説明

照明付カメラ

【課題】より無駄の少ない照明により暗所での撮影を行うことが可能な照明付カメラを提供する。
【解決手段】本発明によって提供される照明付カメラA1は、光源1からの光を読取対象Bに照射し、その反射光を撮像手段3で受光するものであって、読取対象Bを内包する照明範囲C1に光源1からの光を照射するとともに、読取対象Bを内包する受光範囲からの光を撮像手段3に結像させる共用レンズ5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば監視カメラとして利用できる、暗所での撮影が可能な照明付カメラに関する。
【0002】
図6は、従来の照明付カメラの一例を平面図で示している(たとえば特許文献1参照)。同図に示された照明付カメラXは、カメラレンズ91と、カメラレンズ91を囲むパッキング92と、パッキング92の外周に配置された複数の発光ダイオード(以下、LED)93と、を備えている。この照明付カメラXは、LED93の明かりにより、暗がりの環境であっても、画像を得ることが可能となっている。
【0003】
しかしながら、照明付カメラXでは、カメラレンズ91によって受光可能な受光範囲と、各LED93が照明する照明範囲と、を一致させるのが困難であった。このため、照明付カメラXでは、読取対象を確実に照明するために、多数のLED93を設置する必要があり、無駄が多くコストが高くなっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2007−166570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より無駄の少ない照明により暗所での撮影を行うことが可能な照明付カメラを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される照明付カメラは、光源からの光を読取対象に照射し、その反射光を撮像手段で受光する照明付カメラであって、上記読取対象を内包する照明範囲に上記光源からの光を照射する照明用レンズと、上記読取対象を内包する受光範囲からの光を上記撮像手段に結像させる結像用レンズと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、上記光源からの光は上記照明用レンズにより上記読取対象を的確に照らし、さらに、上記読取対象からの光は上記結像用レンズにより上記撮像手段に収束される。このため、この照明付カメラは、より無駄の少ない照明により暗所での撮影を行うことが可能となっている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記照明用レンズおよび上記結像用レンズの双方を兼ねる共用レンズを備えている。より好ましくは、上記光源からの光を反射させて上記共用レンズに入射させるとともに、上記共用レンズからの光を透過させて上記撮像手段に入射させるハーフミラーを備えている。このような構成によれば、上記照明範囲および上記受光範囲はいずれも上記共用レンズの光軸周りに形成されるため、互いのずれがより小さくなり、より無駄なく上記読取対象を照明可能となっている。
【0009】
より好ましい実施の形態においては、上記光源から出射された光のうち上記ハーフミラーを透過した光を吸収する光吸収面を備えている。さらにより好ましくは、上記光吸収面と上記ハーフミラーとの間に、上記ハーフミラー側からの光を通すための孔部を有する壁面が設けられている。このような構成によれば、上記光源からの光のうち、上記ハーフミラーを透過した光は、上記孔部を通り上記光吸収面に吸収される。さらに、上記光吸収面で吸収されなかった光も上記壁部で遮られるため、上記撮像手段に不当な光が入り込みにくくなっている。このため、上記撮像手段はより精度の高い画像を得ることができる。
【0010】
さらにより好ましい実施の形態においては、上記ハーフミラーと上記撮像手段との距離と、上記ハーフミラーと上記光源との距離とが、異なっている。このような構成によれば、上記共用レンズによる上記読取対象の像が上記撮像手段に好ましく結像されるとき、上記読取対象に重なるように形成される上記共用レンズによる上記光源の像はぼやけたものとなる。このため、上記撮像手段が得る画像に上記光源の像が写りにくくなっている。従って、上記照明付カメラはより好ましい画像を得ることができる。
【0011】
また、別の好ましい実施の形態においては、上記照明用レンズと上記結像用レンズとは、同じ焦点距離を有するレンズであり、上記照明用レンズの光軸と、上記結像用レンズの光軸とが、同じ方向を向いている。このような構成によると、上記照明範囲と上記受光範囲とのずれが比較的小さくなり、無駄なく上記読取対象を照明可能となっている。
【0012】
さらに好ましくは、上記照明用レンズおよび上記結像用レンズの光軸方向において、上記撮像手段と上記結像用レンズとの距離と、上記光源と上記照明用レンズとの距離とは、異なっている。このような構成によると、上記光源の像は上記照明範囲においてぼやけて形成されるため、上記撮像手段が得る画像に上記光源の像が写り込みにくくなる。このため、上記照明付カメラはより好ましい画像を得ることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記撮像手段は、基板上に回路部、下部電極層、光吸収層として機能するカルコパイライト構造の化合物半導体薄膜、透光性電極層が積層されて構成される固体撮像装置である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記光源が、赤外線を出射する。このような構成によれば、暗所での撮影をより好ましく行うことができる。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1および図2は、本発明にかかる照明付カメラの第1実施形態を示している。図1および図2に示す照明付カメラA1は、光源1、パッケージ基板2、固体撮像装置3、ハーフミラー4、共用レンズ5、および、ケース6を備えている。図1には、光源1からの光が読取対象Bを照明する様子を示しており、光源1からの光により照明される照明範囲C1を示している。一方、図2には、読取対象Bで反射した光が固体撮像装置3に受光される様子を示しており、固体撮像装置3が受光可能な受光範囲C2を示している。なお、図1および図2には、説明のために互いに直交するx方向とy方向を示している。
【0018】
光源1は、光源用基板11、光源用基板11に搭載されたLED素子12、および、樹脂パッケージ13を備えている。LED素子12には、赤外線を出射可能なものが用いられる。樹脂パッケージ13は、LED素子12から出射される光に対して透光性を有する樹脂で形成されている。また、樹脂パッケージ13は、LED素子12からの光をx方向に沿って進行させるようにレンズ状に形成されている。
【0019】
パッケージ基板2は、固体撮像装置3を保持しており、固体撮像装置3と導通する配線パターンを備えている。
【0020】
固体撮像装置3は、たとえば国際公開番号WO2008/093834のPCT文献に記載の固体撮像装置である。この固体撮像装置3は、図3に示すように、回路部3aと光電変換部3bとを備えている。光電変換部3bは、下部電極31、化合物半導体薄膜32、バッファ層33、および透光性電極層34が積層された構造となっている。化合物半導体薄膜32は、カルコパイライト構造を有しており、光吸収層として機能する。このような固体撮像装置3は、可視光から近赤外光までの広い波長域に渡って高い感度を有している。
【0021】
ハーフミラー4は、入射角45°で入射してきた光の半分を透過させ、残りの半分を反射するように形成されており、x,y方向に対して45°傾斜するように配置されている。図1に示すように、このハーフミラー4は、光源1からx方向に沿って進行してきた光の半分を透過させ、残りの半分をy方向に向けて反射する。また、図2に示すように、ハーフミラー4は、共用レンズ2からy方向に沿って進行してきた光の半分を透過させ、残りの半分をx方向に向けて反射する。
【0022】
共用レンズ5は、光軸がy方向に沿うように配置されたレンズによって構成されている。この共用レンズ5は、図2に示すように、読取対象Bを含む受光範囲C2からの光を固体撮像装置3に結像させる結像用レンズである。さらに、図1に示すように、この共用レンズ5は、ハーフミラー4からの光を、読取対象Bを含む照明範囲C1に向けて出射する照明用レンズでもある。また、反射により固体撮像装置3に不当な光が入るのを防ぐために、共用レンズ5の表面には、ARコートが施されている。
【0023】
ケース6は、x,y方向に交差する十字状に形成されており、中央にハーフミラー4を、x方向における一方の端に光源1を、y方向における一方の端に固体撮像装置3を、y方向における他方の端に共用レンズ5を収容している。さらに、ケース6のy方向における他方の端には、共用レンズ5と外部との間で光の行き来が可能なように出射孔6aが形成されている。またさらに、ケース6のx方向における他方の端には黒色の光吸収面61が形成されており、光吸収面61とハーフミラー4との間に壁面62が形成されている。光吸収面61は、x方向に対して傾斜する面に、たとえば黒色塗料を塗布することにより形成されている。壁面62の中央には、壁面62をx方向に貫通するホール6bが形成されている。
【0024】
また、ケース6は、ハーフミラー4と光源1との距離と、ハーフミラー4と固体撮像装置3との距離とが、異なる長さとなるように形成されている。さらに、壁面62のx方向における位置は、レンズ状の樹脂パッケージ13によりLED素子12からの光が収束する位置となっている。ハーフミラー4と共用レンズ5とのy方向における距離は、ハーフミラー4と壁面62とのx方向における距離と同じとなっている。
【0025】
次に、照明付カメラA1の作用について説明する。
【0026】
本実施形態によれば、照明範囲C1および受光範囲C2はともに共用レンズ5の光軸を中心として形成されている。このため、照明範囲C1と受光範囲C2とのずれを小さくしやすくなっており、受光範囲C2内の読取対象Bを無駄なく照明することができる。従って、照明付カメラA1は、1つの光源1により正確に読取対象Bを照明可能であり、さらに使用するレンズの数も抑えることが可能であるため、コストの削減を図りやすくなっている。
【0027】
また、本実施形態によれば、ハーフミラー4と光源1との距離が、ハーフミラー4と固体撮像装置3との距離と異なっている。このため、共用レンズ5による読取対象Bの像が固体撮像装置3に好ましく結像されるとき、読取対象Bに重なって形成される共用レンズ5による光源1の像はぼやけたものとなる。従って、固体撮像装置3が得る画像に、光源1の像が写り込みにくくなっており、照明付カメラA1は、より好ましい画像を得ることができる。なお、この距離の差は、照明範囲C1が広がりすぎて暗くなることがないように、十分に小さな距離の差となっている。
【0028】
また、本実施形態によれば、光源1からの光のうちハーフミラー4を透過した光は、ホール6bを通って光吸収面61に吸収されている。さらに、この光吸収面61で吸収されずに反射された光は、ホール6bを通り抜けにくく、壁面62のハーフミラー4側に戻りにくくなっている、このため、ハーフミラー4を透過した光が固体撮像装置3に不当に入りにくくなっている。従って、照明付カメラA1は、より好ましい画像を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、LED素子12は赤外線を出射可能であり、かつ、固体撮像装置3は、赤外線を高感度で受光可能なものである。このため、照明付カメラA1は、暗所での撮影を好ましく行うことができる。さらに、共有レンズ5としてより焦点距離が長いものを用いることによって、より遠方の読取対象Bを撮影することが可能である。
【0030】
また、上記実施形態では、共用レンズ5は単一のレンズであるが、たとえば倍率を変化させることが可能なように構成された複数のレンズ群であってもよい。この場合、レンズ群の倍率を変化させると、追従して照明範囲C1も変化する。このため、たとえばズーム撮影をするときにも、照明範囲C1と受光範囲C2はほぼ一致しており、効率的に照明することが可能である。
【0031】
なお、樹脂パッケージ13の形状を、図4に示すように、LED素子12からの光に指向性を持たせるような形状としてもよい。光源1からの光の指向性を高めることにより、より遠方の読取対象Bを好ましく照明することができる。
【0032】
図5は、本発明にかかる照明付カメラの第2実施形態を示している。なお、この図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。図5に示す照明付カメラA2は、共用レンズ5のかわりに照明用レンズ51および結像用レンズ52を備えている。
【0033】
照明用レンズ51および結像用レンズ52は、それぞれ全体としての焦点距離が同じとなるように構成されたレンズ群であり、互いの光軸が平行となるように設置されている。また、照明用レンズ51および結像用レンズ52は、隣接しており、互いに連動して動くように構成されている。
【0034】
また、光源1と照明用レンズ51との距離は、固体撮像装置3と結像用レンズ52との距離よりも短くなっている。このため、結像用レンズ52による読取対象Bの像が固体撮像装置3に好ましく結像するとき、読取対象Bに重なるように形成される照明用レンズ51による光源1の像はぼやけたものとなる。従って、固体撮像装置3が得る画像に、光源1の像が写り込みにくくなっており、照明付カメラA2は、より好ましい画像を得ることができる。
【0035】
また、照明付カメラA2では、照明付カメラA1と異なりハーフミラーを用いていないため、光源1からの光が読取対象Bで反射して固体撮像装置3に到達するまで間に弱まりにくくなっている。このため、照明付カメラA2では、より無駄なく暗所での撮影を行うことが可能となっている。さらに、光源1からの光のうち照明用レンズ51によって反射した光が、固体撮像装置3に入りにくく、より精度の高い撮影を行うことが可能となっている。
【0036】
本発明にかかる照明付カメラは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明にかかる照明付カメラの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、本実施形態では、LED素子12を内蔵した光源1を用いているが、赤外線レーザーを出射可能な光源装置を用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る照明付カメラの照明時の断面図である。
【図2】図1に示す照明付カメラの受光時の断面図である。
【図3】本発明に係る固体撮像装置の断面図を示している。
【図4】図1に示す照明付カメラの光源の別の形態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る照明付カメラの平面図である。
【図6】従来の照明付カメラの一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
A1,A2 照明付カメラ
B 読取対象
C1 照明範囲
C2 受光範囲
1 光源
2 パッケージ基板
3 固体撮像装置(撮像手段)
3a 回路部
3b 光電変換部
4 ハーフミラー
5 共用レンズ
6 ケース
6a 出射孔
6b ホール
11 光源用基板
12 LED素子
13 樹脂パッケージ
31 下部電極
32 化合物半導体薄膜
33 バッファ層
34 透光性電極層
51 照明用レンズ
52 結像用レンズ
61 光吸収面
62 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を読取対象に照射し、その反射光を撮像手段で受光する照明付カメラであって、
上記読取対象を内包する照明範囲に上記光源からの光を照射する照明用レンズと、
上記読取対象を内包する受光範囲からの光を上記撮像手段に結像させる結像用レンズと、を備えていることを特徴とする、照明付カメラ。
【請求項2】
上記照明用レンズおよび上記結像用レンズの双方を兼ねる共用レンズを備えている、請求項1に記載の照明付カメラ。
【請求項3】
上記光源からの光を反射させて上記共用レンズに入射させるとともに、上記共用レンズからの光を透過させて上記撮像手段に入射させるハーフミラーを備えている、請求項2に記載の照明付カメラ。
【請求項4】
上記光源から出射された光のうち上記ハーフミラーを透過した光を吸収する光吸収面を備えている、請求項3に記載の照明付カメラ。
【請求項5】
上記光吸収面と上記ハーフミラーとの間に、上記ハーフミラー側からの光を通すための孔部を有する壁面が設けられている、請求項4に記載の照明付カメラ。
【請求項6】
上記ハーフミラーと上記撮像手段との距離と、上記ハーフミラーと上記光源との距離とが、異なっている、請求項3ないし5のいずれかに記載の照明付カメラ。
【請求項7】
上記照明用レンズと上記結像用レンズとは、同じ焦点距離を有するレンズであり、
上記照明用レンズの光軸と、上記結像用レンズの光軸とが、同じ方向を向いている、請求項1に記載の照明付カメラ。
【請求項8】
上記照明用レンズおよび上記結像用レンズの光軸方向において、上記撮像手段と上記結像用レンズとの距離と、上記光源と上記照明用レンズとの距離とは、異なっている、請求項7に記載の照明付カメラ。
【請求項9】
上記撮像手段は、基板上に回路部、下部電極層、光吸収層として機能するカルコパイライト構造の化合物半導体薄膜、透光性電極層が積層されて構成される固体撮像装置である、請求項1ないし8のいずれかに記載の照明付カメラ。
【請求項10】
上記光源が、赤外線を出射する、請求項1ないし9のいずれかに記載の照明付カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−114847(P2010−114847A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288034(P2008−288034)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】