説明

照明用レンズおよびこれを備えた照明装置

【課題】被照射面の明るさを低下させずに、輪帯明部の発生を抑制すること。
【解決手段】金型の駒割りを工夫することにより、駒の境界の凹部に起因して照明用レンズ10を射出成形した際に生じる微少な凸部40a(駒割り線16)を上面14a上に形成し、出射面12aとフランジ部14の上面14aとを滑らかに連接する。全反射面13aで反射された光はいずれも凸部40aを通らずに出射面12aあるいはフランジ部14の上面14aから出射されるので、光は散乱しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から出射された光の配光特性を制御する照明用レンズおよびこれを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、補助照明、天井照明またはショーケース用の照明等の用途には、特定の方向に光を照射することによって特定の領域を照明する照明装置が用いられている。
【0003】
このような照明装置は、LED(発光ダイオード)等の発光素子と、発光素子から出射された光の配光特性を制御する照明用レンズとを収容し、照明用レンズから出射された光を被照射面に照射する。
【0004】
照明装置の被照射面の像は、被照射面の中心における照度が最も高く、中心から離れるに従って照度が滑らかに低くなっていくものが一般的である。
【0005】
しかしながら、従来の照明装置は、被照射面において、周囲よりも照度が高い輪帯明部(輪帯状の照度むら)が発生する場合がある。
【0006】
特許文献1には、LEDの出射側に配置される照明用レンズの光出射面を粗面化することにより光を拡散させ、色むらを抑制する技術が開示されている。そして、レンズの光出射面を粗面化することは、輪帯明部の抑制にも有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−5218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、レンズの光出射面を粗面化すると、不要な方向へ向かう光が生じるため、その分、被照射面における照度が低下してしまう。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被照射面の明るさを低下させずに、輪帯明部の発生を抑制することができる照明用レンズおよびこれを備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の照明用レンズは、照明装置に収容され、発光素子から出射された光の配光特性を制御する照明用レンズであって、前記発光素子から出射された光を入射する入射面と、前記入射面の反対側に形成され、平面に投影された形状が円形であり、前記入射面から入射された光を出射する出射面と、前記出射面の径方向外方側に突出して略円環状に形成されるフランジ部と、を備え、前記出射面を延出して形成された前記フランジ部の上面が、前記出射面と滑らかに連接し、前記フランジ部の上面上に、照明用レンズの射出成形用金型の駒の境目に生じる円形の駒割り線を有する、構成を採る。
【0011】
また、本発明の照明装置は、上記発光素子と、上記照明用レンズと、を備え、前記照明用レンズから出射された光によって照明する、構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金型の駒割りを工夫することにより、フランジ部の上面上に、照明用レンズの射出成形用金型の駒の境目に生じる円形の駒割り線を生じさせ、出射面とフランジ部の上面を滑らかに連接することができるので、被照射面の明るさを低下させずに、輪帯明部の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る照明用レンズを示す斜視図
【図2】本発明の一実施の形態に係る照明用レンズの形状を示す図
【図3】従来の照明用レンズの金型を示す図
【図4】図3の金型を用いて形成された照明用レンズの拡大断面図、および、照明用レンズの内の光路を示す図
【図5】図4の照明用レンズを用いた照明装置の被照射面の像の模式図
【図6】本発明の一実施の形態に係る照明用レンズの金型を示す図
【図7】図6の金型を用いて形成された照明用レンズの拡大断面図、および、照明用レンズの内の光路を示す図
【図8】本発明の一実施の形態における効果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(照明用レンズの構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る照明用レンズ10の斜視図であり、図2は、本発明の一実施の形態に係る照明用レンズ10の形状を示す図である。図2Aは平面図、図2Bは正面断面図、図2Cは底面図である。なお、図2Bには、LED20も共に示す。
【0016】
照明用レンズ10は、平面に投影された形状が円形であり、中心軸CがLED20の光軸Lに合致するように、図示しない基板上に取り付けられ、照明装置の筐体内に収容される。なお、LED20の光軸Lは、LED20から出射される立体的な光束の中心上に仮定された中心線をいう。
【0017】
照明用レンズ10は、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PC(ポリカーボネート)、EP(エポキシ樹脂)等の透明樹脂材料や透明なガラスで形成される。
【0018】
照明用レンズ10は、入射面部11と、出射面部12と、側面部13と、フランジ部14と、底面部15と、を有する。
【0019】
入射面部11は、底面部15の底面15aの中央部を内部に凹ませることにより形成され、照明用レンズ10が基板上に取り付けられた際にLED20に対向し、LED20から出射された光を照明用レンズ10の内部に入射させる。入射面部11は、凹みの内天面である第1の入射面11aと、第1の入射面11aから凹みの開口縁まで延びる第2の入射面11bとを有する。第1の入射面11aは、中心軸Cを中心とする円形に形成され、第2の入射面11bは、平面に投影された形状が中心軸Cを中心とする円形であり、第1の入射面11a側から開口縁側へ向かうに従って内径が漸増するように、テーパ状円筒面に形成される。
【0020】
出射面部12は、第1の入射面11aの反対側に出射面12aを有し、照明用レンズ10の内部を通過した光を出射する。出射面12aは、平面に投影された形状が中心軸Cを中心とする円形であり、中心軸C上の頂点12bから外周部12cに向かって傾斜するように非球面に形成される。また、出射面12aの大部分の領域は凸面に形成され、出射面12aの外周部12cの領域は、フランジ部14の上面14aと滑らかに連接するように、凹面に形成される。
【0021】
側面部13は、底面部15の底面15aの外周縁からフランジ部14の下面14bまで延びる全反射面13aを有し、照明用レンズ10の内部を通過した光を全反射させる。全反射面13aは、平面に投影された形状が中心軸Cを中心とする円形であり、底面部15からフランジ部14に向かうに従って外径が漸増し、その母線が外側(中心軸Cから離れる側)へ凸の円弧状曲線を有するように形成される。
【0022】
フランジ部14は、出射面部12の径方向外方側に突出して略円環状に形成される。フランジ部14は、照明装置の筐体への固定を容易にするための位置決め部として用いられる。フランジ部14の上面14aは、出射面12aを延出して形成された平面であり、出射面12aと滑らかに連接する。上面14aには、照明用レンズ10を射出成形する際に金型の駒の境目に形成される微少な凸部である円形の駒割り線16が表れる。
【0023】
底面部15は、中心軸Cを中心とする円形平面の底面15aを有する。底面15aは、入射面部11の形成により円環状となる。底面部15は、基板に照明用レンズ10を固定するための位置決め部として用いられる。
【0024】
(照明用レンズ内の光路)
LED20から出射された光は、第1の入射面11aあるいは第2の入射面11bから照明用レンズ10内に入射する。
【0025】
第1の入射面11aに入射した光、および、第2の入射面11bから入射した光の一部分は、反射することなく出射面12aから出射される。また、第2の入射面11bから入射した光の残りの部分は、全反射面13aで反射し、出射面12aあるいは上面14aから出射される。なお、照明用レンズ10の出射光は、出射面12aあるいは上面14aにおいて屈折する。
【0026】
(輪帯明部の発生原因)
次に、輪帯明部の発生原因について説明する。
【0027】
図3は、従来の照明用レンズ10の金型30を示す図である。金型30は、照明用レンズ10を射出成形するために用いられる。図3に示すように、金型30は、複数の駒31−36を組み付けることにより構成される。駒31は、出射面部12(出射面12a)を形成するためのものである。駒32は、フランジ部14の上面14aを形成するためのものである。
【0028】
複数種類の照明装置に照明用レンズ10を用いる場合、照明装置の筐体の形状に応じてフランジ部14の形状を異ならせる必要があるが、出射面12aの形状を共通にすることができる。また、曲面である出射面12aを形成するための駒31の作成が平面であるフランジ部14の上面14aを形成するための駒32よりも困難である。これらの理由により、従来では、出射面12aと上面14aとの境界部分で駒31と駒32とを分割し、駒31を共通化することが一般的である。
【0029】
金型30の各駒31−36において、面と面との境界である頂部は丸みを有するため、駒31と駒32との境目には円環状の微少な凹みが生じる。
【0030】
このため、図3の金型30を用いて照明用レンズ10を射出成形した場合、出射面12aと上面14aとの境界部分に微少な凸部40(図4参照)が形成される。この微少な凸部40は、駒割り線16として視認される。
【0031】
図4は、図3の金型を用いて形成された照明用レンズ10の拡大断面図、および、照明用レンズ10の内の光路を示す図である。図4に示すように、全反射面13aで反射された光の一部が凸部40から出射される。これにより、光が散乱してしまう。
【0032】
この結果、被照射面の照度が滑らかに変化せず、図5に示すように、被照射面の像には2つの輪帯明部41、42が発生してしまう。
【0033】
(照明用レンズの金型)
図6は、本発明の一実施の形態に係る照明用レンズ10の金型30aを示す図である。図6の金型30aは、図3の金型30に対して、駒31a、32a、33aの形状が各々駒31、32、33と異なる。駒31aは、出射面部12(出射面12a)とフランジ部14の上面14aの一部分を形成するためのものである。駒32aは、フランジ部14の上面14aの残りの部分を形成するためのものである。
【0034】
図6の金型30aでは、上面14aにおいて、駒31aと駒32aとを分割する。このため、図6の金型30aを用いて照明用レンズ10を射出成形した場合、上面14a上に微少な凸部40a(図7参照)が形成され、出射面12aと上面14aとは滑らかに連接される。この微少な凸部40aは、上面14a上に、駒割り線16として視認される。
【0035】
なお、複数種類の照明装置に照明用レンズ10を用いる場合、出射面部12(出射面12a)を形成する駒31aを共通化することができる。
【0036】
(照明用レンズの光路)
図7は、図6の金型を用いて形成された照明用レンズ10の拡大断面図、および、照明用レンズ10の内の光路を示す図である。図7に示すように、図6の金型30aを用いることにより、微少な凸部40aは上面14a上に形成され、全反射面13aで反射された光はいずれも凸部40aを通らない。また、出射面12aと上面14aとが滑らかに連接されるため、光は散乱しない。
【0037】
この結果、被照射面の照度が滑らかに変化するため、被照射面の像には輪帯明部が発生しなくなる。
【0038】
(本実施の形態の効果)
以上のように、本実施の形態によれば、金型の駒割りを工夫することにより、フランジ部の上面上に、照明用レンズの射出成形用金型の駒の境目に生じる円形の駒割り線を生じさせ、出射面とフランジ部の上面を滑らかに連接することができるので、被照射面の明るさを低下させずに、輪帯明部の発生を抑制することができる。
【0039】
また、複数種類の照明装置に照明用レンズを用いる場合、出射面部を形成する駒を共通化することができる。
【0040】
以上説明した本実施の形態による効果を実証するために行った実験結果を図8に示す。なお、図8において、横軸は被照射面における光軸Lからの角度(°)、縦軸は照明用レンズ10からの出射光の角度別相対光強度(単位無し)である。本実施の形態に係る照明用レンズ10を用いた照明装置の角度別光強度の最大値を1とする。
【0041】
図8において、▲印は、図3の金型30(従来)を用いて射出成形された照明用レンズ10における光強度の測定値であり、破線のグラフは▲印の測定値を結んだものである。また、×印は、図3の金型30(従来)を用いて射出成形された照明用レンズ10の出射面12aに粗面化処理を行った場合における光強度の測定値であり、点線のグラフは×印の測定値を結んだものである。また、○印は、図6の金型30a(本実施の形態)を用いて射出成形された照明用レンズ10における光強度の測定値、実線のグラフは○印の測定値を結んだものである。
【0042】
図8から明らかなように、出射面12aに粗面化処理を行うと(図8の×印、点線グラフ)、輪帯明部の発生を抑制することができるが、被照射面に向かう光強度が低下してしまう。これに対して、本実施の形態では(図8の○印、実線グラフ)、被照射面に向かう光強度は従来(図8の▲印、破線グラフ)と殆ど変わらない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、LED等の点状光源に組み合わせる照明用レンズ、および照明装置に用いるに好適である。
【符号の説明】
【0044】
10 照明用レンズ
11 入射面部
11a 第1の入射面
11b 第2の入射面
12 出射面部
12a 出射面
12b 頂点
12c 外周部
13 側面部
13a 全反射面
14 フランジ部
14a 上面
14b 下面
15 底面部
15a 底面
16 駒割り線
20 LED
30、30a 金型
31−36、31a−33a 駒
40、40a 凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置に収容され、発光素子から出射された光の配光特性を制御する照明用レンズであって、
前記発光素子から出射された光を入射する入射面と、
前記入射面の反対側に形成され、平面に投影された形状が円形であり、前記入射面から入射された光を出射する出射面と、
前記出射面の径方向外方側に突出して略円環状に形成されるフランジ部と、を備え、
前記出射面を延出して形成された前記フランジ部の上面が、前記出射面と滑らかに連接し、
前記フランジ部の上面上に、照明用レンズの射出成形用金型の駒の境目に生じる円形の駒割り線を有する、
照明用レンズ。
【請求項2】
前記発光素子と、請求項1に記載の照明用レンズと、を備え、前記照明用レンズから出射された光によって照明する、照明装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−164578(P2012−164578A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25302(P2011−25302)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】