説明

熱伝導性熱可塑性接着剤組成物

【課題】プラズマディスプレイのガラスパネルや電子機器の放熱板等の貼り合わせに用いる、高い熱伝導性と、高い接着強度、高い接着信頼性とを有する熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)平均官能基数1.5〜2.2個のエポキシ樹脂、(B)エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するアミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び、(C)黒鉛を含有する熱伝導性熱可塑性接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイのガラスパネルや電子機器の放熱板等の貼り合せに用いる熱伝導性に優れた熱可塑性接着剤組成物に関し、更に詳細には、高い熱伝導性と、高い接着強度、高い接着信頼性とを有し、解体性にも優れる接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル、高輝度LED基板、高性能CPU等は、発熱量が大きいことから、その温度を低下させる方法が検討されている。なかでも、プラズマディスプレイパネルでは、発熱によってガラスパネルに温度むらが生じると、画面の色むらの原因となることから、何らかの方法により温度を低下させることが必要である。
【0003】
一般にプラズマディスプレイパネルの温度低下方法としては、ガラスパネルとアルミや鉄等の金属フレームとを、熱伝導性を有する両面粘着テープで貼り合せる方法が採用されている。該熱伝導性を有する両面粘着テープによりガラスパネルで発生した熱を金属フレームに伝導して放熱することにより、ガラスパネル内の温度上昇を抑え、温度の不均一化を抑制し、画面の色むらを抑制することができる。
【0004】
例えば特許文献1には、黒鉛を液状ゴム、スチレン系ゴム又は非晶性オレフィン樹脂、粘着付与樹脂に配合した熱伝導性熱可塑性粘着剤組成物と、これを用いた熱伝導性シートが記載されている。特許文献1に記載された熱伝導性シートは、高い熱伝導性を有しプラズマディスプレイのガラスパネルや、電子機器の放熱板等の接着に好適であるとされている。更に、特許文献1に記載された熱伝導性シートは、製品のリペア時や製品のライフサイクル終了後には、加熱により容易に解体することができるという特徴も有する。
【0005】
プラズマディスプレイは、年々大型化して、その発生熱量も大きくなっている。また、家庭用テレビに用いられるプラズマディスプレイは、1日のうちで何回も使用による発熱と、スイッチを切った時の冷却が繰り返されることから、極めて過酷な熱履歴を経ても高い接着信頼性を発揮できることが求められる。更に、直射日光のあたる屋外での使用も想定されるなど、プラズマディスプレイの使用環境も多様化している。
特許文献1に記載された熱伝導性シートでは、このような過酷な条件下での高い接着信頼性は得られないという問題があった。そこで、高い熱伝導性と、高い接着強度、高い接着信頼性とを有し、解体性にも優れる接着剤組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第07/148729号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プラズマディスプレイのガラスパネルや電子機器の放熱板等の貼り合わせに用いる、高い熱伝導性と、高い接着強度、高い接着信頼性とを有する熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)平均官能基数1.5〜2.2個のエポキシ樹脂、(B)エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するアミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び、(C)黒鉛を含有する熱伝導性熱可塑性接着剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
(A)平均官能基数1.5〜2.2個のエポキシ樹脂と、(B)エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するアミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含有する接着剤組成物の硬化物は、エポキシ樹脂本来の高い接着性と接着信頼性とを有する一方、熱可塑性をも有するという特異な性質を有する。本発明者は、この接着剤組成物に、更に(C)黒鉛を配合した熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、高い熱伝導性と、高い接着強度、高い接着信頼性とを発揮できるとともに、製品のリペア時や製品のライフサイクル終了後には、加熱により容易に解体することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、(A)平均官能基数1.5〜2.2個のエポキシ樹脂、(B)エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するアミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び、(C)黒鉛を含有する。
【0011】
上記平均官能基数1.5〜2.2個のエポキシ樹脂とは、2官能エポキシ樹脂を主成分として、必要に応じて1官能エポキシ樹脂や3官能以上のエポキシ樹脂を配合したエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂混合物を意味する。エポキシ樹脂の平均官能基数が1.5個未満であると、充分な接着強度や接着信頼性が得られず、2.2個を超えると、熱可塑性が小さくなり、加熱しても解体することが困難となる。エポキシ樹脂の平均官能基数の好ましい下限は1.8個、好ましい上限は2個である。
なお、本明細書において平均官能基数とは、エポキシ樹脂1分子当たりが有するエポキシ基の数を意味する。
【0012】
上記2官能エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂や、2官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂や、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂や、ビフェニル型エポキシ樹脂や、2官能のナフタレン型エポキシ樹脂や、2官能の脂環式エポキシ樹脂や、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ダイマー酸ジグリシジルエステル等な2官能のグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等の2官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂や、2官能の複素環式エポキシ樹脂や、2官能のジアリールスルホン型エポキシ樹脂や、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル等のヒドロキノン型エポキシ樹脂や、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ブテンジオールジグリシジルエーテル、ブチンジオールジグリシジルエーテル等の2官能のアルキレングリシジルエーテル系化合物や、1,3−ジグリシジル−5,5−ジアルキルヒダントイン、1−グリシジル−3−(グリシドキシアルキル)−5,5−ジアルキルヒダントイン等の2官能のグリシジル基含有ヒダントイン化合物や、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,β−ビス(3−グリシドキシプロピル)ポリジメチルシロキサン等の2官能のグリシジル基含有シロキサンや、これらの変性物等が挙げられる。これらの2官能エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、反応性及び作業性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適である。
【0013】
上記2官能エポキシ樹脂は、上記エポキシ樹脂の主成分となるものである。
上記エポキシ樹脂中に占める上記2官能エポキシ樹脂の含有量の好ましい下限は50重量%である。上記2官能エポキシ樹脂の含有量が50重量%未満であると、充分な接着強度や接着信頼性と解体性との両立が困難となることがある。上記2官能エポキシ樹脂の含有量のより好ましい下限は80重量%である。
【0014】
上記1官能エポキシ樹脂は、反応性希釈剤としての役割を有し、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物の粘度を調整する役割を有する。ただし、上記1官能エポキシ樹脂を大量に配合すると本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤の接着強度や接着信頼性を損なうことがあるので、配合は本発明の目的を損なわない範囲としなければならない。
上記1官能エポキシ樹脂は、例えば、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−(3−グリシドキシプロピル)1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン、N−グリシジル−N,N−ビス[ 3−(トリメトキシシリル)プロピル] アミン等のモノグリシジル化合物や、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のモノ脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。これらの1官能エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記3官能以上のエポキシ樹脂を併用することにより、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物による接着強度や接着信頼性をより向上させることができる。ただし、上記3官能以上のエポキシ樹脂を大量に配合すると本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物の解体性を損なうことがあるので、配合は本発明の目的を損なわない範囲としなければならない。
上記3官能以上のエポキシ樹脂は、例えば、3官能以上のフェノールノボラック型エポキシ樹脂や、3官能以上の脂環式エポキシ樹脂や、3官能以上のグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェニルメタン、トリグリシジル−m−アミノフェニルメタン、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン等の3官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂や、3官能以上の複素環式エポキシ樹脂や、3官能以上のジアリールスルホン型エポキシ樹脂や、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3官能以上のアルキレングリシジルエーテル系化合物や、3官能以上のグリシジル基含有ヒダントイン化合物や、3官能以上のグリシジル基含有シロキサンや、これらの変性物等が挙げられる。これらの3官能以上のエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、黒鉛を含有する。
上記黒鉛は、熱伝導材としての役割を果たすものである。
上記黒鉛は特に限定されず、例えば、天然黒鉛であっても、人造黒鉛であってもよい。なかでも人造黒鉛は純度が高く灰分が少ないことから好適である。
【0017】
上記黒鉛の平均粒子径の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は250μmである。上記黒鉛の平均粒子径が0.5μm未満であると、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤の粘度が高くなり、塗工性が悪くなることがあり、250μmを超えると、熱伝導率は良好になるものの、接着信頼性が低下することがある。上記黒鉛の平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は200μmであり、更に好ましい下限は5μm、更に好ましい上限は150μmである。
なお、本明細書において黒鉛の平均粒子径は、レーザー回折法により測定される平均粒子径を意味する。
【0018】
上記黒鉛の形状は特に限定されないが、鱗片状、針状、又はその混合物を用いると、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤の塗布性と、接着後の接着信頼性とを両立させることができる。
なかでも、平均アスペクト比が1.1〜30である黒鉛を含有することが好ましい。このような平均アスペクト比の黒鉛は、上記エポキシ樹脂中において黒鉛同士がより接触し易くなり、より高い熱伝導性を発揮することができる。更に、黒鉛の長径方向を揃えることにより、異方熱伝導性を発揮することもできる。
上記黒鉛の平均アスペクト比が1.1未満であると、熱伝導性向上効果や異方熱伝導性が得られないことがあり、30を超えると、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤の粘度が高くなり、塗工性が悪くなることがある。上記黒鉛のアスペクト比のより好ましい下限は1.2、より好ましい上限は20であり、更に好ましい下限は1.5、更に好ましい上限は10であり、特に好ましい下限は2、特に好ましい上限は5である。
【0019】
なお、本明細書において黒鉛の平均アスペクト比とは、黒鉛を電子顕微鏡で写真撮影し、無作為に抽出した50個の黒鉛粒子画像から求めたアスペクト比の平均値を意味する。また、黒鉛のアスペクト比は、個々の黒鉛粒子画像の最大長と最大長に対する垂直長の比率、すなわち、アスペクト比=(最大長)/(最大長に対する垂直長)の式から求められる黒鉛の針状度を表す。ここで、最大長に対する垂直長は、とり得る最小の値とする。
【0020】
上記黒鉛は、ジブチルフタレート(DBP)吸油量の好ましい下限が30mL/100g、好ましい上限が200mL/100gである。上記黒鉛のDBP吸油量が30mL/100g未満であると、接着信頼性が低下することがあり、200mL/100gを超えると、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤の粘度が高くなり過ぎることがある。上記黒鉛のDBP吸油量のより好ましい下限は50mL/100g、より好ましい上限は160mL/100gであり、更に好ましい下限は60mL/100g、更に好ましい上限は140mL/100gである。
【0021】
上記黒鉛の配合量は、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤の全質量に対して好ましい下限が30重量%、好ましい上限が75重量%である。上記黒鉛の配合量が30質量%未満であると、熱伝導性が不充分となることがあり、75重量%を超えると、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤の粘度が高くなり、塗工性が悪くなることがある。上記黒鉛の配合量のより好ましい下限は35重量%、より好ましい上限が65重量%であり、更に好ましい下限は40重量%、更に好ましい上限が60重量%である。
【0022】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、更に、エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するアミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する。これらの化合物は、エポキシ樹脂に対する硬化剤として働く。エポキシ基と反応し得る官能基を2個有する硬化剤を用いることにより、得られる硬化物は網目状のポリマーとならずに直鎖状のポリマーとなることから、エポキシ樹脂硬化物の高い接着信頼性を有しながら、高い熱可塑性、即ち優れた解体性をも発揮することができる。
【0023】
上記エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するアミン系化合物は、例えば、ピペラジン、ドデシルアミン、ベンジルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
上記エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するフェノール系化合物は、例えば、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等のベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物類や、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)等のビスフェノール類や、ジヒドロキシナフタレン等の縮合環を有する化合物や、ジアリルレゾルシン、ジアリルビスフェノールA、トリアリルジヒドロキシビフェニル等のアリル基を導入した2官能フェノール化合物や、ジブチルビスフェノールA等が挙げられる。
上記エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するチオール系化合物は、例えば、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート等が挙げられる。
これらのアミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記アミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物は、室温で液状又は半固形状のものが好適である。また、上記アミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物の分子量の好ましい下限は50、好ましい上限は1000であり、より好ましい下限は100、より好ましい上限は500である。
【0025】
上記アミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂1当量に対する好ましい下限は0.8当量、好ましい上限は1.2当量であり、より好ましい下限は0.9当量、より好ましい上限は1.1当量である。
【0026】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、更に、熱可塑性樹脂からなる粒子を含有してもよい。上記熱可塑性樹脂からなる粒子を含有することにより、耐衝撃性や解体性が向上する。
上記熱可塑性樹脂からなる粒子の粒子径は特に限定されないが、1〜200μmが好ましい。この程度の粒子径の上記熱可塑性樹脂からなる粒子は、通常のフィラーと同様に接着剤組成物の分散させることができる。
上記熱可塑性樹脂からなる粒子は、例えば、ポリエチレンパウダー、ポリ塩化ビニルパウダー、熱可塑性ポリウレタンパウダー(TPU)等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂からなる粒子は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、熱可塑性ポリウレタンパウダー(TPU)が好適である。
【0027】
上記熱可塑性樹脂からなる粒子の配合量は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は50重量%である。上記熱可塑性樹脂からなる粒子の配合量が10重量%未満であると、耐衝撃性や解体性が向上効果が得られないことがあり、50重量%を超えると、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤の粘度が著しく高くなることがある。上記熱可塑性樹脂からなる粒子の配合量のより好ましい上限は30重量%である。
【0028】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、更に、硬化促進剤、シランカップリング剤、消泡剤、難燃剤、分散剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤等の、一般にエポキシ樹脂組成物に添加される成分を含有してもよい。
【0029】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
【0030】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、高い熱伝導性と、高い接着強度、高い接着信頼性とを発揮できるとともに、製品のリペア時や製品のライフサイクル終了後には、加熱により容易に解体することができる。
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、プラズマディスプレイパネル、高輝度LED基板、高性能CPU等の発熱量が大きい部材を接着し、その放熱を促進する用途に用いることができる。なかでも、プラズマディスプレイパネルにおけるガラスパネルと金属フレームとの接着に用いるプラズマディスプレイパネル用接着剤として好適である。
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物からなるプラズマディスプレイパネル用接着剤もまた、本発明の1つである。
【0031】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、接着する部材に直接塗工して接着に供する。また、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、ダイコーターやプレス機等の従来公知の装置を用いて、離型処理が施されたプラスチックフィルムや紙等の基材に任意の形状に塗工した後、貼り合せする箇所に転写して用いることもできる。本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、熱伝導シートの形でも好適に用いることができる。
【0032】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物の塗工方法は特に制限されず、例えば、プラズマディスプレイのガラスパネルのような平面の部材に均一に塗布する場合には、カーテンコータやロールコータなどを用いることができる。また、ドット状やビード状、スパイラル状等の特定の形状に塗工する必要がある場合には、溶融タンク、保温ホース、塗工ノズルからなるアプリケーター等を用いて、該塗工ノズルから必要な部位に塗工することができる。
【0033】
本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物が平均アスペクト比が1.1〜30である黒鉛を含有する場合には、本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を塗工する際に、黒鉛が配向させるせん断応力かけることにより、高い異方熱伝導性を発揮させることができる。例えば、プラズマディスプレイパネルにおけるガラスパネルと金属フレームとの接着を行う際に、ガラスパネル面に対して垂直方向に黒鉛が配向するように塗工することにより、高い異方熱伝導性を発揮させ、より速やかにガラスパネルの表面温度を均一化することができる。
【0034】
上記黒鉛が配向させるせん断応力かける塗工方法としては特に限定されず、例えば、塗工ノズルとガラスパネル等の塗布面との位置を相対的に面方向に移動させながらビード塗工を行う方法や、塗布ロールの周速と塗布面の移動速度とに速度差をつけたロールコート法により塗工を行う方法等の、接着剤組成物を塗工面の平行方向に変形させながら塗工する方法が挙げられる。また、本発明の粘接着剤組成物を一定の厚さを有するブロック状体又はシート状体の成形した後、該成形体を2本のロールの間に1回又は複数回通過させて延伸処理を施す方法が挙げられる。本発明の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物は、溶融塗布時には粘性が低いことから、黒鉛を配向させることが特に容易である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、プラズマディスプレイのガラスパネルや電子機器の放熱板等の貼り合わせに用いる、高い熱伝導性と、高い接着強度、高い接着信頼性とを有する熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
2官能エポキシ樹脂(旭チバ社製「AER260」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量380)100重量部に対して、硬化促進剤としてトリトリルホスフィン(北興化学社製「TOTP」)1重量部を加えて100℃で溶解させた後、硬化剤としてウルトライトP(本州化学社製、主成分ジブチルビスフェノールA)102重量部を加えて混合した。更に、黒鉛としてG150(中越黒鉛工業所製、人造黒鉛、レーザー回折法により測定した平均粒子径は約100μm、平均アスペクト比3.4)を160重量部加えて混合して、熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を得た。
得られた熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を、塗工アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーター上に加熱硬化後の厚みが1mmになるように塗工した後、130℃オーブン中で1時間加熱硬化させて、厚み1mmの熱伝導シートを得た。
【0038】
(実施例2)
黒鉛としてUF−G30(昭和電工株式会社製、人造黒鉛、レーザー回折により測定した平均粒子径は約10μm、平均アスペクト比3.6)を160重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法により、熱伝導性熱可塑性接着剤組成物及び熱伝導シートを得た。
【0039】
(実施例3)
2官能エポキシ樹脂(旭チバ社製「AER260」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量380)100重量部に対して、硬化促進剤としてテトラメチルアンモニウムクロライド(日本特殊化学工業社製)0.1重量部を加えて100℃で溶解させた後、硬化剤としてエチレングリコールビスチオグリコレート(淀化学社製「EGTG」)58重量部を加えて混合した。更に、黒鉛としてG150を129重量部加えて混合して熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を得た。
得られた熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、熱伝導性シートを作製した。
【0040】
(比較例1)
液状ゴムであるクラプレンLIR−290(クラレ社製、液状水添ポリイソプレンゴム、重量平均分子量25000、水添率約90%)600重量部、スチレン系ゴムであるクレイトンG1650(クレイトンポリマージャパン社製、SEBS(スチレン/(エチレン・ブチレン)重量比=29/71)200重量部、粘着付与樹脂であるYSポリスターT145(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点145℃)200重量部、及び、IRGANOX1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、ヒンダードフェノール系老化防止剤)10重量部を180℃で4時間混合してゴム組成物を調整した。
得られたゴム組成物に、更に、黒鉛としてG150を826重量部を加えて混合して、接着剤組成物を得た。
【0041】
(比較例2)
2官能エポキシ樹脂(旭チバ社製「AER260」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量380)100重量部、1官能エポキシ樹脂(アデカ社製「ED509S」、tert−ブチルフェニル、数平均分子量209)82重量部及びトリトリルホスフィン1.5重量部を加えて100℃で溶解させた後、硬化剤としてウルトライトPを144重量部加えて混合した。更に、黒鉛としてG150を268重量部加えて混合して、熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を得た。
得られた熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、熱伝導性シートを作製した。
なお、用いたエポキシ樹脂混合物の平均官能基数は1.4である。
【0042】
(比較例3)
2官能エポキシ樹脂(旭チバ社製「AER260」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量380)100重量部、3官能エポキシ樹脂(アデカ社製「EP3950S」、数平均分子量277)51重量部及びトリトリルホスフィン2重量部を加えて100℃で溶解させた後、硬化剤としてウルトライトPを179重量部加えて混合した。更に、黒鉛としてG150を272重量部加えて混合して、熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を得た。
得られた熱伝導性熱可塑性接着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、熱伝導性シートを作製した。
なお、用いたエポキシ樹脂混合物の平均官能基数は2.4である。
【0043】
(比較例4)
黒鉛の代わりに、ハイジライトH−42M(昭和電工社製、水酸化アルミニウム、レーザー回折による平均粒子径約1.1μm)を用いた以外は実施例1と同様の方法により接着剤組成物及び熱伝導シートを得た。
【0044】
(比較例5)
黒鉛の代わりに、AX−116(マイクロン社製、球状アルミナ、レーザー回折法により測定した平均粒子径は20μm)を用いた以外は実施例1と同様の方法により接着剤組成物及び熱伝導シートを得た。
【0045】
(評価)
実施例及び比較例で得られた熱伝導性シートについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0046】
(1)熱伝導率の測定
熱伝導性シートを直径50mmの円形に打ち抜き、ASTM E 1530に準拠した方法により、23℃における厚み方向の熱伝導率を測定した。
熱伝導性シートを10枚重ね、面方向と垂直方向とに1mm厚さとなるようにスライスし、スライスしたシートを直径50mmの円形に打ち抜き、ASTM E 1530に準拠した方法により、23℃における水平方向の熱伝導率を測定した。
【0047】
(2)接着信頼性の評価
熱伝導性シートを幅2.5cm、長さ2.5cmに切断し、130℃のホットプレート上で加熱した幅2.5cm、長さ10cm、厚さ0.5mmのアルミニウム板上に置いた。同様に予め130℃のホットプレート上で加熱しておいた、同じ大きさで厚み0.5mmのもう1枚のアルミニウム板を、熱伝導性シートを覆うように置き、軽く圧着し、冷却して、試験片を調製した。
得られた試験片を80℃、相対湿度60%の雰囲気下で168時間放置して、劣化促進試験を行った。劣化促進試験後の試験片を引張試験器を用いて、薄い方のアルミ板を180度剥離するように剥離試験を実施し、剥離時の強度を測定した。
【0048】
(3)解体性の評価
上記(2)接着信頼性と同様にして試験片を調製した。
得られた試験片に130℃の温度をかけ、温度が下がる前に試験片の両端を手袋を着用した両手で引張り、解体性を確認した。2片のアルミ板が容易に分離できたものを「○」、解体に強い力を要するか又は解体が困難であったものを「×」と評価した。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、高い熱伝導性と、高い接着強度、高い接着信頼性とを有し、解体性にも優れる接着剤組成物を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均官能基数1.5〜2.2個のエポキシ樹脂、
(B)エポキシ基と反応し得る官能基を2個有するアミン系化合物、フェノール系化合物及びチオール系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び、
(C)黒鉛
を含有することを特徴とする熱伝導性熱可塑性接着剤組成物。
【請求項2】
黒鉛の含有量が30〜75重量%であることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物。
【請求項3】
黒鉛は、人造黒鉛であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導性熱可塑性粘着剤組成物。
【請求項4】
黒鉛は、ジブチルフタレート吸油量が30〜200mL/100gであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物。
【請求項5】
レーザー回折法による測定される黒鉛の平均粒子径が、0.5〜250μmであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物。
【請求項6】
黒鉛は、平均アスペクト比が1.1〜30であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱伝導性熱可塑性接着剤組成物からなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用接着剤。


【公開番号】特開2011−184668(P2011−184668A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54701(P2010−54701)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】