説明

照明装置

導電性のハウジングを備え、その内部空間には少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの光源を作動させるための電磁放射を発する少なくとも1つの切換コンポーネントとが配置されており、さらに切換コンポーネントを覆うための導電性のカバーを備えており、カバーとハウジングは互いに電気接続されている照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射を発するコンポーネントを備える特に発光ダイオード(LED)を用いた照明装置、ならびに車両用照明具に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDを作動させるためにスイッチング電源を利用すると、スイッチング電源は典型的には100KHzを超える範囲の高周波電磁放射を発し、そのために、他の電子コンポーネントのEMV問題につながる恐れがある。このことは特に、多数の電子コンポーネントが狭い空間内に集まっている自動車の分野で問題となる。
【0003】
スイッチング電源を原因とするEMVへの影響を特に車両内で抑えるために、出力回線と入力回線のフィルタリングに加えて、完全に遮蔽された独立したハウジングの中でスイッチング電源を作動させるのが通常である。このことは高いコストがかかり、場所をとり、困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の課題は、特に車両製造において特に発光ダイオードのために、とりわけ車両用ヘッドライトのために、コンパクトで重量とコストを削減するスイッチング電源のEMVシールドのための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載の照明装置によって解決され、および請求項21に記載の車両用照明具によって解決される。好ましい実施形態は、特に従属請求項から読み取ることができる。
【0006】
照明装置は少なくとも部分的に導電性のハウジングを有しており、その内部空間に少なくとも1つの光源、特にLEDと、少なくとも1つの光源を作動させるための少なくとも1つの電磁放射を発する切換コンポーネントとが配置されている。さらに照明装置は、切換コンポーネントの少なくとも1つの部分を覆うための導電性のカバーを有しており、カバーとハウジングは互いに電気接続されている。
【0007】
それによりカバーおよび通常はアースされるハウジングは、電磁放射を遮蔽するファラデーケージを形成する。ファラデーケージの内部空間は、切換コンポーネントを収容するためのシールドされた収容空間を形成する。ハウジングは、シールドされた収容空間を形成することができる範囲内でのみ導電性であればよい。
【0008】
典型的には、ハウジングは開いた側を有することができ、この側を通じて、少なくとも1つの光源から放出される光が外部に向かって放射される。
【0009】
光源を収容するハウジングを、放射性コンポーネントの格納のためにも利用することで、放射性コンポーネントをシールドするための隔絶された完全なハウジングを使わずにすませることができる。それによってコンパクトな寸法がもたらされ、ならびに、重量とコストの削減がもたらされる。
【0010】
しかも、放射性コンポーネントが組み付けられる配線板を別個に施工する必要もなくなる。最低限の層数を備える片面の配線板を使用することが可能であり、このことは、たと
えば場合によっては同じくシールドに利用できると考えられる、アースプレートを備える多層の両面の配線板の使用に比べてコスト削減を可能にする。
【0011】
この照明装置は、電磁放射が約100KHzまたはそれ以上の周波数を有するコンポーネントの遮蔽をするのに格別に良く適している。
【0012】
カバーは、少なくとも1つの光源から放出される光のビームガイドをするための光学素子を含んでいるのが好ましい。
【0013】
光学素子はリフレクタを含んでいるのが好ましい。
その場合、リフレクタはたとえば非導電性の基本形状の上に金属被覆を有している。
【0014】
あるいは、リフレクタはたとえば深絞り法で金属から製作されているのが好ましい場合もある。
【0015】
リフレクタは、たとえば他の取付手段なしで、ハウジングに導電的に保持されているのが好ましい。
【0016】
代替案として、リフレクタは導電性接着剤によってハウジングと結合されているのが好ましい。
【0017】
代替または追加として、リフレクタはたとえば金属クリップのような導電性の機械結合部材によってハウジングと結合されているのが好ましい。
【0018】
代替案として、光学素子がレンズを含んでいると好ましい場合がある。
光学素子は、光透過性で導電性のコーティングを有しているのが好ましく、このコーティングは特にハウジングと電気接続されているのが好ましい。
【0019】
コーティングが導電性接着剤によってハウジングと電気接続されていると特別に好ましい。代替案として、これ以外のどのような適当な導電接続でも適用することができ、たとえばはんだ接続を適用することができる。
【0020】
代替または追加として、カバーは光透過性でビームフォーミングをしない密閉部材、特に密閉ガラスを含んでいると好ましい場合がある。
【0021】
その場合、密閉部材は、ハウジングと電気接続された光透過性で導電性のコーティングを有していると好ましく、特に、コーティングが導電性接着剤によってハウジングと電気接続されていると好ましい。
【0022】
ハウジングが金属で製作されている照明装置が好ましい。
代替案として、導電性の特に金属被覆されたプラスチックでハウジングが製作されている照明装置が好ましい場合がある。
【0023】
たとえば冷却用リブを設けることによって、あるいは冷却用リブなしで、ハウジングが冷却体として構成されている照明装置が特別に好ましい。
【0024】
さらに、少なくとも1つの電磁放射を発する切換コンポーネントが、電気引込線の電磁放射を低減させるための少なくとも1つの電子フィルタ部材と接続されている照明装置が好ましい。
【0025】
たとえばヘッドライト、ウィンカー、テールランプ、ブレーキランプ、サイドライト、ロービームなどとしての、車両におけるこのような照明装置の利用法が特に好ましい。
【0026】
少なくとも1つのLEDは単一のLEDであってよく、または複数のLEDを含むことができる。複数のLEDは、LEDクラスタと呼ばれるグループとして配置されていてよい。特に、LEDクラスタは複数の異なる色のLEDを有することができ、たとえばRGB,RRGB,RGGBのような種類の白色の加法混色に適しているのが好ましい。LEDはスペクトル的に純粋に、または混合されて放射をすることができる。赤外光または紫外光を放射するLEDも含まれる。たとえば青色光から黄色光への変換をするために、たとえば燐光体をベースとする波長変換をする材料を備えるLEDも含まれる。
【0027】
以下の実施例において本発明を模式的に詳しく説明する。ここでは、同じ符号は複数の図面を通じて同じ部材を表すか、または機能が同じ部材もしくは類似の部材を表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態の照明装置を断面図として示す側面図である。
【図2】第2の実施形態の照明装置を断面図として示す側面図である。
【図3】第3の実施形態の照明装置を断面図として示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、光学軸Oを中心として回転対称の導電性のハウジング2を備え、その内部空間3が片側の開口部4を有する照明装置1を示している。内部空間3の底面には、片側に実装された遮蔽をしない配線板5が取り付けられており、この配線板は上面にLED6と、LED6を制御するためのスイッチング電源のコンポーネント7とが片側で実装されている。コンポーネント7は、ハウジング2によって案内される、図示しない供給配線によって供給を受ける。
【0030】
開口部4の縁部には、中央の開口部(符号なし)を有する導電性のリフレクタ8が被されており、この開口部を通ってLED6が案内されている。リフレクタ8により、LED6からリフレクタに向かって放射される光は、開口部4を通って光学軸Oに対して対称に外方に向かって放射される。リフレクタ8はスイッチング電源のコンポーネント7を覆っており、それにより、ハウジング2とともに当該コンポーネント7のための収容空間9を形成している。さらにリフレクタ8とハウジング2は、リフレクタ8とハウジング2の間の境界面10にある導電性接着剤によって、相互に電気接続されている。
【0031】
リフレクタ8とハウジング2の間の電気接続ないしアース接続により、電磁放射が収容空間9から外部へ、またはその内部へ入るのを妨げるファラデーケージが形成される。このとき、LED6を挿通するためにリフレクタ8にある中央の開口部は、スイッチング電源により生成される約≧100KHzの典型的な周波数については無害である。
【0032】
図示した例では、リフレクタ8は場合により防護層を備える金属でできており、深絞り法で製作されている。
【0033】
代替案として、ハウジングは回転対称に施工されるのではなく長尺状に施工され、その場合、図1では長軸は紙面に対して鉛直に位置することになる。このようなケースは、特に、たとえば高いところに取り付けられるブレーキライトの長尺状のライトを構成するために、共通のリフレクタを有する複数のLEDを横に並べるのに適している。
【0034】
代替案として、リフレクタは、ハウジングと適当に接続された特に広い面積の金属被覆
を有しており、たとえばプラスチック本体に塗布されている。その場合、この金属被覆は光を反射させるためにも利用することができる。
【0035】
ハウジングに対するリフレクタのアース接続として、場合によってはハウジングに対する機械的な保持だけで十分であり、すなわち粘着結合なしで十分である。代替または追加として、アース接続はたとえば金属からなる機械的なクランプ装置によって行われていてもよい。
【0036】
図2は、図1の照明装置とは異なり、リフレクタに代えて、開口部4を覆い、透明で導電性のコーティング13を有する投影レンズ12が(二次)光学系として用いられる照明装置11を示している。コーティング13は導電性接着剤14によってハウジングと結合されており、それにより、ハウジング2とレンズ12ないしそのコーティング13によってEMV遮蔽ないし収容空間15の形成が行われる。コーティング13はたとえばInO:Sn、ZnO:AI、またはカーボンナノチューブを含むことができる。設計に応じて、導電性コーティング13はレンズ12の内面または外面に塗布されていてよい。これに加えて、LED6とレンズ12との間には、LED6から発せられる光のビームフォーミングをするための一次光学系16が配置されている。
【0037】
この場合にもハウジングは回転対称に構成さている必要はなく、たとえば、特に複数のLEDを用いる場合には長尺状に施工されていてもよい。
【0038】
図3は、図2の実施形態とは異なり、レンズに代えて、主要な光学作用を有していない光透過性の密閉ガラス18が設けられた照明装置17を示している。密閉ガラス18も透明で導電性のコーティング19を有しており、このコーティングは、本例では導電性接着剤20によってハウジングと結合されており、それにより、ハウジング2と密閉ガラス18ないしそのコーティング19によってEMV遮蔽ないし収容空間21の形成が行われる。コーティング19はたとえばInO:Sn、ZnO:AI、またはカーボンナノチューブを含むことができる。設計に応じて、導電性コーティング19は主要な光学作用を有さない密閉ガラス18の内面または外面に塗布されていてよい。
【0039】
照明装置(LEDモジュール)への電気引込線(図面なし)のEMVに適った遮蔽のために、ドライバ電子装置7には、引込ケーブルの遮蔽を不要にする電子フィルタ素子が組み込まれている。そうでない場合、両端部で相応の対応プラグと導電接続される、シールドされた引込ケーブルを使用することも可能である。
【0040】
当然ながら、本発明は前述した各実施例に限定されるものではない。たとえば内部空間の形状はさまざまな特徴を備えていてよく、たとえば断面は四角形でなく任意に成形されていてよい。
【0041】
ハウジングが冷却体として施工されていてもよく、そのために、たとえば冷却用リブを有することができる。
【0042】
ハウジングは、たとえばフルメタルに代えて、金属被覆または金属補強されたプラスチックや、その他の適当な導電性の材料もしくは複合材料でできていてもよい。
【0043】
光学素子はリフレクタや投影レンズに限定されるものではなく、たとえばコリメータレンズやレンズアレイなど、あらゆる適当な光学素子を含むことができる。
【0044】
さらに、単一のLEDを光源として用いる必要があるわけでもなく、たとえばそれぞれの色が加法混色される、複数の異なる色のLEDからなるLEDクラスタを用いることも
できる。
【0045】
一般に、本発明はLEDだけに限定されるものではなく、制御のために放射性の部材を必要とするこれ以外の適当な光源、たとえばレーザダイオードなども含むことができる。
【0046】
また、LEDの制御のために必要なのではなくそれ以外の目的のために必要な放射性の部材を、収容空間に格納することもできる。
【0047】
本発明は車両製造での適用に限定されるものではなく、あらゆる適当な照明用途を含むことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 照明装置
2 ハウジング
3 内部空間
4 開口部
5 配線板
6 LED
7 スイッチング電源のコンポーネント
8 リフレクタ
9 収容空間
10 境界面
11 照明装置
12 投影レンズ
13 コーティング
14 接着剤
15 収容空間
16 一次光学系
17 照明装置
18 密閉ガラス
19 コーティング
20 接着剤
21 収容空間
O 光学軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のハウジング(2)を備え、その内部空間(3)には少なくとも1つの光源(6)、特にLEDと、少なくとも1つの前記光源(6)を作動させるための電磁放射を発する少なくとも1つの切換コンポーネント(7)とが配置されており、さらに前記切換コンポーネント(7)を覆うための導電性のカバー(8;12,13;18,19)を備えており、前記カバー(8;12,13;18,19)と前記ハウジングは互いに電気接続されている照明装置(1;11;17)。
【請求項2】
前記電磁放射は約100KHzまたはそれ以上の周波数を有している、請求項1に記載の照明装置(1;11;17)。
【請求項3】
前記カバー(8;12,13;18,19)は前記光源から放出される光をビームフォーミングするための光学素子を含んでいる、先行請求項のうちいずれか1項に記載の照明装置(1;11)。
【請求項4】
前記光学素子はリフレクタ(8)を含んでいる、請求項3の照明装置(1)。
【請求項5】
前記リフレクタは金属被覆を有している、請求項4に記載の照明装置(1)。
【請求項6】
前記リフレクタ(8)は金属で製作されている、請求項4に記載の照明装置(1)。
【請求項7】
前記リフレクタ(8)は前記ハウジング(2)で導電的に保持されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載の照明装置(1)。
【請求項8】
前記リフレクタ(8)は導電性接着剤によって前記ハウジング(2)と結合されている、請求項4〜7のいずれか1項に記載の照明装置(1;11;17)。
【請求項9】
前記リフレクタは導電性の機械的な結合部材によって前記ハウジング(2)と結合されている、請求項4〜8のいずれか1項に記載の照明装置(1)。
【請求項10】
前記光学素子はレンズ(12)を含んでいる、請求項3に記載の照明装置(11)。
【請求項11】
前記レンズ(12)は光透過性で導電性のコーティング(13)を有している、請求項10に記載の照明装置(11)。
【請求項12】
前記コーティング(13)は前記ハウジング(2)と電気接続されている、請求項11に記載の照明装置(11)。
【請求項13】
前記コーティング(13)は導電性接着剤(14)によって前記ハウジング(2)と電気接続されている、請求項12に記載の照明装置(11)。
【請求項14】
前記カバーは光透過性でビームフォーミングをしない密閉部材、特に密閉ガラス(18)を含んでいる、請求項1〜2のいずれか1項に記載の照明装置(17)。
【請求項15】
前記密閉部材(18)は前記ハウジング(18)と電気接続された光透過性で導電性のコーティング(19)を有している、請求項14に記載の照明装置(17)。
【請求項16】
前記コーティング(19)は導電性接着剤(20)によって前記ハウジング(2)と電気接続されている、請求項15に記載の照明装置(17)。
【請求項17】
前記ハウジング(2)は金属で製作されている、先行請求項のうちいずれか1項に記載の照明装置(1;11;17)。
【請求項18】
前記ハウジングは導電性プラスチックで製作されており、特に金属被覆されたプラスチックで製作されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の照明装置(1;11;17)。
【請求項19】
前記ハウジングは冷却体として構成されている、先行請求項のうちいずれか1項に記載の照明装置(1;11;17)。
【請求項20】
電磁放射を発する少なくとも1つの前記切換コンポーネント(7)は電気引込線の電磁放射を低減するための少なくとも1つの電子フィルタ素子と接続されている、先行請求項のうちいずれか1項に記載の照明装置(1;11;17)。
【請求項21】
少なくとも1つの前記光源は少なくとも1つのLED(6)を有している、先行請求項のうちいずれか1項に記載の照明装置(1;11;17)。
【請求項22】
先行請求項のうちいずれか1項に記載の照明装置(1;11;17)を備えている車両用照明具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−531037(P2010−531037A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512612(P2010−512612)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006570
【国際公開番号】WO2009/021694
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(508096703)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (92)
【Fターム(参考)】