説明

照明構造、照明方法および携帯式コンピュータ

【課題】携帯式コンピュータのキーボート・ライトに適した照明構造を提供する。
【解決手段】導光体11は、先端部分に位置Q5を含む出射面が形成されている。出射面の位置Q5は壁の表面205から距離L1だけ突き出ている。光軸上を進行する光線106は、位置Q5で放射面に入射する。位置Q5の接線は、壁201の表面205に平行になっている。光線106の位置Q5に対する入射角は臨界角に近くなるように設定している。光源23から放射された光線は、出射面に入射すると透過して最大屈折角から所定の範囲までの屈折角で屈折する。よって、照射面203の壁の表面に近い位置から距離L2だけ離れた位置まで照明することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁の開口から外側を照射する照明構造に関し、さらに詳細には導光体が壁の表面から突き出る量を小さくしながら壁の表面に近い方向を照射する照明構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、キーボード表面を照射する照明装置(キーボード・ライト)を設けたノート・ブック型パーソナル・コンピュータ(以下、ノートPCという。)を開示する。照明装置はLEDを収納するLEDホルダで実現されている。表示装置の上縁は表示装置の表面に対して庇のように延びており、照明装置をその上縁に取り付けることでLEDホルダからの光線が直下に配置されたキーボードを照射できるようになっている。
【0003】
近年の携帯式コンピュータでは、表示装置の周囲の縁の表面と表示装置の表面とを同一の平面に存在させるようにしたいわゆるフラット・デザインという方式が採用されるようになってきた。この場合、表示装置の表面には庇のような構造物が存在しないので、特許文献1のような構造のキーボード・ライトを採用することはできない。また、LEDホルダをばね構造で支持してノートPCの蓋の開閉に応じて、筐体の内部から飛び出させたり筐体内部に押し込んだりする方法も考えられるが部品点数が増加するので好ましくない。
【0004】
特許文献2は、光源と導光板で構成した光照射装置を開示する。導光板は、光源から入射した光線を多重反射させて、底面に対する鉛直方向と水平方向の間から出射させるように構成している。特許文献3は、壁面に埋め込んで床を照射する照明装置を開示する。同文献の照明装置は、蛍光ランプから放射された光が楔型の導光体の内部で全反射を繰り返しながら進行する際に、臨界角を越えた時点で斜め下方向に徐々に出射していくようになっている。そして同文献には出射した光が壁面に対する法線に対して65度±10度の出射角で出射することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−22470号公報
【特許文献2】特許第3982174号公報
【特許文献3】特開平8−17209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の方法は、全反射の繰り返しを利用するために長い導光体が必要になるため、ディスプレイの周辺に実装するには適さない。また、キーボードのディスプレイに近い領域を照射できるほど出射角(屈折角)が大きな光線を含んでいないためキーボード・ライトに利用することはできない。特許文献2に記載された導光板を上下反転してキーボード・ライトに利用しようとする場合には、導光板は表面Fと裏面Rとの間で多重反射をするための長さが必要になり、かつキーボードの全体を照射できるほど大きな出射角の光線を含まないため特許文献3と同様の理由でキーボード・ライトへの適用には適さない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、携帯式コンピュータのキーボート・ライトに適した照明構造を提供することにある。さらに本発明の目的は、壁の表面からの導光体の突出量を小さくして壁の表面に近い方向を照射できる照明構造を提供することにある。さらに本発明の目的はそのような照明構造をキーボード・ライトに適用した携帯式コンピュータ、およびそのような照明構造を利用した照明方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような照明構造に使用する照明アセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の照明構造の第1の態様は、導光体と壁の表面より内側に配置された光源とを含んで構成され壁の外側を照射する照明構造を提供する。導光体は、光源の光が入射する入射面と、少なくとも一部が壁の表面より突き出ている出射面とを有する。そして導光体は出射面の突き出ている領域に入射した光線の一部を最大屈折角で屈折させて壁の外側に出射する。よって導光体の突き出し量を小さくしながら照射面の壁に近い領域を照射することができる。
【0009】
出射面は、平面でもよいが曲面にすると光源から放射された光線の集光効率を高めることができる。このとき出射面の断面が3次曲線または所定の半径および中心角の円弧で形成することができる。光源の光軸を進行する光線が曲面のなかで壁の表面から最も突き出ている位置に入射するように光源を設定したり出射面の形状を選定したりすれば、光源から直接出射面に入射する直接光線を最大屈折角から所定の屈折角の範囲まで均等に分散させた方向に屈折させて出射することができる。このとき、壁の表面から最も突き出ている出射面の位置に対する接平面が壁の表面に平行になるように設定することができる。
【0010】
光源の光軸を壁の法線に対して傾斜させることで、光源から直接出射面に入射するより多くの光線を壁の表面に近い方向に出射させることができる。導光体は、入射面と出射面に連絡し壁に対する取り付け面を提供する底面と、入射面と出射面に連絡し底面に対向する位置に配置された対向面とを有することができる。このとき導光体の底面には、底面における全反射を抑制するために底面に密着した吸収層を設けることができる。導光体の底面における全反射を抑制することで、底面で全反射して対向面に入射する光線を抑制することができる。吸収層に入射した光線が、吸収層と空気の境界で全反射して対向面に入射しないようにするために、吸収層を導光体の底面にスクリーン印刷で塗布した黒色系のインクで形成することができる。光の利用効率を高めるために対向面は、光源から直接入射した直接光線を全反射させて出射面に入射させる反射面を有することができる。
【0011】
本発明の照明構造の第2の態様は、壁の表面より突き出ている部分から出射する光線の一部が、最も突き出ている部分に対する接平面よりも壁の表面方向に向かって進行する。この照明構造は光線から放射された光線を1回だけ全反射させて出射面に入射させる第1の面を有することができる。また、光源から放射された直接光線および第1の面で全反射された反射光線の全反射を抑制する第2の面を有することができる。本発明は、上記の照明構造を利用した照射面の壁に近い領域を照射する方法および携帯式コンピュータならびに照明構造に使用する照明アセンブリに適用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、携帯式コンピュータのキーボート・ライトに適した照明構造を提供することができた。さらに本発明により、壁の表面からの導光体の突出量を小さくして壁の表面に近い方向を照射できる照明構造を提供することができた。さらに本発明によりそのような照明構造をキーボード・ライトに適用した携帯式コンピュータ、およびそのような照明構造を利用した照明方法を提供することができた。さらに本発明により、そのような照明構造に使用する照明アセンブリを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態にかかる照明構造に適用する照明アセンブリを説明する図である。
【図2】空気とアクリルの境界面における光線の挙動を説明する図である。
【図3】入射面に照射した平行光線が対向面に入射する際の入射角αを位置ごとに示す図である。
【図4】照明アセンブリにおける典型的な光線の経路を示す図である。
【図5】照明アセンブリを壁に取り付けて壁の開口から照射面の壁に近い領域を照射する照明構造を示す断面図である。
【図6】光軸の傾斜角を決定する方法を説明する図である。
【図7】導光体の断面形状の他の例を示す図である。
【図8】照明アセンブリをキーボード・ライトに適用する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[照明アセンブリ]
図1は、本実施の形態にかかる照明構造に適用する照明アセンブリを説明する図である。図1(A)は照明アセンブリ10の前方斜め上からみた斜視図で、図1(B)は上から見た平面図で、図1(C)は図1(B)のA−A矢視において、光源23の光軸を含み幅W方向の中心でかつ底面に垂直な平面で切断した断面図である。導光体11は、A−A矢視の断面に平行な平面でいずれの場所で切断しても図1(C)の形状になっている。
【0015】
導光体11は、材料に光の透過率が高いアクリル(PMMA)樹脂を使用して圧縮成形や射出成形などの方法で一体成形している。導光体11は、入射面13と底面12と対向面50と側面19、21を含んでいる。入射面13と側面19、21は底面12に対して垂直な平面である。導光体11は、一例として幅Wを12mm、長さLを6mm、高さHを2.5mmとしている。対向面50の断面における形状は3次曲線を採用したり、所定の半径および中心角の円弧を組み合わせたり、さらにそれらに直線を組み合わせたりして形成することができる。
【0016】
光源23には発光ダイオードを採用している。光源23の放射面は一例として直径2mmの放射面からその中心をとおり放射面に垂直な光軸に対して60度の角度で円錐状に光線が放射するように構成されている。光源23から放射された光は入射面13を通じて導光体11に進入する。対向面50のなかで、入射面13に対向する領域を先端部ということにする。対向面50には、先端部に出射面51を定義し、出射面51と入射面13との間に反射面53を定義することができる。出射面51は光源23が放射した光が導光体11から空気中に出射する領域である。
【0017】
出射面51には、入射面13から入射した光が、内部で一度も全反射しない光線と、反射面53で一度だけ全反射した(以下、最初の全反射を一次全反射といい、1次全反射した光線の全反射を二次全反射という。)光線が入射する。導光体11の内部で一度も全反射しないで対向面50に入射する光線を直接光線といい、対向面50で1回または複数回全反射してから入射する光線を反射光線ということにする。直接光線と反射光線の中で対向面50に、臨界角未満の入射角で入射した光線は対向面50を透過して空気中に出射し、臨界角を越える入射角で入射した光線は対向面50で全反射する。
【0018】
したがって、出射面51を光源23の光が出射する導光体の領域としと定義すれば、その範囲は入射する光線ごとに異なることになる。本明細書においては、光源23が放射したいずれかの直接光線または反射光線が出射する導光体11の先端部にある対向面50の領域を出射面51ということにする。本明細書では導光体11の内部に生ずる散乱光の挙動については必要がないので説明を省略する。
【0019】
導光体11の底面12には、導光体11の底面12との間に空気層が形成されないように密着させて配置した吸収層25が設けられている。吸収層25の底面27は、照明アセンブリ10の底面に相当し、照明アセンブリ10の取り付け面を提供する。吸収層25は、入射光が導光体11の底面12で全反射しないようにアクリルの屈折率に近い材料で形成されている。したがって、底面12に臨界角を越える入射角で入射した光は全反射しないで吸収層25に入る。
【0020】
本実施の形態では吸収層25に黒色系の半透明の材料を使用することで吸収層25に入射した光を吸収し、入射光が吸収層25と空気との境界で全反射して対向面50に進行しないようにしている。吸収層25は、黒色のインクを導光体11の底面12にスクリーン印刷により塗布することで形成することができる。ただし、底面12と吸収層25との間に空気層を挟まないこと、入射光を効率的に吸収できること、およびアクリルと屈折率が近いことの3つの条件を満たすことができれば、吸収層25を黒色の樹脂と透明な樹脂との2色の材料で成型した他の材料または他の方法で形成することができる。
【0021】
[屈折角と反射角]
図2は、空気と接するアクリルの内部の光線の挙動を説明する図である。屈折率はアクリル61が約1.5で空気が1である。この場合スネルの法則によりアクリル61と空気の境界63にアクリル61の内部から入射する光線の臨界角θmは42度となる。図2(A)は、0度から臨界角θmまで入射角αを変化させた光線が境界61に入射するときの様子を示す。入射角αが臨界角θm未満の間は入射光線が屈折角βまたは出射角β(β>α)でアクリル61から空気中に出射される。このときの入射角αと屈折角βの関係を図2(C)に示す。
【0022】
図2(C)からは、入射角αが35度程度までは屈折角βは入射角αにほぼ比例して増加するが、入射角αが35度を超えたあたり(屈折角が60度に対応)から入射角の増加の割合に対して屈折角βが増加する割合が増大し、臨界角θmに近づくにしたがって屈折角βが急激に増大することがわかる。屈折角βは入射角αが臨界角θmに到達する直前に最大になるが、このときの入射角を透過最大入射角といい屈折角を最大屈折角ということにする。
【0023】
後に説明する本実施の形態の照明構造では、出射面51に各入射位置で35度≦α<θmの範囲の入射角αで入射する光線ができるだけ多く入射し、かつできるだけ各光線の入射角がその位置で均等に分散するように光源23の光軸の方向、出射面51の形状、および反射面53の形状などを決めている。図2(B)は、臨界角θmを越えた入射角αで入射する光線が境界63において反射角γで全反射する様子を示す。全反射する場合は入射角αと反射角γが一致するように光線が進行する。
【0024】
[平行光線の対向面に対する入射角]
図3は、入射面13の全体に平行光線を放射する面光源を配置した場合に、平行光線が対向面50に入射する際の入射角αを底面12に対応する対向面50の位置ごとに示す図である。ここでは、対向面50の全体を3次曲線で形成した例で説明する。対向面50に対する入射角αは、対向面50の位置が入射面13から遠ざかるにしたがって小さくなり、出射面13側から測定した底面12の長さPに対応する位置で臨界角θmに達する。そして、さらに前方に近付くにしたがって入射角αが低下し、対向面50の最も先端に相当する底面12の長さLの位置では入射角αがゼロになる。よって対向面50は底面12に平行な光線に対し底面の長さPに対応する位置までは全反射し、長さPから長さLに対応する位置までは透過するように作用する。
【0025】
よって、底面12に平行な光線に対する対向面50は、長さ0から長さPに対応する位置までは反射面53となり、長さPから長さLに対応する位置までが出射面51となる。ここでは3次曲線を例示して説明したが、図のように変曲点がなく外側に膨らんだ連続する曲線の場合は、臨界角の位置はそれぞれ異なるが距離と入射角の関係は同様の傾向になる。実際の光源23は入射面13に対して光軸に平行な光線だけを照射するものではなく、さらに光源23の放射面は入射面13の面積より小さく約60度の円錐ビーム状に広がる配向特性を備えているので、対向面50のそれぞれの位置にはさまざまな入射角αで光線が入射する。
【0026】
[照明アセンブリの光線の経路]
図4は、照明アセンブリ10における典型的な光線の経路を示す図である。ここでは、図1に示したサイズの導光体において、対向面50の先端部を断面が半径1.5mmで中心角が60度の円弧で形成し、それ以外の領域を半径9mmで中心角が30度の円弧で形成している。図4は、図1のA−A矢視の断面を示している。光源23は、底面12に垂直な放射面から入射面13に60度の広がりで円錐ビーム状の光を放射しており、図では放射光の上下方向の外延を光線101と光線109で示し、光源23の放射面の上下方向の範囲を位置S1と位置S3で示している。
【0027】
光源の中心位置S2を通り放射面に垂直な光軸100上を光線106が進行する。光軸100は、底面12に平行になるように入射面13と光源23の放射面が調整されている。また、光線106が入射する対向面50上の位置P5の接線131に対する光線106の入射角は、臨界角に一致するように光源23の高さ方向の位置を設定している。
【0028】
最初に光源の位置S1と位置S3の間から放射されて、対向面の位置P5に入射する直接光線の経路を説明する。図ではこの場合の代表的な光線として、光線105、106、107を示している。光源の位置S2よりわずかに位置S3よりの位置から放射されて位置P5に入射する直接光線は透過し、図2(C)から明らかなように最大屈折角で屈折して光線121として出射する。光源の位置S2と位置S3の間から放射されて位置P5に入射する直接光線は、放射位置が位置S3に近づくにしたがって入射角が小さくなり、光線121は位置P5を中心にして矢印Aで示す右回りに回転した方向に出射する。
【0029】
光源の位置S2よりわずかに位置S1に近づいた位置から放射された直接光線は、臨界角に近い反射角で全反射して底面12に入射する。光源の位置S2と位置S1の間から放射されて位置P5に入射する直接光線は、放射位置が位置S1に近づくにしたがって入射角が大きくなって反射角も大きくなるため、底面12と対向面50が連絡する位置P8に近づくような底面12上の位置に入射する。底面12に入射した光線は、吸収層25でほぼ吸収されるため底面27ではほとんど全反射が発生しない。
【0030】
つぎに光源の位置S1と位置S3の間から放射されて光軸100に平行な光線の経路について説明する。図3(A)から類推できるように、光源の位置S1と位置S2の間から放射された光軸100に平行な光線は入射角が臨界角を越えるので位置P4と位置P5の間で一次全反射して底面12に入射するか対向面50の先端部で二次全反射して底面12に入射する。図では光線104が位置P4で一次全反射して底面12に入射する様子を示している。光源の位置S2と位置S3の間から放射された光軸100に平行な光線は、入射角が臨界角よりも小さくなるのですべて透過する。
【0031】
光源の位置S2よりわずかに位置S3よりの位置から放射された光軸100に平行な光線は図2(C)から明らかなように透過最大入射角で対向面50に入射して透過し最大屈折角で屈折する。そして、放射位置が位置S3に近づくにしたがってあるいは入射位置が位置P6に近づくにしたがって、入射角および屈折角が小さくなりそれぞれの入射位置での接線から離れる方向に屈折する。図では、光線108が位置P6で透過して光線123として出射する様子を示している。
【0032】
光源の位置S1と位置S2の間から放射されて対向面の位置P5と位置P6の間に入射する光線はこの例ではすべて一次全反射する。光源の位置S2と位置S3の間から放射されて対向面の位置P4と位置P5の間に入射する光線は、入射角が臨界角よりも小さいため透過して屈折する。透過光の屈折角は、それぞれの入射位置での入射角により、最大屈折角からそれより所定範囲だけ小さい範囲の屈折角まで各放射位置により連続的に変化する。
【0033】
つぎに、光源23から放射されて対向面の位置P4から位置P6の範囲以外の位置に入射する代表的な直接光線の経路を説明する。照明アセンブリ10は光線101が対向面50の位置P1で全反射するように光学的な形状を設定している。したがって、位置P1から対向面50と入射面13が連絡する位置である位置P0までの範囲は光学的に機能しない。また、光線109は直接底面12に入射するが、底面12では全反射しないで吸収層25で吸収される。
【0034】
光源23から対向面の位置P1からP4までの間に入射する直接光線は、この例ではいずれも対向面50で全反射する。図には、光線101が位置P1で全反射して底面12に入射し、光線102が位置P2で全反射して位置P7に入射し透過する様子を示している。出射する光線102の方向は、接線131よりも右方向に回転している。光線103は位置P3で一次全反射して位置P6と位置P7の間で二次全反射し底面12に入射する。このように位置P1から位置P4までの間で一次全反射した反射光線は、位置P6と位置P8の間に入射して透過するものを含む。対向面50で一次全反射した光線のなかで、さらに対向面50で二次全反射する光線はほとんどが底面12に入射して出射しない。
【0035】
光源23から放射されて対向面の位置P6と位置P8の間に入射する光線は、この例においては、一次全反射して底面12に入射するかまたは透過する。位置P6と位置P8の間で透過する直接光線は、光線102のように接線131よりも左方向に回転した方向(導光体11に近付く方向)に屈折するものを含む。このように光源23から放射されて対向面50の先端部分に入射する直接光線の多くは、屈折角が最大屈折角から約60度の範囲となり、それぞれの光線の入射位置における接線にほぼ近い方向から接線に対して約30度までの間で均等に方向を変えて出射する。
【0036】
以上は、照明アセンブリ10の典型的な光線の経路を説明したものであるが、照明アセンブリ10の第1の特徴は、光軸100上にある位置P5を中心とした曲面で形成された領域が、そこに入射するさまざまな経路の光線を透過させて最大屈折角から約60度の所定の屈折角まで均等に屈折さて放射する点にある。なお、所定の屈折角角は45度程度にすることもできる。第2の特徴は、吸収層25により底面12における全反射を抑制することで対向面50から出射する光線を抑制している点にある。第3の特徴は対向面50上の位置P1と位置P4の範囲にある対向面50は、そこに入射する光線を一次全反射させる、その一部の光線を位置P5から位置P8の範囲に入射させて透過するようにしている点にある。
【0037】
導光体11は、先端部分に最大屈折角から60度程度までの範囲の屈折角で屈折する対向面50を利用して、光軸100に対して下向きの方向または底面12の方向を照射するのに適した構造になっている。そして、対向面50と底面12との間で多重全反射を利用するものではないため導光体の長さLは光学的な制約を受けない。したがって、対向面50からの反射光線を照明に利用する必要がない場合は、長さLを物理的に可能な範囲まで短くすることができる。よって照明アセンブリ10は、特に大きな突起物を形成できない平坦な壁を備える小型の電子機器に適用する上で有利な構成になっている。
【0038】
[照明構造]
つぎに図5の断面図を参照して、照明アセンブリ10を壁に取り付けて照射面203の壁に近い領域を照射する照明構造を説明する。壁201は照射面203から上方に垂直に延びている。照明アセンブリ10が照射する範囲は壁からの距離L2で示している。壁の位置から距離L2までの照射面203の領域を要求照射領域という。照明アセンブリ10は、図4と同じ断面を示しているが、光源23の光軸100上を進行する光線106が対向面50に入射する位置Q1は、図4の位置P5とはわずかに異なっている。
【0039】
壁201には、照明アセンブリ10を固定する位置に開口202が形成されている。壁201は位置209でわずかに内側に傾斜してさらに照射面203に対する傾斜角θで傾斜した取り付け部207に連絡する。照明アセンブリ10は取り付け部207に底面27が取り付けられる。底面27と光軸100は平行なので、光軸100は照射面203に傾斜角θで傾斜していることになる。壁201が位置209でわずかに壁の内側方向に傾斜しているのは、導光体11の先端部分に形成された出射面が出射する光線を有効に照射面203の照射に利用するためである。
【0040】
また、光軸100を照射面203に対して傾斜させたのは、照射面203の壁201に近い領域から導光体を中心とする30度位までの領域に多くの光線を照射するためである。すなわち、図4の光線の経路では、位置P8に近い位置に透過最大入射角で入射する光線が最大屈折角またはその近辺の屈折角で出射するが、そのような光線は反射光線に限られる。そして、直接光線は入射角が小さいため、当該接線から離れた方向に出射するため光軸100を傾斜させたほうが要求照射領域を十分な照度で照明することができる。ここでは面積的に広がる光源23の放射面から放射される光線を有効に活用するために、傾斜角θを臨界角θmよりわずかに大きい45度にしているがその理由は後に説明する。
【0041】
対向面50の先端部の一部は、開口202を通じて壁の表面205よりもわずかに外側に突き出ている。光軸100上を進行する光線106が入射する対向面50の位置Q5は、対向面の中で壁の表面205から外側に最も飛び出た位置になるように光源23の入射面に対する位置を設定している。位置Q5と壁の表面205との間隔L1は約2mmに設定している。間隔L1は、有効照射領域の壁201に近い領域に要求される照度および光源の輝度などに基づいて決定することができる。位置Q5における接線221は、壁の表面205に平行または照射面203に垂直になるように設定している。
【0042】
この照明構造では、対向面の位置Q5から位置Q8の間が要求照射領域を有効に照射する出射面となる。対向面の位置Q5から位置Q4までの間では、それぞれの位置における接線が照射面203において距離L2の範囲に入る位置に入射した光線が、要求照射領域を照射することができる。したがって、位置Q4と位置Q5の間で位置Q5の近辺にある対向面も有効な出射面になる。
【0043】
出射面の範囲にある代表的な位置Q5および位置Q6に光源23から入射した直接光線または一次全反射した反射光線は、接線221または接線223に対して最大屈折角から約60度までの連続的な屈折角で出射して要求照射領域を均等の照度で照射することができる。また位置Q5から位置Q8の範囲に入射した直接光線または反射光線は、出射面から最も突き出ている位置Q5に対する接線221を含む接平面よりも壁の表面205の方向に出射する光線225も含む。
【0044】
なお図5では、導光体11と光源23を壁201の内側に配置して壁に形成した開口202を利用して導光体11の一部を壁の表面205より外側に配置する例を示したが、本発明はこのような配置方法に限定するものではない。たとえば壁の端部に形成した切り欠きを利用したり、壁に形成した窪みの中に導光体と光源を配置して導光体の少なくとも一部の領域が壁の表面より突き出るようにしたりして配置することができる。
【0045】
[傾斜角θの決定方法]
つぎに図6を参照して、光軸100の照射面203に対する傾斜角θを45度にして臨界角より3度大きくした理由を説明する。図6(A)は、照明アセンブリ10を底面に並行で光軸を含む平面で切断した断面を示す。ライン231は、図5の接線221を含む接平面231が切断されて形成されている。図6(B)は、図6(A)のB−B矢視において底面に垂直で光軸を含む平面で切断した断面図である。図6(C)は、図6(A)のC−C矢視において底面に垂直で光線16cを含む平面で切断した断面図である。図6(A)で光線106a、106、106cは同一平面上を進行して、それぞれ接平面231に接する対向面上の位置Q1a、Q1、Q1cに入射する。
【0046】
図6(C)において、接線231cは接平面231を切断した状態を示し、図6(B)の接平面231を切断した接線221よりわずかに左方向に回転している。すなわち、対向面上の位置Q1cでは、光軸を含み底面に平行な平面上を進行する光線106cの入射角θcは、光軸上を進行して対向面上の位置Q1に入射する光線106の入射角θよりも小さくなる。光線106aが入射する位置Q1aでも同様になる。
【0047】
図6(B)において、接線221の法線251に対する角度は45度の傾斜角θに対応する。したがって、光軸100上を進行する光線は対向面の位置Q1で一次全反射するので有効に利用できない。しかし、光源23の放射面は、上下方向に面積的な広がりをもっているため、光線105と光線107は光軸100に対してそれぞれ約8度程度傾斜する。したがって、放射面の位置S5より下側の位置から放射された光線は対向面の位置Q1を透過する。
【0048】
これに対して光線106cが接平面231に入射する位置Q1cではC−C矢視の切断面がB−B矢視の切断面に対して傾斜しているので光線106cの入射角θcは、傾斜角θよりも約5度小さくなる。したがって、放射面の位置S6より下側の位置から放射された光線が対向面の位置Q1cを透過する。位置Q1aに対する光線も同様に透過する。よって、位置Q1a、Q1、Q1cを含む接平面231に接する対向面の位置に入射する光線の中で、図6(A)の平面上で光軸およびその近辺を通過して位置Q1の近辺の両側に入射した光線は透過しない。
【0049】
しかし光軸よりも下方向にある放射位置から放射され、位置Q1から所定の距離だけ離れた位置から位置Q1aまたは位置Q1cまでの間に入射する光線は透過するので、光源全体としての入射光の利用率が高くなるようになっている。図6(C)では、位置S6よりも上にある放射面の領域からの光が利用できなくなっているが、その位置から放射された直接光線は接平面231に接する位置において全反射するので、出射光には利用できない領域である。このように傾斜角θを45度にすることで、特に接線221に平行に進行する光線の量を多くして入射効率を高めて、図5の間隔L1を照射面203で必要な所定の照度に対して最小にすることができる。
【0050】
[導光体の他の例]
図7は、導光体の断面形状の他の例を示す断面図である。図7(A)〜図7(D)はいずれも図1のA−A矢視に対応する位置での断面を示し、さらに底面には吸収層を備えているものとする。図7(A)の導光体では対向面301が、位置R1から位置R3までの範囲の平面状の出射面303と、3次曲線または所定の半径および中心角の円弧で形成された反射面305を備えている。光源23の光軸に対する出射面303の傾斜は、光軸上を進行する光線307が出射面303の位置R2に対して臨界角で入射するように設定している。この場合、光源の位置S1からS3の間から光軸に平行に放射された光線は透過しないが、臨界角よりも小さな角度で入射する光線は透過する。屈折角は、出射面303における入射位置と光源の放射位置で決まるが、最大屈折角から所定の範囲までの角度で均等に分散する屈折角の出射光を得ることができる。
【0051】
ただしこの場合は、反射面305で一次全反射して出射面303に入射する光線は、出射面303で二次全反射して底面305に入射するため光源23から放射される光の利用率は低下する。これを補うために、点線で示したように位置R2から底面305に垂直な平面を形成することもできる。そして出射面303を光軸に対してさまざまな角度で傾斜する平面が隣接するように形成すると、最も効率のよい図4の形状に到達することになる。
【0052】
図7(B)は、出射面313を図4の出射面と同じ形状にし、反射面315を平面状に形成した例を示す。図7(C)は、出射面を含む対向面の領域321は図4と同じ形状であるが、光源に近い領域323は光源に近付くにしたがって底面325側に湾曲している。領域323は、入射光の入射角および反射角を大きくして一次全反射した光線ができるだけ多く出射面に入射できるようにしている。図7(D)は、図5のように壁に対して光軸337を傾斜角θで傾斜させて照明アセンブリを取り付ける場合に、導光体自体を傾斜させないで壁に取り付けることができるようにしたものである。図7(D)では、光軸に対して図5の傾斜角θで交わる平面331と、平面331と入射面335を連絡する領域333で形成されている。
【0053】
[照明アセンブリの適用例]
図8は、照明アセンブリ10をノートPCに適用した例を示す図である。ノートPC400は、ディスプレイ筐体401がシステム筐体405にヒンジ403で結合されて開閉可能なように支持されている。ディスプレイ筐体401は液晶表示装置(LCD)409を収納している。システム筐体405の表面にはキーボード407が実装されている。LCD409の周囲は、縁枠411a〜411dで囲まれている。縁枠411a〜411dの表面とLCD409の表面は同一の平面上に存在する。
【0054】
天部の縁枠411bには小さな開口が形成され、内部に照明アセンブリ10が取り付けられている。照明アセンブリ10は、図5の壁201を縁枠411bに対応させて、縁枠411bの表面に対して光軸が角度θで傾斜するように取り付けられている。照明アセンブリ10は、導光体11が開口から突き出る高さを約2mm程度に抑えることができるため、縁枠411a〜411dの表面とLCDの表面を同一平面にするようなデザインに対して適用が可能になる。そして、ディスプレイ筐体401を開いた状態では、照明アセンブリ10の出射面から出射した光線がキーボード407を照射することができる。
【0055】
照明アセンブリ10の適用例は、ノートPCに限定されるものではなく、電子辞書やスマートフォンなどの電子機器の操作面の照明、自動車の内部または外部の照明、室内照明などの幅広い範囲に適用することができる。また、照明アセンブリと照射面との関係は図5に示したように、必ずしも照射面を下に配置する場合に限定するものではなく、照射面を上に配置したり左右に配置したりして導光体からの出射光線をそれらの方向に向けるようにすることもできる。
【0056】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0057】
10…照明アセンブリ
11…導光体
12…導光体の底面
13…入射面
23…光源
25…吸収層
27…照明アセンブリの底面
50…対向面
51…出射面
53…反射面
100…光軸
400…携帯式コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光体と壁の表面より内側に配置された光源とを含んで構成された照明構造であって、
前記導光体が、
前記光源の光が入射する入射面と、
少なくとも一部の領域が前記壁の表面より外側に突き出ている出射面とを有し、
前記出射面の突き出ている領域に入射した光線の一部を最大屈折角で屈折させて前記壁の外側に出射することができる照明構造。
【請求項2】
前記出射面の断面が曲線で形成されている請求項1に記載の照明構造。
【請求項3】
前記出射面の断面が3次曲線または所定の半径および中心角の円弧で形成されている請求項2に記載の照明構造。
【請求項4】
前記光源の光軸を進行する光線が前記曲線のなかで前記壁の表面から最も突き出ている位置に入射する請求項2または請求項3に記載の照明構造。
【請求項5】
前記壁の表面から最も突き出ている位置に対する接平面が前記壁の表面に平行である請求項2から請求項4のいずれかに記載の照明構造。
【請求項6】
前記光源から前記出射面に直接入射して出射する光線が、前記壁の表面に近い方向を向くように前記光源の光軸が前記壁の法線に対して傾斜している請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明構造。
【請求項7】
前記入射面と前記出射面に連絡し前記壁に対する取り付け面を提供する底面と、
前記入射面と前記出射面に連絡し前記底面に対向する位置に配置された対向面と
を有する請求項1から請求項6のいずれかに記載の照明構造。
【請求項8】
前記底面に密着して配置され前記底面における全反射を抑制して入射光を吸収する吸収層を備える請求項7に記載の照明構造。
【請求項9】
前記吸収層が前記底面にスクリーン印刷で塗布された黒色系のインクで形成されている請求項8に記載の照明構造。
【請求項10】
前記対向面が前記光源から直接入射した光を全反射させて前記出射面に入射させる反射面を有する請求項7から請求項9のいずれかに記載の照明構造。
【請求項11】
導光体と壁の表面よりも内側に配置された光源を含んで構成され壁の外側を照射する照明構造であって、
前記導光体が、
前記光源の光が入射する入射面と、
前記光源の光軸に平行な光線に対して複数の入射角を提供し少なくとも一部が前記壁の表面より突き出ている出射面とを有し、
前記壁の表面より突き出ている部分から出射する光線の一部が、最も突き出ている部分に対する接平面よりも前記壁の表面方向に向かって進行する照明構造。
【請求項12】
前記光源から放射された光線を1回だけ全反射させて前記出射面に入射させる第1の面を有する請求項11に記載の照明構造。
【請求項13】
前記光源から放射された光線および前記第1の面で全反射された光線の全反射を抑制する第2の面を有する請求項12に記載の照明構造。
【請求項14】
ディスプレイを収納するディスプレイ筐体と、
表面にキーボードが実装されたシステム筐体と、
前記ディスプレイの周囲に配置された縁枠と、
前記壁を前記縁枠の壁に適用した請求項1から請求項13のいずれかに記載の照明構造と
を有する携帯式コンピュータ。
【請求項15】
表面が湾曲した領域を有する導光体と光源で壁の外側を照明する方法であって、
前記光源を前記壁の表面よりも内側に配置するステップと、
前記光源が放射した光の入射が可能で前記湾曲した領域の少なくとも一部が前記壁の表面より外側に突き出るように前記導光体を配置するステップと、
前記導光体の突き出た部分に前記光源から直接入射する光線の入射角が臨界角を含むように前記導光体に対する前記光源の配置を決定するステップと
を有する方法。
【請求項16】
前記光軸を前記壁の法線に対して所定の角度だけ傾斜させるステップを有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
光源と、
前記光源が放射する光が入射する入射面と、前記光源の光軸上を進行する光線が臨界角で入射する位置を含み断面が湾曲している出射面と、前記出射面と前記入射面を連絡する第1の連絡面とを有する導光体とを有し、
前記出射面の少なくとも一部を壁の表面から突き出して配置する照明アセンブリ。
【請求項18】
前記第1の連絡面に密着して配置され前記第1の連絡面での全反射を抑制し入射光を吸収する吸収層を有する請求項17に記載の照明アセンブリ。
【請求項19】
さらに前記第1の連絡面に対向する位置に配置され前記出射面と前記入射面を連絡し前記光源から直接入射した光線を全反射して前記出射面に入射させる領域を含む第2の連絡面を有する請求項17または請求項18に記載の照明アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−43725(P2012−43725A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185915(P2010−185915)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】