説明

熱交換器及び自動販売機

【課題】簡単な構成で熱交換効率の向上を図ることができる熱交換器及び自動販売機を提供すること。
【解決手段】供給された気液2相状態の低圧冷媒が自身の低圧冷媒通路2411を通過する場合に、コルゲートフィン247を介して低圧冷媒を自身の周囲を通過する空気と熱交換させて空気を冷却する一方、供給された単相状態の高圧冷媒が自身の高圧冷媒通路2441を通過する場合に、コルゲートフィン247を介して高圧冷媒を自身の周囲を通過する空気と熱交換させて空気を加熱する左庫内熱交換器24cにおいて、高圧冷媒通路2441が低圧冷媒通路2411よりも空気の流れの上流側に配設したものである。かかる冷媒が二酸化炭素であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及び自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動販売機等に適用される冷媒回路装置として、冷却経路と加熱経路とを有する冷媒回路を備えたものが知られている。冷却経路は、蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張機構を冷媒配管にて順次接続して構成されたものである。
【0003】
蒸発器は、自動販売機の商品収容庫の内部に配設されている。該蒸発器は、供給された冷媒が自身の冷媒流路を通過して蒸発することにより、自身の周囲空気(商品収容庫の内部空気)を冷却するものである。圧縮機は、自動販売機本体内であって商品収容庫の外部となる機械室に配設されており、蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮するものである。凝縮器は、圧縮機と同様に機械室に配設されており、圧縮機で圧縮された高温高圧の冷媒を導入して凝縮させるものである。膨張機構は、凝縮器で凝縮した冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0004】
加熱経路は、庫内熱交換器を有して成る経路である。庫内熱交換器は、商品収容庫の内部に配設されている。より詳細には、加熱対象となる商品を収容する商品収容庫の内部に配設されている。この庫内熱交換器は、冷却経路を構成する圧縮機と凝縮器とを接続する冷媒配管から分岐した分岐配管に入口側が接続されているとともに、凝縮器と膨張機構とを接続する冷媒配管に合流する態様で設けられた戻配管に出口側が接続されている。かかる庫内熱交換器は、分岐配管を通じて圧縮機で圧縮されて冷媒(高圧冷媒)を導入し、導入した冷媒が自身の冷媒流路を通過して凝縮することにより自身の周囲空気(自身が配設された商品収容庫の内部空気)を加熱するものである。
【0005】
このような冷媒回路装置においては、冷却運転を行う場合には、冷却経路のみに冷媒が流れるようにし、冷却加熱運転を行う場合には、冷却経路の一部と加熱経路とに冷媒が流れるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−175119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1には明示されていないが、加熱経路を構成する庫内熱交換器は、この庫内熱交換器と同じ商品収容庫に配設された蒸発器と一体に構成されているのが一般的である。つまり、共通の商品収容庫に配設された蒸発器と庫内熱交換器とは一体化されて一つの熱交換器を構成している。このような熱交換器では、自身が配設された商品収容庫の内部空気を冷却する場合には、蒸発器の冷媒流路等の構成要素に冷媒(低圧冷媒)を通過させる一方、該商品収容庫の内部空気を加熱する場合には、庫内熱交換器の冷媒流路等の構成要素に冷媒(高圧冷媒)を通過させている。
【0008】
ところで、冷媒として例えば二酸化炭素が用いられると、上記熱交換器では、かかる冷媒が次のように通過する。すなわち、商品収容庫の内部空気を冷却する場合には、冷媒が低圧冷媒として気液2相状態で蒸発器の構成要素を通過する一方、該商品収容庫の内部空気を加熱する場合には、冷媒が高圧冷媒として超臨界状態(単相状態)で庫内熱交換器の構成要素を通過する。ここで、通過する冷媒が気液2相状態である場合と超臨界(単相)状態である場合とでは、相変化を伴わない単相状態の方が相変化を伴う気液2相状態の方に比べて冷媒流路の内面に対する熱伝達率が小さいことが知られている。
【0009】
そのため、上記熱交換器においては、蒸発器の構成要素に冷媒(低圧冷媒:気液2相冷媒)が通過する場合よりも庫内熱交換器の構成要素に冷媒(高圧冷媒:単相冷媒)が通過する場合の方が熱伝達率が小さいという特性を有しており、熱交換効率の向上を図ることが求められていた。
【0010】
その一方、熱交換器の周囲を空気が通過する場合に、該熱交換器の風上側の部位の方が風下側の部位に比して該空気に対する熱伝達率が高いことが知られている。
【0011】
尚、ここでは冷媒が二酸化炭素である場合を例に挙げて説明したいが、二酸化炭素以外の冷媒でも同様の問題が生ずることはいうまでもない。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みて、簡単な構成で熱交換効率の向上を図ることができる熱交換器及び自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る熱交換器は、供給された気液2相状態の低圧冷媒が自身の低圧冷媒通路を通過する場合に、フィン部材を介して該低圧冷媒を自身の周囲を通過する空気と熱交換させて該空気を冷却する一方、供給された単相状態の高圧冷媒が自身の高圧冷媒通路を通過する場合に、フィン部材を介して該高圧冷媒を自身の周囲を通過する空気と熱交換させて該空気を加熱する熱交換器において、前記高圧冷媒通路が前記低圧冷媒通路よりも前記空気の流れの上流側に配設したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る熱交換器は、上述した請求項1において、前記冷媒が二酸化炭素であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る自動販売機は、上述した請求項1又は請求項2に記載の熱交換器を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高圧冷媒通路が低圧冷媒通路よりも空気の流れの上流側に配設してあるので、高圧冷媒通路を通過する冷媒が単相状態であっても、フィン部材を介しての通過空気に対する熱伝達を良好なものとすることができる。一方、低圧冷媒通路は、高圧冷媒通路よりも通過空気に対する熱伝達能力が劣る風下側(空気流れの下流側)に設けられているが、低圧冷媒通路を通過する冷媒が気液2相冷媒であるために、低圧冷媒通路の内面に対する熱伝達は良好なものであり、通過空気に対する熱伝達も十分に良好なものである。この結果、上記熱交換器では、総合的な熱交換効率の向上を図ることができる。しかも、高圧冷媒通路を低圧冷媒通路よりも空気流れの上流側に配設しただけなので、部品点数の増大、製造工程の増大等を招来せず、極めて簡単な方法で構成することができる。従って、簡単な構成で熱交換効率の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である熱交換器を有する冷媒回路装置が適用された自動販売機(本発明の実施の形態である自動販売機)の内部構造を正面から見た場合を示す説明図である。
【図2】図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示すものであり、右側の商品収容庫の断面側面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示した自動販売機に適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。
【図4】図4は、図3に示した左庫内熱交換器(本実施の形態である熱交換器)を前方側から見た場合を示す模式図である。
【図5】図5は、図4のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る熱交換器及び自動販売機の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態である熱交換器を有する冷媒回路装置が適用された自動販売機(本発明の実施の形態である自動販売機)の内部構造を正面から見た場合を示す説明図である。ここで例示する自動販売機は、本体キャビネット1を備えている。
【0020】
本体キャビネット1は、前面が開口した直方状の形態を成すものである。この本体キャビネット1には、その内部に例えば2つの断熱仕切板2によって仕切られた3つの独立した商品収容庫3が左右に並んだ態様で設けてある。この商品収容庫3は、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を所望の温度に維持した状態で収容するためのもので、断熱構造を有している。
【0021】
図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示すものであり、右側の商品収容庫3の断面側面図である。尚、ここでは右側の商品収容庫3(以下、適宜右庫3aとも称する)の内部構造について示すが、中央の商品収容庫3(以下、適宜中庫3bとも称する)及び左側の商品収容庫3(以下、適宜左庫3cとも称する)の内部構造も右庫3aと略同じような構成である。尚、本明細書における右側とは、自動販売機を正面から見た場合の右方を示し、左側とは、自動販売機を正面から見た場合の左方を示す。
【0022】
かかる図2に示すように、本体キャビネット1の前面には、外扉4及び内扉5が設けてある。外扉4は、本体キャビネット1の前面開口を開閉するためのものであり、内扉5は、商品収容庫3の前面を開閉するためのものである。この内扉5は、上下に分割してあり、上側の扉5aは商品を補充する際に開閉するものである。
【0023】
上記商品収容庫3には、商品収納ラック6、搬出機構7及び搬出シュータ8が設けてある。商品収納ラック6は、商品を上下方向に沿って並ぶ態様で収納するためのものである。搬出機構7は、商品収納ラック6の下部に設けてあり、この商品収納ラック6に収納された商品群の最下位にある商品を1つずつ搬出するためのものである。搬出シュータ8は、搬出機構7から搬出された商品を外扉4に設けられた商品取出口4aに導くためのものである。
【0024】
図3は、図1及び図2に示した自動販売機に適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。ここで例示する冷媒回路装置は、内部に冷媒(例えば二酸化炭素等)を封入した冷媒回路10を有しており、主経路20、高圧冷媒導入配管31、放熱配管32及び戻配管33を備えて構成してある。
【0025】
主経路20は、圧縮機21、庫外熱交換器22、膨張機構23及び庫内熱交換器24を冷媒配管25にて順次接続して構成してある。
【0026】
圧縮機21は、図2にも示すように機械室9に配設してある。機械室9は、本体キャビネット1の内部であって商品収容庫3と区画され、かつ商品収容庫3の下方側の室である。この圧縮機21は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の超臨界状態(高圧冷媒)にして吐出口より吐出するものである。
【0027】
本実施の形態における圧縮機21は、2回に分けて圧縮動作を行う二段式圧縮機21である。より詳細に説明すると、圧縮機21は、1回目の圧縮動作を行う第1圧縮機211と、2回目の圧縮動作を行う第2圧縮機212とを有し、これらの間に図示せぬ中間熱交換器が設けてある。中間熱交換器は、第1圧縮機211による1回目の圧縮動作により圧縮された冷媒を冷却(放熱)させて第2圧縮機212に送出するものである。このような圧縮機21としては、レシプロ圧縮機、ロータリー圧縮機、スクロール圧縮機、あるいはこれらの圧縮能力を調整可能なインバータ圧縮機等を適用することができる。
【0028】
庫外熱交換器22は、図2にも示すように圧縮機21と同様に機械室9に配設してある。この庫外熱交換器22は、圧縮機21で圧縮された冷媒が自身の流路を通過する場合には該冷媒を周囲空気と熱交換させて凝縮させるものである。この庫外熱交換器22と圧縮機21とを接続する冷媒配管25には、三方弁26が設けてある。かかる三方弁26については後述する。
【0029】
膨張機構23は、例えば膨張弁やキャピラリーチューブにより構成してあり、自身の入口に連通する態様で接続された冷媒配管25から供給された冷媒を減圧して断熱膨張させて気液2相状態(低圧冷媒)にするものである。
【0030】
庫内熱交換器24は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、それぞれが各商品収容庫3の内部低域であって背面ダクトD(図2参照)の前面側に配設してある。つまり、庫内熱交換器24の周囲においては、内部空気が後方から前方に向けて通過することになり、後方側が空気流れの上流側となり、前方側が空気流れの下流側となる。
【0031】
これら庫内熱交換器24と膨張機構23とを接続する冷媒配管25は、その途中に配設された分配器27により3つに分岐され、右庫3aに配設された庫内熱交換器24(以下、右庫内熱交換器24aとも称する)、中庫3bに配設された庫内熱交換器24(以下、中庫内熱交換器24bとも称する)、並びに左庫3cの内部に配設され、かつ本発明の実施の形態の熱交換器である庫内熱交換器24(以下、左庫内熱交換器24cとも称する)の入口側にそれぞれ接続してある。
【0032】
また、この冷媒配管25においては、分配器27から右庫内熱交換器24a、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cのそれぞれに至る途中に低圧電磁弁281,282,283がそれぞれ設けてある。低圧電磁弁281,282,283は、開閉可能な弁体であり、図示せぬ制御手段から開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。また、かかる冷媒配管25においては、低圧電磁弁281,282,283の下流側に、通過する冷媒を減圧させるキャピラリーチューブが配設されていてもよい。各庫内熱交換器24の出口側に接続された冷媒配管25は、第1合流点P1で合流して圧縮機21の吸引口に連通する態様で該圧縮機21に接続してある。
【0033】
尚、このような主経路20において、図3中の符号H、F1、F2及びNは、それぞれヒータ、庫内送風ファン、庫外送風ファン及び内部熱交換器である。ヒータHは、中庫3bに配設してあり、駆動して通電状態となることにより中庫3bの内部空気を加熱する加熱手段である。庫内送風ファンF1は、各商品収容庫3に配設してあり、駆動することにより庫内熱交換器24等の周囲を通過した空気を商品収容庫3の内部で循環させるものである。庫外送風ファンF2は、庫外熱交換器22の近傍に配設してあり、駆動することにより庫外熱交換器22の周囲に外気を通過させるものである。内部熱交換器Nは、庫外熱交換器22を通過した高圧冷媒と、庫内熱交換器24を通過した低圧冷媒との間で熱交換させるものである。
【0034】
高圧冷媒導入配管31は、三方弁26に連結してあり、かつ左庫内熱交換器24cの入口側に接続してある。この高圧冷媒導入配管31は、圧縮機21で圧縮された冷媒(高圧冷媒)を導入するものである。
【0035】
ここで三方弁26は、圧縮機21で圧縮した冷媒を庫外熱交換器22へ送出する第1送出状態と、圧縮機21で圧縮した冷媒を高圧冷媒導入配管31へ送出する第2送出状態との間で択一的に切り換え可能なバルブ手段である。かかる三方弁26の切換動作は、制御手段から与えられる指令に応じて行われる。
【0036】
放熱配管32は、一端が左庫内熱交換器24cの出口側に接続してあり、他端が加熱側熱交換器34の入口側に接続してある。この放熱配管32は、左庫内熱交換器24cを通過した冷媒を加熱側熱交換器34に送出するためのものである。加熱側熱交換器34は、庫外熱交換器22に隣接する態様で機械室9に配設してある。この加熱側熱交換器34は、自身の流路を通過する冷媒と周囲空気との間に熱交換させて該冷媒を放熱させるものである。
【0037】
戻配管33は、一端が加熱側熱交換器34の出口側に接続してあり、他端が主経路20を構成する冷媒配管25、すなわち庫外熱交換器22と膨張機構23(内部熱交換器N)との間の冷媒配管25に第2合流点P2で合流する態様で接続してある。この戻配管33は、加熱側熱交換器34を通過した冷媒を主経路20に戻すためのものである。
【0038】
図4及び図5は、それぞれ図3に示した左庫内熱交換器24c(本実施の形態である熱交換器)を示すものであり、図4は前方側から見た場合を示す模式図、図5は図4のA−A線断面図である。ここで例示する左庫内熱交換器24cは、低圧冷媒通路管241と、低圧冷媒入口ヘッダ242と、低圧冷媒出口ヘッダ243と、高圧冷媒通路管244と、高圧冷媒入口ヘッダ245と、高圧冷媒出口ヘッダ246と、コルゲートフィン(フィン部材)247とを備えて構成してある。
【0039】
低圧冷媒通路管241は、複数の低圧冷媒通路2411が並設された扁平状の管であり、左右に蛇行して形成してある。
【0040】
低圧冷媒入口ヘッダ242は、低圧冷媒通路管241の入口側端部2412に接続してあり、低圧冷媒通路管241の各低圧冷媒通路2411に連通する態様で設けてある。この低圧冷媒入口ヘッダ242には、低圧電磁弁283が設けられた冷媒配管25が接続してある。これにより低圧冷媒入口ヘッダ242は、膨張機構23で断熱膨張した気液2相状態の冷媒(低圧冷媒)を各低圧冷媒通路2411に流入させるものである。
【0041】
低圧冷媒出口ヘッダ243は、低圧冷媒通路管241の出口側端部2413に接続してあり、低圧冷媒通路管241の各低圧冷媒通路2411に連通する態様で設けてある。この低圧冷媒出口ヘッダ243には、第1合流点P1で合流する冷媒配管25が接続してある。これにより低圧冷媒出口ヘッダ243は、各低圧冷媒通路2411を通過した冷媒を圧縮機21に向けて流出させるものである。
【0042】
高圧冷媒通路管244は、複数の高圧冷媒通路2441が並設された扁平状の管であり、左右に蛇行して形成してある。この高圧冷媒通路管244は、低圧冷媒通路管241の後方側(空気流れの上流側)に設けてある。
【0043】
高圧冷媒入口ヘッダ245は、高圧冷媒通路管244の入口側端部2442に接続してあり、高圧冷媒通路管244の各高圧冷媒通路2441に連通する態様で設けてある。この高圧冷媒入口ヘッダ245には、高圧冷媒導入配管31が接続してある。これにより、高圧冷媒入口ヘッダ245は、圧縮機21で圧縮された超臨界状態(単相状態)の冷媒(高圧冷媒)を各高圧冷媒通路2441に流入させるものである。
【0044】
高圧冷媒出口ヘッダ246は、高圧冷媒通路管244の出口側端部2443に接続してあり、高圧冷媒通路管244の各高圧冷媒通路2441に連通する態様で設けてある。この高圧冷媒出口ヘッダ246には、放熱配管32が接続してある。これにより高圧冷媒出口ヘッダ246は、各高圧冷媒通路2441を通過した冷媒を加熱側熱交換器34に向けて流出させるものである。
【0045】
コルゲートフィン247は、波形状に屈曲されて形成してあり、その屈曲部外部をロウ付け等により低圧冷媒通路管241及び高圧冷媒通路管244の水平延在部位241a,244a間に接合して配設してある。このコルゲートフィン247は、自身の後方側端部(空気上流側端部)が高圧冷媒通路管244の後端部(空気上流側端部)よりも後方側へ突出する態様で、並びに自身の前方側端部(空気下流側端部)が低圧冷媒通路管241の前端部(空気下流側端部)よりも前方側へ突出する態様で配設してある。また、このコルゲートフィン247は、低圧冷媒通路管241及び高圧冷媒通路管244の水平延在部位241a,244aどうしを跨る態様で配設してある。
【0046】
尚、図には明示していないが、コルゲートフィン247の表面には、細片状のルーバーが切り起こし形成されていてもよい。このようなルーバーは、コルゲートフィン247における後方側端部及び前方側端部を除く領域に多数形成される。
【0047】
このような左庫内熱交換器24cでは、低圧冷媒通路管241と高圧冷媒通路管244との互いの高さレベルを同一のものとし、高圧冷媒通路管244が低圧冷媒通路管241よりも後方側、すなわち空気流れの上流側に配設してある。かかる左庫内熱交換器24cでは、低圧冷媒通路管241及び高圧冷媒通路管244の入口側端部2412,2442及び出口側端部2413,2443が左側に位置しており、これにより低圧冷媒入口ヘッダ242、低圧冷媒出口ヘッダ243、高圧冷媒入口ヘッダ245及び高圧冷媒出口ヘッダ246は、それぞれ左側に設けてある。
【0048】
かかる左庫内熱交換器24cを有する冷媒回路装置は、次のようにして商品収容庫3に収容された商品を冷却、あるいは加熱することができる。
【0049】
まず、CCC運転(すべての商品収容庫3の内部空気を冷却する運転)を行う場合について説明する。この場合、制御手段は三方弁26を第1送出状態にさせ、低圧電磁弁281,282,283に対して開指令を与える。
【0050】
これにより圧縮機21で圧縮された冷媒は、第1送出状態にある三方弁26を通過して庫外熱交換器22に至る。庫外熱交換器22に至った冷媒は、該庫外熱交換器22を通過中に、周囲空気(外気)に放熱して凝縮する。庫外熱交換器22で凝縮した冷媒は、膨張機構23で断熱膨張して気液2相冷媒となり、分配器27を介して右庫内熱交換器24a、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cに向けて送出される。
【0051】
左庫内熱交換器24cに向けて送出された気液2相冷媒(低圧冷媒)は、低圧冷媒入口ヘッダ242に進入した後、低圧冷媒通路管241の各低圧冷媒通路2411に流入する。そして、各低圧冷媒通路2411を通過する冷媒は、コルゲートフィン247を介して左庫内熱交換器24cの周囲空気(左庫3cの内部空気)と熱交換して蒸発し、周囲空気を冷却する。冷却された空気は、庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより左庫3cに収容された商品は、循環する空気により冷却される。各低圧冷媒通路2411を通過して蒸発した冷媒は、低圧冷媒出口ヘッダ243に進入して冷媒配管25に流出する。
【0052】
右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bに向けて送出された気液2相冷媒も、左庫内熱交換器24cに送出された冷媒と同様に、各庫内熱交換器24の図示せぬ冷媒流路を通過して周囲空気(内部空気)と熱交換して蒸発し、該周囲空気を冷却する。冷却された空気は、庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより右庫3a及び中庫3bに収容された商品は、循環する空気により冷却される。冷媒流路を通過して蒸発した冷媒は、出口より冷媒配管25に流出する。
【0053】
各庫内熱交換器24から流出した冷媒は、第1合流点P1で合流した後に圧縮機21に吸引され、圧縮機21に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0054】
次に、HCC運転(左庫3cの内部空気を加熱し、右庫3a及び中庫3bの内部空気を冷却する運転)を行う場合について説明する。この場合、制御手段は、三方弁26を第2送出状態にさせ、低圧電磁弁283に対して閉指令を与え、低圧電磁弁281,282に対して開指令を与える。
【0055】
これにより圧縮機21で圧縮された冷媒は、第2送出状態である三方弁26を通過し、高圧冷媒導入配管31を通じて左庫内熱交換器24cに向けて送出される。
【0056】
左庫内熱交換器24cに向けて送出された超臨界状態の単相冷媒(高圧冷媒)は、高圧冷媒入口ヘッダ245に進入した後、高圧冷媒通路管244の各高圧冷媒通路2441に流入する。そして、各高圧冷媒通路2441を通過する冷媒は、コルゲートフィン247を介して左庫内熱交換器24cの周囲空気(左庫3cの内部空気)と熱交換して凝縮し、周囲空気を加熱する。加熱された空気は、庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより左庫3cに収容された商品は、循環する空気により加熱される。各高圧冷媒通路2441を通過した冷媒は、高圧冷媒出口ヘッダ246に進入して放熱配管32に流出する。
【0057】
放熱配管32に流出された冷媒は、該放熱配管32を通過して加熱側熱交換器34に至り、該加熱側熱交換器34で周囲空気(外気)に放熱する。加熱側熱交換器34を放熱した冷媒は、戻配管33を通過した後に第2合流点P2に至り、かかる第2合流点P2で主経路20に進入する。主経路20に進入した冷媒は、内部熱交換器Nを通過した後に膨張機構23に至り、膨張機構23で断熱膨張して気液2相冷媒となる。
【0058】
膨張機構23で断熱膨張した冷媒(低圧冷媒)は、分配器27を介して開成する低圧電磁弁281,282を通過して右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bに向けて送出される。
【0059】
右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bに向けて送出された冷媒は、各庫内熱交換器24の冷媒流路を通過して周囲空気(内部空気)と熱交換して蒸発し、該周囲空気を冷却する。冷却された空気は、庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより右庫3a及び中庫3bに収容された商品は、循環する空気により冷却される。冷媒流路を通過して蒸発した冷媒は、出口より冷媒配管25に流出する。
【0060】
右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bから流出した冷媒は、第1合流点P1で合流した後に圧縮機21に吸引され、圧縮機21に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0061】
このように左庫内熱交換器24cは、CCC運転を行う場合には冷却器として適用される一方、HCC運転を行う場合には加熱器として適用される。そして、冷却器として適用される場合には、低圧冷媒通路2411に気液2相状態の低圧冷媒を通過させて周囲空気を冷却する一方、加熱器として適用される場合には、高圧冷媒通路2441に超臨界(単相)状態の高圧冷媒を通過させて周囲空気を加熱している。
【0062】
以上説明したような本実施の形態である熱交換器(左庫内熱交換器24c)では、高圧冷媒通路管244が低圧冷媒通路管241よりも空気流れの上流側に配設してあるので、高圧冷媒通路2441を通過する冷媒が超臨界状態の単相冷媒であっても、コルゲートフィン247を介しての通過空気に対する熱伝達を良好なものとすることができる。一方、低圧冷媒通路管241は、高圧冷媒通路管244よりも通過空気に対する熱伝達能力が劣る風下側(空気流れの下流側)に設けられているが、低圧冷媒通路2411を通過する冷媒が気液2相冷媒であるために、低圧冷媒通路2411の内面、すなわち低圧冷媒通路管241に対する熱伝達は十分なものであり、通過空気に対する熱伝達も十分に良好なものである。この結果、上記左庫内熱交換器24cでは、総合的な熱交換効率の向上を図ることができる。しかも、高圧冷媒通路管244を低圧冷媒通路管241よりも空気流れの上流側に配設しただけなので、部品点数の増大、製造工程の増大等を招来せず、極めて簡単な方法で構成することができる。従って、簡単な構成で熱交換効率の向上を図ることができる。
【0063】
このような熱交換器(左庫内熱交換器24c)を有する自動販売機では、例えば夏期を除く期間にHCC運転若しくはHHC運転を行うことになるが、上述したように上記左庫内熱交換器24cにより熱交換効率の向上を図ることができるので、消費電力の低減化を図ることができる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更を行うことができる。
【0065】
上述した実施の形態では、熱交換器は、低圧冷媒通路管241及び高圧冷媒通路管244が蛇行状に形成され、かつコルゲートフィン247が熱的に接続されたものであったが、本発明では、銅配管にアルミフィンタイプを接続した一般的な熱交換器に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に係る熱交換器は、例えば自動販売機等において商品を所望の温度に調整するために用いられる冷媒回路装置に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 本体キャビネット
3 商品収容庫
3a 右庫
3b 中庫
3c 左庫
10 冷媒回路
20 主経路
21 圧縮機
22 庫外熱交換器
23 膨張機構
24 庫内熱交換器
24a 右庫内熱交換器
24b 中庫内熱交換器
24c 左庫内熱交換器
241 低圧冷媒通路管
2411 低圧冷媒通路
2412 入口側端部
2413 出口側端部
241a 水平延在部位
242 低圧冷媒入口ヘッダ
243 低圧冷媒出口ヘッダ
244 高圧冷媒通路管
2441 高圧冷媒通路
2442 入口側端部
2443 出口側端部
244a 水平延在部位
247 コルゲートフィン
25 冷媒配管
31 高圧冷媒導入配管
32 放熱配管
33 戻配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された気液2相状態の低圧冷媒が自身の低圧冷媒通路を通過する場合に、フィン部材を介して該低圧冷媒を自身の周囲を通過する空気と熱交換させて該空気を冷却する一方、供給された単相状態の高圧冷媒が自身の高圧冷媒通路を通過する場合に、フィン部材を介して該高圧冷媒を自身の周囲を通過する空気と熱交換させて該空気を加熱する熱交換器において、
前記高圧冷媒通路が前記低圧冷媒通路よりも前記空気の流れの上流側に配設したことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記冷媒が二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱交換器を備えたことを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−230631(P2012−230631A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99770(P2011−99770)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】