039】
以上のように、本発明を、航空機における用途を参照して説明したが、本発明に係るシステムは、また、他の移動型の用途(例えば、列車、潜水艦、自動車に関する用途)で有益に使用することができる。これは、これらのシステムが、急激に変化する周囲条件にさらされるからである。
【0040】
以上のように、本発明を、好ましい実施の形態を参照して説明したが、本分野の当業者が、保護範囲を逸脱せずに変型及び変更をすることができることは、言うまでもない。
【0041】
例えば、煙警告送信器が、温度センサ15を備え、臨界温度値を超えた場合に、周囲条件に関係なく、アラームを発するようにしてもよい。同様に、ユーザが、例えばキーパッドを介して、周囲条件を入力できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の好ましい実施の形態における、航空機で使用される煙警告システム1を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙の状況を検出する煙警告送信器(2a−2c、3a−3c)と、
煙の状況が検出される環境の条件を取り込む取込デバイス(11a−11e)と、
前記取り込んだ周囲条件によって煙警告システムのアラーム閾値を設定するデバイス(8)と、
前記設定されたアラーム閾値を超えた及び/又は達しなかった場合にアラームを発する出力デバイス(14)とを備える煙警告システム。
【請求項2】
前記デバイス(8)は、前記煙警告送信器(2a−2c、3a−3c)から煙の状況の特性である状態を受信し、前記取込デバイス(11a−11e)のうちの1つにより取り込まれた周囲条件を考慮して、この状態を評価する評価デバイス(9)を備え、前記評価結果に基づき、前記出力デバイス(14)がアラームを発することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記デバイス(8)は、前記取込デバイス(11a−11e)により受信された前記周囲条件に基づいて、前記煙警告送信器(2a−2c、3a−3c)の内部信号評価に影響を与えることによってその感度を調節するために、前記煙警告送信器(2a−2c、3a−3c)に信号を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記取込デバイス(11a−11e)は、周囲条件を継続的に取り込む少なくとも1つのセンサを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記取込デバイス(11a−11e)は、前記周囲条件を入力できる手段であるキーパッドを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記煙警告送信器(2a−2c、3a−3c)は、温度センサ(15)を備え、臨界温度値を超えた場合に、前記周囲条件に関係なく、前記出力デバイス(14)を介してアラームを発するようにすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ディスプレイデバイス(14)は、アラームを聴覚的及び/又は視覚的に表示することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
航空機における請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステムの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−507053(P2008−507053A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521894(P2007−521894)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007876
【国際公開番号】WO2006/008145
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(504467484)エアバス・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】