照明装置
【課題】 光源の近傍における軸方向の変位に対する幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)の変動が抑制された帯状の光を放射することができる原稿読み取り用の照明装置の提供。
【解決手段】 本発明の照明装置は、光源と、当該光源からの光がその端面から入射されて軸方向に伸びる帯状の光を放射する棒状の導光体とが、当該光源の光軸および当該導光体の軸が一致する状態に設けられてなる照明装置であって、前記導光体が、その端面に光制御手段が形成されてなるものであり、前記光制御手段は、その中心軸が前記導光体の軸上に位置された軸方向外方に凹状の円錐面に多数の光方向制御素子が形成されてなるものであることを特徴とする。光方向制御素子は、入射光を当該導光体の軸方向に係る放射方向と交わる方向に拡散するプリズムであることが好ましい。
【解決手段】 本発明の照明装置は、光源と、当該光源からの光がその端面から入射されて軸方向に伸びる帯状の光を放射する棒状の導光体とが、当該光源の光軸および当該導光体の軸が一致する状態に設けられてなる照明装置であって、前記導光体が、その端面に光制御手段が形成されてなるものであり、前記光制御手段は、その中心軸が前記導光体の軸上に位置された軸方向外方に凹状の円錐面に多数の光方向制御素子が形成されてなるものであることを特徴とする。光方向制御素子は、入射光を当該導光体の軸方向に係る放射方向と交わる方向に拡散するプリズムであることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機の原稿読み取り用光源として用いられる照明装置、詳しくは、LEDなどの光源および当該光源からの光をその端面から伝播させて帯状の光を放射する棒状の導光体からなる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機の原稿読み取り用光源として、LEDなどの光源と、当該光源からの光を端部から伝播させて帯状の光を放射する棒状の照明装置が用いられている。
【0003】
このように複写機の原稿読み取り用光源として利用される照明装置においては、原稿情報を正確に読み取るために、長手方向および幅方向の全体にわたって照度の均一性の高い光を出射することが求められる。
しかしながら、従来の照明装置においては、出射される光に、光源の近傍において長手方向および幅方向に非常に急峻な照度変化を示す場所が存在しており、このような照明装置を利用した複写機においては、原稿の正確な複写ができず、形成される画像にムラが生じてしまう、という問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1には、光源に対する導光体内部の反射部材の位置をずらすことによって、光源の近傍における長手方向の照度変化の急峻さを抑制する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、このような照明装置においては、放射される帯状の光の幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)に左右の対称性が得られず、また、光源の近傍における軸方向の変位に対する副走査分布の変動が大きい。これらのことから、読み取り位置がずれた場合に急激な照度低下に起因する画像ムラが発生してしまう、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3155938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、光源の近傍における軸方向の変位に対する幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)の変動が抑制された帯状の光を放射することができる原稿読み取り用の照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の照明装置は、光源と、当該光源からの光がその端面から入射されて軸方向に伸びる帯状の光を放射する棒状の導光体とからなる照明装置であって、
前記導光体が、その端面に光制御手段が形成されてなるものであり、
前記光制御手段は、その中心軸が前記導光体の軸上に位置された凹状の円錐面に多数の光方向制御素子が形成されてなるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の照明装置においては、前記光制御手段の光方向制御素子が、入射光を当該導光体の軸方向に係る放射方向と交わる方向に拡散するプリズムであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の照明装置においては、前記光制御手段を構成するプリズムが、形状が三角錐状であるものであって、当該プリズムの一つの稜線が前記導光体の軸方向に係る放射方向に伸びると共に、前記導光体の軸中心から離間するに従って当該プリズムの幅が大きくなるよう形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の照明装置によれば、光源からの光が、多数の光方向制御素子を介して導光体の内部に入射される。従って、入射光の導光体内での反射回数が増加されるので、導光体の断面における照度分布の均一化が極めて光源に近い位置において達成され、その結果、光源の近傍における軸方向の変位に対する副走査分布の変動が抑制された帯状の光を放射することができる。これにより、原稿読み取り用の光源として用いたときに画像ムラの発生が抑制される。
【0012】
また、光方向制御素子が入射光を導光体の軸方向に係る放射方向と交わる方向に光を拡散するプリズムである構成の照明装置によれば、導光体の入射端面における光がいろいろな角度成分の光路を持った光となって、入射端面の近傍における長手方向および幅方向の照度変化の急峻さが抑制されてブロードなものとされた、長手方向および幅方向の全体にわたって照度の均一性の高い帯状の光を放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の照明装置の構成の一例を、光源を省略した状態で模式的に示す概略説明図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図2】図1の照明装置の端部を拡大して示す概略説明図である。
【図3】図1の光制御手段の部分を拡大した側面図である。
【図4】導光体の軸方向および放射方向を説明するための模式図である。
【図5】本発明に係る光方向制御素子の構成の一例を示す斜視図である。
【図6】入射光の1回目の反射点を説明するための模式図である。
【図7】実験例および比較実験例における導光体、ミラーおよびコンタクトガラスの配置関係を示す模式断面図である。
【図8】実験例および比較実験例における測定位置を説明するための、図7の白抜き矢印方向から見た模式図である。
【図9】実験例の結果を示す副走査方向の照度分布曲線である。
【図10】比較実験例の結果を示す副走査方向の照度分布曲線である。
【図11】本発明に係る光方向制御素子の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
図1は、本発明の照明装置の構成の一例を、光源を省略した状態で模式的に示す概略説明図であり、図2は、図1の照明装置の端部を拡大して示す概略説明図であり、図3は、図1の光制御手段の部分を拡大した側面図である。
本発明の照明装置は、光源11と、当該光源11からの光が導光体15の端面(入射端面)から入射されて軸方向に伸びる帯状の光を放射する棒状の導光体15とが、本実施例においては、当該光源の光軸と当該導光体15の軸Pとが、一致する状態に設けられてなるものである。
この例の照明装置においては、光源11が導光体15の両端面側にそれぞれ配置され、導光体15の両端面に各々光制御手段12が形成されている。
【0015】
導光体15は、導光体本体15Aと、当該導光体本体15Aに形成された、その長手方向に沿って、当該長手方向に垂直な断面における外周輪郭が円弧状の光出射面15Fと、当該導光体本体15Aの光出射面15Fに対向する周面に、光源11からの光を光出射面15Fに向かって反射する、例えば微小のプリズム群が形成されてなる光反射面15D,15Eとを有するものである。図1において、15B,15Cは、導光体15にその長手方向に沿って形成された保持用突状部である。
導光体本体15Aにおける光出射面15Fおよび光反射面15D,15Eは、導光体15の軸方向に垂直な断面において、光反射面15D,15Eの中間点および導光体15の軸に係る点を通る直線について、線対称な形状を有する。
【0016】
導光体15を構成する材料としては、ポリメチルメタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどを用いることができ、このような材料を用いることにより、射出成形法によって導光体15を作製することができる。
導光体15の寸法の一例を挙げると、全長が340mm、光出射面15Fを形成する円弧の半径が2.8mm、光反射面15D,15Eの幅がそれぞれ1.0mmである。
【0017】
光源11としては、例えば白色LED、RGB単色LEDなどを用いることができ、具体的には、例えば、基板および当該基板上にLEDチップが実装され、反射枠によって当該LEDチップからの光が反射されて発光指向性を有する光が出射される表面実装型のLEDを用いることが好ましい。
【0018】
〔光制御手段〕
光制御手段12は、その中心軸が導光体15の軸P上に位置された凹状の円錐面12βに、多数の光方向制御素子12aが形成されてなるものである。(実際には、光方向制御素子12a間の谷底に相当する線を軸Pを中心に当該導光体15の円周方向に回転させた面が円錐面12βとなる。)
また、具体的な製法としては、導光体15が、例えば射出成型によって、光方向制御素子12aの形状も含めて一体的に作製される。
導光体15の入射端面は、多数の光方向制御素子12aの表面によって構成されている。
【0019】
円錐面12βと導光体15の軸Pとの角度θは、1°〜10°であることが好ましく、より好ましくは2.5°〜7.5°である。
【0020】
光方向制御素子12aは、光を導光体15の軸方向に係る放射方向qと交わる方向sに拡散するプリズムである。
ここに、導光体15の軸方向に係る放射方向qとは、図4に示されるように、導光体15の軸Pと交わり、かつ、当該軸Pから外方に向かう方向をいう。
【0021】
光方向制御素子12aが入射光を導光体15の軸方向に係る放射方向qと交わる方向sに光を拡散するプリズムであることにより、導光体15の入射端面における光がいろいろな角度成分の光路を持った光となる。これにより、照明装置において、導光体15の入射端面の近傍における長手方向および幅方向の照度変化の急峻さが抑制されてブロードなものとされ、長手方向および幅方向の全体にわたって照度の均一性の高い帯状の光を放射することができる。
【0022】
光方向制御素子12aを構成するプリズムは、形状が三角錐状であるものであって、光制御手段12においては、当該プリズムの一つの稜線fが導光体15の軸方向に係る放射方向qと同一方向であり、導光体15の軸Pとの交点から円周方向に向けて徐々に傾斜する方向に沿って伸びると共に、導光体15の軸中心から離間するに従って当該プリズムの幅が大きくなるよう形成されている。
【0023】
この例の光制御手段12においては、40個のプリズムよりなる光方向制御素子12aが、各々、光方向制御素子12aの底面が円錐面12βに一致し、隣接する光方向制御素子12a間が接触し、さらに、導光体15の軸中心に対応する位置を中心として回転対称となるよう形成されている。そして、このような光制御手段12は、光方向制御素子12aの各々の稜線が光源11と対向する状態に、配設されている。
光方向制御素子12aが回転対称に形成されていることにより、幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)に左右の対称性が得られる。
【0024】
光方向制御素子12aの数は、3個以上とされることが好ましく、より好ましくは24〜100個である。
【0025】
この例の光制御手段12の寸法の一例を図5を参照して説明すると、各光方向制御素子12aのプリズム高さ(光制御手段12の円錐面12βから垂直方向高さが最も高い頂点の高さ)Hが0.16mm、各光方向制御素子12aを構成する三角錐の面のうち軸P方向外方を向いたプリズム側面12γによって形成される略二等辺三角形の底角θ1が35°、隣接する光方向制御素子12a間の開き角(隣接する光方向制御素子12a,12aの稜線f,fの軸P方向への投影線g,gのなす角)θ2が9°各光方向制御素子12aのプリズム角度(光方向制御素子12aの稜線fと、円錐面12βにおける当該稜線fの軸P方向への投影線gとのなす角度)θ3が3.7°である。
【0026】
このような照明装置においては、光源11から放射される光が、当該光制御手段12を構成する各光方向制御素子12aにおいて、導光体15の軸方向に係る放射方向qと交わる方向sに光が拡散された状態とされて、導光体15に入射される。
そして、導光体15に入射された光は、この導光体15によってその周面に反射されながら当該導光体15の長手方向に導かれると共に、光反射面15D,15Eによって反射され、この反射光が導光体15の光出射面15Fから出射され、これにより導光体15から帯状の光が放射される。
【0027】
本発明の照明装置においては、図6に示されるように、光源11から放射される光の、導光体本体15Aの周面への1回目の反射点L1 が、光制御手段として導光体15の軸Pとの角度θが90°である平面Xを有する円盤の一面に多数の光方向制御素子が形成されたものを用いた場合の光の、導光体本体15Aの周面への1回目の反射点L2 と比較して、導光体15の入射端面側に位置される。従って、入射光の導光体本体15A内での反射回数が増加されるので、導光体本体15A内の光の強度分布がより光源11側において均一化され、その結果、光源の近傍における軸方向の変位に対する幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)の変動が抑制される。
【0028】
<実験例1>
光源として白色LEDを用い、下記の条件により、図1に示す照明装置(A)を作製した。
導光体(15)は、材質がアクリル系樹脂で、全長が340mm、光出射面(15F)を形成する円弧の半径が2.8mm、光反射面(15D,15E)の幅がそれぞれ1.0mmである。
【0029】
<比較実験例1>
本発明に係る光制御手段(12)の代わりに、平面を有する円盤に三角錐状のプリズムが多数形成されてなる光制御手段を設けたことの他は実験例1と同様にして、照明装置(B)を作製した。
【0030】
これらの照明装置(A),(B)を、図7に示すようにミラー(M)およびコンタクトガラス(G)と共に配置し、図8に示すように導光体本体(15A)の中央位置t0から長手方向にそれぞれt(t=30mm、70mm、110mm、150mm)の位置の断面に係るコンタクトガラス(G)上の副走査方向(w)の照度分布(副走査分布)を測定した。照明装置(A)に係る結果を図9に示す。また、照明装置(B)に係る結果を図10に示す。なお、図8は、図7のコンタクトガラス(G)と導光体(15)を白抜き矢印Aの方向から見た図である。
コンタクトガラス(G)の厚みは3mm、コンタクトガラス(G)の表面とミラー(M)の中心との距離、および、コンタクトガラス(G)の表面と導光体(15)の軸Pとの距離s1はいずれも12mm、導光体(15)の軸Pとコンタクトガラス(G)の主走査方向に平行な中心線との距離s2は6mm、導光体(15)のコンタクトガラス(G)に対する傾きαは60°とした。
【0031】
図9、図10において、縦軸は任意強度、横軸はコンタクトガラス(G)の長手方向に伸びる中心線からの副走査方向への距離であり、それぞれ、■がマークされた曲線はt=150mm、◇がマークされた曲線はt=110mm、▲がマークされた曲線はt=70mm、×がマークされた曲線はt=30mmの、それぞれ副走査方向の照度分布曲線である。
【0032】
図9、図10から明らかなように、照明装置(A)においては、照明装置(B)に比較して、測定位置の軸方向の変位(tの変位)に伴う副走査分布の変動(バラツキ)が抑制されていることがわかる。
【0033】
以上のような照明装置によれば、光源11からの光が、多数の光方向制御素子12aを介して導光体15の内部に入射される。従って、入射光の導光体15内での反射回数が増加されるので、導光体15の断面における照度分布の均一化が極めて光源11に近い位置において達成され、その結果、光源11の近傍における軸P方向の変位に対する副走査分布の変動が抑制された帯状の光を放射することができる。これにより、原稿読み取り用の光源として用いたときに画像ムラの発生が抑制される。
【0034】
以上、本発明の照明装置の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0035】
例えば、光制御手段12は、これを構成する複数の光方向制御素子12aが、互いに同じ形状のものであることに限定されず、プリズム高さ、プリズム角度、プリズム側面の傾斜角度などが互いに異なるものであってもよい。
【0036】
また例えば、光制御手段は、これを構成する光方向制御素子が、図11に示されるように、半円錐状プリズム12bであって、その稜線f’が導光体の軸方向に係る放射方向に伸びると共に、導光体の軸中心から離間するに従ってその幅が大きくなるよう形成されたものであってもよい。
このような光制御手段が複数の半円錐状プリズム12bによって構成される場合は、半円錐状プリズム12bは、互いに同じ形状のものであってもよく、互いに異なった曲率半径を有するものであってもよい。
【0037】
さらに例えば、導光体15の一端面側にのみ光源11が配置されていればよく、照明装置としては、他端面に、光源11からの光を拡散反射する光拡散反射板が配置された構成とすることもできる。この場合、光拡散反射板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリカーボネート(PC)などの樹脂中に、酸化チタン、炭酸カルシウム、ガラスビーズなどが含有されてなるものを用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
11 光源
12 光制御手段
12a 光方向制御素子
12b 半円錐状プリズム
12β 円錐面
12γ プリズム側面
15 導光体
15A 導光体本体
15B,15C 保持用突状部
15D,15E 光反射面
15F 光出射面
f,f’ 稜線
P 軸
q 放射方向
s 放射方向と交わる方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機の原稿読み取り用光源として用いられる照明装置、詳しくは、LEDなどの光源および当該光源からの光をその端面から伝播させて帯状の光を放射する棒状の導光体からなる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機の原稿読み取り用光源として、LEDなどの光源と、当該光源からの光を端部から伝播させて帯状の光を放射する棒状の照明装置が用いられている。
【0003】
このように複写機の原稿読み取り用光源として利用される照明装置においては、原稿情報を正確に読み取るために、長手方向および幅方向の全体にわたって照度の均一性の高い光を出射することが求められる。
しかしながら、従来の照明装置においては、出射される光に、光源の近傍において長手方向および幅方向に非常に急峻な照度変化を示す場所が存在しており、このような照明装置を利用した複写機においては、原稿の正確な複写ができず、形成される画像にムラが生じてしまう、という問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1には、光源に対する導光体内部の反射部材の位置をずらすことによって、光源の近傍における長手方向の照度変化の急峻さを抑制する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、このような照明装置においては、放射される帯状の光の幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)に左右の対称性が得られず、また、光源の近傍における軸方向の変位に対する副走査分布の変動が大きい。これらのことから、読み取り位置がずれた場合に急激な照度低下に起因する画像ムラが発生してしまう、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3155938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、光源の近傍における軸方向の変位に対する幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)の変動が抑制された帯状の光を放射することができる原稿読み取り用の照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の照明装置は、光源と、当該光源からの光がその端面から入射されて軸方向に伸びる帯状の光を放射する棒状の導光体とからなる照明装置であって、
前記導光体が、その端面に光制御手段が形成されてなるものであり、
前記光制御手段は、その中心軸が前記導光体の軸上に位置された凹状の円錐面に多数の光方向制御素子が形成されてなるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の照明装置においては、前記光制御手段の光方向制御素子が、入射光を当該導光体の軸方向に係る放射方向と交わる方向に拡散するプリズムであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の照明装置においては、前記光制御手段を構成するプリズムが、形状が三角錐状であるものであって、当該プリズムの一つの稜線が前記導光体の軸方向に係る放射方向に伸びると共に、前記導光体の軸中心から離間するに従って当該プリズムの幅が大きくなるよう形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の照明装置によれば、光源からの光が、多数の光方向制御素子を介して導光体の内部に入射される。従って、入射光の導光体内での反射回数が増加されるので、導光体の断面における照度分布の均一化が極めて光源に近い位置において達成され、その結果、光源の近傍における軸方向の変位に対する副走査分布の変動が抑制された帯状の光を放射することができる。これにより、原稿読み取り用の光源として用いたときに画像ムラの発生が抑制される。
【0012】
また、光方向制御素子が入射光を導光体の軸方向に係る放射方向と交わる方向に光を拡散するプリズムである構成の照明装置によれば、導光体の入射端面における光がいろいろな角度成分の光路を持った光となって、入射端面の近傍における長手方向および幅方向の照度変化の急峻さが抑制されてブロードなものとされた、長手方向および幅方向の全体にわたって照度の均一性の高い帯状の光を放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の照明装置の構成の一例を、光源を省略した状態で模式的に示す概略説明図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図2】図1の照明装置の端部を拡大して示す概略説明図である。
【図3】図1の光制御手段の部分を拡大した側面図である。
【図4】導光体の軸方向および放射方向を説明するための模式図である。
【図5】本発明に係る光方向制御素子の構成の一例を示す斜視図である。
【図6】入射光の1回目の反射点を説明するための模式図である。
【図7】実験例および比較実験例における導光体、ミラーおよびコンタクトガラスの配置関係を示す模式断面図である。
【図8】実験例および比較実験例における測定位置を説明するための、図7の白抜き矢印方向から見た模式図である。
【図9】実験例の結果を示す副走査方向の照度分布曲線である。
【図10】比較実験例の結果を示す副走査方向の照度分布曲線である。
【図11】本発明に係る光方向制御素子の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
図1は、本発明の照明装置の構成の一例を、光源を省略した状態で模式的に示す概略説明図であり、図2は、図1の照明装置の端部を拡大して示す概略説明図であり、図3は、図1の光制御手段の部分を拡大した側面図である。
本発明の照明装置は、光源11と、当該光源11からの光が導光体15の端面(入射端面)から入射されて軸方向に伸びる帯状の光を放射する棒状の導光体15とが、本実施例においては、当該光源の光軸と当該導光体15の軸Pとが、一致する状態に設けられてなるものである。
この例の照明装置においては、光源11が導光体15の両端面側にそれぞれ配置され、導光体15の両端面に各々光制御手段12が形成されている。
【0015】
導光体15は、導光体本体15Aと、当該導光体本体15Aに形成された、その長手方向に沿って、当該長手方向に垂直な断面における外周輪郭が円弧状の光出射面15Fと、当該導光体本体15Aの光出射面15Fに対向する周面に、光源11からの光を光出射面15Fに向かって反射する、例えば微小のプリズム群が形成されてなる光反射面15D,15Eとを有するものである。図1において、15B,15Cは、導光体15にその長手方向に沿って形成された保持用突状部である。
導光体本体15Aにおける光出射面15Fおよび光反射面15D,15Eは、導光体15の軸方向に垂直な断面において、光反射面15D,15Eの中間点および導光体15の軸に係る点を通る直線について、線対称な形状を有する。
【0016】
導光体15を構成する材料としては、ポリメチルメタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどを用いることができ、このような材料を用いることにより、射出成形法によって導光体15を作製することができる。
導光体15の寸法の一例を挙げると、全長が340mm、光出射面15Fを形成する円弧の半径が2.8mm、光反射面15D,15Eの幅がそれぞれ1.0mmである。
【0017】
光源11としては、例えば白色LED、RGB単色LEDなどを用いることができ、具体的には、例えば、基板および当該基板上にLEDチップが実装され、反射枠によって当該LEDチップからの光が反射されて発光指向性を有する光が出射される表面実装型のLEDを用いることが好ましい。
【0018】
〔光制御手段〕
光制御手段12は、その中心軸が導光体15の軸P上に位置された凹状の円錐面12βに、多数の光方向制御素子12aが形成されてなるものである。(実際には、光方向制御素子12a間の谷底に相当する線を軸Pを中心に当該導光体15の円周方向に回転させた面が円錐面12βとなる。)
また、具体的な製法としては、導光体15が、例えば射出成型によって、光方向制御素子12aの形状も含めて一体的に作製される。
導光体15の入射端面は、多数の光方向制御素子12aの表面によって構成されている。
【0019】
円錐面12βと導光体15の軸Pとの角度θは、1°〜10°であることが好ましく、より好ましくは2.5°〜7.5°である。
【0020】
光方向制御素子12aは、光を導光体15の軸方向に係る放射方向qと交わる方向sに拡散するプリズムである。
ここに、導光体15の軸方向に係る放射方向qとは、図4に示されるように、導光体15の軸Pと交わり、かつ、当該軸Pから外方に向かう方向をいう。
【0021】
光方向制御素子12aが入射光を導光体15の軸方向に係る放射方向qと交わる方向sに光を拡散するプリズムであることにより、導光体15の入射端面における光がいろいろな角度成分の光路を持った光となる。これにより、照明装置において、導光体15の入射端面の近傍における長手方向および幅方向の照度変化の急峻さが抑制されてブロードなものとされ、長手方向および幅方向の全体にわたって照度の均一性の高い帯状の光を放射することができる。
【0022】
光方向制御素子12aを構成するプリズムは、形状が三角錐状であるものであって、光制御手段12においては、当該プリズムの一つの稜線fが導光体15の軸方向に係る放射方向qと同一方向であり、導光体15の軸Pとの交点から円周方向に向けて徐々に傾斜する方向に沿って伸びると共に、導光体15の軸中心から離間するに従って当該プリズムの幅が大きくなるよう形成されている。
【0023】
この例の光制御手段12においては、40個のプリズムよりなる光方向制御素子12aが、各々、光方向制御素子12aの底面が円錐面12βに一致し、隣接する光方向制御素子12a間が接触し、さらに、導光体15の軸中心に対応する位置を中心として回転対称となるよう形成されている。そして、このような光制御手段12は、光方向制御素子12aの各々の稜線が光源11と対向する状態に、配設されている。
光方向制御素子12aが回転対称に形成されていることにより、幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)に左右の対称性が得られる。
【0024】
光方向制御素子12aの数は、3個以上とされることが好ましく、より好ましくは24〜100個である。
【0025】
この例の光制御手段12の寸法の一例を図5を参照して説明すると、各光方向制御素子12aのプリズム高さ(光制御手段12の円錐面12βから垂直方向高さが最も高い頂点の高さ)Hが0.16mm、各光方向制御素子12aを構成する三角錐の面のうち軸P方向外方を向いたプリズム側面12γによって形成される略二等辺三角形の底角θ1が35°、隣接する光方向制御素子12a間の開き角(隣接する光方向制御素子12a,12aの稜線f,fの軸P方向への投影線g,gのなす角)θ2が9°各光方向制御素子12aのプリズム角度(光方向制御素子12aの稜線fと、円錐面12βにおける当該稜線fの軸P方向への投影線gとのなす角度)θ3が3.7°である。
【0026】
このような照明装置においては、光源11から放射される光が、当該光制御手段12を構成する各光方向制御素子12aにおいて、導光体15の軸方向に係る放射方向qと交わる方向sに光が拡散された状態とされて、導光体15に入射される。
そして、導光体15に入射された光は、この導光体15によってその周面に反射されながら当該導光体15の長手方向に導かれると共に、光反射面15D,15Eによって反射され、この反射光が導光体15の光出射面15Fから出射され、これにより導光体15から帯状の光が放射される。
【0027】
本発明の照明装置においては、図6に示されるように、光源11から放射される光の、導光体本体15Aの周面への1回目の反射点L1 が、光制御手段として導光体15の軸Pとの角度θが90°である平面Xを有する円盤の一面に多数の光方向制御素子が形成されたものを用いた場合の光の、導光体本体15Aの周面への1回目の反射点L2 と比較して、導光体15の入射端面側に位置される。従って、入射光の導光体本体15A内での反射回数が増加されるので、導光体本体15A内の光の強度分布がより光源11側において均一化され、その結果、光源の近傍における軸方向の変位に対する幅方向の断面に係る照度分布(副走査分布)の変動が抑制される。
【0028】
<実験例1>
光源として白色LEDを用い、下記の条件により、図1に示す照明装置(A)を作製した。
導光体(15)は、材質がアクリル系樹脂で、全長が340mm、光出射面(15F)を形成する円弧の半径が2.8mm、光反射面(15D,15E)の幅がそれぞれ1.0mmである。
【0029】
<比較実験例1>
本発明に係る光制御手段(12)の代わりに、平面を有する円盤に三角錐状のプリズムが多数形成されてなる光制御手段を設けたことの他は実験例1と同様にして、照明装置(B)を作製した。
【0030】
これらの照明装置(A),(B)を、図7に示すようにミラー(M)およびコンタクトガラス(G)と共に配置し、図8に示すように導光体本体(15A)の中央位置t0から長手方向にそれぞれt(t=30mm、70mm、110mm、150mm)の位置の断面に係るコンタクトガラス(G)上の副走査方向(w)の照度分布(副走査分布)を測定した。照明装置(A)に係る結果を図9に示す。また、照明装置(B)に係る結果を図10に示す。なお、図8は、図7のコンタクトガラス(G)と導光体(15)を白抜き矢印Aの方向から見た図である。
コンタクトガラス(G)の厚みは3mm、コンタクトガラス(G)の表面とミラー(M)の中心との距離、および、コンタクトガラス(G)の表面と導光体(15)の軸Pとの距離s1はいずれも12mm、導光体(15)の軸Pとコンタクトガラス(G)の主走査方向に平行な中心線との距離s2は6mm、導光体(15)のコンタクトガラス(G)に対する傾きαは60°とした。
【0031】
図9、図10において、縦軸は任意強度、横軸はコンタクトガラス(G)の長手方向に伸びる中心線からの副走査方向への距離であり、それぞれ、■がマークされた曲線はt=150mm、◇がマークされた曲線はt=110mm、▲がマークされた曲線はt=70mm、×がマークされた曲線はt=30mmの、それぞれ副走査方向の照度分布曲線である。
【0032】
図9、図10から明らかなように、照明装置(A)においては、照明装置(B)に比較して、測定位置の軸方向の変位(tの変位)に伴う副走査分布の変動(バラツキ)が抑制されていることがわかる。
【0033】
以上のような照明装置によれば、光源11からの光が、多数の光方向制御素子12aを介して導光体15の内部に入射される。従って、入射光の導光体15内での反射回数が増加されるので、導光体15の断面における照度分布の均一化が極めて光源11に近い位置において達成され、その結果、光源11の近傍における軸P方向の変位に対する副走査分布の変動が抑制された帯状の光を放射することができる。これにより、原稿読み取り用の光源として用いたときに画像ムラの発生が抑制される。
【0034】
以上、本発明の照明装置の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0035】
例えば、光制御手段12は、これを構成する複数の光方向制御素子12aが、互いに同じ形状のものであることに限定されず、プリズム高さ、プリズム角度、プリズム側面の傾斜角度などが互いに異なるものであってもよい。
【0036】
また例えば、光制御手段は、これを構成する光方向制御素子が、図11に示されるように、半円錐状プリズム12bであって、その稜線f’が導光体の軸方向に係る放射方向に伸びると共に、導光体の軸中心から離間するに従ってその幅が大きくなるよう形成されたものであってもよい。
このような光制御手段が複数の半円錐状プリズム12bによって構成される場合は、半円錐状プリズム12bは、互いに同じ形状のものであってもよく、互いに異なった曲率半径を有するものであってもよい。
【0037】
さらに例えば、導光体15の一端面側にのみ光源11が配置されていればよく、照明装置としては、他端面に、光源11からの光を拡散反射する光拡散反射板が配置された構成とすることもできる。この場合、光拡散反射板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリカーボネート(PC)などの樹脂中に、酸化チタン、炭酸カルシウム、ガラスビーズなどが含有されてなるものを用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
11 光源
12 光制御手段
12a 光方向制御素子
12b 半円錐状プリズム
12β 円錐面
12γ プリズム側面
15 導光体
15A 導光体本体
15B,15C 保持用突状部
15D,15E 光反射面
15F 光出射面
f,f’ 稜線
P 軸
q 放射方向
s 放射方向と交わる方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、当該光源からの光がその端面から入射されて軸方向に伸びる帯状の光を放射する棒状の導光体とからなる照明装置であって、
前記導光体が、その端面に光制御手段が形成されてなるものであり、
前記光制御手段は、その中心軸が前記導光体の軸上に位置された凹状の円錐面に多数の光方向制御素子が形成されてなるものであることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記光制御手段の光方向制御素子が、入射光を当該導光体の軸方向に係る放射方向と交わる方向に拡散するプリズムであることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光制御手段を構成するプリズムが、形状が三角錐状であるものであって、当該プリズムの一つの稜線が前記導光体の軸方向に係る放射方向に伸びると共に、前記導光体の軸中心から離間するに従って当該プリズムの幅が大きくなるよう形成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項1】
光源と、当該光源からの光がその端面から入射されて軸方向に伸びる帯状の光を放射する棒状の導光体とからなる照明装置であって、
前記導光体が、その端面に光制御手段が形成されてなるものであり、
前記光制御手段は、その中心軸が前記導光体の軸上に位置された凹状の円錐面に多数の光方向制御素子が形成されてなるものであることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記光制御手段の光方向制御素子が、入射光を当該導光体の軸方向に係る放射方向と交わる方向に拡散するプリズムであることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光制御手段を構成するプリズムが、形状が三角錐状であるものであって、当該プリズムの一つの稜線が前記導光体の軸方向に係る放射方向に伸びると共に、前記導光体の軸中心から離間するに従って当該プリズムの幅が大きくなるよう形成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−73889(P2013−73889A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214150(P2011−214150)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
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