説明

熱交換器

【課題】高性能、高品質で生産性が良い冷却器用の熱交換器を提供する。
【解決手段】長プレートフィン4aの風上側の長孔5は、両端のキャッチ孔6をつなぐ直線状のスリット11を扁平に加工された曲管部の冷媒チューブの厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔6の中心を結ぶ直線から一方の側に離れた位置にすると共に、長孔5の両端のキャッチ孔6の間に位置する部分において扁平に加工された曲管部の冷媒チューブの厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔6の中心を結ぶ直線からスリット11とは反対側に離れた位置に長プレートフィン4aにおける他の部分より厚みが薄くなるように直線状のプレス痕10を設け、長孔5への冷媒チューブの挿入により切り起こされた切り起こし部12を、プレートフィン4における他の部分と略平行になるように矯正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍冷蔵空調等に用いられる、いわゆるドッグボーン方式のフィンアンドチューブ型の熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍空調機器に用いられる熱交換器からの冷媒漏れは、冷凍空調機器自体の機能を喪失してしまうことから、熱交換器の冷媒漏れの低減が大きな課題である。また、地球温暖化対策として冷媒のノンフロン化が加速する中で、代替冷媒の大きな候補の可燃性であるHC冷媒においては、製品安全の面からも熱交換器の冷媒漏れの防止は必要不可欠である。
【0003】
冷媒漏れの発生箇所は主に配管の接合部分であることから、冷媒回路を一本の連続した冷媒チューブで構成した接合部を有しない熱交換器のニーズが今後ますます高くなることは必至である。
【0004】
従来この種の熱交換器は、プレートフィンと冷媒チューブを圧入方式または、液圧方式といわれる組立方法で密着固定させている。プレートフィンは一体構造のものが一般的であるが、分割構造のものもある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
図3は特許文献1に開示された従来の熱交換器の斜視図である。
【0006】
図4は特許文献2に開示された従来の熱交換器の斜視図、図5は同従来の熱交換器に用いるプレートフィンの長孔周辺部を拡大した要部拡大斜視図である。
【0007】
図3に示すように特許文献1に開示された従来の熱交換器21は、直管部23bと略U字形の曲管部23aが交互に連続する蛇行状に曲げられ片側の曲管部23aが扁平に加工された冷媒チューブ23と、扁平に加工された曲管部23a側から挿入するための長孔25を空気の流れ方向に複数有する長プレートフィン24aと、扁平に加工された曲管部23a側から挿入するための長孔25を空気の流れ方向に複数有し長プレートフィン24aよりも空気の流れ方向の寸法が短く長プレートフィン24aよりも空気の流れ方向の長孔25の数が少ない短プレートフィン24bとからなる。
【0008】
そして、長プレートフィン24aの片面が短プレートフィン24bと対向、または短プレートフィン24bの片面が長プレートフィン24aと対向するような並びで、且つ長プレートフィン24aの最も風上側の長孔25に挿入される冷媒チューブ23が短プレートフィン24bの最も風上側の長孔25に挿入されない配置で、間隔をあけて互いに平行に多数並べられた長プレートフィン24a及び短プレートフィン24bの長孔25に扁平に加工された曲管部23a側から冷媒チューブ23が挿入されている。
【0009】
長孔25は、平行に対向するキャッチ孔26と両端のキャッチ孔26の間に位置する溝31を有するドッグボーン形状である。キャッチ孔26は冷媒チューブ23の直管部23bの外周面と約半周の部分が密着する略円形であり、溝31の幅は、扁平に加工された曲管部23aの冷媒チューブ23が通る厚みとなっている。
【0010】
冷媒チューブ23を、長プレートフィン24a、短プレートフィン24bに挿入する際は、冷媒チューブ23は、扁平に加工された曲管部23a側から挿入するための長孔25を空気の流れ方向に複数有する長プレートフィン24aと、扁平に加工された曲管部23a側から挿入するための長孔25を空気の流れ方向に複数有し長プレートフィン24aよ
りも空気の流れ方向の寸法が短く長プレートフィン24aよりも空気の流れ方向の長孔25の数が少ない短プレートフィン24bとを、長プレートフィン24aの片面が短プレートフィン24bと対向、または短プレートフィン24bの片面が長プレートフィン24aと対向するような並びで、且つ長プレートフィン24aの最も風上側の長孔25に挿入される冷媒チューブ23が短プレートフィン24bの最も風上側の長孔25に挿入されない配置で、間隔をあけて互いに平行に多数並べられた長プレートフィン24a及び短プレートフィン24bの長孔25に扁平に加工された曲管部23aを挿入する。
【0011】
このとき、扁平に加工された冷媒チューブ23が長孔25の両端のキャッチ孔26の間に位置する溝31部分を貫通する。冷媒チューブ23を長プレートフィン24aと短プレートフィン24bの長孔25に挿入した後、冷媒チューブ23内に液を入れ、その液圧で冷媒チューブ23と長プレートフィン24aと短プレートフィン24b群とを密着固定する。
【0012】
図4、図5に示すように特許文献2に開示された従来の熱交換器31は,直管部と略U字形の曲管部が交互に連続する蛇行状に曲げられ片側の曲管部が扁平に加工された冷媒チューブ33と、間隔をあけて互いに平行に多数並べられたプレートフィン34とからなり、プレートフィン34に形成された長孔35に扁平に加工された曲管部側から冷媒チューブ33が挿入されている。
【0013】
長孔35は、平行に対向する長孔ストレート部37a,37bの両端にキャッチ孔36を有するドッグボーン形状である。キャッチ孔36は直管部の冷媒チューブ33の外周面と半周以上の部分が密着する略円形であり、長孔ストレート部37a,37bの間の溝41の幅は、扁平に加工された曲管部の冷媒チューブ33の厚みよりも狭くなっている。
【0014】
冷媒チューブ33をプレートフィン34の長孔35に挿入する際は、冷媒チューブ33は長孔35に扁平に加工された曲管部を挿入する。このとき、扁平に加工された曲管部の冷媒チューブ33が、長孔ストレート部37a,37bの間隔が扁平に加工された曲管部の冷媒チューブ33の厚みとほぼ等しくなるように、長孔35の両端のキャッチ孔36の間に位置する部分を塑性変形させて貫通する。冷媒チューブ33をプレートフィン34の長孔35に挿入した後、冷媒チューブ33内に液を入れ、その液圧で冷媒チューブ33とプレートフィン34群とを密着固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−333539号公報
【特許文献2】特開平4−86490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の熱交換器21の構成では、表面積の少ない風上側と風下側では性能差があり、性能の良い風下側に霜が付き易く通風を悪くする課題があった。また長孔25は、冷媒チューブ23を挿入するため、長孔25のキャッチ孔26は冷媒チューブ23の直管部23bの外周面と約半周の部分が密着する略円形であり、溝31の幅は、扁平に加工された曲管部23aの冷媒チューブ23が通る厚みに形成しているので、冷媒プレートの表面積減少により熱交換性能が不効率であった。また、溝31から風がバイパスして性能低下となっていた。
【0017】
また、特許文献2に開示された従来の熱交換器31の構成では、性能を上げるために表面積を稼ぐのにプレートフィン34の長孔35は、長孔ストレート部37a,37bの間
の溝41は偏平加工された曲管部33aの冷媒チューブ33の厚みより狭く設けているので表面積は稼げて性能は良いが、扁平に加工された曲管部の冷媒チューブ33通して長孔ストレート部37a,37bを塑性変形させて、曲管部の幅分を長孔ストレート部37a,37bを起こしているが、冷媒チューブ33とプレートフィン34群との密着固定後は長孔ストレート部37a,37bの間の溝41は幅が広くなり、運転時の風が熱交換器31の一群のプレートフィン34の外側両端に位置した長孔35の溝41からバイパスして性能が不効率となっている。
【0018】
また、長孔ストレート部37a,37bは塑性変形して起きたままなので、熱交換器31を蒸発器(冷却器)に用いた場合に、長孔ストレート部37a,37b周辺に凝縮水がたまりやすく、更に水はけが悪くなることで運転時霜の塊が付きやすく、またデフロスト時に霜の塊りが溶けにくいので通風が悪くなったり、デフロスト時間がかかるなど課題があるので熱交換器31は水はけの良い設置方向に設計する課題があった。
【0019】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、高性能、高品質で生産性が良い冷却器用の熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の熱交換器は、間隔をあけて互いに平行に多数並べられた長プレートフィン及び短プレートフィンの長孔に扁平に加工された曲管部側から冷媒チューブを挿入した冷却器用の熱交換器であって、少なくとも長プレートフィンの最も風上側の長孔が、長孔の両端に位置し直管部の冷媒チューブの外周面と半周以上の部分が密着する略円形のキャッチ孔と、扁平に加工された曲管部の厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔の中心を結ぶ直線から一方の側に離れた位置で両端のキャッチ孔をつなぐ直線状のスリットとからなり、長孔の両端のキャッチ孔の間に位置する部分において扁平に加工された曲管部の厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔の中心を結ぶ直線からスリットとは反対側に離れた位置にプレートフィンにおける他の部分より厚みが薄い直線状のプレス痕を有するのである。
【0021】
これにより、長孔のスリットの幅を細く出来るので、長プレートフィンの風上側の表面積が増えて風上側の性能を上げることか可能となる。また、風上側の性能が上がるので霜を風上に多く付けることが出来て長プレートフィンと短プレートフィン同士の配置の間隔が狭い風下側の霜が軽減して通風を妨げないので性能UPが図れる。
【0022】
また、風上側の長孔は、プレートフィンにおける長孔の両端のキャッチ孔の間でスリットとプレス痕との間に位置する部分が、プレートフィンの長孔への冷媒チューブの挿入により、従来よりも弱い力で容易に起こされるようになる。
【0023】
そして、長孔への冷媒チューブの挿入後は、プレートフィンの長孔への冷媒チューブの挿入により切り起こされた、プレートフィンにおける長孔の両端のキャッチ孔の間でスリットとプレス痕との間に位置する部分を、プレートフィンにおける他の部分と略平行になるように矯正するのである。
【0024】
ここで、矯正は、例えば、多数並べられたプレートフィンの間隔よりも薄い厚みで同一の長孔の両端のキャッチ孔に密着する2つの直管部の冷媒チューブの間隔よりも狭い幅の矯正用治具を、同一の長孔の両端のキャッチ孔に密着する2つの直管部の冷媒チューブの間にプレス痕側からスリット側に向かって挿入することにより、行うことができる。
【0025】
長孔により、風上側の長プレートフィンの板面がフラットになるので、運転時の通風抵抗が減少し通風が良くなり熱交換性能を向上させることができる。また、風上側の長プレ
ートフィンと短プレートフィンは互い違いに段差になっていて開口面の長プレートフィンのピッチ間隔が広いので仮に霜のかたまりがついても通風が確保される。また、長孔を備えるので凝縮水の排水性が良くなり、運転時の霜の固まりが軽減でき、デフロスト時間も短くできるので省エネとなる。
【0026】
また、板面がフラットなので通風方向に関係なく設置自由となり設計しやすい使い勝手が良い熱交換器となる。また、冷媒チューブの挿入により起こされた部分が基の位置に矯正されて長孔のスリットの幅を基の狭い状態になるので、長孔のスリットを通る風のバイパスを防げて効率の良い性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の熱交換器は、高性能で品質が確保され、生産性が良く、省エネが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における熱交換器の斜視図
【図2】同実施の形態の熱交換器に用いる長プレートフィン及び短プレートフィンの斜視図
【図3】特許文献1に開示された従来の熱交換器の斜視図
【図4】特許文献2に開示された従来の熱交換器の斜視図
【図5】特許文献2に開示された従来の熱交換器に用いるプレートフィンの長孔周辺部を拡大した要部拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
第1の発明は、直管部と略U字形の曲管部が交互に連続する蛇行状に曲げられ片側の前記曲管部が扁平に加工された冷媒チューブと、前記扁平に加工された前記曲管部側から挿入するための長孔を空気の流れ方向に複数有する長プレートフィンと、前記扁平に加工された前記曲管部側から挿入するための前記長孔を空気の流れ方向に複数有し前記長プレートフィンよりも空気の流れ方向の寸法が短く前記長プレートフィンよりも空気の流れ方向の前記長孔の数が少ない短プレートフィンとからなり、前記長プレートフィンの片面が前記短プレートフィンと対向、または前記短プレートフィンの片面が前記長プレートフィンと対向するような並びで、且つ前記長プレートフィンの最も風上側の前記長孔に挿入される前記冷媒チューブが前記短プレートフィンの最も風上側の前記長孔に挿入されない配置で、間隔をあけて互いに平行に多数並べられた前記長プレートフィン及び前記短プレートフィンの前記長孔に前記扁平に加工された前記曲管部側から前記冷媒チューブを挿入した冷却器用の熱交換器であって、少なくとも前記長プレートフィンの最も風上側の前記長孔は、前記長孔の両端に位置し前記直管部の前記冷媒チューブの外周面と半周以上の部分が密着する略円形のキャッチ孔と、前記扁平に加工された前記曲管部の厚みの略半分の寸法だけ両端の前記キャッチ孔の中心を結ぶ直線から一方の側に離れた位置で両端の前記キャッチ孔をつなぐ直線状のスリットとからなり、前記長孔の両端の前記キャッチ孔の間に位置する部分において前記扁平に加工された前記曲管部の厚みの略半分の寸法だけ両端の前記キャッチ孔の中心を結ぶ直線から前記スリットとは反対側に離れた位置に前記プレートフィンにおける他の部分より厚みが薄い直線状のプレス痕を有する熱交換器である。
【0030】
上記構成において、長プレートフィンの最も風上側の長孔は、長孔の両端に位置し直管部の冷媒チューブの外周面と半周以上の部分が密着する略円形のキャッチ孔と、扁平に加工された曲管部の厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔の中心を結ぶ直線から一方の側に離れた位置で両端のキャッチ孔をつなぐ直線状のスリットとからなるので、長プレートフィンの風上側の表面積が増えて風上側の性能を上げることか可能となる。
【0031】
また、風上側の性能が上がるので霜を風上に多く付けることが出来て長プレートフィン
と短プレートフィン同士の配置の間隔が狭い風下側の霜が軽減して通風を妨げなので性能UPが図れる。
【0032】
また、長プレートフィンよりも空気の流れ方向の寸法が短く長プレートフィンよりも空気の流れ方向の長孔の数が少ない短プレートフィンを有し、長プレートフィンの片面が短プレートフィンと対向、または短プレートフィンの片面が長プレートフィンと対向するような並びで、且つ長プレートフィンの最も風上側の長孔に挿入される冷媒チューブが短プレートフィンの最も風上側の長孔に挿入されない配置で、間隔をあけて互いに平行に多数並べられているので長プレートフィン間のピッチが広くなっているので霜の塊が付いた場合でも通風スペースは確保できているので通風不足による性能ダウンがない。
【0033】
また、表面積増しによりデフロスト時に熱を伝え易くなり除霜時間の短縮になり省エネとなる。
【0034】
また、風上側の長孔は、プレス痕に沿って切り起こし部を折り曲げて、プレートフィンにおける長孔の両端のキャッチ孔の間でスリットとプレス痕との間に位置する部分がプレートフィンの他の部分と比べて傾斜するように、長プレートフィンにおける長孔の両端のキャッチ孔の間でスリットとプレス痕との間に位置する部分を切り起こし部とすることが、プレス痕がないものと比べて弱い力でできる。
【0035】
また、切り起こし部をプレートフィンの他の部分と平行になるように基に戻すことも、プレス痕がないものと比べて弱い力でできる。
【0036】
そのため、プレートフィンの長孔への冷媒チューブの挿入が、プレス痕がないものと比べて弱い力ででき、プレートフィンの長孔に冷媒チューブを挿入した後に、プレートフィンの長孔への冷媒チューブの挿入により切り起こされた、プレートフィンにおける長孔の両端のキャッチ孔の間でスリットとプレス痕との間に位置する部分を、プレートフィンにおける他の部分と略平行になるように矯正することも、プレス痕がないものと比べて弱い力でできる。
【0037】
ここで、矯正は、例えば、多数並べられたプレートフィンの間隔よりも薄い厚みで同一の長孔の両端のキャッチ孔に密着する2つの直管部の冷媒チューブの間隔よりも狭い幅の矯正用治具を、同一の長孔の両端のキャッチ孔に密着する2つの直管部の冷媒チューブの間にプレス痕側からスリット側に向かって挿入することにより、行うことができる。
【0038】
これにより、この長プレートフィンを用いた熱交換器は長プレートフィンの板面がフラットになるので、運転時の通風抵抗が減少し通風が良くなり熱交換性能を向上させることができる。また、蒸発器(冷却器)として使用する場合の凝縮水の排水性が良くなり、運転時の霜の固まりが軽減でき、デフロスト時間も短くできるので省エネとなる。
【0039】
また、板面がフラットなので通風方向に関係なく設置自由となり設計しやすい使い勝手が良い熱交換器となる。また、冷媒チューブの挿入により起こされた部分が基の位置に矯正されて長孔のスリットの幅が基の狭い状態になるので、長孔のスリットを通る風のバイパスを防げて効率の良い性能を得ることができる。
【0040】
また、プレス痕の位置で切り起こしが起きやすく、また折り曲がっても基に戻しやすくなっているので、長孔に扁平に加工された曲管部の冷媒チューブを挿入するときの抵抗(摩擦)が小さく、起こされた部分を矯正用治具等を用いて基に戻すとき抵抗(摩擦)が小さいので、長プレートフィンの板面を傷つけて外観品質を悪くする可能性がほとんどなく、生産性に優れ、外観品質に優れた熱交換器を得ることができる。
【0041】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における熱交換器の斜視図、図2は同実施の形態の熱交換器に用いる長プレートフィン及び短プレートフィンの斜視図である。
【0042】
図1から図2に示すように本実施の形態の熱交換器1は、直管部3bと略U字形の曲管部3aが交互に連続する蛇行状に曲げられ、片側の曲管部3aが扁平に加工された冷媒チューブ3と、扁平に加工された曲管部3a側から挿入するための長孔5を空気の流れ方向に複数有する長プレートフィン4aと、扁平に加工された曲管部3a側から挿入するための長孔5を空気の流れ方向に複数有し長プレートフィン4aよりも空気の流れ方向の寸法が短く、長プレートフィン4aよりも空気の流れ方向の長孔5の数が少ない短プレートフィン4bとからなる。
【0043】
そして、長プレートフィン4aの片面が短プレートフィン4bと対向、または短プレートフィン4bの片面が長プレートフィン4aと対向するような並びで、且つ長プレートフィン4aの最も風上側の長孔に5挿入される冷媒チューブ3が短プレートフィン4bの最も風上側の長孔5に挿入されない配置で、間隔をあけて互いに平行に多数並べられた長プレートフィン4a及び短プレートフィン4bの長孔5に扁平に加工された曲管部3aから冷媒チューブ3を挿入した冷却器用の熱交換器である。
【0044】
そして、少なくとも長プレートフィン4aの最も風上側の長孔5は、長孔5の両端に位置し直管部3bの冷媒チューブ3の外周面と半周以上の部分が密着する略円形のキャッチ孔6と、扁平に加工された曲管部3aの厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔6の中心を結ぶ直線から一方の側に離れた位置で両端のキャッチ孔6をつなぐ直線状のスリット11とからなり、長孔5の両端のキャッチ孔6の間に位置する部分において扁平に加工された曲管部3aの厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔6の中心を結ぶ直線からスリット11とは反対側に離れた位置に長プレートフィン4aにおける他の部分より厚みが薄い直線状のプレス痕10を有する。
【0045】
また、長プレートフィン4aの複数の長孔5のそれぞれのスリット11は、扁平に加工された曲管部3aの厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔6の中心を結ぶ直線から同一方向の一方の側(図2では左側)に離れた位置にある。
【0046】
そして、長プレートフィン4aにおける長孔5の両端のキャッチ孔6の間でスリット11とプレス痕10との間に位置する部分(切り起こし部12)が、長プレートフィン4aにおける他の部分と略平行になっている。
【0047】
以上のように構成された本実施の形態の熱交換器1について、以下に製造方法を説明する。
【0048】
冷媒チューブ3を長プレートフィン4aの片面が短プレートフィン4bと対向、または短プレートフィン4bの片面が長プレートフィン4aと対向するような並びで、且つ長プレートフィン4aの最も風上側の長孔5に挿入される冷媒チューブ3が短プレートフィン4bの最も風上側の長孔5に挿入されない配置で、間隔をあけて互いに平行に多数並べられた長プレートフィン4a及び短プレートフィン4bの長孔5、及び切り起こしなし長孔5に扁平に加工された曲管部3a側から冷媒チューブ3を挿入し、長プレートフィン4aの長孔5の両端のキャッチ孔6の間でスリット11とプレス痕10との間に位置する部分(切り起こし部12)をプレス痕10に沿って(折り曲げて)切り起こして、貫通する。
【0049】
そして、冷媒チューブ3を長プレートフィン4a、短プレートフィン4bの長孔5、切
り起こしなし長孔5に挿入した後、冷媒チューブ3内に液を入れ、その液圧で冷媒チューブ3の直管部3bとプレートフィン4のキャッチ孔6とを密着させることにより、冷媒チューブ3と長プレートフィン4aと短プレートフィン4b群とを密着固定する。
【0050】
次に、多数並べられた長プレートフィン4aの間隔よりも薄い厚みで同一の長孔5の両端のキャッチ孔6に密着する2つの直管部3bの冷媒チューブ3の間隔よりも狭い幅の矯正用治具(図示しない)を、同一の長孔5の両端のキャッチ孔6に密着する2つの直管部3bの冷媒チューブ3の間にプレス痕10側からスリット11側に向かって挿入することにより、長プレートフィン4aの長孔5への冷媒チューブ3の挿入により切り起こされた、長プレートフィン4aにおける長孔5の両端のキャッチ孔6の間でスリット11とプレス痕10との間に位置する部分(切り起こし部12)を、長プレートフィン4aにおける他の部分と略平行になるように矯正する。
【0051】
以上のように本実施の形態では、長プレートフィン4aの風上側の長孔5の両端のキャッチ孔6をつなぐ直線状のスリット11を扁平に加工された曲管部3aの厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔6の中心を結ぶ直線から一方の側(図2では左側)に離れた位置に設けたので長プレートフィン4aの風上側の表面積が増えて風上側の性能を上げることか可能となる。
【0052】
また、風上側の性能が上がるので霜を風上に多く付けることが出来て長プレートフィン4aと短プレートフィン4b同士の配置の間隔が狭い風下側の霜が軽減して通風を妨げない。
【0053】
長孔5の両端のキャッチ孔6の間に位置する部分において扁平に加工された曲管部3aの厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔6の中心を結ぶ直線からスリット11とは反対側に離れた位置に長プレートフィン4aにおける他の部分より厚みが薄くなるように直線状のプレス痕10を設けたので、プレス痕10に沿って長プレートフィン4aを折り曲げて、長プレートフィン4aにおける長孔5の両端のキャッチ孔6の間でスリット11とプレス痕10との間に位置する部分(切り起こし部12)が長プレートフィン4aの他の部分と比べて傾斜するように、長プレートフィン4aにおける長孔5の両端のキャッチ孔6の間でスリット11とプレス痕10との間に位置する部分を切り起こし部12とすることが、プレス痕10がないものと比べて弱い力でできる。
【0054】
また、(切り起こし部12)となった部分を長プレートフィン4aの他の部分と平行になるように基に戻すことも、プレス痕10がないものと比べて弱い力でできる。
【0055】
そのため、プレートフィン4の長孔5への冷媒チューブ3の挿入が、プレス痕10がないものと比べて弱い力ででき、プレートフィン4の長孔5に冷媒チューブ3を挿入した後に、長プレートフィン4aの長孔5への冷媒チューブ3の挿入により切り起こされた、プレートフィン4における長孔5の両端のキャッチ孔6の間でスリット11とプレス痕10との間に位置する部分(切り起こし部12)を、プレートフィン4における他の部分と略平行になるように矯正することも、プレス痕10がないものと比べて弱い力でできる。
【0056】
これにより、この長プレートフィン4aを用いた熱交換器1は長プレートフィン4aの板面がフラットになるので、運転時の通風抵抗が減少し通風が良くなり熱交換性能を向上させることができる。また、蒸発器(冷却器)として使用する場合の凝縮水の排水性が良くなり、運転時の霜の固まりが軽減でき、デフロスト時間も短くできるので省エネとなる。
【0057】
また、板面がフラットなので通風方向に関係なく設置自由となり設計しやすい使い勝手
が良い熱交換器1となる。また、冷媒チューブ3の挿入により起こされた部分が基の位置に矯正されて長孔5のスリット11の幅を基の狭い状態になるので、長孔5のスリット11を通る風のバイパスを防げて効率の良い性能を得ることができる。
【0058】
また、プレス痕10の位置で(切り起こし12)が折れ曲がり易く、また折り曲がっても基に戻しやすくなっているので、長孔5に扁平に加工された曲管部3aの冷媒チューブ3を挿入するときの抵抗(摩擦)が小さく、起こされた部分(切り起こし部12)を矯正用治具等を用いて基に戻すとき抵抗(摩擦)が小さいので、長プレートフィン4aの板面を傷つけて外観品質を悪くする可能性がほとんどなく、生産性に優れ、外観品質に優れた熱交換器1を得ることができる。
【0059】
また、長プレートフィン4aの複数の長孔5のそれぞれのスリット11は、扁平に加工された曲管部3aの厚みの略半分の寸法だけ両端のキャッチ孔6の中心を結ぶ直線から同一方向の一方の側(図2では左側)に離れた位置にしたので、矯正用冶具を挿入するのに挿入の方向が統一できるので工数がかからず、矯正用冶具の構造も複雑にならないので生産性が良く低コストとなる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の熱交換器は、高性能で高品質が確保され、工数が削減でき、設置の方向が規制されず設計しやす使い勝手の良い、生産性が良い、低コストな熱交換器を提供することができるので、アルミニウムを主体とした冷凍冷蔵および空調用、自動車用用にも適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 熱交換器
3 冷媒チューブ
3a 曲管部
3b 直管部
4a 長プレートフィン
4b 短プレートフィン
5 長孔
6 キャッチ孔
10 プレス痕
11 スリット
12 切り起こし部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部と略U字形の曲管部が交互に連続する蛇行状に曲げられ片側の前記曲管部が扁平に加工された冷媒チューブと、前記扁平に加工された前記曲管部側から挿入するための長孔を空気の流れ方向に複数有する長プレートフィンと、前記扁平に加工された前記曲管部側から挿入するための前記長孔を空気の流れ方向に複数有し前記長プレートフィンよりも空気の流れ方向の寸法が短く前記長プレートフィンよりも空気の流れ方向の前記長孔の数が少ない短プレートフィンとからなり、前記長プレートフィンの片面が前記短プレートフィンと対向、または前記短プレートフィンの片面が前記長プレートフィンと対向するような並びで、且つ前記長プレートフィンの最も風上側の前記長孔に挿入される前記冷媒チューブが前記短プレートフィンの最も風上側の前記長孔に挿入されない配置で、間隔をあけて互いに平行に多数並べられた前記長プレートフィン及び前記短プレートフィンの前記長孔に前記扁平に加工された前記曲管部側から前記冷媒チューブを挿入した冷却器用の熱交換器であって、
少なくとも前記長プレートフィンの最も風上側の前記長孔は、前記長孔の両端に位置し前記直管部の前記冷媒チューブの外周面と半周以上の部分が密着する略円形のキャッチ孔と、前記扁平に加工された前記曲管部の厚みの略半分の寸法だけ両端の前記キャッチ孔の中心を結ぶ直線から一方の側に離れた位置で両端の前記キャッチ孔をつなぐ直線状のスリットとからなり、
前記長孔の両端の前記キャッチ孔の間に位置する部分において前記扁平に加工された前記曲管部の厚みの略半分の寸法だけ両端の前記キャッチ孔の中心を結ぶ直線から前記スリットとは反対側に離れた位置に前記プレートフィンにおける他の部分より厚みが薄い直線状のプレス痕を有することを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−207887(P2012−207887A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75047(P2011−75047)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)