説明

熱交換器の設置方法

【課題】熱交換管の配設パターンを崩すことなく、熱交換器本体を簡単に設置する。
【解決手段】先ず、地上において、コイル状に巻かれた熱交換管12をコイル面に沿う方向ににずらして展延し、連続する複数のループ18が並んだ巻き部16を形成すると共に、巻き部16に接続する熱交換管12をループ18の並び方向に沿わせて延在させて線状部20を形成する。巻き部16のループ18と該ループ18の下側に配置された線状部20とを保持具26で連結して、該ループ18が位置決めされた熱交換器本体14を構成する。熱交換器本体14をループ18のループ面を立てた姿勢で溝32に設置し、溝32を埋め戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中熱ヒートポンプシステムを構成し、地中に埋設される熱交換器の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中熱を利用した地中熱ヒートポンプシステムが、省エネや低環境負荷の観点から注目されている。このような地中熱ヒートポンプシステムは、地中に埋設した熱交換管からなる熱交換器に、水やグリコール系やアルコール系等の熱媒を循環させて、この熱媒を地中で熱交換させることで、地中から熱を取り出したり、地中に熱を放出するようになっている。
【0003】
従来、地中に垂直方向に数十〜数百mの深さで掘削して熱交換器を配設する垂直埋設法が行われてきたが、掘削費用が高価であるため、1m〜3m程度の深さに平面状に掘削して、熱交換器を水平方向に配置する水平埋設法が検討されている。例えば水平埋設法において、熱交換器は、可撓性を有する樹脂パイプからなる熱交換管を、所要の広さおよび深さで掘削された穴に所定パターンで配設し、熱交換管の配設パターンを崩さないように埋め戻すことで地中に設置される。ここで、熱交換管は、コイル状に巻かれた状態で提供されるので、コイル状に巻かれた熱交換管のループを順番にずらすように広げて、熱交換管のループが互いに一部重なるように並べる配設パターンが、熱交換管の敷設作業を効率よく行うことができるから多く採用されている。しかし、熱交換管の各ループの直径は、コイル状態での巻き癖の程度によって異なり、さらに施工時の外気温によって巻き癖の強さや戻り量も変わってきてしまうため、施工される管の長さは施工の時期や施工者によって影響を受ける。熱交換管の配設パターンや長さにばらつきがあると、地中において所要の熱交換効率を確保することができず、地中熱ヒートポンプシステムが所望の性能を発揮できないおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1に開示の熱交換器は、管に所定間隔で識別部を設け、管を管台に複数設けられた溝部に、識別部が直線的になるように位置合わせした後に固定し、管を連続する複数のループがループ面と略平行な方向に配置されている。このように、特許文献1の熱交換器は、管を管台で固定することで、熱交換管の配設パターンや長さを一定に保つようになっている。また、特許文献1には、管に設けた識別部を所定位置に合わせて上下からシート状固定部材で挟むことで、管を支持する別の熱交換器も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−185599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の熱交換器は、管台に設けられた溝部の間隔の範囲内でしか管のループピッチを設定することができず、現場に応じた柔軟な管の配設パターンにできないので使い勝手が悪い。また、管台は、管を支持可能な剛性を有する構成であると共に長尺であるので、搬送や設置作業において嵩張り、取り扱い性に難がある。特許文献1に開示の別の熱交換器は、管をシート状固定部材で挟んで固定すると、管の遣り替えを行うことができないので、施工の柔軟性を損なうことになり、これも使い勝手が悪い。
【0007】
すなわち本発明は、従来の技術に係る熱交換器の設置方法に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、設置作業が簡易で、所望の熱交換効率が得られる熱交換器の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の熱交換器の設置方法は、
地中熱ヒートポンプシステムに用いられ、地中に埋設される熱交換器の設置方法であって、
地上において、コイル状に巻かれた熱交換管をコイル面に沿う方向にずらして展延し、連続する複数のループが並んだ巻き部を形成すると共に、巻き部におけるループの並び方向一端に繋がる熱交換管を該巻き部におけるループの並び方向他端に向けて、ループ面を立てた姿勢においてループの上側または下側を通るように該並び方向に沿って延在させて線状部を形成し、
前記ループを構成する熱交換管と前記線状部を構成する熱交換管とを保持具で連結して、該ループが位置決めされた熱交換器本体を形成し、この熱交換器本体を埋設するようにしたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、保持具の線状部に繋げる位置を変更することで、保持具によるループの間隔調節を柔軟かつ簡単に行うことができる。そして、得られた熱交換器は、巻き部のループが保持具で適切に位置合わせされるので、設計通りの熱交換を実現できる。また、巻き部のループを構成する熱交換管と線状部を構成する熱交換管とを保持具で連結するので、保持具の存在によって熱交換管本体におけるループの並び方向と直交する方向の幅が大きくならず、例えば熱交換器本体を溝に設置する場合に掘削土量や掘削手間を増やすこともなく、設置作業を簡単に行うことができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記熱交換器本体を収容可能な大きさで掘削された溝に、該熱交換器本体を前記ループのループ面を立てた姿勢で設置し、該溝を埋め戻すことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、熱交換器本体をループ面を立てた姿勢に変更しても、巻き部のループが保持具で適切に保持されているので、ループが位置ズレしない。また、保持具の存在によって熱交換管本体におけるループの並び方向と直交する方向の幅が大きくならず、溝の掘削土量や掘削手間を増やすこともなく、設置作業を簡単に行うことができる。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記熱交換器本体を前記線状部側から前記溝に挿入し、該線状部を下側にして熱交換器本体が溝に設置されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、巻き部のループを構成する熱交換管と線状部を構成する熱交換管とが保持具で連結されているので、線状部側から溝に挿入することで、ループ間が広がって溝の壁面に巻き部が引っ掛かることを防止できる。また、熱交換器本体は、線状部側が相対的に重くなるので、溝に挿入し易く、溝内において位置決めし易い。
【0011】
請求項4に係る発明では、前記熱交換器本体は、前記溝の掘削完了までに形成されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、溝の掘削を完了したらすぐに熱交換器本体を溝に設置することができるので、溝の崩落の影響をうけ難い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る熱交換器の設置方法によれば、熱交換管の位置合わせを柔軟に行うことができると共に、適切な形態に設定された熱交換器を簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な実施例に係る熱交換器の側面図である。
【図2】(a)は実施例の熱交換器の平面図であり、(b)は実施例の熱交換器の底面図である。
【図3】図2(b)のA部拡大図である。
【図4】実施例の保持具を示す正面図である。
【図5】変更例に係る熱交換器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る熱交換器の設置方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明における熱交換器の方向は、地中に設置した状態を基準とする。
【実施例】
【0015】
先ず、実施例の設置方法によって得られる熱交換器について説明する。図1または2に示すように、実施例の熱交換器10は、複数のループ18が連なるように配設された熱交換管12からなる巻き部16と、この巻き部16に沿って配設された熱交換管12からなる線状部20と、巻き部16と線状部20とを連結する保持具26(図3参照)とを有する熱交換器本体14を備えている。実施例の熱交換器本体14は、1本の熱交換管12を所定パターンで曲げたり、直線的に伸ばしたりすることで構成される。熱交換器10では、熱交換器本体14への熱媒の流入側となる熱交換管12(区別する場合は流入管22という)と、熱交換器本体14からの熱媒の流出側となる熱交換管(区別する場合は返送管24という)とが、該熱交換器本体14の同じ側に位置している。そして、熱交換器本体14は、巻き部16と線状部20とが保持具26によって連結されることで、所定の形態を保つようになっている。なお、実施例では、流入管22が巻き部16に接続され、返送管24が線状部20に接続されている。
【0016】
前記熱交換管12は、可撓性を有しており、人手により円弧状に曲げたり、直線的に伸ばしたりできるものが採用される。熱交換管12は、コイル状に巻かれた状態で製品として供給される。熱交換管12としては、可撓性および適度な熱伝導率を有するものであればよく、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、架橋ポリエチレン等の合成樹脂や、金属および樹脂からなる複合管を用いることができ、コストや強度や耐腐食性等の観点からポリエチレンが好ましい。
【0017】
図4に示すように、保持具26は、一対の保持部28,30を備え、一方の保持部(第1保持部)28で巻き部16のループ18を構成する熱交換管12を保持すると共に、他方の保持部(第2保持部)30で線状部20を構成する熱交換管12を保持するよう構成される。保持部28,30は、熱交換管12の外形に合わせた保持空間28a,30aを有する環状に形成され、他方の保持部30,28と反対側が切り欠かれて熱交換管12を保持空間28a,30aに挿脱可能な挿脱開口28b,30bが設けられている。実施例の保持具26は、一対の保持部28,30が互いに挿脱開口28b,30bを反対側に向けた背中合わせの状態で繋がっている。挿脱開口28b,30bは、保持空間28a,30aに嵌め合わせる熱交換管12の直径より小さく設定される。保持部28,30は、弾力的に変形可能に構成されて、挿脱開口28b,30bを挟んで対向する片部を熱交換管12の外形に整合する通常状態から互いに離間するように変形可能になっている。保持部28,30は、前記片部を拡開することで熱交換管12を挿脱開口28b,30bを介して保持空間28a,30aに着脱し、該片部の通常状態で保持空間28a,30aに収容した熱交換管12に固定される。
【0018】
前記保持具26は、一対の保持部28,30が互いに固定されており、線状部20の延在方向に対するループ18におけるループ面L(図2参照)の角度に合わせて、第1保持部28の保持空間28aの貫通向き(保持空間28aを画成する環の軸線方向)と第2保持部30の保持空間30aの貫通向き(保持空間30aを画成する環の軸線方向)とが設定されている。実施例では、線状部20の延在方向に対してループ18のループ面Lが所定角度で交差するよう設定されるので、第1保持部28の保持空間28aの貫通向きと第2保持部30の保持空間30aの貫通向きとが所定の角度で交差している。また実施例の保持具26では、第1保持部28と第2保持部30とが、形状および大きさが同じに設定されて、何れの保持部28,30であってもループ18を構成する熱交換管12に取り付けることができ、何れの保持部28,30であっても線状部20を構成する熱交換管12に取り付けることができる。
【0019】
図1または図2に示すように、前記熱交換器本体14では、巻き部16が熱交換管12をループ面Lと平行な方向にずらして、連続する複数のループ18が並ぶように形成される。また、熱交換器本体14では、線状部20が、巻き部16におけるループ18の並び方向一端に繋がる熱交換管12を該並び方向一端から巻き部16における並び方向他端に向けてループ18の並び方向Nに沿って延在させて形成される。熱交換器本体14では、線状部20が巻き部16におけるループ18の下方を通るように構成され、実施例では、線状部20が平面視した巻き部16の幅方向の略中央に位置して並び方向一端から並び方向他端に向けて直線的に延在している。巻き部16は、熱交換管12を複数のループ18がそのループ面Lを立てた姿勢となるように設置され、隣り合うループ18,18がループ面Lと平行な方向に互いにずらして並べられている。また、巻き部16において熱交換管12は、隣り合うループ18,18が並び方向Nで互いに一部重なるように配置されるものの、隣り合うループ18,18同士が接触しないように離されていることが好ましい。巻き部16では、隣り合うループ18,18を一部重なるように並べることで、熱交換管12の設置スペースを抑えることができるが、熱交換管12を密集させると地中での熱交換効率が低下するので、ループ18の重なり部分を隣りのループ18の半分以下とするのが好ましい。また、ループ面Lの正面視(熱交換器本体14の側面視)において、ループ18の上端から下端、再度上端に戻る1周期の間に、熱交換管12同士の接触および交差が少ないほうが好ましい。具体的には巻き部16は、ループ18の横方向に重なる交差点および横方向に重ならないが並び方向Nで隣接する点(接点)の合計が12以下であることが好ましく、更には8以下が好ましく、特に、交差点が6以下で接点がないものが好ましい。
【0020】
前記巻き部16では、熱交換器本体14の平面視において、複数のループ18の並び方向Nに対して各ループ18のループ面Lが交差するように配設される。換言すると、熱交換器本体14の平面視において、保持具26の保持位置で線状部20の熱交換管12の軸方向に対して、巻き部16の熱交換管12の軸方向が傾斜している。このように、線状部20の熱交換管12と巻き部16の熱交換管12とは、平行でも垂直でもない関係にある。ここで、ループ面Lは、並び方向Nに対して寝かせた姿勢(角度を浅く設定する)とすると、熱交換器本体14を設置するために掘削される溝32の幅を狭くすることができる。そして、熱交換器本体14では、複数の保持具26を線状部20の延在方向に離間させて第2保持部30を介して該線状部20に配設し、複数の保持具26を間隔調節して第1保持部28で保持する巻き部16のループ18を位置合わせするよう構成される。すなわち、熱交換器本体14では、巻き部16におけるループ18のピッチ、ループ面Lの角度および隣り合うループ18,18の非接触状態等の配設パターンが、線状部20に取り付けた複数の保持具26での保持により規定される。
【0021】
次に、前述した熱交換器10の設置方法について説明する。地上において、コイル状に巻かれた熱交換管12をコイル面に沿う方向にずらしつつ展延し、地表に寝かせた状態で連続する複数のループ18,18が並ぶように熱交換管12を広げることで、巻き部16を形成する。このとき、巻き部16では、隣り合うループ18,18の一部が上下に重なった状態になっている。巻き部16におけるループ18の並び方向一端に繋がる熱交換管12を、溝32に設置した際に巻き部16の下端部となるループ18の端部外側に沿わせると共にループ18の並び方向に並行するよう直線的に延ばして、該熱交換管12を巻き部16におけるループ18の並び方向一端側から他端側にかけて配設することで、線状部20を形成する。
【0022】
前記保持具26を線状部20と巻き部16のループ18との間に配置し、第1保持部28にループ18を構成する熱交換管12を挿入すると共に、第2保持部30に線状部20を構成する熱交換管12を挿入する。巻き部16のループ18と線状部20とが、ループ18毎または所定間隔のループ18毎に独立した保持具26によって連結されることで、巻き部16と線状部20とが組み合った熱交換器本体14が形成される。そして、熱交換器本体14は、保持具26で連結した巻き部16および線状部20を合わせて一体的な構造体として取り扱い可能となる。熱交換器本体14は、全体の概略高さがループ18の直径と線状部20を構成する熱交換管12の直径とを足し合わせた寸法となり、また全体の幅(ループ18の並び方向と直交する水平方向の寸法)がループ18の直径より小さくなって、熱交換器本体14が幅方向にコンパクトになっている。
【0023】
前記熱交換器本体14では、ループ18と線状部20とを連結する保持具26によって、該熱交換器本体14を構成する熱交換管12の配設パターンが規定される。具体的には、巻き部16におけるループ18のピッチや、熱交換器本体14を設置した際に隣り合うループ18,18が接触しない関係が、線状部20に該線状部20の延在方向に離間配置された複数の保持具26の位置により規定される。また、各ループ18のループ面Lの角度が、第1保持部28における保持空間28aの貫通向きと第2保持部30における保持空間30aの貫通向きとの関係により規定される。すなわち、実施例では、熱交換器本体14の平面視において第1保持部28および第2保持部30の貫通向きが交差するように設定されているので、ループ面Lが線状部20の延在方向に対して交差する角度で規定される。
【0024】
暗きょ管の敷設に用いられるトレンチャーや、パワーシャベルやバックホー等の掘削機械によって、設置される熱交換器本体14におけるループ18の並び方向に沿って長手が延在する溝32を該熱交換器本体14を収容可能な大きさで掘削する。ここで、前述した如く地上において熱交換器本体14が組まれるので、熱交換器本体14を構成するために溝32の中に作業者が入る必要はなく、溝32は、設置する熱交換器本体14に合わせて該熱交換器本体14を収容可能な最小限の幅で掘削すればよい。このように、溝32の幅を狭く設定すると共に、溝32の中に作業者が立ち入る必要はないので、溝32における土留め等の支保工を省略または簡略化することができる。実施例では、溝32が熱交換器本体14の高さより深く掘削されると共に、溝32の幅が、熱交換器本体14を当該溝32に設置した際に、熱交換器本体14が溝32の壁に寄り掛かったとしても、ループ18のループ面Lを立てた姿勢を維持し得る程度に設定される。溝32の幅は、熱交換器本体14の幅以上で、ループ18の直径より小さい寸法に設定され、好ましく熱交換器本体14の幅の2倍以下とするとよい。すなわち、熱交換器本体14は、巻き部16におけるループ18のループ面Lを立てた姿勢で設置されると共に線状部20が巻き部16の下方に配置される配設パターンであるので、ループ面Lを水平に近付くように配置した場合と比べて溝32の幅を狭くすることができ、掘削手間や掘削土量を抑えることができる。しかも、溝32を熱交換管12の配設パターンに合わせた最小限の幅としているので、ループ18を溝32の壁に立て掛けて立てた姿勢を維持することができ、熱交換器本体14を支持するために支柱等の支えを特に必要としない。そして、前述のように熱交換器本体14は、複数のループ18の並び方向Nに対してループ面Lを所定の角度で交差するよう配置することで、ループ18の上下方向中央部が幅方向に膨らんだ状態となって溝32の壁面に弾力的に接触し易くなるので自立し易くすることができる。
【0025】
地上で組み立てた熱交換器本体14を、線状部20を下側にして溝32に落とし込み、ループ面Lを立てた姿勢で溝32に設置する。そして、溝32を、掘削土や砂、コンクリートやその他の埋め戻し材で埋め戻す。これにより、ループ18間やループ18と線状部20との隙間等が埋め戻し材で充填されて、保持具26で規定されたループ18のピッチやループ18の離間状態やループ面Lの角度等の熱交換管12の配設パターンを保った状態で熱交換器本体14が地中に埋設される。巻き部16のループ18を構成する熱交換管12と線状部20を構成する熱交換管12とが保持具26で連結されているので、線状部20側から溝32に挿入することで、ループ18,18間が広がって溝32の壁面に巻き部16が引っ掛かることを防止できる。また、熱交換器本体14は、線状部20側が相対的に重くなるので、溝32に挿入し易く、溝32内において位置決めし易い。ここで、溝32を掘削した後に熱交換管12から熱交換器本体14を組んでも、熱交換器本体14を組んだ後に溝32を掘削しても、溝32を掘削しつつ熱交換器本体14を組んで設置しても、何れの順序であってもよい。実施例のように、熱交換器本体14を溝32の掘削が完了する前に組んでおくことで、溝32の掘削後に熱交換器本体14を直ちに溝32に設置できるので、溝32の崩壊等の影響を受け難いメリットがある。
【0026】
前記熱交換器本体14は、保持具26を線状部20に沿って配設位置を変えることができるので、巻き部16におけるループ18の間隔調節を柔軟かつ簡単に行うことができる。また、熱交換器本体14は、保持具26をループ18に対する配設位置を変えることができるので、巻き部16におけるループ18の間隔調節を更に柔軟かつ簡単に行うことができる。熱交換器本体14は、保持具26でループ18と線状部20とを連結するのに伴って、ループ18のループ面Lの角度を規定することができる。すなわち、実施例の設置方法によれば、ループ18の角度調整が簡単であり、隣り合うループ18,18のループ面L,Lの平行関係を適切に保つことができ、隣り合うループ18,18が接触したりする等、熱交換器本体14の変形を防止することができる。このように、熱交換器本体14は、巻き部16のループ18が保持具26で適切に位置合わせされるので、地中に設置した際に設計通りの熱交換を実現できる。また、熱交換器本体14は、保持具26によって隣り合うループ18,18が離間されるので、ループ18同士で熱交換することを防ぎ、土と熱交換管12との接触面積を増やして効率よく熱交換を行うことができる。なお、熱交換器本体14は、地上で組み立てるので、組み立て作業を行い易い。
【0027】
前記熱交換器本体14は、保持具26による線状部20とループ18との保持によって該熱交換器本体14を構成する熱交換管12の配設パターンを大きく崩すことなく、一体的に取り扱いでき、溝32の中への設置作業を容易に行うことができる。保持具26は、ループ18と線状部20との重なり部分の間に配置されて、巻き部16の外形を平面に投影した範囲より外側に突出しない(図2(b)または図3参照)。すなわち、熱交換器本体14を溝32に設置する際に、保持具26が溝32に引っ掛かることを防止でき、保持具26の存在が熱交換器本体14の設置作業の邪魔にならない。換言すると、保持具26で熱交換器本体14を組み立てても、前述の如く保持具26が巻き部16より突出しないので、保持具26のために溝32の幅や深さを広げる必要もない。保持具26は、位置決め対象となるループ18毎に独立して取り付けられるので、熱交換器本体14を設置現場に合わせてある程度変形させることができ、設置作業を柔軟かつ簡単に行い易い。そして、熱交換器本体14を変形させても、ループ18のピッチやループ面Lの角度等は保持具26によって規定されるので、熱交換器本体14を溝32に設置した後にループ18の関係が崩れることはない。また、保持具26は、巻き部16全体ではなく、個々のループ18に対応するコンパクトなものなので、嵩張らずに取り扱い易く、任意のループ18に取り付け可能であるので、設置作業の自由度が高く、設置作業を行い易い。実施例の設置方法では、熱交換器本体14に必然的に設けられる線状部20を、複数の保持具26の間隔調節の基準として用いているので、部品点数を最小限に抑えることができる。
【0028】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更することも可能である。
(1)図5に示すように、複数の上部保持具34が移動可能に配設された埋設表示テープTを、溝32に設置された熱交換器本体14の上方に架設し、埋設表示テープTに所定間隔毎に配設された上部保持具34を、巻き部16のループ18の上端部に取り付けて、該ループ18の上部を位置合わせするようにしてもよい。変更例の構成によれば、巻き部16のループ18の下部が線状部20に繋がる保持具26で位置決めされると共に、ループ18の上部が埋設表示テープTに繋がる上部保持具34で位置決めされるので、溝32に設置した熱交換器本体14を構成する熱交換管12の配設パターンをより正確に設定できる。
(2)実施例の熱交換器本体は、線状部を巻き部におけるループの下側を通るように配設したが、線状部を巻き部におけるループの上側を通るように配設してもよい。なお、ループの上側または下側とは、ループの側面視において線状部をループの上部または下部に一部重なる関係で配置してもよい。
(3)保持具の保持部は、実施例の構成に限定されず、熱交換管を保持し得る構成であれば、例えば熱交換管を挟むクリップ形状等であってもよい。
(4)保持具は、一方の保持部と他方の保持部との間に支柱を設け、ループと線状部とを所定間隔離間させる構成も採用できる。
(5)保持具は、一方の保持部に対して他方の保持部を回転調節可能に構成し、ループのループ面の角度を調節できるようにしてもよい。
(6)実施例は、流入管を巻き部に接続すると共に、返送管を線状部に接続する構成であるが、流入管を線状部に接続すると共に返送管を巻き部に接続し、熱媒を線状部から流入させて巻き部から返送する構成であってもよい。
(7)溝は、直線状でなくても、曲がっていたり、直線と曲線との組み合わせであってもよい。熱交換管が可撓性を有しているので、熱交換器本体も全体として可撓性を有しており、溝が曲線状であっても熱交換器本体を溝の形状に合わせて配置することができる。従って、既設の構造物や配管などを避けて熱交換器本体を配置することができる。
(8)熱交換器本体を溝に設置して埋め戻すことに限定されず、熱交換器本体を地表に置いて盛り土を行うことで、熱交換器本体を地中に埋設してもよい。また、熱交換器本体の全体を溝に設置するのではなく、熱交換器本体の一部だけを溝に設置して溝から出た部分を盛り土を行うことで埋設してもよい。
(9)熱交換器本体は、ループのループ面を立てた姿勢で設置する態様に限定されず、ループのループ面を水平に寝かせた姿勢や斜めにした姿勢であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
12 熱交換器,14 熱交換器本体,16 巻き部,18 ループ,20 線状部,
26 保持具,32 溝,L ループ面,N 並び方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中熱ヒートポンプシステムに用いられ、地中に埋設される熱交換器の設置方法であって、
地上において、コイル状に巻かれた熱交換管をコイル面に沿う方向にずらして展延し、連続する複数のループが並んだ巻き部を形成すると共に、巻き部におけるループの並び方向一端に繋がる熱交換管を該巻き部におけるループの並び方向他端に向けて、ループ面を立てた姿勢においてループの上側または下側を通るように該並び方向に沿って延在させて線状部を形成し、
前記ループを構成する熱交換管と前記線状部を構成する熱交換管とを保持具で連結して、該ループが位置決めされた熱交換器本体を形成し、この熱交換器本体を埋設するようにした
ことを特徴とする熱交換器の設置方法。
【請求項2】
前記熱交換器本体を収容可能な大きさで掘削された溝に、該熱交換器本体を前記ループのループ面を立てた姿勢で設置し、該溝を埋め戻す請求項1記載の熱交換器の設置方法。
【請求項3】
前記熱交換器本体を前記線状部側から前記溝に挿入し、該線状部を下側にして熱交換器本体が溝に設置される請求項2記載の熱交換器の設置方法。
【請求項4】
前記熱交換器本体は、前記溝の掘削完了までに形成される請求項2または3記載の熱交換器の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−79748(P2013−79748A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219073(P2011−219073)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(508321823)株式会社イノアック住環境 (22)