説明

照射ターゲット位置決め装置およびそれを用いた方法

【課題】照射ターゲットを精密に照射し、同位体および放射性同位体を含む娘生成物を照射ターゲットから精密に生成することを可能にするように構成可能である照射ターゲット位置決め装置およびシステムを提供する。
【解決手段】放射線場内でターゲット150を保持できる照射ターゲット150のための精確な搭載ポジション101を有する照射ターゲットプレート100を備える。これらは、放射線場内で照射ターゲットプレート100および照射ターゲット150を内部に保持および位置決めするためのターゲットプレートホルダをさらに含む。照射ターゲットにおいて精確な所望のレベルの被曝をさらに可能にするために、放射線場に対して知られた吸収断面積を有する材料を含み、所望の量の照射および娘生成物の生成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示の実施形態は、一般に、原子力発電所内および他の原子炉内の燃料構造およびその中で生成される放射性同位体に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体には、離散的な量および別個の種類の電離放射線を放出する放射性同位体の能力に由来する様々な医学的応用分野がある。この能力は、癌に関連した療法、医用画像および標識化技術、癌および他の病気の診断、医療滅菌、ならびに様々な他の産業上の用途において放射性同位体を役立つものにさせる。
【0003】
特定の放射能を有する放射性同位体は、固有の予測可能な放射プロファイルを放射性同位体が生み出す能力のために、癌療法および他の医学療法において特に重要である。所与の放射性同位体によって生成されることになる正確な放射量を知ることにより、より時宜を得た有効な治療および放出された放射スペクトルに基づく撮像の改良など、より精確で有効な放射性同位体の使用が可能になる。
【0004】
従来、放射性同位体は、医療施設または隣接する生成施設にて、その場で中性子を、加速器または低出力原子炉内の安定した親同位体に照射することによって生成されていた。生成した放射性同位体は、従来の方法において、放射線機器を用いて分析され、相対的な放射能によってほぼ等しい放射能を有するグループに分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0076957号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示の実施形態および方法は、照射ターゲットを精密に照射し、同位体および放射性同位体を含む娘生成物を照射ターゲットから精密に生成することを可能にするように構成される照射ターゲット位置決め装置およびシステムに関する。例示の実施形態は、中性子束などの放射線場内でターゲットを保持できる照射ターゲットのための精確な搭載ポジションを有する照射ターゲットプレートを備える。例示の実施形態のターゲットプレートは、放射線場内でとても小さい大きさまたはとても大きい大きさの照射ターゲットの位置決めをさらに改良するための穴およびターゲットスペース要素をさらに含むことができる。例示の実施形態は、放射線場内でターゲットプレートおよび照射ターゲットを内部に保持および位置決めするためのターゲットプレートホルダをさらに含み得る。例示の実施形態のターゲットプレートホルダは、例示の実施形態のターゲットプレートホルダ内で照射ターゲットプレートの位置決めをさらに改良するためのスペーサプレートをさらに備えてもよい。例示の実施形態は、照射ターゲットにおいて精確な所望のレベルの被曝をさらに可能にするために、放射線場に対して知られた吸収断面積を有する材料で製造され得る。
【0007】
例示の方法は、所望の量の照射および娘生成物の生成を行うための照射ターゲット保持システムを構成する。例示の方法は、所望の娘生成物を決定するステップ、利用できる放射線場の特性を決定するステップ、照射ターゲットを例示の実施形態のターゲットプレートおよびターゲットプレートホルダ内に構成するステップ、および/または放射線場内で構成したシステムに放射線を照射するステップを含んでもよい。
【0008】
例示の実施形態は、添付図面を詳細に説明することでより明らかになろう。添付図面では、同じ要素が同じ参照符号によって表わされており、この添付図面は、例示によって与えられるものに過ぎず、したがって、本明細書中の例示の実施形態を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示の実施形態のターゲットプレートの説明図である。
【図2】例示の実施形態のターゲットプレート、ならびにその中の照射ターゲットおよびスペーサの細部の説明図である。
【図2−1】ディテールAは、図2の例示の実施形態のターゲットプレートにおける搭載ポジションの細部である。
【図2−2】ディテールB−Fは、図2の例示の実施形態のターゲットプレートにおける搭載ポジションの細部である。
【図3】例示の方法により照射ターゲットおよびスペーサを内部に配置した例示の実施形態のターゲットプレートの細部説明図である。
【図4】例示の実施形態のターゲットプレートホルダの説明図である。
【図5】ターゲットプレートおよびターゲットホルダを使用する例示の方法を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示の実施形態の詳しい説明のための実施形態が、本明細書に開示されている。しかし、本明細書に開示した特定の構造細部および機能詳細は、例示の実施形態を説明するために単に代表するものである。しかし、例示の実施形態は、多くの代替の形態に具体化されてもよく、明細書に記載した例示の実施形態のみに限定されると解釈されるべきではない。
【0011】
第1、第2などの用語が、様々な要素を説明するために本明細書中で使用され得るが、これら要素は、これら用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これら用語は、単にある要素と別の要素を区別するために使用される。例示の実施形態の範囲から逸脱することなく、例えば、第1の要素は第2の要素と呼ばれてもよく、同様に、第2の要素は第1の要素と呼ばれてもよい。「および/または」という用語は、本明細書で用いられるとき、関連した列挙項目の1つまたは複数のあらゆる組み合わせを含む。
【0012】
ある要素が、別の要素に「接続される」、「結合される」、「対合される」、「取り付けられる」、または「固定される」と呼ばれる場合、その要素は、他の要素に直接接続または結合されてもよく、または介在要素が存在してもよいことが理解されよう。対照的に、ある要素が、別の要素に「直接接続される」または「直接結合される」と呼ばれる場合、介在要素は存在しない。要素同士の間の関係を説明するために使用される他の語句(例えば、「間に」に対して「直接間に」、「隣接する」に対して「直接隣接する」など)は、同じように解釈されるべきである。
【0013】
本明細書中で使用した用語法は、特定の実施形態を単に説明するためのものであり、例示の実施形態を限定するものではない。別段、言葉による明示的な指示がない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、本明細書で用いられるとき、同様に複数形を含むものである。本明細書で使用する場合の用語「備える、および/または含む(「comprises」、「comprising」、「includes」、および/または「including」)」は、明言した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特色、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されよう。
【0014】
いくつかの代替の実施では、言及した機能/行為は、図に示される順序通り行われなくてもよいことも留意されたい。実際には、例えば、含んだ機能/行為に応じて、連続して示した2つの図は、ほぼ同時に実施されてもよく、または場合により逆の順序で実施されてもよい。
【0015】
図1は、例示の実施形態のターゲットプレート100の説明図である。図1に示すように、例示の実施形態のターゲットプレート100は、円形ディスクであってもよく、または代替として、用途に応じて正方形、楕円形、ドーナツ形等を含む任意の形状であってもよい。ターゲットプレート100は、照射ターゲットを配置および保持できる1つまたは複数の搭載ポジション101を含む。搭載ポジション101は、ターゲットプレート100が中性子束または他の放射線場にかけられるとき、知られた放射線レベルの位置でターゲットプレート100内に位置決めされる。「放射線レベル」または「放射線場」は、本明細書で用いられるとき、例えば、粒子加速器からの高エネルギーイオン、または商用原子炉内の様々なエネルギーの中性子束など放射線場に配置されたターゲットを変換できる任意の種類の電離放射線被曝を含む。例えば、ターゲットプレート100が、運転中の商用原子炉内の特定の位置で中性子束中に配置される場合、搭載ポジション101での中性子束の正確なレベルおよび種類は既知であり、その結果、各位置は、ある被曝時間に対する特定レベルの被曝に対応し得るようになる。
【0016】
このように、搭載ポジション101は、その位置での照射ターゲットが、正確な所望のレベルの放射線被曝に確実に曝されるように、例示の実施形態のターゲットプレート100内に配置することができる。一例としては、軽水炉内で等しい量の中性子束に各位置が曝されるように、搭載ポジション101を配置することが望ましいものであり得る。ターゲットプレート100が曝されることになる中性子束プロファイル、およびターゲットプレート100の吸収断面積および散乱/反射断面積を含む関連した断面積を知っていれば、各搭載ポジション101が等しい照射を受けるように、搭載ポジション101を配置することができ、例えば、図1に示すように、より多くの中性子束が交わっているターゲットプレート100の外周で、搭載ポジション101をより多く点在させることが含まれる。
【0017】
図2は、搭載ポジション101での様々な例示の構成、およびディテール図A〜Fにおいて搭載ポジション101中の照射ターゲット150を示す例示の実施形態のターゲットプレート100の別の図である。ターゲットプレート100を通じて部分的または完全に延びる1つまたは複数の穴102が、1つまたは複数の照射ターゲット150を収容するための搭載ポジション101にあってもよい。穴102は、任意の形状とすることができる。
【0018】
例えば、ディテールAおよびディテールCに示すように、穴102は、照射ターゲット150の形状に適合するように内部に成形されてもよく、例えば、円筒形の照射ターゲット150を収容するための円筒形の穴102が含まれる。さらなる例として、ディテールDおよびディテールFに示すように、穴102は、ディスクまたは平板の照射ターゲット150を収容するためのスリットとして成形されてもよい。いくつかの照射ターゲット150が、任意の穴102の中に、この穴の搭載ポジション101で推定した中性子束プロファイルに基づいて搭載することができる。例えば、より高いレベルの放射線に曝されると見込まれる搭載ポジション101は、より多くの照射ターゲット150を内部に搭載した穴102を含んでもよい。例示の実施形態は、搭載ポジション101の穴102を示すが、搭載ポジション101で照射ターゲット150を保持するために、例えば、接着剤または格納室などの他の照射ターゲット保持機構が使用可能であることが理解されよう。
【0019】
例えば、ディテールAに示すように、単一の穴102が、搭載ポジション101にあってもよく、または例えば、ディテールCに示すように、複数の穴が搭載ポジション101にあってもよい。例示の実施形態のターゲットプレート100は、種々の搭載ポジション101に種々の形状および個数の様々な穴102を含んでもよい。例えば、種々の形状の照射ターゲット150を収納するために、ターゲットプレート100が曝される知られた中性子束プロファイルに基づいて、複数の正方形穴102が、縁部の搭載ポジション101に配置されてもよく、一方、単一の円筒形穴102が、内側の搭載ポジション101にあってもよい。
【0020】
照射ターゲット150は、いくつかの形状、大きさ、および構成をとってもよく、様々なやり方で搭載ポジション101において穴102または他の保持用機構に配置、封止および/または保持することができる。照射ターゲット150の大きさは、その目的とする用途(例えば、放射線写真ターゲット、近接照射療法シード、溶出マトリックス(elution matrix)など)について必要に応じて調整することができる。例えば、照射ターゲット150は、約3mmの長さおよび約0.5mmの直径を有してもよい。照射ターゲット150は、図2に示すように、同じターゲットプレート100内の種々の種類の穴102内で球状、ディスク状、ウェハ状、および/またはBB状(BB−shaped)、あるいは任意の他の大きさおよび形状であることができる。穴102の大きさおよび/または例示の実施形態のターゲットプレート100の厚さは、ターゲット150を収納するために必要に応じて調整することができることを理解されたい。
【0021】
照射ターゲット150は、比較的均一な放射能など所望の濃度または放射能レベルを有する照射ターゲット150から娘生成物を得るように、以下により詳細に述べる様々な要因(各ターゲットの材料の特性、炉心の知られた中性子束条件、結果として生じるターゲットの望ましい放射能などを含む)に基づいて、適切な搭載ポジション101に諸条件に配慮して搭載される。
【0022】
照射ターゲット150は、同じ材料または異なる材料で形成されてもよい。照射ターゲット150は、天然同位体または濃縮同位体で形成することもできる。本明細書で用いられるとき、照射ターゲット150は、例示の実施形態が曝され得る照射の種類に対して十分な吸収断面積を有するそれら材料を含み、放射線場の存在下で吸収および変換することになる材料を照射ターゲット150が含むようになっていると理解される。例えば、適したターゲット150は、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、エルビウム(Er)、ゲルマニウム(Ge)、金(Au)、ホルミウム(Ho)、イリジウム(Ir)、ルテチウム(Lu)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、サマリウム(Sm)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および/またはイットリウム(Y)で形成され得るが、他の適した材料を使用することもできる。同様に、ターゲットは、穴102内などの搭載ポジション101で適切な格納内の液体、固体または気体であってもよい。
【0023】
照射ターゲット150が曝される知られた放射線場内で照射ターゲット150の間の間隔および照射ターゲット150の向きを保つために、1つまたは複数のスペース要素105が、穴102内で照射ターゲット150を間隔を置いて配置および/または保持することができる。例えば、ディテールBに示すように、単一のターゲットスペース要素105Aが、搭載ポジション101で適切な位置に照射ターゲット150を保持および間隔を置いて配置するように穴102内に配置されてもよい。代替として、ディテールEに示すように、照射ターゲットの搭載ポジション101で穴102内の適切な位置に照射ターゲット150を保持および間隔を置いて配置するために、1つまたは複数のターゲットスペース要素105Bが、ダミーターゲットの様に成形され、穴102の中に挿入されてもよい。
【0024】
図3は、各搭載ポジション101で穴102を有する、図2のディテールEに示すもののようなターゲットスペース要素105Bを用いる例示の実施形態のターゲットプレート100の説明図である。図3に示すように、各穴102は、ターゲットスペース要素105Bおよび/または照射ターゲット150の組み合わせで同様に満たすことができる。後述の例示の方法によれば、周辺での搭載ポジション101は、ターゲットスペース要素105Bに対して照射ターゲット150が増加した比を含み得るのに対して、搭載ポジション101は、所望する放射能の娘生成物を生成するためにより小さい比を有し得る。
【0025】
さらに代替として、図2のディテールDに示すように、ターゲットスペース要素105Cは、スリットタイプの穴102内で照射ターゲット150を仕切るのに十分な厚さを有するウェハの様に成形することができる。この仕切りは、照射のために所望の位置に照射ターゲット150を間隔を置いて配置することができる。キャップ、接着剤、弾性部材等を含めた他の種類のスペース要素および保持要素が、ターゲットスペース要素105として使用可能であり得る。
【0026】
例示の実施形態のターゲットプレート100、およびその中の任意のスペース要素105は、例示の実施形態が曝され得る放射線場の種類を考慮して、所望の断面積を有する材料から製造することができる。例えば、熱中性子束の場に曝される例示の実施形態のターゲットプレート100は、その中で照射ターゲット150への中性子被曝を最大にするために、ジルコニウムまたはアルミニウムなどの小さい熱中性子吸収および散乱断面積を有する材料で製造されてもよい。例えば、例示の実施形態のターゲットプレート100が、幅広いエネルギー分布を有する集合した中性子束に曝される場合、照射ターゲット150が特定のエネルギーの中性子束に曝されないことを確実にするために、スペース要素105は、特定のエネルギーの中性子に対して大きい吸収断面積を有するパラフィンなどの材料で製造されてもよい。
【0027】
例示の実施形態のターゲットプレート100、およびターゲットプレート100が曝されることになる知られた放射プロファイルの上記特色は、その中で使用する照射ターゲット150を精密に照射することを一義的に可能にすることができる。例えば、照射束の種類およびプロファイル、照射ターゲット150の形状、大きさ、および吸収断面積、ならびに例示の実施形態のターゲットプレート100、その搭載ポジション101、およびその中のターゲットスペース要素105の大きさ、形状、位置、および吸収断面積を知っていれば、非常に精密にターゲット150を位置決めし、ターゲット150に放射線を照射して所望の同位体および/または放射性同位体を生成することができる。同様に、当業者は、所望の同位体および/または放射性同位体を生成するために、例示の実施形態において照射ターゲットの種類、形状、大きさ、位置、吸収断面積などを含むこれらパラメータのいずれかを変えることができる。
【0028】
図3は、運転中の原子炉炉心内で見られるような中性子束内にターゲットプレート100が配置されるとき、外側搭載ポジション101がより高いレベルの放射線に直接曝されることになるターゲットプレート100についての例示の構成を示す。各外側位置101には、より多くの照射ターゲット150が配置されてもよく、それによって外側搭載ポジション101における照射ターゲット150の間の放射能がより等しくなる。照射ターゲット150は、各内側搭載ポジション101では、これら照射ターゲット150が中性子束からより遠くなることを相殺するためにより少なく配置されてもよく、それによって内側搭載ポジション101における照射ターゲット150が、外側搭載ポジション101におけるターゲット150に匹敵する放射能レベルを得ることを可能にする。しかし、図3の例示の構成は、照射に従って各照射ターゲット150の結果として生じる放射能を増減するようにいくつかのやり方で変更されてもよいことが、上述のことを考慮すると理解されよう。例えば、特定の放射線場に対してより小さい捕獲断面積を有する材料で形成される照射ターゲット150が、その放射線場により近いところとなる搭載ポジション101に配置されてもよく、その一方で、より大きい断面積を有する材料の照射ターゲット150が、その放射線場からより遠くに離れたところで例示の実施形態のターゲットプレート100に配置されてもよい。
【0029】
図4は、上記の例示の実施形態のターゲットプレート100と共に使用可能である例示の実施形態のターゲットプレートホルダ200の説明図である。図4に示すように、例示の実施形態のターゲットプレートホルダ200は、放射線場内に挿入可能である本体201を含むことができる。本体201は、硬質または軟質であり得る。本体201は、例えば、軽水炉の計装管、核燃料棒、粒子加速器のアクセス管(access tube)等を含めて、放射線場が存在し得る領域に合うように成形され、および/または大きさを合わせて作製することができる。同様に、複数の例示の実施形態のターゲットプレートホルダ200が、共に挿入および/または配置されてもよく、本体201は、例えば、原子炉内でよく見られる4インチの穴に複数挿入されることを可能にするように大きさを合わせて作製され、成形されてもよい。本体201は、ホルダ200をスネークケーブルなどの延長部または挿入装置に取り付けることを可能にし得る1つまたは複数の接続部202をさらに備えてもよい。
【0030】
本体201は、少なくとも1つの例示の実施形態のターゲットプレート100を収容する。例えば、本体201は、ターゲットプレート100を取り付けて保持できるシャフトを備えてもよい。本体201およびその部分は、正方形、円形、三角形などの断面を有するターゲットプレート100の可能な様々な形状のいずれかに適合するように大きさを合わせて作製され、成形されてもよい。図5に示すように、1つまたは複数のスペーサプレート203は、ターゲットプレート100を本体201内にまたは本体201に隣接させて配置することができる。スペーサプレート203は、照射ターゲット150の精密な被曝を内部で実現するために、例示の実施形態のターゲットプレートホルダ200内の精確な位置でターゲットプレート100を仕切り、位置決めすることができる。スペーサプレート203は、ターゲットプレート100同士の間で所望の程度の仕切りになる厚さを有し得る。例えば、例示の実施形態のターゲットプレート100が、それを貫通する中性子束をかなり吸収するように製造および構成される場合、内部の照射ターゲット150をより均一に照射することを実現するようにプレートによる互いの照射に対する影響が最小であることを確実にするために、より厚いスペーサプレート203によってターゲットプレートホルダ200内のターゲットプレート100同士を区切ることができる。代替として、より多くのスペーサプレート203が、より厚いスペーサプレート203と同じ間隔および/または被曝を実現するようにより頻繁に配置されてもよい。スペーサプレート203は、ターゲットプレートの所望の位置決めを実現するように成形され、大きさを合わせて作製することができる。スペーサプレート203は、例示の実施形態のターゲットプレートホルダ200内のターゲットプレート100の位置決めに基づいて長方形、三角形、環状等などの任意の形状であってもよい。
【0031】
スペーサプレート203が、本体201上のスペーサプレート203に連続して積み重ねた例示の実施形態のターゲットプレート100内で照射ターゲット150の固着をさらに行ってもよい。スペーサプレート203は、色付けされ、テクスチャ付けされ、および/またはその物理的特性および/または隣接して配置したターゲットプレート100内の照射ターゲット150の識別情報を示す他のしるしを有することもできる。
【0032】
スペーサプレート203および本体201は、望ましい放射線吸収プロファイルを有する材料で製造することができる。例えば、スペーサプレート203および本体201は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン合金等などの材料で製造することで熱エネルギー中性子に対して小さい断面積(例えば、約5バーン以下)を有することができる。同様に、いくつかのスペーサプレート203および/または本体201は、熱中性子束内で銀、金、ボロンをドープした材料、バリウム合金等などの特定の放射線場に対してより大きい断面積を有する材料で製造されてもよい。スペーサプレート203は、それが放射線場に及ぼす影響に基づいて諸条件に配慮して本体201に配置することができる。例えば、ターゲットプレート100の両側に配置した大きい断面積(例えば、5バーン超)のスペーサプレート203は、ターゲットプレート100内の照射ターゲット150が側面から照射されることを低減または無くすことができ、所望の放射能レベルの同位体をそこから生成することを可能にする。同様に、環状スペーサプレート203により、側面からターゲットプレート100の最大照射を行うことができる。
【0033】
例示の実施形態のターゲットプレートホルダ200およびスペーサプレート203およびその中のターゲットプレート100、ならびにターゲットプレートホルダ200が曝されることになる知られた放射プロファイルの上記特色は、その中で使用する照射ターゲット150を精密に照射すること一義的に可能にすることができる。例えば、照射束の種類およびプロファイル、照射ターゲット150の形状、大きさ、および吸収断面積、放射線束内での照射ターゲット150の精確な位置決め、例示の実施形態のターゲットプレート100およびその中のスペース要素105の大きさ、形状、位置、および吸収断面積、ターゲットプレートホルダ200内のターゲットプレート100およびスペーサプレート203の位置、プレートホルダ200およびスペーサプレート203の大きさ、形状、および吸収断面積を知っていれば、とても精密にターゲット150に放射線を照射して所望の同位体および/または放射性同位体を生成することができる。同様に、当業者は、所望の同位体および/または放射性同位体を生成するために、例示の実施形態におけるこれらパラメータのいずれかを変えることができる。
【0034】
図5は、例示の実施形態のターゲットプレート100および/またはターゲットプレートホルダ200を使用する例示の方法の流れ図である。図5に示すように、S110において、使用者は、例示の方法で生成される所望の同位体/放射性同位体、および生成される量を決定する。所望の同位体およびその量は、例えば、利用できる照射ターゲット、所望の産業上の用途、および/または利用できる放射線場などの任意のいくつかの要因に基づいて選ぶことができる。S110において、使用者は、娘生成物と親核種の間の対応関係に基づいて、照射ターゲット150の材料および量も選択する。
【0035】
S120において、使用者は、利用できる放射線場の特性を決定する。関連した特性には、放射線の種類、放射線のエネルギー、ならびに/または特定の空間内での種類およびエネルギーのバリエーションが含まれ得る。例えば、S120において、使用者は、原子炉を調査するための特定の出入り箇所(access point)で中性子束のレベルおよび変動を決定してもよい。代替として、S120において、使用者は、粒子加速器内のターゲットスタンドに交わるイオンのエネルギーおよび種類を決定してもよい。
【0036】
S130において、所望の量および/または所望の放射能の生成される同位体の生成に必要な照射量を実現するために、次いで使用者は、上で共に決定されている選択した照射ターゲット150の物理的特性および放射線場の特性に基づいて、(1つまたは複数の)ターゲットプレート100、(1つまたは複数の)照射ターゲット150、(1つまたは複数の)ターゲットスペース要素105、(1つまたは複数の)ターゲットプレートホルダ200、および/または(1つまたは複数の)スペースプレート203を構成する。そのような構成は、ターゲットプレート100内の搭載ポジション101の位置を決定し、ターゲットスペース要素105を用いて搭載ポジション101でターゲットプレート100内の照射ターゲット150を配置および位置決めし、スペースプレート203を用いてターゲットプレートホルダ200内のターゲットプレート100を位置決めして、放射線場内で各照射ターゲット150を精確に位置決めすることを実現することを含み得る。加えて、放射線場内に配置した照射ターゲット150に対する所望の量の照射を実現するために、そのような構成は、放射線場に関連している放射スペクトルに対して知られた吸収断面積を有する材料を選択することを含み得る。例えば、所望の放射能は、いくつかの照射ターゲット150から生成されるいくつかの同位体の間で十分に等しい放射能であり得る。S130では、放射線場内で例示の実施形態の装置に配置した照射ターゲット150に対して所望の大きさの照射を実現するために、使用者は、構成、放射線場の特性、および照射ターゲット150の特性に基づいて被曝時間を計算することもできる。
【0037】
S140において、次いで使用者は、構成した照射ターゲット150をS130において構成した例示の実施形態の装置に配置し、所望の量および/または所望の放射能の所望の同位体および/または放射性同位体を生成するようにそれらを決定した放射線場の中に配置することができる。代替として、S140において、使用者は、構成した例示の実施形態の装置を別のものに加えるまたは別の方法で与えて、照射ターゲット150を挿入し、決定した放射線場内の照射ターゲット150に放射線を照射してもよい。
【0038】
このように例示の実施形態および方法を説明したが、当業者には、例示の実施形態は、日常的な実験を通じて、さらなる発明的活動をすることなく変更できることが理解されよう。例えば、様々な例示の実施形態のプレート、ホルダ、およびスペーサは、所望の同位体を生成する例示の方法と共に使用されるが、それぞれの例示の実施形態は、別個に用いられてもよい。同様に、例えば、円筒形の例示の実施形態を示したが、他の装置の種類、形状および構成が、例示の実施形態および方法に用いられてもよい。変形例は、例示的な実施形態の精神および範囲から逸脱するとみなされるべきではなく、当業者に自明であるようなそのような修正形態の全ては、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとされる。
【符号の説明】
【0039】
100 ターゲットプレート
101 搭載ポジション
102 穴
150 照射ターゲット
105 スペース要素
200 ターゲットプレートホルダ
201 本体
202 接続部
203 スペーサプレート
S110 所望の生成物の決定
S120 放射線場の特性の決定
S130 ターゲットの構成
S140 ターゲットへの放射線の照射

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射ターゲット(150)および前記照射ターゲット(150)から生成される娘生成物を決定するステップ(S110)と、
前記照射ターゲット(150)が曝されることになる放射線場の物理的特性を決定するステップ(S120)と、
前記放射線場内で照射ターゲットプレート(100)およびターゲットプレートホルダ(200)に前記照射ターゲット(150)が搭載されるときに前記娘生成物を生成するように、前記照射ターゲット、前記照射ターゲットプレート(100)、および前記ターゲットプレートホルダ(200)を構成するステップ(S130)と
を含む照射ターゲット位置決めシステムを用意する方法。
【請求項2】
前記照射ターゲット(150)を前記照射ターゲットプレート(100)および前記ターゲットプレートホルダ(200)の中に搭載するステップと、
前記娘生成物を生成するように前記放射線場内で前記照射ターゲットプレート(100)および前記ターゲットプレートホルダ(200)に搭載した前記照射ターゲット(150)に放射線を照射するステップ(S140)と
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記放射線場が、軽水炉内で生成される熱中性子を含む中性子束である、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記構成するステップ(S130)が、
前記照射ターゲット(150)の形状、大きさ、および知られた吸収断面積、
前記照射ターゲットプレート(100)および前記ターゲットプレートホルダ(200)によって保持される前記放射線場内の前記照射ターゲット(150)の定位置、ならびに
前記放射線場に対して知られた吸収断面積を有する前記照射ターゲットプレート(100)および前記プレートホルダ(200)の材料
のうちの少なくとも1つを与えるステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記放射線場の前記物理的特性が、放射線の種類、および位置に関する放射線のエネルギー分布のうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記照射ターゲット(150)が、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、エルビウム(Er)、ゲルマニウム(Ge)、金(Au)、ホルミウム(Ho)、イリジウム(Ir)、ルテチウム(Lu)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、サマリウム(Sm)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびイットリウム(Y)のうちの少なくとも1つを含む材料から製造される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記構成するステップ(S130)が、
前記照射ターゲット(150)のために前記ターゲットプレート(100)内に少なくとも1つの搭載ポジション(101)を与えるステップと、
前記照射ターゲット(150)を前記ターゲットプレート(100)内に保持するように構成される穴(102)を、各搭載ポジション(101)で前記ターゲットプレート(100)内に定めるステップと、
前記搭載ポジション(101)内の定位置で前記照射ターゲット(150)を保持するように、少なくとも1つのターゲットスペース要素(105)を前記穴(102)内に配置するステップと
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記構成するステップ(S130)が、前記放射線場内の定位置に前記ターゲットプレート(100)および少なくとも1つの搭載ポジション(101)を保持するように、少なくとも1つのスペーサプレート(203)を前記ターゲットプレートホルダ(200)内に配置するステップをさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
照射ターゲット(150)の位置決めシステムであって、
複数の穴(102)を定めるターゲットプレート(100)と、
前記複数の穴(102)内に保持される少なくとも1つの照射ターゲット(150)と、
前記少なくとも1つの照射ターゲット(150)を前記複数の穴(102)内に位置決めする少なくとも1つのターゲットスペース要素(105)と、
前記ターゲットプレート(100)を保持するターゲットプレートホルダ(200)と、
前記ターゲットプレート(100)と共に、前記ターゲットプレートホルダ(200)によって保持される少なくとも1つのスペーサプレート(203)とを備え、前記ターゲットプレート(100)、前記少なくとも1つのターゲットスペース要素(105)、前記ターゲットプレートホルダ(200)、および前記少なくとも1つのスペーサプレート(203)が、放射線場内の定位置で前記少なくとも1つの照射ターゲット(150)を共に保持するように構成される、システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの照射ターゲット(150)が、複数の照射ターゲット(150)であり、前記ターゲットプレート(100)、前記少なくとも1つのターゲットスペース要素(105)、前記ターゲットプレートホルダ(200)、および前記少なくとも1つのスペーサプレート(203)が、放射線場内の定位置で前記複数の照射ターゲットの各照射ターゲット(150)を保持するように共に構成され、各照射ターゲット(150)の前記定位置が、前記放射線場へのほぼ等しい量の被曝を有する、請求項10記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−185927(P2011−185927A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−44795(P2011−44795)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC