説明

熱ショックタンパクGP96ワクチン接種及びそれを用いた方法

本発明は、分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を発現するように遺伝子操作された腫瘍細胞を提供する。本発明は、分泌型gp96ポリペプチドをコードする核酸を発現するように遺伝子操作された腫瘍細胞を投与することによって腫瘍に対する免疫反応を促進する方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2008年3月20日に提出した米国仮特許出願第61/038,313号の優先権の利益を主張する。これらの全内容はここで言及することによって組み込まれている。
[政府支援]
本発明は、国立衛生研究所によってACGTから与えられた許可番号CA109094、CA039201の下の米国政府支援によってなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有することがある。
[技術分野]
本発明は、医学、免疫学及び腫瘍学の分野に関する。より詳しくは、本発明は、動物対象の腫瘍に対する免疫反応を誘導する方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗腫瘍ワクチン接種は、非常に有効であり、腫瘍を有しない未治療マウスに投与すればその後の投与時に腫瘍増殖を防ぐ。予防が持続性で腫瘍特異的であることは、一般に、適応的免疫反応の関与を示唆している。既に定着した腫瘍の治療的処置にワクチンを用いるときには、この様相が根本的に変わる。防御免疫を有効に確立することができるワクチンの同じ用量は、通常、治療的利益を与えることができない。治療ワクチン接種が有効でない理由は、腫瘍によって誘導される抑制細胞の誘導、制御性細胞の発生、T細胞アネルギー又は耐性の誘導、又は、これらの機構の組合せに起因すると考えられる。腫瘍によって誘導される免疫抑制の正確な機構がどのようなものであったとしても、癌治療のためのワクチン接種療法の成功は、これらの腫瘍によって誘導される抑制作用を克服又は制圧することに依存するであろう。
【0003】
小胞体(ER)に局在する熱ショックタンパク(hsp)gp96は、ペプチドがMHCクラスI及びII分子になる過程においてシャペロンとして機能すると考えられている。Gp96をシャペロンとして折りたたまれるペプチドは、ペプチドの全薬効領域及び細胞内で生成された大きなタンパク断片を含んでおり、小胞体中に移される。腫瘍細胞から得られてワクチンとして用いられるGp96は、おそらくは、腫瘍特異的ペプチドのAPCへの輸送を介して、特異的腫瘍免疫性を誘導する。J Immunol.1999 Nov 15;163(10):5178−82を参照されたい。
【0004】
本出願に記載されている発明は、抗腫瘍組成物を提供する。熱ショックタンパク糖タンパク(gp)96関連ペプチドは、樹状細胞によってCD8細胞に交差提示される。ワクチン接種系は、抗腫瘍療法に適するように開発された。J Immunother.2008 May;31(4):394−401及びそこで引用されている文献を参照されたい。gp96−免疫グロブリン(Ig)G1−Fc融合タンパクを腫瘍細胞内にトランスフェクトすることによって、シャペロンで折りたたまれた腫瘍ペプチドと複合したgp96−Igが分泌される。gp96−Igを分泌する腫瘍の非経口投与は、先天性免疫系の活性化と結びついて、強い抗原特異的CD8細胞毒性Tリンパ球増殖を生じさせる。腫瘍によって分泌されるgp96は、gp96分泌部位に樹状細胞(DC)及びナチュラルキラー(NK)細胞の動員を生じさせ、CD91及びトール様受容体−2及びトール様受容体−4に結合することによって樹状細胞活性化を媒介する。gp96のエンドサイトーシス的取り込み、及び、そのシャペロンによって折りたたまれたペプチドは、主要組織適合複合体(MHC)クラスIと、CD4細胞から独立した同族CD8の強い活性化とによって、ペプチド交差提示を誘導する。このモデル系において、適合移植された、T細胞受容体(TCR)トランスジェニック緑色蛍光タンパク(GFP)で標識されたCD8T細胞を用いることによって、ワクチン接種から4日〜5日以内にCD8CTL増殖を正確に定量することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を発現するように遺伝子操作された腫瘍細胞を提供する。また、本発明は、分泌型gp96ポリペプチドをコードする核酸を発現するように遺伝子操作された腫瘍細胞を投与することによって、癌腫瘍を含む腫瘍に免疫反応を促進する方法を提供する。好ましくは、免疫反応は防御免疫反応である。好ましくは、腫瘍細胞は同種異系腫瘍細胞である。本発明は、分泌型gp96ポリペプチドを発現するように遺伝操作された腫瘍細胞、例えば癌腫瘍細胞を投与することによって、癌を含む腫瘍を抑制する方法をさらに提供する。好ましくは、腫瘍細胞は同種異系腫瘍細胞である。本発明は、癌に対するワクチンを製造する方法であって、分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターを用いてトランスフェクトされた腫瘍細胞をコードする核酸を発現するように癌細胞群を遺伝子操作するステップを含む方法をさらに提供する。本発明は、ヒト対象において防御免疫反応を生じさせる方法であって、分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターを用いてトランスフェクトした有効量の腫瘍細胞を前記対象に投与するステップを含む方法をさらに提供する。
【0006】
ある好ましい実施形態によれば、gp96ポリペプチドは、gp96ポリペプチドと免疫グロブリンシグナルペプチド(IgSP)とを含む融合タンパクである。選択的に、前記IgSPは、マウスIgSP、ラットIgSP、ブタIgSP、サルIgSP、ヒトIgSPからなる群より選択される。
【0007】
好ましい実施形態によれば、約1日から約6か月の期間中にgp96免疫化をたびたび(例えば、1日1回又は1日2回)実行する。その他の好ましい実施形態によれば、治療用組成物を単位用量当たり20mg〜2000mgの投薬量で非経口的に投与する。
【0008】
好ましい実施形態によれば、gp96免疫化を、正常なBリンパ球及び/又は悪性のBリンパ球を破壊する化合物、又は、多すぎるB細胞、過活性B細胞又は機能障害B細胞を有することを特徴とする疾病を治療するために用いられる化合物と組み合わせて投与する。そのような疾病には、白血病又はリンパ腫などの腫瘍疾患が含まれる。好ましくは、B細胞破壊する化合物が抗体である。いくつかの実施形態においては、抗体が、類人霊長類の抗体、ネズミのモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体から選択される。他の実施形態においては、抗体が結合するB細胞抗原が、CD19、CD20、CD22、HLA−DR及びCD74から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1A−F gp96−IgをトランスフェクトしたE.G7(A)及びLLC(B)の低下した腫瘍形成性。■、Gp96−Igをトランスフェクトしたもの;○、疑似トランスフェクトしたもの;及び、□、トランスフェクトしていない細胞。ワクチン接種を行った細胞の用量当たりに6つのマウスの群を用いた。C−F、分泌gp96−Igワクチン接種は、腫瘍特異的メモリーを生じさせる。C57BL/6マウスに、10個のgp96−IgがトランスフェクトされたE.G7(すべてのパネルにおいて■)によって、10個の放射線照射されたE.G7(□)によって隔週の間隔で2回免疫化を行い、又は、免疫化を行わなかった(・)。2週間後に、パネルに示した数の腫瘍細胞をマウス(1群当たり6頭のマウス)に投与した。腫瘍を増殖させていないマウスを3か月間観察して腫瘍がないと判断した。
【図2】図2A−C A、初期段階中の10個のE.G7−gp96−Igの拒絶反応に対する免疫適格細胞の枯渇の効果;コントロールにPBSを投与した。個々のマウスの腫瘍増殖曲線を示す。概略的に枯渇スケジュールを頂部に示す。10個のE.G7−gp96−Igの接種の2日前に、抗CD8、抗CD4又はカラギーナンを用いて免疫適格細胞の枯渇を実行した。B、CD4欠損マウスは、E.G7−gp−Igを拒絶することができる。5頭のCD4欠損マウスに未照射の10個のE.G7−gp96−Igを皮下注射で投与した。腫瘍成長を記録して平均腫瘍直径として公表する。C、E.G7拒絶反応のエフェクター段階に対する免疫適格細胞の枯渇の効果。免疫化及び免疫によるタンパク除去の時間的推移を頂部に概略的に示す。免疫化のために、6頭のマウスの群に10個の未照射のE.G7−gp96−Igを皮下注射で2回接種させた。10個のE.G7を投与する3日前に、上記のように免疫細胞が枯渇した;コントロールにPBSを接種した。腫瘍増殖を記録して平均腫瘍直径として公表した。
【図3】図3A−B CD8T細胞のGp96媒介性クロスプライミングは、CD4細胞の非存在下で強まるが、CD40Lの不存在によって影響されない。マウスの静脈内に100万個のGFP−OT−Iを接種し、2日後に400万個のEG7−gp96−Igを腹腔内に接種して免疫化させた。さらに5日後に腹膜腔(PC)から細胞を採取し、FACSによってCD8ゲートにおけるGFP−OT−I頻度について分析した。値は、腹膜中のGFP−OT−Iの絶対数として表されている。A、WTマウスと比較したCD4欠損マウス。B、CD40L欠損マウス。
【図4】図4A−C CD8T細胞のGp96媒介性クロスプライミングは、CD80及びCD86を必要とし、NKT細胞に依存しない。マウスに100万個のGFP−OT−Iを静脈内に接種し、2日後に腹腔内に400万個のEG7−gp96−Ig(A及びC)あるいは、200万個の3T3−OVA−gp96−Ig(B)を接種して免疫化させた。さらに5日後に脾臓(SP)又はその腹膜から細胞を採取し、FACSによってCD8ゲートにおけるGFP−OT−I頻度について分析した。A、CD80又はCD86の単欠損;B、CD80/CD86の二重欠損;及び、C、NKT欠損(Jα18ko)。
【図5A】図5A リンパ腺の非存在下におけるgp96による効率的なクロスプライミング。LTa欠損、代表的なFACSデータ。マウスの静脈内に100万個のGFP−OT−Iを接種し、2日後に200万個の3T3−OVA−gp96−Igを腹腔内に接種して免疫化させた。さらに5日後に示されている部位から細胞を採取し、FACSによってCD8ゲートにおけるGFP−OT−I頻度について分析した。
【図5B】図5B リンパ腺の非存在下におけるgp96による効率的なクロスプライミング。ヒストグラムで表示した同じデータ。データは、2つの独立した試験の代表値であり、各バーは、2つのマウスの平均±標準誤差を表す。
【図5C】図5C リンパ腺の非存在下におけるgp96による効率的なクロスプライミング。エクスビボにおける3T3−OVA−gp96−IgによるOT−Iのクロスプライミング。3日前に3T3−OVA−gp96−Ig、3T3−gp96−Ig又は3T3を腹腔内に注入したマウスから採取したPECを、1:10、1:100及び1:1000のOT−I:PECの比率でCFSEラベルされたOT−Iと共に72時間培養した(a〜f)。さらなるコントロールとして、3T3トランスフェクタントをそのままOT−Iと共にインビトロで培養した。細胞を抗CD8−PEによって染色し、CFSE希釈について分析した。これらをb〜hに示す。
【図6】図6A−B gp96−OVAによるCD8T細胞のクロスプライミングは、EG7−Kb−OVAを介した抗原提示による直接プライミングよりも効率的である。マウスの静脈内に100万個のGFP−OT−I接種し、2日後に200万個のEG7−gp96−Ig又はEG7を腹腔内に接種して免疫化させた。A、免疫化前(免疫前)及び免疫化の5日後に腹膜から細胞を採取し、FACSによってCD8ゲートにおけるGFP−OT−I頻度について分析した。B、EG7−gp96−Ig及びEG7免疫化の後の腹膜及び脾臓におけるGFP−OT−I増殖の動態;規定の部位におけるGFP−OT−Iの総数がプロットされている。
【図7】図7A−B gp96による先天性免疫細胞の腹膜への動員の増加。第2日に100万個のOT−1を静脈内に移し、2日後に400万個のEG7又はEG7gp96−Ig細胞を腹腔内に注入した。示されている日に腹膜から細胞を採取し、フローサイトメトリによって表現型を決定した。A、CD11cの動員、NK1.1、及び、EG7−gp96−Igの注入によるF4/80dim細胞。F4/80bright細胞は免疫化前に腹膜内存在しており、免疫化後に数が変わらない。B、EG7及びEG7−gp96−Igによる腹膜への細胞動員の比較。
【図8】図8A−C Gp96分泌は、樹状細胞及びCD8細胞の増殖を媒介し、腹腔においてナチュラルキラー細胞を活性化する。マウスの静脈内に100万個のGFP−OT−Iを接種し、2日後に400万個のEG7−gp96−Ig又はEG7を腹腔内に接種して免疫化させた。A、4×10個のEG7又はEG7−gp96−Igによる免疫化の2日後及び4日後にBrdU染色によって測定した腹膜、腸間膜、大動脈周囲リンパ節(dL)及び脾臓(SP)のCD11c細胞の増殖。CD11c細胞を閉じ込めて、細胞内染色によるBrdUについて分析した。第2日の腹膜においてEG7−gp96−Ig投与後のみのCD11c増殖(赤い線)に留意されたい。免疫化を行った日からマウスに飲用水中からBrdUを摂取させた。B、BrdU取り込みによって測定されたCD8増殖は、第2日の腹膜において(赤い線)gp96プライミング後のみに検出可能である。第4日の腹膜においてEG7−gp96−Ig免疫化後の大幅なCD8の増殖;dLN、流入リンパ節(傍大動脈、腸間膜);ndLN、非流入リンパ節(鼠蹊)。C、CD69アップレギュレーションで測定したEG7−gp96−Ig免疫化による腹膜中のNK1.1細胞の活性化。A−C、3つの独立試験の代表である。
【図9】図9A−B 遊離OVAタンパクと比較した、gp96よって折りたたまれたOVAによって強められたCD8T細胞クロスプライミング。C57BL/6マウスの静脈内に100万個のGFP−OT−Iを接種し;2日後に、異なる数の同系EG7−gp96−Ig若しくは同種異系3T3−OVA若しくは3T3−OVA−gp96−Igによって、又は、PBS中のOVAタンパクによって腹腔で免疫化させた。腹腔内注入用の細胞数を、X軸上に示されているように24時間内に分泌されるgp96−Ig又はOVAの量を生成するように調節した。OVA及びgp96−Ig分泌を、それぞれ、ELISAによってインビトロにおいて測定した。免疫化の5日後に、フローサイトメトリによって腹膜内でGFP−OT−I増殖を測定した。A、EG7−gp96−Ig及びOVAタンパクに対するGFP−OT−I増殖。B、3T3−OVA、3T3−OVA−gp96−Ig及びOVAタンパクに対するGFP−OT−I増殖。
【図10】図10A−B Gp96は、タンパククロスプライミングのためのアジュバントであり、連続的に放出されたときに最も効率的に作用する。A、マウスの静脈内に100万個のGFP−OT−Iを接種し、2日後に示されているように腹腔内で免疫化を行った。インビボにおけるGFP−OT−I増殖を免疫化の4日後にFACSによって測定した。注入した細胞から分泌された生成物をインビトロにおいてELISAで定量した。示されている生成物の分泌量は、注入された細胞数によって24時間以内の培養で分泌された量を表す。3T3−gp96−Ig細胞から分泌された200ngのgp96を加えた50μgのOVAが、〜0.1%のgp96−OVAを含む3T3−OVA−gp96−Igから分泌された200ngのgp96−Igよりも少ないGFP−OT−I増殖を引き起こすことに留意されたい。B、マウスの静脈内に100万個のGFP−OT−Iを接種し、2日後に腹腔内で上澄み3T3−OVA gp96−Ig培養から採取した200ngの可溶性gp96−Igを用いて、又は、続く24時間以内に200ngのgp96−Igを分泌する3T3−gp96−Ig細胞数を用いて免疫化を行った。免疫化の4日後に腹膜におけるGFP−OT−I増殖をフローサイトメトリによって測定した。
【図11】図11A−D 離れた定着腫瘍によるOT−I CTL増殖の抗原非特異的抑制。A、免疫化していないマウス;腫瘍がない免疫化マウス;及び、EG7癌を有する免疫化マウスの腹膜におけるOT−I CD8 CTL頻度の比較。100万個のEG7腫瘍細胞をわき腹の皮下に移植し、EG7−gp96−Igによる免疫化の5日前に定着させた。免疫化の2日前に100万個のOT−I CD8 T細胞を静脈内に適合移植した。200万個のEG7−gp96−Igを用いて腹腔内でマウスを免疫化させた。5日後にフローサイトメトリによって腹膜細胞を分析した。B、定着腫瘍によるOT−I増殖の抑制は抗原非特異的である。EG7に代えて、オバルブミンを発現しないEL4及びLLCを5日間定着させた。OT−I適合移植及びワクチン接種をAと同様に行った。C、定着腫瘍の不存在下又は存在下においてワクチン接種部位である腹膜腔に蓄積するOT−Iの絶対数(Bと同じ試験)。D、腹膜腔に入れた総細胞数は、EG7−gp96−Ig免疫化によって定着腫瘍の存在下で増加する。3つ以上の個々の試験の代表的試験を示す。N=各グループに3〜5頭のマウス。図に示した有意値は、t試験によって計算した。ネガティブコントロールは免疫化されていない(免疫前)マウスであり、ポジティブコントロールはわき腹に末梢腫瘍がないマウスである。CTLは細胞毒性Tリンパ球;gpは糖タンパク;Igは免疫グロブリン;LLCはルイス肺癌を表す。
【図12】図12A−D 頻繁なgp96免疫化は腫瘍によって誘導される免疫抑制を克服することができる。A、100万個のEG7腫瘍細胞をわき腹の皮下に移植した。腫瘍移植と同日又は2日後若しくは4日後に、100万個のEG7−gp96−Ig又は被照射EG7の腹腔内投与による免疫化を開始した。ネガティブコントロール−非治療、n=17;被照射EG7免疫化、n=15。異なるスケジュールでのEG7−gp96−Igによる免疫化、n=15。B、腹腔内免疫化を第3日に開始して第14日(黒矢印)まで毎日繰り返した以外は、Aと同様に行った。100万個のEG7−gp96−Ig(n=17)又は100万個のLLC−gp96−Ig(n=5)又は被照射EG7(ネガティブコントロール、n=5)又は、非療法(ネガティブコントロール、n=19)。C、腫瘍を5日間定着させ、次いで、100万個のEG7−gp96−Igを用いて第5日〜第16日まで1日1回(黒矢印)若しくは1日2回(赤矢印)腹腔内において免疫化させた。各群につきn=5であった。D、腫瘍を7日間定着させ、次いで、100万個のEG7−gp96−Igを用いて1日1回(黒矢印)若しくは1日2回(赤矢印)、又は、第7日〜第18日まで1日1回若しくは2回腹腔内において免疫化させた。各群につきn=5であった。腫瘍増殖における差の有意値を各グラフに示す。gpは糖タンパク;Igは免疫グロブリン;LLCはルイス肺癌;nsは有意でないこと(not significant)を意味する。
【図13】図13 頻繁な免疫化は、定着したLLCの腫瘍増殖遅延を生じさせる。LLC(10個)をわき腹の皮下に移植し、3日間定着させた。100万個のLLC−gp96−Ig(n=15)、EG7−gp96−Ig(n=5)、若しくは、被照射LLC(n=5)による免疫化、又は、非療法(n=19)を、第3日に開始し、第7日、第10日、及び、第14日に繰り返した。19頭の非治療マウスと、15頭の治療された癌があるマウスとの間に有意差が示された(P=0.0234)。gpは糖タンパク;Igは免疫グロブリン;LLCはルイス肺癌を意味する。
【図14A】図14A B細胞は、gp96によって媒介されるナチュラルキラー細胞の腹膜腔への動員、及び、腹膜腔内の樹状細胞の保持を抑制する。EG7−gp96−Ig免疫化による腹膜腔内へのB細胞の動員、わずかのみのCD5+B細胞の動員。腫瘍がないマウスに100万個のEG7−gp96−Igを接種した。その後にフローサイトメトリによってCD5+細胞及びCD5_B細胞の蓄積を毎日測定した。3つより多い試験の代表。
【図14B】図14B B細胞は、gp96によって媒介されるナチュラルキラー細胞の腹膜腔への動員、及び、腹膜腔内の樹状細胞の保持を抑制する。B細胞欠損マウス(BCDM)におけるナチュラルキラー細胞の動員増加並びにナチュラルキラー細胞及び樹状細胞の保持と、B細胞の適合移植によるその逆転。WT及びBCDMを200万個のEG7−gp96−Igを用いて腹腔内で免疫化させ、細胞を2日後及び4日後に腹膜腔から採取し、フローサイトメトリによって分析した。EG7−gp96−Igを用いた免疫化の2日前に、10個の野生型B細胞の静脈内適合移植によってB細胞再構成を行った。3回の試験の代表。BCDMはB細胞欠損マウス、DCは樹状細胞;gpは糖タンパク質;Igは免疫グロブリン;NKはナチュラルキラー;WTは野生型を示す。
【図15】図15A−B Gp96によって媒介されるOT−I CD8 CTL増殖は、B細胞の非存在下において増加して持続する。野生型マウス及びB細胞欠損マウスに100万個のGFP−OT−Iを接種し、さらに、B細胞が再構成されたマウスに1000万個の野生型B細胞を静脈内に適合移植した。2日後に400万個のEG7−gp96−Igでマウスを免疫化し、示されている日に腹膜腔(A)と腸間膜と大動脈周囲リンパ節(dLN)(B)とから細胞を採取することによって分析した。*P=反復測定分散分析(ANOVA)によって0.04。各グループに4頭のマウス、3回の試験の代表。ANOVAは分散の分析;CTLは細胞毒性Tリンパ球;dLNは流入リンパ節;GFPは緑色蛍光タンパク;gpは糖タンパク;Igは免疫グロブリン;WTは野生型を意味する。
【図16】図16A−B Gp96によって媒介される腫瘍拒絶反応は、BCDMにおいて強まり、B細胞再構成によって停止する。A、野生型マウス。B、BCDM。100万個のLLC−ova細胞を含む0.2mL PBSをわき腹に移植した。5日後に100万個のOT−Iを静脈内に接種した。腫瘍移植の7日後にマウスの静脈内に100万個のLLC−ova−gp96−Igを接種して免疫化させた。腫瘍サイズをキャリパを用いて二次元で測定した。各グループにおいてN=5、3回の試験の代表。BCDMはB細胞欠損マウス;gpは糖タンパク質;Igは免疫グロブリン;LLCはルイス肺癌;PBSはリン酸塩緩衝食塩水を意味する。
【図17】図17A−C 高いCTL前駆物質頻度及び免疫化は、BCDMにおいてgp96ワクチンによる腫瘍拒絶反応を強める。A、LLC−ova−gp96−Igによるワクチン接種を省略した以外は、図6のようにBCDMを処理した。B、OT−I移植を省略した以外は図6のように行った。C、腫瘍(LLC−ova)移植前に1000万個のB細胞を用いてBCDMマウスを再構成した以外は、図16に示されているように行った。各グループにおいてn=5〜6であり、2つの試験の代表である。BCDMはB細胞欠損マウス;CTLは細胞毒性Tリンパ球;gpは糖タンパク;Igは免疫グロブリン;LLCはルイス肺癌を意味する。
【図18】図18 小型B細胞群は、LLC−ova腫瘍抗原投与に対する免疫反応を抑制する可能性がある。LLC−ova移植の4日後(OT−I注入の1日前)に、ヒトCD20トランスジェニックマウスのそれぞれに1mgのリツキシマブ(登録商標)又はPBSを接種した。この処理の7日後に、フローサイトメトリによってPBL中のCD19+細胞の頻度を調べた。リツキシマブ(登録商標)を注入した後にPBL中に残されたCD19+細胞群は、約3%であった。各バーのデータは、3頭のマウスの平均値±標準誤差である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
いくつかの好ましい実施形態によれば、本発明は、ヒト対象の防御免疫反応を生じさせる方法であって、形態分泌の熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターをトランスフェクトした有効量の腫瘍細胞を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0011】
いくつかの好ましい実施形態によれば、癌に対するワクチンを製造する方法であって、分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターがトランスフェクトされた腫瘍細胞を形成する核酸を発現するように癌細胞群を遺伝子操作するステップを含む方法を提供する。
【0012】
いくつかの好ましい実施形態によれば、本発明は、腫瘍に対する免疫反応を促進する方法であって、対象に分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターをトランスフェクトした有効量の腫瘍細胞を投与するステップを含む方法を提供する。
【0013】
いくつかの好ましい実施形態によれば、本発明は、腫瘍増殖を阻害する方法であって、分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターをトランスフェクトした有効量の腫瘍細胞を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0014】
gp96ポリペプチド
好ましくは、gp96ポリペプチドは、野生型タンパクの1つであり、より好ましくは野生型ヒトgp96ポリペプチドである。本発明に有用なgp96ポリペプチドには、上記gp96ポリペプチドに対する実質的な相同性又は同一性を有するアミノ酸配列を有するgp96ポリペプチドが含まれる。好ましくは、用いるgp96ポリペプチドは、ここに記載されている又は当業界で知られているgp96ポリペプチドと少なくとも70%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、又は、さらにより好ましくは95%以上の同一性又は相同性を有する。最も好ましくは、用いるgp96ポリペプチドは、野生型ヒトgp96ポリペプチドに対して少なくとも99%以上の相同性又は同一性を有する。
【0015】
候補ポリペプチドが本発明のgp96ポリペプチドとの相同性を共有する程度は、2つのアミノ酸配列間の相同性又は同一性の程度として決定される。
【0016】
高いレベルの配列同一性は、第1の配列が第2の配列に由来している可能性を示す。アミノ酸配列同一性は、2つの整列した配列間における同一のアミノ酸配列を必要とする。従って、参照配列と70%のアミノ酸同一性を共有する候補配列は、位置合わせ後に、候補配列のアミノ酸の70%が参照配列の対応アミノ酸と同一であることを必要とする。同一性は、以下に限定されないが、例えば、クラスタルXコンピュータ配列プログラム(Thompson J D,Gibson T J,Plewniak F,Jeanmougin F,& Higgins D G:“The ClustaIX windows interface:flexible strategies for multiple sequence alignment aided by quality analysis tools”;Nucleic Acids Res.1997,25(24):4876−82)及びこれに示されているデフォルトパラメータなどのコンピューター分析によって決定される。このプログラムを用いて、本発明の類似DNA塩基配列によってコードされたポリペプチドの成熟部分は、gp96ポリペプチド配列のアミノ酸配列と少なくとも70%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは少なくとも99%以上のの程度の同一性を示す。
【0017】
本発明のgp96ポリペプチドは、様々なポリペプチドを含む。本発明の文脈において、「様々なポリペプチド」という用語は、1つ以上のアミノ酸位置において野生型gp96ポリペプチドと異なるアミノ酸配列を有するポリペプチド(又はタンパク)を含む。そのような様々なポリペプチドには、上述した組み換えポリペプチド、保存的置換体、スプライス変異体、アイソフォーム、他種に由来する同族体及び多様型も含まれる。
【0018】
ここに定義するように、上記の「保存的置換」という用語は、生物学的に類似した他の残基によるアミノ酸残基の置換を表す。通常は、生物学的相同性は、上で言及したように、保存されたアミノ酸による野生型配列の置換を反映する。
【0019】
例えば、特にポリペプチド又はタンパクにおける残基の総数の10%未満に相当すれば、保存アミノ酸置換が生物活性に対してほとんど影響を与えないか又は全く影響しないことが予想される。好ましくは、保存アミノ酸置換は、ポリペプチド又はタンパクの5%未満において変化し、最も好ましくはポリペプチド又はタンパクの2%未満で変化する。
【0020】
一実施形態において、gp96ポリペプチドが最大15個のアミノ酸置換を含む。別の一実施形態においては、gp96ポリペプチドが最大12個のアミノ酸置換を含む。別の一実施形態においては、gp96ポリペプチドが最大10個のアミノ酸置換を含む。別の一実施形態においては、gp96ポリペプチドが最大8個のアミノ酸置換を含む。別の一実施形態においては、gp96ポリペプチドが最大5個のアミノ酸置換を含む。特に好ましい実施形態においては、成熟配列に1個のアミノ酸置換を有し、置換されたアミノ酸及び置換するアミノ酸のいずれもが非環式である。特に保存的置換の他の例には、疎水性残基による、イソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニンなどのその他の残基の置換、又は、アルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、若しくは、グルタミンによるアスパラギンの置換などの極性残基による他の残基の置換が含まれる。
【0021】
この保存的置換という用語は、置換されたポリペプチドに対して上昇した抗体が置換されていないポリペプチドと免疫反応するのであれば、置換されていない親アミノ酸残基に代えて置換されたアミノ酸残基を使用することを含む。
【0022】
この一次アミノ酸配列の変更は、変更されていない対応ポリペプチドと比べて実質的に同等な活性を有するタンパクを生じさせ、従って、親タンパクの機能的な類似化合物と考えることができる。そのような変更は、例えば、部位特異的変異誘発による意図的なものであってもよいし、又は、自然発生的なものであってもよく、スプライス変異体、アイソフォーム、他の種に由来する同族体及び多様型が含まれる。そのような機能的類似化合物も本発明によって意図されている。
【0023】
シグナルペプチド
シグナルペプチドは、染色体DNAのコーディング部位に囲まれており、リボソーム器官によってタンパクの一部として合成される。シグナルペプチドは、通常N末端を構成し、新たに合成されたそのポリペプチドを粗面小胞体に誘導する。ここで、シグナルペプチドはポリペプチドから切断され、成熟したタンパクが周囲に分泌される。従って、シグナルペプチドは細胞内に残る。
【0024】
シグナルペプチド−真核生物のシグナルペプチド。真核生物のシグナルペプチドは、分泌されるか又は膜成分となるように予定されたタンパクに存在するペプチドである。それは通常タンパクに対してN末端である。本文脈においては、SignalP(バージョン2.0又は好ましくはバージョン3.0)によって確認されるすべてのシグナルペプチドがシグナルペプチドと考えられる。
【0025】
哺乳類のシグナルペプチドは、小胞体から分泌される哺乳類のタンパクに由来するシグナルペプチドである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、gp96分子をシグナルペプチド(SP)に結合させてgp96−SP融合タンパクを生成する。本発明による発現ベクターは、gp96ポリペプチドに作用可能な状態で連結されたシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を導くことができるプロモーター配列を含む核酸を含む。
【0027】
シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドなどの異種シグナルペプチドなどのいかなる機能性シグナルペプチドであってもよい。このシグナルペプチドは、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタなどのあらゆる適切な種に由来していてもよい。
【0028】
ある実施形態においては、免疫グロブリンシグナルペプチド(IgSP)は、哺乳動物のほとんどのグループで知られている19個の小さなアミノ酸ペプチドである。マウスIgSPが、マウス、ラット及びヒトにおいて機能性であることが知られているので、IgSPはマウス又はヒト起源であることが好ましい。ヒトに使用する場合は、あらゆる異種間副作用のリスクを低減するために、IgSPがヒト起源であることが好ましい。
【0029】
好ましくは、IgSpは:ヒトIgSP(Met Asp Cys Thr Trp Arg Ile Leu Phe Leu Val Ala Ala Ala Thr Gly Thr His Ala);アカゲザル(サル)IgSP;(Met Lys His Leu Trp Phe Phe Leu Leu Leu Val Ala Ala Pro Arg Trp Val Leu Ser);マーモセット(サル)IgSP(Met Asp Trp Thr Trp Arg Ile Phe Leu Leu Val Ala Thr Ala Thr GIy Ala His Ser);Mus musculus(マウス)IgSP(Met Lys Cys Ser Trp Val Ile Phe Phe Leu Met Ala Val Val Thr Gly Val Asn Ser);Sus scrofa(ブタ)IgSP(Met Glu Phe Arg Leu Asn Trp Val Val Leu Phe Ala Leu Leu Gln Gly Val Gln Gly);及び、Rattus norvegicus(ラット)IgSP(Met Lys Cys Ser Trp Ile Ile Leu Phe Leu Met Ala Leu Thr Thr Gly Val Asn Ser)の1つ以上である。
【0030】
シグナルペプチドの切断:発現構築物に組み込むための特異的gp96形態を決定する前に、IgSPなどのシグナルペプチドの切断の可能性を最先端の予測ツールを用いてチェックすることができる。そのような好ましい予測ツールの1つは、SignalPソフトウェア(SignalP WWWサーバから入手可能)又は同じサーバーから入手可能なより新しいバージョン3.0が好ましい。さらに、シグナルペプチドを選択するためのツール及び技術を記載するいくつかの参考文献が存在する。これらの参考文献には:Henrik Nielsen,Jacob Engelbrecht,Sren Brunak and Gunnar von Heijne:Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites.Protein Engineering,10,1−6(1997).For the SignalP−HMM output model:Henrik Nielsen and Anders Krogh:Prediction of signal peptides and signal anchors by a hidden Markov model.In Proceedings of the Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology(ISMB 6),AAAI Press,Menlo Park,Calif.,pp.122−130(1998).Improved prediction of signal peptides−SignalP 3.0.Jannick Dyrlv Bendtsen,Henrik Nielsen,Gunnar von Heijne and Sren Brunak.J M B(2004).Prediction of signal peptides and signal anchors by a hidden Markov model.Henrik Nielsen and Anders Krogh.Proceedings of the Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology(ISMB 6),AAAI Press,Menlo Park,Calif.,pp.122−130,1998.が含まれる。上記各参考文献は、ここで言及することによって全体が本明細書に組み込まれている。
【0031】
投与
いくつかの好ましい実施形態によれば、約1日から約6か月の期間で頻繁に(例えば1日1回、1日2回、1日3回など)gp96免疫化を行う。ある実施形態によれば、投与期間は、約1日から90日;約1日から60日;約1日から30日;約1日から20日;約1日から10日;約1日から7日である。いくつかの実施形態によれば、投与の期間が約1週から50週;約1週間から50週間;約1週間から40週間;約1週間から30週間;約1週間から24週間;約1週間から20週間;約1週間から16週間;約1週間から12週間;約1週間から8週間;約1週間から4週間;約1週間から3週間;約1週間から2週間;約2週間から3週間;約2週間から4週間;約2週間から6週間;約2週間から8週間;約3週間から8週間;約3週間から12週間;又は、約4週間から20週間である。
【0032】
併用療法
いくつかの好ましい実施形態によれば、gp96免疫は、正常Bリンパ球及び/又は悪性Bリンパ球を破壊する化合物、又は、多すぎるB細胞、過活性B細胞又は機能不全B細胞を特徴とする疾病の治療に用いられる化合物(例えばリツキシマブ(登録商標))と組み合わせて投与される。そのような疾病には、白血病又はリンパ腫などの腫瘍疾患が含まれる。
【0033】
前記多すぎるB細胞、過活性B細胞又は機能不全B細胞を特徴とする疾病の治療に用いられる化合物は、B細胞をターゲットにする抗体であることが好ましい。例えば、米国特許公開公報第2003/0133930号を参照されたい。この文献は、ここで言及することによって全体が組み込まれている。B細胞をターゲットにする抗体は、CD19、CD20、CD22、HLA−DR及びCD74などのB細胞抗原に対する抗体であることが好ましい。好ましくは、治療組成物は、単位用量につき20mg〜2000mgの用量で非経口的に投与される。いくつかの実施形態によれば、非経口投与で抗体を対象に接種する。いくつかの実施形態によれば、対象に、反復的に非経口投与で抗体を接種する。いくつかの実施形態によれば、その抗体は、類人霊長類の抗体、マウスのモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体の1つである。いくつかの実施形態によれば、その抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化された抗体の1つである。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態によれば、gp96免疫は、1つ以上の抗癌剤と組み合わせて投与される。多くのタイプの抗癌剤は、本発明の方法の用途を有するものの例である。そのようなクラスの抗癌剤及びそれらの好ましい作用機構を以下に述べる。
1.アルキル化剤:ヌクレオチドにアルキル基を提供する化合物。アルキル化されたDNA自体は複製不能であり、細胞増殖が停止する。そのような化合物の例は、限定されないが、ブスルファン、配位金属複合物(例えばカルボプラチン、オキサリプラチン及びシスプラチンなどの白金配位化合物)、シクロホスファミド(シトキサン)、ダカルバジン、イホスファミド、メクロレタミン(マスタージェン)、及びメルファランを含む。
2.二機能性アルキル化剤:4炭素アルキル鎖の反対端部に結合した2つの不安定なメタンスルフォナート基を有する化合物。メタンスルフォナート基は、癌細胞中のDNAと相互作用し、癌細胞のDNAにダメージを与え、その複製を阻害する。そのような化合物の例は、限定されないが、クロラムブチル及びメルファランを含む。
3.非ステロイド性アロマターゼ阻害剤:エストロジェン生産に関与する酵素アロマターゼを抑制する化合物。従って、アロマターゼをブロックすると、エストロジェンの生産を阻害することになる。そのような化合物の例には、アナストロゾール及びエキセメスタンが含まれる。
4.免疫療法剤:悪性に伴うタンパクを作り出す癌細胞をターゲットにする抗体又は抗体断片。例示的免疫療法剤は、乳癌の約25%から30%で高頻度に生じるHER2又はHER2/neuをターゲットにするハーセプチン;結腸癌の上皮増殖因子レセプター(EGFR)をターゲットにするアービタックス;結腸癌によって発現される血管内皮細胞増殖因子(VEGF)をターゲットにするアバスチン;及び、B細胞リンパ腫においてアポトーシスを生じさせるリツキサン、抗CD20抗体を含む。さらなる免疫療法剤は、免疫毒素を含み、リシン、ジフテリア毒素及びシュードモナス毒素などの毒素分子は、腫瘍特異抗原を認識する抗体に結合する。結合は、生化学的に又は組換DNA方法によって達成することができる。
5.ニトロソ尿素化合物:DNA修復に必要とされる酵素を抑制する。これらの薬剤は、脳腫瘍、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫及び悪性黒色腫の治療に用いられるように、脳に移行することができる。ニトロソ尿素の例には、カルマスティン及びロムスチンが含まれる。
6.代謝拮抗物質:DNA及びリボ核酸(RNA)の合成を阻害する薬剤クラス。これらの薬剤は、位相特異的(S位相)であり、慢性白血病、並びに、乳房、子房、及び胃腸管の腫瘍の治療に用いられる。代謝拮抗物質の例には、5−フルオロウラシル、メトトレザト、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))、シタラビン(アラ−C)、及び、フルダラビンが含まれる。
7.抗腫瘍性抗生物質:抗菌活性及び細胞毒性活性を有する化合物。そのような化合物は、酵素及び有糸分裂を化学的に阻害するか又は細胞膜を変化させることによってDNAに干渉してもよい。具体例は、必ずしも限定されるものではないが、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、及び、マニュマイシン(例えば、マニュマイシンA、マニュマイシンC、マニュマイシンD、マニュマイシンE、及び、マニュマイシンG、並びに、これらの誘導体;例えば米国特許第5,444,087号を参照されたい)含む。
8.有糸分裂阻害剤:有糸分裂を阻害することができる化合物(例えば、チューブリン結合化合物)、又は、細胞増殖に必要とされるタンパク合成を阻害する酵素を阻害することができる化合物。有糸分裂阻害剤の例には、パクリタキセル及びドセタセルなどのタキサン、エポチロン、エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、並びに、ビノレルビンが含まれる。
9.放射線治療:限定されるものではないが、ビームなどの外部供給源に由来するか又は小さな放射性源の移植によるX線又はγ線が含まれる。
10.トポイソメラーゼI阻害剤:トポイソメラーゼ活性を妨げることによってDNA複製を阻害する薬剤。限定されるものではないが、そのような薬剤には、CPT−11及びトポテカンが含まれる。
11.ホルモン療法:限定されるものではないが、タモキシフェンなどの抗エストロゲン、リュープロンなどのGNRHアゴニスト、及び、メゲースなどのプロゲスチン薬剤が含まれる。
【0035】
当然、広範な様々な機構によって機能する他のタイプの抗癌剤は、gp96免疫化及び本発明の方法における用途を有している。そのような薬剤さらなるものには、例えば、ロイコボリン、イレッサ及びフラボピリドールなどのキナーゼ阻害剤、タキサン類似化合物及びエポチロン類似化合物などの従来の化学療法剤の類似化合物、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤などの血管新生阻害剤、及び、ZD6474及びSU6668などのその他のVEGF阻害剤が含まれる。ターグレチンなどのレチノイドをgp96免疫化及び本発明の方法において使用することもできる。ファメシルトランスフェラーゼ活性を妨げるシグナル変換阻害剤、及び、例えば、バルスポダルといった化学療法抵抗性モジュレーターを使用することもできる。C225及び抗VEGFr抗体などのモノクローナル抗体を使用することもできる。
【0036】
癌のタイプ
この「腫瘍」という用語は、良性の腫瘍性成長(例えば、転移をせず、隣接した正常組織を破壊しない腫瘍)、又は、悪性/癌(例えば、周辺組織に侵入し、一般に転移することができ、切除しても後にも再発することがあり、十分に治療しなければ宿主が死亡する)を意味するように用いられる(Steadman’s Medical Dictionary,26th Ed,Williams&Wilkins,Baltimore,MD(1995)を参照されたい)。ここで用いているように、「腫瘍」、「腫瘍増殖」又は「腫瘍組織」という用語は、互いに交換して用いることができ、制御されていない進行性の細胞増殖の結果から生じ、生理的機能を発揮しない組織の増殖異常を表す。
【0037】
固形腫瘍は、悪性(例えば、転移する傾向があり、生命を脅かす)又は良性であり得る。本発明の方法によって治療又は予防することができる固形腫瘍の例は、限定されるものではないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜の原発性癌腫、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭の腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、肝転移、胆管がん、絨毛癌、セミノーマ、精上皮腫、組織非形成性甲状腺癌などの甲状腺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚部癌、精巣腫瘍、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌などの肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、並びに、網膜芽腫などの肉腫及び癌を含む。
【0038】
さらに、頚部、食道及び肺の組織などの上皮組織において、悪性増殖的変化(メタプラシア及びディスプレシアなど)を含む腫瘍は、gp96免疫化又は本発明の方法によって治療又は予防することができる。従って、本発明は、知られた又は新生組織形成又は癌に進行することが疑われる病状、特に、異常増殖、メタプラシアからなる非腫瘍性細胞増殖、又は、最も特に、ディスプレシアが発生した場合の治療を提供する(そのような増殖異常症状の検討にRobbins and Angell,1976,Basic Pathology,2d Ed.,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,pp.68 to 79を参照されたい)。異常増殖は、構造又は機能の顕著な変化を伴わない、組織又は器官内の細胞数の増加を含むコントロールされた細胞増殖の形態である。例えば、子宮内膜増殖症は、多くの場合、子宮内膜癌の前に発症する。メタプラシアは、コントロールされた細胞増殖の一形態であり、ある種の成熟細胞又は完全に分化した細胞がその他の種の成熟細胞を置換する。メタプラシアは、上皮組織細胞又は結合組織細胞で生じ得る。特殊なメタプラシアは、やや無秩序な化生上皮を含む。ディスプレシアは、多く場合において癌の前兆であり、主として上皮でみられる。それは、非腫瘍性細胞増殖の最も無秩序な形態であり、個々の細胞の均一性及び細胞の構造的配向性の損失を含む。形成異常細胞は、多くの場合、異常に大きく、濃染核を有しており、多態性を示す。ディスプレシアは、慢性の刺激又は炎症が存在するところで特徴的に生じ、多くの場合、頚部、気道、口腔及び胆嚢の中で発見される。そのような疾患の検討については、Fishman et al,1985,Medicine,2d Ed.,J.B.Lippincott Co.,Philadelphiaを参照されたい。
【0039】
良性であり、本発明の方法に従って治療又は予防することができる腫瘍のその他の例は、特に頭蓋内部位の動静脈(AV)形態異常、及び、骨髄腫を含む。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、固形腫瘍増殖(例えば乳房、前立腺、黒色腫、腎、結腸、頚部腫瘍増殖)及び/又は転移をコントロールする方法であって、必要性のある対象に有効量の本発明の化合物を投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態においては、その対象が哺乳動物である。いくつかの実施形態においては、その哺乳動物がヒトである。
【0041】
ここで用いているように、「有効量」という用語は、癌に罹患した動物(好ましくはヒト)において望ましい抗癌効果又は抗腫瘍効果を提供するのに充分な量を意味する。前記望ましい抗腫瘍効果は、限定されるものではないが、腫瘍増殖の変化(例えば、腫瘍増殖遅延)、腫瘍サイズ、又は、転移、特定の抗ガン剤に伴う毒性及び副作用の低減、癌の臨床的機能障害又は症状の改善又は最小化、そのような治療の非存在下で期待される期間を超えて対象の生存期間の伸ばすこと、及び、投与前に腫瘍形成がない動物における腫瘍増殖の予防、すなわち、予防的投与を含む。
【0042】
ここで用いられているように、「調整する」、「調整している」又は「調整」という用語は、特定のプロセスが生じる速度を変化させること、特定のプロセスを阻害すること、特定のプロセスを逆行させること、及び/又は、特定のプロセスの開始を防ぐことを意味する。従って、特定のプロセスが腫瘍増殖又は転移であれば、「調整」という用語は、限定されるものではないが、腫瘍増殖及び/又は転移が生じる速度を低下させること;腫瘍増殖及び/又は転移を阻害すること;腫瘍増殖及び/又は転移を逆行させること(腫瘍収縮及び/又は根絶を含む)、及び/又は、腫瘍増殖及び/又は転移を防ぐことを含む。
【0043】
ここで用いられているように、「相乗効果」は、2つの薬剤の組合せによって生じる相加よりも強い癌抗効果であって、各薬剤のみの投与によって生じるものを超える効果を意味する。2つの薬剤間の相乗作用の1つの基準は、Chou及びTalalay(Chang et al,Cancer Res.45:2434−2439,(1985)を参照されたい)のコンビネーションインデックス(CI)法であり、この方法は、半有効原理に基づいている。この方法は、様々なレベルの細胞毒性において2つの薬剤間の相乗作用、相加性又は拮抗作用の程度を算出する。CI値が1未満であれば、2つの薬剤間に相乗作用がある。CI値が1であれば、相加効果があり、相乗効果はない。1を超えるCI値は、拮抗作用を示す。CI値が小さいほど、相乗効果が強い。相乗作用のその他の測定値は、部分阻害濃度(FIC)である。この部分的な値は、組み合わせで作用する薬剤のIC50を、単独で作用する薬剤のIC50の機能として表すことによって決定される。相互作用する2つの薬剤について、各薬剤のについてのFIC値の合計は、相乗的作用の尺度を表す。FICが1未満である場合、2つの薬剤間に相乗作用がある。FIC値が1であれば、相加効果を示す。FIC値が小さいほど、相乗作用が強い。
【0044】
ここで用いられている「抗癌剤」という用語は、腫瘍増殖又は転移を調整することができる化合物又は電磁放射線(特にX線)を意味する。形態分泌のgp96ポリペプチドと共にそのような薬剤を使用することを言及する場合は、この用語は、分泌型gp96ポリペプチド以外の薬剤を表す。別段の定めがない限り、この用語は、そのような薬剤の1つ(又はそれ以上)を含んでいてもよい。1つよりも多い抗癌剤を用いるのであれば、分泌型gp96ポリペプチドの投与の相対的時間は、要求されるように、1つ又はそれ以上の抗癌剤の時間依存的な有効腫瘍濃度を与えるように選択することができる。
【0045】
この明細書において用いられているように、単数形「a」、「an」「the」は、別段の定めがない限り、その用語が表す複数形を明確に包含する。ここで用いられているように、別段の定めがない限り、「又は」という用語は、「及び/又は」という「包括的な」意味で用いられ、「いずれかの」という「排他的な」意味で用いられていない。明細書及び添付の特許請求の範囲においては、別段の定めがない限り、単数形は、複数の対象を含む。
【0046】
ここで用いられている「約」という用語は、およそ、その領域において、おおざっぱに、前後を意味する。「約」という用語が数値域と共に用いられていれば、この用語は、記載されている数値の上及び下の境界を拡張することによってその範囲を修飾する。通常、「約」という用語は、本明細書においては、記載されている値を上下に20%修飾するように用いられる。この明細書において用いられているように、移行句又は請求項の本体のいずれであっても、「含む(comprise)」及び「含んでいる(comprising)」という用語は、オープンエンドな意味に解釈されるように意図されている。すなわち、この用語は、「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」というフレーズと同じ意味に解釈されるように意図されている。この「含んでいる」という用語は、プロセスの文脈において用いられたとき、そのプロセスが列挙されたステップを少なくとも含んでいることを意味するが、さらなるステップを含んでいてもよい。この「含んでいる」という用語は、化合物又は組成物の文脈において用いられたとき、その化合物又は組成物が列挙された特徴又は成分を少なくとも含んでいることを意味するが、さらなる特徴又は成分を含んでもよい。
【0047】
その他の定義
本発明の組成物及び方法は、腫瘍に対する免疫反応を促進するのに有用である。そのような免疫反応は、腫瘍に関連した兆候又は症状を治療又は緩和するのに有用である。そのような免疫反応は、肺癌に関連した兆候又は症状を改善することができる。ここで用いられているように、「治療すること」は、本発明によって治療されていない患者の症状と比較して、本発明の化合物が投与された患者の症状を軽減、予防、及び/又は、逆行させることを意味する。施術者は、ここに記載されている組成物及び方法が、後の治療方法を決定するために、熟練した施術者(医師又は獣医)による連続的な臨床評価を伴って用いられるように意図されていることを理解するであろう。従って、治療後に、施術者は、標準的方法による肺の炎症の治療におけるあらゆる改善を評価するであろう。そのような評価は、特定の治療用量、投与様式などを増やすか、減らすか、又は、継続するべきであるかを評価することを助け、情報を与えるであろう。
【0048】
従って、本発明の方法を用いて、例えば、癌を含む腫瘍を治療することができる。本発明の方法を用いて、例えば、さらなる腫瘍増殖を防ぐことによって、腫瘍増殖を遅延させることによって、又は、腫瘍退縮を生じさせることによって、腫瘍増殖を阻止することができる。従って、本発明の方法を用いて、例えば、肺癌などの癌を治療することができる。本発明の化合物を投与する対象が特定の外傷的状態に悩まされる必要がないことは理解されるであろう。実際に、本発明の化合物をあらゆる症状(例えば癌が寛解している患者)の発現前に予防的に投与してもよい。「治療的」、「治療的な」という用語、及び、これらの用語の入れ替えは、治療的、緩和的及び予防的な使用を含むように用いられる。従って、ここで用いられているように、「症状を治療又は緩和する」ことは、そのような投与を受けない患者の症状と比較して、本発明の組成物の治療的有効量を投与する患者の症状を低減、予防及び/又は逆行させることを意味する。
【0049】
この「治療的有効量」という用語は、求められる治療結果を達成するのに有効な投薬用量での治療を表すのに用いられる。更に、当業者は、本発明の組成物の治療的有効量を、治療効果(例えば相乗的に)を強めるために、微調整によって及び/又は一以上の本発明の組成物を投与することによって(例えば、遺伝子操作された2つの異なる腫瘍細胞の同時投与によって)若しくは本発明の組成物を他の化合物と共に投与することによって、減らすか又は増やしてもよいことを理解するであろう。従って、本発明は、投与/治療を、ある哺乳動物に固有な特別な必要性に適合させる方法を提供する。以下の実施例で説明するように、この治療的有効量を、例えば、比較的低い用量からスタートすることによって、及び、有益な効果の同時並行的評価による段階的増加によって、経験的に容易に決定することができる。従って、単独で又は他の周知の腫瘍治療と組み合わせて本発明の方法を用いて、腫瘍を有する患者を治療するできる。当業者は、例えば、肺癌患者の期待寿命を延ばすこと及び/又は肺癌患者の生活の質を改善することにおける本発明の有利な使用を容易に理解するであろう。
【0050】
ここに開示されているようなワクチン接種アプローチは、非免疫原性腫瘍を有する患者において免疫反応を誘導する有効な手段になりえる。
【0051】
ここで用いられる技術的用語及び科学用語は、別段の定めがない限り、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0052】
本発明の方法は、本発明の方法の利益を受け得るあらゆる対象に使用されることを意図されている。従って、本発明によれば、「対象」、「患者」及び「患者」(区別なく用いられる)には、ヒト及びヒト以外の対象、特に家畜が含まれる。
【0053】
ここで用いられているように、「同種異系細胞」は、その細胞が投与される患者に由来しない細胞、すなわち、その患者とは異なる遺伝子構成を有する細胞を意味する。同種異系細胞は、通常、その細胞が投与される患者と同じ種から得られる。例えば、この同種異系細胞は、ここで開示されているように、癌患者などのヒト患者に投与するためのヒト細胞であってもよい。ここで用いられているように、「同種異系腫瘍細胞」は、その同種異系細胞が投与される患者に由来しない腫瘍細胞を意味する。
【0054】
通常、同種異系腫瘍細胞は、その細胞が投与される患者において腫瘍に対する免疫反応を促進することができる1つ以上の腫瘍抗原を発現する。ここで用いられているように、「同種異系癌細胞」、例えば肺癌細胞は、その同種異系細胞が投与される患者に由来しない癌細胞を意味する。通常、この同種異系癌細胞は、その細胞が投与される患者の、例えば肺癌といった癌に対する免疫反応を促進することができる1つ以上の腫瘍抗原を発現する。
【0055】
ここで用いられているように、「遺伝子操作された細胞」は、例えばトランスフェクション又はトランスダクションによって外因性核酸を発現するように遺伝子操作された細胞を意味する。
【0056】
ここで開示されているように、これまでは全細胞ワクチンが優れた臨床的結果を与えているので、同種異系全細胞ワクチンを選択してもよい。同種異系細胞をベースとするワクチンは、腫瘍抗原が異なる患者の腫瘍において共有されており、その抗原が患者の抗原提示細胞によって交差提示され得るという仮定の下で、自己由来のワクチンに代わるものを提示する。例えば、Fong,et al,Annu.Rev.Immunol.18:245−273(2000);Boon,et al,Annu.Rev.Immunol.12:337−365(1994)を参照されたい。
【0057】
分泌型gp96ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された腫瘍細胞を含む本発明の組成物を、免疫化に有用なあらゆる公知成分を含むことによって、ワクチンに有用な生理学的に許容可能な担体と組み合わせることができる。その生理学的担体の成分は、ワクチン中に投与される抗原に対する免疫反応を容易にするか又は強めるように意図されている。この製剤は、抗原に対する免疫反応を促進する組成物中に、好ましいpH領域を維持するための緩衝剤、患者に抗原を提示する塩又はその他の成分を含んでいてもよい。生理学的に許容可能な担体は、抗原に対する免疫反応を強める1つ以上の添加物を含んでいてもよい。製剤を、皮下、筋肉内、皮内又は免疫化に許容可能なあらゆる方法で投与することができる。
【0058】
アジュバントは、分泌型gp96ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された腫瘍細胞などの本発明の免疫原性薬剤に加えたときに、その混合物に晒されたレシピエントストにおいてその薬剤に対する免疫反応を非特異的に高めるか又は強化する物質を意味する。アジュバントは、例えば、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、ミョウバン(アルミニウム塩)、ポリスチレン、デンプン、ポリホスファゼン及びポリラクチド/ポリグリコシドなどのリポソーム及び微粒子を含んでいてもよい。
【0059】
アジュバントには、例えば、スクワレン混合物(SAF−I)、ムラミルペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリウム細胞壁調合物、モノホスホリルリピドA、ミコール酸誘導体、非イオン性ブロック共重合体界面活性剤、Quil A、コレラ毒素Bサブユニット、ポリホスファゼン及び誘導体、及び、Takahashi et al.Nature 344:873−875(1990)記載されているものなどの免疫刺激性複合体(ISCOM)も含まれ得る。獣医学的使用及び動物の抗体の生産のために、フロイントのアジュバント(完全及び不完全)の細胞分裂促進成分を用いることができる。ヒトにおいては、不完全フロイントアジュバント(IFA)が有用なアジュバントの1つである。様々な適切なアジュバントが当業界において知られている(例えば、Warren and Chedid,CRC Critical Reviews in Immunology 8:83(1988);Allison and Byars,in Vaccines:New Approaches to Immunological Problems,Ellis,ed.,Butterworth−Heinemann,Boston(1992)を参照されたい)。さらなるアジュバントには、例えば、バチルカルメットゲラン(BCG)、DETOX(マイコバクテリウムフレイの細胞壁骨格含有(CWS)、及び、サルモネラミネソタに由来するモノホスホリルリピドA(MPL)等が含まれる(例えば、Hoover et al.,5.Clin.Oncol.,11:390(1993);Woodlock et al.,J.Immunotherapy 22:251−259(1999)を参照されたい)。
【0060】
ここに開示されている本発明の組成物及び方法は、腫瘍を有する患者を治療するのに有用である。特定の実施形態を肺癌によって例示するが、適切な同種異系細胞を使用し、同様のアプローチを用いて癌を含む他の種の腫瘍を治療できることは理解されであろう。
【0061】
本発明の様々な実施形態の活性に実質的に影響しない変形をここで提供されている本発明の定義内で提供することは理解される。従って、以下の実施例は本発明を限定しないように意図されている。特許請求の範囲に記載した発明が特定の実施形態を参照しながら詳細に記載されているので、その精神及び範囲から逸脱せずに特許請求の範囲に記載した発明に様々な変更及び修飾を行うことができることは当業者に明らかであろう。従って、例えば、当業者は、ルーティーン試験以上の試験を行うことなく、ここに記載されている特定の物質及び手順の数多くの均等物を認識又は確認することができるだろう。そのような均等物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲に包含されている。
【0062】
実施例1:腫瘍分泌された熱ショック融合タンパクは、CD8細胞を拒絶反応に誘導する
腫瘍抗原に由来するものを含む小胞体内在性熱ショックタンパクgp96は、MHCクラスIによる提示の過程で、シャペロンとしてペプチドを折りたたむ。マウスIgG1のFc部分によるgp96の小胞体保留シグナルの置換は、gp96、gp96−Igの分泌形態を生成した。gp96−Igを分泌する腫瘍細胞は、インビボにおいて低下した腫瘍形成性及び増加した免疫原性を示し、初期増殖後に拒絶された。拒絶は、プライミング及びエフェクター期中にCD8T細胞を必要とした。CD4T細胞は、いずれの期においても拒絶に必要ではなかった。カラギーナン(インビボでマクロファージを不活性化することが知られている化合物)は、CD8によって媒介される腫瘍拒絶を低下させなかった。従って、gp96−Igを分泌する腫瘍による免疫化は、CD4又はマクロファージ支援を必要とすることなく、効率的に腫瘍を拒絶するCD8CTL生成する。対照的に、精製された腫瘍由来gp96による免疫化又は被照射腫瘍細胞による免疫化は、両方を必要とする。
【0063】
分泌型gp96、gp96−Igを開発し、腫瘍モデルにおいて試験した。gp96−Igに対するcDNAを用いた腫瘍細胞のトランスフェクションは、結果的にgp96−Igを分泌させた。この公報に示されているように、gp96−Ig分泌腫瘍細胞は、インビボにおいてCD8細胞のみに依存して強力な免疫化及び腫瘍拒絶を引き起こした。
【0064】
細胞系:すべての細胞系を米国培養菌保存施設(Manassas、VA)から入手し、10%FCを含む媒体中で培養した。ヒト小細胞肺癌(SCLC)細胞系(SCLC−2及びSCLC−7)をSavaraj et al.,Am.J.Clin.Oncol.20:398.に記載されているように定着させた。発現ベクターapc−NEO−OVA中にクローンされたニワトリOVAは、M.Bevan博士(Seattle,WA)から提供され、ルイス肺癌(LLC)をトランスフェクトするために用いられた。
【0065】
gp96−Igの構築:gp96−Ig融合タンパクを生成するために、KDEL配列を除去し、ヒンジ、マウスのCH2及びCH3ドメインで置換した;二本鎖cDNAをGeneAmp RNA PCRキット(Perkin−Elmer Cetus,Norwalk,CT)を用いてJurkat DNAから調製し、PCRによって増幅した。PCRプライマーは、5’−ATTACTCGAGGGCCGCACGCCATGAGGG−3’及び5’−GCCCGGATCCTTCAGCTGTAGATTCCTTTGC−3’であった。PCRプライマーは、XhoI部位(順方向プライマー)及びBamHI部位(逆方向プライマー)を含んでいた。マウスIgG1のCH2及びCH3ドメインであるそのヒンジを、テンプレートとしてマウスIgG1cDNAを用いることによって増幅し、ヒンジ部分の3個のシステインをセリンに変異させた。PCRプライマーは、5’−GCGAGGATCCGTGCCCAGGGATTCTGGTTCTAAG−3’及び5’−CTAAGCGGCCGCAAGGACACTGGGATCATTTACCAGG−3’であった。PCRプライマーは、BamHI部位(順方向プライマー)及びNotI部位(逆方向プライマー)を含んでいた。Gp96を真核細胞発現ベクターであるpBCMGSNeo及びpBCMGHisのXhoI及びBamHl部位に挿入し、SCLC−2、SCLC−7、B16F10、MC57、LLC NIH3T3、EL4、E.G7及びP815にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を1mg/mlのG418又は2.5mM〜10mMのL−ヒスチジノール(Sigma,St.Louis,MO)を用いて選択した。J Immunol.1999(Nov15);163(10):5178−82及びそこに引用されている引用文献を参照されたい。
【0066】
ELISA:Igタグに対する抗体を用いて行った。Gp96−Igを生産する細胞を、10%FCを含むAIMV又はIMDM中において10/mlで平板培養し、様々な時点で培養液上清を採取した。gp96−Igの細胞内発現の分析のために、細胞を、3回の凍結融解サイクルによって溶解させ、13,000×gで60分間遠心分離した。
【0067】
gp96−Ig融合タンパクの精製:標準的手順(Bio−Rad,Hercules,CA)を用いて、プロテインAカラムによる親和性クロマトグラフィーによってGp96−Igを精製した。Micro BCAタンパクアッセイ試薬キット(Pierce,Rockford,IL)によってgp96−Igの濃度を測定した。標準的手順でSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウェスタンブロットを行った。
【0068】
FACS分析:gp96−IgがトランスフェクトされたSCLCの細胞膜染色のために、細胞を、ヤギ抗マウスIgG−FITC又はコントロールとしてヤギ抗ウサギIgGFITCを用いて4℃で15分間染色し、ベクトンディッキンソンFACScanフローサイトメータ(サンディエゴ、カリフォルニア)によって分析した。細胞内染色のために、細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、1%サポニンで透過性にし、次いで、ヤギ抗マウスIgG−FITC、ヤギ抗マウスIgG−PE、ヤギ抗ウサギIgG−FITC、又は、ヤギ抗シリアンハムスターIgG−FITCによって4℃で15分間染色し、フローサイトメータによって分析した。
【0069】
腫瘍接種及びワクチン接種:マウスのわき腹に生きた腫瘍細胞を含む200μlのPBSを皮下注射することによってインビボにおける腫瘍原性を決定した。腫瘍の二次元サイズを週2回少なくとも2か月間測定した。平均腫瘍増殖が直径10mmを超えたときにマウスを屠殺した。
【0070】
マウスの右脇腹への(200μlのPBSに含まれる)10個の生きたE.G7−gp96−Ig又はコントロールとして被照射E.G7の皮下注射注入によって免疫化を行った。2週間の時間間隔で2回免疫化を行った。2週間後に、マウスの左脇腹に、示されている数の生きた腫瘍細胞(EL4、E.G7、LLC又はLLC−OVAを含む200μlのPBS)を皮下注射することによって投与した。
【0071】
インビボにおけるT細胞又はマクロファージの消耗:合計100μgのGK1.5(抗CD4)又は2.43(抗CD8)を含む200μlのPBSを腹腔内注射によって投与した。CD4細胞及びCD8細胞の枯渇をFACS分析によって確認した。CD4又はCD8のレベルは、Ab注入(データは示されていない)の2週間後にも低いままであった(>95%の消耗)。マクロファージの機能的阻害のために、1mgのカラギーナン(タイプII;Sigma)を含む200μlのPBSを腹腔内注入によって投与した。
【0072】
結果:腫瘍細胞から精製された小胞体内在性hsp gp96は、腫瘍特異的免疫を提供できる。gp96のC末端配列KDELは、小胞体保留シグナルとして機能する。この配列の欠失は、結合ペプチドと共にトランスフェクトされた腫瘍細胞からのgp96の分泌を生じさせ、腫瘍を免疫原性にして免疫系による腫瘍拒絶を可能にする。
【0073】
gp96のKDEL配列をヒンジ(マウスIgG1のCH2及びCH3ドメイン、Fc受容体結合の効率が悪いIgアイソタイプ)で置換すること、及び、cDNAの腫瘍細胞中へのトランスフェクションによって、培養液上清中へのgp96−Igの分泌が生じた。それをELISAによって定量した。プロテインA、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製されたgp96−Igは、融合タンパクについて予想された120kDaの分子量の主要バンドと、非修飾gp96について以前に報告されていた小さい分子量及び大きい分子量の2つのバンドと共に泳動した。gp96に対して特異的なモノクローナル抗体(mAb)を用いたウェスタンブロッティングによって融合タンパクの同一性を確認した。主要バンドだけが染色されたことは、Abによって認識されない小さなバンドがgp96のグリコシル化変異体であることを示している。
【0074】
gp96−Igの分泌は、上澄み中に時間依存的な直線的蓄積をもたらした。細胞内gp96−Igがトランスフェクトされた細胞の溶解産物中に低く一定の定常レベルで検出されたことは、gp96−Igが細胞中に蓄積しないことを示している。細胞膜が損傷されていないトランスフェクトされた腫瘍細胞のFACS分析によって、抗マウスIgGによるバックグラウンドを超えた染色が検出されなかったことは、融合タンパクのIg部位が原形質膜の外葉上に提示されないことを示している。対照的に、膜の透過性により、gp96−Igは、ヤギ抗マウスIgG Abによって細胞内で検出されるが、コントロールのヤギ抗ウサギIgG Abによっては検出されない。gp96の膜貫通領域は、gp96−Igの分泌を妨げず、細胞内蓄積に至らない。これらのデータは、膜貫通領域が膜においてgp96の固定に用いられておらず、gp96が必須の膜タンパクではないことを示唆する以前の報告に一致している(Altmeyer et al.,1996 Int.J.Cancer 69:340)。
【0075】
gp96−Igがトランスフェクトされたすべてのマウス及びヒト細胞株は、融合タンパクを分泌した。模擬トランスフェクトされた細胞は、gp96−Igを分泌しなかった。E.G7は、同系のC57BL/6マウスにおいて致死腫瘍を形成するEL4リンパ腫のOVAトランスフェクタントである。E.G7のGp96−Igトランスフェクションは、E.G7−gp96−Igが、E.G7、OVA代用薬抗原トランスフェクト腫瘍に加えて、EL4親腫瘍に対しても免疫化させるか否かを決定することができる。第2の腫瘍としてgp96−Ig又はOVAをトランスフェクトしたLLCを用いた。LLCは、E.G7と対比して非造血性であり、低免疫原性の腫瘍だからである。両方の細胞株が同程度の量のgp96−Igを分泌する。
【0076】
分泌されたgp96−Igは、低下した腫瘍原性の原因である:gp96−Igの分泌は、模擬トランスフェクト又はトランスフェクトしていないE.G7と比較して、C57BL/6マウスにおいてE.G7の腫瘍形成性を1/100よりも小さくする。1000万個のhsp分泌腫瘍細胞を皮下接種させると、接種したマウスの10%のみにおいて腫瘍が発生した(図1A)。gp96−Ig分泌による腫瘍形成性の同様の低下は、トランスフェクトしたEL4で観察された(データは示されていない)。LLCによるGp96−Ig分泌は、より穏やかな、〜5倍の腫瘍形成性の低下をもたらした(図1B)。
【0077】
免疫原性及び免疫記憶反応を決定するために、C57BL/6マウスを、拒絶された未照射E.G7−gp96−Ig(10個)の1用量で2週間の時間間隔で2回免疫化させた。続いて、それらに、トランスフェクトしていない又は模擬トランスフェクトしたE.G7、親EL4、トランスフェクトされていないLLC、及び、OVAトランスフェクトされたLLCを投与した(図1C〜F)。被照射E.G7を用いて免疫化したマウス又はワクチン接種をしていないマウスをコントロールとして用いた。E.G7−gp96−Ig−免疫化マウスは、被照射細胞を接種したマウス又は非免疫化マウスと比較して、E.G7による10倍高い腫瘍を拒絶した(図1C)。ワクチンを接種したマウスにおける腫瘍増殖は、高頻度で遅延した。この免疫化の効果は、EL4を投与したときにより明らかであり、コントロール(図1D)と比較して50倍に増加したEL4投与用量を許容する。予想通りに、E.G7−gp96−Ig免疫化は、トランスフェクトされていない又はベクタートランスフェクトされたLLCによる投与に対して防御を与えなかったが(図1E)、OVAトランスフェクトLLCを抗原投与として用いたときには、防御における中程度の、〜3倍の増加がみられた(図1F)。E.G7−gp96−Igを用いてEL4抗原投与に対して免疫化させたマウスの強い防御は、E.G7とEL4とによって共有される外発性腫瘍抗原によるものであるかもしれない。LLC−OVAによる抗原投与に対する弱い防御は、T細胞認識のためのOVA代用薬抗原に由来するエピトープの単一又は限定された数を認識するT細胞に依存する。
【0078】
CD8細胞は、プライミング及びエフェクター期に必要である:E.G7−gp96−Igの拒絶における免疫機構の関与を、インビボにおける免疫適格細胞の枯渇/不活性化によってさらに検査した。メタA腫瘍由来gp96が有効な免疫化のためにCD4細胞、CD8細胞及びマクロファージを必要とする一方で、被照射メタA腫瘍細胞による免疫化は、CD4細胞及びCD8細胞を必要とするが、マクロファージを必要としないことが報告されている。
【0079】
プライミングのために、gp96−Igを分泌する100万個の未照射生存E.G7を皮下注射で接種した。この用量は、約8mmの平均径に成長し、次いで、縮み、拒絶される腫瘍を確立するのに充分である。腫瘍拒絶は、腫瘍接種の2日前(図2A)又は3日後まで(図示せず)に抗CD8Ab2.43で処理したマウスにおいて阻害された。抗CD4AbGK1.5は、注入の時点にかかわらず、腫瘍拒絶に対して何の効果もなかった(図2A)。一方で、>14日の間にCD4細胞を完全に枯渇させた(データ示さず)。CD4欠損マウスがE.G7−gp96−Igを拒絶することができたこと(図2B)は、CD8細胞の重要性を支持している。gp96−Igを分泌しないE.G7は、処理していない免疫枯渇マウスにおいて腫瘍を形成する。インビボにおいてマクロファージを不活性化すると知られているカラギーナンは、腫瘍拒絶に対して効果がなかった。
【0080】
腫瘍拒絶のエフェクター期を研究するために、マウスを、生存E.G7−gp96−Igを用いて14日間の時間間隔で2回免疫化させた。11日後(第25日)に免疫細胞が枯渇し、3日後にトランスフェクトされていないE.G7をマウスに接種した。CD8細胞だけがエフェクター期に必要である。CD4細胞の枯渇又はマクロファージのカラギーナン不活性化は、エフェクター期におけるE.G7拒絶に影響しなかった(図2C)。
【0081】
gp96の小胞体残留シグナルの欠失及びFc部分による置換は、IgG1が容易にgp96−Igの分泌をもたらせば、それはIgG1時間鎖によって二量化されると考えられる。E.G7から分泌されたgp96が永続的な特異的免疫を提供することができることは、gp96がシャペロンとして腫瘍ペプチドを折りたたむことを示唆している。対照的に、被照射又は模擬トランスフェクトされたE.G7は、防御免疫を提供することができない。コリネバクテリウムパルブムもE.G7免疫化のためのアジュバントとしては機能しなかった。分泌されたgp96−Igは、代用薬抗原OVA及びその他のEL4抗原の両方に対して免疫特異性を提供するが、LLC由来腫瘍抗原に対して交差免疫化しない。
【0082】
このデータは、分泌されたgp96−Igに関連したペプチドがクラスI MHCに運ばれてクラスI MHCによって提示され、腫瘍特異的CD8CTL反応を促進して腫瘍拒絶を生じさせるという説明に一致している。CD8反応は、CD4支援に依存せず、マクロファージを必要としないようである。細胞内必要条件がgp96−Ig二量体化によるものであるかどうかはわかっていない。
【0083】
精製された腫瘍由来gp96と腫瘍から分泌されたgp96−Igとで免疫化の機構を比較することは有益である。メタA腫瘍細胞から精製されたgρ96を免疫化に用いたUdono et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.米国 91:3077、1994年)は、プライミング期におけるCD8細胞及びマクロファージの必要性、及び、メタA腫瘍の腫瘍拒絶のエフェクター相におけるCD4細胞及びCD8細胞並びにマクロファージの必要性を報告した。被照射メタA腫瘍による免疫化は、プライミング期にCD4細胞を必要とし、エフェクター相にCD4細胞及びCD8細胞のいずれをも必要とした。被照射EG7は、その後の投与に対して免疫を生産しない。腫瘍から分泌されるgp96−Igの劇的効果は、CD4支援のないCD8細胞に完全に依存する。CD8細胞は、腫瘍に対するCTL反応のプライミング期及びエフェクター期に必要である。マクロファージは、必要ではないようである。gp96をシャペロンとして折りたたまれるペプチドのCD8細胞への提示における樹状細胞又はその他のAPCの役割はわかっていないが、可能性が残されている。gp96−Igを分泌するEG7がCD8細胞を直接的に促進することもありえる。
【0084】
実施例2:CD8細胞毒性Tリンパ球への強化された抗原交差提示の分子的及び細胞的必要性
この実施例は、腫瘍から分泌される熱ショックタンパクであるgp96をシャペロンとして折りたたまれるペプチドがCD8CTLの抗原クロスプライミングの効率をシャペロンによって折りたたまれていないタンパクのみのクロスプライミングの活性と比較して数百万倍も高めることを実証する。Gp96は、シャペロンによって折りたたまれていないタンパクによるクロスプライミングのためのアジュバントとしても機能するが、この活性において、Gp96は、ペプチドシャペロンとしてよりも活性が1000倍小さい。機械論的に、トランスフェクトされた腫瘍細胞によるgp96−Igのin situ分泌は、gp96放出部位への樹状細胞及びナチュラルキラー細胞を動員し活性化し、CD8CTL増殖を局所的に促進する。Gp96によって媒介されるCD8T細胞のクロスプライミングは、B7.1/2共刺激を必要とするが、リンパ節欠損マウスにおいて、NKT及びCD4の細胞の非存在下でCD40Lなしで妨げられずに進行する。リンパ節の非存在下でGp96によって促進されるCD8CTLのMHCIクロスプライミングは、gp96放出部位における局所的な組織ベースCTL生成の新規なメカニズムを提供する。この経路は、決定的に重要な、抗原性薬剤を傷つける組織に対する有効な防御のための実質組織において有用な早期発見及び迅速な反応機構を構成し得る。
【0085】
熱ショックタンパクは、APCに取り込まれてCD8細胞に交差提示され得るシャペロンペプチドである。外因性熱ショックタンパク(HSP)は、CD91及びLOX−Iによって樹状細胞(DC)上に能動的に捕捉され、シャペロンによって折りたたまれたペプチドをMHCクラスI経路に届けることによってCD8CTLに交差提示されてペプチド特異的な免疫反応を誘発する。HSP−gp96によるクロスプライミングは、TLR2及びTLR4刺激並びにCD8CTLに偏った反応を生じさせる樹状細胞成熟に関連する。
【0086】
gp96を分泌する腫瘍細胞による免疫化は、腫瘍特異的でCD4細胞に依存しない代用抗原特異的免疫を生成した(Oizumi et al.J Immunol.2007 Aug 15;179(4):2310−7)。この実施例は、CD8反応を定量化するためにこの免疫化方法を用いて、gp96をシャペロンとして折りたたまれた極めて小さいフェムトモル量の抗原がリンパ節及びCD4細胞と無関係にgp96放出部位における局所的な同族CD8クロスプライミングに十分であることを示す。
【0087】
マウス:野生型(wt)、B7.1、B7.2、B7.1/2、CD40L、リンフォトキシンα(LTα)及びC57BL/6(B6)バックグラウンドのCD4欠損マウスをジャクソン研究所から入手した。B6.Jα281マウス(NKT欠損、Jαl8ノックアウト(ko)と名前を変更された)は、Taniguchi博士(千葉大学、千葉、日本)による許可と共にM.Lotze博士(ピッツバーグ医療センター大学、ピッツバーグ、PA)から提供された。
【0088】
生産者の許可を得てGFPトランスジェニックマウスを入手した。C57BL/6 OT−Iマウスを、M.Bevan博士(University of Washington School of Medicine、シアトル、ワシントン)から入手した。すべてのマウスをアンチジーンの6週〜12週に用いた。
【0089】
細胞株:EG7、M.Bevan博士によって寛大に提供されたOVAトランスフェクトEL4リンパ腫系統に、前述のgp96−Igを含むベクターpCMG−Hisをさらにトランスフェクトした。NIH3T3細胞に、OVAが含まれるpAC−Neo−OVA(M.Bevan博士によって寛大に提供された)をトランスフェクトし、また、gp96−Igが含まれるpCMG−Hisをトランスフェクトした。
【0090】
抗体:蛍光抗体をBD Pharmingen社及びeBioscience社から購入した。
【0091】
OT−I細胞の精製及び適合移植:GFPで標識されたOT−I細胞を、磁気分離を用いた抗CD8によるポジティブ選択によって精製した(95%超の純度;Miltenyi Biotech社)。100万個のGFP−OT−I細胞が含まれる0.3ml体積のPBSをC57BL/6マウスの尾静脈から適合移植した。
【0092】
免疫化:GFP−OT−Iの適合移植の2日後に、0.5mlの体積のPBS中の2〜4×10個の未照射EG7−gp96−Ig細胞又はコントロールEG7細胞を腹腔に注入した。いくつかの試験のために、PBS中に溶解した3T3−OVA−gp96−Ig、3T3−OVA、又は、完全なOVA(Sigma−Aldrich社)をマウスの腹腔内に投与して免疫化させた。
【0093】
OT−IのエクスビボにおけるAg交差提示及びクロスプライミング:2×10個の3T3−OVA−gp96−Ig又は3T3−gp96−Igを腹腔内投与してB6野生型マウスのグループを免疫化させた。3日後に腹腔滲出細胞(PEC)を回収し、10個のPECを、円形底部の96−ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、CFSE標識された精製された未処理のOT−Iと共に様々な比率(5:1、10:1、100:1及び1000:1)で、200μlの組織培養液中で48時間及び72時間共培養した。CFSE標識されたOT−Iを、3T3、3T3−OVA−gp96−Ig及び3T3−gp96−Igと共にそのまま共培養した。示されている時間の後に、その細胞を回収して抗CD8−PEを用いて染色した。OT−I増殖を、LSRIIフローサイトメータ(BD Biosciences社)によって分析されるCFSE希釈によって測定した。細胞分裂は、閉じ込められたリンパ球又は全CFSE細胞におけるCFSE希釈によって分析し、CFSE細胞の全パーセンテージとして表す。
【0094】
BrdUラベル及び分析:免疫化時にマウスをBrdU(Sigma−Aldrich社)を含む飲料水(0.8mg/ml)で処理した。固定及び透過化の後にBrdU(eBioscience社)に対して染色することによって細胞サンプルを分析した。
【0095】
CD4細胞は、HSPgp96−ペプチドによるCD8CTLへのAg交差提示を阻害する:分泌可能形態のgp96、gp96−Igをトランスフェクトした腫瘍細胞は、マウスにおいて免疫原性になり、腫瘍特異的免疫を誘導するYamazaki et al.,J.Immunol.163:5178−5182(1999)。腫瘍免疫性はCD8細胞を必要としたが、免疫反応の求心性部分又は遠心性部分のいずれにおいてもCD4細胞に依存していなかった。
【0096】
CD4細胞がヘルパー細胞活性及び制御性細胞活性の両方を発現するので、これらの逆の機能のいずれがgp96によるCD8細胞のクロスプライミングを制御したかについて関心が寄せられる。適合移植されたKb−OVA特異的TCRトランスジェニックCD8細胞、OT−Iを用いて、EG7−gp96−Ig又はEG7腹腔内免疫化に対するCTL増殖を定量した。EG7は、OVAをトランスフェクトしたEL4リンパ腫である。この系におけるOT−I増殖は、gp96−mycが等しく活性であるので、gp96をシャペロンとして折りたたまれるOVAペプチドに依存し、Ig−Fcタグによって影響されないことが以前に示されている。腫瘍から分泌されるgp96−Ig免疫化系は、本物の腫瘍抗原に対する免疫を生成する。しかしながら、OT−I増殖を測定することは、腫瘍拒絶を測定するよりも正確で迅速な読み出しを提供する。
【0097】
CD4ノックアウトにおいて、CD4機能(ヘルパー及び制御)はすべて削除されているが、CD40Lノックアウトにおいては、初めからCD4細胞のヘルパー細胞機能が欠損している。従って、CD4ノックアウト及びCD40LノックアウトにおいてEG7−gp96によって分泌されるgp96−OVAに対するOT−I増殖を野生型マウスと比較した(図3)。分析を容易にするために、GFPトランスジェニックマウスと共にOT−Iマウスを育成することによって、OT−I TCRトランスジェニック細胞をGFP標識した(GFP−OT−I)。野生型マウスと比較すると、CD4ノックアウトマウスにおけるOT−I増殖は、EG7−gp96−Igに対して100%増加しており、CD4細胞の存在がCD8クローン性増殖を妨げることが示唆された(図3A)。対照的に、CD40Lノックアウトマウスにおいては、OT−I増殖が野生型マウスの増殖と同程度であった(図3B)。このデータは、CD40Lによって媒介されるCD4ヘルパー機能がCD8CTLへのgp96によって媒介される抗原交差提示に必要でないことを示す。CD4ノックアウトに存在しないCD4T制御性細胞は、対照的に、通常はgp96−OVAによるOT−Iクロスプライミングをダウンレギュレートする。
【0098】
gp96によるCD8クロスプライミングは、B7.1及びB7.2に依存し、NKT細胞に依存しない:効率的なT細胞プライミングは、樹状細胞成熟、並びに、MHC及びしばしばCD40シグナルを介して媒介される共刺激分子のアップレギュレーションを必要とする。しかしながら、CD40L/CD40軸を介したCD4支援は、gp96によって媒介されるOT−Iプライミングには明らかに必要ではない(図3)。Gp96は、CD91並びにTLR2及びTLR4に結合し、それによってCD40に依存しない樹状細胞を活性化することができる。インビボにおけるCD8細胞のクロスプライミングのこのメカニズムがB7.1(CD80)及びB7.2(CD86)共促進に依存するかどうか判断した。B7.1又はB7.2のいずれかのみが欠損したマウスは、野生型マウスの50%以下の効率でOT−Iのgp96媒介性クロスプライミングを共促進することができた(図4A)。しかしながら、B7.1及びB7.2のいずれもが完全に欠損した二重欠損マウス(図4B)においては、OT−Iのgp96媒介性クロスプライミングが完全に消失した。
【0099】
NKT細胞は高頻度で抗腫瘍免疫に関与する。Jα18ノックアウトマウスは、CD1d限定不変異体NKT細胞に特徴的なTCRvα14鎖を生成することができないせいで、NKT細胞を欠損している。Jα18ノックアウトマウスが、低下しないOT−I増殖をサポートする能力(図4C)は、NKT細胞がgp96媒介性OT−Iクロスプライミングに必須ではないことを示している。
【0100】
gp96によるAg交差提示は、リンパ節を必要としない:流入リンパ節はAPC、CD4ヘルパー細胞、CD8CTL前駆物質及びナチュラルキラー細胞を集めて、細胞間相互作用を促進し、CTLプライミング及び増殖を強める。gp96によって媒介される抗原クロスプライミングは、CD4支援に依存していないので、OT−I増殖に対する流入リンパ節の必要性の問題が提起された。LTα欠損マウスは、パイエル集腺を含む末梢及び腸間膜リンパ節を欠損しており、抗ウイルス性反応が損なわれている。しかしながら、gp96−OVA媒介性OT−I増殖を分析するとき、LTα欠損マウスは、腹膜腔(PC)において野生型マウスと比べてほとんど正常なOT−I増殖を示した(図5A及び図5B)。脾臓においてGFP OT−Iの蓄積が50%減少したことは、リンパ節をベースとするOT−Iクローン性増殖がないことを反映している。この調査結果は、リンパ節がgp96媒介性ペプチドクロスプライミングに必須ではなく、局所的クロスプライミングがgp96放出部位で生じることを示している。
【0101】
リンパ節に依存しないOT−Iのクロスプライミングを直接的に試験するために、同種異系3T3細胞、3T3−OVA細胞又は3t3−OVA−gp96−Ig細胞を用いて腹腔内で免疫化させた後の第3日にB6マウスからPECを分離した。PECを様々な比率でCFSEラベルされたOT−Iと混合し、48時間後及び72時間後にCFSE希釈で測定した。3T3−OVA−gp96−Igを注入されたマウスから分離したPECは、CFSE希釈によって示されるように、インビトロにおいてOT−Iをクロスプライミングすることができた(図5C、a〜d)。対照的に、3T3−gp96を注入されたマウスから単離されたPEC又はトランスフェクトされていない3T3は、OT−I増殖を促進することができなかった(図5c、e、f)。同様に、3T3−OVA−gp96−Ig又は3T3−gp96−IgとのCSFEラベルされたOT−Iのインビトロにおける直接的なインキューベーションは、CSFE希釈を生じさせることができなかった。このデータは、腹膜腔においてリンパ節の非存在下で同族のCD8細胞へのgp96−OVAによって誘導される抗原交差提示のモデルをサポートする。
【0102】
Gp96は、その放出部位に樹状細胞及びナチュラルキラー細胞を動員し、それらの活性化を生じさせる:CD4細胞がこのモデル系に必須ではないが、最低限のクロスプライミングは、APC及びCD8細胞を集めることを必要とする。腹膜腔におけるgp96の局所的放出がAPC及びOT−Iの局所的動員及び活性化を生じさせ、それによってリンパ節の必要性がなくなるかどうか判断した。
【0103】
gp96−Ig免疫化によるOT−I増殖は、第4日及び第5日までに最大であり、腹膜腔において最も顕著である。実質的に0から50万個のOT−Iが腹膜腔において第4日及び第5日に蓄積し、動員されたCD8細胞の最大60%に相当する。他者によっても観察されているように、強いOT−I増殖はgp96−Ig分泌に大きく依存し(図6)、EG7に対して最小である。野生型マウスにおいて4日以内にCD8細胞をクロスプライミングするgp96の能力は、APC及びその他の先天性細胞の早期活性化を示唆する。インビトロにおいてgp96が樹状細胞を活性化及び成熟させることができること、並びに、インビトロ及びインビボにおいてgp96をシャペロンとして折りたたまれるペプチドがMHC Iによって樹状細胞及びマクロファージ上に交差提示されることが知られている(Oizumi et al.J Immunol.2007 Aug 15;179(4):2310−7)。gp96がナチュラルキラー細胞を活性化することができることも報告されている(Oizumi et al.J Immunol.2007 Aug 15;179(4):2310−7)。損なわれていないOT−I活性化がLTαノックアウトマウスにおいて生じるという事実は、細胞動員及び活性化がgp96放出部位で局所的に生じているに違いないことを示している。
【0104】
EG7−gp96−Ig又はコントロールとしてのEG7の腹腔内注入後に、PECを第1日〜第4日に採取し、表現型及びBrdUの取り込みによって活性化について分析した。EG7−gp96−Igによって動員された細胞の最大比率、80%〜90%は、F4/80dim単球/マクロファージであった。免疫化前に内在する腹膜マクロファージは、F4/80brightであり、EG7−gp96−Ig注入後に数が変わらなかった。CD11c樹状細胞及びNK1.1ナチュラルキラー細胞は、それぞれ、腹膜腔内に最初の2日間で動員された細胞の5%〜10%を構成する。B細胞及びCD4T細胞は、腹膜腔において第3日の初めに数の増加がみられ、第4日及び第5日にさらに増加した(データ示さず)。EG7に比べると、EG7−gp96−Igの腹腔内注入は、腹膜腔内に動員された全細胞数を最初の2日間に2倍にした(図7A)。ELISAによって測定されるように、この効果は、24時間以内に注入された細胞による少なくとも60ngのgp96−Igの分泌を必要とした(Oizumi et al.J Immunol.2007 Aug 15;179(4):2310−7)。注入された細胞数によるgp96−Igの分泌がより少ない量であれば、細胞動員及びCD8クロスプライミングに対する効果が徐々に減少することは、クロスプライミングの刺激に対する感受性の閾値があることを示唆している(データは示されていない)。EG7によるGp96分泌は、動員されたF4/80dim細胞の総数を2倍にし、gp96−Igを分泌しないEG7に対して樹状細胞及びナチュラルキラー細胞の数を3倍にした(図7B)。最初の2日間にgp96によって腹膜腔内に動員された樹状細胞がかなりの量のBrdUを取り込んだことは、それらの活性化を示している。流入大動脈周囲リンパ節から分離された樹状細胞、腸間膜リンパ節及びひ臓は、対照的にBrdU陰性であった(図8A)。この発見は、樹状細胞が活性化されてgp96分泌部位において局所的に増殖することを強く示唆している。BrdU陽性の樹状細胞がリンパ節及び脾臓にもみられるのは後だけである。EG7は、gp96を分泌しておらず、最初の2日間に腹膜腔内において樹状細胞によるBrdU取り込みを生じさせなかった。興味深いことに、しかしながら、EG7によって動員された樹状細胞が第4日に弱くBrdU陽性であったこと(図8A)は、EG7−gp96による初期の強い活性化とは対照的に、EG7による遅延した弱い活性化を示す。wt腫瘍EG7によるこの遅延した樹状細胞活性化は、最小限のCD8増殖を伴う。
【0105】
EG7−gp96−Igグループにおいて第2日までに腹膜腔内に存在するCD8細胞が有意なBrdU取り込みを示し、一方で、同時に流入リンパ節及びひ臓中のCD8細胞はBrdU陰性のままであった(図8B)。この発見は、リンパ節ではなく、CD8増殖の局所的な腹膜の開始と一致している。第4日までに、腹膜腔におけるCD8細胞によるgp96依存的BrdU取り込みは、非常に顕著であり、リンパ節又は脾臓よりもさらに有意に高かった(図8B)。
【0106】
gp96グループのナチュラルキラー細胞がCD69(図8C)及び2B4(データは示されていない)アップレギュレーションによって示されるように第4日までに活性化されたが、EG7グループは活性化されなかった。CD69アップレギュレーションによって測定されるようなNK活性化が、PECのみにおいて生じ(図8C)、リンパ節又は脾臓において生じなかった(データは示されていない)ことは、局所的活性化を示唆する。
【0107】
これらのデータは、腹膜腔における局所的gp96放出が、先天性免疫細胞及び適応性免疫細胞の局所的動員及び活性化を生じさせるシグナルを送信できることを実証しており、リンパ節及びCD4細胞に依存しないCD8クロスプライミングに対する細胞内メカニズムを提供する。EG7−gp96−Ig又は3T3−OVA−gp96−Igの皮下注射投与が、OT−Iクロスプライミングに等しく有効であるので(データは示されていない)、このクロスプライミングメカニズムは、腹膜腔の特別な組織に依存しない。
【0108】
gp96をシャペロンとして折りたたまれるペプチドによる非常に効率的なCD8CTLクロスプライミング:両方の細胞株が同程度の量のOVAを分泌するが(〜80ng/24時間×10個の細胞)(図6)、EG7と比較すると、EG7−gp96−Igによるgp96−Igの分泌は、OT−I増殖を劇的に増加させる。同種異系の3T3−OVAと3T3−OVA−gp96−IgとでOT−I増殖を比較すると、OT−I増殖に同様の差がみられる(Oizumi et al.J Immunol.2007 Aug 15;179(4):2310−7)。OVAをトランスフェクトした細胞から分泌されるGp96−Igは、OVAペプチド(gp96−OVA)を折りたたむgp96分子を少ない割合(0.1%以下)で含んでおり、これらがOT−Iクロスプライミングに関与していると考えられる。しかしながら、分泌されたgp96は、樹状細胞の動員及び活性化のための非特異的アジュバントとしても機能し、それによって、OVAタンパクの取り込み及びクロスプライミングを強めているかもしれない。最後に、gp96−Ig及びOVAタンパクが独立した分子として分泌され、細胞外でgp96−Ig−OVA複合体を形成していることもあり得る。これらの可能性を区別するためにいくつかの試験を行った。
【0109】
まず、3T3−OVA、3T3−OVA−gp96−Ig、又は、EG7、EG7gp96−Ig及び純粋なOVAタンパクの腹腔内注入後に腹膜腔及びひ臓におけるOT−I増殖の効率の用量作用プロファイルを比較した(図9)。OVA及びgp96−Igの分泌速度を、それぞれ、24時間当たりに分泌されたナノグラムとしてインビトロにおいてELISAによって測定した。図9に示すように、異なる細胞数の注入によって分泌OVA及びgp96−Igの用量範囲を実現した。OT−I増殖を刺激の4日後に測定した。24時間当たり80ng〜800ngの速度でOVAのみを分泌する3T3−OVA細胞は、OT−Iを増殖させることができなかった。明らかに、このOVA量は、免疫系の同種異系活性化の存在下でさえもOT−Iをクロスプライミングすることができない。同様に、OVAだけを分泌する同系EG7細胞は、EG7細胞がKb−OVAを発現しても、OT−Iを最小限度に増殖させる(図6)。このことは、OT−Iの直接的プライミングが非常に非能率的であることを示している。対照的に、gp96がOVA含有腫瘍細胞から分泌されるときに、24時間当たり80ng〜800ngのgp96は、効率的にOT−Iをクロスプライミングし、それらの脾臓における局所的増殖を生じさせる。対照的に、OVAタンパクによる効率的OT−Iクロスプライミングは、3mg〜10mgのタンパクを必要とする。OT−I増殖の感受性における差は、OVAタンパク対OVA含有細胞から分泌されたgp96において重量換算で〜10,000倍である(図9)。分子量、及び、分泌されるgp96分子の最大0.1%がOVAペプチドに結合しているという事実を考慮に入れると、OT−Iクロスプライミング活性の差は、gp96−OVA対OVAタンパクにおいてモル換算で約2000万倍である。
【0110】
シャペロンによって折りたたまれていないタンパクによるCD8−CTLクロスプライミングに対するgp96のアジュバントの活性:図9に示すデータは、gp96−OVA複合体としてではなく、独立した分子として分泌されるgp96−Ig及びOVAが、OT−Iの効率的なクロスプライミングに関与しているという可能性を留保する。この可能性を検討するために、gp96及びOVAを意図的に独立した分子として投与する条件下においてOT−I増殖を研究した。OVAではないgp96のみを分泌する3T3−gp96細胞を腹腔内に単独で注入するか又はOVAタンパクと共に同時注入し、OT−I増殖を従来通り定量した。図10Aに示すように、24時間当たり200ngのgp96−Igを分泌する同種異系3T3−gp96−Ig細胞は、非特異的OT−I増殖を生じさせなかった。同様に、単独で注入された200ng及び50μgのOVAは、OT−I増殖を媒介することができなかった。対照的に、50μgのOVAを、24時間当たり200ngのgp96−Igを分泌する3T3−gp96−Ig細胞と共に同時注入したときに、おおよそ最適なOT−I増殖がみられた。このことは、gp96がOT−IのOVAクロスプライミングのためのアジュバントとして機能することを示している。OVAと共にトランスで作用するgp96の作用がOT−IクロスプライミングをOVAのみよりも100倍〜1000倍増加させる一方で、(シスで)OVAを折りたたむgp96はクロスプライミングを(OVAのみと比較して)100万倍超に増加させる。ネガティブコントロールとして、OVAの非存在下の3T3−gp96−Igは、同種抗原性にもかかわらずOT−I増殖に対して効果がなかった。さらに、200ngのgp96−Igを分泌する3T3−gp96−Igは、同時注入された200ngのOVAタンパクと組み合わされてもOT−Iをクロスプライミングすることができなかった。これによって、gp96−IgとOVAとが細胞外で複合体の形成するという可能性が除外された。
【0111】
このデータは、gp96のアジュバント効果が樹状細胞の活性化及びピノサイトーシスの刺激によって媒介され、OVAタンパクの取り込み増加及びMHC IによるOT−Iに対する交差提示をもたらすことを示している。gp96は、シャペロンによって折りたたまれていないOVAのクロスプライミングに対してかなりのアジュバント活性を示すが、CD91レセプタを介したgp96−OVA複合体の内在化は、gp96をシャペロンとして折りたたまれた、クラスI MHC提示のためのペプチドを得ることにおいてさらに効率的であり、それによってクロスプライミング効率をさらに高める。
【0112】
gp96−Igの連続的分泌は、適合移植されたCD8細胞に対して及び内因性CD8細胞に対して最大のCD8クロスプライミング活性を与える:腫瘍細胞からのgp96の分泌のモデル系は、OT−Iクロスプライミングに対する効果において、どのようにしてgp96の連続的分泌がgp96の急速注入に匹敵するのかという疑問を提起する。OVA及びOT−Iが人工試験系であるので、OT−Iを用いて得たデータが内因性の非トランスジェニックCD8細胞に適用可能であることを確認することも重要であった。重要なことに、B6マウスのEG7−gp96−Ig免疫化が、その後の親EL4細胞による抗原投与に対するCD8依存的防御を、免疫化前のマウスと比較して50倍〜100倍に増加させるが、ルイス肺癌に対しては増加させないということは、内因性腫瘍抗原に対するgp96依存的クロスプライミングを示唆している(Yamazaki et al.,1999,J.Immunol.163:5178−5182)。20,000個に1個の低頻度(0.005%)で生じる、内因性の、非トランスジェニックOVA特異的CD8細胞は、EG7−gp96−Ig免疫化まで、CD8ゲートにおいて1%〜3%の頻度に上昇し、より低い頻度から始まる(データは示されていない)OT−Iと同様の増殖を示している。同時に、これらのデータは、gp96によって媒介されるクロスプライミングが、TCRトランスジェニックOT−I細胞に限定されていないことのみならず、内因性腫瘍特異的CD8細胞及びOVA特異的CD8細胞によっても機能することを示している。
【0113】
3T3−OVA−gp96−Ig培地から採取した200ngの血清を含まないgp96−Ig−OVAの腹腔内注入の効果と、インビボにおいて24時間に200ngを分泌する3T3−OVA−gp96−Ig細胞を注入する効果とを比較すると、gp96―OVAが連続的に分泌されるときに、急速なgp96−OVAに比べてOT−I増殖の劇的な増加がみられた(図10B)。この観察は、例えば感染による進行中の細胞死の結果として生じ得るgp96の連続的な放出が、CD4支援なしの、リンパ節を必要としない同族CD8クロスプライミングのための最適な刺激であることを示す。
【0114】
驚くべきことに、この研究は、gp96をシャペロンとして折りたたまれるペプチドによるクロスプライミングの活性が純粋なタンパクのみと比較して100万倍超に強化されることを明らかにしている。この発見は、瀕死細胞によって放出される抗原ペプチドに対するCD8CTLの生成のための非常に感度がよいメカニズムを提供するので、有意義である。
【0115】
抗原交差提示の効率のこの分析において、OT−I増殖は、gp96−OVA、gp96を加えたOVA、又は、OVAのみによる抗原交差提示のための感度がよい量的読み出し情報として機能した。OT−I増殖において観察された差は、異なる形態のOVAの交差提示の活性の効率によってのみ説明することができる。Gp96をシャペロンとして折りたたまれたOVAは、明らかに、交差提示において最も活性であり、次いで、アジュバントgp96を加えたOVA、及び、OVAのみは、シャペロンで折りたたまれたOVAよりもクロスプライミングにおいて100万倍も活性が小さかった。
【0116】
細胞が、感染又はネクローシス、細胞死を生じさせる感染因子に由来するgp96によって折りたたまれる抗原ペプチドの放出が伴い得るプロセスによって死ぬときに、gp96媒介性クロスプライミングのこのメカニズムが生理学的に重要である。感染、細胞死及びgp96放出の部位への樹状細胞及びナチュラルキラー細胞の誘引及び活性化は、gp96によって折りたたまれる抗原性ペプチドのCD8細胞への交差提示、及び、リンパ節に依存せずに原位置でのCTLの生成のための効率的な経路を提供する。次いで、これらのCTLは、周囲の感染細胞を除去するように機能し、それによって感染因子の拡大を限定する。
【0117】
熱ショックタンパクによる先天性免疫系の促進に基づいた防衛体制は、明らかに両生動物の初期脊椎動物系統に既に存在していた。適応免疫の進化と共に、gp96の役割は、そのアジュバント機能から、CD8CTLの効率的なMHC Iクラス交差提示及びクロスプライミングのための特異性抗原の担体の役割まで拡張したと考えられる。
【0118】
このモデル及び仮説の裏付けとして、原位置でのgp96分泌が、同族のCD8細胞を局所的に活性化することができる多数の樹状細胞及びナチュラルキラー細胞の局所的動員及び活性化につながるという証拠を提供する。樹状細胞は、gp96に呼応して腹膜腔内で増殖するが、その他の部位では増殖しない。同様に、ナチュラルキラー細胞は、腹膜腔内のみにおいて活性化されるようになる。同族のCD8細胞は、腹膜腔において最も早く最大の活性増殖を示す。しかし、その後に、CD8増殖が脾臓を含むその他の部位にも広がる。gp96によるCD8細胞の局所的クロスプライミングの解釈から、腹膜腔におけるモデルにおいて示唆されているように、クロスプライミングプロセスがリンパ節の非存在下において機能できるに違いないことが予測及び要求される。これはLTαノックアウトマウスにおいて確認された。gp96−Igによる効率的なCD8クロスプライミングが腹膜腔に限定されないことは重要である。同じように効率的なCD8クロスプライミング及び全身性免疫の生成は、gp96−Igを分泌する腫瘍を用いた皮下注射免疫処置によっても観察された。アクセスが容易であり、その他の部位にみられる交絡細胞群が存在しないことから、分析のために腹膜部位を選択した。
【0119】
gp96によって折りたたまれたペプチドによるCD8細胞のリンパ節非依存的クロスプライミングは、CD40L及びCD4支援の独立と一致する。むしろ、樹状細胞活性化は、他者によって以前に示されていように、CD91及びTLR2/4へのgp96結合によって媒介されるようである。予備実験において、抗CD91抗体がgp96媒介性CD8クロスプライミングを完全にブロックすることを実証することができた。しかしながら、CD80とCD86とによるCD8細胞の同時刺激は、gp96によるCD8クロスプライミングに絶対に必要である。
【0120】
これらの研究は、gp96が、細胞外環境に存在する抗原タンパクのクロスプライミングを強めることによって、CTL生成のアジュバントとして機能し得ることも示す。瀕死細胞からの熱ショックタンパク質の放出は、樹状細胞を活性化すること、樹状細胞による細胞外タンパクの飲作用の促進、及び、それらのMHC I交差提示によって先天性免疫反応を活性化する「危険信号」として作用し得る。gp96のアジュバント活性がナチュラルキラー細胞を活性化し、それによってTh1反応を生じさせ、細胞外の感染因子の除去を強める。
【0121】
gp96の異常なクロスプライミング活性の重要な要因は、分泌によるその連続的な持続的放出である。そのモデル系において、同種異系細胞又は同系腫瘍細胞がgp96を分泌し、インビボ系において、単一変数、gp96分泌対非分泌の分析を可能にする。この方法は、細胞分画法及び抗原又はgp96の精製を必要とせず、それによって、生化学的な精製手順に伴う潜在的問題を回避する。データは、小量のペプチド複合体(〜200ng/24時間)の持続的(24時間)放出(分泌)が、急速に注入された同じ量のgp96ペプチド複合体よりも、CD8クロスプライミングにおいてはるかに効率的であることを示している。一見したところ、進行中の感染においてみられるものに似ている、ある程度の時間にわたる連続的な免疫系の刺激は、急速に希釈された又は食細胞によって取り込まれる急速投与よりも、はるかに強い免疫刺激である。予備データは、腹腔内に注入されたgp96を分泌する生存同種異系3T3繊維芽細胞が除去される前に5日〜7日残存することを示す。gp96を分泌する腫瘍細胞の照射又はマイトマイシンCによる治療が、それらのgp96分泌及びインビボにおけるクロスプライミング活性のいずれをも低下させない(データは示されていない)ことは、細胞複製が強化されたCD8クロスプライミングに必要でないことを示している。
【0122】
潜在的に重要なリンパ節及びCD4非依存的免疫防御メカニズムを明らかにすることに加えて、これらの研究は、効率的な細胞ワクチン戦略の設計のための基礎を提供する。
【0123】
実施例3:腫瘍によって誘導される免疫抑制をB細胞の非存在下において高頻度のワクチン接種又は免疫化によって克服する
この実施例は、腫瘍によって誘導される免疫抑制が、抗原非特異的であり、高頻度の免疫化又はB細胞の不存在によって克服され得ることを実証する。定着腫瘍は、CD8T細胞クローン性増殖をインビボにおいて抑制する。それは、通常は腫瘍を有しないマウスにおいて抗原特異的糖タンパク(gp)96シャペロンワクチン接種によってみられる。定着腫瘍によるCD8T細胞増殖の抑制は、CD8T細胞受容体によって認識される抗原の腫瘍関連発現に依存しない。腫瘍を有しないマウスと比較すると、腫瘍を有するマウスのワクチン接種は、ワクチン部位への増加した細胞動員を伴う。しかしながら、定着した抑制性を有する腫瘍の拒絶は、高頻度(毎日)のgp96ワクチン接種を必要とした。B細胞は、ヘルパーT細胞1反応を減少させることがわかっている。B細胞欠損マウスにおいて、単独ワクチン接種によって定着腫瘍の腫瘍拒絶を達成することができることがわかった。従って、腫瘍を有しないB細胞欠損マウスにおいて、同族CD8細胞毒性Tリンパ球クローン性増殖が、gp96シャペロンワクチン接種に呼応して強められる。細胞ワクチンによる高頻度ワクチン接種及びそれと同時に起こるB細胞枯渇は、患者において抗癌性ワクチン療法の活性を非常に強める。
【0124】
マウス:C57BL/6J(B6)マウスをThe Jackson Laboratory(Bar Harbor、メイン)又はCharles River Laboratories (Frederick、メリーランド)から購入した。C57BL/6Jバックグラウンド[B細胞欠損マウス(BCDM)]を有するIg−m鎖欠損マウスをThe Jackson Laboratoryから購入した。
【0125】
GFPマウスを親切な許可によって生産者から入手した。C57BL/6Jオキシトシン−1(OT−1)マウス(M.Bevan博士、ワシントン大学、シアトル、ワシントンから入手した)は、H−2Kb−限定ニワトリオバルブミン由来ペプチド257〜264(SIINFEKL)に対して特異的なトランスジェニックTCR(Va2Vb5.1.2)を発現する。マイアミ大学の動物施設において施設内ガイドラインに従って、GFPマウスをOT−Iマウスと交雑させてGFP−OT−Iマウスを作成した。その後代マウスを、ova−TCR遺伝子の発現に対するポリメラーゼチェーン反応及びGFPに対する螢光によって選別した。すべてマウスをアンチジーンから6週間〜12週間で用いた。
【0126】
細胞株:EG7細胞株(M.Bevanから入手した)にgp96−Igを含むベクターpCMG−Hisを記載されているようにトランスフェクトした。コントロール細胞にはベクターのみをトランスフェクトした。ルイス肺癌(LLC)細胞は、American Tissue Culture Collectionから入手した。その細胞にpAC−neo−ovaを含むオバルブミン、又は、そのオバルブミンベクターとpCMG−Hisを含むgp96−Igとの両方をトランスフェクトした。10%ウシ胎仔血清及びゲンタマイシン(GIBCO)を含むイスコーブ修飾されたダルベッコ媒体(GIBCO、カールズバッド、カリフォルニア)においてすべて細胞を培養した。トランスフェクトされた細胞を維持するために、選択用抗生物質(G418又はL−ヒスチジノール、Sigma、セントルイス、ミズーリ)を培地に加えた。
【0127】
抗体:抗CD16/32(2.4G2)、CyChrome抗CD3e(145−2C11)、CyChrome抗CD5(UCHT2)、CyChrome抗CD8a(53−6.7)、PE−CD19(4G7)、PE又はFITC抗NK1.1(PK136)、及び、PE又はFITC抗CD11c(HL3)をBD PharMingen(サンディエゴ、カリフォルニア)から購入した抗体を染色に用いた。
【0128】
GFP−OT−I細胞及びCD19+B細胞の精製及び適合移植:脾細胞及びリンパ節細胞の貯蔵された単個細胞浮遊液は、GFP−OT−Iマウスから得られ、塩化アンモニウム溶解によって赤血球を除去した。製造社の説明書に従って、抗CD8a磁気マイクロビーズ及びMACSカラム(Miltenyi Biotec社、オーバーン、カリフォルニア)を用いて、ポジティブカラム選択によってGFP−OT−I細胞を分類した。フローサイトメトリ分析によって測定すると、分離されたOT−I細胞の純度は95%以上であった。精製された細胞におけるVa2及びVb5.1.2の発現量をフローサイトメトリによって定量した。B細胞の精製のために、抗CD19マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社、オーバーン、カリフォルニア)を用いてCD19+細胞を精製した。腫瘍細胞の移植の2日前に尾静脈から10個の精製された細胞を適合移植して、BCDMマウス中のB細胞を再構成した。
【0129】
インビボにおけるCD8CTL増殖の分析:CD8+CTL増殖を測定するために、マウスは、10個のGFP−OT−Iを適合移植され、2日後に1×10個から4×10個の未照射EG7−gp96−Ig細胞の腹腔内注入によって免疫化させた。免疫化後の定めた時間間隔の後に、腹膜腔、腸間膜、大動脈周囲リンパ節[流入リンパ節](dLN)及び示されている時点における末梢血から細胞を採取した。塩化アンモニウム溶解によってサンプルから赤血球を除去した。0.5%ウシ血清アルブミン(フェニルホウ酸)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)中において、抗CD16/32モノクローナル抗体と共に100万個の細胞を4℃で10分間インキュベートして、FcR結合を阻害した。その後、示されている抗体と共に細胞を30分間インキュベートした。CELL Questソフトウェア(BD Bioscience社)を用いてFACScan(Becton Dickinson社)によってサンプルを分析した。示されている組織当たりの免疫細胞の総数は、ターゲット細胞のパーセンテージ及び各組織中の細胞総数から算出した。
【0130】
腫瘍接種及び処理プロトコル:未照射EG7、LLC又はLLC−ova細胞を含む200mLのPBSをマウスのわき腹に皮下注入した。LLC−ova細胞の接種(第5日)の5日後に、精製された10個のGFP−OT−Iを含む0.3mL体積のPBSを尾静脈から注入した。2日後に、グラフに示されているスケジュールに従って、10個の未照射LLC−ova−gp96−Ig細胞又はEG7−gp96−Ig細胞を含む0.5mL体積のPBSを腹腔内に注入してマウスを免疫化させた。コントロールマウスをPBS、EG7又はLLC−ovaによって処理した。わき腹の腫瘍の二次元サイズを週2回少なくとも20日間にわたって測定した。
【0131】
統計分析:反復測定分散分析及びウィルコクソン符号順位検定によって有意性を評価した。P<0.05の値が統計的有意差を示しているとみなした。
【0132】
定着腫瘍は、TCR特異性に依存せずにGp96媒介性D8CTL増殖を抑制する:腫瘍細胞中への熱ショック融合タンパクgp96−Igのトランスフェクションは、gp96をシャペロンとして折りたたまれたペプチドに加えてgp96−Igの分泌につながる。Gp96−Igは、IgG1のFc部分によるgp96の小胞体保留シグナル(KDEL)の置換によって生成される融合タンパクである。gp96−Igを分泌する腫瘍細胞をマウスに注入すると、腫瘍特異的免疫及び免疫記憶の誘導並びにその後の同じものの投与に対する防御が生じるが、トランスフェクトされていない腫瘍では生じない。分泌されたgp96−Igによって生じる腫瘍免疫性は、EL4特異的抗原などの腫瘍内因性抗原に由来するペプチドを含むgp96によって折りたたまれたペプチドに対して、及び、EL4(EG7)又はLLC(LLC−ova)にトランスフェクトされたオバルブミンなどの代用抗原に対して特定的である。このオバルブミン代用抗原は、オバルブミンに特異的な、OT−I TCRトランスジェニックCD8細胞の適合移植によってインビボにおけるCD8CTL増殖を正確に測定する方法を提供する。
【0133】
定着腫瘍は、CTL増殖に対して抑制性であることがわかっている。TCRトランスジェニックOT−1系を用いて、定着腫瘍の存在下又は不存在下におけるCTL反応を測定した。この系においては、トランスジェニックCD8CTLが、オバルブミンがトランスフェクトされた同系又は同種異系腫瘍であって、gp96−Ig−ovaを分泌する腫瘍に対して応答する。移植可能腫瘍モデルとして、オバルブミントランスフェクションによるEL4に由来するEG7を用いた。これは、免疫原性であり、かつ、腫瘍形成性が高いものとして分類される。免疫原性がより低く、かつ、腫瘍形成性が高いと考えられるLLC及びLLC−ovaをさらに用いた。両方の細胞株の分裂速度は、培養における倍増時間が8時間〜12時間と非常に急速である。
【0134】
10個の細胞当たり24時間に60ng〜80ngのgp96−Igを分泌する100万個のEG7−gp96−Ig細胞による単独の腹腔内免疫化の後に、OT−I CD8T細胞は、CD8ゲートにおいては低くから免疫前レベル(B0.2%)まで、腫瘍を有しないマウスにおいては高頻度(15%〜40%)まで増殖する(図11A)。gp96−Igを分泌しない被照射EG7の投与は、有意なOT−I増殖を生じさせることができない。しかしながら、わき腹の離れた部位の皮下に定着したEG7腫瘍の存在は、gp96ワクチンによって誘導されるOT−Iの増殖を、腹膜腔(図11A−C)並びに脾臓及びリンパ節(図示せず)において全身的に有意に阻害する。EG7腫瘍は、オバルブミンを分泌し、Kb−ovaを発現する。従って、その適合移植されたOT−Iは、腫瘍床又は腫瘍dLNを経由した再循環によって、共刺激シグナルを受けない一方でそれらのKb−ova特異的TCRを経由したシグナルを受けることによって、アネルギーになり得る。この仮説を試験するために、どちらもオバルブミンを発現しない同系腫瘍のEL4及びLLCを離れた部位において皮下に定着させた。次いで、OT−Iを静脈から適合移植し、マウスを前述のようにEG7−gp96−Igによって腹腔内において免疫化させた。定着したEL4及びLLCは、分泌されたgp96−ovaによってOT−I増殖を抑制することにおいて定着したEG7と同じくらい効果がある。このことは、この抑制が腫瘍中の適切なTCR抗原、Kb−ovaに依存しないことを示している(図11B、C)。腹膜腔内における及び全身的なOT−I増殖は、離れた部位のLLC及びEL4の存在によって抑制されたが、驚くべきことに、EG7−gp96−Igによって腹膜腔内に免疫化を行った後の全細胞動員は、腫瘍を有しないマウスと比較すると、実際に増加した(図11D)。
【0135】
このデータは、定着腫瘍がCTL増殖の抗原非特異的抑制を誘導し得ることを示す。この抑制の誘導は、腹膜腔内のワクチン部位への細胞動員の増加に関連している。この増加した細胞動員がCD8T細胞の抑制の原因であるかどうかについては調査中である。
【0136】
抗原非特異的免疫抑制を克服するために、これらの試験は、ワクチン接種によるCD8CTLの頻繁に繰り返される抗原特異的刺激が、腫瘍を有するマウスにみられる抑制活性を打ち消すことができるかどうかをテストする。
【0137】
定着腫瘍の拒絶は、頻繁なGp96−Ig免疫化を必要とする。分泌gp96−Igを含む多くのワクチン接種戦略によって腫瘍及び腫瘍抗原に対するマウスにおける防御免疫を確立することは可能であるが、治療ワクチン接種によって既に定着した腫瘍を拒絶することはさらに難しい。CD8増殖の抗原非特異的抑制の観察を考慮して、様々なワクチン接種スケジュールがどのように腫瘍拒絶及び/又は腫瘍増殖に影響するかを分析した。
【0138】
まず、腫瘍移植と同じ日にワクチン接種を始めることによって治療ワクチン接種の効果を分析した。100万個のEG7腫瘍細胞を同系マウスのわき腹の皮下に移植した。同じ日(第0日)に、10個の細胞当たり24時間に60ng〜80ngの速度でgp96−Igを分泌する、100万個のgp96―Ig分泌EG7ワクチン細胞(EG7−gp96−Ig)をワクチンとして腹腔内投与し、ワクチン接種を第3日、第7日、第10日及び第14日に繰り返した。治療を受けていないマウスと比較して、腫瘍増殖は、腫瘍移植と同じ日に開始した4回のEG7−gp96−Igワクチン接種によって有意に(P=0.0078)減少した(図12A)。この治療効果はgp96及び抗原依存的である。gp96−Igを分泌しない被照射EG7(図12A)、又は、EG7抗原を発現しないがEG7−gp96−Igと同じ速度でgp96−Igを分泌するLLC−gp96−Ig(図12B)は、EG7−gp96−Igと同じ量及びスケジュールでワクチンとして腹腔内投与されたときに、腫瘍増殖を遅延させることができない。EG7−gp96−Igによるワクチン接種を2日後又はEG7接種後に開始すると、同じワクチン接種スケジュールを用いても治療効果が実質的に低下した(図12A)。これらのデータは、2日後でさえも、定着腫瘍は、新たに移植する腫瘍よりも、ワクチン接種によって抑制するのが困難であることを実証する。
【0139】
より高頻度のワクチン接種スケジュールによって3日間以上の定着した腫瘍を抑制することができるかどうかについても試験を行った。100万個のEG7腫瘍細胞をわき腹の皮下に移植し、3日〜7日間定着させて、少なくとも7回以上腫瘍細胞を倍増させた。この期間に腫瘍小結節の血管新生が発生する。これは視覚的にみつけることができる。次いで、マウスは、100万個のEG7−gp96−Ig細胞による腹腔内ワクチン接種が毎日行われるか、又は、同じスケジュール及び用量のLLC−gp96−Ig細胞若しくは特異性コントロールとして被照射EG7細胞を接種されるか、又は、ワクチン接種をせずに放置された。EG7−gp96−Igによる毎日のワクチン接種は、3日間定着したEG7の増殖を有意に(P=0.0078)かつ効果的に抑制した(図12B)。一方で、被照射EG7又はLLC−gp96−Igによる毎日のワクチン接種は、定着したEG7の増殖に対して効果がなかった(図12B)。さらなる研究において、移植したEG7腫瘍をEG7−gp96−Igによるワクチン接種を始める前に5日間及び7日間定着させた。図12C及び図12Dに示すように、腫瘍定着のこの後期段階においては、腫瘍増殖を遅延させるために1日2回のワクチン接種が必要であった。このデータは、マウスにおいて頻繁な免疫化が24日間の腫瘍増殖を抑制することができることを示す。継続的な長期ワクチン接種スケジュールによって、腫瘍を完全に根絶することができるかどうか判断するためにはさらなる研究が必要であろう。
【0140】
免疫原性がより低い定着したLLCを用いた試験を繰り返して、免疫原性EG7リンパ腫を用いて得たデータを検証した(図13)。腫瘍移植から3日後に始めるLLC−gp96−Igを用いた反復腹腔内免疫化(第3日、第7日、第10日及び第14日)は、LLCの腫瘍増殖を有意に(P=0.0234)遅延させた。LLCに対する毎日の免疫化は、腫瘍遅延にあまり効果がなかった。EG7−gp96−Igワクチン接種がLLC腫瘍増殖を抑制することができなかったので、免疫化の効果は腫瘍特異的であった。腫瘍増殖抑制は、被照射LLCによっても達成されたが、gp96−Ig分泌に依存していた。
【0141】
これらのデータは、分泌されたgp96−Ig及びそれによって折りたたまれたペプチドによる抗原交差提示と組み合わされた高頻度の樹状細胞及びナチュラルキラー細胞活性化が、定着腫瘍によって誘導される抗原非特異的免疫抑制を克服することができることを示している。
【0142】
Gp96によって媒介される樹状細胞及びナチュラルキラー細胞の動員及びCD8CTL増殖は、BCDMにおいて強められる:野生型(WT)マウスと比較すると、BCDMにおいてヘルパーT細胞1非腫瘍性反応が強められることは、いくつかのグループによって報告されている。従って、gp96によって媒介されるCTL増殖及び抗腫瘍免疫におけるB細胞の役割を研究した。腹膜腔は、CD5+CD19+B細胞及びCD5+CD19+B1−B細胞によって占められ、後者は、IgM抗体を作り、活性化によるアイソタイプスイッチが生じない(図14A)。EG7−gp96−Igによる腹腔内免疫化によって、CD5+CD19+群は、免疫化から4日後までに約5倍になるが、CD5+B1−B細胞は穏やかに増加する(図14A)。Gp96によって媒介されるOT−I増殖は、免疫化から4日後及び5日後に最大である。それに先行して、ワクチン接種の部位である腹膜腔における樹状細胞及びナチュラルキラー細胞の動員及び活性化が生じる。ナチュラルキラー細胞は、前に示されているように、gp96−Igによって媒介されるCD8CTL増殖の重要な促進因子である。BCDMにおいて、腹膜腔(ワクチン部位)への樹状細胞の動員は、野生型マウスにおけるワクチン接種から2日後の動員と同様であった。しかしながら、野生型マウスにおいては樹状細胞数がワクチン接種から4日後までに50%減少したが、B細胞欠損マウスにおいては樹状細胞数が同じ高頻度のままであった(図14B)。BCDMにおいてはナチュラルキラー細胞動員が第2日及び第4日に増加した(図14B)。差が有意ではなかったが、3つの独立試験において再現可能であった。BCDMへの野生型B細胞の適合移植は、樹状細胞の増加した保持及びナチュラルキラー細胞の動員を消失させた。この発見は、B細胞がgp96によって誘導される先天性免疫細胞の動員に作用することを示唆しており、また、B細胞もCD8CTL増殖の調節又は抑制に関与していることを示唆している。
【0143】
従って、GFP標識したOT−I CD8 CTLの増殖がgp96免疫化に応じてBCDMにおいて増加するかどうかについても試験を行った。図15に示すように、野生型マウスと比較して、gp96免疫化後のOT−I増殖は、BCDMにおいて第5日に有意に高まった。重要なことに、OT−Iは、免疫化から7日後及び12日後に腹膜腔において有意に高い(P=0.04)頻度で残存していた(図15A)。dLN(図15B)においても、OT−I増殖及び保持が増加したが、有意ではなかった。免疫化前におけるBCDMへの野生型B細胞の適合移植は、OT−I増殖を、野生型マウスにおいてみられるレベル又はそれより低いレベルにした(図15A、図15B)。IL−10欠損マウスがBCDMにおいてみられるような高められた増殖ではなく野生型マウスと同様のOT−I増殖を示すので、B細胞の存在によるOT−I増殖の抑制は、インターロイキン(IL)−10生産によって媒介されていない。
【0144】
Gp96によって媒介される定着非免疫原性腫瘍の拒絶は、B細胞の非存在下で強められる:上に示されているように、野生型マウスに定着しているEG7腫瘍の増殖抑制は、最低でもgp96免疫化を毎日行うことを必要とする。同様に、頻繁な免疫によってLLC進行を遅延させることができる。EG7及びEL4細胞は、BCDMにおいて拒絶され、腫瘍を定着させない。しかしながら、LLC及びLLC−ovaは、野生型マウスにおけるよりも遅い速度で増殖するが、BCDMにおいて定着することができる。BCDMマウス及びWTマウスにおいてLLC−ovaをわき腹皮下に5日間定着させた。OT−Iを静脈から適合移植し、2日後に、100万個のLLC−ova−gp96−Igを単一用量として腹腔内投与し、わき腹における腫瘍増殖をモニターした。野生型マウスにおいて、LLC−ova−gp96−Igによる単独免疫化は、わき腹において腫瘍増殖の有意な遅延を生じさせたが、腫瘍を拒絶することができなかった(図16A)。対照的に、BCDMにおいて、単独免疫化は、7日間定着したLLC−ova腫瘍を、3頭のマウスにおいては完全に拒絶し、2頭においては有意に減少させた(図16B)。治療の非存在下において、LLC−ovaは、野生型マウスにおける速度(図16A)よりも遅いとはいえ、BCDMにおいて徐々に増殖する(図16B)。BCDMのB細胞再構成(図17C)は、ワクチン接種の効果を、野生型マウスにおいてみられるもの(図16A)、すなわち進行の遅延、に類似させるようにした。抗体による完全な又は部分的なB細胞枯渇がB細胞欠損と同じ効果を有するかどうかについて測定することは興味深い。継続中の予備研究は、このアプローチをサポートしているように考えられる。
【0145】
単独免疫化によるBCDMに定着しているLLCの最適な腫瘍抑制は、十分に多い数の腫瘍特異的CTL前駆物質(OT−I)及び抗原特定的免疫化(LLC−ova−gp96−Ig)に応じて変わる。BCDMにおいて、gp96免疫化を伴わない100万個の適合移植されたOT−Iの存在は、ほとんどのマウスにおいて腫瘍拒絶を生じさせない(図17A)。同様に、OT−I移植を伴わない単独のgp96免疫化は、組合せほどで有効ではない(図17B)。
【0146】
定着腫瘍が抗腫瘍免疫を抑制することは広く理解されている。腫瘍特異的T細胞は定着腫瘍の存在下でアネルギーになる。その研究において用いられたB細胞リンパ腫に対するアネルギーは、抗原特異的で、MHC限定であり、MHCが一致した骨髄由来抗原提示細胞の存在に依存する。その他の研究において、抗原非特異的骨髄性抑制細胞及びT制御性細胞が抗腫瘍免疫の抑制に関与していた。本研究は、インビボにおけるCTL反応の抑制は、抗原に依存しない経路を介して、定着腫瘍によってもたらされ得ることを示す。gp96−ovaワクチン接種に呼応したOT−I CD8 CTL増殖は、腫瘍によるオバルブミンの発現に依存しない定着腫瘍によって阻害される。このタイプの抑制は、T制御性細胞によって、又は、骨髄抑制細胞又はM2マクロファージなどのその他の抑制細胞によってもたらされ得る。この仮説と一致して、この抑制活性は、予備実験において、腫瘍を有するマウスにおいてgp96ワクチン接種によって誘導された腹膜細胞の移植によって、腫瘍がないマウスに移すことができる。
【0147】
gp96−ova免疫化に対するOT−I反応が定着腫瘍の存在下において強く阻害されるが、完全にブロックされないということは、定着腫瘍による免疫抑制と、分泌されたgp96−ovaによって促進された活性化樹状細胞による抗原交差提示を介したワクチン誘導CD8CTL活性化との間にバランスがあることを示している。我々は以前に、未処置マウスのgp96−ovaが、腫瘍においてナチュラルキラー細胞及び樹状細胞の動員及び活性化を生じさせ、その後にOT−I増殖を伴うことを示した。定着腫瘍が、LLC−gp96−Igワクチン接種によって腹膜腔内への細胞の動員を実際に強めるが、OT−I増殖を抑制することは、定着腫瘍の存在下においては、多くの動員された細胞が抑制細胞であることを示している。この仮説によって、gp96−ovaによる頻繁な免疫化が、反復的なgp96媒介性樹状細胞及びナチュラルキラー細胞刺激、抗原交差提示の増加及びCTLプライミングを介して、そのバランスを抑制から増大した免疫活性化に移すことによって、抑制活性を克服することが予測される。確かに、頻繁な免疫化は腫瘍発達の遅延に対して著しい効果がある。定着EG7の場合、1日1回又は2回のワクチン接種は、腫瘍増殖を阻止することにおいて、2日に1回又は3日に1回のワクチン接種よりもはるかに有効であった。LLCに対しては、1日おきに又は3日おきの免疫化が充分であり、毎日の免疫化はあまり効果的ではなかった。これらの腫瘍に特異的な相違は、抑制細胞が末梢腫瘍の存在によって形成される速度に関している可能性がある。あるいは、それは、腫瘍が抑制細胞の誘導を媒介するメカニズム又はその誘導された抑制細胞の特性に依存しているのかもしれない。
【0148】
腫瘍から分泌されるgp96−ovaを用いた腹腔内免疫化に対するOT−I反応の研究によって、ワクチン部位である腹膜腔内に多数のB細胞が動員されることがわかった。B細胞が抗腫瘍免疫に対して抑制性であることが報告されていることは、gp96媒介性OT−I増殖におけるその役割に関する疑問を生じさせる。BCDMを用いて、腹膜腔におけるナチュラルキラー細胞及び樹状細胞の動員及び保持が増加し、OT−I増殖がgp96−ova免疫化後に増加したことが直ちに明らかになった。B細胞を再構成されたBCDMがgp96−ovaによって媒介されるOT−I増殖に対して野生型マウスのように応答したということは、B細胞欠損がgp96−ova免疫化に対するBCDMの反応性をB細胞の不存在に無関係な態様で変化させた可能性を除外する。B細胞欠損は、OT−I増殖を増加させるだけでなく、gp96−Igによる単独の免疫化の後に7日間定着したLLC−ova腫瘍の腫瘍拒絶を非常に高めた。このデータは、腫瘍によって媒介される抑制細胞の誘導がB細胞の非存在下において大幅に減少すること、又は、それらのB細胞が「抑制細胞」として機能していることを示している。B細胞が抑制細胞の誘導に関与しているかどうか、又は、B細胞自体がCTL反応対して免疫抑制性であるかどうかについては、さらなる研究が必要とされる。しかしながら、IL−10は、B細胞によって媒介される腫瘍免疫性の抑制に関与しているとは考えられない。継続中の研究において、OX40−L−欠損B細胞は、抗腫瘍免疫反応を抑制する能力が低いことがわかった。
【0149】
これらの研究は、抗原に依存しない免疫抑制を研究してさらに定義することができるモデルを提供する。B細胞の役割は、このプロセスにおいて特に興味深い。さらに、これらの研究は、抗腫瘍ワクチン剤がより効果的になり得る方法を提示する。抗体とB細胞の枯渇、及び、例えば腫瘍から分泌されたgp96ワクチンによるその後の頻繁なワクチン接種は、従来のワクチン接種方法によってみられたよりも、さらに効率的な腫瘍増殖の抑制をもたらすかもしれない。
【0150】
実施例4:熱ショックタンパクgp96ワクチン接種による抗腫瘍作用は、B細胞の非存在下において強まる
B細胞の非存在下において増大したgp96の抗腫瘍活性:免疫学的腫瘍拒絶は、通常、Th1に偏った抗腫瘍免疫反応中の細胞毒性CD8細胞の生成に依存する。腫瘍回避戦略は、しばしば、Th2サイトカインの生産を含むTh2に偏った体液性応答への免疫偏向を含む。Th2反応がB細胞活性化及びTH1偏向のフィードバック阻害に関連しているので、gp96に対する抗腫瘍免疫反応がB細胞の不存在によって影響されるかどうかについて試験を行った。腫瘍系としてLLC−ovaを用い、代用抗原としてオバルブミンをトランスフェクトした移植可能な自然発生肺腫瘍を用いた。LLC−ovaは、非免疫原性であり、増殖が速く(16時間の分裂期間)、約4週以内に死に至る。LLC−ovaにgp96−Igをさらにトランスフェクトして、24時間に100万個の細胞によって80ngの速度でgp96−Igを分泌する腫瘍であるLLC−ova−gp96−Igを作成した。LLC−gp96−Igは、強い同族CD8−CTL活性化を媒介し、抗腫瘍免疫性を生じさせる。この免疫化モデルは、非腫瘍性反応に対するB細胞の不存在の効果を評価するために用いられた。野生型マウス及びB細胞欠損(pMT)マウスのわき腹の皮下にLLC−ovaを移植し、100万個の生きたLLC―ova−gp96−Ig細胞を腹腔内に注入したとき(第0日)から7日間定着させた。ICbによって提示されるオバルブミン由来ペプチドSIINFEKLを検出するTCRトランスジェニックOT−I細胞(10個の細胞)をLLC−gp96−Igによる免疫化の2日前に静脈内から与えた。野生型マウス中のLLC−ovaは、免疫化の非存在下においてOT−Iが存在するときでさえも徐々に増殖する(図16)。100万個のLLC−ova−gp96−Ig細胞の腹腔内投与は、腫瘍増殖を遅らせるが、完全な腫瘍拒絶を媒介することができない。B細胞欠損マウスにおいて、LLC−ovaは、すべてのマウスにおいて進行性の腫瘍を形成するが、野生型マウスよりも腫瘍増殖が遅い。gp96を分泌するLLC−ovaを用いた7日間の定着した腫瘍を有するB細胞欠損マウスの免疫化は、完全な腫瘍拒絶を生じさせた。腫瘍は追跡期間である6週間にわたって再発しなかった。
【0151】
明らかに、このモデル腫瘍系におけるB欠損マウスは、高頻度の腫瘍特異的前駆物質CTL(OT−I)の存在下において、gp96−免疫化による腫瘍拒絶反応を増やすことができる。適合移植したOT−Iの非存在下においてLLC−ova−gp96−Igに対する抗腫瘍反応が有意に低下したので、腫瘍拒絶は両方の成分に依存していた(図17B)。同様に、OT−Iのみは、免疫化なしではLLC−ovaを拒絶することができなかった(図17A)。野生型B細胞の移植によるB細胞欠損マウスにおけるB細胞の再構成は、定着腫瘍を拒絶するgp96の能力を消失させた(図17C)。明らかに、正常なB細胞の不存在は、B欠損マウスにおける増大した腫瘍拒絶反応の原因である。
【0152】
B細胞欠損マウスにおける増大したCD8CTLクローン性増殖:B欠損マウスにおける定着したLLC−ova腫瘍を拒絶するgp96に基づいた免疫化の能力向上は、CD8CTL活性化が増加したことを示している。gfp標識したOT−I細胞を用いて、B細胞欠損マウス及び野生型マウスの免疫化後にOT−I細胞のクローン性増殖を比較した。OT−I細胞を静脈内に適合移植し、2日間の平衡期間の後にLLC−ova−gp96−Igをマウスに注入した。免疫化の5日後、7日後及び12日後に腹膜腔、腸間膜排水及び傍大動脈のリンパ節においてgfp−OT−Iの頻度を測定した。免疫化前に腹膜腔にはOT−Iが実質的に存在せず、流入リンパ節における頻度はCD8ゲートにおいて0.5%である。以前に報告されているように、腫瘍から分泌されたgp96は、野生型マウスにおいて強いCD8CTL増殖を媒介しており、第5日に最大となる。gp96−Igを分泌しないLLC−ovaは、OT−Iを増殖させない。増殖後の次週に減少が伴う(図15)。B細胞欠損マウスにおいては、CD8CTL増殖が、一貫して野生型マウスにおいてみられた数のおよそ2倍に増加する。
【0153】
野生型B細胞によるB欠損マウスの再構成は、野生型マウスと表現型を区別することができないCD8反応を生じさせる。gp96を分泌する腫瘍細胞による腹腔内免疫化は、B細胞、樹状細胞及びナチュラルキラー細胞を含む多数の免疫細胞の動員をもたらす。野生型マウスにおいて、B細胞蓄積は、CD8CTL増殖と動力学的に同時に生じ、いずれもが第3日〜第5日の間に最大となる。樹状細胞及びナチュラルキラー細胞は、gp96−Ig免疫化後の最初の48時間に腹膜腔内に動員される。B細胞の非存在下において、樹状細胞及びナチュラルキラー細胞の動員は増加した。一方で、野生型B細胞によるB細胞欠損マウスの再構成は、樹状細胞及びナチュラルキラー細胞の動員を野生型レベルまで回復させた。
【0154】
OT−I細胞及びCD19+B細胞の精製及び適合移植:脾細胞及びリンパ節細胞の貯蔵された単個細胞浮遊液は、gfp−OT−Iマウスから得られ、塩化アンモニウム溶解によって赤血球が除去された。製造社の説明書に従って、抗CD8a磁気マイクロビーズ及びMACS(Miltenyi Biotec社、オーバーン、カリフォルニア)を用いて、ポジティブカラム選択によってGfp−OT−I細胞を分類した。フローサイトメトリ分析によって決定すると、分離されたOT−I細胞の純度はCD8陽性の95%超であった。注入前に、精製された細胞におけるVa2及びVP5.1.2発現量をフローサイトメトリによって定量した。B細胞の精製のために、抗CD19マイクロビーズによる同じ手順でCD19+細胞を精製した。pMTマウスにおいてB細胞を再構成するために、10’精製された細胞を、LLC−ova細胞接種の2日前に尾静脈から適合移植した。
【0155】
腫瘍接種及び治療プロトコル:未照射のLLC又はLLC−ova細胞が含まれる200mlPBSをマウスのわき腹に皮下注入した。LLC−ova細胞の接種(第5日)から5日後に、10個の精製されたOT−Iを含む0.3ml体積のPBSを尾静脈から注入した。第7日に、照射されていない10個のLLC−ova−gp96−Ig細胞を含む0.5ml体積のPBSを腹腔内に注入することによってマウスを免疫化させた。非処理コントロールとして、第5日及び第7日にマウスをPBSで処理した。少なくとも20日間にわたって週2回腫瘍の二次元サイズを測定した。OT−I増殖に対処するために、10個のgfp−OT−Iの適合移植後に、4×10〜個の照射されていないEG7−gp96−Ig細胞を腹腔内に注入することによってマウスを免疫化させた。リツキシマブ(登録商標)処理したヒトCD20トランスジェニックマウスにおける腫瘍増殖を評価するために、第4日に1mgのリツキシマブ(登録商標)を含む0.5mlのPBS又はPBSのみを腹腔内注入することよってマウスを処理した。実験の詳細は、リツキシマブ処理を除いて上述したプロトコルと同様であった。
【0156】
フローサイトメトリ分析:設定した時間間隔の後に、示されている回数にわたって腸間膜及び傍大動脈リンパ節(dLN)、並びに、腹膜腔から細胞を採取した。リツキシマブ(登録商標)処理の後にヒトCD20を発現するB細胞の枯渇を調べるために、注入の1週間後に末梢血赤血球を得た。塩化アンモニウム溶解によってサンプルから赤血球を除去した。最初に、100万個の細胞が、FcR結合を妨害するために0.5%のBSA(PBA)を含むPBSにおいて抗CD16132モノクローナル抗体と共に4℃において10分で培養された。その後、示されている抗体中で細胞を30分間インキュベートした。CELL Quest ソフトウェア(BD Bioscience社)と共にFACScan(Becton Dickinson)を用いてサンプルを分析した。示されている免疫細胞の各組織当たりの総数を、ターゲット細胞パーセンテージと各組織における全細胞数から算出した。腫瘍増殖における有意差を反復分散分析によって評価した。p<0.05の試験値を統計的有意差を示す値とみなした。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分泌型gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターがトランスフェクトされた腫瘍細胞を具えることを特徴とする医薬品組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記分泌型gp96ポリペプチドが、gp96ポリペプチドと免疫グロブリンシグナルペプチド(IgSP)とを含む融合タンパクであることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物において、前記免疫グロブリンシグナルペプチドが、マウス免疫グロブリンシグナルペプチド、ラット免疫グロブリンシグナルペプチド、ブタ免疫グロブリンシグナルペプチド、サル免疫グロブリンシグナルペプチド、及び、ヒト免疫グロブリンシグナルペプチドからなる群より選択されることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の組成物において、前記免疫グロブリンシグナルペプチドがマウス免疫グロブリンシグナルペプチドであることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の組成物において、前記免疫グロブリンシグナルペプチドがヒト免疫グロブリンシグナルペプチドであることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物が、さらに、B細胞抗原に対する抗体を少なくとも1つ具えることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物において、前記抗体が、類人霊長類抗体、マウスモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体からなる群より選択されることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の組成物において、前記抗体が、マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体であることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の組成物において、前記B細胞抗原が、CD19、CD20、CD22、HLA−DR及びCD74からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
ヒト対象において防御免疫反応を生じさせる方法において、分泌型gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターがトランスフェクトされた有効量の腫瘍細胞を前記対象に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記分泌型gp96ポリペプチドが、gp96ポリペプチドと免疫グロブリンシグナルペプチドとを含む融合タンパクであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記免疫グロブリンシグナルペプチドが、マウス免疫グロブリンシグナルペプチド、ラット免疫グロブリンシグナルペプチド、ブタ免疫グロブリンシグナルペプチド、サル免疫グロブリンシグナルペプチド、及び、ヒト免疫グロブリンシグナルペプチドからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、前記免疫グロブリンシグナルペプチドがマウス免疫グロブリンシグナルペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、前記免疫グロブリンシグナルペプチドがヒト免疫グロブリンシグナルペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法において、前記gp96免疫化を約1週間から約6週間の期間にわたって1日2回行うことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法が、前記gp96免疫化を約1週間から約6週間の期間にわたって1日1回行うことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法において、薬学的に許容可能な担体とB細胞抗原に対する少なくとも1つの抗体とを含む治療組成物を前記対象に投与するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記治療組成物を、単位用量当たり20mg〜2000mgの用量で非経口的に投与することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記対象に反復的非経口投与によって前記抗体を接種することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法において、前記抗体が、類人霊長類抗体、マウスモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法において、前記抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、又は、ヒト化抗体であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項17に記載の方法において、前記B細胞抗原が、CD19、CD20、CD22、HLA−DR及びCD74からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項23】
ヒト対象において防御免疫反応を生じさせる方法において、分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核細胞発現ベクターがトランスフェクトされた有効量の腫瘍細胞を前記対象に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
癌に対するワクチンを製造する方法において、分泌型熱ショックタンパク(hsp)gp96ポリペプチドをコードする核酸を含む真核生物の発現ベクターがトランスフェクトされた腫瘍細胞をコードする核酸を発現するように癌細胞集団を遺伝子操作するステップを含むことを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−515399(P2011−515399A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500808(P2011−500808)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/001727
【国際公開番号】WO2009/117116
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510250892)ユニバーシティー オブ マイアミ (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
【Fターム(参考)】