説明

照明器具および照明器具を用いた照明システム

【課題】照射効率が高く、軽量で取付けに便利であり、損傷し難い安価な照明器具およびその照明器具を用いた照明システムを提供することを目的とする。
【解決手段】蛍光管210と蛍光管210を覆う笠100とを有する照明器具200において、笠100は、少なくとも透光性を有する基材110と、基材110の外面に設けられ、蛍光管210から照射され基材110を透過した光を反射する光反射層120と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具およびその照明器具を用いた照明システムに関する。特に、本発明は、植物工場やガラス温室やビニルハウス等の施設を用いて栽培する際に用いる、植物栽培用の照明器具および照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場やガラス温室やビニルハウス等の施設を用いた栽培において、照明器具を用いた植物栽培装置が利用されている。植物栽培装置は、例えば、人工光だけで植物を育成する植物工場において用いる装置、もしくは日中の日照不足を照明器具の人工光にて補うかまたは意識的に日照時間を延ばすことにより植物の育成を制御する装置である。従来の植物栽培装置に取付けられた照明器具の多くは既製のものであり、照明器具の光源(発光体の一例)として蛍光管、高圧水銀灯、ナトリウムランプなどが使用されている。また、従来の照明器具は、金属製や厚手の発泡スチロールからなる平板あるいは適当に下方に散光する金属製の笠を上記の光源に被せて植物栽培装置の棚や柱に取付けられていた。
【0003】
しかしながら、既製の照明器具に設けられた笠の場合は、笠全体が金属により製造されているので重くなり、照明器具の取付けが困難であった。特に植物工場においては多数の照明器具が使用されると共に作業場所も狭いため、照明器具の取付けが困難である場合には作業効率が低下する。また、金属製の重い笠は、照明器具を取付ける棚にも強度を要するので、植物栽培装置の高強度化によるコストの増加を避けることができなかった。そのため特許文献1に開示された植物栽培装置においては、照明器具の笠として高反射材料からなる反射板または高反射剤を塗布した反射板、例えば白色の発泡スチロールの反射板が光源の上方に取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−352838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された照明器具は軽量ではあるものの、照明器具の笠が平面状であるので、光源から発せられた光は照射目標である植物に向かって反射されず他の部位に拡散する。このため、特許文献1においては、照明器具の照射効率が低下し、植物栽培に必要とされる光源の個数が多くなるので、照明器具の電力消費が増え、その結果として照明器具のランニングコストが高くなるという課題があった。
【0006】
従って、照射効率を高めるために、金属製の笠を使用することが依然として要求されている。ただし、金属製の笠を使用した場合には、前述のように笠自身の重さにより照明器具の取付けが困難になると共に、照明器具の笠内部に露出した金属が腐蝕して損傷しやすいという課題がある。その理由は、次のとおりである。植物工場の内部においては、植物から発生する水分や栽培用の水が蒸発するので、空気の湿度が高くなりやすい。また、照明器具の光源からの熱が笠内部の上部にこもることにより光源の周囲温度が高くなる。そのため、特に照明器具の笠内部の空気は高温多湿になり、笠内部に露出した金属が高温多湿の空気に直接的に接触するので金属が腐蝕しやすい。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題を鑑み、照射効率が高く軽量で取付けに便利であり、損傷し難い安価な照明器具およびその照明器具を用いた照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、発光体と該発光体を覆う笠とを有する照明器具において、前記笠は、少なくとも透光性を有する基材と、前記基材の外面に設けられ、前記発光体から発して前記基材を透過した光を反射する光反射層、例えば、金属製の光反射層または基材を兼ねると共に酸化チタンが混入されている反射率の高い樹脂層と、を具備することを特徴とする照明器具を提供する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の照明器具において、前記笠の前記光反射層は、前記発光体の位置を焦点とする二次曲線を包含する曲面状の反射面を有し、前記発光体から発した光を平行光として下方に反射する、照明器具を提供する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の照明器具において、前記基材は、シート状の発泡スチロールからなり、前記光反射層は、圧延されたアルミニウム箔からなる、照明器具を提供する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の照明器具において、前記基材は、透明または半透明の樹脂フィルムからなり、前記光反射層は、蒸着により前記基材に付着されたアルミニウム蒸着膜、圧延されたアルミニウム箔からなる、照明器具を提供する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載の照明器具において、前記基材は、樹脂シートからなり、前記光反射層は、前記基材に塗布または混入された高反射材からなる、照明器具を提供する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、発光体と該発光体を覆う笠とを有する照明器具において、
前記笠は、前記発光体から発した光を反射する、酸化チタンなどの高反射材が混入された樹脂シートからなる基材を具備することを特徴とする、照明器具を提供する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の照明器具において、前記基材は、前記発光体の位置を焦点とする二次曲線を包含する曲面状の反射面を有し、前記発光体から発した光を平行光として反射する、照明器具を提供する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の照明器具において、前記基材の樹脂シートは、蛍光物質を素材として形成されるか、蛍光物質が混入されるか、または前記笠の内面となる前記樹脂シートの表面に蛍光塗料が塗布されることにより蛍光機能を有し、前記基材は前記樹脂シートの蛍光機能により前記発光体から発した光または植物の葉によって反射された光を、特定の波長の光に変換して反射する、照明器具を提供する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8の何れか一項に記載の照明器具において、前記笠は、さらに、前記発光体に近接する側の前記基材の内面の少なくとも一部分に、前記発光体から発する紫外線を遮断する紫外線遮断層を具備する、照明器具を提供する。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9の何れか一項に記載の照明器具において、前記笠の内側の空気を通過させる換気口が、前記笠の頂部に形成されている、照明器具を提供する。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1から10の何れか一項に記載の照明器具において、前記笠は、さらに、該笠の形状を維持する複数のフレームを備え、前記基材は、隣り合う前記フレームから張力を受けて前記複数のフレームの間に固定されている、照明器具を提供する。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の照明器具において、前記複数のフレームは、前記発光体の位置を焦点とする二次曲線を包含する形状であり、前記基材は、クリップを用いて前記フレームに固定されることにより、前記隣り合う前記フレームから張力を受けて固定されている、照明器具を提供する。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項1から12の何れか一項に記載の照明器具と、該照明器具からの光が照射される被照射部と、を有する照明システムであって、前記照明器具は、複数の前記発光体と、該複数の前記発光体のそれぞれを覆う複数の前記笠と、を備え、複数の前記笠は、前記照明器具の中央に位置するに従って、前記発光体から発する光を前記被照射部に対してより広い範囲に平行光を反射するよう設定されている、照明システムを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の照明器具に基づき、金属製の光反射層を基材の外面に設ければ、光反射層は笠の内部にある高温多湿の空気に直接的に接触することなく基材に保護されるので、光反射層は腐蝕し難くなる。従って、笠の内面は損傷し難くなり、その結果として、照明器具を長期間使用でき、照明器具のランニングコストの低下を図ることができる。
【0022】
また、笠の基材は透光性を有しており、光反射層が基材の外面に設けられているので、笠は発光体から発した光を反射することができる。そのため、発光体からの照射効率を下げることなく、本発明に係る照明器具は照射目標である植物に対して光を発することができる。
【0023】
また、本発明に係る照明器具の笠は、発光体から発した光を平行光として下方に反射するので、照明器具は発光体から発した光のほとんどを植物に照射することができ、照明器具の照射効率が高くなる。植物以外の部位に光が拡散される従来の照明器具と比較して、本発明の照明器具の照射効率は高くなるので、植物栽培に必要な発光体の個数を少なくすることができる。従って発光体の個数が少ない分だけ、照明器具の電力消費を抑えることができ、照明器具のランニングコストの低下を図ることができる。
【0024】
笠の基材にシート状の発泡スチロールを用いれば、発泡スチロールは金属より軽量であるので、笠を軽量化でき、照明器具の取付けが容易になる。
【0025】
笠の光反射層にアルミニウム箔を用いれば、従来の金属製の笠と比較して、金属の使用量が減少するので、照明器具の製造コストの低下を図ることができる。また、金属の使用量が減少するので笠を軽量化でき、照明器具の取付けが容易になる。
【0026】
笠の基材に樹脂フィルムを用いれば、金属より樹脂フィルムは軽量であるので、笠を軽量化でき、照明器具の取付けが容易になる。
【0027】
笠の基材に樹脂シートを用い、光反射層として基材の外面に高反射材を塗布するかまたは、基材に直接、酸化チタンなどの高反射材を混入することにより、笠を軽量化すると共に安価に笠を作製することが可能になる。
【0028】
また、基材の樹脂シートは、蛍光物質を素材として形成されるか、蛍光物質が混入されるか、または笠の内面となる前記樹脂シートの表面に蛍光塗料が塗布されることにより蛍光機能を有している。蛍光機能により、蛍光管の光のうち植物が利用しない500nmから600nmの波長の光(緑色や黄色)を、植物が有効に利用する600nm以上の波長の光(赤色)に反射することが可能になる。また、基材は植物から反射された緑色の光や照明器具の下方に設置された反射板からの光も、植物の生育に有効な波長の光に変換して反射することが可能である。そのため、本発明の照明器具は、単に光を反射する従来の笠と比較して、極めて高効率に植物を生育することができる。樹脂シートに混入される蛍光物質として、無機蛍光体、有機蛍光体、蛍光染料、蛍光顔料等の種々のものが挙げられる。また、蛍光物質は、種々の波長に変換するため2種類以上の蛍光物質を利用してもよい。または、樹脂シートは可撓性のある薄板であってもよい。
【0029】
また、樹脂シートは混入された物質(例えば酸化チタン)により、反射に際して減衰機能を有することも可能である。すなわち、樹脂シートは蛍光管から照射された光のうち特定の栽培植物には有害となる300nmから400nmの近紫外線を減衰させて有効な光のみを反射することができる。減衰機能と蛍光機能とを備えることにより、本発明の照明器具は発光体からの光のうち有害な紫外線を減衰させると共に、緑色や黄色の光(500nmから600nmの波長の光)を赤色の光(600nm以上の波長の光)に変換することで、より効率よく植物を育成することができる。
【0030】
笠の光反射層に蒸着により付着されたアルミニウム蒸着膜を用いれば、従来の金属製の笠と比較して、金属の使用量が減少するので、照明器具の製造コストの低下を図ることができる。また、金属の使用量が減少するので笠を軽量化でき、照明器具の取付けが容易になる。
【0031】
発光体に近接する基材の内面の一部に紫外線遮断層を備えれば、発光体から発する光に含まれた紫外線を遮断することができ、紫外線による笠の損傷を防止することができる。笠が損傷し難くなれば、その結果として照明器具を長期間使用でき、照明器具のランニングコストの低下を図ることができる。
【0032】
笠の頂部の一部に換気口が形成されれば、発光体からの熱により高温になった笠の内側の空気が換気口を通過して照明器具の外部に排出されるので、発光体の周囲温度が下がる。従って、発光体の周囲温度の上昇に基づいた発光体の明るさの低下を防ぐことができる。その理由は、例えば発光体が蛍光管である場合、通常の蛍光管は周囲温度が25度〜35度である場合にその明るさが最大になるよう設計されており、周囲温度が蛍光管の明るさを最大にする温度以上になると、蛍光管の明るさが却って低下するからである。発光体の明るさの低下を防ぐことによって、より少ない電力により高い照射効率を実現することができる。
【0033】
基材が隣り合う二つのフレームから張力を受けて、それらフレームの間に固定されることにより、基材は可及的に長いフレームの間に渡ってフレームに沿った形状を維持することができる。そのため、笠の構成を単純にして笠の形状を維持するのに必要であったフレーム数を最小限にすることができる。すなわち、部材を削減することにより、照明器具の製造コストの低下を図ることができる。
【0034】
照明器具の中央部に位置するに従って、笠により発光体から発する光がより広い範囲に反射されるようになれば、被照射部の端部または側部における照度の低下が、中央部に位置する発光体の反射光により補われ、被照射部において照度を均一にすることができる。
【0035】
さらに詳細に述べると、例えば、多段式植物工場で使用される三列の蛍光管からなる照明器具の場合、植物に照射される光には、光源から直接的に発せられる光と笠に反射されて下方または斜めに降下して照射される平行光とがある。先ず、笠を経ないで光源から照射される光について説明する。この場合、三列の中央部に位置する蛍光管を覆う笠の直下においては、中央部の蛍光管から笠を経ずに直接的に降下する光に加えて、両隣に位置する蛍光管から笠を経ずに漏れ出た光が加わる。それに対して、例えば左側に位置する蛍光管を覆う笠の直下においては、笠を経ずに直接的に降下する光に加えて、中央に位置する蛍光管から出た光と、右側に位置する蛍光管から出る入射角の小さい光が加わる。被照射部が受ける光は、中央部から離れ左側端部に位置するに従って入射角が小さくなる光の割合が増加し、垂直方向から受ける光の割合が少なくなる。そこで、照明器具の中央部においては、笠を経ずに直接的に降下する光が強くなるので、笠により発光体から発する光がより広い範囲に反射されるようにし、笠により降下する光の密度を低くする。すなわち笠の反射による照度を低下させるよう、笠の傾斜を緩やかにする。一方、両隣に位置する蛍光管を覆う笠の下では他の蛍光管から笠を経ずに照射される光が、中央の蛍光管の笠下より弱い。そのため、両隣に位置する蛍光管を覆う笠により降下する平行光の範囲を、中央部の笠による平行光の範囲より狭くすることにより、光の密度を高くし、被照射部における照度を上げる。さらに、最端部の笠の傾斜を大きくかつ裾を長くすることにより、光の漏れを少なくすると同時に、笠を経て下方に降下する平行光の幅を最少にして平行光の密度を高くすることにより、被照射部の端部における照度を上げる。このよう照明器具の笠を設定することにより、被照射部において照度を均一にすることができる。そのため、例えば、被照射部が植物を栽培する栽培ベッドである場合、植物栽培装置における植物の生育度合いの均一化が促進される。すなわち、育成植物の品質向上および歩留り率が向上し、植物工場における栽培コストの低下を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第一の実施形態に基づく照明器具の斜視図である。
【図2】(a)図1に示される照明器具を図1のA−A線に沿って示す断面図であり、(b)照明器具の断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に基づく照明器具の正面図である。
【図4】図3に示される照明器具の平面図である。
【図5】(a)図3に示される照明器具にアルミニウム蒸着フィルムを取付ける方法を示す、照明器具の断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図であり、(b)同じくその照明器具の側面図である。
【図6】図3に示される照明器具の一部を示す斜視図であって、照明器具にアルミニウム蒸着フィルムを取付けた後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第一の実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。以下の図面において同一の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
【0038】
図1は本発明の第一の実施形態に基づく照明器具200の斜視図である。図2(a)は図1に示される照明器具200を図1のA−A線に沿って示す断面図であり、図2(b)は照明器具200の断面の一部(図2(a)のK部)を拡大して示す部分拡大断面図である。
【0039】
図1に示す照明器具200は、植物工場等で使用される植物栽培用の照明器具であり、照明器具200は植物工場内の畝310の上方に配置され、畝310上に栽培される植物300に光を照射する。照明器具200は、光源(発光体の一例)である蛍光管210、蛍光管210を電気的に接続すると共に蛍光管210を支持するソケット220、ソケット220を支持する角パイプからなる支持部材230、および蛍光管210から照射される光を反射して植物300に向けて照射する笠100から構成されている。また、ソケット220は蛍光管210を点灯するための安定器またはインバータ(図示しない)に接続されている。支持部材230には、フック224が取付けられており、フック224により照明器具200を植物工場の天井または梁から吊下げられたチェーン(図示しない)や、植物栽培装置の棚(図示しない)に取付けることが可能になっている。なお、第一の実施形態の照明器具200の光源である蛍光管210は、高周波点灯可能な三波長蛍光管である。そのため、如何なる植物に対してもその栽培に有効な波長の光を照射することができる。
【0040】
照明器具200の笠100の構成について説明する。図2(a)に示すように笠100は、透光性を有する基材110と、基材110の外面に設けられた光反射層120とを備えている。透光性とは入射した光を透過させる性質のことであり、入射した光のうち一部を透過し残りを反射する場合も含まれる。第一の実施形態に基づく照明器具200の基材110は透光性を有するシート状の発泡スチロールにより形成されおり、光反射層120はアルミニウム箔を基材110の外面に貼付けることにより形成されている。また、図1に示すように、笠100には笠100の形状を維持できるよう、フレーム130が基材110の前後端部に設けられている。笠100の形状を維持するため、支持部材230の端部であって、ソケット220の近傍に固定されたフレーム130は、基材110より厚く幅の狭い金属板により形成されている。また、笠100の頂部140の一部には、笠100内側の空気を通過させる換気口150が形成されている。また、図2(a)に示すように笠100の頂部140の内面には、蛍光管210からの紫外線を遮断する紫外線遮断層152が配置されている。
【0041】
発泡スチロールは金属より軽量であるので、基材110に発泡スチロールを用いることにより笠100を軽量化できる。また、光反射層120にアルミニウム箔を用いることにより金属の使用量が減少するので、笠100を軽量化できる。これらの結果として、照明器具200は従来の金属製の笠と比較して、大幅に軽量化され、照明器具200の取付けが容易になる。また、シート状の発泡スチロールは金属より安価であると共に、光反射層120としてアルミニウム箔を使用することにより金属の使用量が減少するので、照明器具200の製造コストの低下を図ることができる。
【0042】
次に、笠100の垂直方向の横断面形状について説明する。図2(a)に示すように、笠100は、蛍光管210を通る破線Fに対して線対称の曲面により形成されている。笠100の曲面は、蛍光管210から発せられた光が基材110の内面または光反射層120の反射面121(図2(b)参照)によって反射されることにより、その光が植物300に照射されるよう形成されている。詳しくは後述するが、図2(a)に示すように、笠100の曲面は、蛍光管210の中心を焦点とする二次曲線を包含する曲面により形成されており、蛍光管210から発した光を平行光として植物300に反射することが可能になっている。
【0043】
図2(a)および図2(b)を用いて、蛍光管210から発せられた光が笠100により反射される光路について説明する。図2(a)に示すように、笠100の基材110の外面には、光反射層120であるアルミニウム箔が貼り付けられている。基材110はシート状の発泡スチロールからなるので、蛍光管210から発せられた光は、基材110の表面により図2(a)に示す光路C1、D1、E1のように反射される。一方、シート状の発泡スチロールは透光性を有しているので、蛍光管210から発せられた光の一部は基材110を透過する。しかしながら、笠100は、基材110の外面に光反射層120としてアルミニウム箔が貼り付けてある。そのため、図2(a)に示す光路C2、D2、E2のように基材110を透過した光は光反射層120により反射され、基材110を再度通過して植物300に照射される。
【0044】
笠100の反射により植物300に向けて照射される光と、蛍光管210から植物300に向けて直接的に照射される光とを合わせると、蛍光管210から発せられる光のほとんどが植物300に向けて照射されることになる。
【0045】
ところで、光反射層120としてアルミニウム箔を基材110の内面に貼り付けることにより、蛍光管210からの光を植物300に向けて反射させることも可能である。しかしながら、前述のように、植物工場の内部において、植物から発生する水分や栽培用の水が蒸発することにより空気の湿度は高くなりやすく、さらに、蛍光管210の熱により蛍光管210の周囲の空気は高温になっている。すなわち照明器具200の笠100内部の空気は高温多湿の状態になり、基材110の内面に貼り付けられたアルミニウム箔は、高温多湿の空気に直接的に接触することになる。さらに、植物工場においては、植物300から光合成により発生した酸素が笠100内部に滞留しやすい。そのため、酸化還元反応によりアルミニウム箔の腐蝕が、笠100内部において進行しやすく、そのような環境においてアルミニウム箔を基材110の内側に貼り付けた照明器具を長期間使用することは好ましくない。第一の実施形態に基づく照明器具200の笠100は、光反射層120としてアルミニウム箔を基材110の外面に貼り付けることにより、アルミニウム箔が高温多湿かつ酸素濃度の高い空気に直接的に接触することがないよう基材110により保護している。そのため、笠100は光反射層120として貼り付けられたアルミニウム箔の腐蝕を防止することができる。従って、笠100の内面は損傷し難くなり、その結果として、照明器具200を長期間使用でき、照明器具200のランニングコストの低下を図ることができる。
【0046】
また、図2(a)に示すように、笠100の頂部140の内面には、紫外線遮断層152として蛍光管210が照射した紫外線を遮断する塗料が塗布されている。その理由は、蛍光管210として用いている三波長蛍光管が紫外線をわずかながら発しており、その紫外線により笠100が損傷するのを防止する必要があるためである。三波長蛍光管から発した紫外線はわずかなものであるので、笠100の内面のうち蛍光管210に最も近接する頂部140の周辺に紫外線遮断層152を配置すれば、紫外線は充分に遮断される。紫外線を遮断する塗料として、例えば酸化チタンや酸化亜鉛を含む塗料が挙げられる。紫外線遮断層152として、紫外線吸収剤が練り込まれた紫外線カットフィルムが笠100の頂部140の内面に貼り付けられてもよい。
【0047】
次に、図1の笠100に形成された換気口150について説明する。前述のように、蛍光管210の周囲は、笠100により覆われているため、高温多湿の空気が滞留しやすい。そのため、笠100内部に滞留する高温多湿の空気を排出する換気口150が笠100の頂部140に形成されている。第一の実施形態においては、換気口150として笠100の頂部140の一部に矩形の貫通孔が形成されている。笠100の内側の空気の温度は笠100の外側の空気の温度より高いので、煙突効果により笠100の内側の空気は上昇して換気口150を通過して笠100の外側に排出される。蛍光管210の周囲にあった高温多湿の空気が排出され、照明器具200の下方より比較的低温の空気が流入するので、蛍光管210の周囲温度は低くなる。
【0048】
通常、蛍光管210の明るさはその周囲温度に応じて定まり、周囲温度が25度〜35度の範囲にある場合おいて蛍光管210は最も明るくなるよう設計されている。そのため、周囲温度が最も明るくなるよう設定された温度以上になると、蛍光管210の明るさが却って低下する。換気口150により蛍光管210の周囲の空気が環流し、蛍光管210の周囲温度が低下すれば、蛍光管210の周囲温度の上昇に基づいた蛍光管210の明るさの低下を防ぐことができる。その結果として、より少ない電力により高い照射効率を実現することができる。
【0049】
また、笠100の内部にある高温多湿の空気を排出することにより、高温多湿の空気による基材110の変質や変色することを防止することができる。従って、より長期間に渡って、照明器具200を使用することができ、照明器具200のランニングコストの低下を図ることができる。
【0050】
次に、笠100の曲面について説明する。前述のように第一の実施形態に基づく照明器具200は植物栽培用の照明器具であり、蛍光管210から発せられる光を植物300に向けて、可及的に多くの光を照射することが望ましい。すなわち、蛍光管210から発せられる光を下方に反射するよう、笠100の曲面を決定するのがよい。例えば、図2(a)の光路C1〜E2により示されるよう、蛍光管210から照射された光が、笠100の内面により反射されて下方に照射されるよう、笠100の曲面を形成する。そのためには、笠100の反射面の垂直方向の横断面形状が、蛍光管210の中心点を焦点とした二次曲線すなわち式1に示す放物線となるようにすればよい。
【0051】
y= −x/4H (式1)
但し、図2(a)および図2(b)に示すように、原点を笠の頂部140として、原点を通過する鉛直軸線をy軸、笠100の横断方向に延びていて原点を通過する軸線をx軸とする。また、蛍光管の中心点をy軸上に配置して頂部140から蛍光管210の中心点までの距離をHとする。
【0052】
式1を用いて、笠100の曲面を決定すれば、笠100は充分に細い蛍光管210から発せられた光を反射して、平行光として下方だけでなく、照明器具200の長手方向であって斜め方向下方にも照射することが可能になる。また、式1の二次曲線は一例であり、笠100の断面形状は実際に植物に照射される照度等に応じて調整し、笠100を変形しても構わない。
【0053】
笠100は、蛍光管210から発した光を平行光線として下方に反射することにより、従来の照明器具のように光が植物以外の部位へ反射または拡散される場合と比較して、照明器具200の照射効率が高くなる。照明器具200の照射効率が高くなれば、より少ない電力により植物の生育が促進され、植物工場における栽培コストの低下を図ることができる。
【0054】
図2(a)および図2(b)を用いて照明器具200が笠100を支持する方法について説明する。ソケット220には内側に突起した掛具240が設けられており、笠100の端部が掛具240に掛けられることにより、笠100が固定される。そのため、笠100の内面は蛍光管210に直接的に接触しないようになっている。また、笠100を掛具240に掛けるだけで、笠100を固定するので、照明器具200に笠100を取付ける作業が簡便になっている。
【0055】
(第二の実施形態)
図3は、本発明の第二の実施形態に基づく照明器具202の正面図である。図4は、図3に示される照明器具202の平面図である。図5(a)は図3に示される照明器具202にアルミニウム蒸着フィルムを取付ける方法を示す、照明器具202の断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図であり、図5(b)は同じくその照明器具202の側面図である。図6は照明器具202の一部を示す斜視図であって、照明器具202にアルミニウム蒸着フィルムを取付けた後の状態を示す図である。本発明の第二の実施形態について図3から図6を用いて説明する。なお、図1および図2に示した照明器具200と同一または相当部分には同一符号を付している。
【0056】
図3に示す照明器具202は、図1に示す照明器具200と同様に植物栽培用の照明器具であり、植物工場で使用される植物栽培装置400(照明システム)に用いられる。植物栽培装置400は、照明器具202と照明器具202の被照射部である栽培ベッド320とにより構成されている。第二の実施形態に基づく照明器具202は、植物栽培用の栽培ベッド320の上方に配置されており、照明器具202は栽培ベッド320上に栽培されている植物(図示しない)に光を照射する。
【0057】
図3に示す照明器具202は、図1に示す照明器具200と同様に、光源である蛍光管210a〜210c、蛍光管210a〜210cを電気的に接続すると共に蛍光管210a〜210cを支持するソケット220、ソケット220を支持する角パイプからなる支持部材230、蛍光管210a〜210cのそれぞれを覆う笠102a〜102cから構成されている。照明器具202は、三列に並列された蛍光管210a〜210cを使用している点と、笠102〜102cの横断面形状および笠102a〜102cを形成する材料の点とにおいて、図1に示す照明器具200と異なっている。また、照明器具202により照射される植物は栽培ベッド320により水耕栽培される植物である点が異なっている。
【0058】
まず、最初に植物栽培装置400の栽培ベッド320について説明する。図3に示す栽培ベッド320は、発泡スチロールの板からなる栽培パネル322を、水を満たした桶323内に浮かべたものである。栽培パネル322の厚さは1cm〜5cmであり、幅は約60cmである。栽培パネル322は2枚組み合わせて使用するので、栽培ベッド320の幅は約1.2mになる。この栽培パネル322上に植物を植え、栽培ベッド320の上方に設置された照明器具202により光を照射して植物を栽培する。
【0059】
一般に栽培ベッドの幅が広くなると、作業者は栽培ベッドの側部から栽培ベッドの内部まで手を伸ばすことできず、作業効率が低下する。第二の実施形態では、各寸法における作業効率を鑑みて、栽培ベッド320の幅として約1.2mを採用している。栽培ベッド320の幅を約1.2mにすることにより、栽培ベッド320の側部から作業者が植物の苗を植えたり、移植したりするのに好適になると共に、ある程度の栽培可能な植物の数量を確保することができる。
【0060】
次に、第二の実施形態に基づく照明器具202について説明する。照明器具202は前述のように光源として三列の蛍光管210a〜210cを備えている。蛍光管210a〜210cは、図1に示された照明器具200の蛍光管210と同様に、高周波点灯可能な三波長蛍光管である。照明器具202は、並列された三列の蛍光管210a〜210cを使用して、栽培ベッド320上に植えられた植物に光を照射する。
【0061】
蛍光管210a〜210cは、ソケット220により電気的に外部電源に接続している。また、図3に示すようにソケット220は平角パイプからなる支持部材230によって支持されており、各支持部材230は、横架された横架材222により一体的に結合されている。また、図4に示すように、照明器具202には蛍光管210a〜210cを点灯するインバータ250が設けられており、インバータ250は横架材222により支持されている。
【0062】
次に、第二の実施形態に基づく照明器具202の笠102a〜102cの構成について説明する。図3から図5に示すように、笠102a〜102cは、基材である樹脂フィルムの外側に光反射層であるアルミニウム蒸着膜が付着したアルミニウム蒸着フィルム112、アルミニウム蒸着フィルム112を固定して笠102a〜102cの垂直方向の形状を維持するフレームであるフィルムフレーム131から構成されている。フィルムフレーム131は、金属製の幅の狭い薄板または針金より形成されている。
【0063】
アルミニウム蒸着フィルム112は、アルミニウムを高真空状態で加熱蒸発させ、その蒸気を例えば樹脂フィルムの表面に付着させることにより、樹脂フィルムにアルミニウムの薄い膜(アルミニウム蒸着膜)を形成したものである。第二の実施形態に基づく照明器具202においては、笠102a〜102cの基材として、樹脂フィルムであるポリエステルフィルムを用い、笠102a〜102cの光反射層にポリエステルフィルムの表面に付着したアルミニウム蒸着膜を用いている。ポリエステル以外の樹脂フィルムの材料としてポリプロピレン、ポリエチレンが挙げられる。また、樹脂フィルムはセロファンまたは紙であってもよい。笠102a〜102cにアルミニウム蒸着フィルム112を使用することにより、金属製の笠と比較して笠102a〜102cは軽量化され、照明器具202の取付けが容易になる。また、笠102a〜102cにアルミニウム蒸着フィルム112を使用すれば、金属製の笠と比較して金属の使用量が減少するので、照明器具202が軽量化されると共に照明器具202の製造コストの低下を図ることができる。
【0064】
次に、本実施形態の笠102a〜102cの垂直方向の横断面形状について説明する。前述のように本実施形態の照明器具202は三列の蛍光管210a〜210cを備えており、各蛍光管210a〜210cを覆うよう笠102a〜102cが形成されている。笠102a〜102cの山形の横断面形状は、3種類の曲面(向かって左半分の曲面を左から曲面E、F、Gとする。)から形成されている。基本的に笠102a〜102cは図1に示された笠100を各蛍光管210a〜210cに取付けたものである。しかしながら、単に三列の笠を並列して取付けると、笠が隣接して重畳する部分(図3の破線Jを参照)が発生し、隣り合う蛍光管(例えば図3の蛍光管210a、210b)から発する光を遮断することになる。そのため、笠が隣接して重畳する部分(破線J)を省略し、蛍光管の光が栽培ベッド320に直接的に照射されるようになっている。
【0065】
しかしながら、単に笠の重畳する部分を省略した場合、複数の蛍光管から照射される箇所が栽培ベッド320上に発生する。特に、三列の蛍光管を覆う笠において各笠の形状を同一の二次曲線により形成すると、栽培ベッド320の中央付近においては、三列の蛍光管のうちの210aと210cとの二つの蛍光管までの距離が近いため、笠を経ずに直接的に発せられた光による照度と中央の210bの笠102bを経て下方に反射される光による照度とが有効に加わって、栽培ベッド320の中央付近の照度が高くなる。一方、栽培ベッドの320の側部は、反対側の端に位置する蛍光管からの距離が比較的遠くなるので、栽培ベッド320の中央付近と比較して照度が低くなる。栽培ベッド上の照度が異なると、中央部と側部との植物の育成度合いが異なり、植物の品質にばらつきが出るなどの問題が発生する。そのため、第二の実施形態に基づく照明器具202においては、笠102a〜102cの横断面形状を外側にあるものほど傾斜が急になるように変形して、笠102a〜102cにより蛍光管210a〜210cから反射される光が栽培ベッド320上に照射される範囲を外側ほど狭くして光の密度を高くする、いいかえれば高照度になるよう調整することにより、栽培ベッド320上の照度が均一になるよう設定されている。
【0066】
第二の実施形態に基づく照明器具202おいては、中央部に位置する蛍光管210bから直接的に発せられる光は、栽培ベッド320のほぼ全体(図3のP1の範囲)に照射され、蛍光管210bから上方に発せられた光は、笠102bにより下方に平行光線として反射されるよう笠102bの横断面形状(曲面G)が設定されている。一方、笠102aの内側の横断面形状(曲面F)は、側部に位置する蛍光管210aから上方に発する光を下方に平行光線として反射し、蛍光管210aから直接的に発せられる光を栽培ベッド320の図3において向かって左半分の部分(図3のP2の範囲)に照射するよう、設定されている。笠102aの外側の横断面形状(曲面E)は、傾斜を他の曲面F、Gより急にすることにより、反射する光の密度を高くし、裾部分(笠102aの端部)を下方に伸ばして長くすることにより笠から漏れ出す無効な光を小さくしている。そのため、蛍光管210aの笠102aの曲面Fから反射する光のほとんどを密度が高い平行光線として下方に反射するよう設定されている。笠102cの反射は笠102a(曲面Eおよび曲面F)と同様であるのでその説明を省略する。
【0067】
別の言い方をすると、図3に示すように互いに隣接する笠102a〜102cの曲面E、F、Gの水平方向に対する傾斜が、照明器具202の中央部ほど緩やかになるよう設定されている。すなわち、曲面Fの傾斜は、隣接する曲面Eの傾斜よりも緩やかとなり、曲面Gの傾斜は隣接する曲面Fの傾斜よりもさらに緩やかになっている。
【0068】
このようにすれば、栽培ベッド320において照度を均一にすることができる。そのため、植物栽培装置における植物の生育度合いの均一化が促進され、育成植物の品質向上および歩留り率が向上し、植物工場における栽培コストの低下を図ることができる。なお、前述の笠102a〜102cの横断面形状は一例であり、実際の植物および栽培ベッド320に照射される照度等に応じて笠102a〜102cを変形しても構わない。
【0069】
ところで、従来の照明器具を用いて、植物栽培するのに充分な光を1.2mの幅の栽培ベッド320に照射するには、Hf蛍光管の三波長型であっても、少なくとも四列の蛍光管が必要であった。これは、従来の照明器具において蛍光管を覆う笠が光を適切に植物に向けて反射していないことが理由の一つとして挙げられる。第二の実施形態に基づく照明器具202の笠102a〜102cは、蛍光管210から発せられた光を無駄なく栽培ベッド320に向けて照射する形状に設定されているので、照明器具202の照射効率が高くなる。そのため、三列の蛍光管210a〜210cにより植物栽培することが可能になった。その結果として、照明器具202の電力消費を抑えることができ、照明器具202のランニングコストの低下を図ることができる。
【0070】
図4〜図6に示すように、笠102a〜102cの頂部140の一部に換気口150が形成されているが、図1の笠100とは換気口150の形成方法が異なる。詳しくは後述するが、笠102a〜102cを構成するアルミニウム蒸着フィルム112は、金属製のフィルムフレーム131にクリップ242により張力を掛けて貼り付けてあり、笠102a〜102cの頂部140と角パイプからなる支持部材230との間を密着させず、わずかな隙間を設けることにより換気口150が形成されている。わずかな隙間による換気口150を通じて、蛍光管210a〜210cにより熱せられた空気が照明器具202の外部に排出されるので、笠102a〜102c内部の温度が下がる。そのため、蛍光管210a〜210cの周囲温度の上昇に基づいた蛍光管210a〜210cの明るさの低下を防ぐことができる。その結果として、より少ない電力により高い照射効率を実現することができ、照明器具202のランニングコストの低下を図ることができる。
【0071】
また、笠102aの頂部140近傍の内面には、紫外線遮断層152として蛍光管210aからの紫外線を遮断する塗料が塗布されている。他の笠102b、102cも同様に紫外線遮断層152として紫外線を遮断する塗料が塗布されている。紫外線遮断層152により、蛍光管210a〜201cより発せられる光に含まれた紫外線を遮断することができ、紫外線による笠102a〜102cの損傷を防止することができる。
【0072】
また、笠102a〜102cの形状は、前述のようにフィルムフレーム131により維持されている。図5(a)および図5(b)に示すよう、フィルムフレーム131は支持部材230の両端部に取付けられている。図5(a)に示すように、アルミニウム蒸着フィルム112は、笠102aの外側から、笠102aの外面にアルミニウム蒸着膜が配置されるよう、フィルムフレーム131間に渡ってスリット(換気口150)を設けて固定される。アルミニウム蒸着フィルム112をフィルムフレーム131に固定する際、図5(b)に示すように、長手方向外側(図5(b)のT1、T2方向)に向けて張力をアルミニウム蒸着フィルム112にかける。張力をアルミニウム蒸着フィルム112にかけた状態で、複数のクリップ242を用いて、アルミニウム蒸着フィルム112の端部をフィルムフレーム131に固定する。最終的に、図6に示すよう、アルミニウム蒸着フィルム112はフィルムフレーム131に固定されるようになる。
【0073】
クリップ242を用いることにより、アルミニウム蒸着フィルム112に張力をかけた状態でアルミニウム蒸着フィルム112の端部をフィルムフレーム131に固定することができる。アルミニウム蒸着フィルム112は、支持部材230の両端部に設けられたフィルムフレーム131の間において長手方向外側に張力をかけて固定されている。そのため、アルミニウム蒸着フィルム112は垂れ下がることなくフィルムフレーム131に沿った形状を、可及的に長い距離に渡って維持することができる。その結果として、笠102a〜102cの構成を単純にして笠の形状を維持するのに必要であったフィルムフレーム131の数を最小限にすることができる。照明器具202の部材数が削減されるので、照明器具202の製造コストの低下を図ることができる。なお、アルミニウム蒸着フィルム112を照明器具202から取外せば、アルミニウム蒸着フィルム112を折り畳むことが可能になり、照明器具202がコンパクトになるため、照明器具202の搬送が簡便になる。
【0074】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明した。なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、図1に示す照明器具200の笠100において、フレーム130を金属板により形成していたが、フレーム130を金属製の針金により形成しても構わない。また、本実施形態では、基材110をシート状の発泡スチロールまたはアルミニウム蒸着フィルムにより形成していたが、基材110そのものが形状を維持可能である場合はフレーム130を排除してもよく、例えば、基材110に曲面を有する透明なプラスチックからなる、可撓性を有する薄板を用いても構わない。また、図1の笠100の端部は開放されていたが、笠100の端部に反射板を設け、笠100の端部から外に漏れ出す光を笠100の内部に反射させても構わない。
【0075】
また、図3に示す照明器具202は、三列に並列された蛍光管210a〜210cにより構成されていたが、照明器具は二列、または四列以上並列させた蛍光管と各蛍光管を覆う笠により構成されてもよい。蛍光管の列を増加させることにより、さらに広い面積の栽培ベッドに光を照射することが可能になる。また、各実施形態において照明器具の蛍光管は高周波点灯可能な三波長蛍光管であったが、それに限らず蛍光管は演色性を高めた高演色形蛍光管でも構わない。蛍光管は直線状のものに限らず、電球型や環状の蛍光管でもよい。また、蛍光管は発光体の一例であり、発光体として光ファイバーを用いて外部より光を導入しても構わない。
【0076】
また、図3〜6に示す照明器具の笠は、基材としてアルミニウム蒸着フィルムを取付けているが、アルミニウム蒸着フィルムの代わりに高反射材と蛍光物質とが混入された樹脂シートまたは可塑性を有する薄板を取付けても構わない。本発明に係る照明器具の笠は、その形状により蛍光管からの光の大半を反射光と植物に照射することが可能である。さらに、蛍光物質が混入された樹脂シートを基材に用いることによって、蛍光管からの光を特定の波長に変換して反射することが可能になる。蛍光機能により蛍光管からの光を特定の植物に対して有効となる光に変換することで、植物による光の利用効率を高めることができる。例えば、樹脂シートに3波長蛍光灯に多く含まれる緑色の光線(波長500nm〜600nm)を、赤色の光線(波長600nm以上)に変換して反射する蛍光物質を混入することにより、笠は蛍光機能により植物にとって有効な(吸収して利用する)赤色の光線を、より多く照射することが可能になる。通常、緑色植物の光の吸収は主にクロロフィルで行われている。クロロフィルは主に青い光(波長435nm前後)と赤い光(波長680nm前後)の光を吸収して利用するが、緑色の光(波長500nm〜600nm)は余り吸収せず反射や散乱している。そのため、緑色植物の葉は緑色に見えている。本発明の照明器具は、樹脂シートに混入された蛍光物質を用いて、緑色植物があまり吸収しない緑色の光を吸収しやすい赤色の光に変換して反射する。そのため、蛍光管からの光や植物の葉から反射された光を植物の生育に有効に利用することができ、エネルギーの利用効率を高めることができる。
【0077】
また、本発明に係る照明器具は、植物栽培用に使用することを目的として説明したが、住宅用照明器具、医療用照明器具または工業用照明器具等に使用しても構わない。
【符号の説明】
【0078】
100、102a、102b、102c 笠
110 基材
112 アルミニウム蒸着フィルム
120 光反射層
121 反射面
130 フレーム
131 フィルムフレーム
140 頂部
150 換気口
152 紫外線遮断層
200、202 照明器具
210、210a、210b、210c 蛍光管
220 ソケット
222 横架材
224 フック
230 支持部材
240 掛具
242 クリップ
250 インバータ
300 植物
310 畝
320 栽培ベッド
322 栽培パネル
323 桶
400 植物栽培装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体と該発光体を覆う笠とを有する照明器具において、
前記笠は、
少なくとも透光性を有する基材と、
前記基材の外面に設けられ、前記発光体から発して前記基材を透過した光を反射する光反射層と、
を具備することを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記笠の前記光反射層は、前記発光体の位置を焦点とする二次曲線を包含する曲面状の反射面を有し、前記発光体から発した光を平行光として反射する、請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記基材は、シート状の発泡スチロールからなり、前記光反射層は、アルミニウム箔からなる、請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記基材は、樹脂フィルムからなり、前記光反射層は、蒸着により前記基材に付着されたアルミニウム蒸着膜からなる、請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項5】
前記基材は、樹脂シートからなり、前記光反射層は、前記基材に塗布または混入された高反射材からなる、請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項6】
発光体と該発光体を覆う笠とを有する照明器具において、
前記笠は、前記発光体から発した光を反射する高反射材が混入された樹脂シートからなる基材を具備することを特徴とする照明器具。
【請求項7】
前記基材は、前記発光体の位置を焦点とする二次曲線を包含する曲面状の反射面を有し、前記発光体から発した光を平行光として反射する、請求項6に記載の照明器具。
【請求項8】
前記基材の樹脂シートは、蛍光物質を素材として形成されるか、蛍光物質が混入されるか、または前記笠の内面となる前記樹脂シートの表面に蛍光塗料が塗布されることにより蛍光機能を有し、前記基材は前記樹脂シートの蛍光機能により前記発光体から発した光を、特定の波長の光に変換して反射する、請求項6または7に記載の照明器具。
【請求項9】
前記笠は、さらに、前記発光体に近接する側の前記基材の内面の少なくとも一部分に、前記発光体から発する紫外線を遮断する紫外線遮断層を具備する、請求項1から8の何れか一項に記載の照明器具。
【請求項10】
前記笠の内側の空気を通過させる換気口が、前記笠の頂部に形成されている、請求項1から9の何れか一項に記載の照明器具。
【請求項11】
前記笠は、さらに、該笠の形状を維持する複数のフレームを備え、前記基材は、隣り合う前記フレームから張力を受けて前記複数のフレームの間に固定されている、請求項1から10の何れか一項に記載の照明器具。
【請求項12】
前記複数のフレームは、前記発光体の位置を焦点とする二次曲線を包含する形状であり、
前記基材は、クリップまたは留め金を用いて前記フレームに固定されることにより、前記隣り合う前記フレームから張力を受けて固定されている、請求項8に記載の照明器具。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の照明器具と、該照明器具からの光が照射される被照射部と、を有する照明システムであって、
前記照明器具は、複数の前記発光体と、該複数の前記発光体のそれぞれを覆う複数の前記笠と、を備え、
複数の前記笠は、前記照明器具の中央部に位置するに従って、前記発光体から発する光を前記被照射部に対してより広い範囲に反射するよう設定されている、照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−136717(P2010−136717A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152728(P2009−152728)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(508132458)
【出願人】(508132702)
【出願人】(508339851)
【Fターム(参考)】