照明設備
【課題】ライトバトンにおける照明器具の取付位置を特定することができる照明設備を提供する。
【解決手段】照明設備は、フライダクト14の長手方向に複数台の照明器具を取り付け可能なライトバトン5と、ライトバトン5においてフライダクト14の長手方向に沿う側面にLEDを表示素子21として多数個配列して成る表示部6と、表示部6全体の点灯パターンを設定する設定装置と、設定装置で設定された点灯パターンに従って各表示素子21の点灯状態を個別に制御するコントロールユニットとを備える。表示素子21は、フライダクト14の長手方向の全長に亘って隙間なく並んで見えるように密に配列されている。
【解決手段】照明設備は、フライダクト14の長手方向に複数台の照明器具を取り付け可能なライトバトン5と、ライトバトン5においてフライダクト14の長手方向に沿う側面にLEDを表示素子21として多数個配列して成る表示部6と、表示部6全体の点灯パターンを設定する設定装置と、設定装置で設定された点灯パターンに従って各表示素子21の点灯状態を個別に制御するコントロールユニットとを備える。表示素子21は、フライダクト14の長手方向の全長に亘って隙間なく並んで見えるように密に配列されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ局のスタジオや劇場・ホールなどで使用されているライトバトンを用いた照明設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の照明設備として、テレビ局のスタジオではスタジオ全体を照明可能とするために、スタジオの上部に配置された複数本のライトバトン5を用いて照明器具を配置するものが採用されている(図3参照)。各ライトバトン5はそれぞれ、図9に示すように、天井グリッド7上に設置された昇降装置9によって上下方向(図9の矢印A方向)に昇降可能に構成されており、複数台の照明器具4を横方向に並べて吊り下げ可能な吊りパイプ13と、横方向に長い柱状に形成され各照明器具4に電源供給するフライダクト14とを有する。
【0003】
フライダクト14には、複数台の照明器具4を同時に接続できるように、横方向に沿う側面から引き出されそれぞれ照明器具4を接続可能な接続器15(コネクタ)が複数個設けられている。図10に示すように、フライダクト14の長手方向に沿う側面にコンセント口15’が複数個設けられたものもある。なお、フライダクト14はボーダーケーブル19によって電源供給されており、図9ではライトバトン5の上昇時に弛んだボーダーケーブル19を収納するケーブル受けかご20が設けられているが、図11のようにボーダーケーブル19を巻き取るケーブルリール62を採用したものもある。
【0004】
図9、11に示す照明設備においては、フライダクト14の長手方向の一端部に設けたパイロットランプ63により昇降装置9の動作状態(ライトバトン5の昇降)を表示する。ただし、このパイロットランプ63は比較的小さく遠方からの視認性が悪いので、自発光式であってパイロットランプ63よりも大型の表示部(図示せず)をライトバトン5の長手方向の一部分に取り付け、当該表示部を点滅させることによりライトバトン5が昇降中であることを示すものも考えられている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
ところで、ライトバトン5に照明器具4を取り付ける際には、作業者は、照明器具4の取付位置などが記載された仕込み図を参照し、照明器具4をどのライトバトン5のどの位置に取り付けるのか等を確認しながら、ライトバトン5に照明器具4を取り付けていくのが一般的である。ただし、仕込み図を参照しながらの作業は、仕込み図における取付位置と実際の取付位置とを照らし合わせる必要があるから作業の効率が悪く、また、仕込み図における取付位置とは異なった位置に照明器具4を取り付けてしまうなどの作業ミスも生じやすい。
【0006】
これに対して、ライトバトン5の接続器15に対応する各部位にそれぞれ表示部を設け、各接続器15に接続する照明器具4の情報を当該接続器15に対応する表示部に表示させる照明設備が提案されている(たとえば特許文献2参照)。特許文献2に記載の照明設備を用いれば、仕込み図を参照しなくとも、各表示部の表示に従って照明器具4を取り付ける接続器15を特定することができる。
【特許文献1】登録実用新案第3045733号公報(第5頁)
【特許文献2】特開平10−326510号公報(第4−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献2に記載の照明設備は、表示部の表示によってどの接続器15にどの照明器具4を接続するかを特定するものに過ぎず、ライトバトン5における照明器具4の取付位置を特定するものではない。すなわち、同じ接続器に照明器具4を接続する場合でも、横方向における照明器具4の取付位置にはある程度の自由度があり、この取付位置によって当該照明器具4の照射位置が変わってくるが、従来の表示部では当該取付位置まで特定することはできなかった。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、ライトバトンにおける照明器具の取付位置を特定することができる照明設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明では、複数台の照明器具を横方向に並べて取り付け可能であって、前記横方向に長い柱状に形成されており各照明器具に電源供給するフライダクトを有したライトバトンと、ライトバトンを上下方向に昇降させる昇降装置と、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向に沿う側面に、自発光式の表示素子がフライダクトの長手方向の全長に亘り隙間なく並んで見えるように多数個配列されて成る表示部と、表示部全体の点灯パターンを設定する設定装置と、設定装置で設定された点灯パターンに従って表示部の各表示素子の点灯状態を個別に制御するコントロールユニットとを備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向に沿う側面に、自発光式の表示素子がフライダクトの長手方向の全長に亘り隙間なく並んで見えるように多数個配列されて成る表示部を備えているから、フライダクトの長手方向の全長に亘って任意の位置を表示部の表示により特定することができる。したがって、表示部でライトバトンにおける照明器具の取付位置を表示するようにすれば、ライトバトンにおける照明器具の取付位置を表示部で特定することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記表示素子が、前記ライトバトンにおける前記表示部が設けられた側面において前記フライダクトの長手方向に交わる方向に複数列配設されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、表示素子が縦横に複数個ずつ並んで面を形成するので、文字や図形や映像などを表示部に表示させることが可能となる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記ライトバトンの高さ位置を調節するように前記昇降装置を制御する昇降制御盤が設けられ、ライトバトンが複数本設けられており、昇降装置が、各ライトバトンを個別に昇降させるように各ライトバトンにそれぞれ対応付けて複数台設けられており、前記複数本のライトバトンが、各ライトバトンが昇降する平面が当該平面に直交する一方向に並び、かつそれぞれの前記表示部が同じ向きを向くように配列されており、昇降制御盤が、各ライトバトンの高さ位置を前記一方向において表示部側に隣接するライトバトンよりも低く設定することにより、前記複数本のライトバトンを、表示部側から見て多数個の表示素子が縦横に並び、各表示部に部分画像をそれぞれ表示したときに複数本のライトバトンの表示部で全体画像が形成される配置とすることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、複数本のライトバトンは、表示部側から見て多数個の表示素子が縦横に並び、各表示部に部分画像をそれぞれ表示したときに複数本のライトバトンの表示部で全体画像が形成される配置となるから、各表示部に部分画像をそれぞれ表示することによって複数本のライトバトンの表示部に跨る大きさの全体画像を表示することができる。したがって、1個の表示部で表示する場合に比べて、画像を大きく表示することができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記コントロールユニットが、前記昇降装置の動作状態が前記表示部に表示されるように昇降装置に対して伝送路を介して接続されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向の全長に亘って形成された表示部に昇降装置の動作状態を表示することができるから、ライトバトンの長手方向の一部分に設けた表示部に昇降装置の動作状態を表示する従来構成に比べて、昇降装置の動作状態の遠方からの視認性を高めることができる。なお、ここでいう昇降装置の動作状態には、ライトバトンの昇降などの正常な動作のほか、ライトバトンの衝突、突上げ、過荷重などの異常も含む。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記コントロールユニットが、前記照明器具の動作状態が前記表示部に表示されるように照明器具に対して伝送路を介して接続されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、照明器具の動作状態を表示部の表示によって確認することができる。なお、ここでいう照明器具の動作状態には、照明器具の点灯、消灯などの正常な動作のほか、調光器盤の回路漏電、過負荷、各負荷回路のブレーカオフ、調光器盤の温度異常などの異常も含む。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明において、前記表示素子が、それぞれ赤、緑、青の各色に発光する3種類の光源が混色光を出力するように近接配置されており、各種類の光源の点灯状態を個別に制御することにより混色光の色を可変としていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、各表示素子からそれぞれ出力される混色光の色が可変であるから、表示部においてフルカラー表示が可能になり、表示部自体を演出用の照明器具として使用することが可能となる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明において、前記表示部が、前記ライトバトンにおいて表示部が設けられる側面に対する表示部の上下方向の角度を可変とする角度調節機構を介してライトバトンに取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、表示部の上下方向の角度が可変となっているから、ライトバトンの高さ位置にかかわらず地上に立つ作業者に表示部を向けることができ、表示部の視認性がよくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向に沿う側面に、自発光式の表示素子がフライダクトの長手方向の全長に亘り隙間なく並んで見えるように多数個配列されて成る表示部を備えているから、フライダクトの長手方向の全長に亘って任意の位置を表示部の表示により特定することができる。したがって、表示部でライトバトンにおける照明器具の取付位置を表示するようにすれば、ライトバトンにおける照明器具の取付位置を表示部で特定することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本実施形態ではテレビ局のスタジオで使用する照明設備を例示するが、たとえば劇場・ホールなどスタジオ以外で使用する照明設備に本発明を採用することもできる。
【0025】
本実施形態の照明設備は、複数台の照明器具4を横方向に並べて取り付け可能なライトバトン5を用いて照明器具4をスタジオの上部に配置するものであって、図2に示すように、照明器具4によりスタジオの照明を行う照明システム1と、ライトバトン5を上下方向(図2の矢印A方向)に昇降させる昇降システム2と、ライトバトン5に設けた後述の表示部6を用いて表示を行う表示システム3との3つのシステムを備えている。
【0026】
スタジオの上部には天井グリッド7が配置されており、ライトバトン5は、当該天井グリッド7から引き出されたワイヤロープ8によって吊り下げられる。天井グリッド7上にはワイヤロープ8を巻き取り可能な昇降装置9が設置されており、この昇降装置9によってライトバトン5が上下方向に昇降可能となる。本実施形態では、図3のように複数本のライトバトン5がスタジオのほぼ全域に亘ってスタジオ上部に配設されており、昇降装置9は1本のライトバトン5に対して1台ずつ設けられる。昇降装置9は、ライトバトン5の上下方向の位置(高さ位置)を設定する昇降操作盤10と、ライトバトン5の高さ位置を昇降操作盤10で設定された高さ位置に調節するように昇降装置9におけるワイヤロープ8巻き取り用のモータMを制御する昇降制御盤11と共に昇降システム2を構成している。昇降装置9は昇降負荷配線12を介して昇降制御盤11から電源供給される。
【0027】
各ライトバトン5はそれぞれ、図2に示すように、複数台の照明器具4を横方向に並べて吊り下げ可能な吊りパイプ13と、各照明器具4に電源供給するフライダクト14とを有する。フライダクト14は横方向に長い柱状に形成されており、長手方向に沿う側面(以下、背面という)においては長手方向の全長に亘って、それぞれ照明器具4を接続可能な複数個の接続器15(コネクタ)が等間隔で引き出されている。吊りパイプ13は、フライダクト14と同方向に長い棒状に形成されており、フライダクト14の下方に吊り下げられる。
【0028】
フライダクト14に対して電源供給を行うのは、ライトバトン5に取り付けられた照明器具4を個別に調光可能な調光器盤16である。調光器盤16は、ライトバトン5に取り付けられた照明器具4と、各照明器具4の調光レベルを設定する調光卓17と共に照明システム1を構成している。調光器盤16は、交流電源が供給されており、調光卓17で設定された調光レベルに従って位相制御方式により照明器具4に供給する電力量を調節する。ここでは、調光器盤16は天井グリッド7上に設置された接続端子箱18に照明負荷配線61を介して接続されており、フライダクト14はこの接続端子箱18に対してボーダーケーブル19を介して接続される。そのため、フライダクト14の上部には、ライトバトン5の上昇時に弛んだボーダーケーブル19を収納するケーブル受けかご20が設けられている。ボーダーケーブル19と各接続器15との間の配線はフライダクト14内を引き回される。なお、ここでは昇降制御盤11に3相3線式の交流電源を供給し、調光器盤16に単相3線式あるいは3相4線式の交流電源を供給する。
【0029】
また、本実施形態の照明設備では、フライダクト14の長手方向に沿う背面以外の側面(以下、前面という)に対して、LED(発光ダイオード)を表示素子21として多数個配置することにより表示部6を構成している。表示素子21は図1に示すように、フライダクト14の長手方向の全長に亘って隙間なく並んで見えるように密に配列される。本実施形態では、表示素子21がフライダクト14の前面にマトリックス状に配置されるように、表示素子21を上下方向にも隙間なく並んで見えるように密に複数列配設している。表示部6は、表示部6全体の点灯パターンを設定する設定装置22と、設定装置22で設定された点灯パターンに従って各表示素子21の点灯状態を個別に制御するコントロールユニット23と共に表示システム3を構成している。ここでいう点灯パターンには、各表示素子21の点灯および消灯だけではなく、各表示素子21の輝度や、点灯時間等の時間的要素なども含む。
【0030】
本実施形態の設定装置22は、表示部6の点灯パターンを入力可能に構成されており、たとえば照明器具4の取付位置を示す点灯パターンを入力してコントロールユニット23に伝送することにより、表示部6において照明器具4の取付位置を示す表示が可能となる。つまり、設定装置22において照明器具4の取付位置に対応する表示素子21が点灯するように点灯パターンの設定を行えば、コントロールユニット23が設定装置22の設定内容に従って照明器具4の取付位置に対応する表示素子21を点灯させることになる。ここにおいて、本実施形態では、表示部6の表示素子21がライトバトン5におけるフライダクト14の長手方向の全長に亘って隙間なく並んで見えるように配列されているので、照明器具4の取付位置を接続器15の位置とは無関係に特定することができる。
【0031】
さらにまた、本実施形態の表示部6は表示素子21がマトリックス状に2次元配列されているから、表示部6には、照明器具4の取付位置のほかに、所望の文字や図形や映像等を表示させることもできる。ここにおいて設定装置22は、文字や図形や映像(MPEGデータ)等も点灯パターンとして直接入力可能に構成されている。ここでは、フライダクト14の前面のほぼ全面に表示素子21を設けることにより比較的大きな表示部6を構成しているので、表示部6に表示される文字や図形は遠方からであっても視認可能となる。したがって、比較的高い位置にあるライトバトン5であっても、表示部6に表示された文字や図形をスタジオ内の作業者に視認させることができる。表示部6に表示する文字や図形の具体例については後述する。
【0032】
各表示素子21は、それぞれ赤、緑、青の各色に発光する3種類の光源が混色光を出力するように近接配置されており、各種類の光源の点灯状態を個別に制御することにより混色光の色を可変としている。これにより、表示部6においてフルカラー表示が可能になり、この表示部6自体を演出用の照明器具として使用することも可能となる。
【0033】
ここで、表示部6は、フライダクト14の前面に対する表示部6の上下方向の角度を可変とする角度調節機構(図示せず)を介してライトバトン5に取り付けられることにより、自身の向きが可変となっている。このように表示部6の向きを可変としているから、図4(a)に示すようにスタジオにおいて撮影時に背景となるホリゾント壁Hに表示部6を向け、表示部6から出た光によってホリゾント壁Hを様々な色に照らすことにより表示部6をホリゾントライトとして利用することや、図4(b)に示すように表示部6をスタジオの床面Gに向け、表示部6から出た光によってスタジオ内を照明することにより表示部6を地明かりとして利用することも可能である。ここでは、ホリゾントライトが取り付けられるライトバトン5’(図3参照)に設けられた表示部6をホリゾント壁Hに向け、エリアライトが取り付けられるライトバトン5”(図3参照)に設けられた表示部6を床面Gに向けている。ただし、表示部6をホリゾントライトや地明かりとして利用する際には、表示部6から出射される光にむらが生じないように表示部6の光の取り出し面側に拡散レンズ(図示せず)を具備することが望ましい。
【0034】
また、点灯パターンとして、ランダム点滅、グラデーション表示、アニメーション的な図形表示などを設定することにより、表示部6を電飾として機能させることもできる。従来の照明設備では、スタジオでの撮影時にライトバトン5が映像に映り込むと見苦しい映像となるが、本実施形態の照明設備においてライトバトン5に設けた表示部6を電飾として機能させた場合には、ライトバトン5自体が演出の一部となるから、ライトバトン5が映り込んでも見苦しい映像にならない。
【0035】
ところで、昇降システム2においては昇降操作盤10から昇降制御盤11に昇降信号を伝送するための伝送路、照明システム1においては調光卓17から調光器盤16に調光信号を伝送するための伝送路、表示システム3においては設定装置22からコントロールユニット23に点灯パターンを伝送するための伝送路が必要になる。そこで本実施形態では、昇降操作盤10と昇降制御盤11との間、調光卓17と調光器盤16との間、設定装置22とコントロールユニット23との間を、共通のネットワーク24(ここではイーサネット(登録商標)を用いる)を介して接続してある。
【0036】
以下に、各システムの具体的な構成について図5を参照して説明する。
【0037】
昇降システム2においては、昇降操作盤10が、HUBを介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部25と、ライトバトン5の高さ位置を設定する設定部26と、設定部26の設定に従って昇降信号を出力する制御部27と、記憶部28および後述の異常検知部29とを有する。昇降制御盤10は、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部31と、昇降装置9のモータMへの供給電力を調節する出力部32と、ネットワーク24を介して受信した昇降信号に従って出力部32を制御する制御部33と、後述の異常検知部34とを有する。
【0038】
照明システム1においては、調光卓17が、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部35と、調光レベルを設定する設定部36と、設定部36の設定に従って調光信号を出力する制御部37と、記憶部38および後述の異常検知部39とを有する。調光器盤16は、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部40と、各照明器具4への供給電力量を調節する調光器41と、ネットワーク24を介して受信した調光信号に従って調光器41を制御する制御部42と、後述の異常検知部43とを有する。また、本実施形態では、ライトバトン5に取り付ける照明器具4の1つに、専用規格(ここではDMX512)で定められた制御信号によって光の放射方向を変化させることができるムービングスポットライトを用いており、この制御信号に関しては調光器盤16から配信するのではなく、ライトバトン5に設けたイーサ/DMX変換部44を介してネットワーク24から照明器具4’(ムービングスポットライト)に配信されるように構成してある。そのため、本実施形態で用いるボーダーケーブル19は、調光器盤16と照明器具4との間の電源供給用の配線、およびHUB30とイーサ/DMX変換部44との間の配線として使用できるものを採用する。
【0039】
表示システム3においては、設定装置22が、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部45と、点灯パターンを設定する設定部46と、設定部46の設定に従って点灯パターンを出力する制御部47と、記憶部48および後述の異常検知部49とを有する。コントロールユニット23は、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部50と、各表示素子21を個別に点灯させる表示出力部51と、ネットワーク24を介して受信した点灯パターンに従って表示出力部51を制御する制御部52と、記憶部53および後述の異常検知部54とを有する。ただし、コントロールユニット23の記憶部53にあらかじめ複数種類の点灯パターンを記憶しておいて、設定装置22で設定された点灯パターンをコントロールユニット23の記憶部53から呼び出して用いることもできる。
【0040】
なお、ライトバトン5は上述したように複数本設けられているので、ライトバトン5に設けられる表示部6も複数個存在することになる。そこで、表示部6の点灯パターンを、ライトバトン5ごとに個別に設定できるように、コントロールユニット23を各ライトバトン5にそれぞれ搭載し、各コントロールユニット23にそれぞれ固有のアドレスを付与してある。設定装置22は、アドレスを用いて点灯パターンの伝送対象となるコントロールユニット23を指定することにより、任意のライトバトン5の表示部6を選択して表示を行わせることができる。
【0041】
このように、ネットワーク24を介して昇降システム2と照明システム1と表示システム3とが接続されることによって、各システム間で様々な情報を共有することが可能となる。
【0042】
したがって、たとえば昇降装置9や照明器具4の動作状態を表示システム3の表示部6に表示させることなどが可能となる。この種の表示を表示部6で行うためには、複数種類の点灯パターンを昇降装置9や照明器具4の各動作状態にそれぞれ対応付けて設定装置22あるいはコントロールユニット23の記憶部48,53にあらかじめ記憶しておき、設定装置22あるいはコントロールユニット23において、昇降システム2や照明システム1から動作状態に応じてネットワーク24上に出力される信号を受け、当該動作状態に対応する点灯パターンを呼び出して用いるようにすればよい。
【0043】
ここでいう昇降装置9や照明器具4の動作状態には、図6(a)に示すライトバトン5の上昇中など、正常な動作だけではなく、ライトバトン5の衝突、突上げ、過荷重などの昇降システム2の異常や、調光器盤16の回路漏電、過負荷、各負荷回路のブレーカオフ、調光器盤16の温度異常などの照明システム1の異常も含む。昇降システム2の異常は、昇降操作盤10の異常検知部29あるいは昇降制御盤11の異常検知部34で検知され、照明システム1の異常は、調光卓17の異常検知部39あるいは調光器盤16の異常検知部43で検知される。具体例を挙げると、ライトバトン5が下降中に障害物に接触した突上げ時には、表示部6において図6(b)のように突上げ発生を意味する文字を表示し、一方、調光器盤16の回路で漏電が発生した際には、表示部6に図6(c)のように漏電発生を意味する文字を表示する。
【0044】
これらの異常は、従来は調光卓17や昇降操作盤10が具備しているモニターや調光器盤16や昇降制御盤11内のモニターでしか確認できなかったが、本発明によりライトバトン5に設けた表示部6に表示させることができるようになる。その結果、これらの異常をスタジオ内の作業者に迅速に知らせることができる。なお、本実施形態では、表示部6の温度異常、設定装置22とコントロールユニット23との間の通信異常など、表示システム3で発生する異常についても、設定装置22の異常検知部49あるいはコントロールユニット23の異常検知部54で検知して表示部6に表示可能としている。
【0045】
また、上述のネットワーク24には、スタジオごとに1台ずつ設けられたサーバコンピュータ55(以下、スタジオサーバという)が接続されている。スタジオサーバ55は、昇降システム2、照明システム1、表示システム3で用いる各データを保存、配信、検索、編集することができるように構成されている。
【0046】
具体的には、スタジオサーバ55は、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部56と、各システム1,2,3で用いるデータを記憶する記憶部57と、各システム1,2,3で用いるデータの保存、配信、検索、編集などの操作が可能な入力インタフェース(図示せず)を備えた設定部58と、設定部58の操作に従って各システム1,2,3で用いるデータの配信、検索、編集を行う制御部59とを有する。
【0047】
そして、従来はそれぞれのシステム1,2,3で個別に管理していた各システムの設定に用いる情報(以下、仕込情報という)、すなわち照明システム1であれば、照明器具4の取付位置や照射方向、フィルタの種類、パッチ情報(つまり調光器41と照明器具4との接続情報)、調光レベル、シーン、エフェクト情報など、昇降システム2であれば、昇降操作情報(上昇、下降、停止)、ライトバトン5の高さ位置、一括して昇降させるライトバトン5のグループ情報などを、スタジオサーバ55にて一元管理する。
【0048】
しかも、これらの仕込情報は、それぞれ異なるシステム1,2,3の仕込情報であっても互いに対応付けて管理可能としてある。各システム1,2,3およびスタジオサーバ55においては、撮影場面の転換時に全てのシステム1,2,3に場面転換の合図であるキュー信号を配信する機能が設けられており、互いに対応付けてスタジオサーバ55に管理されている異なるシステム1,2,3の仕込情報を、いずれかのシステム1,2,3あるいはスタジオサーバ55からのキュー信号によって同時に使用することができる。たとえば、照明システム1からのキュー信号により、照明システム1と昇降システム2とを連動させて、照明器具4をある調光レベルに調光するとともにラインバトン5をある高さ位置に移動させるといった動作が可能になる。なお、スタジオサーバ55にて一元管理される仕込情報は主としてスタジオサーバ55の設定部58から入力されるが、設定装置22や昇降操作盤10や調光卓17からも入力可能な構成を採用している。つまり、設定装置22で入力された点灯パターンについてもスタジオサーバ55にて一元管理される。
【0049】
さらに、本実施形態の表示システム3は、スタジオサーバ55に保存されている仕込情報を、スタジオサーバ55あるいは設定装置22の操作により任意に読み出して表示部6に表示可能に構成されている。これにより、昇降装置9や照明器具4の動作状態だけでなく、従来は仕込み図から読み取っていた仕込情報をも表示システム3の表示部6に表示することができる。その結果、たとえば作業者が照明器具4を取り付ける際に、仕込み図を用いることなく各ライトバトン5に取り付ける照明器具4の種類、照射方向などを表示部6の表示によって容易に確認することができ、照明器具4の取り付け作業の効率化を図ることができる。ここにおいて、各表示部6に表示させる仕込情報は、主として当該表示部6が設けられたライトバトン5に関連するものとしている。たとえば、図6(d)のように該当するライトバトン5に関して各照明器具4の調光レベルを表示部6に文字で表示したり、図6(e)のように該当するライトバトン5に関して照明器具4を接続する接続器15の位置および各照明器具4の種類を表示部6に文字で表示したりすることができる。
【0050】
さらにまた、仕込情報はスタジオで収録する番組ごとにまとめて管理される。すなわち、1つの番組を収録するために使用する仕込情報は全て1まとめにしてスタジオサーバ55に保存している。ここで、スタジオサーバ55に保存されるデータには、番組名、オンエア日時、照明担当者などの属性を対応付けて保存し、データの管理を容易にしてある。スタジオサーバ55は、昇降システム2と照明システム1と表示システム3とに対して、保存されているデータを番組ごとに一斉に配信する機能を有している。
【0051】
ところで、本実施形態では複数個の表示部6を用いて、1つの表示部6では表示しきれない大きな映像を表示することができるように、以下の構成を採用している。
【0052】
それぞれ表示部6が設けられた複数本のライトバトン5は、図7(a)のように、それぞれの表示部6を同じ向きに向けて、かつ各フライダクト14が昇降する平面(つまりライトバトン5が昇降時に通る平面)が前後方向に等間隔で並ぶように配列されている。そして、昇降制御盤11は、各ライトバトン5の表示部6から放射される光が他のライトバトン5によって遮られることがないように、各ライトバトン5の高さ位置を前後方向において表示部6側に隣接するライトバトン5よりも低く設定する。前記複数本のライトバトン5の全てについてこのように高さ位置を設定すると、複数本のライトバトン5が、前方のライトバトン5ほど高さ位置が高くなるように階段状に並ぶことになる。ここにおいて、ライトバトン5の表示部6側に設置されたカメラ60からこれら複数本のライトバトン5を見ると、各ライトバトン5の表示部6が上下方向に並んで見えるから、これらの表示部6を全体で1つの画面(以下、大画面という)として用いることにより大きな映像を表示することができる。このとき、大画面の縦横には多数個の表示素子21が並ぶことになる。さらに、同様に高さ位置が設定された複数本のライトバトン5の組み合わせを左右方向に複数組並べて配置しておけば、図7(b)に示すように、上下方向に表示部6複数個(ここでは11個)分、左右方向に表示部6複数個(ここでは3個)分の大きさの大画面を構成することができる。
【0053】
大画面に1つの映像を表示させる際には、設定装置22(あるいはスタジオサーバ55)において対象となる映像(全体画像)を分割し、大画面を構成している各表示部6に対して分割後の映像(部分画像)を表示させるように、各コントロールユニット23に分割後の映像に対応する点灯パターンを割り当てる。ここで、分割後の各映像が大画面において分割前の位置と同じ位置に表示されるように、各コントロールユニット23に点灯パターンが割り当てられる。各コントロールユニット23の識別は上述のアドレスを用いて行われる。設定装置22は、各コントロールユニット23に同期信号を送信することにより、各表示部6の間において映像の時間的なずれを補正し、大画面の映像が乱れないようにしている。
【0054】
また、大画面を構成するために、複数本のライトバトン5の高さ位置を個別に調節するのは手間がかかるので、本実施形態では、大画面を構成する各ライトバトン5の高さ位置の組み合わせを昇降操作盤10あるいはスタジオサーバ55にあらかじめ登録しておいて、簡単に大画面を構成できるようにしてある。しかも、このように昇降システム2により大画面を構成するための情報と、表示システム3において大画面に映像を表示させる情報とを互いに対応付けてスタジオサーバ55で管理しておくことにより、いずれかのシステム1,2,3やスタジオサーバ55からのキュー信号によって、大画面を構成するとともに大画面に映像を表示できるようにしてある。
【0055】
なお、各表示部6を構成する表示素子21の配列は図1に示すものに限らず、たとえば、図8(a)のように1色の表示素子21(ここでは白色)をフライダクト14の長手方向に沿って1列だけ配設したり、図8(b)のようにそれぞれ発光色の異なる3種類の表示素子21(ここでは、赤、青、白の3色)を種類ごとに上下3列に分けて配設したりしてもよい。このような構成の表示部6であっても、照明器具4の取付位置に対応する表示素子21を点灯させて照明器具4の取付位置を示したり、あるいは、点滅等により昇降装置の動作状態を示したり、表示部6を電飾として機能させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態のライトバトンを示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は上面図、(d)は側面図、(e)は側面図である。
【図2】同上の照明設備を示す概略構成図である。
【図3】同上の照明設備を用いるスタジオを示す平面図である。
【図4】(a)は同上の表示部をホリゾント壁に向けた状態の側面図、(b)は同上の表示部を床面に向けた状態の側面図である。
【図5】同上の照明設備を示すブロック図である。
【図6】同上の表示部の表示例を示す正面図である。
【図7】同上に用いる複数本のライトバトンの位置関係を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図8】同上の表示部の他の例を示す正面図である。
【図9】従来例を示す概略構成図である。
【図10】他の従来例を示す概略構成図である。
【図11】さらに他の従来例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0057】
4 照明器具
5 ライトバトン
6 表示部
9 昇降装置
11 昇降制御盤
14 フライダクト
21 表示素子
22 設定装置
23 コントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ局のスタジオや劇場・ホールなどで使用されているライトバトンを用いた照明設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の照明設備として、テレビ局のスタジオではスタジオ全体を照明可能とするために、スタジオの上部に配置された複数本のライトバトン5を用いて照明器具を配置するものが採用されている(図3参照)。各ライトバトン5はそれぞれ、図9に示すように、天井グリッド7上に設置された昇降装置9によって上下方向(図9の矢印A方向)に昇降可能に構成されており、複数台の照明器具4を横方向に並べて吊り下げ可能な吊りパイプ13と、横方向に長い柱状に形成され各照明器具4に電源供給するフライダクト14とを有する。
【0003】
フライダクト14には、複数台の照明器具4を同時に接続できるように、横方向に沿う側面から引き出されそれぞれ照明器具4を接続可能な接続器15(コネクタ)が複数個設けられている。図10に示すように、フライダクト14の長手方向に沿う側面にコンセント口15’が複数個設けられたものもある。なお、フライダクト14はボーダーケーブル19によって電源供給されており、図9ではライトバトン5の上昇時に弛んだボーダーケーブル19を収納するケーブル受けかご20が設けられているが、図11のようにボーダーケーブル19を巻き取るケーブルリール62を採用したものもある。
【0004】
図9、11に示す照明設備においては、フライダクト14の長手方向の一端部に設けたパイロットランプ63により昇降装置9の動作状態(ライトバトン5の昇降)を表示する。ただし、このパイロットランプ63は比較的小さく遠方からの視認性が悪いので、自発光式であってパイロットランプ63よりも大型の表示部(図示せず)をライトバトン5の長手方向の一部分に取り付け、当該表示部を点滅させることによりライトバトン5が昇降中であることを示すものも考えられている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
ところで、ライトバトン5に照明器具4を取り付ける際には、作業者は、照明器具4の取付位置などが記載された仕込み図を参照し、照明器具4をどのライトバトン5のどの位置に取り付けるのか等を確認しながら、ライトバトン5に照明器具4を取り付けていくのが一般的である。ただし、仕込み図を参照しながらの作業は、仕込み図における取付位置と実際の取付位置とを照らし合わせる必要があるから作業の効率が悪く、また、仕込み図における取付位置とは異なった位置に照明器具4を取り付けてしまうなどの作業ミスも生じやすい。
【0006】
これに対して、ライトバトン5の接続器15に対応する各部位にそれぞれ表示部を設け、各接続器15に接続する照明器具4の情報を当該接続器15に対応する表示部に表示させる照明設備が提案されている(たとえば特許文献2参照)。特許文献2に記載の照明設備を用いれば、仕込み図を参照しなくとも、各表示部の表示に従って照明器具4を取り付ける接続器15を特定することができる。
【特許文献1】登録実用新案第3045733号公報(第5頁)
【特許文献2】特開平10−326510号公報(第4−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献2に記載の照明設備は、表示部の表示によってどの接続器15にどの照明器具4を接続するかを特定するものに過ぎず、ライトバトン5における照明器具4の取付位置を特定するものではない。すなわち、同じ接続器に照明器具4を接続する場合でも、横方向における照明器具4の取付位置にはある程度の自由度があり、この取付位置によって当該照明器具4の照射位置が変わってくるが、従来の表示部では当該取付位置まで特定することはできなかった。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、ライトバトンにおける照明器具の取付位置を特定することができる照明設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明では、複数台の照明器具を横方向に並べて取り付け可能であって、前記横方向に長い柱状に形成されており各照明器具に電源供給するフライダクトを有したライトバトンと、ライトバトンを上下方向に昇降させる昇降装置と、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向に沿う側面に、自発光式の表示素子がフライダクトの長手方向の全長に亘り隙間なく並んで見えるように多数個配列されて成る表示部と、表示部全体の点灯パターンを設定する設定装置と、設定装置で設定された点灯パターンに従って表示部の各表示素子の点灯状態を個別に制御するコントロールユニットとを備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向に沿う側面に、自発光式の表示素子がフライダクトの長手方向の全長に亘り隙間なく並んで見えるように多数個配列されて成る表示部を備えているから、フライダクトの長手方向の全長に亘って任意の位置を表示部の表示により特定することができる。したがって、表示部でライトバトンにおける照明器具の取付位置を表示するようにすれば、ライトバトンにおける照明器具の取付位置を表示部で特定することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記表示素子が、前記ライトバトンにおける前記表示部が設けられた側面において前記フライダクトの長手方向に交わる方向に複数列配設されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、表示素子が縦横に複数個ずつ並んで面を形成するので、文字や図形や映像などを表示部に表示させることが可能となる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記ライトバトンの高さ位置を調節するように前記昇降装置を制御する昇降制御盤が設けられ、ライトバトンが複数本設けられており、昇降装置が、各ライトバトンを個別に昇降させるように各ライトバトンにそれぞれ対応付けて複数台設けられており、前記複数本のライトバトンが、各ライトバトンが昇降する平面が当該平面に直交する一方向に並び、かつそれぞれの前記表示部が同じ向きを向くように配列されており、昇降制御盤が、各ライトバトンの高さ位置を前記一方向において表示部側に隣接するライトバトンよりも低く設定することにより、前記複数本のライトバトンを、表示部側から見て多数個の表示素子が縦横に並び、各表示部に部分画像をそれぞれ表示したときに複数本のライトバトンの表示部で全体画像が形成される配置とすることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、複数本のライトバトンは、表示部側から見て多数個の表示素子が縦横に並び、各表示部に部分画像をそれぞれ表示したときに複数本のライトバトンの表示部で全体画像が形成される配置となるから、各表示部に部分画像をそれぞれ表示することによって複数本のライトバトンの表示部に跨る大きさの全体画像を表示することができる。したがって、1個の表示部で表示する場合に比べて、画像を大きく表示することができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記コントロールユニットが、前記昇降装置の動作状態が前記表示部に表示されるように昇降装置に対して伝送路を介して接続されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向の全長に亘って形成された表示部に昇降装置の動作状態を表示することができるから、ライトバトンの長手方向の一部分に設けた表示部に昇降装置の動作状態を表示する従来構成に比べて、昇降装置の動作状態の遠方からの視認性を高めることができる。なお、ここでいう昇降装置の動作状態には、ライトバトンの昇降などの正常な動作のほか、ライトバトンの衝突、突上げ、過荷重などの異常も含む。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記コントロールユニットが、前記照明器具の動作状態が前記表示部に表示されるように照明器具に対して伝送路を介して接続されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、照明器具の動作状態を表示部の表示によって確認することができる。なお、ここでいう照明器具の動作状態には、照明器具の点灯、消灯などの正常な動作のほか、調光器盤の回路漏電、過負荷、各負荷回路のブレーカオフ、調光器盤の温度異常などの異常も含む。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明において、前記表示素子が、それぞれ赤、緑、青の各色に発光する3種類の光源が混色光を出力するように近接配置されており、各種類の光源の点灯状態を個別に制御することにより混色光の色を可変としていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、各表示素子からそれぞれ出力される混色光の色が可変であるから、表示部においてフルカラー表示が可能になり、表示部自体を演出用の照明器具として使用することが可能となる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明において、前記表示部が、前記ライトバトンにおいて表示部が設けられる側面に対する表示部の上下方向の角度を可変とする角度調節機構を介してライトバトンに取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、表示部の上下方向の角度が可変となっているから、ライトバトンの高さ位置にかかわらず地上に立つ作業者に表示部を向けることができ、表示部の視認性がよくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向に沿う側面に、自発光式の表示素子がフライダクトの長手方向の全長に亘り隙間なく並んで見えるように多数個配列されて成る表示部を備えているから、フライダクトの長手方向の全長に亘って任意の位置を表示部の表示により特定することができる。したがって、表示部でライトバトンにおける照明器具の取付位置を表示するようにすれば、ライトバトンにおける照明器具の取付位置を表示部で特定することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本実施形態ではテレビ局のスタジオで使用する照明設備を例示するが、たとえば劇場・ホールなどスタジオ以外で使用する照明設備に本発明を採用することもできる。
【0025】
本実施形態の照明設備は、複数台の照明器具4を横方向に並べて取り付け可能なライトバトン5を用いて照明器具4をスタジオの上部に配置するものであって、図2に示すように、照明器具4によりスタジオの照明を行う照明システム1と、ライトバトン5を上下方向(図2の矢印A方向)に昇降させる昇降システム2と、ライトバトン5に設けた後述の表示部6を用いて表示を行う表示システム3との3つのシステムを備えている。
【0026】
スタジオの上部には天井グリッド7が配置されており、ライトバトン5は、当該天井グリッド7から引き出されたワイヤロープ8によって吊り下げられる。天井グリッド7上にはワイヤロープ8を巻き取り可能な昇降装置9が設置されており、この昇降装置9によってライトバトン5が上下方向に昇降可能となる。本実施形態では、図3のように複数本のライトバトン5がスタジオのほぼ全域に亘ってスタジオ上部に配設されており、昇降装置9は1本のライトバトン5に対して1台ずつ設けられる。昇降装置9は、ライトバトン5の上下方向の位置(高さ位置)を設定する昇降操作盤10と、ライトバトン5の高さ位置を昇降操作盤10で設定された高さ位置に調節するように昇降装置9におけるワイヤロープ8巻き取り用のモータMを制御する昇降制御盤11と共に昇降システム2を構成している。昇降装置9は昇降負荷配線12を介して昇降制御盤11から電源供給される。
【0027】
各ライトバトン5はそれぞれ、図2に示すように、複数台の照明器具4を横方向に並べて吊り下げ可能な吊りパイプ13と、各照明器具4に電源供給するフライダクト14とを有する。フライダクト14は横方向に長い柱状に形成されており、長手方向に沿う側面(以下、背面という)においては長手方向の全長に亘って、それぞれ照明器具4を接続可能な複数個の接続器15(コネクタ)が等間隔で引き出されている。吊りパイプ13は、フライダクト14と同方向に長い棒状に形成されており、フライダクト14の下方に吊り下げられる。
【0028】
フライダクト14に対して電源供給を行うのは、ライトバトン5に取り付けられた照明器具4を個別に調光可能な調光器盤16である。調光器盤16は、ライトバトン5に取り付けられた照明器具4と、各照明器具4の調光レベルを設定する調光卓17と共に照明システム1を構成している。調光器盤16は、交流電源が供給されており、調光卓17で設定された調光レベルに従って位相制御方式により照明器具4に供給する電力量を調節する。ここでは、調光器盤16は天井グリッド7上に設置された接続端子箱18に照明負荷配線61を介して接続されており、フライダクト14はこの接続端子箱18に対してボーダーケーブル19を介して接続される。そのため、フライダクト14の上部には、ライトバトン5の上昇時に弛んだボーダーケーブル19を収納するケーブル受けかご20が設けられている。ボーダーケーブル19と各接続器15との間の配線はフライダクト14内を引き回される。なお、ここでは昇降制御盤11に3相3線式の交流電源を供給し、調光器盤16に単相3線式あるいは3相4線式の交流電源を供給する。
【0029】
また、本実施形態の照明設備では、フライダクト14の長手方向に沿う背面以外の側面(以下、前面という)に対して、LED(発光ダイオード)を表示素子21として多数個配置することにより表示部6を構成している。表示素子21は図1に示すように、フライダクト14の長手方向の全長に亘って隙間なく並んで見えるように密に配列される。本実施形態では、表示素子21がフライダクト14の前面にマトリックス状に配置されるように、表示素子21を上下方向にも隙間なく並んで見えるように密に複数列配設している。表示部6は、表示部6全体の点灯パターンを設定する設定装置22と、設定装置22で設定された点灯パターンに従って各表示素子21の点灯状態を個別に制御するコントロールユニット23と共に表示システム3を構成している。ここでいう点灯パターンには、各表示素子21の点灯および消灯だけではなく、各表示素子21の輝度や、点灯時間等の時間的要素なども含む。
【0030】
本実施形態の設定装置22は、表示部6の点灯パターンを入力可能に構成されており、たとえば照明器具4の取付位置を示す点灯パターンを入力してコントロールユニット23に伝送することにより、表示部6において照明器具4の取付位置を示す表示が可能となる。つまり、設定装置22において照明器具4の取付位置に対応する表示素子21が点灯するように点灯パターンの設定を行えば、コントロールユニット23が設定装置22の設定内容に従って照明器具4の取付位置に対応する表示素子21を点灯させることになる。ここにおいて、本実施形態では、表示部6の表示素子21がライトバトン5におけるフライダクト14の長手方向の全長に亘って隙間なく並んで見えるように配列されているので、照明器具4の取付位置を接続器15の位置とは無関係に特定することができる。
【0031】
さらにまた、本実施形態の表示部6は表示素子21がマトリックス状に2次元配列されているから、表示部6には、照明器具4の取付位置のほかに、所望の文字や図形や映像等を表示させることもできる。ここにおいて設定装置22は、文字や図形や映像(MPEGデータ)等も点灯パターンとして直接入力可能に構成されている。ここでは、フライダクト14の前面のほぼ全面に表示素子21を設けることにより比較的大きな表示部6を構成しているので、表示部6に表示される文字や図形は遠方からであっても視認可能となる。したがって、比較的高い位置にあるライトバトン5であっても、表示部6に表示された文字や図形をスタジオ内の作業者に視認させることができる。表示部6に表示する文字や図形の具体例については後述する。
【0032】
各表示素子21は、それぞれ赤、緑、青の各色に発光する3種類の光源が混色光を出力するように近接配置されており、各種類の光源の点灯状態を個別に制御することにより混色光の色を可変としている。これにより、表示部6においてフルカラー表示が可能になり、この表示部6自体を演出用の照明器具として使用することも可能となる。
【0033】
ここで、表示部6は、フライダクト14の前面に対する表示部6の上下方向の角度を可変とする角度調節機構(図示せず)を介してライトバトン5に取り付けられることにより、自身の向きが可変となっている。このように表示部6の向きを可変としているから、図4(a)に示すようにスタジオにおいて撮影時に背景となるホリゾント壁Hに表示部6を向け、表示部6から出た光によってホリゾント壁Hを様々な色に照らすことにより表示部6をホリゾントライトとして利用することや、図4(b)に示すように表示部6をスタジオの床面Gに向け、表示部6から出た光によってスタジオ内を照明することにより表示部6を地明かりとして利用することも可能である。ここでは、ホリゾントライトが取り付けられるライトバトン5’(図3参照)に設けられた表示部6をホリゾント壁Hに向け、エリアライトが取り付けられるライトバトン5”(図3参照)に設けられた表示部6を床面Gに向けている。ただし、表示部6をホリゾントライトや地明かりとして利用する際には、表示部6から出射される光にむらが生じないように表示部6の光の取り出し面側に拡散レンズ(図示せず)を具備することが望ましい。
【0034】
また、点灯パターンとして、ランダム点滅、グラデーション表示、アニメーション的な図形表示などを設定することにより、表示部6を電飾として機能させることもできる。従来の照明設備では、スタジオでの撮影時にライトバトン5が映像に映り込むと見苦しい映像となるが、本実施形態の照明設備においてライトバトン5に設けた表示部6を電飾として機能させた場合には、ライトバトン5自体が演出の一部となるから、ライトバトン5が映り込んでも見苦しい映像にならない。
【0035】
ところで、昇降システム2においては昇降操作盤10から昇降制御盤11に昇降信号を伝送するための伝送路、照明システム1においては調光卓17から調光器盤16に調光信号を伝送するための伝送路、表示システム3においては設定装置22からコントロールユニット23に点灯パターンを伝送するための伝送路が必要になる。そこで本実施形態では、昇降操作盤10と昇降制御盤11との間、調光卓17と調光器盤16との間、設定装置22とコントロールユニット23との間を、共通のネットワーク24(ここではイーサネット(登録商標)を用いる)を介して接続してある。
【0036】
以下に、各システムの具体的な構成について図5を参照して説明する。
【0037】
昇降システム2においては、昇降操作盤10が、HUBを介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部25と、ライトバトン5の高さ位置を設定する設定部26と、設定部26の設定に従って昇降信号を出力する制御部27と、記憶部28および後述の異常検知部29とを有する。昇降制御盤10は、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部31と、昇降装置9のモータMへの供給電力を調節する出力部32と、ネットワーク24を介して受信した昇降信号に従って出力部32を制御する制御部33と、後述の異常検知部34とを有する。
【0038】
照明システム1においては、調光卓17が、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部35と、調光レベルを設定する設定部36と、設定部36の設定に従って調光信号を出力する制御部37と、記憶部38および後述の異常検知部39とを有する。調光器盤16は、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部40と、各照明器具4への供給電力量を調節する調光器41と、ネットワーク24を介して受信した調光信号に従って調光器41を制御する制御部42と、後述の異常検知部43とを有する。また、本実施形態では、ライトバトン5に取り付ける照明器具4の1つに、専用規格(ここではDMX512)で定められた制御信号によって光の放射方向を変化させることができるムービングスポットライトを用いており、この制御信号に関しては調光器盤16から配信するのではなく、ライトバトン5に設けたイーサ/DMX変換部44を介してネットワーク24から照明器具4’(ムービングスポットライト)に配信されるように構成してある。そのため、本実施形態で用いるボーダーケーブル19は、調光器盤16と照明器具4との間の電源供給用の配線、およびHUB30とイーサ/DMX変換部44との間の配線として使用できるものを採用する。
【0039】
表示システム3においては、設定装置22が、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部45と、点灯パターンを設定する設定部46と、設定部46の設定に従って点灯パターンを出力する制御部47と、記憶部48および後述の異常検知部49とを有する。コントロールユニット23は、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部50と、各表示素子21を個別に点灯させる表示出力部51と、ネットワーク24を介して受信した点灯パターンに従って表示出力部51を制御する制御部52と、記憶部53および後述の異常検知部54とを有する。ただし、コントロールユニット23の記憶部53にあらかじめ複数種類の点灯パターンを記憶しておいて、設定装置22で設定された点灯パターンをコントロールユニット23の記憶部53から呼び出して用いることもできる。
【0040】
なお、ライトバトン5は上述したように複数本設けられているので、ライトバトン5に設けられる表示部6も複数個存在することになる。そこで、表示部6の点灯パターンを、ライトバトン5ごとに個別に設定できるように、コントロールユニット23を各ライトバトン5にそれぞれ搭載し、各コントロールユニット23にそれぞれ固有のアドレスを付与してある。設定装置22は、アドレスを用いて点灯パターンの伝送対象となるコントロールユニット23を指定することにより、任意のライトバトン5の表示部6を選択して表示を行わせることができる。
【0041】
このように、ネットワーク24を介して昇降システム2と照明システム1と表示システム3とが接続されることによって、各システム間で様々な情報を共有することが可能となる。
【0042】
したがって、たとえば昇降装置9や照明器具4の動作状態を表示システム3の表示部6に表示させることなどが可能となる。この種の表示を表示部6で行うためには、複数種類の点灯パターンを昇降装置9や照明器具4の各動作状態にそれぞれ対応付けて設定装置22あるいはコントロールユニット23の記憶部48,53にあらかじめ記憶しておき、設定装置22あるいはコントロールユニット23において、昇降システム2や照明システム1から動作状態に応じてネットワーク24上に出力される信号を受け、当該動作状態に対応する点灯パターンを呼び出して用いるようにすればよい。
【0043】
ここでいう昇降装置9や照明器具4の動作状態には、図6(a)に示すライトバトン5の上昇中など、正常な動作だけではなく、ライトバトン5の衝突、突上げ、過荷重などの昇降システム2の異常や、調光器盤16の回路漏電、過負荷、各負荷回路のブレーカオフ、調光器盤16の温度異常などの照明システム1の異常も含む。昇降システム2の異常は、昇降操作盤10の異常検知部29あるいは昇降制御盤11の異常検知部34で検知され、照明システム1の異常は、調光卓17の異常検知部39あるいは調光器盤16の異常検知部43で検知される。具体例を挙げると、ライトバトン5が下降中に障害物に接触した突上げ時には、表示部6において図6(b)のように突上げ発生を意味する文字を表示し、一方、調光器盤16の回路で漏電が発生した際には、表示部6に図6(c)のように漏電発生を意味する文字を表示する。
【0044】
これらの異常は、従来は調光卓17や昇降操作盤10が具備しているモニターや調光器盤16や昇降制御盤11内のモニターでしか確認できなかったが、本発明によりライトバトン5に設けた表示部6に表示させることができるようになる。その結果、これらの異常をスタジオ内の作業者に迅速に知らせることができる。なお、本実施形態では、表示部6の温度異常、設定装置22とコントロールユニット23との間の通信異常など、表示システム3で発生する異常についても、設定装置22の異常検知部49あるいはコントロールユニット23の異常検知部54で検知して表示部6に表示可能としている。
【0045】
また、上述のネットワーク24には、スタジオごとに1台ずつ設けられたサーバコンピュータ55(以下、スタジオサーバという)が接続されている。スタジオサーバ55は、昇降システム2、照明システム1、表示システム3で用いる各データを保存、配信、検索、編集することができるように構成されている。
【0046】
具体的には、スタジオサーバ55は、HUB30を介してネットワーク24に接続されるデータ入出力部56と、各システム1,2,3で用いるデータを記憶する記憶部57と、各システム1,2,3で用いるデータの保存、配信、検索、編集などの操作が可能な入力インタフェース(図示せず)を備えた設定部58と、設定部58の操作に従って各システム1,2,3で用いるデータの配信、検索、編集を行う制御部59とを有する。
【0047】
そして、従来はそれぞれのシステム1,2,3で個別に管理していた各システムの設定に用いる情報(以下、仕込情報という)、すなわち照明システム1であれば、照明器具4の取付位置や照射方向、フィルタの種類、パッチ情報(つまり調光器41と照明器具4との接続情報)、調光レベル、シーン、エフェクト情報など、昇降システム2であれば、昇降操作情報(上昇、下降、停止)、ライトバトン5の高さ位置、一括して昇降させるライトバトン5のグループ情報などを、スタジオサーバ55にて一元管理する。
【0048】
しかも、これらの仕込情報は、それぞれ異なるシステム1,2,3の仕込情報であっても互いに対応付けて管理可能としてある。各システム1,2,3およびスタジオサーバ55においては、撮影場面の転換時に全てのシステム1,2,3に場面転換の合図であるキュー信号を配信する機能が設けられており、互いに対応付けてスタジオサーバ55に管理されている異なるシステム1,2,3の仕込情報を、いずれかのシステム1,2,3あるいはスタジオサーバ55からのキュー信号によって同時に使用することができる。たとえば、照明システム1からのキュー信号により、照明システム1と昇降システム2とを連動させて、照明器具4をある調光レベルに調光するとともにラインバトン5をある高さ位置に移動させるといった動作が可能になる。なお、スタジオサーバ55にて一元管理される仕込情報は主としてスタジオサーバ55の設定部58から入力されるが、設定装置22や昇降操作盤10や調光卓17からも入力可能な構成を採用している。つまり、設定装置22で入力された点灯パターンについてもスタジオサーバ55にて一元管理される。
【0049】
さらに、本実施形態の表示システム3は、スタジオサーバ55に保存されている仕込情報を、スタジオサーバ55あるいは設定装置22の操作により任意に読み出して表示部6に表示可能に構成されている。これにより、昇降装置9や照明器具4の動作状態だけでなく、従来は仕込み図から読み取っていた仕込情報をも表示システム3の表示部6に表示することができる。その結果、たとえば作業者が照明器具4を取り付ける際に、仕込み図を用いることなく各ライトバトン5に取り付ける照明器具4の種類、照射方向などを表示部6の表示によって容易に確認することができ、照明器具4の取り付け作業の効率化を図ることができる。ここにおいて、各表示部6に表示させる仕込情報は、主として当該表示部6が設けられたライトバトン5に関連するものとしている。たとえば、図6(d)のように該当するライトバトン5に関して各照明器具4の調光レベルを表示部6に文字で表示したり、図6(e)のように該当するライトバトン5に関して照明器具4を接続する接続器15の位置および各照明器具4の種類を表示部6に文字で表示したりすることができる。
【0050】
さらにまた、仕込情報はスタジオで収録する番組ごとにまとめて管理される。すなわち、1つの番組を収録するために使用する仕込情報は全て1まとめにしてスタジオサーバ55に保存している。ここで、スタジオサーバ55に保存されるデータには、番組名、オンエア日時、照明担当者などの属性を対応付けて保存し、データの管理を容易にしてある。スタジオサーバ55は、昇降システム2と照明システム1と表示システム3とに対して、保存されているデータを番組ごとに一斉に配信する機能を有している。
【0051】
ところで、本実施形態では複数個の表示部6を用いて、1つの表示部6では表示しきれない大きな映像を表示することができるように、以下の構成を採用している。
【0052】
それぞれ表示部6が設けられた複数本のライトバトン5は、図7(a)のように、それぞれの表示部6を同じ向きに向けて、かつ各フライダクト14が昇降する平面(つまりライトバトン5が昇降時に通る平面)が前後方向に等間隔で並ぶように配列されている。そして、昇降制御盤11は、各ライトバトン5の表示部6から放射される光が他のライトバトン5によって遮られることがないように、各ライトバトン5の高さ位置を前後方向において表示部6側に隣接するライトバトン5よりも低く設定する。前記複数本のライトバトン5の全てについてこのように高さ位置を設定すると、複数本のライトバトン5が、前方のライトバトン5ほど高さ位置が高くなるように階段状に並ぶことになる。ここにおいて、ライトバトン5の表示部6側に設置されたカメラ60からこれら複数本のライトバトン5を見ると、各ライトバトン5の表示部6が上下方向に並んで見えるから、これらの表示部6を全体で1つの画面(以下、大画面という)として用いることにより大きな映像を表示することができる。このとき、大画面の縦横には多数個の表示素子21が並ぶことになる。さらに、同様に高さ位置が設定された複数本のライトバトン5の組み合わせを左右方向に複数組並べて配置しておけば、図7(b)に示すように、上下方向に表示部6複数個(ここでは11個)分、左右方向に表示部6複数個(ここでは3個)分の大きさの大画面を構成することができる。
【0053】
大画面に1つの映像を表示させる際には、設定装置22(あるいはスタジオサーバ55)において対象となる映像(全体画像)を分割し、大画面を構成している各表示部6に対して分割後の映像(部分画像)を表示させるように、各コントロールユニット23に分割後の映像に対応する点灯パターンを割り当てる。ここで、分割後の各映像が大画面において分割前の位置と同じ位置に表示されるように、各コントロールユニット23に点灯パターンが割り当てられる。各コントロールユニット23の識別は上述のアドレスを用いて行われる。設定装置22は、各コントロールユニット23に同期信号を送信することにより、各表示部6の間において映像の時間的なずれを補正し、大画面の映像が乱れないようにしている。
【0054】
また、大画面を構成するために、複数本のライトバトン5の高さ位置を個別に調節するのは手間がかかるので、本実施形態では、大画面を構成する各ライトバトン5の高さ位置の組み合わせを昇降操作盤10あるいはスタジオサーバ55にあらかじめ登録しておいて、簡単に大画面を構成できるようにしてある。しかも、このように昇降システム2により大画面を構成するための情報と、表示システム3において大画面に映像を表示させる情報とを互いに対応付けてスタジオサーバ55で管理しておくことにより、いずれかのシステム1,2,3やスタジオサーバ55からのキュー信号によって、大画面を構成するとともに大画面に映像を表示できるようにしてある。
【0055】
なお、各表示部6を構成する表示素子21の配列は図1に示すものに限らず、たとえば、図8(a)のように1色の表示素子21(ここでは白色)をフライダクト14の長手方向に沿って1列だけ配設したり、図8(b)のようにそれぞれ発光色の異なる3種類の表示素子21(ここでは、赤、青、白の3色)を種類ごとに上下3列に分けて配設したりしてもよい。このような構成の表示部6であっても、照明器具4の取付位置に対応する表示素子21を点灯させて照明器具4の取付位置を示したり、あるいは、点滅等により昇降装置の動作状態を示したり、表示部6を電飾として機能させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態のライトバトンを示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は上面図、(d)は側面図、(e)は側面図である。
【図2】同上の照明設備を示す概略構成図である。
【図3】同上の照明設備を用いるスタジオを示す平面図である。
【図4】(a)は同上の表示部をホリゾント壁に向けた状態の側面図、(b)は同上の表示部を床面に向けた状態の側面図である。
【図5】同上の照明設備を示すブロック図である。
【図6】同上の表示部の表示例を示す正面図である。
【図7】同上に用いる複数本のライトバトンの位置関係を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図8】同上の表示部の他の例を示す正面図である。
【図9】従来例を示す概略構成図である。
【図10】他の従来例を示す概略構成図である。
【図11】さらに他の従来例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0057】
4 照明器具
5 ライトバトン
6 表示部
9 昇降装置
11 昇降制御盤
14 フライダクト
21 表示素子
22 設定装置
23 コントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の照明器具を横方向に並べて取り付け可能であって、前記横方向に長い柱状に形成されており各照明器具に電源供給するフライダクトを有したライトバトンと、ライトバトンを上下方向に昇降させる昇降装置と、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向に沿う側面に、自発光式の表示素子がフライダクトの長手方向の全長に亘り隙間なく並んで見えるように多数個配列されて成る表示部と、表示部全体の点灯パターンを設定する設定装置と、設定装置で設定された点灯パターンに従って表示部の各表示素子の点灯状態を個別に制御するコントロールユニットとを備えることを特徴とする照明設備。
【請求項2】
前記表示素子は、前記ライトバトンにおける前記表示部が設けられた側面において前記フライダクトの長手方向に交わる方向に複数列配設されていることを特徴とする請求項1記載の照明設備。
【請求項3】
前記ライトバトンの高さ位置を調節するように前記昇降装置を制御する昇降制御盤が設けられ、ライトバトンは複数本設けられており、昇降装置は、各ライトバトンを個別に昇降させるように各ライトバトンにそれぞれ対応付けて複数台設けられており、前記複数本のライトバトンは、各ライトバトンが昇降する平面が当該平面に直交する一方向に並び、かつそれぞれの前記表示部が同じ向きを向くように配列されており、昇降制御盤は、各ライトバトンの高さ位置を前記一方向において表示部側に隣接するライトバトンよりも低く設定することにより、前記複数本のライトバトンを、表示部側から見て多数個の表示素子が縦横に並び、各表示部に部分画像をそれぞれ表示したときに複数本のライトバトンの表示部で全体画像が形成される配置とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の照明設備。
【請求項4】
前記コントロールユニットは、前記昇降装置の動作状態が前記表示部に表示されるように昇降装置に対して伝送路を介して接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の照明設備。
【請求項5】
前記コントロールユニットは、前記照明器具の動作状態が前記表示部に表示されるように照明器具に対して伝送路を介して接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の照明設備。
【請求項6】
前記表示素子は、それぞれ赤、緑、青の各色に発光する3種類の光源が混色光を出力するように近接配置されており、各種類の光源の点灯状態を個別に制御することにより混色光の色を可変としていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の照明設備。
【請求項7】
前記表示部は、前記ライトバトンにおいて表示部が設けられる側面に対する表示部の上下方向の角度を可変とする角度調節機構を介してライトバトンに取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の照明設備。
【請求項1】
複数台の照明器具を横方向に並べて取り付け可能であって、前記横方向に長い柱状に形成されており各照明器具に電源供給するフライダクトを有したライトバトンと、ライトバトンを上下方向に昇降させる昇降装置と、ライトバトンにおいてフライダクトの長手方向に沿う側面に、自発光式の表示素子がフライダクトの長手方向の全長に亘り隙間なく並んで見えるように多数個配列されて成る表示部と、表示部全体の点灯パターンを設定する設定装置と、設定装置で設定された点灯パターンに従って表示部の各表示素子の点灯状態を個別に制御するコントロールユニットとを備えることを特徴とする照明設備。
【請求項2】
前記表示素子は、前記ライトバトンにおける前記表示部が設けられた側面において前記フライダクトの長手方向に交わる方向に複数列配設されていることを特徴とする請求項1記載の照明設備。
【請求項3】
前記ライトバトンの高さ位置を調節するように前記昇降装置を制御する昇降制御盤が設けられ、ライトバトンは複数本設けられており、昇降装置は、各ライトバトンを個別に昇降させるように各ライトバトンにそれぞれ対応付けて複数台設けられており、前記複数本のライトバトンは、各ライトバトンが昇降する平面が当該平面に直交する一方向に並び、かつそれぞれの前記表示部が同じ向きを向くように配列されており、昇降制御盤は、各ライトバトンの高さ位置を前記一方向において表示部側に隣接するライトバトンよりも低く設定することにより、前記複数本のライトバトンを、表示部側から見て多数個の表示素子が縦横に並び、各表示部に部分画像をそれぞれ表示したときに複数本のライトバトンの表示部で全体画像が形成される配置とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の照明設備。
【請求項4】
前記コントロールユニットは、前記昇降装置の動作状態が前記表示部に表示されるように昇降装置に対して伝送路を介して接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の照明設備。
【請求項5】
前記コントロールユニットは、前記照明器具の動作状態が前記表示部に表示されるように照明器具に対して伝送路を介して接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の照明設備。
【請求項6】
前記表示素子は、それぞれ赤、緑、青の各色に発光する3種類の光源が混色光を出力するように近接配置されており、各種類の光源の点灯状態を個別に制御することにより混色光の色を可変としていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の照明設備。
【請求項7】
前記表示部は、前記ライトバトンにおいて表示部が設けられる側面に対する表示部の上下方向の角度を可変とする角度調節機構を介してライトバトンに取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の照明設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【公開番号】特開2007−265766(P2007−265766A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88438(P2006−88438)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000136468)株式会社フジテレビジョン (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000136468)株式会社フジテレビジョン (14)
【Fターム(参考)】
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