説明

照明システム

【課題】無線通信の範囲を拡大することができる照明機器およびこれを用いた照明システムを提供する。
【解決手段】天井または壁に設置される複数の照明機器10を用いた照明システム1であって、照明機器10が、光源と、光源の点灯態様及びいずれかの照明機器10を指定する番地情報を含んだ点灯情報に基づいて光源を制御する第一の制御部と、自己に付与された番地情報を記憶し、第一の制御部の要求に応じて番地情報を第一の制御部に伝える番地記憶手段とを有する照明ユニット20と、照明ユニット20外に設置され、点灯情報を送受信する無線通信手段33とを有し、人の存在を検知する一又は複数の移動体検知手段45と、移動体検知手段45からの検知情報に基づいて点灯情報を決定する第二の制御部と、点灯情報を照明機器10へ送信する無線送信手段46を有する制御ユニット40とを備えた照明システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の天井または壁に設置された複数の照明機器を備えた照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の消費拡大に伴う環境問題・エネルギー枯渇問題の深刻化により、省エネルギーの重要性が高まっている。そこで、人体を検知した場合にのみ照明を点灯させ、そうでない場合には消灯又は減光することでエネルギーの消費を低減させる技術を複数の照明機器に用いた照明システムが提案されている。
【0003】
この様な照明システムとしては、複数の照明機器と、各照明機器と無線通信可能な制御機器とを備えた照明システムがある。各照明機器には、それぞれ固有の番地が付与されており、制御装置が番地情報を含んだ無線信号を送信することにより、各照明機器は、自身の番地に一致する制御情報を取り込み、この制御情報に基づいて照明機器の点灯状態を制御するものである。制御情報には、点灯・消灯・減光等の指示が含まれている。
【0004】
無線通信としては、赤外線通信を用いることができ、例えば、特許文献1に記載の照明機器は、赤外線信号を送信する赤外線送信器、および赤外線信号を受信する赤外線受信器を備えている。これにより照明機器は、近傍の照明機器から受信した情報に基づいて調光するとともに、さらに他の照明機器に情報を送信することができる。よって、この照明機器が複数集合した照明システムにおいては、制御情報が各照明機器を中継して次々と情報を伝達することが可能となる。
【0005】
しかしながら、上記文献1に記載された照明機器は、赤外線を床面に反射させて各照明機器間の通信を行うものである。よって、床面の素材により赤外線の反射光を十分に得られない場合には、十分な通信範囲を確保することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4232139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に着目して為された発明であり、無線通信における通信範囲が十分に確保された照明システムを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するための手段として、本発明の照明システムは、建物の天井または壁に設置される複数の照明機器を用いた照明システムであって、前記照明機器が、光源と、該光源の点灯態様及びいずれかの照明機器を指定する番地情報を含んだ点灯情報に基づいて該光源を制御する第一の制御部と、自己に付与された前記番地情報を記憶し、前記第一の制御部の要求に応じて該番地情報を該第一の制御部に伝える番地記憶手段とを有する照明ユニットと、前記照明ユニット外に設置され、前記点灯情報を送受信する無線通信手段とを有し、人の存在を検知する一又は複数の移動体検知手段と、前記移動体検知手段からの検知情報に基づいて前記点灯情報を決定する第二の制御部と、該点灯情報を前記照明機器へ送信する無線送信手段を有する制御ユニットとを備えたことを特徴とする。
【0009】
(2)また、本発明の照明システムは、前記照明機器の無線通信手段が、複数の赤外線送信手段と、一又は複数の赤外線受信手段であり、前記制御ユニットの無線送信手段が一又は複数の赤外線送信手段であることを特徴とする。
【0010】
(3)また、本発明の照明システムは、前記制御ユニットが、前記点灯情報を繰り返して送信し、繰り返し間隔を前記第二の制御部に指定する送信間隔設定手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)の照明システムによれば、照明機器の有する無線通信手段が照明ユニット外に取り付けられるため、無線媒体が、照明ユニットにより妨害されることを回避することができる。例えば赤外線通信において、赤外線が照明ユニットの透光度に影響されない。また、電波による無線通信において、照明ユニットの筺体が金属製であっても、電波の減衰を回避する。よって、広い通信範囲を確保することができる。また、移動体検知手段を複数備えた場合には、複数個所の検知情報に基づいて照明機器を制御することができる。例えば、集合住宅に照明システムを設置した場合において、各玄関先に移動体検知手段を設置することで、住人の出入りを検知して、照明機器を点灯することができる。また、屋内駐車場に照明システムを設置した場合にあっては、車および人の出入りを検知して、照明機器を点灯することができる。
【0012】
上記(2)の照明システムによれば、照明機器が複数の赤外線送信手段を有するため、多方向に点灯情報を送信することができる。よって、丁字状、十字状の通路においても、赤外線による通信を行うことができる。
【0013】
上記(3)の照明システムによれば、制御ユニットが、通信の信頼性を向上させるために繰り返して点灯情報を送信する場合に、繰り返し間隔を照明機器の設置台数に応じて調節することができる。よって、照明機器間での混信を防止することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の照明システムを示す概略図である。
【図2】本発明に用いられる照明機器を示す斜視図である。
【図3】本発明に用いられる照明機器のブロック図である。
【図4】本発明に用いられる通信ユニットを示す断面図である。
【図5】本発明に用いられる制御ユニットを示すブロック図である。
【図6】本発明に用いられる照明機器の状態遷移図である。
【図7】本発明に用いられる照明機器の制御を示すフローチャートである。
【図8】本発明に用いられる制御ユニットの制御を示すフローチャートである。
【図9】本発明の赤外線による通信情報の構成を示す図である。
【図10】本発明の赤外線通信の送受信の伝達方法を示した図である。
【図11】(a)本発明に用いられる複数の照明機器の配置図である。(b)本発明に用いられる複数の照明機器の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に従って、マンションの通路灯を例に、本発明の照明システムを説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の照明システム1は、複数の照明機器10と、制御ユニット40と、センサユニット50を備えている。
【0017】
図1および図2に示すように、本発明に用いられる照明機器10は、照明ユニット20と、無線通信手段33を有する通信ユニット30から構成されており、複数の照明機器10が、一定の間隔で、通路の天井に設置されている。照明機器10の設置位置は天井に限られず、壁に設置してもよい。
【0018】
照明ユニット20は、図2に示すように、本体部21と、本体部21に被せられる透光カバー22から構成されている。本発明において、本体部21および透光カバー22の形状は特に限定されない。また、透光カバー22の有無も問わない。また、照明ユニット20は、天井に埋め込むダウンライトであってもよい。図3に示すように、照明ユニット20には、光源23と、第一の制御部24と、番地記憶手段25が実装された基板が組み込まれている。
【0019】
光源23は、例えば、複数の発光ダイオードを用いることができる。しかし、光源23はこれに限られず、白熱電球、蛍光灯、ランプであってもよい。発光ダイオードの形状は、特に限定されず、砲弾型、表面実装型等を用いることができる。電気的に並列に接続された複数の発光ダイオードのアノードが電源に接続され、カソードが増幅回路を介して第一の制御部24と接続されている。本発明において、発光ダイオードの接続方法は並列に限られず、直列に接続しても良い。
【0020】
第一の制御部24は、無線通信手段33が受けた信号から点灯情報を取得して、点灯情報および番地情報に基づいて、光源23をPulse Width Modulation制御(以下、PWM制御)して点灯、消灯、調光するものである。また、点灯情報を他の照明機器10に伝達するために無線通信手段33を制御するものである。第一の制御部24としては、複数の入出力端子を有するマイクロコンピュータが使用される。ここで、点灯情報とは、照明機器10の動作状態、照明機器10の番地情報、光源23の明るさ、および点灯時間等を指示する情報である。点灯情報は、制御ユニット40または他の照明機器10から伝達される。また番地情報とは、各照明機器10に、個別に、付与された情報であり、照明機器10を区別するために用いられる。例えば、番地情報は、制御ユニット40の近傍の照明機器10から順に、1、2、3、...、と付与される。
【0021】
番地記憶手段25は、照明機器10に付与された番地情報を記憶するものである。番地記憶手段25として、例えば、Dual In-Line Package switch(以下、DIPスイッチ)が使用される。DIPスイッチ上のスライドスイッチ数は特に限定されず、照明機器10の設置台数に応じて決定される。DIPスイッチ上の各スライドスイッチの一端は電源に接続され、他端は第一の制御部24の入力端子に接続される。各スライドスイッチを設定して、照明機器10に固有の番地を付与する。番地記憶手段25はDIPスイッチに限定されず、第一の制御部24のメモリに番地情報を記憶させてもよい。
【0022】
無線通信手段33は、制御ユニット40または他の照明機器10から送信された無線信号による点灯情報を受信し、他の照明機器10に対して無線信号により点灯情報を送信するものである。無線信号として、代表的には、38kHzで変調された赤外線信号を用いることができる。赤外線受信手段32としては、38kHzで変調された赤外線を受光する赤外線受光モジュールを用いることができる。赤外線受光モジュールの出力端子は第一の制御部24の入力端子に接続されている。赤外線送信手段31としては、赤外線発光ダイオードが用いられ、制御手段24の出力端子に接続される。直線上に設置された複数の照明機器10間で赤外線の送受信を行うため、図4に示すように、赤外線発光ダイオードの発光部31aと赤外線受光モジュールの受光部32aは、対向することなく、逆向きに取り付けられている。これにより、一の照明機器10の赤外線発光ダイオードの発光部31aと、他の照明機器10の赤外線受信モジュールの受光部32aが対向することとなる。赤外線発光ダイオードおよび赤外線受光モジュールの配置態様はこれに限られず、例えば、曲がり角を有する通路上に複数の照明機器10が設置される場合には、曲がり角上に設置する照明機器10において、赤外線受光モジュールと赤外線発光ダイオードとが略90度の角度を成すように配置しても良い。赤外線送信手段31は一つに限られず、照射範囲を拡大するために複数個用いても良い。また、赤外線受信手段32も一つに限られず、受光範囲を拡大するために複数個用いても良い。無線通信は、赤外線通信に限られず、電波による無線通信であってもよい。したがって、無線通信手段33として、電波を放射・吸収するアンテナと、検知情報を変調・復調する無線通信モジュールを用いてもよい。
【0023】
通信ユニット30は、無線通信手段33を収納するものである。通信ユニット30は、例えば、箱形の筺体であり、本体部21の側面など、照明ユニット20の外側に螺子止めされている。通信ユニット30の取付位置は照明ユニット20の外側であればよく、例えば、天井面に取り付けてもよい。無線通信として上記赤外線通信を用いる場合には、通信ユニット30は、赤外線通信の通信範囲を拡大するため、透光性の高いプラスチック材が好ましい。また、通信ユニット30は、赤外線の通信範囲をさらに拡大するため、赤外線を出射する出射面34および赤外線を受光する入射面35に開口部を有してもよい。
【0024】
図5に示すように、制御ユニット40には、第二の制御部41と、照度測定手段42と、照度調節手段43と、点灯時間調節手段44と、第一の移動体検知手段45と、無線送信手段46が組み込まれている。制御ユニット40は、管理者が適宜設定し易い箇所に取り付けられる。
【0025】
第二の制御部41は、第一の移動体検知手段45および第二の移動体検知手段51の検知情報、及び照度調節手段43、点灯時間調節手段44、並びに照度測定手段42の値(以下、各センサの出力値)に基づいて、点灯情報を決定し、点灯情報を照明機器10に伝達するために無線送信手段46を制御するものである。第二の制御部41としては、例えば、複数の入出力端子を有するマイクロコンピュータが使用される。
【0026】
照度測定手段42は、制御ユニット40の周囲の明るさを測定するものであり、照度測定手段42の出力値に基づいて点灯情報の動作状態が決定される。照度測定手段42としては、例えば、フォトトランジスタが使用される。フォトトランジスタのコレクタは電源に接続され、エミッタは抵抗器を介してグランドに接地される。エミッタは、アナログ‐デジタル変換回路を介して第二の制御部41の入力端子と接続される。照度測定手段42は、フォトトランジスタに限られず、フォトダイオードであってもよい。
【0027】
照度調節手段43は、照明機器10の明るさを調節するために使用されるものであり、照度調節手段43の出力値に基づいてPWM制御のパルスデューティ比が決定される。照度調節手段43としては、例えば可変抵抗器が使用される。可変抵抗器の一の固定端子は電源に接続され、他の固定端子はグランドに接地される。可変端子は、アナログ‐デジタル変換回路を介して第二の制御部41の入力端子に接続される。
【0028】
点灯時間調節手段44は、照明機器10が通常の点灯状態から常夜灯状態へ切り換る時間(以下、点灯時間)を設定するために使用されるものである。点灯時間調節手段44としては、上記照度調節手段43と同様に、可変抵抗器が使用される。しかし、照度調節手段43および点灯時間調節手段44は可変抵抗器に限られず、ロータリエンコーダであってもよい。
【0029】
第一の移動体検知手段45は、例えば、人体が発する赤外線を検知して、その検知情報を出力する人感センサである。しかし、これに限られず超音波式の人感センサを用いてもよい。第一の移動体検知手段45の出力は、第二の制御部41の入力端子に接続される。
【0030】
無線送信手段46は、第二の制御部41から受けた点灯情報を無線信号により、近傍の照明機器10に送信するものである。無線信号としては、上記同様に赤外線を用いることができ、赤外線送信手段として、例えば、赤外線発光ダイオードが使用され、その発光部は、近傍の照明機器10に対して向けて取り付けられる。赤外線発光ダイオードは、アノードが電源に接続され、カソードが増幅回路を介して第二の制御部41と接続される。
【0031】
センサユニット50は、その付近の人体を検知して、検知情報を制御ユニット40の第二の制御部41へ伝達するものである。図1に示すように、センサユニット50は、各玄関ドア付近の壁面に設置され、各部屋の人の出入りを検知する。センサユニット50には、第二の移動体検知手段51が組み込まれている。図1の破線で示すように、第二の移動体検知手段51は、例えば人感センサであり、有線通信により検知情報を第二の制御部41へ伝達する。複数の第二の移動体検知手段51は、異なる第二の制御部41の入力端子に接続されている。通信手段は有線に限定されず、赤外線や電波による無線通信を用いてもよい。
【0032】
照明機器10の動作状態について説明する。図6に示すように、照明機器10は、消灯状態と、常夜灯状態と、通常の点灯状態で動作する。ここで、常夜灯状態とは、光源23が通常の点灯状態から減光された明るさで動作する状態をいい、その明るさは照度調節手段43により調節可能である。照明機器10の動作状態は点灯情報に基づいて切り換る。この点灯情報は、第二の制御部41が照度測定手段42の出力値を基準値と比較することにより設定される。照明機器10は、周囲が明るいと消灯状態となり、周囲が暗くなると消灯状態から常夜灯状態へ切り換る。周囲が暗い場合であって、人体を検知した場合には通常の点灯状態へ切り換る。通常の点灯状態であって、一定の時間を経過すると常夜灯状態へ切り換る。
【0033】
上記照明機器10の動作状態は、照明ユニット20の第一の制御部24が、点灯情報に基づいて、光源23を点灯、消灯、調光することにより切り換えられる。ここで赤外線通信を用いた場合の第一の制御部24の制御フローを図7に示す。先ず、第一の制御部24内のレジスタ等の初期設定を行う(S10)。その後、第一の制御部24は、赤外線受信手段32からの信号を受信して(S11)、点灯情報を取得する(S12)。この際、番地記憶手段25に記憶された番地情報と、点灯情報に含まれる番地情報を比較し(S13)、不一致であれば当該点灯情報を破棄する。一致した場合には、第一の制御部24は、番地情報を次の番地情報に更新し、赤外線送信手段31を制御することにより、点灯情報を近傍の照明機器10へと送信する(S14)。そして、第一の制御部24は、点灯情報に基づいて、光源23の点灯、消灯、調光、点灯時間の延長、短縮等の状態変更を行う(S15)。
【0034】
上記点灯情報は、制御ユニット40の第二の制御部41で決定され、無線送信手段46により送信される。ここで赤外線通信を用いた場合の第二の制御部41の制御フローを図8に示す。先ず、第二の制御部41は、第二の制御部41内のレジスタ及び第一の移動体検知手段45の初期設定を行う(S20)。その後、第二の制御部41は所定の周期で各センサの出力値を取得する(S21)。第二の制御部41は、各センサの出力値を解析し、点灯情報を決定する(S22)。次に、新たに決定された点灯情報と前回の点灯情報を比較する(S23)。新たに決定された点灯情報が前回の点灯情報から変更されている場合には、点灯情報を赤外線送信手段46により近傍の照明機器10へと送信する(S24)。さらに、第二の制御部41は所定時間を計測し(S25)、所定時間経過後、点灯情報を再度送信する(S24)。
【0035】
図9に示すように、赤外線により送信されるデータは、スタートビットと、点灯情報と、ストップビットから構成される。スタートビットおよびストップビットは、特に限定されず、任意のデータにより構成される。点灯情報は、スタートビットに続いて送信される。点灯情報は、システムID、番地情報、動作状態情報、明るさ情報、および点灯時間情報から構成される。システムIDとは、本発明の照明システム1であることを示す所定の情報であり、他の赤外線機器との混信防止のために用いられる。番地情報は、点灯情報の送信先の照明機器10の番地を指定する情報である。状態情報は、照明機器10の動作状態を示す情報であり、消灯状態、常夜灯状態、通常の点灯状態のいずれかが指定される。この状態情報は、第一の移動体検知手段45および照度測定手段42の出力値によって決定される。明るさ情報は、常夜灯状態における照明機器10の明るさを指定する情報であり、照度調節手段43の出力値に応じて決定される。明るさ情報に基づいて、光源23のPWM制御におけるパルスのデューティ比が変更される。点灯時間情報は、点灯時間を指定する情報であり、点灯時間調節手段44の出力値に応じて決定される。点灯時間情報に基づいて、光源23のPWM制御におけるパルス数が変更される。
【0036】
図10は、赤外線通信を用いた場合の点灯情報の伝達を示すものである。制御ユニット40は、点灯情報を近傍の照明機器Aに対して送信する。この際、点灯情報内の番地情報は照明機器Aの番地を指定する。赤外線を受信した照明機器Aは、点灯情報内の番地情報を番地記憶手段の番地情報と比較して、一致していれば、点灯情報の内容に応じて光源23を制御して、さらに点灯情報を次の照明装置Bへと送信する。この際、点灯情報内の番地情報は照明機器Bの番地を指定する。赤外線を受信した照明機器Bは、点灯情報内の番地情報を番地記憶手段の番地情報と比較して、一致していれば、光源23を制御して、点灯情報を次の照明装置Cへと送信する。この際、点灯情報内の番地情報は照明機器Cの番地を指定する。この様に、制御ユニット40から送信された点灯情報は各照明機器10を中継して、次々に伝達されて、制御ユニット40から最遠端の照明機器10まで伝達される。
【0037】
本発明の照明システム1によれば、照明機器10の無線通信手段33が照明ユニット20外に取り付けられるため、無線媒体が、照明ユニット20により妨害されることを回避することができる。例えば赤外線通信において、赤外線が照明ユニット20の透光度に影響されない。また、電波による無線通信において、照明ユニット20の筺体が金属製であっても、電波の減衰を回避する。よって、広い通信範囲を確保することができる。
【0038】
また、赤外線通信を用いる照明システム1において、無線通信手段33が天井面に設置された場合には、天井に埋め込み式の照明(例えばダウンライト)を照明機器10として用いることができる。
【0039】
また、各照明機器10が点灯情報に含まれる番地情報と自己に付与された番地情報を比較することにより、情報の有効性を判断する。よって、無線通信の信頼性を向上させることができる。
【0040】
通信ユニット30の他の態様として、図11に示すように、通信ユニットは、赤外線送信手段31が組み込まれた送信ユニット30aと、赤外線受信手段32が組み込まれた受信ユニット30bから構成されてもよい。送信ユニット30aおよび受信ユニット30bは、それぞれが個別の箱形の筺体であり、透光性を有している。また、送信ユニット30aの出射面34および受信ユニット30bの入射面35は開口部を有してもよい。送信ユニット30aおよび受信ユニット30bは、本体部21側面の任意の位置に螺子止めされる。しかし、送信ユニット30aおよび受信ユニット30bの取付位置は照明ユニット20の外側であればよく、例えば、天井面に取り付けても良い。また、送信ユニット30aおよび受信ユニット30bの取付方法は螺子止めに限られず、本体部21が鉄等の強磁性体であれば、送信ユニット30a及び/又は受信ユニット30bに磁石を固定し、各ユニットを本体部21に取り付けても良い。
【0041】
赤外線送信手段31と赤外線受信手段32が別々のユニットに組み込まれた照明機器11は、通路の形状に応じて、赤外線の出射方向および赤外線の受光方向を適宜に設定可能である。例えば、図11(a)に示すように、複数の照明機器11が曲がり角を有する通路上に設置された場合であっても、通路の曲がり角の角度に応じて出射方向および受光方向を調節した照明機器11aを曲がり角に配置すればよい。照明機器11aの赤外線受信手段32は一の照明機器11の赤外線送信手段31と対向し、照明機器11aの赤外線送信手段は他の照明機器11の赤外線受信手段と対向している。このため、照明機器11aは、図中の矢印に示すように点灯情報を受信および送信することができる。
【0042】
本発明のさらに他の態様として、赤外線送信手段31を複数備え、各赤外線送信手段31が個別に送信ユニット30aに組み込まれた照明機器12であってもよい。各赤外線送信手段31は、並列に接続されて、第一の制御部24の出力端子に接続される。しかし、接続態様はこれに限られず、各赤外線送信手段31が異なった出力端子に接続されてもよい。各送信ユニット30aは、本体部21の側面の任意の位置に取り付けることができる。
【0043】
照明機器12は、複数の赤外線送信手段31が別々の送信ユニットに組み込まれているため、通路の形状に応じて、赤外線を複数方向に出射することができる。例えば、図11(b)に示すように、丁字の通路上に複数の照明機器11が設置された場合であっても、通路の分岐方向に出射方向を向けた送信ユニットを有する照明機器12を通路の交差部に設置することで、点灯情報を各方向に設置された照明機器11に伝達することができる。また、この照明機器11は、丁字状の通路に限られることなく、その他の三叉状や十字状の通路に用いることもできる。
【0044】
本発明の照明システム1の他の態様として、制御ユニット40内に、送信間隔設定手段を備えてもよい。送信間隔設定手段は、制御ユニット40が点灯情報を繰り返して送信する場合において、送信の間隔を設定するものである。送信間隔設定手段としては、例えば、DIPスイッチが使用される。DIPスイッチの一端は電源に接続され、他端は第二の制御部41の入力端子に接続される。使用する照明機器の台数に応じてDIPスイッチに設定することで、第二の制御部41は制御ユニット40から送信された点灯情報が、最遠端の照明機器に伝達されるまでの時間を算出し、この時間の経過後、点灯情報を再度送信する。
【0045】
本発明の照明システム1は、制御ユニット40の第二の制御部41が、照明機器10の使用台数を送信間隔設定手段から取得して、照明機器10の使用台数に応じて、送信間隔を変更することができるので、照明機器10間における赤外線の干渉を防止することができる。
【0046】
本発明の照明システム1のさらに他の態様として、点灯情報に点灯方向情報を含めても良い。点灯方向情報とは、ある一の照明機器10を指定する番地情報を基準として、当該番地よりも小さい番地が付与された他の照明機器10を点灯させるのか、あるいは大きい番地情報が付与された他の照明機器10を点灯させるのかを指示する情報である。点灯方向情報は、第二の制御部41が第二の検知手段51から受けた少なくとも2つの検知情報に基づいて決定される。その番地情報および点灯方向情報の決定方法としては、先ず、第二の制御部41が、一の第二の検知手段51の検知情報を受けた場合に、一の照明機器10を指定する番地情報が決定される。ここで、各第二の検知手段51の出力は第二の制御部41の異なる入力端子に接続されているため、第二の制御部41は、検知情報の送信元の第二の移動体検知手段51を特定できる。また、複数の照明機器10および複数の第二の検知手段が一定の間隔で配置されていれば、特定された第二の検知手段51の位置に対応した照明機器10を特定できる。次に、第二の制御部41が、他の第二の検知手段51の検知情報を受けた場合に、検知情報の取得順番に基づいて、点灯方向情報を決定する。点灯情報を受信した照明機器10においては、自己の番地情報が、点灯情報に含まれる番地情報からみて点灯方向情報により指定された番地に含まれているか否かを第一の制御部24が判断し、光源23を制御する。
【0047】
本発明の照明システム1は、点灯情報に点灯方向情報を含めたことにより、人の進行方向に設置された照明機器10のみを点灯させて、エネルギーの消費を低減させることができる。
【0048】
以上、本発明の照明システムについて説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものであり、これらの態様はいずれも本発明の範囲に属するものである。
【0049】
例えば、本発明の照明システムを駐車場に設置しても良い。この場合、第一の移動体検知手段および第二の移動体検知手段として、超音波を利用した車両検知センサおよび人感センサを併用してもよい。これにより車両および人体の動きを感知した場合に照明機器を点灯することができるので、夜間の電力消費を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の照明システムは、集合住宅の通路灯、デパートの照明、駅の照明、駐車場の照明、階段室の照明に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1...照明システム、10・11・12...照明機器、20...照明ユニット、21...本体部、23...光源、24...第一の制御部、25...番地記憶手段、22...透光カバー、30...通信ユニット、30a...送信ユニット、30b...受信ユニット、31...赤外線送信手段、32...赤外線受信手段、33...無線通信手段、40...制御ユニット、41...第二の制御部、42...照度測定手段、43...照度調節手段、44...点灯時間調節手段、45...第一の移動体検知手段、46...赤外線送信手段31、50...センサユニット、51...第二の移動体検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井または壁に設置される複数の照明機器を用いた照明システムであって、
前記照明機器が、
光源と、該光源の点灯態様及びいずれかの前記照明機器を指定する番地情報を含んだ点灯情報に基づいて該光源を制御する第一の制御部と、自己に付与された番地情報を記憶し、前記第一の制御部の要求に応じて該番地情報を該第一の制御部に伝える番地記憶手段とを有する照明ユニットと、
前記照明ユニット外に設置され、前記点灯情報を送受信する無線通信手段と、
を有し、
移動体の存在を検知する一又は複数の移動体検知手段と、
前記移動体検知手段からの検知情報に基づいて前記点灯情報を決定する第二の制御部と、該点灯情報を前記照明機器へ送信する無線送信手段を有する制御ユニットと、
を備えた照明システム。
【請求項2】
前記照明機器の無線通信手段が、複数の赤外線送信手段と、一又は複数の赤外線受信手段であり、前記制御ユニットの無線送信手段が一又は複数の赤外線送信手段であることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記制御ユニットが、前記点灯情報を繰り返して送信し、繰り返し間隔を前記第二の制御部に指定する送信間隔設定手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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