説明

照明付き栽培システム

【課題】 栽培する植物体の成長等による大きさ変化があっても、常に必要照度の光を植物体に照射でき、設備コストも抑制できる照明付き栽培システムを提供する。
【解決手段】 この照明付き栽培システムは、ラック本体2に栽培物載置棚3を上下複数段に設置したラック1を備える。各栽培物載置棚3の上方には栽培物載置棚3の栽培物を照射する複数の照明器具4をそれぞれ位置させ、これら照明器具4を照明器具昇降機構5によりラック本体2に対して上下位置変更可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物工場等に設置される照明付き栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場では、単位面積あたりの栽培数を増やすため、一般的に栽培部分を多段とした多段式栽培システムが用いられている。多段式栽培システムにおける各段の栽培部分には、栽培する植物の大きさに関係なく、植物の光合成を促進するための照明器具(蛍光灯、LED、高圧Naランプなど)が所定の位置に取付けられている。このため、照明器具から栽培部分に照射される光の照度は常に一定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−50288号公報
【特許文献2】特開平8−266152号公報
【特許文献2】特開平6−197673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の多段式栽培システムでは、栽培する植物の大きさに関係なく、常に一定位置に取付けられた照明器具により光が植物体に照射される。そのため、栽培する植物体が小さい時点に合わせて必要照度を設定すると、成長により植物体が大きくなった時点で、必要照度以上の光を照射することになる。あるいは、植物体が大きくなった時点に合わせて必要照度を設定すると、植物体が小さいときには照度不足となる。また、植物体の大きさに関係なく、必要に応じて照度を設定・調整する場合は、照明器具に対する照度制御が必要になるため、設備コストが増大するという問題が生じる。
【0005】
この発明の目的は、栽培する植物体の成長による大きさ変化等に関係なく、常に必要照度の光を植物体に照射でき、設備コストも抑制できる照明付き栽培システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の照明付き栽培システムは、ラック本体に栽培物載置棚を上下複数段に設置したラックと、各栽培物載置棚の上方にそれぞれ位置して栽培物載置棚の栽培物を照射する複数の照明器具と、これら照明器具を前記ラック本体に対して上下位置変更可能に支持する照明器具昇降機構とを備える。
【0007】
この構成によると、照明器具を前記ラック本体に対して上下位置変更可能に支持する照明器具昇降機構を備えるため、栽培する植物体の成長による大きさの変化に対して、高さ調整するだけで、常に必要照度の光を植物体に照射できる。そのため、制御装置などの過剰な設備が要らず簡易な設備で対応できるため、設備コストも抑制できる。また、必要照度を大きくする場合には、照明器具を栽培する植物体に近接させることで対応できるため、照明器具の負荷を下げることができる。さらに、照度の調整には熟練を要せず誰でも使用できる。
【0008】
この発明において、前記照明器具昇降機構は、前記ラック本体に取付けられて前記照明器具を持ち上げ付勢する昇降用ユニットと、前記ラック本体に上下の取付位置が可変に取付けられて前記照明器具の上昇を止める照明ストッパー具とでなるものとしても良い。
このように構成した場合、照明器具の重量が昇降用ユニットで持ち上げ付勢されるため、作業者が手作業で上下位置変更を行うにつき、照明器具を支えておく必要がなく、位置変更作業が容易である。
【0009】
また、この発明において、前記照明器具は、反射板および複数の光源保持具を有し前記ラック本体の幅方向に延びる器具本体と、前記各光源保持具に保持された複数の光源とを有し、前記昇降用ユニットおよび前記照明ストッパー具が前記ラック本体の幅方向の複数箇所に設けられていても良い。
【0010】
この発明において、前記昇降用ユニットは、上下のフレームおよびこれら上下のフレームを連結する複数のリンクを有し前記上下のフレームが前記ラック本体と照明器具の器具本体にそれぞれ取付けられる平行リンク機構と、前記上下のフレーム間に設けられて上側フレームに対して下側フレームをばね部材によって持ち上げ付勢する持ち上げ力付与機構とでなるものとしても良い。
このように、平行リンク機構を用いて昇降用ユニットを構成した場合、照明器具を前後や左右に位置ずれすることなく昇降させられる。また、周囲に位置ずれ防止用のガイドを設ける場合に比べ、平行リンク機構によると構成がコンパクトになる。
【0011】
この発明において、前記照明ストッパー具は、前記ラック本体の縦フレームを挟付け力解除可能に挟み付けて挟付け力解除状態で上下に位置変更可能な挟付け具と、前記照明器具に係合するストッパー片とでなるものとしても良い。
このように照明ストッパー具を構成した場合、照明器具の上昇を止める作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の照明付き栽培システムは、ラック本体に栽培物載置棚を上下複数段に設置したラックと、各栽培物載置棚の上方にそれぞれ位置して栽培物載置棚の栽培物を照射する複数の照明器具と、これら照明器具を前記ラック本体に対して上下位置変更可能に支持する照明器具昇降機構とを備えるため、栽培する植物体の成長等による大きさに関係なく、常に必要照度の光を植物体に照射でき、設備コストも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態に係る照明付き栽培システムを正面側から見た斜視図、(B)は同照明付き栽培システムを背面側から見た斜視図である。
【図2】同栽培システムの正面図である。
【図3】同栽培システムの右側面図である。
【図4】同栽培システムの背面図である。
【図5】(A)は同栽培システムの平面図、(B)は同栽培システムにおけるラック本体の横フレームの断面図、(C)は同ラック本体の縦フレームの断面図である。
【図6】(A)は同栽培システムの照明器具を下方位置に設定した状態で示す図2のVI− VI 矢視断面図、(B)は同栽培システムの照明器具を上方位置に設定した状態で示す図2のVI− VI 矢視断面図である。
【図7】図5(A)のVII −VII 矢視断面図である。
【図8】(A)は同栽培システムの照明器具を上方位置に設定した状態で示す斜視図、(B)は同栽培システムの照明器具を下方位置に設定した状態で示す斜視図である。
【図9】同栽培システムにおける照明器具の断面図である。
【図10】同栽培システムにおける照明器具と照明器具昇降機構とを示す斜視図である。
【図11】(A)は同栽培システムにおける照明器具昇降機構が照明器具を下方位置で支持する状態を上方から見た斜視図、(B)は同照明器具昇降機構を下方から見た斜視図である。
【図12】(A)は照明器具昇降機構が照明器具を下方位置で支持する状態を示す正面図、(B)は同側面図である。
【図13】図12(B)のXIII−XIII矢視断面図である。
【図14】(A)は同栽培システムにおける照明器具昇降機構が照明器具を上方位置で支持する状態を上方から見た斜視図、(B)は同照明器具昇降機構を下方から見た斜視図である。
【図15】(A)は同栽培システムにおける照明器具昇降機構が照明器具を上方位置で支持する状態を示す正面図、(B)は同側面図、(C)は同平面図、(D)は同底面図である。
【図16】図15(B)のXV1 −XVI 矢視断面図である。
【図17】(A)は図15(A)のXVIIa −XVIIa 矢視断面図、(B)は図15(A)のXVIIb −XVIIb 矢視断面図、(C)は図15(A)のXVIIc −XVIIc 矢視断面図、(D)は図15(A)のXVIId −XVIId 矢視断面図である。
【図18】(A)(B)はそれぞれ同栽培システムにおける照明ストッパー具の設置部を示す斜視図である。
【図19】(A)は同照明ストッパー具を正面側から見た斜視図、(B)は同照明ストッパー具を背面側から見た斜視図である。
【図20】(A)は同照明ストッパー具の平面図、(B)は同正面図である。
【図21】図20(B)のXXI −XXI 矢視断面図である。
【図22】(A)は同照明ストッパー具の右側面図、(B)は同背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施形態を図1〜図22と共に説明する。図1(A),(B)は、この実施形態の照明付き栽培システムを正面側および背面側から見た斜視図を示し、図2,図3,図4および図5(A)は、正面図,右側面図,背面図および平面図を示す。この照明付き栽培システムは、植物工場内に設置されて植物の栽培に供される多段式栽培システムであって、ラック本体2に栽培物載置棚3を上下複数段に設置したラック1と、各栽培物載置棚3の上方にそれぞれ位置して栽培物載置棚3の栽培物を照射する複数の照明器具4(図6)と、これら照明器具4を前記ラック本体2に対して上下位置変更可能に支持する照明器具昇降機構5とを備える。
【0015】
前記ラック本体2は、左右両端の前後位置に立設される複数本の縦フレーム14と、幅方向に延びて前部左右の縦フレーム14,14間、および後部左右の縦フレーム14,14間を連結する上下複数段の幅方向横フレーム15と、奥行き方向に延びて左部前後の縦フレーム14,14間、および右部前後の縦フレーム14,14間を連結する上下複数段の奥行き方向横フレーム16とにより構成される。なお、図5(B)には奥行き方向横フレーム15の断面図を示し、図5(C)には縦フレーム14の断面図を示す。
【0016】
前記栽培物載置棚3は、図示の例では上下4段に設置される。各段の栽培物載置棚3は、それぞれ前記ラック本体2の幅方向横フレーム15および奥行き方向横フレーム16を構成部材の一部として共用し、さらに前後の幅方向横フレーム15,15間に幅方向に並ぶ複数本の桟部材17を連結して構成される。これら各段の栽培物載置棚3には図2のように栽培用トレイ13が載置される。また、この照明付き栽培システムの真下には、図2のように養液タンク18が配置され、ラック本体2に沿って配管された養液給水パイプ19および養液給水用バルブ20(図2,図5,図6)を経て各栽培物載置棚3上の栽培用トレイ13に養液が供給される。
【0017】
各段の栽培物載置棚3に対応してそれらの栽培物載置棚3の上方に照明器具4が設けられる。この照明器具4は、図9および図10に断面図および斜視図で示すように、照明反射板7および複数の光源保持具8を有し前記ラック本体2の幅方向に延びる器具本体6と、前記各光源保持具8に保持された複数の光源9とを有する。光源保持具8は、光源9に電気的に接続する端子(図示せず)を有するソケット等である。光源9は、例えば丸棒状の蛍光灯やLEDランプからなる。各光源9は、照明反射板7の裏面に前後方向に並べて平行に取付けられる。照明反射板7の反射面となる裏面には白色塗装が施される。照明反射板7はその前後端に下向きの折り曲げ部7aを有し、前端の折り曲げ部7aの前面には、照明器具4の高さ位置を調整する作業のための取手10が設けられている。これにより、照明器具4からの光が栽培物載置棚3の植物に効率良く照射される。なお、図1に示すように、ラック本体2の両側面と背面には側面反射板11と背面反射板12が設けられ、これにより照明器具4からの光がより効率良く植物に照射される。
【0018】
図1の照明器具昇降機構5は、図10,図11に斜視図で示す昇降用ユニット21と、図18に拡大した斜視図で示す照明ストッパー具22とでなる。昇降用ユニット21は、図5(A)および同図のVII −VII 矢視断面図を示す図7のように、ラック本体2における各段の前後の幅方向横フレーム15,15間に跨がって取付けられ、各段の照明器具4を持ち上げ付勢する。ここでは、各段の照明器具4に対して2つの昇降用ユニット21が用いられ、それらの昇降用ユニット21は幅方向に並べて配置される。図8のように、照明ストッパー具22は、ラック本体2の前部の左右両端に、上下の取付位置が可変に取付けられて各段の照明器具4の上昇を止めるものである。
【0019】
昇降用ユニット21は、図12(A),(B)に正面図および側面図で示すように、平行リンク機構23と、持ち上げ力付与機構24とでなる。平行リンク機構23は、上下のフレーム25,26と、これら上下のフレーム25,26を連結する複数(ここでは2つ)のリンク27A,27Bを有する。上側フレーム25はラック本体2の前後の幅方向横フレーム15に直接取付けられ、下側フレーム26は照明器具4の器具本体6を構成する照明反射板7の上面に取付けられる。リンク27A,27Bは、互いに交差する中間部で回動自在に枢着され、片方のリンク27Aは、その下端が下側フレーム26に回動自在に連結され、上端が上側フレーム25の長手方向に延びるガイド長孔25aに、そのガイド長孔25aに沿って移動自在に係合している。また、もう片方のリンク27Bは、その上端が上側フレーム25に回動自在に連結され、下端が下側フレーム26の長手方向に延びるガイド長孔26aに、そのガイド長孔26aに沿って移動自在に係合している。この平行リンク機構23により、照明器具4はラック本体2に対して上下に位置調整可能に支持される。
【0020】
持ち上げ力付与機構24は、前記平行リンク機構23の上下のフレーム25,26間に設けられて上側フレーム25に対して下側フレーム26をばね部材24aによって持ち上げ付勢する機構である。ここでは、持ち上げ力付与機構24は巻取式の構成とされ、巻取り側に付勢される可撓性の帯材28の一端を平行リンク機構23の上側フレーム25に取付け、その帯材28の他端を平行リンク機構20の下側フレーム23に止め部材29(図13)で止着して構成される。ばね部材24aは、例えばゼンマイばねからなる。
【0021】
なお、図12は前記平行リンク機構23の下側フレーム26が上側フレーム25に対して下側に離間した状態の昇降用ユニット21を示す。図11(A)はその状態の昇降用ユニット21を上側から見た斜視図を、図11(B)は下側から見た斜視図をそれぞれ示し、図13は図12(B)のXIII− XIII 矢視断面図を示す。また、図14(A)は前記平行リンク機構23の下側フレーム26が上側フレーム25に近接した状態の昇降用ユニット21を上側から見た斜視図を、図14(B)は下側から見た斜視図をそれぞれ示し、図15(A)〜(D)はその状態の昇降用ユニット21の正面図、側面図、平面図および底面図をそれぞれ示し、図16は図15(B)のXVI −XVI 矢視断面図を示す。
【0022】
図17(A)〜(D)は、図15(A)のXVIIa − XVIIa矢視断面図、 XVIIb−XVIIb 矢視断面図、XVIIc −XVIIc 矢視断面図、およびXVIId − XVIId矢視断面図をそれぞれ示す。これらの図面を参照して、前記昇降用ユニット21の構成の詳細を以下に説明する。 図17(A)のように、平行リンク機構23の断面コ字状とされたリンク27Aの上端が同じく断面コ字状とされた上側フレーム25内に配置され、そのリンク27Aの上端で幅方向に貫通するガイド軸30が上側フレーム25のガイド長孔25aに係合している。前記ガイド軸30には、上側フレーム25の内壁面とリンク27Aの外壁面との間に介在する樹脂ブッシュ31および樹脂ワッシャー32と、上側フレーム25のガイド長孔25aに接する樹脂カラー33がそれぞれ装着され、別にガイド軸30に装着されて上側フレーム25の外壁面に接するプッシュナット34により、ガイド軸30が抜け止めされている。平行リンク機構23の断面コ字状とされたもう一方のリンク27Bの下端も、同じく断面コ字状とされた下側フレーム26内に配置され、そのリンク27Bの下端で幅方向に貫通するガイド軸35が下側フレーム26のガイド長孔26aに係合している。前記ガイド軸35には、下側フレーム26の内壁面とリンク27Bの外壁面との間に介在する樹脂ブッシュ36と、下側フレーム26のガイド長孔26aに接する樹脂カラー37がそれぞれ装着され、別にガイド軸35に装着されて下側フレーム26の外壁面に接するプッシュナット38により、ガイド軸35が抜け止めされている。
【0023】
図17(B)のように、平行リンク機構23の両リンク27A,27Bの交差部では、両リンク27A,27Bを幅方向に貫通する支軸39が設けられ、この支軸39にはリンク27Aの外壁面とリンク27Bの内壁面との間に介在する樹脂ブッシュ40と、リンク27Bの外壁面に接する樹脂ブッシュ41がそれぞれ装着され、別に支軸39に装着されて前記樹脂ブッシュ41に接するプッシュナット42により、支軸39が抜け止めされている。
【0024】
図17(C)のように、平行リンク機構23のリンク27Bが上側フレーム25に回動自在に連結される部分では、上側フレーム25およびリンク27Bをそれらの幅方向に貫通する支軸43が設けられ、その支軸43には、上側フレーム25の内壁面とリンク27Bの外壁面との間に介在する樹脂ブッシュ44と、上側フレーム25の外壁面に接する樹脂ブッシュ45がそれぞれ装着され、別に支軸43に装着されて前記樹脂ブッシュ45に接するプッシュナット46により、支軸43が抜け止めされている。また、もう一方のリンク27Aが下側フレーム26に枢着される部分では、下側フレーム26およびリンク27Aをそれらの幅方向に貫通する支軸47が設けられ、その支軸47には、下側フレーム26の内壁面とリンク27Aの外壁面との間に介在する樹脂ブッシュ48および樹脂ワッシャー63と、下側フレーム26の外壁面に接する樹脂ブッシュ49がそれぞれ装着され、別に支軸47に装着されて前記樹脂ブッシュ49に接するプッシュナット50により、支軸47が抜け止めされている。
【0025】
図17(D)のように、平行リンク機構23の上側フレーム25における持ち上げ力付与機構24の取付け部では、上側フレーム25をその幅方向に貫通する巻取り軸51が設けられ、その巻取り軸51の両端部には上側フレーム25の軸貫通孔に接する樹脂カラー52が装着され、巻取り軸51の両端部に螺合するキャップボルト53により、巻取り軸51が抜け止めされている。キャップボルト53の頭部と巻取り軸51の端面との間には座金71が介在させてある。
【0026】
前記照明ストッパー具22は、図19(A),(B)に前方から見た斜視図および後方から見た斜視図を示すように、ラック本体2の縦フレーム14を挟付け力解除可能に挟み付けて挟付け力解除状態で上下に位置変更可能な挟付け具54と、前記照明器具4に係合するストッパー片55とでなる。この照明ストッパー具22は、ラック本体2の幅方向の複数箇所に設けられる。具体的には、ラック本体2の前方の左右両端の縦フレーム14に設けられる。図20(A),(B)は照明ストッパー具22の平面図および正面図を示し、図21は図20(A)のXXI −XXI 矢視断面図を示し、図22(A),(B)は右側面図および背面図を示す。
【0027】
前記挟付け具54は挟付け具本体56とノブ57とでなる。挟付け具本体56は、図20(A)に示すように、その一側面の幅方向中間部から他側面の近傍まで延びる縦割れ部58により前面板部56aと背面板部56bとに分けられた二股状の部材である。この挟付け具本体56の前記縦割れ部58が開口する一側面の前後の部分には、ラック本体2の縦フレーム14を挟む一対のフランジ部56cが形成されている。ラック本体2の前方の左右両端の縦フレーム14には、図18に示すように、ラック本体2の内側に突出して縦方向に延びる突条59aを有するストッパーガイド部材59が併設され、このストッパーガイド部材59の突条59aに前記挟付け具本体56の両フランジ部56cが挟み付けられる。
【0028】
図21に示すように、挟付け具54のノブ57は、前記挟付け具本体56の前面板部56aおよび背面板部56bを貫通する締付けボルト57aを有し、この締付けボルト57aが前記背面板部56bの背面側に配置されたナット60に螺合している。前記締付けボルト57aの前記ナット60への螺合の度合いをノブ57を廻して調整することにより、前記ストッパーガイド部材59に対する挟付け具54の挟付け力を強めたり挟付け力を解除したりすることができる。ストッパー片55は、その一端を挟付け具本体56の背面においてボルト61とナット62で締め付けることにより、挟付け具54に連結されている。図20(B)のように、ストッパー片55の他端には、照明器具4の器具本体6の上面角部に係合する係合用切欠き部55aが形成されている。
【0029】
この照明付き栽培システムにおいて、各段の照明器具4を対応する栽培物載置棚3に近接した下位置に位置調整したいときには、各段の昇降用ユニット21における平行リンク機構23を、その下側フレーム26が上側フレーム25から離間するように調整する。これに併せて、昇降ユニット21における持ち上げ力付与機構24からその持ち上げ力に抗して帯材28が繰り出される。そのままでは、持ち上げ力付与機構24の持ち上げ力によって照明器具4は上位置に戻ろうとするので、挟付け具54もストッパーガイド部材59に沿って下位置にずらし、そのストッパー片55が照明器具6の器具本体6上面に当接する位置で、挟付け具54をストッパーガイド部材59に挟み付けて固定する。図6(A)は、この位置調整の状態を図2のVI−VI矢視断面図として示している。
【0030】
逆に、図6(A)の状態から、各段の照明器具4を対応する栽培物載置棚3から離間した上位置に位置調整したいときには、先ず挟付け具54をストッパーガイド部材59に沿って上位置にずらしておいて、各段の昇降用ユニット21における平行リンク機構23を、その下側フレーム26が上側フレーム25に近接するように調整する。図6(B)は、この位置調整の状態を図2のVI−VI矢視断面図として示している。
【0031】
このように、この照明付き栽培システムでは、ラック本体2に栽培物載置棚3を上下複数段に設置したラック1と、各栽培物載置棚3の上方にそれぞれ位置して栽培物載置棚3の栽培物を照射する複数の照明器具4と、これら照明器具4を前記ラック本体2に対して上下位置変更可能に支持する照明器具昇降機構5とを備えているので、栽培する植物体の大きさに関係なく、常に必要照度の光を植物体に照射できる。また、制御装置などの過剰な設備が要らず簡易な設備で対応できるため、設備コストも抑制できる。また、必要照度を大きくする場合には、照明器具4を栽培する植物体に近接させることで対応できるため、照明器具4の負荷を下げることができる。さらに、照度の調整には熟練を要せず誰でも使用できる。
【0032】
また、この実施形態では、前記照明器具昇降機構5が、ラック本体2に取付けられて照明器具4を持ち上げ付勢する昇降用ユニット21と、ラック本体2に上下の取付位置が可変に取付けられて照明器具4の上昇を止める照明ストッパー具22とでなるので、照明器具4の重量が昇降用ユニット21で持ち上げ付勢される。このため、作業者が手作業で上下位置変更を行うにつき、照明器具4を支えておく必要がなく、位置変更作業が容易である。
【0033】
また、この実施形態では、前記昇降用ユニット21が、上下のフレーム25,26およびこれら上下のフレーム25,26を連結する複数のリンク27A,27Bを有し前記上下のフレーム25,26がラック本体2と照明器具4の器具本体6にそれぞれ取付けられる平行リンク機構23と、前記上下のフレーム25,26間に設けられて上側フレーム25に対して下側フレーム26をばね部材によって持ち上げ付勢する持ち上げ力付与機構24とでなるため、照明器具4を前後や左右に位置ずれすることなく昇降させられる。また、周囲に位置ずれ防止用のガイドを設ける場合に比べ、平行リンク機構23によると構成がコンパクトになる。
【0034】
また、この実施形態では、前記照明ストッパー具22が、ラック本体2の縦フレーム14(具体的には、縦フレーム14に併設されるストッパーガイド部材59)を挟付け力解除可能に挟み付けて挟付け力解除状態で上下に位置変更可能な挟付け具54と、照明器具4に係合するストッパー片55とでなるので、照明器具4の上昇を止める作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1…ラック
2…ラック本体
3…栽培物載置棚
4…照明器具
5…照明器具昇降機構
6…器具本体
7…照明反射板
8…光源保持具
9…光源
21…昇降用ユニット
22…照明ストッパー具
23…平行リンク機構
24…持ち上げ力付与機構
25…上側フレーム
26…下側フレーム
27A,27B…リンク
54…挟付け具
55…ストッパー片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック本体に栽培物載置棚を上下複数段に設置したラックと、各栽培物載置棚の上方にそれぞれ位置して栽培物載置棚の栽培物を照射する複数の照明器具と、これら照明器具を前記ラック本体に対して上下位置変更可能に支持する照明器具昇降機構とを備えた照明付き栽培システム。
【請求項2】
請求項1において、前記照明器具昇降機構は、前記ラック本体に取付けられて前記照明器具を持ち上げ付勢する昇降用ユニットと、前記ラック本体に上下の取付位置が可変に取付けられて前記照明器具の上昇を止める照明ストッパー具とでなる照明付き栽培システム。
【請求項3】
請求項2において、前記照明器具は、反射板および複数の光源保持具を有し前記ラック本体の幅方向に延びる器具本体と、前記各光源保持具に保持された複数の光源とを有し、前記昇降用ユニットおよび前記照明ストッパー具が前記ラック本体の幅方向の複数箇所に設けられた照明付き栽培システム。
【請求項4】
請求項3において、前記昇降用ユニットは、上下のフレームおよびこれら上下のフレームを連結する複数のリンクを有し前記上下のフレームが前記ラック本体と照明器具の器具本体にそれぞれ取付けられる平行リンク機構と、前記上下のフレーム間に設けられて上側フレームに対して下側フレームをばね部材によって持ち上げ付勢する持ち上げ力付与機構とでなる照明付き栽培システム。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、前記照明ストッパー具は、前記ラック本体の縦フレームを挟付け力解除可能に挟み付けて挟付け力解除状態で上下に位置変更可能な挟付け具と、前記照明器具に係合するストッパー片とでなる照明付き栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−59290(P2013−59290A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200248(P2011−200248)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(591241718)大和リース株式会社 (6)
【出願人】(594126285)株式会社一ノ坪製作所 (3)
【Fターム(参考)】