説明

熱交換器の伝熱管内の洗浄方法

【課題】伝熱管へのノズルの挿入作業効率に優れ、また洗浄コストも安い熱交換器の伝熱管内の洗浄方法を提供する。
【解決手段】伝熱管3(3A)の洗浄を行うに際しては、アンカーピン13を近接する伝熱管3Bに差し込みつつガイド部材10の本体部11の先端を洗浄対象伝熱管3Aに当接させる。ノズル5に高圧水を供給し、ノズル5の噴出孔5aから高圧水を噴出させると共に、駆動装置20によってフレキホース6を送り出す。これにより、ノズル5が高圧水を噴出しながら、ガイド部材10から洗浄対象伝熱管3A内に移動し、前進する。フレキホース6が所定長さだけ送りだされた後、フレキホース6を後退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換器の伝熱管内の洗浄方法に係り、詳しくは伝熱管内にノズルを挿入して洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の伝熱管の内面を洗浄する方法として、管板に露呈する伝熱管開口からノズルを該伝熱管内に挿入し、ノズルの後端に連なるフレキホースから供給される高圧洗浄水を該ノズルから伝熱管内面に向けて噴出させる方法が行われている。
【0003】
この洗浄作業効率を高めると共に、洗浄作業の省力化を図るために、特許文献1(特開平7−19793)、特許文献2(特開2002−48492)には、フレキホースをモーターで移動させることが記載されている。特許文献2では、フレキホースはドラムに巻回されている。ノズルを伝熱管内に挿入した後、高圧洗浄水を逆噴出(後方に向けて噴出)させてノズルを自走方式で前進させる。ノズルが設定位置まで前進した後、ドラムで巻き取ることによりノズルを後退させる。ノズルの伝熱管への挿入は作業者によって行われる。
【0004】
特許文献1では、ホースドラム及びホース走行用ローラ並びにホース案内用ガイドパイプを備えたユニットをロボットアーム先端に設置している。このロボットアームによってガイドパイプを洗浄対象伝熱管の開口に臨ませ、該ローラによってホースを伝熱管内に送り込み、ホース先端のノズルから高圧洗浄水を伝熱管内面に向けて噴出させながらホースを進退させる。ロボットアームの制御装置に予め各伝熱管開口の位置データを入力しておき、1つの伝熱管の洗浄が終了した後、ロボットアームでユニットを次の伝熱管に移動させるようにして各伝熱管を次々と洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−19793号公報
【特許文献2】特開2002−48492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2の洗浄方法では、フレキホース先端のノズルを作業者が伝熱管開口に導いて差し込むようにしているが、この作業に労力と手間がかかる。
【0007】
特許文献1では、ロボットアームを用いるため、作業効率は向上するが、設備が高価であり、洗浄コストが高くなる。
【0008】
本発明は、伝熱管へのノズルの挿入作業効率に優れ、また洗浄コストも安い熱交換器の伝熱管内の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(請求項1)の熱交換器の伝熱管内の洗浄方法は、管板に露呈した伝熱管の開口から該伝熱管内にノズルを挿入し、該ノズルの後端に連なるフレキホースから供給される洗浄水を該ノズルから伝熱管内面に向けて噴出させると共に、該フレキホースを進退させることによりノズルを進退させて伝熱管内面を洗浄する方法であって、洗浄対象伝熱管に該ノズルを挿入するに際し、ガイド部材を洗浄対象伝熱管の開口に臨ませて配置し、該ガイド部材から前記ノズルを該洗浄対象伝熱管内に挿入するようにした熱交換器の伝熱管内の洗浄方法において、該ガイド部材にアンカーピンを設けておき、前記管板における洗浄対象伝熱管の近傍の伝熱管の開口に該アンカーピンを差し込むことにより該ガイド部材の配置を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2の熱交換器の伝熱管内の洗浄方法は、請求項1において、前記ガイド部材に複数個のアンカーピンが設けられており、各アンカーピンをそれぞれ別の伝熱管開口に差し込むことを特徴とする。
【0011】
請求項3の熱交換器の伝熱管内の洗浄方法は、請求項1又は2において、前記フレキホースをフレキホース進退装置に設けられた1対のローラで挟持し、該ローラでフレキホースを進退させると共に、フレキホースに目印を設けておき、該目印をセンサで検知してフレキホースの進退を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項4の熱交換器の伝熱管内の洗浄方法は、請求項3において、前記フレキホース進退装置にフレキホースを把持可能なチャックが設けられており、洗浄待機時にフレキホースを該チャックで把持して固定することを特徴とする。
【0013】
請求項5の熱交換器の伝熱管内の洗浄方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ノズルを前記ガイド部材内に配置し、該ガイド部材を洗浄対象伝熱管の開口に臨ませて配置し、該ノズルから高圧水を噴出させると共にノズルの前進を開始させ、高圧水を噴出しているノズルを該伝熱管内に挿入することを特徴とする。
【0014】
請求項6の熱交換器の伝熱管内の洗浄方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、高圧水を噴出している前記ノズルを洗浄対象伝熱管から引き抜いた後にノズルからの高圧水噴出を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱交換器の伝熱管内の洗浄方法では、ガイド部材を洗浄対象伝熱管の開口に臨ませて配置し、このガイド部材からノズルを洗浄対象伝熱管に挿入するに際し、ガイド部材に設けたアンカーピンを洗浄対象伝熱管近傍の伝熱管に差し込んでガイド部材を固定状態とする。このガイド部材からノズルを前進させて洗浄対象伝熱管にスムーズに差し込むことができ、伝熱管を効率よく洗浄することができる。また、本発明では、高価なロボット装置は不要であり、洗浄コストも安い。
【0016】
本発明では、ガイド部材を設置した後、ノズルから高圧水を噴出させた状態でノズルを洗浄対象伝熱管に挿入することができると共に、伝熱管内で洗浄水を噴出しているノズルを、洗浄水を噴出させたままガイド部材内に引き込むことができるので、伝熱管の開口部すなわち末端についても十分に洗浄することができる。ノズルがガイド部材内に後退しているときに、ノズルから洗浄水が噴出していても、この噴出水はガイド部材外に飛び散らない。
【0017】
アンカーピンを複数個設けておき、各アンカーピンを別の伝熱管開口に差し込むことにより、ガイド部材の設置が安定する。
【0018】
本発明では、フレキホースをフレキホース進退装置の1対のローラで挟持し、ローラを回転させることにより、フレキホースをスムーズに進退させることができる。この場合、フレキホースに目印を設けておき、この目印をセンサで検知することにより、ノズルの挿入位置を知ることができる。
【0019】
また、フレキホース進退装置に設けたチャックによりフレキホースを把持することにより、フレキホースを進退停止状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係る熱交換器の伝熱管内の洗浄方法の説明図である。
【図2】実施の形態に係る熱交換器の伝熱管内の洗浄方法の説明図である。
【図3】図5のIII−III線断面図である。
【図4】図3の一部の拡大図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1〜5を参照して実施の形態について説明する。
【0022】
図1の通り、熱交換器1内に管板2が設けられ、該管板2に多数の伝熱管3の一端が溶接により固着されている。図3の通り、伝熱管3は管板2を貫通しており、その一端側の開口が熱交換器1の水室4に向って開放している。図5の通り、伝熱管3は、この実施の形態では千鳥配列にて配列されている。
【0023】
この伝熱管3内を高圧水で洗浄する場合、図3,4の通り、ガイド部材10を洗浄対象伝熱管3(3A)に臨むように配置し、該ガイド部材10内に配置しておいたノズル5をガイド部材10から伝熱管3A内に挿入し、フレキホース6を介して供給される高圧水をノズル5の噴出孔5aから噴出する。
【0024】
このガイド部材10は、ノズル挿通孔11aを有した略々円筒状の本体部11と、該本体部11の先端側に設けられたブロック部12と、該ブロック部12から突出する複数本(この実施の形態では2本)のアンカーピン13とを有する。ブロック部12の先端面は本体部11の先端面と面一状である。アンカーピン13は該ブロック部12から前方に向って突設されている。このアンカーピン13は、伝熱管3の内径よりも若干小さい外径を有している。アンカーピン13の先端側は、伝熱管3内に差し込み易くするために半球状となっている。
【0025】
本体部11の後端側にはガイドチューブ14の先端側が連結されている。このガイドチューブ14の後端側は、図2の通り、フレキホース駆動装置20のマシンフレーム21に連結されている。
【0026】
フレキホース駆動装置20は、フレキホース6を挟持する1対のローラ22を備えており、該ローラ22をモータで駆動することによりフレキホース6を進退させるように構成されている。この実施の形態では、下ローラと上ローラでフレキホースを挟み、下ローラに連結したエアモータ(図示略)で挿入・引抜を行う。上ローラに連結したエアシリンダ(図示略)が作動することにより上ローラが下ローラに押し付けられ、フレキホースが挟みつけられるよう構成されている。
【0027】
フレキホース駆動装置20には、フレキホース6を把持してフレキホース6を停止状態に保つことができるチャック23(この実施の形態ではエアハンドよりなる。)が設けられている。これはフレキホースを挿入・引抜していないときフレキホースが動かないように、またフレキホースが自走しないようにするためのものである。フレキホース6には、色の異なるテープなどの目印(図示略)が所定位置に巻き付け等により付着されており、フレキホース駆動装置20にはこの目印を検知してフレキホース6の送り出し量からノズル5の位置を検知するためのカラーセンサ24が設けられている。
【0028】
各フレキホース6は、各フレキホース駆動装置20を通って長く延在し、その末端が高圧三方弁ユニット30の三方弁31の流出ポートに接続されている。三方弁31の流入ポートには高圧水の元管33が接続されている。三方弁31の第3ポートには圧力調整弁34が接続されている。これにより、一方のフレキホース6への高圧水の供給が停止した状態でも、もう一方のフレキホース6の高圧水圧力の変動が防止される。圧力調整弁34にノズルと同じだけの差圧を持たせることにより、高圧系統の圧力低下を防止することができる。
【0029】
この実施の形態では、装置に駆動系はエアで行い制御系・操作系・センシングは電気で行うものであり、これらの制御を行うように制御盤40が設置されている。
【0030】
図2に示す通り、制御盤40に対し水室4内のエアスイッチ41及びペンダントスイッチ42と、遠隔非常停止スイッチ43とが接続されている。この制御盤40からの信号によりフレキホース駆動装置20及び高圧三方弁ユニット30が操作される。ペンダントスイッチは、作業員が装置のマニュアル操作を行うためのものであり、非常停止ボタンも付いている。
【0031】
エアスイッチ41はガイド部材10の近傍に配置されている。このエアスイッチ41を操作することにより、装置を作動させ、フレキの挿入・引抜と高圧水供給・停止の一連の作業を実行することができる。
【0032】
伝熱管3の洗浄を行うに際しては、図1,3,4の通り、ガイド部材10内にノズル5を配置しておく。水室4内に入り込んだ作業者がこのガイド部材10を洗浄対象伝熱管3Aに近づけ、アンカーピン13を近接する伝熱管3Bに差し込みつつガイド部材10の本体部11の先端を洗浄対象伝熱管3Aに当接させる。これにより本体部11のノズル挿通孔11aと伝熱管3Aの内孔とが同軸状に配置されたガイド部材固定設置状態となる。
【0033】
この状態で、ノズル5に高圧水を供給し、ノズル5の噴出孔5aから高圧水を噴出させると共に、フレキホース駆動装置20によってフレキホース6を送り出す。これにより、ノズル5が高圧水を噴出しながら、ガイド部材10から洗浄対象伝熱管3A内に移動し、さらに該伝熱管3A内を前進する。フレキホース6が所定長さだけ送りだされたことが検知されると、フレキホース駆動装置20によってフレキホース6を後退させる。これにより、ノズル5は高圧水を噴出しながら伝熱管3A内を後退する。ノズル5がガイド部材10内にまで後退したならば、フレキホース6を停止させると共に、高圧水の噴出を停止する。
【0034】
以上の手順により、1本目の伝熱管3の洗浄が終了するので、ガイド部材10を洗浄が終了した伝熱管3の隣りの伝熱管3に移し、同様にして当該伝熱管3の洗浄を行う。この工程を次々と行い、すべての伝熱管3の洗浄を行う。
【0035】
この実施の形態によると、ガイド部材10の本体部11を洗浄対象伝熱管3Aと同軸状に当接させた固定設置状態にてノズル5を前進させるので、ノズル5から高圧水が噴出している状態であってもノズル5を伝熱管3Aにスムーズに挿入することができる。このため、伝熱管の洗浄作業効率が向上する。また、高価なロボット設備が不要であり、洗浄コストも安い。ノズル5の速度を定速とすることにより、洗浄状態が均一でムラのないものとなる。
【0036】
この実施の形態では、高圧水を噴出しているノズル5をガイド部材10から伝熱管3A内に移動させ、また高圧水を噴出しているノズル5を伝熱管3A内からガイド部材10内に引き抜くようにしているので、伝熱管3Aの末端部も十分に洗浄される。また、ガイド部材10内でノズル5から高圧水が噴出しても、この水が周囲に飛び散ることはない。そのため、水室4内の作業環境も良好である。
【0037】
この実施の形態では、ガイド部材10に2個のアンカーピン13を設けているので、ガイド部材10の固定設置状態が安定したものとなる。
【0038】
この熱交換器の伝熱管内の洗浄方法によると、
(1)フレキホースの誤握による事故を防ぐことができる。
(2)フレキホースの引抜作業の負荷を大幅に低減でき、劣悪な環境での重労働を低減することができる。
(3)挿入・引抜をモータで定速で行い、洗浄状態を均一に品質の良いものとすることができる。
等の種々の優れた効果が奏される。
【0039】
なお、この実施の形態では、図4の通り、ノズル5の噴出孔5aが前進方向に対し後方を指向するように設けられている。そのため、高圧水を噴出孔5aから噴出させると、ノズル5には推進力が与えられる。そのため、ノズル5の前進時にはフレキホース駆動装置20のチャック23を解除するだけでノズル5を前進させるにようにしてもよい。
【0040】
この実施の形態では、高圧三方弁ユニット30に2系統のフレキホース6を接続し、水室4内において2個のガイド部材10によって2本の伝熱管3を同時に洗浄できるようにしているが、フレキホース6の系統数は1又は3以上であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 熱交換器
2 管板
3 伝熱管
4 水室
5 ノズル
6 フレキホース
10 ガイド部材
13 アンカーピン
20 フレキホース駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管板に露呈した伝熱管の開口から該伝熱管内にノズルを挿入し、該ノズルの後端に連なるフレキホースから供給される洗浄水を該ノズルから伝熱管内面に向けて噴出させると共に、該フレキホースを進退させることによりノズルを進退させて伝熱管内面を洗浄する方法であって、
洗浄対象伝熱管に該ノズルを挿入するに際し、ガイド部材を洗浄対象伝熱管の開口に臨ませて配置し、
該ガイド部材から前記ノズルを該洗浄対象伝熱管内に挿入するようにした熱交換器の伝熱管内の洗浄方法において、
該ガイド部材にアンカーピンを設けておき、
前記管板における洗浄対象伝熱管の近傍の伝熱管の開口に該アンカーピンを差し込むことにより該ガイド部材の配置を行うことを特徴とする熱交換器の伝熱管内の洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、前記ガイド部材に複数個のアンカーピンが設けられており、各アンカーピンをそれぞれ別の伝熱管開口に差し込むことを特徴とする熱交換器の伝熱管内の洗浄方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記フレキホースをフレキホース進退装置に設けられた1対のローラで挟持し、該ローラでフレキホースを進退させると共に、
フレキホースに目印を設けておき、該目印をセンサで検知してフレキホースの進退を制御することを特徴とする熱交換器の伝熱管内の洗浄方法。
【請求項4】
請求項3において、前記フレキホース進退装置にフレキホースを把持可能なチャックが設けられており、
洗浄待機時にフレキホースを該チャックで把持して固定することを特徴とする熱交換器の伝熱管内の洗浄方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記ノズルを前記ガイド部材内に配置し、
該ガイド部材を洗浄対象伝熱管の開口に臨ませて配置し、
該ノズルから高圧水を噴出させると共にノズルの前進を開始させ、高圧水を噴出しているノズルを該伝熱管内に挿入することを特徴とする熱交換器の伝熱管内の洗浄方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
高圧水を噴出している前記ノズルを洗浄対象伝熱管から引き抜いた後にノズルからの高圧水噴出を停止することを特徴とする熱交換器の伝熱管内の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145273(P2012−145273A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4093(P2011−4093)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(390027188)栗田エンジニアリング株式会社 (26)