説明

照明制御方法及び照明制御装置

【課題】認知的負担を軽減する照明装置のスイッチを提供する。
【解決手段】照明装置が配置された天井を撮影した画像データに基づき、天井を複数の区画に分けた各区画における照明装置の有無を判定し、照明設置判定結果と、制御スイッチと室内マトリクスの対応表とを比較して制御スイッチと照明装置との対応関係を推定し、照明装置の配置に対応させて照明装置を制御するボタンを表示する。これにより、常にボタンと物理的な照明装置との認知的対応がとれる照明装置のスイッチを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスや家庭では、室内の照度を確保するため、または、室内の雰囲気を演出するために、多数の照明装置が用いられるようになってきた。照明装置の増加に伴い、各照明装置をコントロールするためのスイッチ類も増加する。このような場合、どのスイッチでどの照明装置をコントロールできるかの対応関係(認知的なマッピング)をとり難くなり、人間の認知負荷を極端に増大させることが指摘されている。特に、建物が完成したばかりの竣工初期、リフォームなどを経て新たに照明装置が付加された場合には、照明装置の配置とそれをコントロールするスイッチの配置が全く対応しない、すなわち、認知的なマッピングが全くとれない状況に至ることもある。利用者が照明装置を認知的負担無しに操作できる住環境が期待される。
【0003】
非特許文献1では、液晶タッチパネルを用いてスイッチに名称を表示させ、照明装置とスイッチとの対応関係を分かりやすくしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“オフィスに適したコンパクトな照明スイッチ1台で最大24コのスイッチ操作が可能な「フル2線式リモコン液晶ネームタッチスイッチ」を新発売”、[online]、2009年7月7日、パナソニック電工株式会社、[平成22年9月30日検索]、インターネット〈URL:http://panasonic-denko.co.jp/corp/news/0907/0907-4.htm〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
利用者が、照明装置とスイッチとのマッピングがとれない状況に置かれた場合、所望する照明を思ったようにコントロールできるようになるまで様々なスイッチを繰り返し操作して試行錯誤及び学習しなければならず、認知的に大きな負担となっていた。従来、認知的負担を軽減するため、スイッチの近傍にそのスイッチによりどの照明装置が操作できるのかラベルを添付するといった対処がなされていた。しかしながら、照明装置の数が増えるとそのような対処も難しくなる。照明装置のスイッチの配置を根本的に変更する方法もあるが、その都度スイッチボックスを変更する工事が必要となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、認知的負担を軽減する照明装置のスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明に係る照明制御方法は、画像入力手段による、照明装置が設置された設置場所を撮影した画像データを入力するステップと、設置判定手段による、前記設置場所を複数の区画に分割したマトリクスの各区画に対応する前記画像データ上の輝度を取得して所定の閾値と比較して、前記照明装置の設置の有無を区画毎に判定した判定結果を作成するステップと、対応推定手段による、前記マトリクスの区画に前記照明装置を制御する制御スイッチを対応させた対応表を蓄積した蓄積手段から前記対応表を読み出して前記判定結果と対比して、前記照明装置と前記制御スイッチとの対応付けを推定するステップと、制御手段による、前記判定結果に基づいて前記照明装置に対応するボタンを表示し、前記ボタンが押されたときに当該ボタンに対応する前記照明装置に対応付けられた前記制御スイッチにより当該照明装置を制御するステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
上記照明制御方法において、歪修正手段による、前記画像データの台形歪みを修正するステップを有することを特徴とする。
【0009】
上記照明制御方法において、輝度修正手段による、前記画像データを撮影した地点から撮影対象までの距離に応じて前記画像データの輝度を修正するステップを有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明に係る照明制御装置は、照明装置が設置された設置場所を撮影した画像データを入力する画像入力手段と、前記設置場所を複数の区画に分割したマトリクスの区画に前記照明装置を制御する制御スイッチを対応させた対応表を蓄積した蓄積手段と、前記マトリクスの各区画に対応する前記画像データ上の輝度を取得して所定の閾値と比較して、前記照明装置の設置の有無を区画毎に判定した判定結果を作成する設置判定手段と、前記蓄積手段から前記対応表を読み出して前記判定結果と対比して、前記照明装置と前記制御スイッチとの対応付けを推定する対応推定手段と、前記判定結果に基づいて前記照明装置に対応するボタンを表示し、前記ボタンが押されたときに当該ボタンに対応する前記照明装置に対応付けられた前記制御スイッチにより当該照明装置を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記照明制御装置において、前記画像データの台形歪みを修正する歪修正手段を有することを特徴とする。
【0012】
上記照明制御装置において、前記画像データを撮影した地点から撮影対象までの距離に応じて前記画像データの輝度を修正する輝度修正手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、認知的負担を軽減する照明装置のスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における照明制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】照明設置判定結果の例を示す図である。
【図3】制御スイッチを対応付けた室内マトリクスの例を示す図である。
【図4】制御スイッチと室内マトリクスの対応表の例を示す図である。
【図5】制御スイッチと制御スイッチに対応する照明装置との推定を説明するための模式図である。
【図6】制御スイッチと照明装置との対応を示す対応表の例を示す図である。
【図7】タッチスクリーンに表示されたボタン例を示す図である。
【図8】本実施の形態における照明制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態における照明制御装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す照明制御装置は、画像入力部101、歪修正部102、輝度修正部103、設置判定部104、レイアウト判定部105、対応表記憶部106、マトリクススイッチ制御部107、および入出力制御部108を備える。照明制御装置が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは照明制御装置が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。以下、各部について説明する。
【0017】
画像入力部101は、照明装置が設置された室内を撮影した画像データを入力して入出力制御部108が備える記憶装置に記憶させる。画像入力部101は、例えば壁面に配置し、照明装置が設置された天井全体を撮影して画像データを得る。画像入力部101としては、デジタルカメラなどの撮影装置を用いることができる。
【0018】
歪修正部102は、入出力制御部108から画像入力部101が入力した画像データを読み出し、画像データに写された天井の台形歪みを修正して入出力制御部108に記憶させる。天井全体を壁面に配置された画像入力部101により撮影した場合、長方形の天井であっても近くが大きく遠くが小さく撮影され、天井全体が台形となって画像データに写される。そこで、歪修正部102は、近くと遠くが画像データ上で同じ大きさになるように、台形歪みを天井本来の長方形に修正して、修正した画像データを再度入出力制御部108に記憶させる。
【0019】
輝度修正部103は、入出力制御部108から歪修正された画像データを読み出し、撮影地点から撮影対象までの距離の違いによる画像データ中の輝度の変化を補正して入出力制御部108に記憶させる。歪みが修正された画像データに写された天井は、幾何学的には歪みが修正されているが、照明装置の輝度はその照明装置が撮影地点から遠く離れれば離れるほど小さくなっている。そこで、輝度修正部103は、台形歪みを距離に換算した値によって画像データの輝度を補正する。
【0020】
設置判定部104は、入出力制御部108から歪みと輝度が修正された画像データを読み出し、読み出した画像データに写された天井を複数の区画に分けて、区画毎にその区画に照明装置が存在するか否かを判定する。照明装置の設置場所である天井を複数の区画に分割したものを室内マトリクスと呼ぶ。室内マトリクスの各区画に照明装置が存在するか否かは、画像データからその区画における輝度を取得して所定の閾値(例えば500cd/m2)と比較し、その区画の輝度が閾値を超えていた場合は照明有り、閾値以下の場合は照明無しと判定する。なお、配置の有無を判定する照明装置は撮影時に点灯している。画像データから取得する輝度は、画像データ中の各区画に該当する画素の輝度の平均値や中央値を用いることができる。設置判定部104の各区画における照明装置の有無を示す照明設置判定結果は、入出力制御部108に記憶させる。
【0021】
図2に、照明設置判定結果の例を示す。同図に示す例では、照明装置が設置される天井を横に13区画、縦に15区画に分けた室内マトリクスを用いて、各区画において照明装置が設置されているか否か判定した。同図では、符号a〜lで示した区画において照明装置が有ると判定された。
【0022】
レイアウト判定部105は、入出力制御部108から照明設置判定結果を読み出して照明装置が配置されたレイアウトを推定するとともに、対応表記憶部106から制御スイッチと室内マトリクスの対応表を読み出して、照明装置のレイアウトと対応表を比較して制御スイッチと照明装置との対応関係を見つける。制御スイッチと室内マトリクスの対応表は、予め対応表記憶部106に格納される。制御スイッチと室内マトリクスの対応表は、制御スイッチとその制御スイッチにより制御できる照明装置が配置された室内マトリクス上の区画とを対応付けたものである。制御スイッチと室内マトリクスとの対応付けは大まかでよい。制御スイッチは、照明装置のオン・オフを制御するスイッチである。
【0023】
図3に制御スイッチを対応付けた室内マトリクスの例を示す。同図に示す室内マトリクスは、照明装置が設置される天井を横に13区画、縦に15区画に分けたものである。同図の区画中の数字は、その区画に対応付けられた制御スイッチ番号を示す。図4は、制御スイッチと室内マトリクスの対応表の例である。図4では、例えば室内マトリクスB3に制御スイッチ番号1が対応付けられている。レイアウト判定部105は、このような制御スイッチと室内マトリクスの対応表と照明装置のレイアウトを比較して制御スイッチと照明装置との対応関係を見つける。
【0024】
図5に、制御スイッチと制御スイッチに対応する照明装置との推定を説明するための模式図を示す。同図は、照明設置判定結果と、制御スイッチと室内マトリクスの対応表とを重ね合わせて示したものである。制御スイッチが対応付けられた区画に存在する照明装置がその制御スイッチによって制御できる照明装置であると推定する。レイアウト判定部105は、照明設置判定結果において隣接する区画で照明装置が有ると判定されている場合は、同一の制御スイッチにより操作されるまとまった1つの照明装置であると推定する。
【0025】
図6は、制御スイッチと照明装置との対応を示す対応表の例である。図6では、例えば1番の制御スイッチは照明装置aを制御できると推定する。レイアウト判定部105が推定した、制御スイッチと照明装置との対応関係は入出力制御部108に記憶される。
【0026】
マトリクススイッチ制御部107は、タッチスクリーンを備え、そのタッチスクリーンに照明装置を制御するボタンを表示するとともに、利用者が押したボタンに対応する照明装置を制御する。タッチスクリーンに表示するボタンは、照明設置判定結果に基づいて認知的負担が軽減されるように構成する。例えば、タッチスクリーン全体を照明装置が配置された天井、つまり室内マトリクスとみなし、照明装置が配置されていると判定された箇所にボタンを表示する。タッチスクリーンに表示したボタンと制御スイッチとの対応付けは、入出力制御部108に記憶した制御スイッチと照明装置推定場所との対応関係を参照して行い、タッチスクリーンに表示したボタンが押されたときに制御する照明装置を特定する。図7に、タッチスクリーンに表示されたボタン107a〜107oの例を示す。各ボタン107a〜107oに制御スイッチが対応付けられており、利用者がボタン107a〜107oを押すことで対応付けられた制御スイッチにより照明装置が制御される。
【0027】
入出力制御部108は、上記各部との間でデータを入出力して各部を制御する。
【0028】
次に、本実施の形態における照明制御装置の処理について説明する。
【0029】
図8は、本実施の形態における照明制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0030】
まず、画像入力部101が照明装置が配置された天井を撮影した画像データを入力する(ステップS11)。
【0031】
続いて、歪修正部102が画像データに写された天井の台形歪みを修正する(ステップS12)。
【0032】
続いて、輝度修正部103が画像データの輝度を修正する(ステップS13)。
【0033】
続いて、設置判定部104が画像データに写された天井を複数の区画に分けて、区画毎にその区画に照明装置が存在するか否か判定し(ステップS14)、レイアウト判定部105が天井に設置された照明装置のレイアウトを推定する(ステップS15)。
【0034】
続いて、レイアウト判定部105が設置判定部104による照明設置判定結果と対応表記憶部106に予め記憶された制御スイッチと室内マトリクスの対応表を比較して制御スイッチと照明装置との対応関係を見つけ、制御スイッチと室内マトリクスの対応表を生成する(ステップS16)。
【0035】
そして、マトリクススイッチ制御部107が制御スイッチと室内マトリクスの対応表を参照し、タッチスクリーンに照明装置の配置に対応させてボタンを表示するとともに、表示したボタンと照明装置を制御する制御スイッチとを対応付けて照明装置の制御を行う(ステップS17)。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、照明装置が配置された天井を撮影した画像データに基づき、天井を複数の区画に分けた各区画における照明装置の有無を判定し、照明設置判定結果と、制御スイッチと室内マトリクスの対応表とを比較して制御スイッチと照明装置との対応関係を推定し、照明装置の配置に対応させて照明装置を制御するボタンを表示することにより、常にボタンと物理的な照明装置との認知的対応がとれる照明装置のスイッチを提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
101…画像入力部
102…歪修正部
103…輝度修正部
104…設置判定部
105…レイアウト判定部
106…対応表記憶部
107…マトリクススイッチ制御部
108…入出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像入力手段による、照明装置が設置された設置場所を撮影した画像データを入力するステップと、
設置判定手段による、前記設置場所を複数の区画に分割したマトリクスの各区画に対応する前記画像データ上の輝度を取得して所定の閾値と比較して、前記照明装置の設置の有無を区画毎に判定した判定結果を作成するステップと、
対応推定手段による、前記マトリクスの区画に前記照明装置を制御する制御スイッチを対応させた対応表を蓄積した蓄積手段から前記対応表を読み出して前記判定結果と対比して、前記照明装置と前記制御スイッチとの対応付けを推定するステップと、
制御手段による、前記判定結果に基づいて前記照明装置に対応するボタンを表示し、前記ボタンが押されたときに当該ボタンに対応する前記照明装置に対応付けられた前記制御スイッチにより当該照明装置を制御するステップと、
を有することを特徴とする照明制御方法。
【請求項2】
歪修正手段による、前記画像データの台形歪みを修正するステップを有することを特徴とする請求項1記載の照明制御方法。
【請求項3】
輝度修正手段による、前記画像データを撮影した地点から撮影対象までの距離に応じて前記画像データの輝度を修正するステップを有することを特徴とする請求項1又は2記載の照明制御方法。
【請求項4】
照明装置が設置された設置場所を撮影した画像データを入力する画像入力手段と、
前記設置場所を複数の区画に分割したマトリクスの区画に前記照明装置を制御する制御スイッチを対応させた対応表を蓄積した蓄積手段と、
前記マトリクスの各区画に対応する前記画像データ上の輝度を取得して所定の閾値と比較して、前記照明装置の設置の有無を区画毎に判定した判定結果を作成する設置判定手段と、
前記蓄積手段から前記対応表を読み出して前記判定結果と対比して、前記照明装置と前記制御スイッチとの対応付けを推定する対応推定手段と、
前記判定結果に基づいて前記照明装置に対応するボタンを表示し、前記ボタンが押されたときに当該ボタンに対応する前記照明装置に対応付けられた前記制御スイッチにより当該照明装置を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする照明制御装置。
【請求項5】
前記画像データの台形歪みを修正する歪修正手段を有することを特徴とする請求項4記載の照明制御装置。
【請求項6】
前記画像データを撮影した地点から撮影対象までの距離に応じて前記画像データの輝度を修正する輝度修正手段を有することを特徴とする請求項4又は5記載の照明制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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