煙除去および火災鎮静用の金属酸化物ナノ粒子
煙被害領域の煙レベルを減少させ、火災により生じた有害化合物のレベルを減少させ、火災鎮圧、および難燃性を増加させる方法。とりわけ、本発明による方法はナノ結晶性粒子を煙被害領域に分散し火災により生じた煙微粒子および有害化合物を吸着することを含む。ナノ結晶性粒子はまた火災鎮圧および難燃化の方法に用いても有効である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は2004年10月18日出願の米国仮出願明細書第60/619830号および2004年10月20日出願の米国仮出願明細書第60/620517号による利益を主張すると共に、両者を本願に引用して本明細書とする。
【0002】
本発明は、火災により生じた煙および有害化合物の除去、一般の火災鎮火、および難燃性の方法に広く関連する。より具体的には、本発明による方法はこれらの目的を達成するために、ナノ結晶性物質を単独または他の適当な物質と共に使用することを伴う。
【背景技術】
【0003】
火災により生ずる火、煙、および有害物質に関連する人間および動物の生命および健康に対する危険はよく知られている。ほとんどの火災において、煙に含まれる有害ガスを吸入することが第1の死亡原因である。火災は複合的、動的、物理化学的な現象でこれは激しい化学反応の結果で煙、熱、炎および光を発生する。それぞれの火災は燃焼物質および環境条件による個別の特性を示す。煙は特定の物質の複合体であると同時に、火災大気中に分散した種々の目に見えない燃焼ガスおよび蒸気である。相互に連携した火、煙、および有害化合物はまた乏しい視界を作りだしこのことにより軍や民間の地上作戦の行為を妨げる(すなわち、戦場作戦、捜索および救出作戦、航空機作戦、他)。
【0004】
消防界の内部においては火災の煙による健康被害は主にそのCO含有量に因るものと長い間受け入れられてきた。最近では、このシナリオにシアン化水素(HCN)も含む様になってきている。イソシアネート類もポリウレタン類の製造に用いられ、しばしば接着剤やラッカーを製造するのに用いられることからまた注目の的になっている。イソシアネート類は比較的少量でも曝された人々にぜんそくを引き起こすことが知られている。NIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)はIDLH(濃度限界値)として2,4−ジイソシアネートは2.5ppm、メチルイソシアネートは3.0ppmと規定しているが、因みにHCNは50ppm、COは1200ppmのIDLH規定である。ガラスウール断熱材、無機ウール断熱材、ならびに窒素含有(尿素ベース)バインダー類および木繊維類を使用した製品は燃焼した際に相当量のイソシアネート類(イソシアン酸およびメチルイソシアネート)を放出することが見いだされている。
【0005】
さらに、煙および有害な化学物質はかなりの工業工程でも作り出される。より新しい環境基準では工業燃焼排気ガスからこれらの物質を大気中に放出する前に削減することを求めている。
【0006】
従来からある火災鎮静用のドライケミカル方式は加圧容器の使用を伴ない、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、モノリン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、および白雲母の様な種々の粉末化合物を内蔵している。しかしながら、これらの方式はせいぜい煙の除去にわずかに効果があるだけで火災により生じる有害化合物の危険は処理しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって技術的に、煙除去、火災鎮静、難燃性ならびに火災および工業工程によって生じる有害化学物質の吸着に対する本当の、かつ満たされていない、必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上の諸問題を解決するために火災鎮静、煙除去、難燃性および火災により生じた有害物質の除去の方法を提供する。一つの態様において本発明は、煙被害領域の視界を高める方法を提供し、これは煙被害領域に少なくとも煙の一部を吸着するためのある量のナノ結晶性粒子を分散する工程から成る、または本質的(実質的)にこの工程から成ることで構成される。
【0009】
別の態様において本発明は、火災により生じた有害物質を領域から除去する方法を提供し、これは火災により生じた少なくとも1種類の有害物質を吸着するためにある量のナノ結晶性粒子をその領域に分散することから成る、または本質的にこのことから成ることで構成される。
【0010】
さらに別の態様において本発明は、火災鎮静の方法を提供し、これは火災に向けてある量のナノ結晶性粒子を使用する工程から成る、または本質的にこの工程から成ることで構成される。
さらにまた別の態様において本発明は、物品の難燃性を改善する方法を提供し、これは物品にある量の難燃性ナノ結晶性粒子を塗布および/または組み込む工程から成る、または本質的にこの工程から成ることで構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は火災により生じた種々の化合物および物質のレベルを下げることおよび火災そのものを鎮静化するために比較的表面積の大きなナノ結晶性粒子を用いる。火災により生じる煙は炭素質煙粒子に加え、アクロレイン、トルエンジイソシアネート、ホルムアルデヒド、イソシアネート類、HCN、CO、NO、HF、およびHClの様な種々の有害な化合物を含む可能性がある。本発明は領域の視界を改善するための、および領域に存在する有害物質のレベルも下げるための煙除去方法に関係する。本発明による方法はまた火災を鎮静するためにも有効で、これには煙および有害化合物をつくり出しているすべてのくすぶっている燃えさしまたは物質も含まれる。これらの方法は閉鎖環境(例えば、閉じた部屋、チャンバー、航空機の客室、など)は元より、戸外環境にも適用できる。
【0012】
さて本発明による第1の実施態様に転じると、煙被害領域から煙を除去する方法は一般にある量のナノ結晶性粒子を煙被害領域に分散する工程から構成され、これにより少なくとも煙の一部、とりわけ視界を不明瞭にする炭素質の煙微粒子を吸着させる。本発明において(すべての局面で)使用する好ましいナノ結晶性粒子は、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択される。Mg、Sr、Ba、Ca、Ti、Zr、Fe、V、Mn、Ni、Cu、Al、Si、Zn、Ag、Mo、Sb、およびこれらの混合物の金属酸化物および金属水酸化物は最も好ましいナノ結晶性物質である。ナトリウム、アルミニウム、マグネシウムおよびカルシウムの水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩もまたとりわけ好ましい。ナノ結晶性粒子は微結晶寸法が約25nm未満の粒子であることが好ましく、約1〜20nmの間がより好ましく、約2〜10nmの間が最も好ましい。ナノ結晶性粒子の好ましいBrunauer-Emmett-Teller(BET)の多点表面積は少なくとも約15m2/g、より好ましくは少なくとも約70m2/g、最も好ましくは約200〜850m2/gを示す。
【0013】
本発明による方法は煙被害領域の視界を改善する上で、例え当該領域内にナノ結晶性粒子を分散する前の不透明度が少なくとも約95%を示していても非常に効果的である。好ましくは、ここに記載した方法により領域の不透明度を15%低減するのに、この独創的な煙除去活動が行われなかった場合の約80%未満の時間で同等の低減を達成する結果となる。例えば、不透明度が100%の領域が放置され、10分間で不透明度が85%まで改善されたとすると、本発明による方法で好ましくは同一領域の85%不透明度を8分以下で達成できるということである。より好ましくは、15%の不透明度低減が他方で自然にそうなるであろう時間の約70%未満で起こり、さらにより好ましくは不透明度の低減がこの時間の約50%未満で起こり、最も好ましくは不透明度の低減がこの時間の約40%未満で起こる。
【0014】
本発明によるとりわけ好ましい実施態様において、不透明度が約95〜100%の間の領域は、領域内にナノ結晶性粒子を分散して約5分以内で不透明度が85%未満に、より好ましくは約3分以内で、そして最も好ましくは約2分以内で低減できる。以下の実施例で説明するとおり、煙除去速度を決定する因子は関係する煙の種類および用いるナノ結晶性粒子の種類である。
【0015】
煙除去の有効性は領域内に投入したナノ結晶性粒子の量(すなわち、ナノ粒子の質量濃度)、粒子の空気力学的幾何平均径(GMD)、および粒子の沈降速度にも影響される。十分な量のナノ結晶性粒子を領域内に投入すべきで、粒子を少なくとも約0.1g/m3の質量濃度で供給することが好ましく、約0.5〜10g/m3の間がより好ましく、約1〜5g/m3の間が最も好ましい。
【0016】
空気力学的幾何平均径は、粒子の重量を基準としてエアロゾル(エーロゾル)の粒子が半分に分けられる空気力学的直径を指す。重量で50パーセントの粒子がメディアン径より大きく、50パーセントの粒子がメディアン径より小さい。メディアン径およびその幾何標準偏差は粒子の重量および径に基づくエアロゾルの粒径分布を統計的に表現するのに用いられる。幾つかの好ましいナノ結晶性粒子に関しては、空気力学的幾何平均径はその本来の径よりかなり大きい。このことはナノ結晶性粒子が分散後に凝集する傾向があることを示唆する。ナノ結晶性粒子は約1〜30μmの間の空気力学的幾何平均径を示すことが好ましく、約2〜25μmの間がより好ましく、約4〜20μmの間が最も好ましい。ナノ結晶性粒子の粒度分布は衝突および沈降の結果として時間と共に変化することがある。したがって、粒子の空気力学的幾何平均径は分散後最初の30〜60秒以内に算定することが好ましい。
【0017】
特定のナノ結晶性粒子の沈降速度は少なくとも部分的にはその空気力学的幾何平均径の値に関係する。一般に粒子が大きいほど粒子の沈降速度は高い。本発明にしたがって用いられるナノ結晶性粒子の沈降速度は好ましくは約0.001〜5cm/秒の間、より好ましくは約0.1〜4.5cm/秒の間、そして最も好ましくは約0.5〜3cm/秒の間である。もしも粒子の沈降速度が低すぎると粒子が空中に分散し続けがちとなり実際にそれが分散された領域の不明瞭さに寄与するかまたは高めてしまう。もしも粒子の沈降速度が高すぎると煙微粒子と効果的に接触し吸着するだけ粒子が空中に長く分散し続けない。したがって、上記の範囲の沈降速度の粒子を選択することが煙除去作業の有効性を高めることになる。
【0018】
煙被害領域内にナノ結晶性粒子を搬送することは同業者が周知している数ある分散手段のどれによってでも達成することが可能である。しかしながら、粒子を分散するとりわけ好ましい1つの手段は加圧容器からの分散である。好ましくは、ナノ結晶性粒子は加圧容器から約20〜3000psiの間、より好ましくは約50〜500psiの間、そして最も好ましくは約100〜300psiの間の圧力で投入される。容器は高圧ガスまたは搬送ガスで加圧してもよい。好ましい搬送ガスには窒素、アルゴン、空気、二酸化炭素、およびヘリウムが含まれ、なかでも窒素がとりわけ好まれる。圧力容器は粒子を分散する間の目詰まりに対抗できる適切なノズルを含まねばならない。好ましい搬送システムとして、カンザス州マンハッタンのNanoScale Materials社からFAST ACTTMの名称で流通している製品を例示することができる。ナノ結晶性粒子はまた顆粒状に形成して適宜投入することもできる。これら顆粒の大きさは約125〜500μmの間を示すことが好ましく、より好ましくは約140〜400μmの間、そして最も好ましくは約180〜250μmの間である。
【0019】
ナノ結晶性粒子はまた被害領域に手動分散により非加圧容器から搬送することもできる。例えば、ナノ結晶性粒子を煙被害領域内に振りかけまたは散布により分散することもできる。
【0020】
本発明による別の実施態様において前述のナノ結晶性粒子は、火災により生じた少なくとも1種類の有害物質を吸着するために使用することができる。この様な有害物質はアクロレイン、トルエンジイソシアネート、ホルムアルデヒド、イソシアネート類、HCN、CO、NO、HF、HCl、無水アンモニア、塩素、アルコキシド類(例えば酸化エチレン)、二酸化窒素、二酸化硫黄、メルカプタン類(例えばメチルメルカプタン)、およびこれらの混合物を含む。多くの場合、有害化合物はこれも火災により生じた煙と混ざっている場合がある。ナノ結晶性粒子は先に記載したどの様なナノ結晶性粒子の形状でもよく、かつ前述のどの様な散布または使用手段で分散されてもよい。
【0021】
本発明によるさらにまた別の実施態様において先に述べたナノ結晶性粒子は、火災鎮静に用いることもできる。ここに用いた様に、「火災鎮静」という用語は裸火および/または実際の炎を出していてもいなくとも燻っている物質を鎮静および/または消火することを含む。ナノ結晶性粒子は先に記載した上記の何れのナノ結晶性粒子の形状でもよく、かつ前述のどの様な散布または使用手段で分散されてもよい。さらに、本ナノ粒子はリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、および第1リン酸アンモンの様な無機化学薬品を含む在来のドライケミカル消火システムと組み合わせることもできる。当該ナノ結晶性粒子はこれら在来の乾式火災鎮静成分と重量で約1〜90%の量、より好ましくは重量で約10〜80%、そして最も好ましくは重量で約30〜70%の間で組み合わせることができる。
【0022】
本発明によるさらにまた別の実施態様によると、先に述べたナノ結晶性粒子を物品の難燃性を向上させるのに用いることもできる。物品は天然物(すなわち、原材料または比較的未処理材料)、製造物品(例えば繊維類(衣類、家具地)、プラスチック、断熱材、塗料、紙、ゴム)、またはこれらのあらゆる組合せであってもよい。ナノ結晶性粒子は当該物品の外表面に塗布したり、製造中に製品内に組み込んだり、そうでなければ粒子が物品の外表面を貫通しこれと密接に結合する様に用いられる。
【0023】
上に述べたナノ結晶性粒子の他に、難燃性を向上させるために用いる他の好ましいナノ結晶性粒子は金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの化合物がある。とりわけ好ましい物質には水酸化アルミニウム(アルミナ三水和物)、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、オキシ塩化アンチモン、三塩化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スルファミン酸アンモニウム(NH4SONH2)、臭化アンモニウム、ボリ臭素化ジフェニルエーテル、メラミン(およびその塩類)、メラミンシアヌレート、およびグアニジンが含まれる。
【0024】
当該ナノ結晶性粒子は先にここで記載したものと同じ範囲の物理的特性を示し、とりわけ微結晶寸法および表面積においてそうである。物品に組み込んだり表面に塗布する場合、ナノ結晶性粒子は物品全体の重量の約0.01〜25%を構成することが好ましく、重量で約0.05〜10%がより好ましく、そして重量で約0.1〜5%が最も好ましい。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は本発明による好ましい方法について述べる。しかし当然ながら、これらの実施例は実例を示すためのものであり、その内容のいかなるものも発明全体の適用範囲を制約するものではない。
【0026】
<実施例1>
本実施例においては、紫外−可視分光法実験を実施し燃焼煙の吸着運動速度の測定および異なるナノ粒子金属酸化物粉の吸着選択性の調査をおこなった。これらの定性的な調査実験は円柱フラスコ付のアスピレータを用いて実施した。
【0027】
紫外−可視分光法実験:この研究は紫外−可視分光法の技法を用いて実施した。カンザス州マンハッタンのNanoScale Materials社から入手できる10種類のNanoActiveTM素材について試験した。これらの素材は本質的にナノ結晶で比較的高い表面積を示す。これらの材料の基本的特性評価を表1に与えてあるが、NanoScale Materials社から入手したそれぞれの素材の完全な特性評価付の製品情報シートを本明細書に引用して包含する。「NanoActiveTM」素材は便宜上ここでは「NA」の名称でも言及する。
【0028】
【表1】
【0029】
紙を燃やして作った煙の成分をヘキサンに溶解し幾つかの成分は222および274nmで紫外−可視分光帯域を示した。相対反応性は接触時間0から15分の吸光度の変化から測定した。これはΔA0-15で表現される。吸光度の変化は時間ゼロの吸光度と15分の吸光度との差であり、または簡単に:
【0030】
【数1】
【0031】
吸光度の差が大きいほど素材の反応性が高い。表1に示す通り、両帯域で最も顕著な差がある素材はNanoActiveTM Al2O3 Plus、NanoActiveTM MgO、NanoActiveTM TiO2、およびNanoActiveTM Plus MgOであった。
【0032】
【表2】
【0033】
煙削減視認実験は円筒状フラスコ内で実施した。紙燃焼による燃焼煙をアスピレータで引き入れ煙の削減をNanoActiveTM素材を用いて実行した。それぞれの試みで用いた量は0.60gでこれをフラスコの壁に塗布した。アスピレータを用いて燃焼煙を実験フラスコ(NanoActiveTM素材が入ったフラスコ)およびコントロールフラスコ(NanoActiveTM素材なし)に同時に導入した。それぞれのフラスコで10分間煙の消失を観察した。全体として、最初の4分間の間は実験フラスコ中の煙の消失はコントロールのそれに比べ約2分先行していると判定された。表2に燃焼煙を除去する素材の序列を示しているがNanoActiveTM TiO2-07、NanoActiveTM MgO、およびNanoActiveTM Al2O3 Plusが最高の結果を達成している。
【0034】
【表3】
【0035】
<実施例2>
本実施例においては、煙除去実験を小チャンバー内で異なる種類の煙を用いて実施し、煙消去の運動速度をNanoActiveTM素材を用いて判定した。
【0036】
A.劇場煙
これらの実験は27x27x28インチの金属チャンバー内で実施した。規定濃度の劇場煙をチャンバー内に霧発生器を用いて導入した。次いでNanoActiveTM素材を80psiに加圧したキャニスターを用いてチャンバー内に搬送した。約30gの素材をキャニスター内に充填した。およそ5〜10gを搬送した。次いで時間経過に対する光の透過率を測定した。それから透過率の値をベースライン実験の透過率の値と比較した。
【0037】
NanoActiveTM素材は15%透過率(t*15率)により順序づけした。15%透過率を用いた理由はこれが視覚的に除去が起こる値だからである。t*15率は単に実験透過率が15%透過率に達するのに要する時間(t実験と称す)を煙自身のベースラインが15%に達するのに要する時間(tヘ゛ースラインと称す)で割ったものである。式は次の様になる。
【0038】
【数2】
【0039】
t*15率<1なら、煙の削減が生じていた。t*15率>1なら、不明瞭さが増大していた。t*15率=1なら、素材は煙に対し何の効力もなかった。t*15率の値が小さいほど、煙の削減に関してその素材がより効率的である。
【0040】
最初の一連のテストにおいては、劇場煙をコントロールとして用いNanoActiveTM素材に曝さない場合の煙の消失を評価した。これをNanoActiveTM素材を煙に曝した実験に対するベースラインとして用いた。
【0041】
第2の一連のテストにおいては、NanoActiveTM素材単独による不明瞭さの減少実績をテストしNanoActiveTM素材が持つ不明瞭さを測定した。このテストはNanoActiveTM素材の煙に対する相対的な不明瞭さに関する情報をもたらした。
【0042】
第3の一連のテストにおいては、煙(劇場の)およびNanoActiveTM素材の両方による不明瞭さの減少を試験しNanoActiveTM素材の暴露による煙消失の速度を判定した。実験対象による透過率増加の速度がベースラインコントロールより大きい場合には煙の削減があった。実験対象による透過率増加の速度がベースラインコントロールより小さい場合には煙の削減がなかった。図1に劇場煙およびNanoActiveTM TiO2-07を用いて実施した実験をまとめてある。図1に示す通り、実験対象(塗りつぶした菱形で表示)にはベースラインコントロール(中抜きの菱形で表示)に比べて顕著な透過率の増加があった。実際、実験でコントロールが6分かかって到達した透過率(%T=15)に実験対象の方は15秒で同じ値(同様に、%T=15)になった。したがって、NanoActiveTM TiO2-07は約5分45秒の不明瞭さ減少を有する。これは与えられた透過率値のベースライン(煙)の時間と実験の時間との差から計算される。
【0043】
NanoActiveTM TiO2-07について計算したt*15は0.04であった。劇場煙の削減を同様に調査したNanoActiveTM Al2O3 Plusは3.3のt*15となり、NanoActiveTM Al2O3 Plusは煙除去の助けというより不明瞭化剤として作用したことを示している。
【0044】
B.燃焼煙
これらの実験は27x28.5x27インチの金属チャンバー内で実施した。規定濃度の紙燃焼による燃焼煙をチャンバー内に誘導し1.9%までの落下で低下させ、次いで劇場煙の場合と同様に加圧したキャニスターを用いてNanoActiveTM素材をチャンバー内に投入した。およそ5から10gを搬送した。次いで時間経過と共に透過率値を測定し、それからベースライン実験の透過率値と比較した。15%透過率速度(t*15速度)に基づきNanoActiveTM素材の順位付けをした。結果を表3に示す。
【0045】
【表4】
「#」のマークはNanoActiveTM素材が燃焼煙と接触した際に温度上昇が生じたことを意味する。
燃焼煙を削減する最良の素材はNanoActiveTM TiO2-07および NanoActiveTM MgO Plusであった。NanoActiveTM TiO2-07は10分後に煙を削減した(図2)。NanoActiveTM Plus MgOはおよそ12分後に煙を削減した(図3)。
【0046】
調査した2種類のTiO2サンプルの内、一方が他方より良好に作用したことは、煙の削減が単なる化学的相互作用以上のものであることを暗示している。物理的な特性も同様に役割を果たしている可能性が極めて高い。素材の物理特性でその素材の煙削減能力に影響するものは素材の沈降速度および素材の投入方法である。
【0047】
C.ディーゼル霧
これらの実験は燃焼煙の実験と同様にして実施された。規定濃度の噴霧ディーゼル油を劇場と同様の流儀で霧状油発生機を用いて導入した。透過率が約2.1%になるまで霧をチャンバー内へ導入し、次いでNanoActiveTM素材を加圧キャニスターを用いてチャンバー内に投入した。それぞれの実験で搬送された量を表4に示すが、これは素材の形態のせいで変動している。
【0048】
【表5】
【0049】
ディーゼル霧煙を削減する最良の素材はNanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM MgO Plusであった。NanoActiveTM TiO2-07は1分間で煙を削減した(図4)。NanoActiveTM Plus MgOはおよそ9分後に煙を削減した(図5)。
今までの実験に基づくと、劇場煙、燃焼煙、およびディーゼル油霧に対して最良に作用した素材はNanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM Plus MgOであった。
上の実験はナノ粒子をチャンバー内に搬送するために加圧キャニスターを用いた一方で、流動層搬送システムを用いてナノ性粒子の凝集を壊しこれをチャンバー内に搬送することもできる。
【0050】
<実施例3>
本実施例では、寸法が0.61m x 0.61m x 1.22m(2 ft x 2 ft x 4 ft)のチャンバーを構築し選ばれた反応性ナノ粒子(「RNPs」)を試験するのに用いた。RNPおよび煙の粒径分布および質量濃度はカスケードインパクター(Thermo Electron社のモデルSE-298K)を用いて30から60秒間、2L/分の設計サンプリング流速で操作して測定した。サンプリングロスを最小にするため、インパクターはチャンバー内に設置した。このカスケードインパクターは粒子質量濃度を空気力学的直径で次の粒径範囲:<0.52、0.52から0.93、1.55から3.5、3.5から6.0、6.0から9.8、9.8から14.8、14.8から21.3、および>21.3μmで測定する。平均空気力学的幾何平均径(GMD)の範囲は4.2μm(NanoActiveTM MgOの場合)から18.1μm(NanoActiveTM TiO2の場合)であった。RNPsの初期粒度に比べて大きな空気力学的粒度はこれらのRNPsが凝集する傾向があることを示唆している。
【0051】
同じチャンバーを使用してグリコール煙を除去するためのRNPsおよび他の薬剤の有効性を評価した。チャンバーを通過する可視光の透過率をスペクトル感度が400から700nmである透過率計により測定した。概して、煙が充満したチャンバーを通しての不透明度はチャンバー内にRNPを分散した後に低下した。チャンバーを通過する光の透過率の改善または不透明度の低減をおこなう薬剤の有効性の尺度として、次のパラメータを検討した:
【0052】
【数3】
【0053】
低いt*90およびt*80の値(つまり、<<1.0)は有効な煙削減を示し、高い値(例えば、>1)は反対に、可視波長内で有効な不明瞭化を示す。表6に異なるRNPsおよび他の煙削減剤または煙削減方法に関するt*90およびt*80の計算値を要約している。NanoActiveTM TiO2(TiO2-07および-12共に)およびMgO Plusが概してチャンバーを通過する光の透過を改善する上で最も有効であった。試験したRNPsの中で、NanoActiveTM MgOおよびジェットミル処理したAl2O3 Plusが最も効果がなかった。実際には、これら両方のRNPsは不明瞭化剤として作用した。ジェットミル処理した粒子はNanoActiveTM素材をジェットミルに通して物理的に改質し均一な粒径分布を持つ非凝集状態を創り出した。評価した他の市販されている粉体(RNPsを除く)には表5に記載されているものが含まれる。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
先に述べた通り、RNPsはチャンバー内に分散した後に大きな空気力学的直径を持つ傾向があり、これらが凝集する傾向があることを示唆している。有効な煙削減剤となるためには次の条件を満たすことが前提とされた:(1)RNPsは煙の成分を吸着、吸収できるかまたはこれと化学的に反応できなくてはならない;(2)これらはかなりの量で存在しなくてはならず、その理由は分散されたRNPsおよび煙粒子の間の相互作用は衝突に大きく依存するからある;および(3)凝集物はそれが急速に沈降できる程に大きくなくてはならない・・小さすぎたり煙粒子と同じぐらいの大きさだと急速には沈降せず不明瞭化剤として作用してしまい、大きすぎると煙粒子と有効な衝突および交互作用を達成するためには多量のRNPsが必要となってしまう。
【0057】
図6および7はグリコール煙に相関する、それぞれt*90およびt*80の値とRNPsの空気力学的粒度を関連づけている。結果はより大きなRNP凝集物(すなわちNanoActiveTM TiO2 および MgO Plus)がより小さなRNP凝集物(すなわちNanoActiveTM MgO)に比べてより有効な煙削減剤である傾向があることを示唆している。RNPsの寸法分布は衝突および沈降の結果として時間と共に変化することは特筆すべきで、ここで用いる空気力学的寸法はチャンバー内にRNPを分散した後の最初の30から60秒の間の幾何平均直径である。
【0058】
<実施例4>
粒子寸法の影響はジェットミル処理および「正規」のRNPsを比べても見ることができる;これらの素材は粒度を除いて反応性という見地からは同一である。一般に、「正規」のRNPに比べて空気力学的および物理的に小さいジェットミル処理したRNPsは、対応する「正規」のRNPsより効力が少なかった(図8)。
【0059】
<実施例5>
この実施例においては、分散したRNP量の影響を判定した。煙の削減はRNPsと煙粒子の衝突を伴う。この様な衝突はRNPの(数)濃度または分散した量に影響される。3種類の異なる量のNanoActiveTM TiO2-07を煙で満ちたチャンバー内に分散し不透明度の削減をモニターした。異なる量の素材の分散は、キャニスター内に異なる量(すなわち、5.0、10.0、および15.0g)のTiO2-07を充填し、全内容物を80psiの圧力でチャンバー内に排出することで達成した。実際に分散した素材の量は測定の結果それぞれ2.9、7.4、および11.5gであった。チャンバーの外側に位置する37mmフィルターサンプラーを用いて測定した対応する質量濃度は、それぞれ2.2、2.5、および2.4g/m3であった。予期した通り、TiO2-07分散量を増加することで煙の削減がより速くなる結果となった(図9)。重炭酸ナトリウムを用いた比較データも示しているが分散量が増加しても有効性がほとんど変わらないことを例証している。
【0060】
<実施例6>
この実施例においては、グリコール煙の除去に当たって選定した素材の有効性について分散する粒子の量の影響を判定した。実験は小スケールのチャンバー(2 ft x 2 ft x 4 ft)で実施しグリコール煙を除去するために分散したNanoActiveTM TiO2-07およびNaHCO3-FEの量の影響を判定した。実験はグリコール/水の溶液を加熱しその蒸気をオリフィスを通じて供給する煙発生機を用いた煙の発生、加圧キャニスターを用いた粒子のチャンバー内への導入、および透過率計による光透過率のモニタリングを伴った。
【0061】
煙を除去する素材の有効性はt*10およびt*20値として表現した。これらの値は煙の自然除去に相関する光透過率がそれぞれ10%および20%に達した時間に対応する。より低いt*10およびt*20の値がよりよい煙除去を意味する。結果は分散する粒子の量を増加することが(NanoActiveTM TiO2-07およびNaHCO3-FEに関しては)グリコール煙の除去の有効性を高める傾向があることを示唆している。
【0062】
実験はまた本チャンバーを用いたグリコール煙除去においてNanoActiveTM TiO2-07およびNaHCO3-FEの有効性に対する送り込み圧力の影響を判定するためのものも実施した。粒子は40、60、または80psiまで加圧したキャニスターを用いてチャンバー内に分散した。分散量14から21gのNaHCO3-FEに関しては、搬送圧力(40から80psi)によるグリコール煙除去に対するその有効性への影響は限定されたものであった。一方分散量が14から21gのNanoActiveTM TiO2-07に関しては、搬送速度を40から80psiに上昇することでグリコール煙に対する除去の有効性を高める傾向があった(図10)。
【0063】
<実施例7>
本実施例においては、NanoActiveTM素材の煙除去の有効性に対する質量濃度の影響を加圧円筒搬送システムを用いて試験した。加圧円筒を用いたのは加圧キャニスターに伴う素材の払い出しに関するある問題のためである。表7に示す様に、加圧キャニスターに素材が10g装填されて素材が完全に排出されたならチャンバー内の予定濃度は32g/m3であった。表7に載せたすべての素材の払い出しデータを比較すると、NanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM MgO Plusは24〜26g/m3の範囲でNanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgOは8〜10g/m3の間で搬送されていた。それぞれの素材の払い出しに大きな不一致があるため、既知量の素材がチャンバー内に分散することができる様に加圧円筒を用いることに決めた。チャンバー内に搬送された4種類の異なる粒径範囲(250〜425μm、180〜250μm、150〜180μm、125〜150μm)の顆粒状NanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgOの質量濃度についても表7に示してある。結果は同じ素材の粉末状に比べてより多くの量の顆粒状素材がチャンバー内に搬送されたことが示している。
【0064】
【表8】
【0065】
燃焼煙の削減に関する濃度の影響を判定する実験をNanoActiveTM TiO2-07、NanoActiveTM MgO Plus、およびNanoActiveTM TiO2-12について質量1、5、10、および20グラムで繰り返し実施した。加圧円筒システムが既知の量の素材を小チャンバー(2.25ft x 2.25ft x 2.33ft、容積11.7ft3つまり0.32m3)に搬送するのを助ける。素材は加圧円筒を介してチャンバー内に、チューブを通して素材をチャンバー内に押し込む80psiの窒素ガスで搬送した。煙削減効力は次の式に基づき計算し、ここにt*が1より小さい場合には煙が削減したことを表す。
【0066】
【数4】
【0067】
図11では質量の作用として、燃焼煙の削減有効性はNanoActiveTM TiO2-07に関しては質量が増加するに連れて増加し、一方NanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgO Plusに関しては質量が増加すると削減効率は減少することが目立っている。NanoActiveTM TiO2-12は、t*15値に関しては1gの方が5gより良好な煙除去の有効性がある。NanoActiveTM TiO2-12(幾何平均粒径、GMD:8.1μm)の空気力学的直径の方がNanoActiveTM TiO2-07(GMD:18.1μm)より小さいという事実を踏まえると、このこともまた空気力学的粒径分布が煙を除去することにおいて重要な要因になり得ることを示している。この故に搬送方法、空気力学的直径およびチャンバー内に搬送される素材の量が煙削減に大きな影響がある。
【0068】
<実施例8>
本実施例においては煙除去に関する有効性について、小チャンバー内に搬送されているNanoActiveTM素材の空気力学的直径の影響を調べた。図12〜15に示す通り、NanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM MgO Plusは約3.5から15μmの範囲の大きめの粒径分布を持ち、NanoActiveTM TiO2-12は約0.9から3.5μmの範囲の小さめの粒径分布を持ち、NanoActiveTM MgOは小さいものは0.25μmから大きいものは21nmの範囲まで最も均一な粒径分布を持つ。NanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM TiO2-12の間の煙除去効率の相違は少なくとも部分的には粒径分布に大きな差があるためと理論づけられている。
【0069】
かくして、粒径分布が小さめの素材は遅めの沈降速度を持つことにより素材がより長い間分散し続け、粒径分布が大きめの素材は速めの沈降速度を持ちそして煙をより速やかに除去するのかも知れない。
【0070】
<実施例9>
この実施例においては、沈降速度および空気力学的直径の計算値の間の関連性を調べた。9種類のNanoActiveTM素材について粒径分布を粒径分析器(Scirocco 2000と連結したMastersizer 2000、両者ともMalvern Instruments社製)を用いて実験により入手した。全ての場合で乾燥粉末サンプルを空中に分散した。粒径分布は種々のNanoActiveTM素材の間で非常に異なった。
【0071】
粒径分布を使用してストークス領域内にある小粒子に有効な近似式を用いて空気力学的粒度分布を得た(C. D. CooperおよびF. C. Alley著、大気汚染規制−設計的アプローチ、第2版、イリノイ州プロスペクトハイツ:Waveland Press社、1994年)。
【0072】
【数5】
【0073】
ここにdAは空気力学的直径、dpは粒径、およびρpはg/cm3で表した粒子密度である。上の近似式において、粒子密度は容易に測定できる見掛け粉体密度に等しいと仮定した。図16に9種類のNanoActiveTM金属酸化物について空気力学的粒径分布計算値および沈降速度(上部水平軸)を示す。
【0074】
NanoActiveTM素材の沈降速度計算値は0.001〜0.01cm/秒(NanoActiveTM Al2O3)から10〜100cm/秒(NanoActiveTM CeO2の粒径分布の一部)まで幅広く変動した。種々の調合物の沈降速度および煙除去性能の間には関連がある様に思われる。小チャンバー内でおこなった実験は最良の煙除去能力を表したのがNanoActive TiO2-07で、次いでNanoActive MgO PlusおよびNanoActive TiO2-12であることを示した。NanoActiveTM MgOは効率よく煙を除去することが見いだされず、代わりに不明瞭さを作りだした。類似の傾向が沈降速度についても観察できた。最良の煙除去調合物、NanoActiveTM TiO2-07は1cm/秒に近い最も有望な沈降速度を持ち、これは試験したすべての酸化物中で最高値であった。中位の煙除去能力を持つ2種類の調合物、NanoActiveTM MgO PlusおよびNanoActive TiO2-12は0.07〜0.3cm/秒の範囲の有望な沈降速度であった。試験した中で最も効果の少ない煙除去素材、NanoActiveTM MgOは0.01cm/秒という最も小さな平均沈降速度であった。このデータは比較的狭い粒径分布で多分10〜30μmの粒径を持つ調合物が最良の煙除去能力を持ち得ることを示唆している。空気力学的直径および沈降速度は燃焼煙を除去するために素材にとって重要である。
【0075】
<実施例10>
本実施例においては、NanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgOの顆粒について燃焼煙の削減に対する有効性を試験した。4種類の異なる粒径の顆粒:250〜425μm、180〜250μm、150〜180μm、および125〜150μmについて試験した。表7に実験用チャンバー内に分散した異なる量のそれぞれ顆粒化したNanoActiveTM素材を粉体のNanoActiveTM素材と比較してg/m3で示した。計算は0.32m3であるチャンバーの容積を基準に実施した。すべての顆粒寸法について搬送された両方のNanoActiveTM素材の質量はかなり安定していた。
【0076】
燃焼煙が充満したチャンバー内にNanoActiveTM素材を搬送した後パーセント(%)透過率の変化を記録した。4種類の顆粒化NanoActiveTM TiO2-12の内、250>x>180μmの寸法の顆粒化NanoActiveTM TiO2-12のt*値が最も低かった。したがって、これが煙を削減するために最も効果的であった。さらに、顆粒寸法425>x>250および250>x>180μmのNanoActiveTM TiO2-12は実験の初期(t*10)に急激な煙削減を示す正規のNanoActiveTM TiO2-07と同じt*10〜t*15〜t*20パターンに沿っている。しかしながら、顆粒寸法180>x>150μmおよび150>x>125μmのNanoActiveTM TiO2-12は正規のNanoActiveTM TiO2-12と同じパターンに沿い始め、このことは実験の初期段階における不明瞭さおよび実験の後半における煙削減を示している。結果は寸法が425>x>250μmの顆粒化したNanoActiveTM TiO2-12は粉末NanoActiveTM TiO2-12よりも良好に機能したことを示している。
【0077】
<実施例11>
本実施例においてはより高い濃度の、250>x>180μmの範囲のNanoActiveTM TiO2-12顆粒による煙除去効率に対する影響を調べた。燃焼煙の削減のために小スケールのチャンバー内に分散したNanoActiveTM TiO2-12顆粒(粒径250>x>180μm)の濃度による影響は、異なる量(15、20、25、および30g)の素材をキャニスター内に入れて異なる分散量を達成して検討した。チャンバー内の最終粒子濃度は分散した素材の量をチャンバーの容積で割ることにより計算した。図17にt*10およびt*20を濃度の関数として表示している。
【0078】
異なる量のNanoActiveTM-G TiO2-12を用いて得たt*値は大部分で非常に近似していて、そのほとんどが0.8および1.00附近にあった。これに対する例外は低い濃度において見うけられた。低濃度は煙の削減を助長する傾向が見られ、一方で高濃度は不明瞭さを増加する傾向が見られた。データはまた低濃度のt*10はt*20より高く煙の削減が初期により急激に起こっていたことを意味する。したがって、低濃度は高濃度の粒子よりも煙の削減をより速く改善する可能性がある。
【0079】
<実施例12>
本実施例においては、チャンバー内の燃焼煙を除去するNanoActiveTM素材を搬送する圧力の影響を調べた。およそ10gの選定したNanoActiveTM素材を充填したキャニスターを加圧し、チャンバーに搬送された質量および煙削減効率をt*値を介して測定することにより3種類の圧力(40、80、120psi)を試験した。表8にそれぞれのNanoActiveTM素材のチャンバー内に分散した異なる量をg/m3で示しているが、計算は0.32m3であるチャンバーの容積に基づいた。それぞれのNanoActiveTM素材のチャンバー内搬送量のバラツキは主として素材により、そして程度は少ないが搬送圧力による。
【0080】
【表9】
【0081】
燃焼煙を充満したチャンバー内にNanoActiveTM素材を分散した後の、時間に対するパーセント透過率変化を記録した。NanoActiveTM TiO2-07、NanoActiveTM TiO2-12、およびNanoActiveTM MgO Plusに対する燃焼煙削減効率をt*(透過率10、15、20パーセントの)に換算して図18に表している。
40psiの搬送圧力においては検討した3種類すべての素材が燃焼煙を削減した。一方他の2種類の圧力(80および120psi)では、NanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgO Plusは煙を削減せずむしろ不明瞭さを創り出した。NanoActiveTM TiO2-07の煙削減能力はNanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgO Plus程には搬送圧力に影響されなかった。
【0082】
<実施例13>
本実施例においては、チャンバー内の燃焼煙を除去するためのNanoActiveTM素材搬送に加圧用ガスを用いる影響について調べた。およそ10gの選定したNanoActiveTM素材を充填したキャニスターに加圧し、チャンバーに搬送された質量および煙削減効率をt*.を介して測定することにより3種類のガス(N2、He、および Ar)について検討した。表9にチャンバー内に分散されたそれぞれのNanoActiveTM素材の異なる量をg/m3に換算して表示しているが、計算はチャンバーの容積、つまり0.32m3に基づいている。それぞれのNanoActiveTM素材のチャンバー内搬送量のバラツキは主として素材によるものであるが、程度は少ないが、搬送ガスにもよる。
【0083】
【表10】
【0084】
燃焼煙を充満したチャンバー内にNanoActiveTM素材を分散した後の時間に対するパーセント透過率の変化を記録した。NanoActiveTM TiO2-07、NanoActive.RTM. TiO2-12、およびNanoActiveTM MgO Plusに対する燃焼煙削減効率をt*(透過率10、15、および20パーセントの)に換算して図19に表している。
窒素ガスを用いた場合には検討した3種類すべての素材が燃焼煙を削減した。アルゴンを用いた場合にはNanoActiveTM TiO2-12は煙を削減せずむしろ不明瞭さを創り出した。全体として、NanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM MgO Plusの煙削減能力はNanoActiveTM TiO2-12程には搬送ガスにより影響されなかった。
【0085】
<実施例14>
本実施例においては、幾つかの素材の煙除去の有効性を部屋スケールのチャンバーを用いて試験した。寸法が8ftx 8ft x 12ftの部屋スケールのチャンバーを構築し種々の粒子測定器(すなわち、8段階カスケートインパクター、透過率計、光ファイバースペクトロメーター、テーパーエレメント振動微量天秤、光学式パーティクルカウンター、重量式フィルターサンプラー、および粒子析出板)を装備した。先ず実験の実施要項を明らかにし部屋スケールチャンバーの予備的検討を実施した。実験は次のステップを伴った:(a)グリコール/水の溶液および/またはディーゼル油を加熱しオリフィスを通して供給する煙発生機を用いてグリコールまたはディーゼル霧油の煙をチャンバー内に誘導し;(b)100%の不透明度または光透過率0%が達成され次第、粒子をチャンバー内に加圧キャニスターを用いて分散し;そして(c)光透過率および微粒子の質量濃度をモニターする。以下の計器を使用した:(a)部屋スケールチャンバー(経路長さ12ft)を通過する可視光の透過率を測定する透過率計、(b)空中浮遊微粒子の質量濃度を測定するフィルターサンプラー、および(c)リアルタイムで空中浮遊微粒子の質量濃度を測定するテーパーエレメント振動微量天秤(TEOM)。小スケールチャンバーによる検討と同様に、素材の煙除去有効性はt*10およびt*20に換算して表現した。
【0086】
実施要項の確立に続き、部屋スケールチャンバー内のグリコール煙の除去について種々の素材(すなわち、NanoActiveTM MgO plus、NA TiO2-07、NA TiO2-12、NA MgO、NaHCO3-FE、Ca(OH)2)の有効性を評価した。それぞれの素材はグリコール煙で満ちた部屋スケールチャンバー内に加圧キャニスターを80psiで用いて分散した。結果は煙が充満した部屋を通して視界を改善する速さという観点(低いt*10値で示されている)からNanoActiveTM MgO Plusが煙除去剤として最良であることを示唆した(図20および21)。例えば、およそ50gのNanoActiveTM MgO Plusをグリコール煙が満ちた8ftx8ft x 12ftの部屋に分散すると、10%光透過率を約2から4分で達成し、20%光透過率は約4から6分であった。対照的に、グリコール煙単独では10%光透過率を25分以上かかって達成した。他の粒子(すなわちCa(OH)2, NaHCO3-FE、およびNanoActiveTM MgO)も有効な煙除去剤であることが判明したが、NanoActiveTM MgO Plus程に有効ではなかった。
【0087】
<実施例15>
本実施例においては、除去する煙のタイプによる影響を調べた。グリコール煙と同様の実施要項にしたがい、部屋スケールチャンバー内のディーゼル霧を除去するためのNanoActiveTM MgO Plusの有効性を評価する実験を実施した。2種類の量のNanoActiveTM MgO Plus(すなわち、22.9gおよび48.0g)をディーゼル煙で満ちたチャンバー内に分散しチャンバーを通過する光透過率の変化を透過率計を用いてモニターした。NanoActiveTM MgO Plusはまたディーゼル/霧−油煙を除去する上でも有効であった(表10)。しかしながら、ディーゼル/霧−油煙ではグリコール煙に比べて同レベルの煙除去の有効性を達成するためにはより多くの量のNanoActiveTM MgO Plusを必要とすることを示唆している。これはディーゼル/霧−油煙の粒子がグリコール煙の粒子に比べて小さいためであるかも知れない。8段階カスケードインパクターによる煙粒子の粒径分布の測定ではディーゼル/霧−油煙の幾何平均径は1μm未満であったが一方グリコール煙はおよそ2.5μmであった。
【0088】
【表11】
【0089】
<実施例16>
本実施例においては、煙除去の有効性に対する粒径の影響を調べた。NanoActiveTM MgO PlusおよびNaHCO3-FEのバルクサンプルを篩い分けして、目開き25μmの篩を通過したもの(<25μm)、および53−μm篩を通過し25−μm篩で捉えられたもの(25〜53μm)との2つの寸法範囲に寸法分別した。それぞれの粒径範囲のサンプルを80psiまで加圧したキャニスターを用いて煙が充満したチャンバー内に分散し、対応する煙除去の有効性を透過率計を用いてモニターした。
【0090】
表11にt*10およびt*20値ならびに分散した量を纏めてある。結果はNanoActiveTM MgO plusの小さめのナノ凝集体(25μmを通過したもの)の方が大きめのナノ凝集体(25μmで捕捉されたもの)に比べてグリコール煙を除去するのにより効果的であることを示しているが、分散量は小さめの粒子の方が大きめの粒子より幾分多かった(8.2対7.1g)。さらに、小さめのナノ凝集物と篩い分けしていないサンプルの比較では小さめのナノ凝集物の方が篩い分けしていないサンプルよりも煙除去の有効性が幾分(顕著な差はないが)は良いことを示した。NaHCO3-FEの傾向は概してNanoActiveTM MgO Plusと類似し、25μmの篩を通過した粒子は25μmの篩で捕捉されたものに比べて煙除去の有効性がよかった。しかしながら、NanoActiveTM MgO Plusとは対照的に、NaHCO3-FEの篩い分けしていないサンプルの方が小さめの粒子よりも煙除去の有効性がよかった。
【0091】
【表12】
【0092】
<実施例17>
本実施例においては、グリコール煙の除去において選定した素材の有効性に対する搬送方法の影響を調べた。消火器装置(または加圧キャニスター)を別の瞬間散方法である加圧円筒と同じ80psiの圧力で比較した。図22に2つの分散方法をNanoActiveTM MgO plusについて除去の有効性(t*10)に基づいて比較している。NanoActiveTM MgO plusは加圧キャニスターの方で加圧円筒よりも良好に作動する傾向がある。
【0093】
追加的試験を加圧キャニスター(消化器装置)でおこない、グリコール煙除去に対するCa(OH)2, NaHCO3-FE、NanoActiveTM MgO Plus、および NA MgOの有効性についてノズルタイプによる影響を判定した。2つのタイプのノズルについて考慮した。ノズル1はくびれ部がありほとんどの煙削減実験で用いられ、一方ノズル2は全くくびれ部がない。すべての試験は部屋スケールチャンバー用の実施要項にしたがった。結果からグリコール煙を除去する上でノズルのタイプは素材の有効性に限定的な影響しか与えなかったことを示唆している。
【0094】
<実施例18>
本実施例においては、顆粒状NanoActiveTM-G TiO2-12(-60,+80メッシュ;250>x>180μm)およびNanoActiveTM TiO2-12粉体を用いて部屋スケールチャンバー内のグリコール煙除去に対する有効性を調べた。NanoActiveTM-G TiO2-12の顆粒(寸法180〜250マイクロメートル)について質量濃度を変えて3回繰り返して実施した。粉体は40gの量から始め2回繰り返して実施した。質量濃度は小スケールチャンバーでおこなったのと同じ様にして計算した。図23はt*10およびt*20を濃度の関数として示している。顆粒の方が概して粉体素材より良好な有効性を示している。
【0095】
<実施例19>
本実施例においては、部屋スケールチャンバーを用いて先に試験した素材の不明瞭さの程度を評価した。異なるNanoActiveTM素材(すなわち、MgO plus、MgO、TiO2-12、TiO2-07、MgO Plus顆粒)および他の素材(すなわち、NaHCO3-FE, Ca(OH)2)が提供する電磁スペクトルの可視領域範囲内の不明瞭さの程度を評価した。それぞれの素材を部屋スケールチャンバー内に加圧キャニスターを80psiで用いて分散した。チャンバー内の不明瞭さの程度は透過率計を用いてモニターした。空中浮遊微粒子質量濃度も重量測定フィルターサンプラーで測定した。結果は検討した量について、量および素材のタイプによってはNanoActiveTM粒子および他の素材も可視領域でいくらか不明瞭さをもたらすことを示した。しかしながら、検討した素材の何れもグリコール煙またはディーゼル霧ほど多くの不明瞭さはもたらさなかった(図24)。
【0096】
付加的な実験をおこない、何れかのNanoActiveTM素材でサーマルカメラを不明瞭にできるかどうかを判定した。これらの実験は部屋スケールチャンバーを用いて実施した。目的はNanoActiveTM素材を用いて高温体をサーマルイメージングカメラ(MID IR 2〜5.4μm)から不明瞭にすることであった。高温体(熱水が循環している箱)を環境室内に置きチャンバーの高温体と向かい側のプレキシガラスの壁に覗き孔を設けた。中距離用サーマルイメージングカメラを高温物体が見える様に覗き孔に据えた。加圧キャニスターからNanoActiveTM素材(NanoActiveTM MgO、NanoActiveTM Al2O3およびNanoActiveTM Al2O3 plus)をチャンバー内にスプレーした。素材がスプレーされると同時にカメラにより与えられる高温体の温度が約3〜10℃低下した。温度降下は30秒から3分という非常に短い時間しか持続せず、その後カメラにより与えられる温度は正常に戻った。
【0097】
<実施例20>
本実施例においては、NanoActiveTM TiO2 と NanoActiveTM MgOの混合物(NanoScale Materials社からFAST ACTTMとして入手可能)によるHFおよびHCN(火災により発生する2種類のよくある有害物質)の吸着に対する有効性を調べた。およそ50gのナノ結晶性物質をHCNに曝し、続いて分析してナノ結晶性物質によるHCNの吸着を示すHCNの分解物の存在の判定をおこなった。HCNに曝した後、ナノ結晶性物質を溶媒抽出およびGC-MS分析試験にかけた。このデータはナノ結晶性物質がHCNをOCN中間体に酸化しこれがさらに加水分解されて副産物になり室温でナノ結晶性物質により安定化されることを明らかにする。HCNに特有の特徴的な分解生成物はN,N−ビス−ヒドロキシメチルホルムアミド(メタノール抽出で目に見える)であった。
【0098】
同様の試験をHFを用いて実施した。しかしながら、溶媒抽出およびGC-MSでは特徴的な分解生成物を識別することはできなかった。このことはHFがナノ結晶性物質、とりわけMgOにより化学的に分解され非常に安定したイオン性化合物でどの様な溶媒にも簡単には抽出できないフッ化マグネシウムを形成したことを示す。この様に、結果はこれらナノ結晶性物質がHCNおよびHFを吸着するために非常に効果があることを示している。
【0099】
<実施例21>
本実施例においては、実施例20で用いたナノ結晶性混合物の有効性を無水アンモニア、塩素、酸化エチレン、塩化水素、二酸化窒素、および亜硫酸ガスの様な火災により形成し放出される蒸気災害の除去に対する有効性について試験した。ガスの吸着はFT-IR分光法および重量測定法により判定した。塩素は対称分子であるため、IR分光法を採用することはできなかった。したがって、吸着された塩素の量は塩素ガスに曝したナノ結晶性物質の重量増加に基づいて計算した。
2分および10分で除去された危険物質のパーセントを表12に示す。
【0100】
【表13】
【0101】
これらのガスは非常に速やかに吸着され、10分のデータに示されているとおり、粉体から脱ガスしそうにはない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】NA TiO2-07を用いた劇場煙の消失速度のグラフである。
【図2】NA TiO2-07を用いた紙燃焼による燃焼煙の消失速度を示すグラフである。
【図3】NA MgO Plusを用いた紙燃焼による燃焼煙の消失速度を示すグラフである。
【図4】NA TiO2-07を用いたディーゼル霧煙の削減を示すグラフである。
【図5】NA MgO Plusを用いたディーゼル霧煙の削減を示すグラフである。
【図6】相対的な空気力学的粒度に対する幾つかのRNPsの煙除去の有効性(90%不倒明度に至る時間)を示すグラフである。
【図7】相対的な空気力学的粒度に対する幾つかのRNPsの煙除去の有効性(80%不倒明度に至る時間)を示すグラフである。
【図8】ジェットミル処理したものと「正規の」RNPsの煙除去の有効性を比較したグラフである。
【図9】分散した素材の量に影響される煙除去の有効性を示したグラフである。
【図10】グリコール煙を除去する上でNA TiO2-07およびNaHCO3-FEの有効性に対する搬送圧力の影響のグラフである。
【図11】幾つかの質量濃度において種々のナノ物質の煙除去効果を比較したチャートである。
【図12】NA TiO2-07の空気力学的直径の相対分布を描いたチャートである。
【図13】NA MgO Plusの空気力学的直径の相対分布を描いたチャートである。
【図14】NA TiO2-12の空気力学的直径の相対分布を描いたチャートである。
【図15】NA MgOの空気力学的直径の相対分布を描いたチャートである。
【図16】種々のナノ物質の計算による空気力学的粒径および沈降速度を比較したグラフである。
【図17】NA TiO2-12の煙削減に対する濃度の影響を比較したグラフである。
【図18】異なる圧力で搬送された種々のナノ物質の煙削減効率を比較したチャートである。
【図19】異なる搬送ガスで搬送された種々のナノ物質の煙削減効率を比較したチャートである。
【図20】分散した量により影響された異なるナノ物質に対するグリコール煙除去の有効性のプロットである。
【図21】空中浮遊微粒子の質量濃度により影響された異なるナノ物質に対するグリコール煙除去の有効性のプロットである。
【図22】加圧キャニスターおよび加圧円筒で搬送されたNA MgO Plusに対するグリコール煙除去の有効性を比較したプロットである。
【図23】煙除去の有効性に対するNA TiO2-12粉末および顆粒の濃度の影響を比較したプロットである。
【図24】加圧キャニスターを80psiで用いて部屋スケールチャンバー内に選択された素材を分散した場合の不明瞭さの程度(%不透明度で表示)を比較したプロットである。
【技術分野】
【0001】
本明細書は2004年10月18日出願の米国仮出願明細書第60/619830号および2004年10月20日出願の米国仮出願明細書第60/620517号による利益を主張すると共に、両者を本願に引用して本明細書とする。
【0002】
本発明は、火災により生じた煙および有害化合物の除去、一般の火災鎮火、および難燃性の方法に広く関連する。より具体的には、本発明による方法はこれらの目的を達成するために、ナノ結晶性物質を単独または他の適当な物質と共に使用することを伴う。
【背景技術】
【0003】
火災により生ずる火、煙、および有害物質に関連する人間および動物の生命および健康に対する危険はよく知られている。ほとんどの火災において、煙に含まれる有害ガスを吸入することが第1の死亡原因である。火災は複合的、動的、物理化学的な現象でこれは激しい化学反応の結果で煙、熱、炎および光を発生する。それぞれの火災は燃焼物質および環境条件による個別の特性を示す。煙は特定の物質の複合体であると同時に、火災大気中に分散した種々の目に見えない燃焼ガスおよび蒸気である。相互に連携した火、煙、および有害化合物はまた乏しい視界を作りだしこのことにより軍や民間の地上作戦の行為を妨げる(すなわち、戦場作戦、捜索および救出作戦、航空機作戦、他)。
【0004】
消防界の内部においては火災の煙による健康被害は主にそのCO含有量に因るものと長い間受け入れられてきた。最近では、このシナリオにシアン化水素(HCN)も含む様になってきている。イソシアネート類もポリウレタン類の製造に用いられ、しばしば接着剤やラッカーを製造するのに用いられることからまた注目の的になっている。イソシアネート類は比較的少量でも曝された人々にぜんそくを引き起こすことが知られている。NIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)はIDLH(濃度限界値)として2,4−ジイソシアネートは2.5ppm、メチルイソシアネートは3.0ppmと規定しているが、因みにHCNは50ppm、COは1200ppmのIDLH規定である。ガラスウール断熱材、無機ウール断熱材、ならびに窒素含有(尿素ベース)バインダー類および木繊維類を使用した製品は燃焼した際に相当量のイソシアネート類(イソシアン酸およびメチルイソシアネート)を放出することが見いだされている。
【0005】
さらに、煙および有害な化学物質はかなりの工業工程でも作り出される。より新しい環境基準では工業燃焼排気ガスからこれらの物質を大気中に放出する前に削減することを求めている。
【0006】
従来からある火災鎮静用のドライケミカル方式は加圧容器の使用を伴ない、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、モノリン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、および白雲母の様な種々の粉末化合物を内蔵している。しかしながら、これらの方式はせいぜい煙の除去にわずかに効果があるだけで火災により生じる有害化合物の危険は処理しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって技術的に、煙除去、火災鎮静、難燃性ならびに火災および工業工程によって生じる有害化学物質の吸着に対する本当の、かつ満たされていない、必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上の諸問題を解決するために火災鎮静、煙除去、難燃性および火災により生じた有害物質の除去の方法を提供する。一つの態様において本発明は、煙被害領域の視界を高める方法を提供し、これは煙被害領域に少なくとも煙の一部を吸着するためのある量のナノ結晶性粒子を分散する工程から成る、または本質的(実質的)にこの工程から成ることで構成される。
【0009】
別の態様において本発明は、火災により生じた有害物質を領域から除去する方法を提供し、これは火災により生じた少なくとも1種類の有害物質を吸着するためにある量のナノ結晶性粒子をその領域に分散することから成る、または本質的にこのことから成ることで構成される。
【0010】
さらに別の態様において本発明は、火災鎮静の方法を提供し、これは火災に向けてある量のナノ結晶性粒子を使用する工程から成る、または本質的にこの工程から成ることで構成される。
さらにまた別の態様において本発明は、物品の難燃性を改善する方法を提供し、これは物品にある量の難燃性ナノ結晶性粒子を塗布および/または組み込む工程から成る、または本質的にこの工程から成ることで構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は火災により生じた種々の化合物および物質のレベルを下げることおよび火災そのものを鎮静化するために比較的表面積の大きなナノ結晶性粒子を用いる。火災により生じる煙は炭素質煙粒子に加え、アクロレイン、トルエンジイソシアネート、ホルムアルデヒド、イソシアネート類、HCN、CO、NO、HF、およびHClの様な種々の有害な化合物を含む可能性がある。本発明は領域の視界を改善するための、および領域に存在する有害物質のレベルも下げるための煙除去方法に関係する。本発明による方法はまた火災を鎮静するためにも有効で、これには煙および有害化合物をつくり出しているすべてのくすぶっている燃えさしまたは物質も含まれる。これらの方法は閉鎖環境(例えば、閉じた部屋、チャンバー、航空機の客室、など)は元より、戸外環境にも適用できる。
【0012】
さて本発明による第1の実施態様に転じると、煙被害領域から煙を除去する方法は一般にある量のナノ結晶性粒子を煙被害領域に分散する工程から構成され、これにより少なくとも煙の一部、とりわけ視界を不明瞭にする炭素質の煙微粒子を吸着させる。本発明において(すべての局面で)使用する好ましいナノ結晶性粒子は、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択される。Mg、Sr、Ba、Ca、Ti、Zr、Fe、V、Mn、Ni、Cu、Al、Si、Zn、Ag、Mo、Sb、およびこれらの混合物の金属酸化物および金属水酸化物は最も好ましいナノ結晶性物質である。ナトリウム、アルミニウム、マグネシウムおよびカルシウムの水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩もまたとりわけ好ましい。ナノ結晶性粒子は微結晶寸法が約25nm未満の粒子であることが好ましく、約1〜20nmの間がより好ましく、約2〜10nmの間が最も好ましい。ナノ結晶性粒子の好ましいBrunauer-Emmett-Teller(BET)の多点表面積は少なくとも約15m2/g、より好ましくは少なくとも約70m2/g、最も好ましくは約200〜850m2/gを示す。
【0013】
本発明による方法は煙被害領域の視界を改善する上で、例え当該領域内にナノ結晶性粒子を分散する前の不透明度が少なくとも約95%を示していても非常に効果的である。好ましくは、ここに記載した方法により領域の不透明度を15%低減するのに、この独創的な煙除去活動が行われなかった場合の約80%未満の時間で同等の低減を達成する結果となる。例えば、不透明度が100%の領域が放置され、10分間で不透明度が85%まで改善されたとすると、本発明による方法で好ましくは同一領域の85%不透明度を8分以下で達成できるということである。より好ましくは、15%の不透明度低減が他方で自然にそうなるであろう時間の約70%未満で起こり、さらにより好ましくは不透明度の低減がこの時間の約50%未満で起こり、最も好ましくは不透明度の低減がこの時間の約40%未満で起こる。
【0014】
本発明によるとりわけ好ましい実施態様において、不透明度が約95〜100%の間の領域は、領域内にナノ結晶性粒子を分散して約5分以内で不透明度が85%未満に、より好ましくは約3分以内で、そして最も好ましくは約2分以内で低減できる。以下の実施例で説明するとおり、煙除去速度を決定する因子は関係する煙の種類および用いるナノ結晶性粒子の種類である。
【0015】
煙除去の有効性は領域内に投入したナノ結晶性粒子の量(すなわち、ナノ粒子の質量濃度)、粒子の空気力学的幾何平均径(GMD)、および粒子の沈降速度にも影響される。十分な量のナノ結晶性粒子を領域内に投入すべきで、粒子を少なくとも約0.1g/m3の質量濃度で供給することが好ましく、約0.5〜10g/m3の間がより好ましく、約1〜5g/m3の間が最も好ましい。
【0016】
空気力学的幾何平均径は、粒子の重量を基準としてエアロゾル(エーロゾル)の粒子が半分に分けられる空気力学的直径を指す。重量で50パーセントの粒子がメディアン径より大きく、50パーセントの粒子がメディアン径より小さい。メディアン径およびその幾何標準偏差は粒子の重量および径に基づくエアロゾルの粒径分布を統計的に表現するのに用いられる。幾つかの好ましいナノ結晶性粒子に関しては、空気力学的幾何平均径はその本来の径よりかなり大きい。このことはナノ結晶性粒子が分散後に凝集する傾向があることを示唆する。ナノ結晶性粒子は約1〜30μmの間の空気力学的幾何平均径を示すことが好ましく、約2〜25μmの間がより好ましく、約4〜20μmの間が最も好ましい。ナノ結晶性粒子の粒度分布は衝突および沈降の結果として時間と共に変化することがある。したがって、粒子の空気力学的幾何平均径は分散後最初の30〜60秒以内に算定することが好ましい。
【0017】
特定のナノ結晶性粒子の沈降速度は少なくとも部分的にはその空気力学的幾何平均径の値に関係する。一般に粒子が大きいほど粒子の沈降速度は高い。本発明にしたがって用いられるナノ結晶性粒子の沈降速度は好ましくは約0.001〜5cm/秒の間、より好ましくは約0.1〜4.5cm/秒の間、そして最も好ましくは約0.5〜3cm/秒の間である。もしも粒子の沈降速度が低すぎると粒子が空中に分散し続けがちとなり実際にそれが分散された領域の不明瞭さに寄与するかまたは高めてしまう。もしも粒子の沈降速度が高すぎると煙微粒子と効果的に接触し吸着するだけ粒子が空中に長く分散し続けない。したがって、上記の範囲の沈降速度の粒子を選択することが煙除去作業の有効性を高めることになる。
【0018】
煙被害領域内にナノ結晶性粒子を搬送することは同業者が周知している数ある分散手段のどれによってでも達成することが可能である。しかしながら、粒子を分散するとりわけ好ましい1つの手段は加圧容器からの分散である。好ましくは、ナノ結晶性粒子は加圧容器から約20〜3000psiの間、より好ましくは約50〜500psiの間、そして最も好ましくは約100〜300psiの間の圧力で投入される。容器は高圧ガスまたは搬送ガスで加圧してもよい。好ましい搬送ガスには窒素、アルゴン、空気、二酸化炭素、およびヘリウムが含まれ、なかでも窒素がとりわけ好まれる。圧力容器は粒子を分散する間の目詰まりに対抗できる適切なノズルを含まねばならない。好ましい搬送システムとして、カンザス州マンハッタンのNanoScale Materials社からFAST ACTTMの名称で流通している製品を例示することができる。ナノ結晶性粒子はまた顆粒状に形成して適宜投入することもできる。これら顆粒の大きさは約125〜500μmの間を示すことが好ましく、より好ましくは約140〜400μmの間、そして最も好ましくは約180〜250μmの間である。
【0019】
ナノ結晶性粒子はまた被害領域に手動分散により非加圧容器から搬送することもできる。例えば、ナノ結晶性粒子を煙被害領域内に振りかけまたは散布により分散することもできる。
【0020】
本発明による別の実施態様において前述のナノ結晶性粒子は、火災により生じた少なくとも1種類の有害物質を吸着するために使用することができる。この様な有害物質はアクロレイン、トルエンジイソシアネート、ホルムアルデヒド、イソシアネート類、HCN、CO、NO、HF、HCl、無水アンモニア、塩素、アルコキシド類(例えば酸化エチレン)、二酸化窒素、二酸化硫黄、メルカプタン類(例えばメチルメルカプタン)、およびこれらの混合物を含む。多くの場合、有害化合物はこれも火災により生じた煙と混ざっている場合がある。ナノ結晶性粒子は先に記載したどの様なナノ結晶性粒子の形状でもよく、かつ前述のどの様な散布または使用手段で分散されてもよい。
【0021】
本発明によるさらにまた別の実施態様において先に述べたナノ結晶性粒子は、火災鎮静に用いることもできる。ここに用いた様に、「火災鎮静」という用語は裸火および/または実際の炎を出していてもいなくとも燻っている物質を鎮静および/または消火することを含む。ナノ結晶性粒子は先に記載した上記の何れのナノ結晶性粒子の形状でもよく、かつ前述のどの様な散布または使用手段で分散されてもよい。さらに、本ナノ粒子はリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、および第1リン酸アンモンの様な無機化学薬品を含む在来のドライケミカル消火システムと組み合わせることもできる。当該ナノ結晶性粒子はこれら在来の乾式火災鎮静成分と重量で約1〜90%の量、より好ましくは重量で約10〜80%、そして最も好ましくは重量で約30〜70%の間で組み合わせることができる。
【0022】
本発明によるさらにまた別の実施態様によると、先に述べたナノ結晶性粒子を物品の難燃性を向上させるのに用いることもできる。物品は天然物(すなわち、原材料または比較的未処理材料)、製造物品(例えば繊維類(衣類、家具地)、プラスチック、断熱材、塗料、紙、ゴム)、またはこれらのあらゆる組合せであってもよい。ナノ結晶性粒子は当該物品の外表面に塗布したり、製造中に製品内に組み込んだり、そうでなければ粒子が物品の外表面を貫通しこれと密接に結合する様に用いられる。
【0023】
上に述べたナノ結晶性粒子の他に、難燃性を向上させるために用いる他の好ましいナノ結晶性粒子は金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの化合物がある。とりわけ好ましい物質には水酸化アルミニウム(アルミナ三水和物)、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、オキシ塩化アンチモン、三塩化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スルファミン酸アンモニウム(NH4SONH2)、臭化アンモニウム、ボリ臭素化ジフェニルエーテル、メラミン(およびその塩類)、メラミンシアヌレート、およびグアニジンが含まれる。
【0024】
当該ナノ結晶性粒子は先にここで記載したものと同じ範囲の物理的特性を示し、とりわけ微結晶寸法および表面積においてそうである。物品に組み込んだり表面に塗布する場合、ナノ結晶性粒子は物品全体の重量の約0.01〜25%を構成することが好ましく、重量で約0.05〜10%がより好ましく、そして重量で約0.1〜5%が最も好ましい。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は本発明による好ましい方法について述べる。しかし当然ながら、これらの実施例は実例を示すためのものであり、その内容のいかなるものも発明全体の適用範囲を制約するものではない。
【0026】
<実施例1>
本実施例においては、紫外−可視分光法実験を実施し燃焼煙の吸着運動速度の測定および異なるナノ粒子金属酸化物粉の吸着選択性の調査をおこなった。これらの定性的な調査実験は円柱フラスコ付のアスピレータを用いて実施した。
【0027】
紫外−可視分光法実験:この研究は紫外−可視分光法の技法を用いて実施した。カンザス州マンハッタンのNanoScale Materials社から入手できる10種類のNanoActiveTM素材について試験した。これらの素材は本質的にナノ結晶で比較的高い表面積を示す。これらの材料の基本的特性評価を表1に与えてあるが、NanoScale Materials社から入手したそれぞれの素材の完全な特性評価付の製品情報シートを本明細書に引用して包含する。「NanoActiveTM」素材は便宜上ここでは「NA」の名称でも言及する。
【0028】
【表1】
【0029】
紙を燃やして作った煙の成分をヘキサンに溶解し幾つかの成分は222および274nmで紫外−可視分光帯域を示した。相対反応性は接触時間0から15分の吸光度の変化から測定した。これはΔA0-15で表現される。吸光度の変化は時間ゼロの吸光度と15分の吸光度との差であり、または簡単に:
【0030】
【数1】
【0031】
吸光度の差が大きいほど素材の反応性が高い。表1に示す通り、両帯域で最も顕著な差がある素材はNanoActiveTM Al2O3 Plus、NanoActiveTM MgO、NanoActiveTM TiO2、およびNanoActiveTM Plus MgOであった。
【0032】
【表2】
【0033】
煙削減視認実験は円筒状フラスコ内で実施した。紙燃焼による燃焼煙をアスピレータで引き入れ煙の削減をNanoActiveTM素材を用いて実行した。それぞれの試みで用いた量は0.60gでこれをフラスコの壁に塗布した。アスピレータを用いて燃焼煙を実験フラスコ(NanoActiveTM素材が入ったフラスコ)およびコントロールフラスコ(NanoActiveTM素材なし)に同時に導入した。それぞれのフラスコで10分間煙の消失を観察した。全体として、最初の4分間の間は実験フラスコ中の煙の消失はコントロールのそれに比べ約2分先行していると判定された。表2に燃焼煙を除去する素材の序列を示しているがNanoActiveTM TiO2-07、NanoActiveTM MgO、およびNanoActiveTM Al2O3 Plusが最高の結果を達成している。
【0034】
【表3】
【0035】
<実施例2>
本実施例においては、煙除去実験を小チャンバー内で異なる種類の煙を用いて実施し、煙消去の運動速度をNanoActiveTM素材を用いて判定した。
【0036】
A.劇場煙
これらの実験は27x27x28インチの金属チャンバー内で実施した。規定濃度の劇場煙をチャンバー内に霧発生器を用いて導入した。次いでNanoActiveTM素材を80psiに加圧したキャニスターを用いてチャンバー内に搬送した。約30gの素材をキャニスター内に充填した。およそ5〜10gを搬送した。次いで時間経過に対する光の透過率を測定した。それから透過率の値をベースライン実験の透過率の値と比較した。
【0037】
NanoActiveTM素材は15%透過率(t*15率)により順序づけした。15%透過率を用いた理由はこれが視覚的に除去が起こる値だからである。t*15率は単に実験透過率が15%透過率に達するのに要する時間(t実験と称す)を煙自身のベースラインが15%に達するのに要する時間(tヘ゛ースラインと称す)で割ったものである。式は次の様になる。
【0038】
【数2】
【0039】
t*15率<1なら、煙の削減が生じていた。t*15率>1なら、不明瞭さが増大していた。t*15率=1なら、素材は煙に対し何の効力もなかった。t*15率の値が小さいほど、煙の削減に関してその素材がより効率的である。
【0040】
最初の一連のテストにおいては、劇場煙をコントロールとして用いNanoActiveTM素材に曝さない場合の煙の消失を評価した。これをNanoActiveTM素材を煙に曝した実験に対するベースラインとして用いた。
【0041】
第2の一連のテストにおいては、NanoActiveTM素材単独による不明瞭さの減少実績をテストしNanoActiveTM素材が持つ不明瞭さを測定した。このテストはNanoActiveTM素材の煙に対する相対的な不明瞭さに関する情報をもたらした。
【0042】
第3の一連のテストにおいては、煙(劇場の)およびNanoActiveTM素材の両方による不明瞭さの減少を試験しNanoActiveTM素材の暴露による煙消失の速度を判定した。実験対象による透過率増加の速度がベースラインコントロールより大きい場合には煙の削減があった。実験対象による透過率増加の速度がベースラインコントロールより小さい場合には煙の削減がなかった。図1に劇場煙およびNanoActiveTM TiO2-07を用いて実施した実験をまとめてある。図1に示す通り、実験対象(塗りつぶした菱形で表示)にはベースラインコントロール(中抜きの菱形で表示)に比べて顕著な透過率の増加があった。実際、実験でコントロールが6分かかって到達した透過率(%T=15)に実験対象の方は15秒で同じ値(同様に、%T=15)になった。したがって、NanoActiveTM TiO2-07は約5分45秒の不明瞭さ減少を有する。これは与えられた透過率値のベースライン(煙)の時間と実験の時間との差から計算される。
【0043】
NanoActiveTM TiO2-07について計算したt*15は0.04であった。劇場煙の削減を同様に調査したNanoActiveTM Al2O3 Plusは3.3のt*15となり、NanoActiveTM Al2O3 Plusは煙除去の助けというより不明瞭化剤として作用したことを示している。
【0044】
B.燃焼煙
これらの実験は27x28.5x27インチの金属チャンバー内で実施した。規定濃度の紙燃焼による燃焼煙をチャンバー内に誘導し1.9%までの落下で低下させ、次いで劇場煙の場合と同様に加圧したキャニスターを用いてNanoActiveTM素材をチャンバー内に投入した。およそ5から10gを搬送した。次いで時間経過と共に透過率値を測定し、それからベースライン実験の透過率値と比較した。15%透過率速度(t*15速度)に基づきNanoActiveTM素材の順位付けをした。結果を表3に示す。
【0045】
【表4】
「#」のマークはNanoActiveTM素材が燃焼煙と接触した際に温度上昇が生じたことを意味する。
燃焼煙を削減する最良の素材はNanoActiveTM TiO2-07および NanoActiveTM MgO Plusであった。NanoActiveTM TiO2-07は10分後に煙を削減した(図2)。NanoActiveTM Plus MgOはおよそ12分後に煙を削減した(図3)。
【0046】
調査した2種類のTiO2サンプルの内、一方が他方より良好に作用したことは、煙の削減が単なる化学的相互作用以上のものであることを暗示している。物理的な特性も同様に役割を果たしている可能性が極めて高い。素材の物理特性でその素材の煙削減能力に影響するものは素材の沈降速度および素材の投入方法である。
【0047】
C.ディーゼル霧
これらの実験は燃焼煙の実験と同様にして実施された。規定濃度の噴霧ディーゼル油を劇場と同様の流儀で霧状油発生機を用いて導入した。透過率が約2.1%になるまで霧をチャンバー内へ導入し、次いでNanoActiveTM素材を加圧キャニスターを用いてチャンバー内に投入した。それぞれの実験で搬送された量を表4に示すが、これは素材の形態のせいで変動している。
【0048】
【表5】
【0049】
ディーゼル霧煙を削減する最良の素材はNanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM MgO Plusであった。NanoActiveTM TiO2-07は1分間で煙を削減した(図4)。NanoActiveTM Plus MgOはおよそ9分後に煙を削減した(図5)。
今までの実験に基づくと、劇場煙、燃焼煙、およびディーゼル油霧に対して最良に作用した素材はNanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM Plus MgOであった。
上の実験はナノ粒子をチャンバー内に搬送するために加圧キャニスターを用いた一方で、流動層搬送システムを用いてナノ性粒子の凝集を壊しこれをチャンバー内に搬送することもできる。
【0050】
<実施例3>
本実施例では、寸法が0.61m x 0.61m x 1.22m(2 ft x 2 ft x 4 ft)のチャンバーを構築し選ばれた反応性ナノ粒子(「RNPs」)を試験するのに用いた。RNPおよび煙の粒径分布および質量濃度はカスケードインパクター(Thermo Electron社のモデルSE-298K)を用いて30から60秒間、2L/分の設計サンプリング流速で操作して測定した。サンプリングロスを最小にするため、インパクターはチャンバー内に設置した。このカスケードインパクターは粒子質量濃度を空気力学的直径で次の粒径範囲:<0.52、0.52から0.93、1.55から3.5、3.5から6.0、6.0から9.8、9.8から14.8、14.8から21.3、および>21.3μmで測定する。平均空気力学的幾何平均径(GMD)の範囲は4.2μm(NanoActiveTM MgOの場合)から18.1μm(NanoActiveTM TiO2の場合)であった。RNPsの初期粒度に比べて大きな空気力学的粒度はこれらのRNPsが凝集する傾向があることを示唆している。
【0051】
同じチャンバーを使用してグリコール煙を除去するためのRNPsおよび他の薬剤の有効性を評価した。チャンバーを通過する可視光の透過率をスペクトル感度が400から700nmである透過率計により測定した。概して、煙が充満したチャンバーを通しての不透明度はチャンバー内にRNPを分散した後に低下した。チャンバーを通過する光の透過率の改善または不透明度の低減をおこなう薬剤の有効性の尺度として、次のパラメータを検討した:
【0052】
【数3】
【0053】
低いt*90およびt*80の値(つまり、<<1.0)は有効な煙削減を示し、高い値(例えば、>1)は反対に、可視波長内で有効な不明瞭化を示す。表6に異なるRNPsおよび他の煙削減剤または煙削減方法に関するt*90およびt*80の計算値を要約している。NanoActiveTM TiO2(TiO2-07および-12共に)およびMgO Plusが概してチャンバーを通過する光の透過を改善する上で最も有効であった。試験したRNPsの中で、NanoActiveTM MgOおよびジェットミル処理したAl2O3 Plusが最も効果がなかった。実際には、これら両方のRNPsは不明瞭化剤として作用した。ジェットミル処理した粒子はNanoActiveTM素材をジェットミルに通して物理的に改質し均一な粒径分布を持つ非凝集状態を創り出した。評価した他の市販されている粉体(RNPsを除く)には表5に記載されているものが含まれる。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
先に述べた通り、RNPsはチャンバー内に分散した後に大きな空気力学的直径を持つ傾向があり、これらが凝集する傾向があることを示唆している。有効な煙削減剤となるためには次の条件を満たすことが前提とされた:(1)RNPsは煙の成分を吸着、吸収できるかまたはこれと化学的に反応できなくてはならない;(2)これらはかなりの量で存在しなくてはならず、その理由は分散されたRNPsおよび煙粒子の間の相互作用は衝突に大きく依存するからある;および(3)凝集物はそれが急速に沈降できる程に大きくなくてはならない・・小さすぎたり煙粒子と同じぐらいの大きさだと急速には沈降せず不明瞭化剤として作用してしまい、大きすぎると煙粒子と有効な衝突および交互作用を達成するためには多量のRNPsが必要となってしまう。
【0057】
図6および7はグリコール煙に相関する、それぞれt*90およびt*80の値とRNPsの空気力学的粒度を関連づけている。結果はより大きなRNP凝集物(すなわちNanoActiveTM TiO2 および MgO Plus)がより小さなRNP凝集物(すなわちNanoActiveTM MgO)に比べてより有効な煙削減剤である傾向があることを示唆している。RNPsの寸法分布は衝突および沈降の結果として時間と共に変化することは特筆すべきで、ここで用いる空気力学的寸法はチャンバー内にRNPを分散した後の最初の30から60秒の間の幾何平均直径である。
【0058】
<実施例4>
粒子寸法の影響はジェットミル処理および「正規」のRNPsを比べても見ることができる;これらの素材は粒度を除いて反応性という見地からは同一である。一般に、「正規」のRNPに比べて空気力学的および物理的に小さいジェットミル処理したRNPsは、対応する「正規」のRNPsより効力が少なかった(図8)。
【0059】
<実施例5>
この実施例においては、分散したRNP量の影響を判定した。煙の削減はRNPsと煙粒子の衝突を伴う。この様な衝突はRNPの(数)濃度または分散した量に影響される。3種類の異なる量のNanoActiveTM TiO2-07を煙で満ちたチャンバー内に分散し不透明度の削減をモニターした。異なる量の素材の分散は、キャニスター内に異なる量(すなわち、5.0、10.0、および15.0g)のTiO2-07を充填し、全内容物を80psiの圧力でチャンバー内に排出することで達成した。実際に分散した素材の量は測定の結果それぞれ2.9、7.4、および11.5gであった。チャンバーの外側に位置する37mmフィルターサンプラーを用いて測定した対応する質量濃度は、それぞれ2.2、2.5、および2.4g/m3であった。予期した通り、TiO2-07分散量を増加することで煙の削減がより速くなる結果となった(図9)。重炭酸ナトリウムを用いた比較データも示しているが分散量が増加しても有効性がほとんど変わらないことを例証している。
【0060】
<実施例6>
この実施例においては、グリコール煙の除去に当たって選定した素材の有効性について分散する粒子の量の影響を判定した。実験は小スケールのチャンバー(2 ft x 2 ft x 4 ft)で実施しグリコール煙を除去するために分散したNanoActiveTM TiO2-07およびNaHCO3-FEの量の影響を判定した。実験はグリコール/水の溶液を加熱しその蒸気をオリフィスを通じて供給する煙発生機を用いた煙の発生、加圧キャニスターを用いた粒子のチャンバー内への導入、および透過率計による光透過率のモニタリングを伴った。
【0061】
煙を除去する素材の有効性はt*10およびt*20値として表現した。これらの値は煙の自然除去に相関する光透過率がそれぞれ10%および20%に達した時間に対応する。より低いt*10およびt*20の値がよりよい煙除去を意味する。結果は分散する粒子の量を増加することが(NanoActiveTM TiO2-07およびNaHCO3-FEに関しては)グリコール煙の除去の有効性を高める傾向があることを示唆している。
【0062】
実験はまた本チャンバーを用いたグリコール煙除去においてNanoActiveTM TiO2-07およびNaHCO3-FEの有効性に対する送り込み圧力の影響を判定するためのものも実施した。粒子は40、60、または80psiまで加圧したキャニスターを用いてチャンバー内に分散した。分散量14から21gのNaHCO3-FEに関しては、搬送圧力(40から80psi)によるグリコール煙除去に対するその有効性への影響は限定されたものであった。一方分散量が14から21gのNanoActiveTM TiO2-07に関しては、搬送速度を40から80psiに上昇することでグリコール煙に対する除去の有効性を高める傾向があった(図10)。
【0063】
<実施例7>
本実施例においては、NanoActiveTM素材の煙除去の有効性に対する質量濃度の影響を加圧円筒搬送システムを用いて試験した。加圧円筒を用いたのは加圧キャニスターに伴う素材の払い出しに関するある問題のためである。表7に示す様に、加圧キャニスターに素材が10g装填されて素材が完全に排出されたならチャンバー内の予定濃度は32g/m3であった。表7に載せたすべての素材の払い出しデータを比較すると、NanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM MgO Plusは24〜26g/m3の範囲でNanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgOは8〜10g/m3の間で搬送されていた。それぞれの素材の払い出しに大きな不一致があるため、既知量の素材がチャンバー内に分散することができる様に加圧円筒を用いることに決めた。チャンバー内に搬送された4種類の異なる粒径範囲(250〜425μm、180〜250μm、150〜180μm、125〜150μm)の顆粒状NanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgOの質量濃度についても表7に示してある。結果は同じ素材の粉末状に比べてより多くの量の顆粒状素材がチャンバー内に搬送されたことが示している。
【0064】
【表8】
【0065】
燃焼煙の削減に関する濃度の影響を判定する実験をNanoActiveTM TiO2-07、NanoActiveTM MgO Plus、およびNanoActiveTM TiO2-12について質量1、5、10、および20グラムで繰り返し実施した。加圧円筒システムが既知の量の素材を小チャンバー(2.25ft x 2.25ft x 2.33ft、容積11.7ft3つまり0.32m3)に搬送するのを助ける。素材は加圧円筒を介してチャンバー内に、チューブを通して素材をチャンバー内に押し込む80psiの窒素ガスで搬送した。煙削減効力は次の式に基づき計算し、ここにt*が1より小さい場合には煙が削減したことを表す。
【0066】
【数4】
【0067】
図11では質量の作用として、燃焼煙の削減有効性はNanoActiveTM TiO2-07に関しては質量が増加するに連れて増加し、一方NanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgO Plusに関しては質量が増加すると削減効率は減少することが目立っている。NanoActiveTM TiO2-12は、t*15値に関しては1gの方が5gより良好な煙除去の有効性がある。NanoActiveTM TiO2-12(幾何平均粒径、GMD:8.1μm)の空気力学的直径の方がNanoActiveTM TiO2-07(GMD:18.1μm)より小さいという事実を踏まえると、このこともまた空気力学的粒径分布が煙を除去することにおいて重要な要因になり得ることを示している。この故に搬送方法、空気力学的直径およびチャンバー内に搬送される素材の量が煙削減に大きな影響がある。
【0068】
<実施例8>
本実施例においては煙除去に関する有効性について、小チャンバー内に搬送されているNanoActiveTM素材の空気力学的直径の影響を調べた。図12〜15に示す通り、NanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM MgO Plusは約3.5から15μmの範囲の大きめの粒径分布を持ち、NanoActiveTM TiO2-12は約0.9から3.5μmの範囲の小さめの粒径分布を持ち、NanoActiveTM MgOは小さいものは0.25μmから大きいものは21nmの範囲まで最も均一な粒径分布を持つ。NanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM TiO2-12の間の煙除去効率の相違は少なくとも部分的には粒径分布に大きな差があるためと理論づけられている。
【0069】
かくして、粒径分布が小さめの素材は遅めの沈降速度を持つことにより素材がより長い間分散し続け、粒径分布が大きめの素材は速めの沈降速度を持ちそして煙をより速やかに除去するのかも知れない。
【0070】
<実施例9>
この実施例においては、沈降速度および空気力学的直径の計算値の間の関連性を調べた。9種類のNanoActiveTM素材について粒径分布を粒径分析器(Scirocco 2000と連結したMastersizer 2000、両者ともMalvern Instruments社製)を用いて実験により入手した。全ての場合で乾燥粉末サンプルを空中に分散した。粒径分布は種々のNanoActiveTM素材の間で非常に異なった。
【0071】
粒径分布を使用してストークス領域内にある小粒子に有効な近似式を用いて空気力学的粒度分布を得た(C. D. CooperおよびF. C. Alley著、大気汚染規制−設計的アプローチ、第2版、イリノイ州プロスペクトハイツ:Waveland Press社、1994年)。
【0072】
【数5】
【0073】
ここにdAは空気力学的直径、dpは粒径、およびρpはg/cm3で表した粒子密度である。上の近似式において、粒子密度は容易に測定できる見掛け粉体密度に等しいと仮定した。図16に9種類のNanoActiveTM金属酸化物について空気力学的粒径分布計算値および沈降速度(上部水平軸)を示す。
【0074】
NanoActiveTM素材の沈降速度計算値は0.001〜0.01cm/秒(NanoActiveTM Al2O3)から10〜100cm/秒(NanoActiveTM CeO2の粒径分布の一部)まで幅広く変動した。種々の調合物の沈降速度および煙除去性能の間には関連がある様に思われる。小チャンバー内でおこなった実験は最良の煙除去能力を表したのがNanoActive TiO2-07で、次いでNanoActive MgO PlusおよびNanoActive TiO2-12であることを示した。NanoActiveTM MgOは効率よく煙を除去することが見いだされず、代わりに不明瞭さを作りだした。類似の傾向が沈降速度についても観察できた。最良の煙除去調合物、NanoActiveTM TiO2-07は1cm/秒に近い最も有望な沈降速度を持ち、これは試験したすべての酸化物中で最高値であった。中位の煙除去能力を持つ2種類の調合物、NanoActiveTM MgO PlusおよびNanoActive TiO2-12は0.07〜0.3cm/秒の範囲の有望な沈降速度であった。試験した中で最も効果の少ない煙除去素材、NanoActiveTM MgOは0.01cm/秒という最も小さな平均沈降速度であった。このデータは比較的狭い粒径分布で多分10〜30μmの粒径を持つ調合物が最良の煙除去能力を持ち得ることを示唆している。空気力学的直径および沈降速度は燃焼煙を除去するために素材にとって重要である。
【0075】
<実施例10>
本実施例においては、NanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgOの顆粒について燃焼煙の削減に対する有効性を試験した。4種類の異なる粒径の顆粒:250〜425μm、180〜250μm、150〜180μm、および125〜150μmについて試験した。表7に実験用チャンバー内に分散した異なる量のそれぞれ顆粒化したNanoActiveTM素材を粉体のNanoActiveTM素材と比較してg/m3で示した。計算は0.32m3であるチャンバーの容積を基準に実施した。すべての顆粒寸法について搬送された両方のNanoActiveTM素材の質量はかなり安定していた。
【0076】
燃焼煙が充満したチャンバー内にNanoActiveTM素材を搬送した後パーセント(%)透過率の変化を記録した。4種類の顆粒化NanoActiveTM TiO2-12の内、250>x>180μmの寸法の顆粒化NanoActiveTM TiO2-12のt*値が最も低かった。したがって、これが煙を削減するために最も効果的であった。さらに、顆粒寸法425>x>250および250>x>180μmのNanoActiveTM TiO2-12は実験の初期(t*10)に急激な煙削減を示す正規のNanoActiveTM TiO2-07と同じt*10〜t*15〜t*20パターンに沿っている。しかしながら、顆粒寸法180>x>150μmおよび150>x>125μmのNanoActiveTM TiO2-12は正規のNanoActiveTM TiO2-12と同じパターンに沿い始め、このことは実験の初期段階における不明瞭さおよび実験の後半における煙削減を示している。結果は寸法が425>x>250μmの顆粒化したNanoActiveTM TiO2-12は粉末NanoActiveTM TiO2-12よりも良好に機能したことを示している。
【0077】
<実施例11>
本実施例においてはより高い濃度の、250>x>180μmの範囲のNanoActiveTM TiO2-12顆粒による煙除去効率に対する影響を調べた。燃焼煙の削減のために小スケールのチャンバー内に分散したNanoActiveTM TiO2-12顆粒(粒径250>x>180μm)の濃度による影響は、異なる量(15、20、25、および30g)の素材をキャニスター内に入れて異なる分散量を達成して検討した。チャンバー内の最終粒子濃度は分散した素材の量をチャンバーの容積で割ることにより計算した。図17にt*10およびt*20を濃度の関数として表示している。
【0078】
異なる量のNanoActiveTM-G TiO2-12を用いて得たt*値は大部分で非常に近似していて、そのほとんどが0.8および1.00附近にあった。これに対する例外は低い濃度において見うけられた。低濃度は煙の削減を助長する傾向が見られ、一方で高濃度は不明瞭さを増加する傾向が見られた。データはまた低濃度のt*10はt*20より高く煙の削減が初期により急激に起こっていたことを意味する。したがって、低濃度は高濃度の粒子よりも煙の削減をより速く改善する可能性がある。
【0079】
<実施例12>
本実施例においては、チャンバー内の燃焼煙を除去するNanoActiveTM素材を搬送する圧力の影響を調べた。およそ10gの選定したNanoActiveTM素材を充填したキャニスターを加圧し、チャンバーに搬送された質量および煙削減効率をt*値を介して測定することにより3種類の圧力(40、80、120psi)を試験した。表8にそれぞれのNanoActiveTM素材のチャンバー内に分散した異なる量をg/m3で示しているが、計算は0.32m3であるチャンバーの容積に基づいた。それぞれのNanoActiveTM素材のチャンバー内搬送量のバラツキは主として素材により、そして程度は少ないが搬送圧力による。
【0080】
【表9】
【0081】
燃焼煙を充満したチャンバー内にNanoActiveTM素材を分散した後の、時間に対するパーセント透過率変化を記録した。NanoActiveTM TiO2-07、NanoActiveTM TiO2-12、およびNanoActiveTM MgO Plusに対する燃焼煙削減効率をt*(透過率10、15、20パーセントの)に換算して図18に表している。
40psiの搬送圧力においては検討した3種類すべての素材が燃焼煙を削減した。一方他の2種類の圧力(80および120psi)では、NanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgO Plusは煙を削減せずむしろ不明瞭さを創り出した。NanoActiveTM TiO2-07の煙削減能力はNanoActiveTM TiO2-12およびNanoActiveTM MgO Plus程には搬送圧力に影響されなかった。
【0082】
<実施例13>
本実施例においては、チャンバー内の燃焼煙を除去するためのNanoActiveTM素材搬送に加圧用ガスを用いる影響について調べた。およそ10gの選定したNanoActiveTM素材を充填したキャニスターに加圧し、チャンバーに搬送された質量および煙削減効率をt*.を介して測定することにより3種類のガス(N2、He、および Ar)について検討した。表9にチャンバー内に分散されたそれぞれのNanoActiveTM素材の異なる量をg/m3に換算して表示しているが、計算はチャンバーの容積、つまり0.32m3に基づいている。それぞれのNanoActiveTM素材のチャンバー内搬送量のバラツキは主として素材によるものであるが、程度は少ないが、搬送ガスにもよる。
【0083】
【表10】
【0084】
燃焼煙を充満したチャンバー内にNanoActiveTM素材を分散した後の時間に対するパーセント透過率の変化を記録した。NanoActiveTM TiO2-07、NanoActive.RTM. TiO2-12、およびNanoActiveTM MgO Plusに対する燃焼煙削減効率をt*(透過率10、15、および20パーセントの)に換算して図19に表している。
窒素ガスを用いた場合には検討した3種類すべての素材が燃焼煙を削減した。アルゴンを用いた場合にはNanoActiveTM TiO2-12は煙を削減せずむしろ不明瞭さを創り出した。全体として、NanoActiveTM TiO2-07およびNanoActiveTM MgO Plusの煙削減能力はNanoActiveTM TiO2-12程には搬送ガスにより影響されなかった。
【0085】
<実施例14>
本実施例においては、幾つかの素材の煙除去の有効性を部屋スケールのチャンバーを用いて試験した。寸法が8ftx 8ft x 12ftの部屋スケールのチャンバーを構築し種々の粒子測定器(すなわち、8段階カスケートインパクター、透過率計、光ファイバースペクトロメーター、テーパーエレメント振動微量天秤、光学式パーティクルカウンター、重量式フィルターサンプラー、および粒子析出板)を装備した。先ず実験の実施要項を明らかにし部屋スケールチャンバーの予備的検討を実施した。実験は次のステップを伴った:(a)グリコール/水の溶液および/またはディーゼル油を加熱しオリフィスを通して供給する煙発生機を用いてグリコールまたはディーゼル霧油の煙をチャンバー内に誘導し;(b)100%の不透明度または光透過率0%が達成され次第、粒子をチャンバー内に加圧キャニスターを用いて分散し;そして(c)光透過率および微粒子の質量濃度をモニターする。以下の計器を使用した:(a)部屋スケールチャンバー(経路長さ12ft)を通過する可視光の透過率を測定する透過率計、(b)空中浮遊微粒子の質量濃度を測定するフィルターサンプラー、および(c)リアルタイムで空中浮遊微粒子の質量濃度を測定するテーパーエレメント振動微量天秤(TEOM)。小スケールチャンバーによる検討と同様に、素材の煙除去有効性はt*10およびt*20に換算して表現した。
【0086】
実施要項の確立に続き、部屋スケールチャンバー内のグリコール煙の除去について種々の素材(すなわち、NanoActiveTM MgO plus、NA TiO2-07、NA TiO2-12、NA MgO、NaHCO3-FE、Ca(OH)2)の有効性を評価した。それぞれの素材はグリコール煙で満ちた部屋スケールチャンバー内に加圧キャニスターを80psiで用いて分散した。結果は煙が充満した部屋を通して視界を改善する速さという観点(低いt*10値で示されている)からNanoActiveTM MgO Plusが煙除去剤として最良であることを示唆した(図20および21)。例えば、およそ50gのNanoActiveTM MgO Plusをグリコール煙が満ちた8ftx8ft x 12ftの部屋に分散すると、10%光透過率を約2から4分で達成し、20%光透過率は約4から6分であった。対照的に、グリコール煙単独では10%光透過率を25分以上かかって達成した。他の粒子(すなわちCa(OH)2, NaHCO3-FE、およびNanoActiveTM MgO)も有効な煙除去剤であることが判明したが、NanoActiveTM MgO Plus程に有効ではなかった。
【0087】
<実施例15>
本実施例においては、除去する煙のタイプによる影響を調べた。グリコール煙と同様の実施要項にしたがい、部屋スケールチャンバー内のディーゼル霧を除去するためのNanoActiveTM MgO Plusの有効性を評価する実験を実施した。2種類の量のNanoActiveTM MgO Plus(すなわち、22.9gおよび48.0g)をディーゼル煙で満ちたチャンバー内に分散しチャンバーを通過する光透過率の変化を透過率計を用いてモニターした。NanoActiveTM MgO Plusはまたディーゼル/霧−油煙を除去する上でも有効であった(表10)。しかしながら、ディーゼル/霧−油煙ではグリコール煙に比べて同レベルの煙除去の有効性を達成するためにはより多くの量のNanoActiveTM MgO Plusを必要とすることを示唆している。これはディーゼル/霧−油煙の粒子がグリコール煙の粒子に比べて小さいためであるかも知れない。8段階カスケードインパクターによる煙粒子の粒径分布の測定ではディーゼル/霧−油煙の幾何平均径は1μm未満であったが一方グリコール煙はおよそ2.5μmであった。
【0088】
【表11】
【0089】
<実施例16>
本実施例においては、煙除去の有効性に対する粒径の影響を調べた。NanoActiveTM MgO PlusおよびNaHCO3-FEのバルクサンプルを篩い分けして、目開き25μmの篩を通過したもの(<25μm)、および53−μm篩を通過し25−μm篩で捉えられたもの(25〜53μm)との2つの寸法範囲に寸法分別した。それぞれの粒径範囲のサンプルを80psiまで加圧したキャニスターを用いて煙が充満したチャンバー内に分散し、対応する煙除去の有効性を透過率計を用いてモニターした。
【0090】
表11にt*10およびt*20値ならびに分散した量を纏めてある。結果はNanoActiveTM MgO plusの小さめのナノ凝集体(25μmを通過したもの)の方が大きめのナノ凝集体(25μmで捕捉されたもの)に比べてグリコール煙を除去するのにより効果的であることを示しているが、分散量は小さめの粒子の方が大きめの粒子より幾分多かった(8.2対7.1g)。さらに、小さめのナノ凝集物と篩い分けしていないサンプルの比較では小さめのナノ凝集物の方が篩い分けしていないサンプルよりも煙除去の有効性が幾分(顕著な差はないが)は良いことを示した。NaHCO3-FEの傾向は概してNanoActiveTM MgO Plusと類似し、25μmの篩を通過した粒子は25μmの篩で捕捉されたものに比べて煙除去の有効性がよかった。しかしながら、NanoActiveTM MgO Plusとは対照的に、NaHCO3-FEの篩い分けしていないサンプルの方が小さめの粒子よりも煙除去の有効性がよかった。
【0091】
【表12】
【0092】
<実施例17>
本実施例においては、グリコール煙の除去において選定した素材の有効性に対する搬送方法の影響を調べた。消火器装置(または加圧キャニスター)を別の瞬間散方法である加圧円筒と同じ80psiの圧力で比較した。図22に2つの分散方法をNanoActiveTM MgO plusについて除去の有効性(t*10)に基づいて比較している。NanoActiveTM MgO plusは加圧キャニスターの方で加圧円筒よりも良好に作動する傾向がある。
【0093】
追加的試験を加圧キャニスター(消化器装置)でおこない、グリコール煙除去に対するCa(OH)2, NaHCO3-FE、NanoActiveTM MgO Plus、および NA MgOの有効性についてノズルタイプによる影響を判定した。2つのタイプのノズルについて考慮した。ノズル1はくびれ部がありほとんどの煙削減実験で用いられ、一方ノズル2は全くくびれ部がない。すべての試験は部屋スケールチャンバー用の実施要項にしたがった。結果からグリコール煙を除去する上でノズルのタイプは素材の有効性に限定的な影響しか与えなかったことを示唆している。
【0094】
<実施例18>
本実施例においては、顆粒状NanoActiveTM-G TiO2-12(-60,+80メッシュ;250>x>180μm)およびNanoActiveTM TiO2-12粉体を用いて部屋スケールチャンバー内のグリコール煙除去に対する有効性を調べた。NanoActiveTM-G TiO2-12の顆粒(寸法180〜250マイクロメートル)について質量濃度を変えて3回繰り返して実施した。粉体は40gの量から始め2回繰り返して実施した。質量濃度は小スケールチャンバーでおこなったのと同じ様にして計算した。図23はt*10およびt*20を濃度の関数として示している。顆粒の方が概して粉体素材より良好な有効性を示している。
【0095】
<実施例19>
本実施例においては、部屋スケールチャンバーを用いて先に試験した素材の不明瞭さの程度を評価した。異なるNanoActiveTM素材(すなわち、MgO plus、MgO、TiO2-12、TiO2-07、MgO Plus顆粒)および他の素材(すなわち、NaHCO3-FE, Ca(OH)2)が提供する電磁スペクトルの可視領域範囲内の不明瞭さの程度を評価した。それぞれの素材を部屋スケールチャンバー内に加圧キャニスターを80psiで用いて分散した。チャンバー内の不明瞭さの程度は透過率計を用いてモニターした。空中浮遊微粒子質量濃度も重量測定フィルターサンプラーで測定した。結果は検討した量について、量および素材のタイプによってはNanoActiveTM粒子および他の素材も可視領域でいくらか不明瞭さをもたらすことを示した。しかしながら、検討した素材の何れもグリコール煙またはディーゼル霧ほど多くの不明瞭さはもたらさなかった(図24)。
【0096】
付加的な実験をおこない、何れかのNanoActiveTM素材でサーマルカメラを不明瞭にできるかどうかを判定した。これらの実験は部屋スケールチャンバーを用いて実施した。目的はNanoActiveTM素材を用いて高温体をサーマルイメージングカメラ(MID IR 2〜5.4μm)から不明瞭にすることであった。高温体(熱水が循環している箱)を環境室内に置きチャンバーの高温体と向かい側のプレキシガラスの壁に覗き孔を設けた。中距離用サーマルイメージングカメラを高温物体が見える様に覗き孔に据えた。加圧キャニスターからNanoActiveTM素材(NanoActiveTM MgO、NanoActiveTM Al2O3およびNanoActiveTM Al2O3 plus)をチャンバー内にスプレーした。素材がスプレーされると同時にカメラにより与えられる高温体の温度が約3〜10℃低下した。温度降下は30秒から3分という非常に短い時間しか持続せず、その後カメラにより与えられる温度は正常に戻った。
【0097】
<実施例20>
本実施例においては、NanoActiveTM TiO2 と NanoActiveTM MgOの混合物(NanoScale Materials社からFAST ACTTMとして入手可能)によるHFおよびHCN(火災により発生する2種類のよくある有害物質)の吸着に対する有効性を調べた。およそ50gのナノ結晶性物質をHCNに曝し、続いて分析してナノ結晶性物質によるHCNの吸着を示すHCNの分解物の存在の判定をおこなった。HCNに曝した後、ナノ結晶性物質を溶媒抽出およびGC-MS分析試験にかけた。このデータはナノ結晶性物質がHCNをOCN中間体に酸化しこれがさらに加水分解されて副産物になり室温でナノ結晶性物質により安定化されることを明らかにする。HCNに特有の特徴的な分解生成物はN,N−ビス−ヒドロキシメチルホルムアミド(メタノール抽出で目に見える)であった。
【0098】
同様の試験をHFを用いて実施した。しかしながら、溶媒抽出およびGC-MSでは特徴的な分解生成物を識別することはできなかった。このことはHFがナノ結晶性物質、とりわけMgOにより化学的に分解され非常に安定したイオン性化合物でどの様な溶媒にも簡単には抽出できないフッ化マグネシウムを形成したことを示す。この様に、結果はこれらナノ結晶性物質がHCNおよびHFを吸着するために非常に効果があることを示している。
【0099】
<実施例21>
本実施例においては、実施例20で用いたナノ結晶性混合物の有効性を無水アンモニア、塩素、酸化エチレン、塩化水素、二酸化窒素、および亜硫酸ガスの様な火災により形成し放出される蒸気災害の除去に対する有効性について試験した。ガスの吸着はFT-IR分光法および重量測定法により判定した。塩素は対称分子であるため、IR分光法を採用することはできなかった。したがって、吸着された塩素の量は塩素ガスに曝したナノ結晶性物質の重量増加に基づいて計算した。
2分および10分で除去された危険物質のパーセントを表12に示す。
【0100】
【表13】
【0101】
これらのガスは非常に速やかに吸着され、10分のデータに示されているとおり、粉体から脱ガスしそうにはない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】NA TiO2-07を用いた劇場煙の消失速度のグラフである。
【図2】NA TiO2-07を用いた紙燃焼による燃焼煙の消失速度を示すグラフである。
【図3】NA MgO Plusを用いた紙燃焼による燃焼煙の消失速度を示すグラフである。
【図4】NA TiO2-07を用いたディーゼル霧煙の削減を示すグラフである。
【図5】NA MgO Plusを用いたディーゼル霧煙の削減を示すグラフである。
【図6】相対的な空気力学的粒度に対する幾つかのRNPsの煙除去の有効性(90%不倒明度に至る時間)を示すグラフである。
【図7】相対的な空気力学的粒度に対する幾つかのRNPsの煙除去の有効性(80%不倒明度に至る時間)を示すグラフである。
【図8】ジェットミル処理したものと「正規の」RNPsの煙除去の有効性を比較したグラフである。
【図9】分散した素材の量に影響される煙除去の有効性を示したグラフである。
【図10】グリコール煙を除去する上でNA TiO2-07およびNaHCO3-FEの有効性に対する搬送圧力の影響のグラフである。
【図11】幾つかの質量濃度において種々のナノ物質の煙除去効果を比較したチャートである。
【図12】NA TiO2-07の空気力学的直径の相対分布を描いたチャートである。
【図13】NA MgO Plusの空気力学的直径の相対分布を描いたチャートである。
【図14】NA TiO2-12の空気力学的直径の相対分布を描いたチャートである。
【図15】NA MgOの空気力学的直径の相対分布を描いたチャートである。
【図16】種々のナノ物質の計算による空気力学的粒径および沈降速度を比較したグラフである。
【図17】NA TiO2-12の煙削減に対する濃度の影響を比較したグラフである。
【図18】異なる圧力で搬送された種々のナノ物質の煙削減効率を比較したチャートである。
【図19】異なる搬送ガスで搬送された種々のナノ物質の煙削減効率を比較したチャートである。
【図20】分散した量により影響された異なるナノ物質に対するグリコール煙除去の有効性のプロットである。
【図21】空中浮遊微粒子の質量濃度により影響された異なるナノ物質に対するグリコール煙除去の有効性のプロットである。
【図22】加圧キャニスターおよび加圧円筒で搬送されたNA MgO Plusに対するグリコール煙除去の有効性を比較したプロットである。
【図23】煙除去の有効性に対するNA TiO2-12粉末および顆粒の濃度の影響を比較したプロットである。
【図24】加圧キャニスターを80psiで用いて部屋スケールチャンバー内に選択された素材を分散した場合の不明瞭さの程度(%不透明度で表示)を比較したプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙被害領域から煙を取り除く方法で、前記煙被害領域に少なくとも煙の一部を吸収するためにある量のナノ結晶性粒子を分散することを含む、煙を取り除く方法。
【請求項2】
前記ナノ結晶性粒子が金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶性粒子がMg、Sr、Ba、Ca、Ti、Zr、Fe、V、Mn、Ni、Cu、Al、Si、Zn、Ag、Mo、Sb、およびこれらの混合物の金属酸化物ならびに金属水酸化物から成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が前記領域の不透明度を15%減少させる時間が、前記方法を実施しなかった場合に同様の不透明度の減少を達成するであろう時間の約80%未満となる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記煙被害領域の少なくとも一部の不透明度が前記ナノ結晶性粒子を分散する前には少なくとも約95%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分散工程が前記領域内に前記ナノ結晶性粒子を少なくとも約0.1g/m3分散することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分散工程が前記ナノ結晶性粒子を加圧容器から前記領域内に噴霧することから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ結晶性粒子が約20〜3000psiの間の圧力で分散される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記容器が搬送ガスで加圧されている、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ結晶性粒子の空気力学的幾何平均径(GMD)が約1〜30μmの間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ結晶性粒子の沈降速度が約0.001〜5cm/秒の間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ結晶性粒子の形状が粉末および/または顆粒状である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ結晶性粒子の微結晶粒度が約25nm未満で表面積が少なくとも約15m2/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ結晶性粒子が非加圧の容器から手動で分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
火災により形成された有害物質を領域から除去する方法で、前記火災により形成された少なくとも1種類の有害物質を吸着するためにある量のナノ結晶性粒子を前記領域に分散することを含む、火災により形成された有害物質を領域から除去する方法。
【請求項16】
前記ナノ結晶性粒子が金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分散工程が少なくとも約0.1g/m3の前記ナノ結晶性粒子を前記領域の少なくとも一部に分散することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記分散工程が加圧した容器から前記ナノ結晶性粒子を前記領域に噴霧することで構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ結晶性粒子が約20〜3000psiの間の圧力で分散される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記容器が搬送ガスで加圧されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ結晶性粒子の空気力学的幾何平均径(GMD)が約1〜30μmの間にある、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノ結晶性粒子の沈降速度が約0.001〜5cm/秒の間にある、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ結晶性粒子の形状が粉体および/または顆粒状である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記有害物質が、前記火災により形成された煙と混合している、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記有害物質がアクロレイン、トルエンジイソシアネート、ホルムアルデヒド、イソシアネート類、HCN、CO、NO、HF、HCl、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
火災を鎮静する方法で、ある量のナノ結晶性粒子を火災に向けて使用する手順を含む、火災を鎮静する方法。
【請求項27】
前記ナノ結晶性粒子が金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記使用手順が前記ナノ結晶性粒子を前記火災に加圧容器から噴霧することで構成される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノ結晶性粒子が前記加圧容器から約20〜3000psiの間の圧力で投入されることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記容器が搬送ガスで加圧される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノ結晶性粒子の空気力学的幾何平均径(GMD)が約1〜30μmの間にある、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノ結晶性粒子の沈降速度が約0.001〜5cm/秒の間にある、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記ナノ結晶性粒子の形状が粉体および/または顆粒状である、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記ナノ結晶性粒子が非加圧の容器から手動で分散される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
物品の難燃性を向上させる方法で、前記物品にある量の難燃性ナノ結晶性粒子を塗布および/または組み込むことを含む、物品の難燃性を向上させる方法。
【請求項36】
前記ナノ結晶性粒子が金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択されている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ナノ結晶性物質が物品内にその製造過程で組み込まれる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ結晶性物質が前記物品に完成後に塗布される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノ結晶性物質が前記物品の少なくとも外表面の一部に塗布される、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記ナノ結晶性粒子の微結晶粒度が約25nm未満で表面積が少なくとも約15m2/gである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ結晶性粒子が物品全体の重量の約0.01〜25%を構成する、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記ナノ結晶性粒子が前記物品に加圧容器からスプレーにより塗布される、請求項35に記載の方法。
【請求項1】
煙被害領域から煙を取り除く方法で、前記煙被害領域に少なくとも煙の一部を吸収するためにある量のナノ結晶性粒子を分散することを含む、煙を取り除く方法。
【請求項2】
前記ナノ結晶性粒子が金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶性粒子がMg、Sr、Ba、Ca、Ti、Zr、Fe、V、Mn、Ni、Cu、Al、Si、Zn、Ag、Mo、Sb、およびこれらの混合物の金属酸化物ならびに金属水酸化物から成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が前記領域の不透明度を15%減少させる時間が、前記方法を実施しなかった場合に同様の不透明度の減少を達成するであろう時間の約80%未満となる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記煙被害領域の少なくとも一部の不透明度が前記ナノ結晶性粒子を分散する前には少なくとも約95%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分散工程が前記領域内に前記ナノ結晶性粒子を少なくとも約0.1g/m3分散することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分散工程が前記ナノ結晶性粒子を加圧容器から前記領域内に噴霧することから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ結晶性粒子が約20〜3000psiの間の圧力で分散される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記容器が搬送ガスで加圧されている、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ結晶性粒子の空気力学的幾何平均径(GMD)が約1〜30μmの間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ結晶性粒子の沈降速度が約0.001〜5cm/秒の間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ結晶性粒子の形状が粉末および/または顆粒状である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ結晶性粒子の微結晶粒度が約25nm未満で表面積が少なくとも約15m2/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ結晶性粒子が非加圧の容器から手動で分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
火災により形成された有害物質を領域から除去する方法で、前記火災により形成された少なくとも1種類の有害物質を吸着するためにある量のナノ結晶性粒子を前記領域に分散することを含む、火災により形成された有害物質を領域から除去する方法。
【請求項16】
前記ナノ結晶性粒子が金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分散工程が少なくとも約0.1g/m3の前記ナノ結晶性粒子を前記領域の少なくとも一部に分散することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記分散工程が加圧した容器から前記ナノ結晶性粒子を前記領域に噴霧することで構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ結晶性粒子が約20〜3000psiの間の圧力で分散される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記容器が搬送ガスで加圧されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ結晶性粒子の空気力学的幾何平均径(GMD)が約1〜30μmの間にある、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノ結晶性粒子の沈降速度が約0.001〜5cm/秒の間にある、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ結晶性粒子の形状が粉体および/または顆粒状である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記有害物質が、前記火災により形成された煙と混合している、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記有害物質がアクロレイン、トルエンジイソシアネート、ホルムアルデヒド、イソシアネート類、HCN、CO、NO、HF、HCl、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
火災を鎮静する方法で、ある量のナノ結晶性粒子を火災に向けて使用する手順を含む、火災を鎮静する方法。
【請求項27】
前記ナノ結晶性粒子が金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記使用手順が前記ナノ結晶性粒子を前記火災に加圧容器から噴霧することで構成される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノ結晶性粒子が前記加圧容器から約20〜3000psiの間の圧力で投入されることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記容器が搬送ガスで加圧される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノ結晶性粒子の空気力学的幾何平均径(GMD)が約1〜30μmの間にある、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノ結晶性粒子の沈降速度が約0.001〜5cm/秒の間にある、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記ナノ結晶性粒子の形状が粉体および/または顆粒状である、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記ナノ結晶性粒子が非加圧の容器から手動で分散される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
物品の難燃性を向上させる方法で、前記物品にある量の難燃性ナノ結晶性粒子を塗布および/または組み込むことを含む、物品の難燃性を向上させる方法。
【請求項36】
前記ナノ結晶性粒子が金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン、無機リン化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、スルファミン酸塩、硫酸塩、臭素化合物、塩素化合物、およびこれらの混合物から成る群から選択されている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ナノ結晶性物質が物品内にその製造過程で組み込まれる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ結晶性物質が前記物品に完成後に塗布される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノ結晶性物質が前記物品の少なくとも外表面の一部に塗布される、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記ナノ結晶性粒子の微結晶粒度が約25nm未満で表面積が少なくとも約15m2/gである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ結晶性粒子が物品全体の重量の約0.01〜25%を構成する、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記ナノ結晶性粒子が前記物品に加圧容器からスプレーにより塗布される、請求項35に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−516695(P2008−516695A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536991(P2007−536991)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/037228
【国際公開番号】WO2006/044784
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504450626)ナノスケール マテリアルズ アイエヌシー. (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/037228
【国際公開番号】WO2006/044784
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504450626)ナノスケール マテリアルズ アイエヌシー. (11)
【Fターム(参考)】
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