説明

熱中症対策衣料及び飲料容器

【課題】 高気温高湿度環境下における運動や作業時に、熱中症発症の予防として、体温上昇の抑制を図ると共に水分補給を行なうことができ、尚且つ体型や姿勢、環境、運動量を問わない機動性の良好な衣料及び飲料容器を提供する。
【解決手段】 通気性の良好な生地の被服(1)に、柔軟な素材で出来た飲料容器(2)を体形にそって保持させ、飲料を保冷材としても用い頚部と腋下を冷やし、容器の内容物をチューブ(3)を介して設けられた摂取口(4)を通して摂取できる衣料及び容器を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体温上昇の抑制を図ると共に水分補給を行なうことができ、なおかつ体型や姿勢、環境、利用できる運動量を問わず、生産性をも考慮した熱中症対策衣料及び飲料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炎天下、高気温、高湿度下での運動や作業には常に熱中症発症の危険が伴うが、その対策として体温を下げること、水分の補給を行なうことなどの方法がある。
【0003】
そこで従来、装身材を濡らし気化熱によって涼感を得るものや、保冷材を身に着けることによって体温を下げるものがある。(特許文献1または2参照)また、保冷材に加えて飲料容器を収納し、体温上昇の抑制と水分摂取の双方を目的とした考案がある。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−76240号
【特許文献2】特開2002−119530号
【特許文献3】実用新案登録第3135035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献3の冷却具によれば、保冷材により体の背中と飲料容器をそれぞれ冷却することができるとともに、飲料容器を常時携帯し取出すことなく水分の補給も行うことができ、暑さの対策に有効であると考えられる。しかし、以下のような問題点が挙げられる。
1. 保冷材が溶けてしまうと涼感のないおもりを背負う状態になり、装置と保冷材の重 量により疲労が生じる。
2. 人体を冷却する部位が背面全面であり、体に寒気を感じさせるものとなる。
3. 形状が体の背面全面を覆うものであり、発汗し気化熱により体温を下げようとする 生理現象を妨げる。
4. 激しい動作を行うと、容器内の液体の移動によって、装置と体の動きとのずれが生 じ違和感や不快感を生じる。
5. 飲料を摂取するために装置を常に口に咥えたままの状態では、意思伝達の問題や、 圧力変化により内容物が溢れて周囲を汚したり誤飲を起こしたりする危険などが生 じる。
本発明は、以上のような欠点をなくし、尚且つ利便性・生産性を向上するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、通気性の良好な生地を主とし各所に断熱材を配した被服に、柔軟な素材でできた袋状の飲料容器を体形にそって保持することによって、飲料容器を保冷材としても用いる。
【0007】
飲料容器には着脱式のチューブと、その他端に弁付き摂取口を設ける。
【0008】
これによって、前項の問題点を解決する。
1. 保冷材が溶けても飲料として体内に入っていくものであり、効果が薄くなっていく につれて重量は軽くなり体への負担は軽減される。
2. 断熱材を用いて冷却部位を頸部と腋下と限定することで、強い冷えを感じさせるこ となく体温上昇の抑制を行なうことができる。
3. 通気性の良い生地を用いることにより、発汗し気化熱により体温を下げようとする 生理現象を妨げない。
4. 本発明の主な構成部材は衣料であるゆえに軽量であり、装着容器は体に密着した状 態であり、容器の内部も複室構造とすることで液体の移動が起きにくく、体の動き と液体の動きがずれる違和感や不快感を排除する。
5. 摂取口は、常に口にする必要がないので意思伝達を遮るものとはならず、弁を備え るため圧力変化により溢れて周囲を汚したり誤飲したりする危険を排除する。また 、摂取口を口に運ぶ必要があるが、水分摂取は常時行なうものではなく適宜行うも のなので利用頻度においては問題とならない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飲料容器を保冷材としても用いるので、冷却効果が低下するにつれて重量も減少していくため体への負担を抑えられる。
【0010】
断熱材を体と保冷材(飲料容器)とが接する箇所に部分的に利用することで、冷却する部位は効果が強い部分に限定し、体に強い冷えを感じさせることなく体温を降下させる。
【0011】
衣料の生地が通気性の良いものであることで、発汗し気化熱により体温を下げようとする現象を妨げない。
【0012】
構成する部材は軽量且つ柔軟であり、容器の装着形態も体に密着したもので容器内も複室構造とするため、機動性において良好で、体型や使用姿勢、使用環境、利用できる運動量を問わない。
【0013】
摂取口に弁体を設けることで、圧力変化により内容物が溢れ出て周囲を汚す、誤飲するなどの危険を排除する。
【0014】
断熱材を飲料容器の外側にも配置することで外気温による影響で内容物が温度上昇してしまうことを防ぎ、長時間にわたって涼感と飲料を提供する。
【0015】
副次的効果として、水分補給の都度容器を取りに行く、容器を取出す、蓋を開閉するなどの動作時間を必要としないため、様々な作業における生産性の向上を期待できる。
【0016】
加えて、構成する部材点数が少なく構造が簡易であり、特殊な材料を用いず製作するなら原材料費を抑えることができ、既存の生産設備を使用し大量に生産できるため低コストでの生産を可能とする。
【0017】
さらに、飲料容器は家庭で充填し冷蔵冷凍でき、洗浄することで衛生的に繰り返し使用することが出来るため、運用コストは低い。飲料メーカーが同形状の商品を生産するとしても、既存設備を用いて量産することができる形態であり、容器の形状も大きな空間を持つ立体的な形状ではないため単位あたりの梱包も小さくてすみ、生産・運送コストにおいても有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の、被服と飲料容器の配置関係を示す前面斜視図である。
【図2】本発明の、被服と飲料容器の配置関係を示す背面斜視図である。
【図3】本発明の、被服の断熱材の使用箇所を示す前面斜視図である。
【図4】本発明の、被服の断熱材の使用箇所を示す背面斜視図である。
【図5】本発明の、飲料容器の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
被服(1)に、柔軟な素材で作られた袋状の飲料容器(2)を腋下から頚部へと亘る形で保持させる。
飲料容器の外側には外部断熱材(6)を設け、内側には飲料容器が体と接する部分の頚部・腋下以外の箇所に内部断熱材(7)を設ける。
飲料容器(2)の先には、飲料移送チューブ(3)、飲料摂取口(4)を設け、チューブ着脱部(5)にて接続される。
飲料容器には容器内部仕切(8)を設ける。
本発明は、以上のような構造である。
【0020】
これを使用する際には、容器に飲料を充填し、冷蔵庫や冷凍庫等で冷却・凍結させた後に、チューブ及び摂取口を接続し、被服に保持させ着用する。
頚部と腋下に涼感を与えると共に、凍結させた場合は次第に内容物が溶解し、飲料を適宜摂取できるようになる。涼感が強すぎるならば容器と体との間に、被服の生地に加えてさらに布等を当てることで温感を調整する。
内容物が空になったならば、充填冷却済みの物と入れ替えて続けて使用する。
【符号の説明】
【0021】
1 被服
2 飲料容器
3 飲料移送チューブ
4 飲料摂取口
5 チューブ着脱部
6 外部断熱材
7 内部断熱材
8 容器内部仕切

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な素材でできた飲料容器に、着脱可能な摂取口を設け、それらを保持する被服を特徴とした衣料及び容器。
【請求項2】
飲料容器を複室構造とすることを特徴とした請求項1記載の衣料及び容器
【請求項3】
各部に断熱機能を持つ素材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の衣料及び容器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−62612(P2012−62612A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225209(P2010−225209)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(510264707)
【Fターム(参考)】