説明

照明器具

【課題】簡単且つ安価な機構によって、器具防水性能を満足させる照明器具を提供する。
【解決手段】器具本体22を固定するための固定部材25を備える取付け板21と、取付け板21を固定するための貫通穴39およびソケット収納部34を備える器具本体22と、貫通穴39の上方に位置する段ねじ42を中心として自重によって回動可能とされ、取付け穴43が形成された取付け方向規制板40とを備え、器具本体22が正規方向(垂直方向)に向けられたときにのみ、器具本体22の貫通穴39と、取付け方向規制板40の取付け穴43とが一致して、固定部材25による取付け板21と器具本体22との組み付けを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明器具に係り、例えば、玄関の軒先などの壁面に固定して使用される照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外などの壁面に固定して使用される従来の照明器具1としては、図10に示すように、一方の面に開放面が形成されて略矩形箱型に形成された器具本体2と、この器具本体2の開放面を覆うように取り付けられる本体カバー3と、を備えるものが知られている。この器具本体2は、照明器具1が壁面に取り付けられたとき、上方、および側方となる側壁周縁に外方に張り出して形成された鍔部4を備えており、内部には、ランプ5を取り付けるソケット6、端子台7、電源線8を導入するための挿通穴が形成されたパッキン9などが収容されている。器具本体2は、器具本体2の底部2aに設けられた壁取り付け用穴10に木ねじ11を挿通して壁に固定される。また、本体カバー3は、器具本体2の開放面を覆うように器具本体2の鍔部4に嵌合させ、下面3aのねじ穴13に挿通した取付けねじ12によって器具本体2に固定される。これによって、器具本体2の内部、即ちランプ5などの構成部品は、上方から照明器具1内に浸入する水から本体カバー3によって保護されている。
【0003】
また、器具そのものを防水構造とするだけでなく、上縁が傾斜辺として形成されたパッキンを、器具本体と壁面との間に配置して、壁面を流下する水が、器具本体内に浸入することを防止するようにした壁掛け電気器具の防水構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−60920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図10に示す照明器具1は、取付け時の上下方向が決められており、器具本体2を垂直方向に向けて設置することを前提として防水される構造となっているが、実際の壁への取り付け方向は任意の方向に取付け可能となっている。従って、誤って照明器具1を上下逆方向に向けて取り付けたり、水平に近い方向に取り付けると、上方から侵入する水を阻止することができないという不都合があった。また、特許文献1に記載の壁掛け電気器具の防水構造は、パッキンの上縁を傾斜させることによって、壁面を伝って流下する水を、パッキンの上縁から直ちに排水し、電気器具内への水の浸入防止を図っている。しかし、電気器具全体を防水するため、製作費が嵩みコストとなる問題があった。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単且つ安価な機構によって、器具防水性能を満足させる照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明は、壁取付け用の取付け板と、ランプが収容されるソケット収納部を有する器具本体と、を備え、壁面に取り付けられる照明器具であって、前記取付け板は、前記器具本体を固定するための固定部材を備え、前記器具本体は、前記固定部材によって前記取付け板を固定するための貫通穴が設けられた取付け部と、前記照明器具が正規方向に向けられて前記壁面に取り付けられたとき、少なくとも3方向の側面および上面に防水壁が設けられたソケット収納部を備え、取付け穴が貫通して形成されると共に、前記器具本体の貫通穴の中心を通る垂直線上且つ前記貫通穴の上方位置に固定される段ねじに、自重によって回動自在に嵌合する取付け方向規制板を更に備え、前記器具本体が正規方向に向けられたとき、前記器具本体の貫通穴と、前記取付け方向規制板の取付け穴とが一致することを特徴としている。
【0007】
ここで、固定部材としては、例えば取付け板に固定されたスタッドボルトや取付けねじ等を例示できる。
【0008】
このように構成された照明器具においては、取付け方向規制板が、器具本体の貫通穴の垂直線上、且つ上方に固定された段ねじに嵌合し、自重によって回動自在とされて取り付けられている。従って、取付け方向規制板に形成された取付け穴は、常に段ねじの垂直下方に位置するので、器具本体が正規の方向である垂直方向に向けられたときにのみ、取付け方向規制板の取付け穴と、器具本体の貫通穴とが一致する。
【0009】
これにより、器具本体が、正規の方向である垂直方向に向けられたときにのみ、スタッドボルトや取付けねじなどの固定部材を挿通させることが可能となり、器具本体を取付け板に取り付けることができる。換言すれば、器具本体が垂直方向に向いていないときには、取付け方向規制板の取付け穴と、器具本体の貫通穴とが一致しておらず、スタッドボルトや取付けねじなどを挿通させることができず、器具本体の取付けが阻止される。
【0010】
これにより、作業者に頼ることなく、器具本体が確実に正規の方向(垂直方向)に向けられた状態での壁面設置を保証することができ、上方から照明器具内へ侵入しようとする水を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のような器具本体の設置方向を、作業者の注意力に依存するという問題を解消でき、これにより器具本体を確実に正規の方向(垂直方向)に向けて設置することができ、上方からの水の侵入を効果的に防止することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る照明器具の縦断面図、図2は図1に示す照明器具の下面図、図3は図1に示す取付け板の正面図、図4は器具本体の裏面図、図5(a)は図1における円Aで囲まれた部分の拡大図、(b)は図5(a)におけるB矢視図である。
【0013】
なお、以下の説明においては、正規の方向(垂直方向)に向けて取り付けられた照明器具を基準として上下左右を定義する。
【0014】
図1および図2に示すように、本発明の照明器具20は、壁取付け用の取付け板21と、器具本体22と、カバー23とを、主に備える。器具本体22は、取付け板21によって壁面24に固定される。
【0015】
図3も参照して、取付け板21は、縦長長方形の金属薄板の両側端が、直角に折り曲げられて断面略コの字形に形成されている。長手方向の両端には、器具本体22を固定するための固定部材であるスタッドボルト25が溶接などによって立設されている。また、長手方向の略中央付近には、電源コード挿通穴26が設けられている。この電源コード挿通穴26の周縁は、内側(図3において紙面と直角方向)に向かって立設する周壁26aがバーリング加工によって形成されている。また、電源コード挿通穴26の両側には、ねじ穴27が設けられた取付け補助板28が固定されている。また、取付け板21には、取付け板21の設置方向を指示する指示書55が貼付されている。
【0016】
取付け板21は、パッキン30を介して、2本の取付け板固定ねじ31によって壁面24に固定される。パッキン30には、電源コード挿通穴26に対応する位置に、電源コード穴29が明けられている。
【0017】
図1、図4および図5に示すように、器具本体22は、縦長長方形板状の底部32と、該底部32の4辺から立設形成された周壁33とを備える箱状に形成されており、例えば、合成樹脂の射出成形によって形成される。器具本体22は、照明器具20を壁面24に取り付けたとき上方となる側に、ソケット収納部34が形成されている。ソケット収納部34は、底部32に明けられた角穴35の上縁部から延設された天板36と、角穴35の左右縁部から延設された断面コの字形の側壁37とによって画成される。これにより、ソケット収納部34は、上方および少なくとも3方の側方が、防水壁として機能する天板36および側壁37によって覆われており、ソケット収納部34の下面および底部32側が開放されている。
【0018】
器具本体22の底部32には、略円形の一対の取付け部38が取付け板21方向に突出して形成されている。それぞれの取付け部38には、取付け板21のスタッドボルト25に対応して貫通穴39が設けられている。下方の取付け部38には、取付け方向規制板40のねじ穴41に嵌合する段ねじ42によって、取付け方向規制板40が自重によって回動自在に配設されている。
【0019】
即ち、取付け方向規制板40は、ねじ穴41の中心に対する取付け方向規制板40の重心位置に依存して、時計方向または反時計方向に自重により回動する。段ねじ42は、取付け部38の貫通穴39の中心を通る垂直線VL上且つ、貫通穴39から所定の距離Xだけ上方に位置して、取付け部38に形成された雌ねじに螺合している。また、取付け方向規制板40には、ねじ穴41から所定の距離Xだけ離間して取付け穴43が貫通して形成されている。これにより、取付け方向規制板40の取付け穴43と、器具本体22の貫通穴39とは、器具本体22が垂直方向に向けられたときにのみ一致する。また、取付け穴43の直径は、貫通穴39の直径より大きい。
【0020】
ソケット収納部34には、略L字型のソケット固定板45が、その一端を角穴35からソケット収納部34内に突出させて固定されている。これにより、ソケット収納部34の開口部である角穴35は、ソケット固定板45によって閉鎖される。ソケット固定板45には、ソケット47がランプ装着口47aを下方に向けて固定されている。ランプ装着口47aには、ランプ46が装着される。また、ソケット固定板45には、電気的にソケット47に接続されている端子台48が固定されている。
【0021】
また、図1および図2に示すように、器具本体22の両端には、略V字型に形成されたカバーホルダ50が固定され、このカバーホルダ50にカバー23がねじ51によって固定されている。カバー23は、樹脂によって形成された透明あるいは半透明の円弧板状部材であり、器具本体22の前面をカバーしている。照明器具20の上下および左右方向は、外部に開放されている。
【0022】
次に、本発明の照明器具20の壁面24への取り付けについて説明する。
先ず、図1に示すように、取付け板21と壁面24との間にパッキン30を配置し、取付け板21を2本の取付け板固定ねじ31によってパッキン30を介して壁面24に固定する。次いで、図示しない電源コードをパッキン30の電源コード穴29、取付け板21の電源コード挿通穴26から引き出して、器具本体22の端子台48に接続する。
【0023】
電源コードが接続された器具本体22を、取付け板21の方向に合わせて配置し、取付け板21のスタッドボルト25を、取付け方向規制板40の取付け穴43、および器具本体22の貫通穴39に挿通させ、取付け部38に突出するスタッドボルト25に袋ナット49を螺合させて器具本体22を取付け板21に固定する。
【0024】
このとき、図6に示すように、器具本体22の方向が正規の方向に向けられて、具体的には、ソケット収納部34の開放面が下方に向けられて、更にはソケット47のランプ装着口47aが下方に向けられて配置されると、取付け方向規制板40が自重によって回動して、取付け方向規制板40の取付け穴43と器具本体22の貫通穴39とが一致する。これによって、スタッドボルト25を支障なく取付け方向規制板40の取付け穴43と器具本体22の貫通穴39に挿通することができ、器具本体22の固定が可能となる。
【0025】
一方、図7に示すように、器具本体22が正規の方向に対して左に90°回転した状態にあると、取付け方向規制板40が、取付け方向規制板40のねじ穴41に嵌合する段ねじ42を中心として自重によって時計方向に回動するので、取付け方向規制板40の取付け穴43が器具本体22の貫通穴39より下方に位置して一致せず、スタッドボルト25の挿通が阻止される。これにより、器具本体22が、誤った方向に取り付けられることがない。
【0026】
同様に、図8に示すように、器具本体22が正規の方向に対して180°回転した状態にあると、取付け方向規制板40が自重によって回動して、取付け方向規制板40の取付け穴43と、器具本体22の貫通穴39とが一致せず、器具本体22の取付けが阻止される。この場合、取付け方向規制板40の回動方向は一定方向ではなく、そのときの取付け方向規制板40に嵌合する段ねじ42に対する取付け方向規制板40の重心位置によって時計方向または反時計方向に回動する。いずれの方向に回転した場合にも、取付け方向規制板40の取付け穴43と、器具本体22の貫通穴39とが一致することはない。
【0027】
更に、図9に示すように、器具本体22が正規の方向に対して右に90°回転した状態にあると、取付け方向規制板40が、自重によって段ねじ42を中心として反時計方向に回動し、取付け方向規制板40の取付け穴43が、器具本体22の貫通穴39より下方に位置して一致せず、スタッドボルト25を挿通させることができず、器具本体22の取付けが阻止される。
【0028】
なお、上記説明では、器具本体22が正規の方向に対して90°、または180°回転した状態について説明したが、器具本体22が僅かに傾いた状態でも、取付け方向規制板40の取付け穴43と器具本体22の貫通穴39とには芯ずれが生じて、器具本体22の取付けが阻止され、器具本体22の正規の方向(垂直方向)に向いた取付けが保証される。
【0029】
正規の方向(垂直方向)に向けて取付け板21に取り付けられた器具本体22には、ソケット47のランプ装着口47aにランプ46が装着される。そして、略V字型に形成されたカバーホルダ50にカバー23をねじ51によって固定して、照明器具20の壁面24への取り付けが完了する。
【0030】
上記したように、本発明の照明器具20によれば、取付け方向規制板40の取付け穴43が常に垂直線VL上に位置しているので、取付け方向規制板40の取付け穴43と、器具本体22の貫通穴39との一致を確認することによって、器具本体22の僅かな傾きも検出することができる。これによって、照明器具20を確実に正規の方向(垂直方向)を向けて取り付けることができる。
【0031】
また、取付け方向規制板40は、器具本体22の裏側(器具本体22の底部32と取付け板21との間)に配置されているので、取付け作業中に作業者が誤って取付け方向規制板40に触れる可能性が排除され、これによっても器具本体22の取付け姿勢(垂直方向)が確保される。
【0032】
上記したように、本発明の照明器具20によれば、従来の照明器具のように、設置方向が作業者の注意力に依存するという問題を解消でき、照明器具20を確実に正規の方向(垂直方向)に向けて設置して、上方からの水の侵入を確実に防止することができる。
【0033】
なお、本発明の照明器具は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【0034】
例えば、前述した実施形態において、固定部材としてスタッドボルトと袋ナットを例示したが、これに限定されるものではなく、取付け板21に雌ねじを形成しておき、つまみねじなどの雄ねじを、器具本体22の貫通穴39、および取付け方向規制板40の取付け穴43に挿通して取付け板21の雌ねじに螺合させるようにしてもよい。
【0035】
その他、前述した実施形態において例示した取付け板、ランプ、ソケット収納部、器具本体、照明器具、固定部材、器具本体の貫通穴、取付け部、防水壁、ソケット収納部、取付け方向規制板の取付け穴、段ねじ、取付け方向規制板、等の材質,形状,寸法,形態,数,配置個所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る照明器具の断面図
【図2】図1に示す照明器具の下面図
【図3】図1に示す取付け板の正面図
【図4】器具本体の裏面図
【図5】(a)は図1における円Aで囲まれた部分の拡大図、(b)は図5(a)におけるB矢視図
【図6】器具本体が正規方向に配置されたとき、器具本体の貫通穴と取付け方向規制板の取付け穴とが一致する状態を示す図
【図7】器具本体が正規方向から左90°回転して配置されたとき、器具本体の貫通穴と取付け方向規制板の取付け穴との位置関係を示す図
【図8】器具本体が正規方向から180°回転して配置されたとき、器具本体の貫通穴と取付け方向規制板の取付け穴との位置関係を示す図
【図9】器具本体が正規方向から右90°回転して配置されたとき、器具本体の貫通穴と取付け方向規制板の取付け穴との位置関係を示す図
【図10】従来の照明器具の分解斜視図
【符号の説明】
【0037】
20 照明器具
21 取付け板
22 器具本体
25 スタッドボルト(固定部材)
34 ソケット収納部
36 天板(防水壁)
37 側壁(防水壁)
38 取付け部
39 器具本体の貫通穴
40取付け方向規制板
42 段ねじ
43 取付け方向規制板の取付け穴
46 ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁取付け用の取付け板と、ランプが収容されるソケット収納部を有する器具本体と、を備え、壁面に取り付けられる照明器具であって、
前記取付け板は、前記器具本体を固定するための固定部材を備え、
前記器具本体は、前記固定部材によって前記取付け板を固定するための貫通穴が設けられた取付け部と、前記照明器具が正規方向に向けられて前記壁面に取り付けられたとき、少なくとも3方向の側面および上面に防水壁が設けられたソケット収納部を備え、
取付け穴が貫通して形成されると共に、前記器具本体の貫通穴の中心を通る垂直線上且つ前記貫通穴の上方位置に固定される段ねじに、自重によって回動自在に嵌合する取付け方向規制板を更に備え、
前記器具本体が正規方向に向けられたとき、前記器具本体の貫通穴と、前記取付け方向規制板の取付け穴とが一致することを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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