説明

照明器具及び照明システム

【課題】非軸対称の所定の配光パターンが得られ、照度むらを改善でき、また照射光の多様性を発揮できる照明器具及び照明システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、光源2と、光源2からの光を非軸対称の配光パターン11に制御する制御手段5aとを備え、制御手段5aは、角度変化手段と位置変化手段とが連動するように構成されている照明器具1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮影用スタジオや舞台等の照明に用いられる照明器具及び照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポットライト等の照明器具は、基本的に軸対称の配光パターンをなすようになっている。これを図7及び図8を参照して説明する。図7(a)は、スポットライトの光の照射状態を示す説明図である。図7(a)において、天井面等から吊下げられたスポットライト1が示されている。このスポットライト1は、光源としてハロゲンランプ、電球、HIDランプ等が用いられる。光源からの光はレンズを介して光源からの直接光及び反射板からの反射光により下方へほぼ円錐状に照射される。この照射光10の床面上の投影はほぼ円形をなしている。
【0003】
次に、図7(b)は照射光10の照度分布を示すもので、横軸を距離とし、縦軸を照度としたいわゆる配光パターン11を示している。この配光パターン11から明らかなように中央部の照度が高く、中央部から遠ざかるに従い照度が低くなる軸対称の山形の配光パターン11をなしている。
【0004】
ここで、上記スポットライト1を撮影用スタジオに用いる場合について考察してみる。図8はスポットライト1の光を人物Mに照射した状態を示す説明図である。人物Mを被照射体とする場合、人物M全体を光で照射するためスポットライト1により斜め上方から人物Mを照射することとなる。
【0005】
前述したように、スポットライト1は軸対称の配光パターン11をなしているため、スポットライト1の照射光10によりスポットライトから近い部分L1は明るく、遠い部分L2は暗くなる傾向にある。したがって、人物の上部(頭部)では照射された面が明るく、下部(足下部)では照射された面が暗くなるという照度むらが生じていた。
【0006】
この照度むらを緩和するため、スポットライトの照射口に拡散フィルタを設けることが考えられる。
【0007】
一方、レンズを光軸に沿って前後方向へ摺動させてフォーカス調整とズーム調整を行うスポットライトが知られている(「特許文献1」参照)。
【特許文献1】特開2004−103361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかながら、スポットライトの照射口に拡散フィルタを設ける場合であっても、照度むらを満足できるレベルまで改善するに至らなかった。また、特許文献1では、レンズを光軸に沿って前後方向へ摺動させる技術的開示は示されているものの、照度むらを改善すべくレンズを移動させる等の技術的思想は全く開示されていない。
【0009】
そこで、本発明は、非軸対称の所定の配光パターンが得られ、照度むらを改善でき、また照射光の多様性を発揮できる照明器具及び照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の照明器具は、光源と、光源からの光を非軸対称の配光パターンに制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
制御手段は、光源とレンズとの関係において相対的に位置や角度を変えることができる手段を含み、要は、光源からの光を非軸対称の配光パターンに制御できる手段を意味し、その具体的態様は問わない。したがって、レンズを備えていない照明器具あっても、非軸対称の配光パターンに制御できる手段を構成していればよい。
【0012】
本発明の請求項2に記載の照明器具は、請求項1記載の照明器具において、制御手段は、光源の光路上に配設されたレンズに対する光源からの光の入射角を変化させる角度変化手段であることを特徴とする。
【0013】
レンズに対する光源からの光の入射角を変化させる角度変化手段は、光源に対するレンズの角度を変化させても、レンズに対する光源の角度を変化させてもよく、また、両者の角度を変化させて入射角を変化させてもよい。
【0014】
本発明の請求項3に記載の照明器具は、請求項1に記載の照明器具において、制御手段は、光源と、光源の光路上に配設されたレンズとの相対的位置関係を光軸に対して、垂直方向に変化させる位置変化手段であることを特徴とする。
【0015】
光軸に対して垂直方向に変化させるとは、光源を基準としてレンズの位置を変化させるもの、又はレンズを基準として光源の位置を変化させるものを含む。また、垂直方向とは、結果的に垂直方向であればよく、その変化の軌道は問わない。さらに、垂直方向は、幾何学的に厳密な方向を意味するものではない。
【0016】
本発明の請求項4に記載の照明器具は、請求項1に記載の照明器具において、制御手段は、請求項2に記載の角度変化手段と請求項3に記載の位置変化手段とが連動するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5に記載の照明システムは、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の照明器具と、照明器具と接続され、照明器具に制御信号を供給する照明器具制御機構とを具備することを特徴とする。
【0018】
照明器具と照明器具制御機構との接続は、有線や無線で接続されることを意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、照明器具から被照射体への光の照射方向に対応して生じる被照射体の照度むらの改善が可能であり、また、照射光の多様性を発揮できる照明器具及び照明システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の照明装置の実施形態を図1及び図2を参照して説明する。なお、上述の従来例と同一又は相当部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0021】
図1(a)において、照明器具としてのスポットライト1からの光は、下方へほぼ円錐状に照射され、この照射光10の床面上の投影はほぼ円形をなしている。配光パターン11は非軸対称に制御されており、この制御については、詳細を後述する。
【0022】
図1(b)に示す照度分布、いわゆる配光パターン11は、非軸対称であり、図示上、左側に偏って照度が高い山がある。
【0023】
次に、このスポットライト1により人物Mを照射する場合について図2を参照して説明する。まず、天井面等から吊下げられたスポットライト1は、斜め上方から人物Mに向けて、その光が照射されている。そして、スポットライト1からの配光パターン11は、図1に示すように非軸対称に制御されているので、人物Mに対し、スポットライト1から近い部分L1は照度が低く、スポットライト1から遠い部分L2は照度が高くなるように制御されている。
【0024】
したがって、光が照射される人物M全体にわたって、ほぼ均一な照度となり、照度むらの発生を少なくすることができる。
【0025】
次に、スポットライト1の配光パターン11を非軸対称に制御する構成について説明する。図3は、スポットライト1の概略の光学系を示す説明図である。スポットライト1には、光源2、反射体3、レンズ4及び制御手段が収容配置されている。
【0026】
まず、光源2には、ハロゲンランプ、電球、HIDランプ等が用いられている。そして、光源2の背面側には反射体として円弧状に曲成された反射板3が配設されている。なお、反射板は必ずしも必要ではない。一方、光源2の前面側には、レンズ4が配設されている。図中、光源2からレンズ4に向かう破線は光軸12を示すものである。
【0027】
今、光源2を点灯すると光源2からの直接光及び反射板からの反射光は、光軸12に沿ってレンズ4を通過し、被照射体に照射される。現在の状態では、図7に示すような軸対称の配光パターンとなっている。したがって、この状態で、このまま人物の照射に適用した場合には、照度むらが生じてしまうこととなる。
【0028】
そこで、この照度むらを防止すべく、制御手段の第1の実施形態について説明する。この実施形態では、レンズ4をその中央部を支軸として回動させて、レンズ4の角度を変化させ、つまり、レンズ4に対する光源2からの光の入射角を変化させるものである。この場合、レンズ4を回動でき、所定角度で停止できる制御手段として角度変化手段5aを備えている。
【0029】
一態様として、レンズ4を矢印A方向に回動し、光源2の光軸12に対する角度を変えた状態を一点鎖線4aで示す。この状態では、レンズ4に対する光源2の光軸12の角度が変わり、つまり、レンズ4に対する光源2からの光の入射角が変わり、光源2からレンズ4を通過した照射光の配光パターンは非軸対称となる。
【0030】
以上のように、この実施形態によれば、レンズ4の角度を適宜変えることにより、その場面に応じた任意の配光パターンを得ることができる。
【0031】
なお、この実施形態では、レンズを回動させ、その角度を変化させるものについて説明したが、光源の光軸を変えるが如く、光源を傾斜又は反射板の向きを変化させて、光源からの光のレンズに対する入射角を変えるような制御手段、すなわち角度変化手段を設けてもよい。
【0032】
次に、制御手段の第2の実施形態について説明する。この実施形態では、光源2と反射板3をともに矢印Bで示す上下方向に移動でき、所定位置で停止できるような位置変化手段5bを備えている。
【0033】
一態様として、光源2と反射板3を上方に移動した状態を一点鎖線2a、3aで示す。この状態では、レンズ4に対し光源2の光軸12は垂直方向に変化し、ずれることになるので、光源2からレンズ4を通過した照射光の配光パターンは、非軸対称となる。
【0034】
以上のように、位置変化手段5bでレンズ4に対する光源2の位置を調整し、所定の位置に変えることにより所望の非軸対称の配光パターンを得ることができる。
【0035】
次に、制御手段の第3の実施形態について図4を参照して説明する。上述の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0036】
この実施形態では、光源2と反射板3をともに矢印Cで示す円弧状に移動でき、所定位置で停止できるような制御手段、すなわち角度変化手段5cを備えている。
【0037】
一態様として、光源2と反射板3を移動した状態を点線2b、3bで示す。
【0038】
このような制御手段を用いた場合にも、レンズ4に対する光源2からの光の入射角が変わり、配光パターンを非軸対称に制御することができる。
【0039】
次に、制御手段の第4の実施形態について図5を参照して説明する。上述の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0040】
この実施形態では、レンズ4の角度変化と上下方向の移動ができる角度変化手段5dと位置変化手段5eとからなる制御手段を備えている。まず、光源2の前面側にレンズ4が配設されている。レンズ4は、中央部を支軸として矢印D方向に回動でき、レンズ4の角度を変化させ、レンズ4に対する光源2からの光の入射角を変化させることができるものである。加えて、このレンズ4を矢印Eで示す上下方向、つまり、光源2の光軸12に対して垂直方向に移動でき、所定位置で停止できるものである。
【0041】
これらレンズ4の角度変化と上下方向の移動は個別に制御できるようになっている。
【0042】
一態様として、第1にレンズ4を所定角度回動し(一点鎖線4bで示す。)、第2に上方に移動(破線4cで示す。)した態様を示している。
【0043】
以上のように、この実施形態によれば、レンズ4の角度変化と上下方向の位置変化を適宜調整することにより、所望の非軸対称の配光パターンを得ることができる。
【0044】
なお、レンズの角度変化と上下方向の移動機構からなる制御手段を連動するように構成してもよい。この場合、簡単な操作で所望の配光パターンが得られる。
【0045】
制御手段の操作は、手動でもよいがモータ等の駆動装置によって動作し、リモコン等によって操作されるようにするのが望ましい。
【0046】
また、例えば、配光パターンを予め複数種用意しておき、リモコンのボタン操作で所望の配光パターンを選択するようにしてもよい。
【0047】
次に、上記各実施形態における制御手段の連動について説明する。
【0048】
第1に、第1の実施形態における角度変化手段5aと、第2の実施形態における位置変化手段5bとを組合せ連動するようにして制御手段を構成し、配光パターンを制御するようにしてもよい。
【0049】
第2に、第1の実施形態における角度変化手段5aと、第3の実施形態における角度変化手段5cとを組合せ連動するようにして制御手段を構成してもよい。
【0050】
第3に、第2の実施形態における位置変化手段5bと、第4の実施形態における制御手段とを組合せ連動するようにして制御手段を構成してもよい。
【0051】
第4に、第3の実施形態における角度変化手段5cと、第4の実施形態における制御手段とを組合せ連動するようにして制御手段を構成してもよい。
【0052】
このように、各実施形態における各手段を連動させることにより、制御手段の調整で、所望の配光パターンが容易に、きめ細かく制御でき、一層多様な配光パターンを得ることができる。
【0053】
次に、各実施形態における共通事項について説明を加える。
【0054】
制御手段は、ラックとピニオンとの噛み合い等、歯車の組合せによる機構が適用できる。制御手段は、手動によって操作し、所定の配光パターンに調整できるようにしてもよいし、また、これら機構をモータ等の駆動装置によって動作するようにしてもよい。
【0055】
モータ等の駆動装置による場合も、照明器具本体に操作部を設け、この操作部の操作により制御手段を調整するようにしてもよい。
【0056】
また、図示しない中央制御盤、リモコン等の照明器具制御機構の操作により行ってもよく、この場合、照明器具制御機構と制御手段とは、有線又は無線で接続されるようになっており、照明器具制御機構の操作により、照明器具制御機構は、制御信号を発生し、その信号を制御手段に供給するようになっている。制御手段は、信号を受信し、所定の配光パターンに調整するように動作する。
【0057】
次に、第5の実施形態について図6を参照して説明する。図6は、LED光源を示す正面図である。光源6は、円形の基板7に複数のLED8が配設されており、このLED8を点灯制御する制御手段として点灯制御回路を備えている。光源6は、照明器具の照射口に取付けられ、複数のLED8は、各個別に点灯制御できるようになっており、この点灯制御により、適宜所定の配光パターンに制御できるようになっている。
【0058】
なお、上述で説明してきた各実施形態において、照明器具と被照射体との距離をセンサにより自動的に検知し、この検知結果を基に被照射体の照度分布が均一になるように制御手段を自動的に制御するようにしてもよい。
【0059】
以上の各実施形態において説明したように、制御手段を調整することにより所望の非軸対称の配光パターンを得ることができるものである。
【0060】
したがって、撮影用スタジオ等において、人物を照明器具で照射する場合には、人物全体をほぼ均一な照度で照射することができる。
【0061】
また、道路、階段等を斜め上方から照明器具によって照射する場合においては、路面、階段面の照射面が均一な照度で照射されることが好ましい。したがって、路面であれば、照明器具から遠い面は照度を高くし、近い面は照度を低くし、路面全体としてほぼ均一な照度となるように配光パターンを制御すればよい。
【0062】
本発明は、照射光の多様性を発揮できるので、照明器具の種々の使用場面において、例えば、スタジオ、舞台、ショーウインド、ディスプレー、道路、階段等において、効果的に適用することができる。
【0063】
なお、本発明は、レンズを光軸に沿って前後方向へ摺動させるフォーカス調整、ズーム調整の機構を併せ備えることは妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の照明器具の実施形態としてスポットライトの光の照射状態を示す説明図である。
【図2】同スポットライトの光を人物に照射した状態を示す説明図である。
【図3】同照明器具の制御手段の第1及び第2の実施形態を説明するための光学系を示す説明図である。
【図4】同照明器具の制御手段の第3の実施形態を説明するための光学系を示す説明図である。
【図5】同照明器具の制御手段の第4の実施形態を説明するための光学系を示す説明図である。
【図6】同照明器具に取付けられるLED光源を示す正面図である。
【図7】従来のスポットライトの光の照射状態を示す説明図である。
【図8】同スポットライトの光を人物に照射した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 :照明器具(スポットライト)
2、6 :光源
11 :配光パターン
5a〜5e :制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光源からの光を非軸対称の配光パターンに制御する制御手段とを具備することを特徴とする照明器具。
【請求項2】
制御手段は、光源の光路上に配設されたレンズに対する光源からの光の入射角を変化させる角度変化手段であることを特徴とする請求項1記載の照明器具。
【請求項3】
制御手段は、光源と、光源の光路上に配設されたレンズとの相対的位置関係を光軸に対して、垂直方向に変化させる位置変化手段であることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項4】
制御手段は、請求項2に記載の角度変化手段と請求項3に記載の位置変化手段とが連動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の照明器具と、照明器具と接続され、照明器具に制御信号を供給する照明器具制御機構とを具備することを特徴とする照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−135345(P2008−135345A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322226(P2006−322226)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】