説明

熱交換器

【課題】 高温流体8の入口側ヘッダープレート1の近傍における冷却水の沸騰を防止し、沸騰に伴う、熱交換器内部の腐蝕や破壊を防止すること。
【解決手段】 入口側ヘッダープレート1に隣接したケーシング5の端部に偏平チューブ3の並列方向に冷却水の入口パイプ10を設け、入口パイプ10の外周にスリット状の冷却水流出口6を入口パイプ10の軸線方向に設けかつ、それを偏平チューブ3と入口側ヘッダープレート1との付根部に向けて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスを冷却する熱交換器の如く、高温流体を冷却水によって冷却するものであって、特に高温ガスの流入側ヘッダープレートの近傍での冷却水の沸騰を防止するものに関する。
【背景技術】
【0002】
一例として排気ガス熱交換器は、図4に示す如く、互いに離間した一対のヘッダプレート1(右側省略)に多数の偏平チューブ3の両端を貫通固定してコアを構成し、そのコアの外周をケーシング5で被蔽し、各ヘッダプレートにヘッダ本体12の開口端を接続すると共に、ケーシング5外周に一対の冷却水出入口6aを配置したものである。そして一方のヘッダプレート1側から高温の排気ガス8を導き、各チューブ3内に流通させると共に、チューブ3の外面側に冷却水9を流通させる。
このような熱交換器において、入口側ヘッダープレート1のチューブ3の付根部に冷却水の淀み13(淀み)が生じ、そこに冷却水の局部沸騰が生じ、熱交換器の腐蝕や破壊につながることがあった。
下記特許文献1は、偏平チューブの平坦な平面上に生じる沸騰防止方法として、冷却水の入口から僅か下流側で、偏平チューブにリブを設けると共に、冷却水入口に対向したケーシングの側壁内面に外側に広がる膨出部を設けて、そこに衝突した冷却水の流れをリブに沿って流すことにより、冷却水の沸騰を抑制する提案がなされている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−90693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者の実験によれば、冷却水の沸騰は偏平チューブの付根における平坦部分のみならず、図4に示す如く、偏平チューブ3の側面と入口側ヘッダープレート1とのコーナー部においても、よどみ部13が形成され、そこで冷却水の沸騰が起こり、その近傍において熱交換器の各部品に腐食が生じ、破壊が起こるおそれがある。
そこで、本発明はかかる問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、入口側ヘッダープレート(1)に、複数の偏平チューブ(3)の端部が貫通固定されたコア(4)と、そのコア(4)の外周を被蔽するケーシング(5)と、入口側ヘッダープレート(1)に隣接して、ケーシング(5)の一端部に設けられた冷却水出口(6)および、ケーシング(5)の他端部に設けた冷却水入口(7)とを具備し、その入口側ヘッダープレート(1) から各偏平チューブ(3) 内に高温流体(8) が流入し、ケーシング(5)内に冷却水(9) が流通する熱交換器において、
その入口側ヘッダープレート(1) に隣接したケーシング(5)の端部に、前記偏平チューブ(3) の並列方向に冷却水の入口パイプ(10)が設けられ、その入口パイプ(10)の外周にスリット状の冷却水流出口(6)がその入口パイプ(10)の軸線方向に形成され、
そのスリット状の冷却水流出口(6)は、偏平チューブ(3) と入口側ヘッダープレート(1) との付根部に向けられたことを特徴とする熱交換器である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
スリット状の前記冷却水流出口(6)が、偏平チューブ(3) の幅方向の縁と、入口ヘッダープレート(1) との付根部に向けられたことを特徴とする熱交換器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱交換器は、入口側ヘッダープレート1に隣接したケーシング5の端部に、偏平チューブ3の並列方向に冷却水の入口パイプ10が設けられ、その入口パイプ10の外周にスリット状の冷却水流出口6が入口パイプ10の軸線方向に形成され且つ、その冷却水流出口6が偏平チューブ3と入口側ヘッダープレート1の付根に向けられているから、冷却水流出口6から流出した冷却水9は、入口側ヘッダープレート1と偏平チューブ3との付根に沿って流通し、その付根部に冷却水の淀み部が生じることを防止できる。それにより、入口側ヘッダープレート1近傍での冷却水の沸騰を防止し、熱交換器の腐食や破壊を防止して、信頼性の高い熱交換器を提供できる。
【0008】
上記構成において、スリット状の冷却水流出口6を偏平チューブ3の幅方向の縁と入口側ヘッダープレート1との付根部に向けた場合には、その偏平チューブ3の幅方向の縁部と入口側ヘッダープレート1との付根部に生じがちな冷却水のよどみ部をより確実に防止し、さらに信頼性の高い熱交換器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。図1は本発明の熱交換器の縦断平面図であり、図2は図1のII‐II矢視断面図および、それに用いられる入口パイプ10の斜視図である。なお、従来技術と同一の構造部分は同一の符号を付してある。
この熱交換器は、図1および図2(A)に示すごとく、互いに離間した一対の入口側ヘッダープレート1および出口側ヘッダープレート2に複数の偏平チューブ3の両端部が貫通固定されてコア4を構成する。そして、コア4の外周をケーシング5によって被蔽し、入口側ヘッダープレート1および出口側ヘッダープレート2に夫々ヘッダ12の開口端が接続されている。そして、入口側ヘッダープレート1のヘッダ12側から高温流体8が各偏平チューブ3に流入し、ケーシング5内に冷却水9が流通する。入口側ヘッダープレート1に隣接したケーシング5の端部には、偏平チューブ3の並列方向に溝状部11が外面側に突設され、その内部に入口パイプ10が挿通され、その入口パイプ10の端部がケーシング5を図2(A)のごとく貫通する。
【0010】
入口パイプ10には、図2(B)のごとく、ケーシング5内部の高さに略等しいスリット状の冷却水流出口6が形成され、それが図1のごとく偏平チューブ3と入口側ヘッダープレート1との付根に向けられている。特に、この例では偏平チューブ3の幅方向縁部と入口側ヘッダープレート1との付根部に冷却水流出口6が向けられている。また、出口側ヘッダープレート2に隣接し、ケーシング5には冷却水流入口7が開口し、その開口縁に出口パイプ15が接合されている。そして、入口パイプ10の図2において上端から冷却水9が流入し、それが冷却水流出口6から入口側ヘッダープレート1と偏平チューブ3との付根部に向けて流出する。それによって、特に偏平チューブ3の幅方向縁部と冷却水流出口6との付根部に生じがちな冷却水のよどみを解消し、そのよどみに基づいて生じる冷却水の沸騰を防止し、沸騰に基づく熱交換器の腐食や破壊を防止する。
入口パイプ10から流出した冷却水9は偏平チューブ3外周を流通し、偏平チューブ3内部の高温流体8との間に熱交換を行い、冷却水流入口7、出口パイプ15を介して外部に流出される。また高温流体8は冷却水9によって冷却され、出口側ヘッダープレート2側のヘッダ12に導かれる。
【0011】
次に、図3は本発明の熱交換器の他の実施の形態を示し、この例が図1のそれと異なる点は、ケーシング5の一部を入口パイプ10として利用したものである。すなわち、この例ではケーシング5の縁部に溝状部11を設け、それに対向させて半筒体14を配置する。また、溝状部11にはパイプ15を連通し、半筒体14にスリット状の冷却水流出口6を設けたものである。そして、その作用および効果は図1のそれとほぼ同一である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の熱交換器の縦断平面図。
【図2】図1のII‐II矢視断面図およびそれに用いられる入口パイプ10の斜視図。
【図3】本発明の他の実施例を示す要部縦断平面図。
【図4】従来型熱交換器の要部縦断平面図。
【符号の説明】
【0013】
1 入口側ヘッダープレート
2 出口側ヘッダープレート
3 偏平チューブ
4 コア
5 ケーシング
6 冷却水流出口
6a 冷却水出入口
【0014】
7 冷却水流入口
8 高温流体
9 冷却水
10 入口パイプ
11 溝状部
12 ヘッダ
13 よどみ部
14 半筒体
15 出口パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側ヘッダープレート(1)に、複数の偏平チューブ(3)の端部が貫通固定されたコア(4)と、そのコア(4)の外周を被蔽するケーシング(5)と、入口側ヘッダープレート(1) に隣接して、ケーシング(5)の一端部に設けられた冷却水出口(6)および、ケーシング(5)の他端部に設けた冷却水入口(7)とを具備し、その入口側ヘッダープレート(1) から各偏平チューブ(3) 内に高温流体(8) が流入し、ケーシング(5)内に冷却水(9) が流通する熱交換器において、
その入口側ヘッダープレート(1) に隣接したケーシング(5)の端部に、前記偏平チューブ(3) の並列方向に冷却水の入口パイプ(10)が設けられ、その入口パイプ(10)の外周にスリット状の冷却水流出口(6)がその入口パイプ(10)の軸線方向に形成され、
そのスリット状の冷却水流出口(6)は、偏平チューブ(3) と入口側ヘッダープレート(1) との付根部に向けられたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
スリット状の前記冷却水流出口(6)が、偏平チューブ(3) の幅方向の縁と、入口ヘッダープレート(1) との付根部に向けられたことを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−97840(P2009−97840A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272477(P2007−272477)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】