説明

熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法

【課題】復水器冷却管を清掃するためのブラシ型クリーナについて、熱交換器冷却管の付着物の除去性能や洗浄液量の使用量を詳細に評価できる熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法を提供することである。
【解決手段】種類が異なる複数のブラシ型クリーナを用意し、予め区分された複数の熱交換器冷却管のエリアごとに種類が異なるブラシ型クリーナを隣接する冷却管の管穴に挿入し、ブラシ型クリーナに圧力液体を噴射してブラシ型クリーナを冷却管の管穴に貫通させ、冷却管を貫通したブラシ型クリーナ及び洗浄排液を回収し、冷却管の洗浄後のブラシ型クリーナの外観観察を行い、回収した洗浄排液の分析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所や火力発電所等で使用される熱交換器の冷却管を清掃するブラシ型クリーナを評価するための熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や火力発電所等で使用される熱交換器の冷却管は、定期的に清掃を行うようにしている。熱交換器冷却管の清掃は、冷却管の管穴に管内清掃用用具を挿入し、圧力液体の噴射で管内清掃用用具を冷却管の管穴に貫通させることにより行われる。これにより、冷却管内部のヘドロや砂等の不純物を押出しながら、冷却管の内面に付着した水垢や貝類等の硬質スケールも除去するようにしている。
【0003】
ここで、管内部の皮膜を傷付けることなく、各種管に発生する種々の異物に適応して除去できる管内清掃用用具がある(例えば、特許文献1参照)。さらに、軸体に植設したブラシ体が使用時に抜け落ちる現象を無くすことができるようにした改良型の管内清掃用用具もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1及び特許文献2のものは、ナイロン製ブラシ体を外周面に植設したポリエチレン製の軸体を使用したブラシ型クリーナであり、管内部の皮膜を傷付けることなく、各種管に発生する種々の異物に適応して除去できる。また、管内清掃用具に浮力を与えることができ、洗浄した管から排出された後は液面に浮いた管内清掃用用具を回収できるので、作業性もよいものである。
【特許文献1】特開2002−316113号公報
【特許文献2】特開2003−305423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2のものはブラシ型クリーナとしては優れているが、実際の熱交換器冷却管に付着する付着物は場所や季節によって異なり、また、熱交換器冷却管の管径により付着物の除去性能が異なるので、実際の熱交換器冷却管に使用してみないと、付着物の除去性能を確認することができない。また、付着物の除去だけでなく、経済性をも考慮に入れた場合に、いずれのブラシ型クリーナが適切であるかは、実際に熱交換器冷却管の清掃に使用して評価してみないと分からない。例えば、経済性についてはブラシ型クリーナのコストや寿命、さらには洗浄液の使用量等がある。
【0006】
本発明の目的は、熱交換器冷却管を清掃するためのブラシ型クリーナについて、熱交換器冷却管の付着物の除去性能や洗浄液量の使用量を詳細に評価できる熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係わる熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法は、種類が異なる複数のブラシ型クリーナを用意し、予め区分された複数の熱交換器冷却管のエリアごとに種類が異なるブラシ型クリーナを隣接する冷却管の管穴に挿入し、ブラシ型クリーナに圧力液体を噴射してブラシ型クリーナを冷却管の管穴に貫通させ、冷却管を貫通したブラシ型クリーナ及び洗浄排液を回収し、冷却管の洗浄後のブラシ型クリーナの外観観察を行い、回収した洗浄排液の分析を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明に係わる熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法は、請求項1の発明において、頭部径、ブラシ体径、ブラシ体のブラシ糸径、ブラシ体のブラシ糸長、軸体径、ブラシ体の植え込みの螺旋の傾斜角、ブラシ体長の少なくともいずれか一つが異なるブラシ型クリーナであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明に係わる熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法は、請求項1または2の発明において、回収した洗浄排液の分析は、洗浄排液に含まれる不純物濃度、洗浄排液量、洗浄排液に含まれる総不純物量を分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実際の熱交換器冷却管に使用し、冷却管に付着する付着物の除去性能や圧力液体の使用量を評価するので、熱交換器ごとに適切なブラシ型クリーナを選定できる。また、実際の熱交換器冷却管を複数のエリアに区分して、複数のエリアごとにブラシ型クリーナを評価できるので、評価のばらつきをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の実施の形態に係わる熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法の工程図である。まず、種類が異なる複数のブラシ型クリーナを用意する(S1)。用意するブラシ型クリーナについて説明する。
【0012】
図2はブラシ型クリーナの外観斜視図である。ブラシ型クリーナ10は、図示省略の熱交換器冷却管の管穴に挿入され、圧力液体が噴射されて熱交換器冷却管の管穴に貫通し、熱交換器冷却管を清掃するものである。ブラシ型クリーナ10の軸体11は、例えばポリエチレン製の円柱状に形成され、この軸体11の外周面に適宜硬さの単条または複数条のブラシ体12が螺旋状に植設されている。図2では複数条のブラシ体12が植設されている場合を示している。ブラシ体12は例えばナイロン製で形成される。軸体11の両端部には、熱交換器冷却管の内径より小さい外径を有する略半球形状の頭部13が設けられ、軸体11のブラシ体12と頭部13との間には鍔部14が設けられている。
【0013】
ブラシ体12は数10本ずつ塊にして形成され、その塊を適宜間隔を保って各条の螺旋が連続するように植設されている。ブラシ体12は、熱交換器冷却管の内側面に付着した異物を強制的に掻き落とす適宜硬さとしている。また、ブラシ体12の毛長を熱交換器冷却管の内径より若干長くすることにより熱交換器冷却管の内面の付着物を掻き落としている。
【0014】
次に、軸体11の両端部に頭部13及び鍔部14を設けているので、頭部13の向きを気にせずに、ブラシ型クリーナ10を熱交換器冷却管の管穴に挿入することができる。
【0015】
鍔部14は頭部13とともに圧力水の噴射による圧力を受けて、熱交換器冷却管の管穴に貫通する。鍔部14の外径が大きいと冷却管内の海生生物等による突起部に鍔部が引っかかりブラシ型クリーナが排出されない頻度が高くなる。そのため、ブラシ型クリーナを取り出すために作業を中断し、全体の作業時間が長くなる。一方、鍔部14の外径が小さいと圧力水から受ける力が小さくなり、また、鍔部14と熱交換器冷却管の内側面との間隙が大きくなるので、ブラシ体12と熱交換器冷却管の内側面との間の圧力水の漏れ量が多くなる。そのため、圧力水の使用量が増大するとともに、ブラシ型クリーナ1個あたりの排出時間が長くなり、全体の作業時間が長くなる。
【0016】
種類が異なるブラシ型クリーナ10は、両端部の頭部13の径、ブラシ体12の径、ブラシ体12のブラシ糸径、ブラシ体12のブラシ糸長、軸体11の径、ブラシ体12の植え込みの螺旋の傾斜角、ブラシ体12自体の長さ(ブラシ体長)のうち、少なくともいずれか一つが異なると、付着物の除去性能や洗浄液量が異なるので、これらの少なくとも一つ以上が異なる複数種類の複数のブラシ型クリーナ10を用意する。
【0017】
以下の説明では、4種類のブラシ型クリーナ10を3個ずつ用意した場合について説明する。用意した3個ずつの4種類のブラシ型クリーナ10を熱交換器冷却管の管穴に挿入する(S2)。この場合、複数の熱交換器冷却管のエリアを3つのエリアA、B、Cに区分けし、それぞれの3つのエリアA、B、C内で隣接する4本の熱交換器冷却管を選択し、4種類のブラシ型クリーナ10を挿入する。
【0018】
図3は熱交換器冷却管の一例として復水器冷却管部15を示している。図3に示すように、復水器冷却管部15は複数の復水器冷却管16からなり、通常、18000本〜2万本の復水器冷却管16からなっている。そして、予め区分された複数の復水器冷却管16のエリアA、B、Cごとに、4本の復水器冷却管16を選択し、種類が異なる4個のブラシ型クリーナ10を隣接する復水器冷却管16の管穴に挿入する。
【0019】
ここで、復水器冷却管部15を3つのエリアA、B、Cに区分したのは、復水器冷却管部15のエリア位置により付着物量が異なることがあるので、それを考慮したためである。また、4種類のブラシ型クリーナ10を隣接する4本の復水器冷却管16に挿入するのは、付着物の付着状態の条件がほぼ同じである位置を選択するためである。
【0020】
次に、ブラシ型クリーナ10に圧力液体を噴射してブラシ型クリーナ10を熱交換器冷却管である復水器冷却管16の管穴に貫通させる(S3)。すなわち、ブラシ型クリーナ10に圧力液体を噴射すると、ブラシ型クリーナ10の頭部13及び鍔部14を押圧し、ブラシ型クリーナ10に推進力が加わる。これにより、ブラシ型クリーナ10が回転しながら推進し、鍔部14により復水器冷却管16の内側面に付着した硬質の異物を掻き落とし、ブラシ体12の回転により鍔部14が掻き落とした硬質の異物及び復水器冷却管16の内側面に付着した異物を掻き落とす。このようにして、ブラシ型クリーナ10を復水器冷却管16の管穴に貫通させ復水器冷却管16を清掃する。
【0021】
次に、復水器冷却管16の管穴に貫通したブラシ型クリーナ10及び洗浄排液を回収する(S4)。ブラシ型クリーナ10の軸体11がポリエチレン製で形成され、また、ブラシ型クリーナ10のブラシ体12がナイロン製で形成される場合には、ブラシ型クリーナ10は洗浄排液に浮くので回収が容易である。また、洗浄排液は例えばポリ容器に移し替えて回収する。
【0022】
そして、復水器冷却管16の洗浄後のブラシ型クリーナ10の外観観察を行う(S5)。ブラシ型クリーナ10の外観観察は、ブラシ型クリーナ10のブラシ体12に付着した付着物の多少により、付着物の除去性能を確認する。例えば、ブラシ体12に付着した付着物が多い場合には付着物の除去性能が良いと判断する。この場合、復水器冷却管部15の異なる3つエリアにそれぞれ同一のブラシ型クリーナ10を挿入しているので、異なるエリアごとに種類の異なるブラシ型クリーナ10を互いに比較して評価することになる。
【0023】
また、回収した洗浄排液の分析を行う(S6)。回収した洗浄排液の分析は、例えば、洗浄排液に含まれる不純物濃度を測定し、洗浄排液量と総不純物量とを求める。これにより、洗浄排液量(洗浄液使用量)と除去された付着物との関係がわかり、洗浄液が少なくて多くの付着物が除去できるブラシ型クリーナ10を確認できる。この場合も、復水器冷却管部15の異なる3つのエリアごとに評価するか、または、3つのエリアの平均値により評価する。
【0024】
以上の説明では、4種類のブラシ型クリーナ10を復水器冷却管部15の異なる3つのエリアについて試験を行う場合について説明したが、4種類以上のブラシ型クリーナを用意し、行程S1〜行程S6を繰り返し行うようにしてもよい。また、復水器冷却管部15のエリアを3つ以上に区分して行うようにしてもよい。また、熱交換器冷却管として復水器冷却管16について説明したが、他の管式熱交換器冷却管にも同様に適用できる。
【0025】
本発明の実施の形態によれば、実際の熱交換器冷却管に対して、種類の異なるブラシ型クリーナ10を使用して、冷却管に付着する付着物の除去性能や洗浄液の使用量を評価するので、熱交換器ごとに適切なブラシ型クリーナ10を選定できる。また、実際の熱交換器冷却管を複数のエリアに区分して、複数のエリアごとにブラシ型クリーナ10を評価できるので、付着物の異なる箇所における除去性能や洗浄液の使用量の評価のばらつきをなくすことができる。この評価により、熱交換器ごとに除去性能のみならず経済性のよい適切なブラシ型クリーナ10を選定できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係わる熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法の工程図。
【図2】ブラシ型クリーナの外観斜視図。
【図3】熱交換器冷却管の一例として復水器冷却管部の説明図。
【符号の説明】
【0027】
10…ブラシ型クリーナ、11…軸体、12…ブラシ体、13…頭部、14…鍔部、15…復水器冷却管部、16…復水器冷却管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類が異なる複数のブラシ型クリーナを用意し、予め区分された複数の熱交換器冷却管のエリアごとに種類が異なるブラシ型クリーナを隣接する冷却管の管穴に挿入し、ブラシ型クリーナに圧力液体を噴射してブラシ型クリーナを冷却管の管穴に貫通させ、冷却管を貫通したブラシ型クリーナ及び洗浄排液を回収し、冷却管の洗浄後のブラシ型クリーナの外観観察を行い、回収した洗浄排液の分析を行うことを特徴とする熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法。
【請求項2】
種類が異なるブラシ型クリーナは、頭部径、ブラシ体径、ブラシ体のブラシ糸径、ブラシ体のブラシ糸長、軸体径、ブラシ体の植え込みの螺旋の傾斜角、ブラシ体長の少なくともいずれか一つが異なるブラシ型クリーナであることを特徴とする請求項1記載の熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法。
【請求項3】
回収した洗浄排液の分析は、洗浄排液に含まれる不純物濃度、洗浄排液量、洗浄排液に含まれる総不純物量を分析することを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器冷却管用ブラシ型クリーナの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−155128(P2008−155128A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346957(P2006−346957)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】