説明

熱交換器の製造方法

【課題】熱交換器の熱交換性能の低下を抑制する熱交換器の製造方法を提供する。
【解決手段】各突起部24間において各チューブ20の外壁面20aに各コルゲートフィン34の第二の山部36aを接触させてなる熱交換器の製造方法において、突起部24間において各チューブ20の外壁面22aと各コルゲートフィン34の第一の山部36aとが対向するように、各チューブ20と各コルゲートフィン34とを交互に整列させる整列工程と、整列工程の後、各チューブ20を互いに近づけながら、各チューブ20の内部を流れるエンジン冷却水の流通方向に各チューブ20を振動させる加振工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のチューブと複数の波形フィンとを交互に積層させることにより製造される熱交換器が知られている(特許文献1を参照)。この熱交換器の各チューブの外壁面上に、内部を流れる熱交換媒体の流通方向に沿って複数の突起部が並んでいる。各波形フィンは、当該流通方向に沿って並ぶ複数の山部を有している。この熱交換器では、これら各チューブと各波形フィンとを交互に積層することで、突起部間において各チューブの外壁面に波形フィンの山部を接触させている。このような構造の熱交換器によれば、当該フィンを空気などの流体が通過する際に、当該流体が撹拌されて、熱交換器の熱伝達効率が向上する。
【0003】
特許文献1に開示されている熱交換器とは別に、複数のチューブと複数の波形フィンとが交互に積層されてなる熱交換器の製造方法として、各波形フィンの山部が各チューブの外壁面に対向するように各チューブと各波形フィンとを交互に整列させた後、各波形フィンの山部を各チューブの外壁面に接触させるべく、各チューブを互いに近づけることで熱交換器を製造する熱交換器の製造方法が知られている。(特許文献2を参照)。この製造方法によれば、各チューブの外壁面と各波形フィンの山部の接触を確実なものとすることができる。これにより、熱交換器の熱交換性能が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−340686号公報
【特許文献2】特開平7−55379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の熱交換器を特許文献2に記載されているような製造方法によって製造すると、各チューブと各波形フィンとを交互に整列させてから、各チューブを互いに近づけるときに、波形フィンやチューブの寸法ばらつきにより、突起部間においてチューブの外壁面に波形フィンの山部が接触せずに、チューブの突起部に乗り上げられることがある。この状態のまま、各チューブ同士を近づけると、突起部に乗り上げた波形フィンの谷部の周囲にチューブから過度の荷重が作用して、波形フィンが変形したり、当該山部に隣接する谷部がチューブの外壁面から浮き上がった状態となったりする。波形フィンが変形したり、波形フィンの山部がチューブの外壁面から離間していると、波形フィンを介した熱交換率が低下し、熱交換器の熱交換性能が低下するという問題が発生する。
【0006】
本発明は、熱交換器の熱交換性能の低下を抑制する熱交換器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、内部を流れる熱交換媒体の流通方向に沿って複数の突起部が外壁面上に並ぶチューブと、流通方向に沿って複数の山部並ぶ波形フィンとを交互に積層することで、突起部間において各チューブの外壁面に波形フィンの山部を接触させてなる熱交換器の製造方法において、
突起部間において各チューブの外壁面と波形フィンの山部とが対向するように、各チューブと各波形フィンとを交互に整列させる整列工程と、
整列工程の後、各チューブを互いに近づけながら、流通方向に各チューブを振動させる加振工程と、を含むことを特徴としている。
【0008】
この発明では、複数のチューブと複数の波形フィンとを交互に整列させた後、各波形フィンの山部を各チューブの外壁面に接触させるように各チューブを互いに近づけることで、チューブの外壁面への波形フィンの山部の接触を確実なものとしている。なお、この発明では、各チューブを近づける際に突起部間において各チューブの外壁面に波形フィンの山部が接触するように、整列工程において、予め突起部間における当該外壁面と波形フィンの各谷部とが対向するように複数のチューブと複数の波形フィンとを交互に整列させている。
【0009】
しかし、突起部間において各チューブの外壁面と波形フィンの山部とが対向するように、各チューブと各波形フィンとを交互に整列させたとしても、上述したようにチューブや波形フィンとに寸法ばらつきが発生していると、突起部間において当該外壁面に波形フィンの山部が接触せずに、当該谷部が突起部に乗り上がってしまうという現象が発生することがある。
【0010】
本願出願人が、この波形フィンの山部の突起部への乗り上げ現象を詳細に観察したところ、突起部には、山部との接触により発生する摩擦力により山部をその場に留める固定領域と、山部を突起部から滑落させて、突起部間においてチューブの外壁面に山部を自動的に移動させる滑落領域とがあるという知見を得た。固定領域に谷部が接触すると当該山部は突起部に乗り上がった状態となり、滑落領域に山部が接触すると、当該山部は、突起部から滑落して、突起部間に自動的に移動することとなる。つまり、突起部に波形フィンの山部が接触する場合であっても、突起部の滑落領域に当該山部を接触させるようにすれば、突起部への波形フィンの山部の乗り上げが抑制されることとなる。
【0011】
そこで、請求項1記載の発明は、特に、整列工程によって各チューブと各波形フィンとを交互に整列させた後、各チューブを互いに近づけながら、熱交換媒体の流通方向に各チューブを振動させる加振工程を有している。この発明では、このように各チューブを振動させているため、波形フィンの山部と、チューブの突起部との相対位置を変化させることができ、突起部における滑落領域への当該山部の接触機会を極力多くすることができる。このように突起部における滑落領域への当該山部の接触機会の増加によれば、たとえチューブや波形フィンに寸法ばらつきが発生していたとしても、当該山部を突起部から滑落させることができ、その結果、当該山部の突起部への乗り上げを低減させることが可能となる。
【0012】
また、仮に波形フィンの山部が突起部の固定領域に接触してしまった場合であっても、波形フィンの山部と、チューブの突起部との相対位置の変化により、当該山部を固定領域から滑落領域にずらすことができ、当該谷部の突起部への乗り上げを低減させることが可能となる。
【0013】
以上説明した加振工程によれば、波形フィンにおける谷部の突起部への乗り上げを低減させることができ、波形フィンの変形や、チューブの外壁面への波形フィンの非接触状態の発生による熱交換器の熱交換性能の低下を極力抑制することができる。
【0014】
ここで、各チューブを近づければ近づけるほど、波形フィンの谷部とチューブの外壁面との接触部に発生する摩擦力は大きくなる。接触部に発生する摩擦力が所定の値を上回ると、たとえ加振工程において各チューブを振動させたとしても波形フィンとチューブとの相対位置の変化を起こすことが不能となることがある。さらに、製品毎にチューブを近づける際の各チューブの接近速度を変更するものにおいて、各チューブ同士の接近速度が大きくなると、上記摩擦力の増大する速度も大きくなる。摩擦力の増大速度が大きくなると、相対位置の変化が不能となるまでの時間が短くなるため、波形フィンの山部とチューブとの相対位置変化可能な時間が短くなる。たとえ、加振工程において、各チューブを振動させたとしても、その振動の振動数が小さいと、両者の相対位置を変化させる機会が少なくなり、波形フィンにおける山部の突起部への乗り上げの低減効果を十分に発揮させることができない可能性がある。
【0015】
このことに対し、請求項2記載の発明では、製品毎に各チューブを近づける際の各チューブの接近速度を変更する加振工程において、各チューブを互いに近づける際の各チューブの接近速度が大きいほど、より大きな振動数で各チューブを振動させる。これによれば、各チューブの接近速度を大きくすることにより、両者の相対位置変化可能な時間が短くなったとしても、両者の相対位置を変化させる機会をより多くすることができる。したがって、波形フィンにおける山部の突起部への乗り上げ低減効果をより確実に発揮させることができる。
【0016】
熱交換媒体の流通方向に各チューブを振動させる場合、当該振動の振幅が各突起部のピッチの長さ以上となっていると、チューブと、波形フィンとの相対位置の変化量が、各突起部のピッチの長さ以上となる可能性がある。当該相対位置の変化量が各突起部のピッチの長さ以上となると、波形フィンの山部が隣の突起部に再び乗り上がってしまうなどの問題が発生する可能性がある。
【0017】
このことに対し、請求項3記載の発明では、加振工程において、突起部のピッチよりも短い振幅で各チューブを振動させる。このことによれば、両者の相対位置の変化量を各突起部のピッチの長さ以内とすることが可能となるため、波形フィンの山部が隣の突起部に再び乗り上がってしまうことを抑制することができる。
【0018】
請求項4や5に記載の発明のように、各チューブと各フィンとを交互に整列させた後に、加振工程において各チューブを振動させる際、各チューブの振動が同位相となるように各チューブを振動させてもよいし、波形フィンを挟んで隣り合うチューブの振動が逆位相となるように各チューブを振動させてもよい。
【0019】
特に、請求項6に記載されているように、各チューブにおける各突起部の表面形状が球面状となっており、各チューブの外壁面において波形フィンを挟んで隣り合うチューブの突起部間と対向するとともに、波形フィンの山部が接触する部位の表面形状が平坦となっている熱交換器の場合、特に、加振工程において、波形フィンを挟んで隣り合うチューブの振動が逆位相となるように各チューブを振動させると、突起部に乗り上がった波形フィンの山部を積極的に突起部間に移動させることができる。
【0020】
突起部に波形フィンの山部が接触し、外壁面において平坦となっている部位に波形フィンの山部が接触する状態では、突起部の表面形状が球面状であり、当該部位の表面形状が平坦であることから、突起部と山部とが接触する接触部の面積は、当該平坦な面と山部とが接触する接触部の面積よりも小さくなる。
【0021】
この状態で、波形フィンを挟んで隣り合うチューブの振動が逆位相となるように各チューブを振動させると、当該平坦な面と山部とが接触する接触部に発生する摩擦力が突起部と山部とが接触する接触部に発生する摩擦力より上回ることとなる。
【0022】
このため、波形フィンは、平坦な面と山部とが接触する接触部を有するチューブに引きずられて、そのチューブとともに移動することとなる。このように当該チューブの移動に引きずられて移動する波形フィンにより、突起部の固定領域に乗り上がっていた当該波形フィンの山部は当該突起部の滑落領域に移動することとなる。このような過程を経て滑落領域に移動した当該山部は、突起部から滑落して、突起部間に自動的に移動することとなる。
【0023】
以上説明したように、上述したような構成を有する熱交換器によれば、加振工程において、波形フィンを挟んで隣り合うチューブの振動が逆位相となるように各チューブを振動させることによれば、固定領域に乗り上がった波形フィンの山部を積極的に突起部間に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態による製造方法によって製造された熱交換器の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す熱交換器のコア部を拡大した拡大図である。
【図3】図1に示す熱交換器のコア部における分解斜視図である。
【図4】(a)はコア部を組立てるコア部組立工程のうち、整列工程の一部を説明する説明図であり、(b)はコア部組立工程のうち、整列工程の一部を説明する説明図であり、(c)はコア部組立工程のうち、加振工程を説明する説明図であり、(d)はコア部組立工程のうち、固定工程を説明する説明図である。
【図5】各チューブに振動を加えたときの作用を説明する説明図である。
【図6】チューブの突起部とコルゲートフィンの折曲部との関係を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態による製造方法において、各チューブに振動を加えたときの作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1から図6を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態による製造方法によって製造された熱交換器の概略構成図である。図2は、熱交換器のコア部を拡大した拡大図である。図3は、熱交換器のコア部における分解斜視図である。本実施形態では、図1に示す熱交換器10は、自動車に搭載される空調装置のヒータとして用いられる。
【0027】
熱交換器10は、空気との熱交換により、熱交換媒体としてのエンジン冷却水を冷却する金属製のコア部12、コア部12に取り付けられた例えば樹脂製の一対のタンク14a、14bから構成されている。タンク14aには、外部からエンジン冷却水を流入させる流入口16が設けられ、タンク14bにはコア部12を介してタンク14bに流入したエンジン冷却水を外部に流出させる流出口18が設けられている。
【0028】
コア部12は、両タンク14a、14bの間に配置されている。コア部12は、内部をエンジン冷却水が流通するようになっており、一方のタンク14aに流入したエンジン冷却水を他方のタンク14bに導く。自動車の走行風がコア部12を通過することにより、コア部12の内部を流通するエンジン冷却水が空気と熱交換され冷却される。
【0029】
コア部12は、複数のチューブ20、複数のコルゲートフィン34および一対のコアプレート30a、30bから構成されている。本実施形態では、40個のチューブ20と36個のコルゲートフィン34と一対のコアプレート30a、30bからコア部12が構成されている。各チューブ20と各コルゲートフィン34とは、交互に積層される。各チューブ20は、偏平形状を呈しており、内部をエンジン冷却水が流通する。図1に示すように、各チューブ20は、所定のピッチで所定の方向に並んで配置される。エンジン冷却水は、各チューブ20の積層方向と交差する方向に流通する。
【0030】
図2、図3に示すように、各チューブ20は、積層方向の一方の外壁面22aに、積層方向に向かって突出する複数の突起部24を有する。突起部24の表面形状は球面状となっている。表面形状が球面状である突起部24は、エンジン冷却水の流通方向に沿って複数並べられ、かつ当該流通方向と交差する方向に沿って複数並べられている。突起部24は、各チューブ20の外壁面22aの一部をプレスなどで突出させるようにして形成されていてもよいし、平坦な外壁面22a上に別部材の突起部24を溶接などで固定させることにより形成されていてもよい。また、流通方向に沿って並ぶ突起部24のピッチは、後述するコルゲートフィン34の第一の山部36aと隣接する第一の山部36aとのピッチとほぼ一致するように設定されている。なお、本実施形態では、この突起部24のピッチは、約1.7mmとなっており、コルゲートフィン34の第一の山部36aのピッチも約1.7mmとなっている。
【0031】
各チューブ20の積層方向の他方の外壁面22bは、突起部24などを有しておらず、平坦な面となっている。他方の外壁面22bは、コルゲートフィン34を挟んで隣り合うチューブ20の突起部24と対向している。
【0032】
図1に示すように、一対のコアプレート30a、30bは、各チューブ20のエンジン冷却水流通方向の両端部26a、26bに設けられる。コアプレート30aは、各チューブ20の一方の端部26aが嵌められる嵌入孔32を有する。また、コアプレート30bも、コアプレート30aと同様に、各チューブ20の他方の端部26bが嵌められる嵌入孔32を有する。各嵌入孔32は、各チューブ20の積層方向に沿い、かつ所定のピッチで設けられる。各嵌入孔32のピッチは、各チューブ20のピッチとほぼ同じとなるように設定されている。コアプレート30aは、タンク14aに形成されている開口部を覆うようにタンク14aに取り付けられ、コアプレート30bは、タンク14bに形成されている開口部を覆うようにタンク14bに取り付けられる。
【0033】
図1および図2に示すように、コルゲートフィン34は、波形状を呈しており、一枚の金属製の板部材を折り曲げることによりなっている。コルゲートフィン34は、エンジン冷却水の流通方向に沿って交互に並ぶ第一の山部36aと第二の山部36bとを有する。第二の山部36bは、積層方向の一方側(図中上方)に突出するように形成され、第一の山部36aは積層方向の他方側(図中下方)に突出するように形成される。コルゲートフィン34を積層方向およびエンジン冷却水流通方向と交差する方向から見たとき、本実施形態のコルゲートフィン34は、第二の山部36bから第一の山部36aを経て次の第二の山部36bまでの形状が略三角形状となっている。コルゲートフィン34が各チューブ20間に配置されることにより、各チューブ20の第二の山部36bは、各チューブ20の他方の外壁面22bに接触し、各チューブ20の第一の山部36aは、突起部24間において各チューブ20の一方の外壁面22aに接触する。それぞれの第一の山部36a、第二の山部36bがチューブ20と接触することにより、チューブ20とコルゲートフィン34とが熱的に接続される。図1、図2には示していないが、コルゲートフィン34の第一の山部36aと第二の谷部36bとの間の平坦部38には、平坦部38の一部を切り起こすことによりなるルーバーが形成されている。
【0034】
このように構成される熱交換器10では、エンジンが駆動することにより加熱されたエンジン冷却水が、図示しない配管を通って流入口16よりタンク14aに流入する。するとタンク14aに流入したエンジン冷却水は、各チューブ20の内部に流入する。各チューブ20に流入したエンジン冷却水は、タンク14bに向ってチューブ20内を流れる。この際、エンジン冷却水の熱は、チューブ20に接触しているコルゲートフィン34に伝達する。そのコルゲートフィン34に伝達した熱は、コルゲートフィン34からコア部12を通過する空気中に放熱される。空気中に放熱され冷却されたエンジン冷却水は、タンク14bに流入して、流出口18より再びエンジンに向かって排出される。
【0035】
以上、熱交換器10の構造について説明した。次に、この熱交換器10を製造する過程について説明する。
【0036】
熱交換器10は、コア部組立工程、コアプレート嵌め込み工程、ロウ付工程、および最終組立工程を経て製造される。
【0037】
(コア部組立工程)
コア部組立工程は、各チューブ20と各コルゲートフィンとを適正な位置関係となるようにして、コア部12を組立てる工程である。コア部組立工程では、各チューブ20と各コルゲートフィン34とを交互に積層させることによりコア部12が組み立てられる。
【0038】
(コアプレート嵌め込み工程)
コアプレート嵌め込み工程は、各チューブ20の端部26a、26bのそれぞれに、コアプレート30a、30bを嵌め込む工程である。コアプレート嵌め込み工程では、所定の治具でコア部12を固定した状態のまま、各チューブ20の端部26aにコアプレート30bの嵌入孔32を嵌め込み、各チューブ20の端部26bにコアプレート30bの嵌入孔32を嵌め込む。
【0039】
(ロウ付工程)
ロウ付工程は、コアプレート30a、30bが嵌め込まれたコア部12に熱を加えて、チューブ20とコルゲートフィン34との接触部、チューブ20とコアプレート30a、30bとの接触部をロウ付して各部材20、34、30a、30bを互いに接合する工程である。ここで、チューブ20、コルゲートフィン34、コアプレート30a、30bの表面には、母材よりも融点が低く、接触している部材と接合可能な金属材料としてのロウ材が予め塗布されている。ロウ付工程では、各部材20、34、30a、30bに塗布されたロウ材のみが溶融するように、コア部12を加熱する。その後、各部材20、34、30a、30bの各接触部分に溶融したロウ材が侵入したら溶融ロウ材を凝固させるためにコア部12全体を冷却する。これにより、溶融ロウ材が凝固し、各部材20、34、30a、30b同士が接合される。
【0040】
(最終組立工程)
最終組立工程は、ロウ付されたコア部12にタンク14a、14bを組付ける工程である。最終組立工程では、一方のタンク14aの開口部がコアプレート30aによって塞がれるように、タンク14aをコアプレート30aに取り付け、もう一方のタンク14bの開口部がコアプレート30bによって塞がれるように、タンク14bをコアプレート30bに取り付ける。タンク14aとコアプレート30aとの接合、タンク14bとコアプレート30bとの接合は、周知の接合方法によってなされる。
【0041】
以上、熱交換器10の全体的な製造過程について説明した。次に、本実施形態の特徴であるコア部組立工程について、図4(a)〜(d)を用いて説明する。図4(a)〜(d)は、コア部組立工程における各工程を示している。コア部組立工程は、「整列」、「加振」および「固定」の三つの工程からなっている。図4(a)、(b)は「整列」、図4(c)は「加振」、図4(d)は「固定」の各工程に対応している。コア部組立工程は、コア部組立装置40によって実施される。
【0042】
各工程を説明する前に、上記四つの工程を実施するコア部組立装置40を説明する。コア部組立装置40は、把持装置42、駆動装置46、フィンガイド装置48および固定装置52などから構成されている。
【0043】
把持装置42は、各チューブ20を把持する装置である。把持装置42は、各チューブ20の端部26a、26bのそれぞれを把持する複数の把持部44を有する。各把持部44は、各チューブ20の積層方向、および各チューブ20のエンジン冷却水流通方向に駆動可能となっている。
【0044】
駆動装置46は、各把持部44を上記積層方向に駆動させるとともに、各把持部44にエンジン冷却水流通方向の振動を発生させる装置である。
【0045】
フィンガイド装置48は、各チューブ20間に配置されるコルゲートフィン34の両端部を保持する装置である。フィンガイド装置48は、複数のガイド部50を有する。各ガイド部50は、各コルゲートフィン34の両端部に対向するように、かつ各把持部44の間に配置される。各ガイド部50は、コルゲートフィン34を両端部から挟み込むことにより、コルゲートフィン34を保持する。また、各ガイド部50は、チューブ20の積層方向にも駆動可能となっている。各ガイド部50は、図示しない駆動装置によって駆動される。なお、各ガイド部50は、把持部44と独立して駆動可能となっている。
【0046】
固定装置52は、最終の固定工程で使用される装置であり、規定の寸法に組立てられたコア部12の寸法を維持する装置である。固定装置52は、二つの固定部54を有する。これら二つの固定部54は、積層方向両端部のチューブ20のさらに外側に配置される。各固定部54は、当該チューブ20に向かって駆動可能となっている。各固定部54は、図示しない駆動装置によって駆動される。
【0047】
以上、下記の各工程を実施するコア組立装置40の構成について説明した。次に、そのコア組立装置40を用いて実施する四つの工程について説明する。
【0048】
(整列工程)
整列工程は、各チューブ20と各コルゲートフィン34とを所定の位置に整列させる工程である。この整列工程では、図4(a)に示すように、各チューブ20の両端部26a、26bを把持部44に把持させることにより、各チューブ20を、所定のピッチで積層方向に整列させる。積層方向に整列された各チューブ20の外壁面22aは、同じ方向を向いている。なお、この工程での各チューブ20のピッチは、チューブ20の突起部24の先端から、その突起部24に対向して配置されるチューブ20の外壁面22bまでの距離が、コルゲートフィン34の積層方向の厚さよりも大きくなるように設定されている。また、この工程での各チューブ20のピッチは、完成品の規定寸法よりも広くなっている。
【0049】
各チューブ20を把持部44に把持させた後、図示しない搬送装置を用いて、コルゲートフィン34を各チューブ20の間に挿入させる。コルゲートフィン34は、第二の山部36bがチューブ20の外壁面22bと対向するとともに、第一の山部36aがチューブ20の外壁面22aと対向するように挿入される。なお、本実施形態では、この工程での各チューブ20のピッチは、約9.5mmとなっており、完成品の各チューブ20のピッチ(規定寸法)は、約5.2mmとなっている。
【0050】
さらに、この整列工程では、図4(b)に示すように、チューブ20とコルゲートフィン34とが整列された後、コルゲートフィン34の両端部に向かってガイド部50を駆動装置によって駆動させて、コルゲートフィン34を両端部から挟むことにより、突起部24間において各チューブ20の外壁面22aとコルゲートフィン34の第一の山部36aとが対向する位置にコルゲートフィン34を保持する。
【0051】
(加振工程)
加振工程は、各チューブ20のピッチを規定寸法とするとともに、各コルゲートフィン34を適正な位置に配置させるための工程である。加振工程では、図4(c)に示すように、各チューブ20のピッチが規定寸法となるように、駆動装置46が各把持部44を駆動する。具体的には、駆動装置46は、積層方向に並んだ各チューブ20がコア部12の中央部に向かうように各把持部44を駆動する。本実施形態では、所定の時間内に各チューブ20のピッチが規定寸法となるように各把持部44が駆動される。これにより、各チューブ20は、互いに近づくこととなる。また、本実施形態では、積層方向両端のチューブ20は、約25〜50mm/secの駆動速度で駆動される。以下この駆動速度をチューブ20同士の接近速度という。本実施形態では、各チューブ20がコア部12の中央部に向かって駆動されるので、積層方向両端部のチューブ20の接近速度が最も大きく、コア部12の中央部にあるチューブ20ほど接近速度は小さくなっている。この各チューブ20のピッチの規定寸法は、コルゲートフィン34の積層方向の厚さよりも短く設定されているので、各チューブ20のピッチが狭くなることにより、コルゲートフィン34は、各チューブ20により圧縮されることとなる。
【0052】
また、この工程では、図4(c)に示すように、各チューブ20が積層方向に駆動されている最中に駆動装置46は、把持部44を通じて、各チューブ20にエンジン冷却水流通方向の振動を加える。このことにより、各チューブ20はエンジン冷却水流通方向に振動する。また、本実施形態では、各チューブ20を240Hzまでの振動数、約0.8mmの振幅で振動させる。なお、振動の振幅は、突起部24のピッチよりも短い振幅となっている。本実施形態では、各チューブ20の振動が同位相となるように、各チューブ20を振動させている。さらに、本実施形態では、積層方向両端のチューブ20の接近速度に応じて、上記振動の振動数を変更する。具体的には、この接近速度が大きくなるほど、より大きな振動数で各チューブ20を振動させる。
【0053】
以下、この工程で実施されるコルゲートフィン34の圧縮とチューブ20への加振による作用について図5を用いて説明する。図5は、各チューブに振動を加えたときの作用を説明する説明図である。なお、図5の実線で示すチューブ20は、チューブ20に振動が加えられる前の状態を示しており、破線で示すチューブ20は、振動が加えられた直後の状態を示している。
【0054】
図5に示すように、積層方向に隣接する把持部44同士が近づくように駆動すると、各チューブ20同士が近づき、チューブ20のピッチは徐々に狭くなる。コルゲートフィン34の第一の山部36a同士のピッチ、第二の山部36b同士のピッチ、および平坦部38の長さが規定寸法どおり製造されていれば、各チューブ20のピッチが規定寸法まで各チューブ20が駆動されたとき、コルゲートフィン34は正規の位置に配置されることとなる。つまり、コルゲートフィン34の第一の山部36aの全ては、チューブ20の外壁面22aにおいて突起部24間に位置する部位に接触し、コルゲートフィン34の第二の山部36bの全ては、チューブ20の外壁面22bに接触することとなる。
【0055】
しかしながら、コルゲートフィン34が規定寸法どおり製造されておらず、第一、第二の山部36a、36b同士のピッチがばらついていたり、平坦部38の長さがばらついていたりすると、図5に示すように、いずれかの第一の山部36aが突起部24に乗り上がった状態のままチューブ20(図5の実線を参照)により圧縮されることがある。
【0056】
ここで、突起部24と第一の山部36aとの関係について、図6を用いて説明する。図6は、チューブの突起部とコルゲートフィンの折曲部との関係を説明するための説明図である。
【0057】
図6に示すように、突起部24は外壁面22aよりコルゲートフィン34に向かって突出している。本実施形態では、突起部24の表面形状は、球面状となっている。突起部24の先端部24aの外壁面22aに対する傾斜は、突起部24の先端部24aよりも外壁面22a側に位置する周辺部24bに比べなだらかとなっている。このような突起部24では、図6に示すように、突起部24の先端部24aに第一の山部36aが押し付けられると、先端部24aと第一の山部36a間に発生する摩擦力が発生する。一方、第一の山部36aが先端部24aに押し付けられると、先端部24aの表面に沿った方向の力が第一の山部36aに発生する。しかし、上述したように先端部24aの傾斜は比較的なだらかとなっているため、第一の山部36aに発生する当該力は上記摩擦力に比べ小さい。このため、第一の山部36aは突起部24の先端部24aに留まることとなる。以下、この先端部24aの領域を固定領域24aと称する。
【0058】
また、突起部24の周辺部24bに第一の山部36aが押し付けられると、先端部24aに押し付けられるのと同様に、周辺部24bと第一の山部36a間に摩擦力が発生する。そして、この場合の第一の山部36aにも、周辺部24bの表面に沿った方向の力が発生する。しかし、上述したように周辺部24bの傾斜は先端部24aに比べ大きいため、第一の山部36aに発生する当該力は上記摩擦力に比べて大きい。このため、第一の山部36aは周辺部24bに留まることができず、突起部24から滑落して、突起部24と隣接する突起部24との間に移動することとなる。以下、この周辺部24bの領域を滑落領域24bと称する。なお、上記固定領域24aは、滑落領域24bに比べ非常に面積が狭い。
【0059】
図5に示すように、第一の山部36aが突起部24の固定領域24aに押し付けられ、突起部24に乗り上がった状態のまま、コルゲートフィン34がチューブ20により圧縮されると、当該第一の山部36aの周囲に過度の応力が作用して、当該第一の山部36aの周囲が変形したり、当該第一の山部36aに隣接する第一の山部36aがチューブ20の外壁面22aから浮き上がったりする。このように、コルゲートフィン34が変形したり、第一の山部36aが外壁面22aから浮き上がったりすると、熱交換器10の熱交換性能が低下するおそれがある。
【0060】
そこで、本実施形態では、特に、各チューブ20のピッチを規定の寸法とすべく、各チューブ20同士を近づけながら、各チューブ20を振動をさせている。このように各チューブ20を振動させているため、コルゲートフィン34の第一の山部36aと、チューブ20の突起部24との相対位置を変化させることができ、突起部24における滑落領域24bへの当該第一の山部36aの接触機会を極力多くすることができる。このように突起部24における滑落領域24bへの当該第一の山部36aの接触機会の増加によれば、たとえチューブ20やコルゲートフィン34に寸法ばらつきが発生していたとしても、当該第一の山部36aを突起部24から滑落させることができ、その結果、当該第一の山部36aの突起部24への乗り上げを低減させることができる。(図5の破線のチューブ20と実線のコルゲートフィン34とを参照)。
【0061】
また、仮にコルゲートフィン34の第一の山部36aが突起部24の固定領域24aに接触してしまった場合であっても、コルゲートフィン34の第一の山部36aと、突起部24との相対位置の変化により、当該第一の山部36aを固定領域24aから滑落領域24bにずらすことができ、当該第一の山部36aの突起部24への乗り上げを低減させることが可能となる。
【0062】
以上説明したように、この加振工程によれば、コルゲートフィン34における第一の山部36aのチューブ20の突起部24への乗り上げを低減させることができ、コルゲートフィン34の変形や、チューブ20の外壁面22a、22bへのコルゲートフィン34の第一の山部36aの非接触状態の発生による熱交換器10の熱交換性能の低下を極力抑制することができる。
【0063】
ここで、各チューブ20の接近速度と、各チューブ20の振動の振動数との関係について詳細に説明する。各チューブ20のピッチが規定寸法となるように各チューブ20を近づければ近づけるほど、当該ピッチは狭くなるため、コルゲートフィン34の第二の山部36bとチューブ20の外壁面22bとの接触部に発生する摩擦力は大きくなる。この摩擦力が所定の値を上回ると、たとえ加振工程において各チューブ20を振動させたとしてもコルゲートフィン34とチューブ20との相対位置の変化を起こすことが不能となることがある。さらに、各チューブ20同士の接近速度が大きくなると、相対位置の変化が不能となるまでの時間が短くなるため、コルゲートフィン34の第一の山部36aと、チューブ20との相対位置変化可能な時間が短くなる。たとえ、加振工程において、各チューブ20を振動させたとしても、その振動の振動数が小さいと、両者34、20の相対位置を変化させる機会が少なくなり、コルゲートフィン34における第一の山部36aの突起部24への乗り上げの低減効果を十分に発揮させることができない可能性がある。
【0064】
このことに対し、本実施形態では、加振工程において、各チューブ20を互いに近づける際の各チューブ20の接近速度が大きいほど、より大きな振動数で各チューブ20を振動させている。これによれば、各チューブ20の接近速度を大きくすることにより、両者34、20の相対位置変化可能な時間が短くなったとしても、両者34、20の相対位置を変化させる機会をより多くすることができる。したがって、コルゲートフィン34における第一の山部36aの突起部24への乗り上げの低減効果をより確実に発揮させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、各突起部24のピッチよりも短い振幅で、各チューブ20を振動させている。このことによれば、コルゲートフィン34とチューブ20との相対位置の変化量を当該ピッチの長さ以内とすること可能となるため、第一の山部36aが隣接する突起部24に再び乗り上がるという問題が発生するのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、ガイド部50によってコルゲートフィン34を保持したまま、各チューブ20を振動させている。これによれば、コルゲートフィン34とチューブ20との動きをそれぞれ独立させることができるため、コルゲートフィン34とチューブ20との相対位置を確実に変化させることが可能となる。これにより、こるゲートフィン34における第一の山部36aの突起部24への乗り上げが低減される。
【0067】
また、本実施形態では、各チューブ20を振動させるタイミングを、各チューブ20のピッチを規定寸法となるように各チューブ20を積層方向に駆動させる最中としている。このため、各チューブ20を振動させる動作を追加したとしても熱交換器10の生産効率が低下することがない。
【0068】
(固定)
固定工程は、加振工程で規定寸法となったコア部12の状態を維持するためにコア部12を固定する工程である。固定工程では、図4(d)に示すように、チューブ20の積層方向両端よりもさらに外側に配置されている固定部54のそれぞれをチューブ20に押し付けて、コア部12を圧縮する。このことにより、加振工程で組立てられたコア部12の状態を維持する。その後、固定部54で固定されたコア部12は、そのまま、次のロウ付工程に移動される。
【0069】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態による製造方法は、第1実施形態による製造方法の変形例である。第2実施形態は、図7に示すように、チューブ20に加えられる振動の方向が第1実施形態と異なっている。この第2実施形態では、チューブ20に加えられる振動の方向を隣接するチューブ20の振動の方向が逆位相となっている。以下、異なった点だけを図7を参照しながら説明する。
【0070】
本実施形態では、図7に示すように、加振工程において、隣り合うチューブ20の振動が逆位相となるように各チューブ20を振動させている。図7は、チューブ20に振動が加えられたときのチューブ20とコルゲートフィン34の動きを示している。また、図7中の実線で示すチューブ20は、チューブ20に振動が加えられる前の状態を示しており、破線で示すチューブ20は、振動が加えられた直後の状態を示している。図7においてチューブ20は、実線における位置と破線における位置の間を往復するように振動する。
【0071】
隣り合うチューブ20の振動が逆位相となっていても、コルゲートフィン34の第一の山部36aと、チューブ20の突起部24との相対位置を変化させることができ、当該第一の山部36aの突起部24における滑落領域24bへの接触機会を極力多くすることができる。このように当該第一の山部36aの滑落領域24bへの接触機会の増加によれば、当該第一の山部36aを突起部24から滑落させことができ、当該第一の山部36aの突起部24への乗り上げを低減させることができる。
【0072】
突起部24の固定領域24aにコルゲートフィン34の第一の山部36aが接触し、外壁面22bにおいて平坦となっている部位にコルゲートフィン34の第二の山部36bが接触する状態では、突起部24の表面形状が球面状であり、第二の山部36bが接触する部位の表面形状が平坦であることから、当該第一の山部36aにおける接触部の面積は当該第二の山部36bにおける接触部の面積よりも小さくなる。この状態で、コルゲートフィン34を挟んで隣り合うチューブ20の振動が逆位相となるように各チューブ20を振動させると、第二の山部36bにおける接触部に発生する摩擦力が第一の山部36aにおける接触部に発生する摩擦力より上回ることとなる(図7を参照)。図7において、外壁面22bと第二の山部36bとの間に記載されている矢印は、外壁面22bと第二の山部36bとの接触部における摩擦力の方向と大きさを示しており、突起部24と第一の山部36aとの間に記載されている矢印は、突起部24と第一の山部36aとの接触部における摩擦力の方向と大きさを示している。図7から分かるように、外壁面22bと第二の山部36bとの接触部に発生する摩擦力の方が、突起部24と第一の山部36aとの接触部に発生する摩擦力よりも大きい。
【0073】
このため、コルゲートフィン34は、第二の山部36bと接触するチューブ20に引きずられて、そのチューブ20とともに移動することとなる。このように当該チューブ20の移動に引きずられて移動するコルゲートフィン34により、突起部24の固定領域24aに乗り上がっていた当該コルゲートフィン34の第一の山部36aは当該突起部24の滑落領域24bに移動することとなる。このような過程を経て滑落領域24bに移動した当該第一の山部36aは、突起部24から滑落して、突起部24間に自動的に移動することとなる。
【0074】
以上説明したように、上述したような構成を有する熱交換器10によれば、加振工程において、コルゲートフィン34を挟んで隣り合うチューブ20の振動が逆位相となるように各チューブ20を振動させることによれば、固定領域24aに乗り上がったコルゲートフィン34の第一の山部36aを積極的に突起部24間に移動させることができる。
【0075】
(その他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明した。本発明は、先の二つの実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0076】
先の二つの実施形態では、積層方向両端部のチューブ20の製品毎に設定される接近速度に応じて、各チューブ20に加える振動の振動数を決定していたが、同じ製品であっても各チューブ20の接近速度が異なる場合がある。この場合は、そのチューブ20の接近速度に応じて、各チューブ20に加える振動の振動数を異ならせてもよい。なお、この場合であっても、接近速度が大きければ大きいほど、チューブ20に加える振動の振動数を大きくするのは先の実施形態と同じである。
【0077】
先の二つの実施形態で説明した製造方法は、各チューブ20の外壁面22b上にも突起部24が形成されている熱交換器であっても適用することができる。また、先の二つの実施形態で説明した熱交換器10を、自動車用空調装置のコンデンサ、自動車に搭載されている内燃機関のラジエータ、または定置式の空調装置のコンデンサとして用いてもよい。
【0078】
また、各チューブ20に加える振動の方向は、先の実施形態のようにエンジン冷却水の流通方向に沿った方向とするのが好ましいが、チューブ20の積層方向であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 熱交換器、12 コア部、14a タンク、14b タンク、16 流入口、18 流出口、20 チューブ、22a 外壁面、22b 外壁面、24 突起部、24a 先端部(固定領域)、24b 周辺部(滑落領域)、26a 端部、26b 端部、30a コアプレート、30b コアプレート、32 嵌入孔、34 コルゲートフィン、36a 第一の山部、36b 第二の山部、38 平坦部、40 コア部組立装置、42 把持装置、44 把持部、46 駆動装置、48 フィンガイド装置、50 ガイド部、52 固定装置、54 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を流れる熱交換媒体の流通方向に沿って複数の突起部が外壁面上に並ぶチューブと、前記流通方向に沿って複数の山部が並ぶ波形フィンとを交互に積層することで、前記突起部間において前記各チューブの前記外壁面に前記波形フィンの前記山部を接触させてなる熱交換器の製造方法において、
前記突起部間において前記各チューブの前記外壁面と前記波形フィンの前記山部とが対向するように、前記各チューブと前記各波形フィンとを交互に整列させる整列工程と、
前記整列工程の後、前記各チューブを互いに近づけながら、前記流通方向に前記各チューブを振動させる加振工程と、を含むことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項2】
前記加振工程では、製品毎に前記各チューブを近づける際の前記各チューブの接近速度を変更しており、前記各チューブの接近速度が大きいほど、より大きな振動数で前記各チューブを振動させることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項3】
前記加振工程では、前記突起部のピッチよりも短い振幅で前記各チューブを振動させることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項4】
前記加振工程では、前記各チューブの振動が同位相となるように前記各チューブを振動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項5】
前記加振工程では、前記波形フィンを挟んで隣り合う前記チューブの振動が逆位相となるように前記各チューブを振動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
前記各チューブにおける前記各突起部の表面形状は球面状となっており、前記各チューブの前記外壁面において前記波形フィンを挟んで隣り合う前記チューブの前記突起部間と対向するとともに、前記波形フィンの前記山部が接触する部位の表面形状は平坦となっており、
前記加振工程では、前記波形フィンを挟んで隣り合う前記チューブの振動が逆位相となるように前記各チューブを振動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102952(P2012−102952A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253070(P2010−253070)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)