説明

照射線によって人間の皮膚を処置するための装置

【課題】本発明は、照射線によって人間の皮膚を処置するための装置1に関する。
【解決手段】本装置は、照射線出口開口13を備えたハウジング3を有する。前記照射線源によって発生させられる照射線は、前記照射線源から前記照射線出口開口の方へ、所定の透過スペクトルを持つ照射線フィルタを有する照射線経路15を介して伝播する。前記照射線フィルタは、前記照射線経路15に沿って伝播する前記照射線が反射される反射面23を有する。前記反射面は、前記所定の透過スペクトルに実質的にマッチする反射スペクトルを当該反射面に与えるコーティングを持つ。反射面が最適に且つ均一に冷却されるため、照射線フィルタによる照射線の一部の吸収の結果として発生した熱が、前記装置1の冷却システム25に、効果的に伝達される。実施例において、人間の皮膚から毛を除去するための前記装置1は脱毛器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射線(radiation)によって人間の皮膚を処置するための装置であって、当該装置は、照射線出口開口を備えたハウジング、前記ハウジングに収容される照射線源及び前記照射線源と前記照射線出口開口との間の照射線経路を有し、前記照射線経路は所定の透過スペクトルを持つ照射線フィルタを有する、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭段落において述べられた種類の人間の皮膚を処置するための装置は、米国特許第6,280,438号から知られている。この既知の装置は、比較的高いエネルギー密度を有する光パルスによって人間の皮膚から毛を除去するのに用いられる。照射線源は、楕円リフレクタの焦点において構成される、比較的広いスペクトルを有するパルス光を発生させるガス充填されたリニアフラッシュランプである。照射線フィルタは、照射線経路中で該放射経路の主方向に直角に構成されるとともに照射線出口開口をカバーする、プレート形フィルタであるので、フラッシュランプによって発生させられた光はフィルタを通過する。照射線フィルタの透過スペクトルは、該フィルタが、発生させられた光のスペクトルのうち、毛の除去に効果的であり皮膚に非所望の副作用を及ぼさない部分を透過して、発生させられた光のスペクトルのうち、皮膚に非所望の副作用を及ぼす部分を吸収するようなものである。このようにして、毛が効果的に除去される一方で、皮膚への副作用(例えば火傷)は可能な限り防止される。
【0003】
発生する光のスペクトルの前記部分の、放射線フィルタによる吸収の結果、フィルタは加熱される。発生する光パルスは比較的高エネルギー密度を有するので、比較的大きいエネルギー量が照射線フィルタによって吸収される。人間の皮膚を処置するための既知の装置の欠点は、フィルタの円周部分しか装置のハウジングとの直接熱的接触をしないので、照射線フィルタが限られた程度までしか冷却されない、ということである。その結果、動作中、フィルタの過剰な熱変形が起こり、これは、フィルタの永久変形又は破損すら生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冒頭段落で述べられたような人間の皮膚を処置するための装置であって、より良く冷却されることができる照射線フィルタを持つため、フィルタの永久変形又は破損の危険性が制限されるような、装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明による人間の皮膚を処置するための装置は、前記照射線フィルタが反射面を有し、前記照射線経路に沿って伝播する前記照射線は前記反射面を介して反射し、前記反射面は、前記所定の透過スペクトルに実質的にマッチする反射スペクトルを当該反射面に与えるコーティングを持つことを特徴とする。本発明による人間の皮膚を処置するための装置において、前記照射線源によって発生する前記照射線は、前記反射面の前記所定の反射特性の結果として、フィルタリングされる。発生させられる照射線のスペクトルのうち、人間の皮膚の意図された処置に効果的であり、皮膚に非所望の副作用を及ぼさない部分は、前記反射面によって反射される一方で、発生させられる照射線のスペクトルのうち、皮膚に非所望の副作用を及ぼす部分は、前記反射面によって吸収される。反射面は、照射線経路に隣接して構成され、照射線経路を、照射線の少なくともかなりの部分が、照射線源から照射線出口開口に向かって伝播する間、1回又は好適には2回以上反射面によって反射されるように囲む。反射面は、照射線に対して透明である必要はない。その結果、反射面の全ての部分が、装置の冷却システムと直接熱接触されることができるので、装置の反射面と冷却システムとの間で、改善された均一な熱接触が達成される。このようにして、反射面の熱変形は限定的であり、反射面の局所的な過剰な熱変形は防止さえされ、このため、照射線フィルタの永久的な変形及び破損は防止される。
【0006】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置の特定の実施例は、前記照射線フィルタが、前記照射線経路を囲み前記反射面が設けられる内側壁を有する、チャネルを有することを特徴とする。この実施例において、照射線は、照射線源から照射線出口開口に向かって前記チャネルを通じて伝播させる。反射面が前記チャネルの内側壁に設けられるので、チャネルを通じて伝播する照射線は反射面によって反射される。このように、照射線フィルタは非常に効果的であり、フィルタは実用的な構造を有する。
【0007】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置の他の実施例は、前記チャネルが前記照射線源と前記照射線出口開口との間に位置する曲がり(bend)を有することを特徴とする。チャネル中の前記曲がりの存在の結果、チャネルを通じて伝播する照射線の全部分が、反射面が設けられたチャネルの内壁に当たるようにされる。その結果、チャネルを通じて伝播する照射線の全部分は、1回又は2回以上反射されるので、フィルタの効果は更に改善される。
【0008】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置の特定の実施例は、前記反射面が、第1の反射スペクトルを第1の部分に与える第1のコーティング材料を持つ当該第1の部分と、第2の反射スペクトルを第2の部分に与える第2のコーティング材料を持つ当該第2の部分とを有し、前記第1の及び前記第2の反射スペクトルは、合わせて、前記所定の透過スペクトルにマッチすることを特徴とする。人間の皮膚からの毛の除去等の、人間の皮膚のほとんどの処理について、前記照射線フィルタの前記所定の透過スペクトルは、前記照射線のうち第1の制限値より短い波長を持つ第1の部分は前記フィルタによって吸収され、前記照射線のうち前記第1の制限値と前記第1の制限値より高い第2の制限値との間の波長を持つ第2の部分は前記フィルタによって透過され、前記照射線のうち前記第2の制限値より長い波長を持つ第3の部分は前記フィルタによって吸収されるようなものであるべきである。この特定の実施例において、透過スペクトルのこのようなプロファイルは、前記第1の反射スペクトルが、前記反射面の前記第1の部分は、前記第1の制限値より短い波長を有する照射線をほぼ完全に吸収し、前記第1の制限値より長い波長を有する照射線をほぼ完全に反射するようなものであり、前記第2の反射スペクトルが、前記反射面の前記第2の部分は、前記第2の制限値より短い波長を持つ照射線をほぼ完全に反射し、前記第2の制限値より長い波長を持つ照射線をほぼ完全に吸収するようなものであれば、実際的な態様で達成される。
【0009】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置の特定の実施例は、前記反射面が、冷却システムと熱接触する壁に設けられることを特徴とする。均一な熱接触は、前記反射面と前記壁との間にある。冷却システムは、均一な熱接触が更に前記壁と前記冷却システムとの間にも存在するように設計されることができる。このような態様で、前記反射面を均一に冷却するために、単純で実際的な構造が達成される。
【0010】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置の他の実施例は、前記冷却システムが、冷却流体で満たされた回路を有し、前記壁が前記回路と熱接触することを特徴とする。前記回路の使用の結果、壁及びその上に設けられた反射面は、均一に冷却される。
【0011】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置の他の実施例は、前記冷却システムが、ガス流を発生させるためのファン及び前記ガス流を前記壁に沿ってガイドするためのガイドを有することを特徴とする。前記ファン及び前記ガイドの使用の結果、壁及びその上に設けられた反射面は、均一に冷却される。
【0012】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置の特定の実施例は、該装置が、前記照射線源がフラッシュランプである、人間の皮膚から毛を除去するための装置であることを特徴とする。フラッシュランプの光は、紫外線から近赤外線の範囲に亘る比較的広いスペクトルを有する。このスペクトルのうち、人間の皮膚からの毛の除去に効果的である部分は、約600nm〜900nmに位置する。このスペクトルのうち、約600nmより短く約900nmより長い部分は、毛の除去のために効果的でなく、更に、火傷又はDNA変異等の皮膚への非所望の副作用を生じさせる。毛を除去するために必要な光のエネルギー密度は比較的高いので、照射線フィルタは大量のエネルギーを吸収しなければならない。フラッシュランプの光のこれらの特性を考慮すると、本発明は、特に、フラッシュランプによって毛を除去するための装置における使用に適切である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による人間の皮膚を処置するための装置の第1の実施例を図式的に示す。
【図2】本発明による人間の皮膚を処置するための装置の第2の実施例を図式的に示す。
【図3】本発明による人間の皮膚を処置するための装置の第3の実施例を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による照射線によって人間の皮膚を処置するための装置の実施例は、以降で図を参照して説明される。
【0015】
人間の皮膚を処置するための装置1の第1の実施例は、人間の皮膚から毛を除去するための装置、特に、比較的長い時間又は永久に毛を除去する脱毛器である。図1は、本発明の原理を理解するのに必要な装置1の主要部のみを図式的に示す。装置1は、握り5を有するハウジング3及び前記握り5に取り付けられるヘッド7を有する。ヘッド7は照射線源9を収容し、これは、この特定の実施例においてはガス充填されたリニアフラッシュランプである。ヘッド7のフロント部分11において、照射線源9によって動作中に発生させられた光のために照射線出口開口13が設けられる。ヘッド7は、更に、照射線源9と照射線出口開口13との間に延在する照射線経路15を収容する。動作中、照射線源9は、比較的高いエネルギー密度を持つ光パルスを発生させ、この光パルスは、照射線源9から照射線出口開口13に向けて伝播し、照射線出口開口の前に存在する人間の皮膚を照射する。光の一部は毛にある毛根及び毛包によって吸収され、これらは、光の比較的高いエネルギー密度のため、かなり加熱される。その結果、毛根及び毛包は損傷され又は破壊さえされ、毛の成長は、かなり長い間又は永久に防止される。
【0016】
図1に示される実施例において、照射線経路は、長方形又は正方形の断面を持ち照射線源9と照射線出口開口13との間に位置する曲がり19を持つチャネル17によって囲まれる。チャネル17の内壁21は、反射面23を備える。曲がり19の存在の結果、照射線源9から照射線出口開口13に向かって伝播する光の全部分は、内壁21に当てられ、該内壁21に設けられた反射面23によって少なくとも1回反射されるようにされる。反射面23は、該反射面23に所定の反射スペクトルを与えるコーティングを持つ。図1に示される実施例において、前記コーティングは、JML Optical Industriesによって販売されJML Direct Opticsのパンフレット第三版のページG-18に開示される、高度に反射する誘電多層ミラーコーティング(Suffix:503)である。この特定のコーティングは、約600nmより短い波長及び約900nmより長い波長において、比較的低い反射係数を持つ。約680nm〜850nmの波長において、この特定のコーティングは、約100%の反射係数を持つ。照射線源9は、紫外線から近赤外線までの範囲に亘る比較的広いスペクトルを持つので、反射面23を有するチャネル17は、照射線経路15を規定して囲むだけでなく、所定の透過スペクトルを持つ照射線経路15の照射線フィルタとしても効果的に用いられ、ここで、反射面23の反射スペクトルは前記所定の透過スペクトルに実質的にマッチする。従って、図1の実施例において、照射線フィルタは、照射線源9からの光の約680nm〜850nmの波長を持つ部分を実質的に完全に透過する。波長のこれらの部分は、肌への受け入れ難い副作用を引き起こすことなく人間の肌から毛を除去するのに特に効果的である。照射線フィルタは、約600nmより低く約900nmより高い波長を持つ照射線源9から光の主要な部分を吸収する。波長のこれらの部分は、毛の除去には効果的でなく、皮膚に、所望されない副作用、例えば熱傷又はDNA変異さえも生じさせる。このようにして、毛は照射線源9からの光によって効果的に除去されるが、人間の皮膚への光の非所望の副作用は、照射線フィルタの存在によって可能な限り防止される。
【0017】
照射線源9からの光のスペクトルの、反射面23によって反射されない部分は、黒いガラス等の光吸収材料から作られた内壁21によって吸収される。その結果、内壁21は加熱される。照射線源9によって発生される光パルスは比較的高いエネルギー密度を持つので、比較的大量のエネルギーが内壁21によって吸収される。発生する光のための照射線フィルタとして反射面23を使用することの利点は、反射面23が、照射線経路15に隣接した反射面23の位置については照射線に対して透明である必要がないということである。その結果、反射面23の全ての部分は、装置1の冷却システム25と直接の熱接触をさせられることができる。図1に示される実施例において、冷却システム25は、冷却流体で満たされた回路27を有する。回路27は、チャネル23の内壁21と該内壁21に平行に構成された追加の壁29とによって囲まれる。装置1は、更に、冷却流体を回路27を通じて内壁21に沿って注入するための図1に示されないポンプ手段を有する。このように、内壁21の全部分は、冷却システム25の回路27と直接熱的に接触する。その結果、内壁21と冷却システム25との間に均一な熱接触が提供される。このように内壁21が冷却システム25によって均一に冷却されるので、反射面23の熱変形は限定的であり、反射面23の局所的な過剰な熱変形は防止さえされ、このため、照射線フィルタの永久的な変形及び損傷又は破損は防止される。
【0018】
照射線経路15に対する反射面23の位置は、照射線源9によって発生された光の少なくとも主要な部分が反射面23によって1回反射されるようなものであるべきことに注意されたい。好適には、発生した光の全部分が反射面23によって反射され、好適には、1回より多く反射される。オプティクスの分野の当業者は、チャネル17及び反射面23の形状及び寸法を、この条件が満たされるような態様で、直接的に決定することができることは理解されよう。曲がり19の存在は、反射面23によって反射される光の量を増加させるので、照射線フィルタの効果が大幅に向上することに注意されたい。しかし、この曲がり19の存在は必須ではなく、十分な反射特性は、例えば、その長さと幅との間に比較的大きな比率を持つまっすぐなチャネルによっても得られることができる。更に、本発明は、照射線フィルタが、1つより多いチャネル、即ち、その内壁に反射面を備えたチャネルマトリックス等の複数のチャネルを有する実施例も含む。更に、装置1の照射線フィルタの効果は、チャネル17の使用の結果増加し、このような態様で、照射線フィルタは実際的な構造を持つことにも注意されたい。しかし、チャネル17又は一般に光導波路の使用は必須でないことに注意されたい。反射面は、例えば、単一壁構造又は一連の隣接した若しくは連続した壁構造であって、照射線経路に対して、照射線源9によって発生した光のかなりの部分が、放射出口開口を通過する前に反射面によって反射されるような位置にある壁構造上に設けられてよい。
【0019】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置31の第2の実施例も、人間の肌から毛を除去する装置、特に、比較的長い間又は永久的に毛を除去するための脱毛器である。図2は、本発明の原理を理解するのに必要な装置31の主要部のみを図式的に示す。装置31の部分であって、図1に示される装置1の部分に対応し、上記で説明されたものは、図2において対応する参照番号によって示され、詳細には説明されない。以降では、装置31と装置1との間の主要な違いのみが簡単に議論される。
【0020】
装置31は、該装置31が、装置1の冷却システムとは異なる冷却システム33を有するという点で主に、装置1と異なる。冷却システム33は、図2には示されない電気モータによって駆動されることができるファン35を有する。チャネル17'は、反射面23'を持つ内壁21'が設けられる、光吸収材料から作られたシート37によって形成される。動作中、ファン35は、空気流39を発生し、これは、シート37とヘッド7'の内壁45との間に設けられるガイドチャネル43によって、シート37の外面41の主要部に沿ってガイドされる。空気流39がこのようにシート37の外面41の主要部に沿って存在するので、この第2の実施例においても、内壁21'の実質的に均一な冷却が得られる。冷却システム33は、比較的単純で実用的な構造を備えている。
【0021】
本発明による人間の皮膚を処置するための装置51の第3の実施例は、人間の皮膚から毛を除去するための装置、特に、比較的長い時間又は永久的に毛を除去するための脱毛器である。図3は、本発明の原理を理解するのに必要な装置51の主要部のみを図式的に示す。装置51の部分であって、図1に示される装置1の部分に対応し、上記で説明されたものは、図3において対応する参照番号によって示され、詳細には説明されない。以降では、装置51と装置1との間の主要な違いのみが簡単に議論される。
【0022】
装置51は、主に、装置51のチャネル17''の形状及び寸法と、照射線源9''の位置とが、照射線源9''によって発生される光の全部分がチャネル17''の内壁によって少なくとも2回反射される、即ち、チャネル17''の上側内壁53によって少なくとも1回、そして、チャネル17''の下側内壁55によって少なくとも1回反射される、という点で主に装置1とは異なる。チャネル17''のこの反射特性は、主に、チャネル17''の長さと幅との間の比較的大きい比率によって達成されるが、オプティクスの分野の当業者は、直接的な態様で、チャネル17''の主要な寸法のより正確な値を決定することが可能であり、これにより、前記反射特性が達成されることができることは理解されるであろう。前記上側内壁53は、チャネル17''の反射面の第1の部分57を有する一方で、前記下側内壁55は、前記反射面の第2の部分59を有する。反射面の前記第1の部分57及び前記第2の部分59は、それぞれ、第1のコーティング材料及び第2のコーティング材料を設けられ、前記第1のコーティング材料は、前記第1の部分57に、第1の反射スペクトルを与え、前記第2のコーティング材料は、前記第2の部分59に、第2の反射スペクトルを提供する。図3に示される実施例において、前記第1のコーティング材料は、Linos Photonics catalog, 2001, section thin film coatings, page H13, item FKP-5において特定されたコーティング材料である。このコーティング材料は、約600nmのいわゆるエッジ波長を持つので、第1のコーティング材料は、約600nmより短い波長については比較的低い反射係数を持ち、約600nmより長い波長については比較的高い反射係数を持つ。図3に示される実施例において、前記第2のコーティング材料は、Linos Photonics catalog, 2001, section thin film coatings, page H14, item FLP-5において特定されるコーティング材料である。このコーティング材料は、約900nmのエッジ波長を持つので、第2のコーティング材料は、約900nmより低い波長については比較的低い反射係数を持ち、約900nmより高い波長については比較的高い反射係数を持つ。照射線源9によって発生される光の全部分が上側内壁53によって少なくとも1回、下側内壁55によって少なくとも1回反射されるので、約600nmより短い波長を持つ光の主要部分は反射面の前記第1の部分57によって吸収され、約900nmより長い波長を持つ光の主要部分は反射面の前記第2の部分59によって吸収され、約600nm〜900nmの波長を持つ光の主要部分は反射面の前記第1の及び前記第2の部分57、59の両方によって反射されるので、結果的に、装置51の照射線フィルタによって透過される。従って、反射面の前記第1の及び前記第2の部分57、59のそれぞれの前記第1の及び前記第2の反射スペクトルは、合わせて、装置1の照射線フィルタの透過スペクトルにおおよそ対応する装置51の照射線フィルタの所定の透過スペクトルにマッチする。
【0023】
以上で説明された図1、2、3に示される本発明による人間の皮膚を処置する装置1、31、51の実施例は、人間の肌から毛を除去するための装置であり、特に、毛を比較的長い時間又は永久に除去するための脱毛器である。しかし、本発明が、照射線によって人間の皮膚を処置するための他の種類の装置も含むことに注意されたい。このような装置の例は、皮膚にある母斑、例えば脈母斑(naevus vinosus)及び色素性母斑(naevus pigmentosus)、乾癬、又は皮膚にある血管の異常、例えば拡張蛇行静脈の照射線又は照射パルスによる医療又は美容処置のための装置である。人間の皮膚のこのような処置の分野の当業者は、どの種類の照射が、特に、どの波長の照射線が、特定の種類の処置にとって最も効果的であり、どの波長が皮膚の残りの部分にとって効果的でなく危険であるかを知っている又は確かめることができることは理解されるであろう。この情報に基づいて、オプティクスの当業者は、直接的に、照射線フィルタの所定の透過スペクトルを定め、前記所定の透過スペクトルにマッチする反射スペクトルを与える適当なコーティング又はコーティングの組み合わせを見つけることが可能である。
【0024】
更に、明細書及び請求の範囲において、用語「反射面」は、その正しい意味で読まれるべきであることに注意されたい。当業者は、反射面によって反射された光の部分について言及されたら、光の前記部分を実際に反射するのはコーティングであることを理解するであろう。当業者は、反射面によって吸収される光の部分について言及されたら、コーティングは光の前記部分を透過するのであり、光の前記部分は、実際には、コーティングが設けられた、例えば、壁、基板又は他の構造によって吸収されるということも、理解するであろう。本発明は、光の前記部分が冷却システムの冷却流体によって直接吸収される実施例もカバーする。このような実施例においては、例えば、コーティングは、冷却流体が流れる透明なガラス等の、光を透過する基板上に設けられる。
【0025】
図1、2及び3に示される実施例において、照射線経路15,15',15''は空気又はガスで満たされる。最後に、本発明は、照射線経路が液体で満たされる又は照射線経路が固体ですらある実施例も含むことに注意されたい。従って、例えば、照射線経路は、照射線が伝播するガラス体を有してもよく、ガラス体の表面には、照射線に対して所望の反射スペクトルを該ガラス体の表面に与えるコーティングが設けられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射線によって人間の皮膚を処置するための装置であって、当該装置は、照射線出口開口を備えたハウジング、発生されたスペクトルを持つ照射線を生成する、前記ハウジングに収容される照射線源、及び、前記照射線源と前記照射線出口開口との間の照射線経路を有し、前記照射線経路は、前記発生されたスペクトルのうちの前記皮膚に供給される部分を決定する所定の透過スペクトルを持つ照射線フィルタを有する、装置において、前記照射線フィルタは反射面を有し、前記照射線経路に沿って伝播する前記照射線は前記反射面を介して反射し、前記反射面は、前記所定の透過スペクトルに実質的にマッチする反射スペクトルを当該反射面に与えるコーティングを持ち、前記反射面は、冷却システムと熱接触する壁に設けられることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記照射線フィルタは、前記照射線経路を囲み前記反射面が設けられる内側壁を有する、チャネルを有することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記チャネルは前記照射線源と前記照射線出口開口との間に位置する曲がりを有することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記反射面は、第1の反射スペクトルを第1の部分に与える第1のコーティング材料を持つ当該第1の部分と、第2の反射スペクトルを第2の部分に与える第2のコーティング材料を持つ当該第2の部分とを有し、前記第1の及び前記第2の反射スペクトルは、合わせて、前記所定の透過スペクトルにマッチすることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記冷却システムは、冷却流体で満たされた回路を有し、前記壁は前記回路と熱接触することを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記冷却システムは、ガス流を発生させるためのファン及び前記ガス流を前記壁に沿ってガイドするためのガイドを有することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6に記載の装置において、該装置は、前記照射線源がフラッシュランプである、人間の皮膚から毛を除去するための装置であることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−50792(P2011−50792A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281572(P2010−281572)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【分割の表示】特願2004−554748(P2004−554748)の分割
【原出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】