説明

熱交換器用アルミニウム細管およびこれを用いた熱交換器

【課題】本発明は、外径2〜5mmに細径化したアルミニウム製の細管において、座屈や変形を引き起こすことなく拡管が可能な熱交換器用アルミニウム製細管の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる外径2mm以上、5mm以下の熱交換器用伝熱管とする管本体からなる細管であり、管本体の内面に、管本体の長手方向に延在する突条型の放熱フィンが管本体の内周方向に沿って間隔をあけて略均等に複数形成され、これら放熱フィンの間に複数のフィン溝が形成され、該フィン溝の部分の管本体の肉厚が0.1mm以上、0.6mm以下、前記放熱フィン高さが0.05mm以上、0.35mm以下、前記フィン溝の数が20以上、60以下、前記管本体内周の周方向に存在する複数の放熱フィンの頂平部合計幅が前記管本体の内底面全周長に対する割合で20%以上、80%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面溝付き型の熱交換器用アルミニウム細管およびこれを用いた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン用の熱交換器は、主として、ヘアピン状に折曲加工した銅管からなる伝熱管と、アルミニウムまたはアルミニウム合金の板材からなるフィン(以下、アルミニウムフィンと略称する)とから構成されている。例えば、熱交換器の伝熱部は、U字状に折曲加工した銅管からなる伝熱管をアルミニウムフィンの貫通孔に挿通し、U字状の伝熱管内にビュレットと称される治具を挿入して拡管することにより、伝熱管とアルミニウムフィンとを密着させている。そして、このU字状の伝熱管の開放端を拡管してこの拡管開放部に同じくU字状に折曲加工したベンド管を挿入し、このベンド管をろう付けすることで銅管を接続し、熱交換器としている。
【0003】
従来、銅管からエアコン用の熱交換器の伝熱部を構成する場合、銅管の組成や金属組織を改善し銅管の構成材料の組成改善、組織改善を行うことが必要であり、以下の特許文献1に記載のように組成を調整して引張強さを改善し、結晶組織の改善を行って集合組織を誘導するなどの改善策がなされてきた。
【0004】
エアコン用熱交換器の性能向上のため、伝熱部を構成する銅管はその形状や組織、組成の面で種々の改良がなされてきているが、近年の資源、エネルギー事情の高まりを背景として、東南アジア等の諸外国においてインフラ整備が急速に進められている関係から、送電線用途などとして銅の需要が急速に高まり、銅のコストが高騰し始めている。
そこで、銅よりも安価な金属で加工性に富み、熱交換器用の一部構成材料として多用されているアルミニウムを用いて伝熱管を構成しようとする試みがなされている。
【0005】
銅管からなる伝熱管の置き換えとしてアルミニウム製の伝熱管とした場合、アルミニウムが銅よりも変形し易いことに鑑み、アルミニウム製の伝熱管の内面に溝を形成しておき、ビュレットが溝を介し伝熱管の拡管を行う場合に、好適な溝形状を検討し、伝熱管の変形を抑制しようとした技術が特許文献2に開示されている。
即ち、伝熱管を拡管する際、ビュレットと称される拡張子を伝熱管の内側に挿通して伝熱管の管壁を塑性変形させて拡張するので、その塑性変形分を考慮して好適な溝形状を工夫すると、拡管後において良好な溝形状の伝熱管を得ることができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−102690号公報
【特許文献2】特開2001−289585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アルミニウムからなる伝熱管を熱交換器に適用する場合において、伝熱管を細径化すると、伝熱管が高耐圧化したことになるので、伝熱管を薄肉化することができる。また、熱交換器の性能向上を図るために、冷媒通路を狭くした場合、冷媒の流速向上に直結するので、伝熱管を細管として薄肉化することが熱交換器の内部熱伝達効率が良好になることを意味する。
上述のような背景から、熱交換器用の伝熱管は薄肉化がなされ、熱交換器としての更なる高性能化の面から、アルミニウム製の外径2〜5mm程度の細管が検討されている。
しかし、外径2〜5mm程度の細管を伝熱管として使用すると、細管の内面に溝を形成した場合、拡管時にビュレットを挿通させる場合の抵抗が大きくなり、細管が変形するか座屈する問題がある。
【0008】
先の特許文献2に記載の技術によれば、伝熱管の外径が7mm程度のサイズの場合の熱交換器について望ましい溝形状が検討されたが、熱交換器の更なる性能改善、伝熱管の薄型化に伴い、アルミニウム製の外径2〜5mm程度の細管が使用される場合は、伝熱管の肉厚が薄く、座屈や変形し易い問題が顕在化するので、アルミニウム製であって、細径化した伝熱管において、特別な溝形状を検討する必要があった。
【0009】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、熱交換器用であって、外径2〜5mmに細径化したアルミニウム製の細管において、座屈や変形を引き起こすことなく拡管が可能な熱交換器用アルミニウム製細管とそれを備えた熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の熱交換器用細管は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる外径2mm以上、5mm以下の熱交換器用伝熱管とする管本体からなる細管であり、管本体の内面に、管本体の長手方向に延在する突条型の放熱フィンが管本体の内周方向に沿って間隔をあけて略均等に複数形成され、これら放熱フィンの間に複数のフィン溝が形成され、該フィン溝の部分の管本体の肉厚が0.1mm以上、0.6mm以下、放熱フィンの高さが0.05mm以上、0.35mm以下、前記フィン溝の数が20以上、60以下、前記管本体内周の周方向に存在する複数の放熱フィンの頂平部合計幅が前記管本体の内底面全周長に対する割合で20%以上、80%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の熱交換器用細管は、前記放熱フィンの横断面形状が、頂平部とそれを挟む2つの傾斜部を有する等脚台形状に形成され、前記2つの傾斜部のなす山頂角が10゜以上、60゜以下とされたことを特徴とする。
本発明の熱交換器用細管は、前記管本体の横断面において前記全ての放熱フィンの中心軸が前記管本体の径方向に対し10゜以上、30゜以下の角度で傾斜されてなることを特徴とする。
本発明の熱交換器用細管は、前記放熱フィンの横断面形状において、頂平部とそれを挟む2つの傾斜部を有し、前記2つの傾斜部の傾斜角度を同一、前記2つの傾斜部の高さを相違させて台形状に形成され、前記2つの傾斜部の前記管本体の内底面に対する山頂角が10゜以上、30゜以下とされたことを特徴とする。
本発明の熱交換器は、先のいずれかに記載の熱交換器用細管を伝熱管として備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外径2〜5mmの細管からなる伝熱管であっても、熱交換器用として放熱フィンが好適な大きさと間隔で形成された溝付き細管とされているので、座屈や変形を引き起こすことなく拡管することができ、熱交換器用伝熱管として利用できる。
また、本発明に係る細管であるならば、拡管後において好適な放熱フィン形状とフィン高さとフィン数、並びに、放熱フィン高さとフィン溝数を確保できるので、熱交換器用の伝熱管とした場合に良好な熱交換効率の熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1実施形態の熱交換器用アルミニウム細管を示す横断面図。
【図2】本発明に係る第2実施形態の熱交換器用アルミニウム細管を示す横断面図。
【図3】図1と図2に示す熱交換器用アルミニウム細管に形成されている放熱フィンの一例を示すもので、図3(a)は放熱フィンの山頂角を示す図、図3(b)は捻り状態とした放熱フィンの傾斜部の傾斜角度を示す図、図3(c)は放熱フィンの捻り状態の他の例を示す図、図3(d)は放熱フィン傾斜形態が頂平部のみの場合の例を示す図。
【図4】図2に示す捻り状態とした細管を得るための加工方法の一例を示す説明図。
【図5】図5は捻り加工前後の放熱フィンを示すもので、図5(a)は捻り加工を考慮した場合に捻り加工する前の放熱フィンに与えた傾斜状態の一例を示す説明図、図5(b)は捻り加工を考慮した構造とした場合に捻り加工した後の放熱フィンを示す説明図。
【図6】図6は本発明に係るアルミニウム細管を備えた熱交換器の一例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は本発明に係る第1実施形態のアルミニウムまたはアルミニウム合金製の細管の横断面構造を拡大して示す図であり、この第1実施形態の細管1は、直径数mm、例えば、直径2〜5mm程度の管本体2の内部に複数の突条型の放熱フィン3が形成されてなる。放熱フィン3は、それぞれ管本体2の内周面から管本体2の中心に向いて突出形成され、管本体2の内面全長に渡り延在するように、管本体2の内周面の周方向に所定の間隔で複数形成されている。
本実施形態の放熱フィン3は、管本体2の横断面において、管本体2の中心に向く平坦な頂平部3aとこの頂平部3aを挟むように延在する傾斜部3b、3bとを有する横断面視等脚台形状に形成されている。これらの放熱フィン3は、管本体2の内周面の周方向に所定の間隔で複数形成されているので、管本体2の内周面に沿って隣接する放熱フィン3、3の間にフィン溝4が形成されている。
【0015】
前記細管1を構成する管本体2は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる。本明細書ではアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる細管1について略称してアルミニウム細管と称する。この細管1を構成するアルミニウム合金に特に制限はなく、JISで規定される1050、1100、1200等の純アルミニウム系、あるいは、これらにMnを添加した3003に代表される3000系のアルミニウム合金等を適用することができる。勿論、これら以外にJISに規定されている5000系〜7000系のアルミニウム合金のいずれかを用いて管本体2を構成しても良いのは勿論である。
【0016】
前記管本体2の外径は、2mm〜5mmであることが好ましい。管本体2の外径が2mm未満であると、現状の押出技術によりアルミニウムまたはアルミニウム合金製の細管として管本体2を押出形成することが困難となり、管本体2の外径が5mmを超えると熱交換器用伝熱管とする場合に耐圧が不足して必要な薄肉化が困難となる。
管本体2において放熱フィン3を除いた部分の肉厚、換言するとフィン溝4の部分に対応する管本体2の肉厚(底肉厚)は、0.1mm〜0.6mmの範囲が好ましい。肉厚が0.1mm未満であると熱交換器用伝熱管として見た場合に破壊圧力が不足となり、0.6mmを超える肉厚ではアルミニウム材料が多く必要になり製造コストが上昇してしまう。
【0017】
管本体2において内面溝高さ、換言すると、放熱フィン3の高さは0.05mm〜0.35mmの範囲が好ましい。放熱フィン3の高さが0.05mm未満では拡管時に潰れてしまい、フィンが消失し、拡管荷重が増大するおそれがあり、放熱フィン3の高さが0.35mmを超えるようであると、熱交換器用伝熱管として圧損が高くなり、押出加工で成形不可となる傾向がある。
放熱フィン3において、頂平部3aを挟む2つの傾斜部3b、3bが成す角度(山頂角)は、10゜〜60゜の範囲が好ましい。図3(a)に放熱フィン3の山頂角θの一例を示すが、放熱フィン3を横断面視した場合、頂平部3aを挟む2つの傾斜部3bの延長線が交わって形成される角度θを山頂角と定義する。
山頂角が10゜未満の場合、拡管時に放熱フィン3が潰れ易くなり、拡管不足になり易く、60゜を超える山頂角では、拡管荷重が大きくなり、座屈の問題を生じるおそれがある。
【0018】
管本体2において頂平部合計幅の割合(管本体2の横断面においてフィン溝4が存在する位置に対応する管本体2の底面周長に対し、管本体2の内周に沿って存在する全ての頂平部3aの合計幅の割合)は、20%〜80%の範囲であることが望ましい。頂平部合計幅の割合は、具体的には、図1に示すように管本体2の内周に沿ってn個(nは自然数)の放熱フィン3が形成され、放熱フィン3の頂平部の幅をa〜aとし、それら放熱フィン3、3の間にフィン溝4が形成されている場合、管本体2の底面周長に対し、以下の(1)式で示される関係となる。
頂平部合計幅の割合={(a+a+a+a+…+a)/底面周長}×100 …(1)
頂平部合計幅の割合が20%未満では拡管時に放熱フィン3に荷重が集中するため、潰れる可能性があり、頂平部合計幅の割合が80%を超えると、拡管荷重が高くなり、管本体2が座屈する可能性がある。
【0019】
管本体2において管本体2の周方向に沿うフィン溝4の数(換言すると管本体2の周方向に沿う放熱フィン3の山数)は、20〜60の範囲が好ましい。フィン溝4の数が20未満では放熱フィン3に荷重が集中するため、拡管時に放熱フィン3が潰れる可能性があり、フィン溝4の数が60を超えると拡管荷重が高くなり、管本体2が座屈する可能性が高くなる。
管本体2において、前記の範囲の外径、肉厚、放熱フィン高さ、頂平部合計幅の割合を満たすならば、前記構造の管本体2を熱交換器用の伝熱管としてフィンと組み合わせ、拡管して使用したとしても、拡管時に座屈することがなく、圧損が少ない状態で冷媒の輸送が出来、良好な熱交換性能を確保でき、コスト面でも問題の生じないという作用効果を得ることができる。
【0020】
図2は本発明に係る第2実施形態のアルミニウムまたはアルミニウム合金製の細管の横断面構造を示し、この実施形態の細管10は、第1実施形態の細管1と同様、管本体12の内周に突条型の放熱フィン13が形成されている点、隣接する放熱フィン間にフィン溝14が形成されている点、管本体12が第1実施形態の構造と同等範囲の外径、肉厚、放熱フィン高さ、頂平部合計幅割合を満たす点については同等構造とされている。また、放熱フィン13は管本体12の横断面において、頂平部13aと傾斜部13b、13bとから構成されている形状についても第1実施形態の構造と同様である。
【0021】
この第2実施形態の細管10において、先の第1実施形態の細管1と異なる点は、放熱フィン3が細管10の内周面に沿ってその長さ方向に螺旋を描くように形成されている点である。
管本体12の内部に形成されている複数の放熱フィン13は全ての放熱フィン13が同じピッチで螺旋状に形成されていて、放熱フィン13の間に形成されているフィン溝14についても管本体12の内部において所定のピッチで螺旋を描くように形成されている。
また、管本体12を横断面視した場合、図3(a)に示すように放熱フィン13が傾斜していない状態(放熱フィン13の横断面の中心軸線S1が管本体12の径方向に沿う状態)に対し、本実施形態の放熱フィン13は図3(b)に示すように管本体12を横断面視した状態において、放熱フィン13の中心軸線S2が管本体12の周面に対し、60゜〜80゜の範囲の傾斜角θで傾斜されている。換言すると、放熱フィン13を横断面視した状態において、放熱フィン13の中心軸線S2は管本体12の径方向に対し10〜30゜(90゜−θ)の範囲で傾斜されている。
【0022】
本実施形態の放熱フィン13を備えた細管10であっても、先の第1実施形態の細管1と同等の作用効果を得ることができる。この第2実施形態のように放熱フィン13を管本体12の長さ方向に螺旋状になるように形成することで、フィン溝14についても管本体12の長さ方向に螺旋状に形成されるので、管本体12を冷媒が流れる際、冷媒との熱交換効率を良好にすることができる。
【0023】
次に、放熱フィン13の形状については、拡管時の加工に耐えるように構成することが好ましい。例えば、管本体12の内部には3次元的に形状付与された放熱フィン13が形成されているが、このような3次元形状を有した放熱フィン13を備えた管本体12をビュレットにより拡管する場合、放熱フィン13が螺旋状に配置されていると、ビュレットが放熱フィン13をそれらの捻り方向に沿って倒しつつ拡管してしまうことがある。
これを防止するためには、ビュレットが放熱フィン13を倒すと想定される方向と反対側に予め放熱フィン13を傾斜させておく必要がある。このように予め放熱フィン13を傾斜させておくことで、ビュレットによる拡管後においても放熱フィン13が潰れていない、目的の構造を提供できる。
【0024】
例えば、一例として、管本体12に対し螺旋状に放熱フィン13が形成されている場合、管本体12の一端側から他端側に向けてビュレットを挿入して管本体12を拡管するので、ビュレットの挿入方向に沿って螺旋状の放熱フィン13を倒す方向に力が作用するので、この倒れる方向と反対側、即ち、ビュレットを挿入する方向と反対側に向いて放熱フィン13を予め倒しておけば良い。
このように放熱フィン13を予めビュレットの挿入方向と反対方向に傾斜させる構成とすることで、拡管時にビュレットにより放熱フィン13が倒れてしまうことを無くすることができる。よって、放熱フィン13の倒れていない、しかも螺旋状に放熱フィン13を配置した構造の管本体からなる熱交換器用のアルミニウム製細管を伝熱管として備えた熱交換器を得ることができる。
なお、先に説明した放熱フィン13の形状については、図3(b)に示す形状に限らず、図3(c)に示すように頂平部23aとそれを挟む2つの傾斜部23b、23bとからなる台形状の放熱フィン23であって、左右の傾斜部23bの長さを異ならせ、左右非対称の台形状に加工した形状の放熱フィン23であっても良い。
この放熱フィン23は頂平部23aを管本体の径方向に対し傾斜角θで傾斜させた放熱フィンとして表記できる。
また、先に説明した放熱フィン13の形状については、図3(c)に示す形状に限らず、図3(d)に示すように頂平部33aとそれを挟む2つの傾斜部33b、33bとからなる台形状の放熱フィン33であって、左右の傾斜部33bの傾斜角度が同一とされ、左右の傾斜部33bの高さを異ならせて台形状に加工した形状の放熱フィン33であっても良い。
この放熱フィン33は頂平部33aを管本体の内底面(図3(d)では内底面と平行な線)に対する傾斜角θで傾斜させた放熱フィンとして表記できる。
【0025】
図4は放熱フィン13を形成した管本体12を加工して放熱フィン13を傾斜させるための方法の一例を示すもので、巻胴35の外周面に図1に示す断面構造の管本体2を巻き付け、巻き付け後に巻胴35の軸方向と平行方向に管本体2を引き抜く引張加工を施すことで、図2に示す断面構造であって、管本体12の内部に螺旋状に旋回させた放熱フィン13を備えた細管10を得ることができる。なお、この方法で細管10を作製する場合、放熱フィン13を予め目的の方向に倒した状態で細管を作製することができる。
【0026】
例えば、細管を拡管する場合、図5(a)に示すように放熱フィン13’を一方向に倒すように所定の角度傾斜させて形成しておき、図5(a)の左側から右側に向けてビュレットを挿通させて拡管すると、放熱フィン13を図5(b)に示すようにほぼ直立するように変形させることができる。なお、図5(b)は管本体12の部分断面を簡略的に示すので放熱フィン13が螺旋状には描かれてはいないが、放熱フィン13は管本体12の内周面に沿って螺旋状に形成されているものとする。
以上説明のように予め所定の方向に倒れさせた状態で管本体の内面に螺旋状に複数の放熱フィン13’を図5(a)に示すように形成することができるので、この放熱フィン13’を備えた細管を熱交換器の伝熱管としてフィンの挿通孔に挿通し拡管することで、図5(b)に示すように倒れていない状態の螺旋状に配置した放熱フィン13を備えた細管10を熱交換器用の伝熱管として組み込むことができる。
【0027】
図6は、前述の構成の放熱フィン3あるいは放熱フィン13を備えた熱交換器の一例を示すもので、この例の熱交換器30は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製のフィン材を多層積層した構成のフィン31に対し、このフィン31を貫通するように細管1あるいは細管10が接合されている。
フィン31を貫通した細管1あるいは細管10の端部にはエルボ管32を接合することで細管1あるいは細管10が蛇行管として構成されている。
図6に示す構成の熱交換器30は、前述の構造の細管1あるいは細管10を有しているので、銅の細管を備えた構造よりも低コストで製造することができ、また、細管1、10を備えているので、拡管時の座屈が生じていない細管1、10からなる伝熱管を備え、フィン31に対する接合状態の良好な伝熱管を備えた熱交換器30を提供できる。
【実施例】
【0028】
JIS規定3003合金を押出加工して図1に示す形状と図2に示す形状のアルミニウム製細管を複数作成した。
図1に示す構造の細管は通常の押出で作製した。また、図2に示す細管の構造は、図1に示す構造のアルミニウム製細管を製造後、円筒状の巻胴に細管を巻き付け、巻き付け後に巻胴の中心軸と平行な方向に巻胴の周面から引き剥がすように細管を引っ張ることで形成した。
【0029】
細管の外径、肉厚、放熱フィン高さ(頂平部の中央の高さ)、頂平部合計幅割合、山頂角、山頂平部傾斜角、放熱フィンの傾斜形態について以下の表1に示すように設定してそれぞれ試料を作製した。
表1において肉厚とは、フィン溝部分における管本体の肉厚、山頂角とは放熱フィンの2つの傾斜部のなす角度、山頂平部傾斜角とは管本体をねじり加工して螺旋状の放熱フィンを管本体の径方向に対して所定の角度倒す場合の倒す角度、放熱フィン傾斜形態とは、図3(b)に示す形状(1つの放熱フィンを横断面視した場合にその放熱フィン全体がその中心軸線を傾斜させて傾斜された状態)か、図3(c)に示す状態(放熱フィンの頂平部のみ傾斜した状態)のいずれかであることを意味する。
表1において拡管性評価基準は以下の通りである。
◎拡管性良好。
○拡管率狙い値を若干下回り、外部フィンとの密着が若干悪い。
△コアの座屈こそ生じないものの、拡管荷重が高い、あるいは拡管率が低く、外部フィンとの密着が悪い。
×拡管荷重が高く、コアが座屈、あるいは拡管率狙い値を明らかに下回り、外部フィンとの密着が悪い。
表1において破壊圧力評価基準は、5MPa以下NG、圧損判断基準は、100MPa以上をNGとした。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示す結果から、比較例1の試料では管本体の外径を2mm未満としたので冷媒を流す際の圧損が大きくなり、比較例2の試料では管本体の外径を5mmを超える値としたので耐圧が不足した。このことから細管の外径について、2〜5mmの範囲が望ましいと判断できる。
比較例3の試料では、肉厚が0.1mm未満であるので、耐圧不足となり、比較例4の試料では、肉厚が0.6mmを超える0.8mmであるのでコスト高となった。このことから肉厚について、0.1mm〜0.6mmの範囲が望ましいと判断できる。
【0032】
比較例5の試料では、放熱フィン高さが0.05mm未満の0.03mmであるので、拡管時に放熱フィンが潰れる結果となり、拡管加重が高くなってコアの座屈が生じ、比較例6の試料では、放熱フィン高さが0.35mmを超える0.4mmであるので圧損が大きくなった。このことから放熱フィン高さについて、0.05mm〜0.35mmの範囲が望ましいと判断できる。
比較例7の試料では、頂平部合計幅の割合が20%未満の15%であるので、拡管時に放熱フィンが潰れる結果となり、拡管加重が高くなってコアの座屈が生じ、比較例8の試料では、頂平部合計幅の割合が80%を超える85%であるので拡管荷重が大きくなった。このことから頂平部合計幅の割合について、20〜80%の範囲が望ましいと判断できる。
【0033】
比較例9の試料では、フィン溝数が20を下回る15であるので、拡管時にコアが座屈する結果となり、比較例10の試料では、フィン溝数が60を超える65であるので圧損が大きくなった。このことからフィン溝数について、20〜60の範囲が望ましいと判断できる。
実施例23の試料では、山頂角が10゜未満の5゜であるので、やや拡管不足の結果となり、実施例24の試料では、山頂角が60゜を超える65゜であるのでやや拡管荷重が大きくなった。このことから山頂角について、10゜〜60゜の範囲が望ましいと判断できる。
実施例25の試料では、山頂平部傾斜状態が10゜未満の5゜であるので、やや拡管不足の結果となり、実施例26の試料では、山頂平部傾斜状態が30゜を超える35゜であるのでやや圧損大となった。
【0034】
以上説明したように、本発明の範囲とした実施例1〜28の試料は、好適な外径、肉厚、放熱フィン高さ、フィン溝数、頂平部合計幅割合、好適な山頂角を有するので、拡管時に放熱フィンを潰すことなくフィンに接合でき、拡管時に座屈や折損のおそれのない熱交換器用アルミニウム製細管として提供できる。
【符号の説明】
【0035】
1、10…細管、2、12…管本体、3、13、13’、23…放熱フィン、3a、13a、23a…頂平部、3b、13b、23b…傾斜部、4、14…フィン溝、S1、S2、S3…中心軸線、θ…山頂角、θ、θ、θ…傾斜角、30…熱交換器、31…フィン、32…エルボ管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる外径2mm以上、5mm以下の熱交換器用伝熱管とする管本体からなる細管であり、管本体の内面に、管本体の長手方向に延在する突条型の放熱フィンが管本体の内周方向に沿って間隔をあけて略均等に複数形成され、これら放熱フィンの間に複数のフィン溝が形成され、該フィン溝の部分の管本体の肉厚が0.1mm以上、0.6mm以下、前記放熱フィン高さが0.05mm以上、0.35mm以下、前記フィン溝の数が20以上、60以下、前記管本体内周の周方向に存在する複数の放熱フィンの頂平部合計幅が前記管本体の内底面全周長に対する割合で20%以上、80%以下である熱交換器用アルミニウム細管。
【請求項2】
前記放熱フィンの横断面形状が、頂平部とそれを挟む2つの傾斜部を有する等脚台形状に形成され、前記2つの傾斜部のなす山頂角が10゜以上、60゜以下とされた請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム細管。
【請求項3】
前記管本体の横断面において前記全ての放熱フィンの中心軸が前記管本体の径方向に対し10゜以上、30゜以下の角度で傾斜されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器用アルミニウム細管。
【請求項4】
前記放熱フィンの横断面形状が、頂平部とそれを挟む2つの傾斜部を有し、前記2つの傾斜部の傾斜角度を同一、前記2つの傾斜部の高さを相違させて台形状に形成され、前記2つの傾斜部のなす頂平部の前記管本体の内底面に対する傾斜角度が10゜以上、30゜以下とされた請求項1または2に記載の熱交換器用アルミニウム細管。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換器用アルミニウム細管を伝熱管として備えたことを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92335(P2013−92335A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236065(P2011−236065)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)