説明

熱伝導性複合シートおよびその製造方法

【課題】熱伝導性が良好であるのみならずリワーク性にも優れており、特に発熱性電子部品等の放熱・冷却のために発熱性電子部品とヒートシンク、回路基板等の放熱部品の間に介装して用いられる放熱構造体用に好適な熱伝導性複合シートを提供すること。
【解決手段】(a)シリコーン樹脂および熱伝導性充填剤を含有する熱軟化性熱伝導性シート層、並びに
(b)熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性シリコーンゴムシート層
を含む熱伝導性複合シート。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に発熱性電子部品等の放熱のために発熱性電子部品とヒートシンク、回路基板等の放熱部品の間に介装して用いられる放熱構造体用に好適な熱伝導性複合シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビ、ラジオ、コンピュータ、医療器具、事務機械、通信装置等、最近の電子機器の回路設計はデバイスの一層の小型化の進行により複雑性を増している。例えば、トランジスタ数十万個相当分を内包するこれらの電子機器等のために集積回路が製造されている。設計の複雑性は増す一方で、一層小型化された電子部品が製造され、より小面積に更に多数の部品を組み込むことが可能となり、デバイスの寸法はますます小型化している。
【0003】
これら電子部品、特にプリント配線基板上に実装されるCPU等のICパッケージは、使用時の発熱による温度上昇によって性能が低下したり、故障、機能不全等の支障が生じることから、この発熱に伴う問題を改善するために、従来、ICパッケージ等とヒートシンク等の間に、熱伝導性の良いグリース、シリコーンゴムシート等を介在させることが行われている。しかしながら、電子部品の小型化および高性能化に伴ってその発熱量がより多くなってきているため、より放熱性能に優れた部材の開発が求められている。
【0004】
従来の熱伝導性グリースは、CPU等の電子部品、ヒートシンク等の表面の凹凸形状に影響されることなく、それらの被着面に追随かつ密着でき、界面熱抵抗が低いという利点があるが、その一方では、他の部品を汚染したり、長時間の使用によりオイルがブリード・分離したり、経時的に粘度が上昇して被着面と強固に密着しすぎるようになるためリワーク(配設した熱伝導性部材を、電子部品の修理、交換等のため、一旦取り外すこと)時にCPU等の電子部品も一緒に外れて取れてしまう等の欠点があった。
【0005】
また、熱伝導性シリコーンゴムシートは、手軽にマウントできたり、リワーク性が良いという利点はあるものの、その製造過程の加工性の点から熱伝導性充填剤の含有量に制限があり、さらに被着面との密着・追随性が不十分となりやすく実装時の界面熱抵抗が大きいため放熱性能が十分に発揮されないという欠点があった。前記欠点を解消するため、特表2000−509209号公報および特開2000−327917号公報には熱軟化性の層を有する放熱シートについて記載されている。しかしながら、これらの場合には、熱軟化後の樹脂成分が被着面に追随・密着して空隙を生じさせないことにより界面熱抵抗の上昇は防げるものの、従来と同様に熱伝導性充填剤の含有量に限界があり、また、樹脂自体が界面熱抵抗の原因になったり、場合によっては前記熱伝導性グリースの場合と同様に、長時間高温で使用すると電子部品等に強固に密着しすぎてリワーク性が悪くなる等の欠点を有するものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、特に発熱性電子部品の放熱用に用いられ、熱伝導性が良好であるのみならずリワーク性にも優れた熱伝導性複合シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、
(a)シリコーン樹脂および熱伝導性充填剤を含有する熱軟化性熱伝導性シート層、並びに(b)熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性シリコーンゴムシート層を含む熱伝導性複合シートおよびその製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
[(a)熱軟化性熱伝導性シート層]
本発明の熱伝導性複合シートにおいて、(a)層である熱軟化性熱伝導性シート層は、基本的にマトリックス相となるシリコーン樹脂と該マトリックス中に分散された熱伝導性充填剤とを含む組成物によって形成されるものである。また、該(a)層は、本発明に係る複合シートが発熱性電子部品等に接触する側の層であって、発熱性電子部品等の動作時の発熱により、少なくとも(a)層の接触面が低粘度化、熱軟化または融解して、(a)層表面が流動化し被着面に追随・密着することにより空隙を生じさせることがなく界面熱抵抗の上昇を抑制するとの機能を有するとともに、熱伝導性充填剤が高割合で配合されていることから、良好な熱伝導性を確保して放熱特性を向上させるとの作用・効果を生じさせるという機能をも有する層である。
【0010】
<シリコーン樹脂成分>
本発明で用いられる前記シリコーン樹脂としては、(a)層を構成する前記シリコーン樹脂と熱伝導性充填剤を含む組成物が、実質的に常温で固体であって、通常、40℃以上、発熱性電子部品の発熱による最高到達温度以下、即ち、40〜100℃、特に40〜90℃程度の温度範囲において、低粘度化、熱軟化または融解して、少なくとも(a)層の発熱性電子部品との接触表面が流動化するものであればよい。この(a)層の熱軟化性には、マトリックス相であるシリコーン樹脂が重要な因子となる。
【0011】
ここで、前記低粘度化、熱軟化または融解する温度は、前記組成物としてのものであり、シリコーン樹脂自体が 40℃未満の融点をもつものである場合を排除するものではない。ただし、前記温度範囲において(a)層の前記接触表面部以外を含め相当部分が、マトリックス相であるシリコーン樹脂の融解によって流出するものであってはならない。
【0012】
また、前記シリコーン樹脂は、(a)層中に高充填・分散された熱伝導性充填剤を保持し得る程度に十分な高分子量のものであることが必要とされる。更に、(a)層と上記(b)層の熱伝導性シリコーンゴム層とが密着性に選れ、両層が界面剥離を起こすことのないようなものであることも必要である。
【0013】
(a)層のマトリックス相を構成するシリコーン樹脂としては、上記の条件を満たすものであればよく、特に限定されるものではないが、特に、熱伝導性充填剤との組み合わせによる組成物が実質的に常温で固体(非流動性)である必要があることから、RSiO2/単位(以下、T単位と称する)及び/又はSiO単位(以下、Q単位と称する)を含んだ重合体、これらとRSiO単位(以下、D単位と称する)との共重合体等が例示され、D単位からなるシリコーンオイルやシリコーン生ゴムを添加してもよい。これらの中でT単位とD単位を含むシリコーン樹脂、T単位を含むシリコーン樹脂と 25℃における粘度が 100Pa・s以上のシリコーンオイルまたはシリコーン生ゴムの組み合わせが好ましい。シリコーン樹脂は、末端がRSiO1/2単位(M単位)で封鎖されたものであってもよい。
【0014】
ここで、上記Rは炭素数1〜10、好ましくは、非置換又は置換の1〜6の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられ、これらの中でも特にメチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0015】
更に、シリコーン樹脂について具体的に説明すると、シリコーン樹脂としては、T単位及び/又はQ単位を含むものであり、M単位とT単位、或いはM単位とQ単位で設計することが行われている。しかしながら、固形時の強靭性に優れる(脆さを改善し、取り扱い時の破損等を防止する)ためには、T単位を導入することが有効であり、更にはD単位を用いることが好ましい。ここで、T単位の置換基(R)としてはメチル基、フェニル基が望ましく、D単位の置換基(R)としてはメチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。また上記T単位とD単位の組成比率は、10:90〜90:10、特に20:80〜80:20とすることが好ましい。
【0016】
なお、通常用いられるM単位とT単位、或いはM単位とQ単位とから合成されたレジンであっても、T単位を含み、これに主としてD単位からなる(末端はM単位)高粘度オイル(100Pa・s以上)もしくは生ゴム状の化合物を混合することによって脆性が改良され、またヒートショックを掛けた場合のポンピングアウト(充填剤とベースシロキサンとの分離による気泡の生成或いはベースシロキサンの流出)を防止することができる。従って、T単位を含み、D単位を含まないシリコーン樹脂を用いる場合には、このシリコーン樹脂にD単位を主成分とする高粘度オイル又は生ゴム状の化合物等を添加することが好ましい。
【0017】
よって、軟化点を有するシリコーン樹脂がT単位を含み、D単位を含まない場合には、上記理由によってD単位を主成分とする高粘度オイルもしくは生ゴム等を添加すれば取り扱い性に優れた材料となる。この場合、D単位を主成分とする高粘度オイル又は生ゴム状の化合物等の添加量は、常温より高い温度に軟化点もしくは融点を有するシリコーン樹脂100重量部に対して1〜100重量部、特に2〜10重量部とすることが好ましい。1重量部未満の場合にはポンピングアウト現象の発生する可能性が大きく、100重量部を越える場合には熱抵抗が大きくなり、放熱性能が低減するおそれがある。
【0018】
上述したように、シリコーン樹脂は、クリティカルな粘度低下を発生させるため、比較的低分子量のものを用いることが望ましい。この低融点シリコーン樹脂の分子量としては、500〜10,000、特に 1000〜6000であることが好ましい。
【0019】
なお、シリコーン樹脂は、本発明に用いられる熱伝導性材料に柔軟性とタック性(電子部品又はヒートシンクに放熱シートを仮止めする必要性から必要とされる)を付与するものが好適であり、単一の粘度の重合体等を使用してもよいが、粘度の異なる2種類以上の重合体等を混合して使用した場合には、柔軟性とタック性のバランスに優れたシートが得られるので有利となるため、粘度の異なる2種類以上を用いてもよい。
【0020】
具体的には、例えば、下記のとおり、2官能性構造単位(D体)および3官能性構造単位(T体)を特定組成で有するシリコーン樹脂を挙げることができる。

(ここで、Dはジメチルシロキサン単位(即ち、(CHSiO)、Tはフェニルシロキサン単位(即ち、(C)SiO3/2)、Dはメチルビニルシロキサン単位(即ち、(CH)(CH=CH)SiO)を表わし、組成比に係る(m+n)/p(モル比)=0.25〜4.0、また、(m+n)/m(モル比)=1.0〜4.0の範囲内である)
【0021】
また、例えば、1官能性構造単位(M体)、2官能性構造単位(D体)および3官能性構造単位(T体)を特定組成で有するシリコーン樹脂を挙げることができる。

(ここで、Mはトリメチルシロキサン単位(即ち、(CHSiO1/2)を表わし、D、T及びDは上記ののとおりであり、組成比に係る(m+n)/p(モル比)=0.25〜4.0、(m+n)/m(モル比)=1.0〜4.0、また、l/(m+n)(モル比)=0.001〜0.1の範囲内である)
【0022】
更に、例えば、1官能性構造単位(M体)、2官能性構造単位(D体)および4官能性構造単位(Q体)を特定組成で有するシリコーン樹脂を挙げることができる。

(ここで、Qは、SiO4/2を表わし、M、D、及びDは上記のとおりであり、組成比に係る(m+n)/q(モル比)=0.25〜4.0、(m+n)/m(モル比)=1.0〜4.0、また、l/(m+n)(モル比)=0.001〜0.1の範囲内である)
これらは、1種単独でも2種以上組合わせても使用することができる。
【0023】
<熱伝導性充填剤>
上記の熱伝導性充填剤としては、この種の用途に熱伝導性充填剤として一般に使用される公知の材料を特に制限なく使用することができ、例えば、銅、銀、アルミニウム等の金属;アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化硼素等の金属窒化物;人工ダイヤモンド等を用いることができる。
【0024】
熱伝導性充填剤は、平均粒径が 0.1〜100μmの範囲が好ましく、特に 0.1〜25μmのものを用いることが流動性と熱伝導性の双方の特性を両立させる点からより好ましい。平均粒径が小さすぎると(a)層を構成する上記組成物を製造する際の粘度が高くなり作業性に乏しくなる。平均粒径が大きすぎると作業上の粘度は低下するものの、実際に放熱部材として用いた場合に電子部品と放熱部品の間隙を粒子の直径以下(例えば、100μm以下)に圧着されず熱抵抗が高くなり十分な放熱性能を発現することが難しくなる。
【0025】
上記熱伝導性充填剤の粒子の形状は特に制限されないが、球状が望ましい。また、熱伝導性充填剤は1種単独でも2種以上組合わせても使用することができる。熱伝導性向上のためには平均粒径の異なる粒子を2種以上用いて細密充填に近づくような配合が推奨される。この熱伝導性充填剤の量は、(a)層を構成する上記組成物全体に対し、通常、70〜97重量%であり、好ましくは 85〜95重量%である。この配合量が少なすぎると、本発明の熱伝導性複合シートの熱伝導性が不十分となり、多すぎると熱軟化性の乏しいものとなる。
【0026】
<その他の添加剤>
(a)層を構成する上記組成物には、必要に応じて、例えば、合成ゴムに使用される添加剤または充填剤を用いることができる。
【0027】
具体的には、形状保持剤としてEPTポリマー等;粘着性向上剤としてオレフィン系粘着剤等;離型剤としてシリコーンオイル、フッ素変性シリコーン界面活性剤等;着色剤としてカーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラ等;難燃性付与剤として白金触媒、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム等の金属酸化物、または金属水酸化物;加工性向上剤としてプロセスオイル、反応性シラン若しくはシロキサン、反応性チタネート触媒、反応性アルミニウム触媒等;作業性および加工性向上のためトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン等の溶剤;等を任意に添加・使用することができる。
【0028】
[(b)熱伝導性シリコーンゴムシート層]
本発明の熱伝導性複合シートの(b)層である熱伝導性シリコーンゴムシート層は、(a)熱軟化性熱伝導性シート層の形状安定性をサポートするための裏打ち材であり、比較的硬度が高く、(a)層との密着性に優れていることから、本発明の複合シートにリワーク性を与えるものである。
【0029】
この熱伝導性シリコーンゴムシート層は、熱伝導性充填剤を含有していれば、特にその種類は限定されない。ただし、該熱伝導性シリコーンゴムシート層の硬度はアスカーC硬度で5〜100であることが好ましく、より好ましくはアスカーC硬度で 10〜50である。ここでアスカーC硬度とはSRIS 0101(日本ゴム協会規格)および JIS S 6050に基づき、スプリング式硬さ試験機アスカーC型を使用して測定した硬さである。前記アスカーC硬度が小さすぎると、軟らかすぎて熱伝導性複合シートの形状保持が困難となり、補強性も不十分であり、生産性も非常に悪くなる。逆に大きすぎると、硬すぎて、一体化した(a)層の電子部品との密着性が低下しすぎたり、追随性が悪くなる。
【0030】
次に、上記(b)層の熱伝導性シリコーンゴムシート層の原料である硬化性シリコーンゴム組成物について説明する。
【0031】
<付加反応硬化型シリコーンゴム組成物>
付加反応硬化型のシリコーンゴム組成物は、基本的に、(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、および(C)白金系触媒を含むものである。
【0032】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、液状であれば、その分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状が挙げられ、好ましくは直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。また、このオルガノポリシロキサンは、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の混合物である。
【0033】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられるが、合成のし易さおよびコストの面からビニル基が好ましい。アルケニル基は、分子鎖末端および/または側鎖にあればよく、少なくとも1個のアルケニル基が分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましいが、特に柔軟性の点から分子鎖両末端にのみ存在することがより好ましい。
【0034】
ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられるが、これらのうち、合成のし易さおよびコストの面から全体の基の 90モル%以上をメチル基が占めることが好ましい。
【0035】
この(A)成分の 25℃における粘度は 10〜100,000 mPa・sの範囲であることが好ましく、100〜50,000 mPa・sの範囲であることがより好ましい。前記粘度が低すぎると(b)層の形状保持性が悪くなるし、高すぎると得られる組成物の進展性が悪くなる。
【0036】
(A)成分の具体例としては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフエニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組合わせても使用することができる。
【0037】
(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、架橋剤として作用するものであり、液状であれば、その分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状が挙げられ、好ましくは直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。また、このオルガノポリシロキサンは、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の混合物である。(B)成分の配合量は、(A)成分に含まれるアルケニル基1個に対しケイ素原子に結合した水素原子(SiH)が、0.6〜5.0個となる量が好ましく、より好ましくは 0.8〜4.0個となる量である。前記配合量が少なすぎると十分な網状構造をとれず硬化後に必要な硬さが得られない、また、多すぎると脱水素反応による発泡が問題となったり、得られる熱伝導性シリコーンゴムシート層の柔軟性が不充分なものとなる。
【0038】
(B)成分の具体例としては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジエンシロキシ基封鎖メチルフエニルポリシロキサンが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組合わせても使用することができる。
【0039】
(C)成分の白金系触媒は、組成物の硬化を促進するための触媒であり、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体等が挙げられる。本組成物において、白金系触媒の含有量は、特に限定されず、触媒としての有効量でよいが、通常、(A)成分に対して本成分中の白金金属が重量単位で 0.01〜1,000 ppmとなる量であり、好ましくは、0.1〜500 ppmとなる量である。本成分の含有量が少なすぎると得られるシリコーンゴム組成物が十分に硬化しなくなることがあり、一方、多量に使用しても得られるシリコーンゴム組成物の硬化速度は向上せず、経済的に不利となることがある。
【0040】
<縮合硬化型シリコーンゴム組成物>
縮合硬化型のシリコーンゴム組成物は、基本的に(1)1分子中に2個以上のシラノール基もしくはケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン、(2)硬化剤として、1分子中に3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を含有するシランもしくはその部分加水分解縮合物、および(3)場合により縮合反応触媒を含むものである。
【0041】
(1)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が 10〜100,000 mPa・sの範囲であるものがこのましい。また、このオルガノポリシロキサンが有する前記加水分解性基としては、例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等のケトオキシム基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基;ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基等が挙げられる。
【0042】
(1)成分の具体例としては、例えば、分子鎖両末端シラノール基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端 2−トリメトキシシロキシエチル基封鎖ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
(2)成分の硬化剤の具体例としては、例えば、エチルシリケート、プロピルシリケート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、プロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、3−クロロプロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジメチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジメチルエチルケトキシム)シラン、トリ(シクロへキサノキシム)シラン等及びこれらの部分化水分解縮合物が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0044】
(2)成分の配合量は、通常、(1)成分 100重量部に対して 0.01〜20重量部であることが好ましく、特に、0.1〜10重量部であることが好ましい。この含有量が上記範囲の下限未満の量であると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下したり、また、接着性が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を越える量であると、得られる組成物の硬化が著しく遅くなったりする傾向がある。
【0045】
(3)成分の縮合反応用触媒は任意の成分であり、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、硝酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機ケイ素化合物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0046】
(3)成分を配合する場合、その配合量は、特に制限されず触媒としての有効量でよいが、通常、(1)成分 100重量部に対して 0.01〜20重量部であることが好ましく、特に、0.1〜10重量部であることが好ましい。この触媒を用いる場合、この触媒の含有量が上記範囲の下限未満の量であると、架橋剤の種類によっては得られる組成物が十分に硬化しなくなることがあり、一方、上記範囲の上限を越えると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下することがある。
【0047】
<ラジカル反応硬化型シリコーンゴム組成物>
ラジカル反応硬化型のシリコーンゴム組成物は、基本的に、オルガノポリシロキサンと有機過酸化物を含むものであって、オルガノポリシロキサンは特に制限されないが、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するものが好ましい。前記アルケニル基として、特に好ましくはビニル基である。他のケイ素原子に結合する基としては、上記アルキル基、アリール基が好ましく、特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0048】
このようなオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0049】
前記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。この有機過酸化物の添加量は、上記オルガノポリシロキサン100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲内となる量であることが好ましい。
【0050】
<熱伝導性充填剤>
上記各硬化性シリコーンゴム組成物に対して添加・配合される熱伝導性充填剤としては、基本的に、上記(a)層用組成物について記載したものと同様なものを用いることができるが、上記(a)層との親和性の点から、上記(a)層用組成物で用いたものと同一のものとすることが好ましい。この熱伝導性充填剤の量は、当該(b)層の硬化性シリコーンゴム組成物全体に対し、通常、60〜95重量%であり、好ましくは 70〜90重量%である。この量が少なすぎると熱伝導性複合シートの熱伝導率が低下することにより熱伝導性が不十分となり、多すぎると熱伝導性複合シートの柔軟性が低下し、実装時の界面熱抵抗が大きくなり熱伝導性が不十分となる。
【0051】
<その他の副資材・添加剤>
(b)層の形状安定性を更に向上させるため、所望により、複合シートとした際の(b)層外表面に、ガラスクロス、グラファイトシート、アルミホイル等を熱圧着、接着等の手段により一体的に付設してもよい。また、前記ガラスクロス等を(b)層の中間部に一体的に配設させることも可能である
【0052】
また、(b)層を形成する硬化性シリコーンゴム組成物には、必要に応じて、任意成分として通常硬化性シリコーンゴム組成物に使用される公知の添加剤または充填剤を(a)層用組成物の場合と同様に、添加・配合することができる。具体的には、触媒活性を抑制する目的で 1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアセチレン化合物、各種窒素化合物、有機りん化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等より選択される制御剤;離型剤としてシリコーンオイル、フッ素変性シリコーン界面活性剤等;着色剤としてカーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラ等;難燃性付与剤として白金触媒、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム等の金属酸化物、または金属水酸化物等;加工性向上剤として、反応性シランもしくはシロキサン等を添加してもよい。
【0053】
[熱伝導性複合シートの製造]
本発明の(a)熱軟化性熱伝導性シート層と(b)熱伝導性シリコーンゴムシート層からなる熱伝導性複合シートの製造方法について、以下、具体的にその方法を説明する。
【0054】
<熱伝導性シリコーンゴムシート>
予め成形した熱伝導性シリコーンゴムシートを用いる場合には、例えば、次のとおりの方法が挙げられる。
例えば、熱伝導性充填剤を含有した未硬化の付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を金型の中に流し込み、金型を締めてから熱プレス機により 49.0kPa(0.5kgf/cm)〜4903.5kPa(50kgf/cm)の圧力をかけ、100〜180℃に加熱し、5〜30分間放置し、前記液状シリコーンゴム組成物を成形硬化させて得られる、熱伝導性シリコーンゴムシートを用いる。
【0055】
<離型処理したポリマーフィルム付き熱軟化性熱伝導性シート>
熱軟化性熱伝導性シートを成形する際には、その形状保持用副資材として離型処理したポリマーフィルムを用いることが有用である。離型処理したポリマーフィルムとしては、例えば、フッ素系離型剤を塗布したポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系離型剤を塗布したポリプロピレンフィルム、シリコーン系離型剤を塗布したポリエチレンテレフタレートフィルム、シリコーン系離型剤を塗布したポリプロピレンフィルム等が挙げられる。なお、熱伝導性複合シートの成形後、前記シートの使用・実装に際して、このポリマーフィルムは剥離・除去される。
【0056】
予め成形した離型処理したポリマーフィルム付き熱軟化性熱伝導性シートを用いる場合には、例えば、次のとおりの方法が挙げられる。
コーティング装置にテープ状の離型処理したポリマーフィルムを供給し、トルエン等の溶剤を混合して希釈し、加工性を向上させた液状の熱伝導性充填剤含有シリコーン樹脂組成物をコーティング速度条件 0.5〜3.0m/分でナイフコーターにより離型処理したポリマーフィルム上に一定の厚さに塗布してから、50℃〜200℃の加熱炉を通してトルエン等を揮発・除去させて得られる、離型処理したポリマーフィルム付き熱軟化性熱伝導性シートを用いる。
【0057】
モールド成形法−1
金型面上に熱伝導性シリコーンゴムシートを設置し、この上に熱伝導性充填剤含有シリコーン樹脂組成物を仕込み、離型処理したポリマーフィルムが付いた別の金型を用いて締めてから、熱プレス機により圧力と熱をかけ前記組成物を熱軟化させつつ、熱伝導性複合シートを成形する方法である。
【0058】
成形条件としては、前記組成物のマトリックス成分が流動化し、成形可能となる条件で良く、特に限定されない。温度条件は 100℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは 120℃〜180℃である。圧力条件は気泡の巻き込みを避けるため、通常、面圧 49.0〜1961.4kPa(0.5〜20kgf/cm)で加圧することが好ましい。
【0059】
モールド成形法−2
金型面上に離型処理したポリマーフィルム付き熱軟化性熱伝導性シートを設置し、この上に、例えば、熱伝導性充填剤を含有した未硬化の付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を仕込み、金型を締めてから熱プレス機により圧力と熱をかけ、前記液状シリコーンゴム組成物を硬化させつつ、熱伝導性複合シートを成形する方法である。
【0060】
成形条件としては、硬化性シリコーンゴム組成物をプレス成形により硬化し、成形する際に採用される通常の条件でよく、特に限定されない。温度条件は 50℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは 60℃〜180℃である。圧力条件は気泡の巻き込みを避けるため、通常、面圧 490.4〜4903.5kPa(5〜50kgf/cm)で加圧することが好ましい。
【0061】
射出成形法−1
射出成形機の金型面上に熱伝導性シリコーンゴムシートを設置し、離型処理したポリマーフィルムが付いた別の金型を締める。次に、加熱したバレル中で熱伝導性充填剤含有シリコーン樹脂組成物を熱軟化させた後、ノズルから金型のスプルーを通して射出し、型内に充填し、圧力をかける。冷却後金型を開けて、成形された熱伝導性複合シートを取り出す方法である。
【0062】
成形条件としては、前記組成物のマトリックス成分が流動化し、成形可能となる条件で良く、特に限定されない。バレル温度条件は 50℃〜150℃であることが好ましく、より好ましくは 70℃〜130℃である。圧力条件は気泡の巻き込みを避けるため、通常、面圧 49.04kPa(0.5kgf/cm)〜4903.5kPa(50kgf/cm)で加圧することが好ましい。
【0063】
射出成形法−2
射出成形機の加熱した金型面上に離型処理したポリマーフィルム付き熱軟化性熱伝導性シートを設置し、金型を締める。次に、例えば、熱伝導性充填剤を含有した未硬化の付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を原料供給ポンプに流し込み、定量吐出ポンプから金型のスプルーを通して射出し、型内に充填し、圧力をかけ硬化させる。硬化後、金型を開けて、成形された熱伝導性複合シートを取り出す方法である。
【0064】
成形条件は、硬化性シリコーンゴム組成物を射出成形により硬化し、成形する際の通常の条件でよく、特に限定されない。金型加熱温度条件は 50℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは 60℃〜180℃である。圧力条件は気泡の巻き込みを避けるため、通常、面圧 49.04kPa(0.5kgf/cm)〜4903.5kPa(50kgf/cm)で加圧することが好ましい。
【0065】
コーティング成形法−1
コーティング装置にテープ状の熱伝導性シリコーンゴムシートを供給し、溶剤で希釈し、加工性を向上させた液状の熱伝導性充填剤含有シリコーン樹脂組成物をナイフコーター等により熱伝導性シリコーンゴムシート上に一定の厚さに塗布してから、加熱炉を通して溶剤を揮発・除去させて、熱伝導性複合シートを成形する方法である。
【0066】
成形条件は使用した溶剤が充分に揮発・除去できる条件でよく、特に限定されない。コーティング速度条件は 0.5m/分〜10m/分であることが好ましく、より好ましくは1m/分〜5m/分である。加熱炉加熱条件は溶剤の種類にもよるが、気泡の発生を避けるため 50℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは 60℃〜180℃である。更に、(a)層面の低粘度化、熱軟化または融解性を保持する目的から、(a)層表面に離型処理したポリマーフィルムを密着させておく必要がある。
【0067】
コーティング成形法−2
コーティング装置にテープ状の離型処理したポリマーフィルム付き熱軟化性熱伝導性シートを供給し、例えば、熱伝導性充填剤を含有した未硬化の付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を、ナイフコーター等により離型処理したポリマーフィルム付き軟化性熱伝導性シートの上に一定の厚さに塗布してから、加熱炉を通して硬化させて、熱伝導性複合シートを成形する方法である。
【0068】
成形条件は硬化性シリコーンゴム組成物をコーティング成形により硬化し、成形する際の条件で良く、特に限定されない。コーティング速度条件は 0.5m/分〜10m/分であることが好ましく、より好ましくは1m/分〜5m/分である。加熱炉加熱条件は、気泡の発生を避けるため 50℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは 60℃〜180℃である。
【0069】
熱圧着成形法
加熱ロールにテープ状の熱軟化性熱伝導性シリコーンゴムシートおよびテープ状の離型処理したポリマーフィルム付き軟化性熱伝導性シートを同時に供給し、加熱ロールにて熱圧着成形して、熱伝導性複合シートを成形する方法である。
【0070】
成形条件は軟化性熱伝導性シート中のマトリックス成分が熱軟化・流動化し、成形可能となる条件で良く、特に限定されない。加熱ロール温度条件は 100℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは 120℃〜180℃である。圧力条件は気泡の巻き込みを避けるため、通常、面圧 49.0〜1961.4kPa(0.5〜20kgf/cm)で加圧することが好ましい。
【0071】
【実施例】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記表1中の数は重量部を示す。
【0072】
まず、本発明に係る熱伝導性複合シートを形成させるために用いられる、前記(a)、(b)各層用の組成物の組成成分およびその組成物の調製方法については、下記のとおりである。
【0073】
熱軟化性熱伝導性シート層用組成成分
・成分(F)マトリックス成分
F−1:下記組成で表されるポリシロキサン
255520
(ここで、Dはジメチルシロキサン単位(即ち、(CHSiO)、Tはフェニルシロキサン単位(即ち、(C)SiO3/2)、Dはメチルビニルシロキサン単位(即ち、(CH)(CH=CH)SiO)を表わす)
・成分(G)ポリオレフィン(比較用)
G−1:ダイヤレン 30(商品名、三菱化学(株)製)
G−2:ダイヤレン 208(商品名、三菱化学(株)製)
【0074】
・成分(H)形状保持剤(比較用)
H−1:EPT−PX−055(商品名、三井化学(株)製)
・成分(I)粘着性向上剤(比較用)
I−1:ルーカント HC3000X(商品名、三井化学(株)製)
【0075】
・成分(D)熱伝導性充填剤
D−1:平均粒径 7.4μmのアルミニウム粉末
D−2:平均粒径 5.3μmのアルミナ粉末
D−3:平均粒径 1.0μmの酸化亜鉛粉末
・成分(E)加工性向上剤
E−1: C1021Si(OCH
【0076】
熱軟化性熱伝導性シート層用組成物の調製
5Lゲートミキサー(商品名:5リットルフ゜ラネタリミキサー、井上製作所(株)製)を用いて各成分を下記表1の組成で 120℃にて1時間混合して目的とする組成物、K−1(比較用)、K−2およびK−3を得た。
【0077】
熱伝導性シリコーンゴムシート層用組成成分
・成分(A)アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン
A−1:両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が600 mPa・sであるポリジメチルシロキサン
・成分(B)ケイ素原子結合水素原子含有ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
B−1:下記式で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサン
【0078】
【化1】



【0079】
・成分(C)白金系触媒
C−1:白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(濃度:白金金属として1重量%)
・成分(D)熱伝導性充填剤
D−1:平均粒径 7.4μmのアルミニウム粉末
D−2:平均粒径 5.3μmのアルミナ粉末
D−3:平均粒径 1.0μmの酸化亜鉛粉末
・成分(E)加工性向上剤
E−1: C1021Si(OCH
・成分(J)触媒活性制御剤
J−1:1−エチニル−1−シクロヘキサノールの 50重量%トルエン溶液
【0080】
熱伝導性シリコーンゴムシート層用組成物の調製
5Lゲートミキサー(商品名:5リットルフ゜ラネタリミキサー、井上製作所(株)製)を用い、成分(B)および成分(C)および成分(J)以外の各成分を下記表1の組成で 120℃にて1時間混合した後に、室温に冷却後、成分(B)および成分(C)および成分(J)を添加し、室温にて30分間混合し目的とする組成物、L−1、およびL−2を得た。
【0081】
【表1】



【0082】
[実施例1〜8、比較例1〜6]
下記表2および表3に記載した熱軟化性熱伝導性シート層用組成物(K−1、K−2、K−3)および熱伝導性シリコーンゴムシート層用組成物(L−1、L−2)の組み合わせを用いて、また、下記表2および表3に記載した熱伝導性複合シートの製造方法(▲1▼〜▲7▼)によって、熱伝導性複合シートを製造した。
なお、▲1▼〜▲7▼の意味するところは次のとおりであり、各製造方法については上述のとおりである;▲1▼モールド成形法−1、▲2▼モールド成形法−2、▲3▼射出成形法−1、▲4▼射出成形法−2、▲5▼コーティング成形法−1、▲6▼コーティング成形法−2、▲7▼熱圧着成形法。
【0083】
[評価手法]
得られた各熱伝導性複合シートについて、下記特性について試験・測定し評価した。その結果を表2および表3に示した。
【0084】
厚み、熱抵抗
二枚の標準アルミニウムプレートの間に(離型処理したポリマーフィルムを剥離・除去した)各熱伝導性複合シートを挟んで、熱抵抗測定用サンプルを調製した。マイクロメーター((株)ミツトヨ製、型式;M820−25VA)を用いて、このサンプルの厚みを測定し、予め厚みが分かっている標準アルミプレートの厚み分を差し引くことによって、実質的な各熱伝導性複合シートの厚みを求めた。
【0085】
また、前記各サンプルについて、各熱伝導性複合シートの熱抵抗(単位:℃−cm/w)を熱抵抗測定器(ホロメトリックス社製、マイクロフラッシュ)を用いて測定した。
【0086】
リワーク性
熱抵抗測定後の上記各サンプルをダブルクリップで挟んで(圧力:196kPa(2kgf/cm))、150℃のオーブン中に 96時間放置した後のアルミニウムプレートと熱伝導性複合シートとの剥がれやすさを測定し、次のとおり、評価した。
評価A:容易に剥がれる
評価B:剥がれにくい
【0087】
ヒートサイクル試験
25mm角にカットした(離型処理したポリマーフィルムを剥離・除去した)各熱伝導性複合シートを2枚の透明なガラス板(厚さ1mm,50mm×75mm)に挟み、次いでダブルクリップで左右両側を挟んで(圧力:196kPa(2kgf/cm))サンプルとした。このサンプルを−30℃〜100℃のサイクル試験機に投入し、500サイクル後(1サイクル:30分間)のサンプルに発生したクラックの数を目視により観察し、次のとおり、評価した。
評価A:クラック数 0〜5
評価B:クラック数 6以上
【0088】
層間剥離性
25mm角にカットした各熱伝導性複合シートについて、(b)熱伝導性シリコーンゴムシート層を指等で保持し、(a)層の離型処理したポリマーフィルムを指で剥離・除去する際に、(a)熱軟化性熱伝導性シート層と、(b)熱伝導性シリコーンゴムシート層との層間の剥離の有無を観察し、次のとおり、評価した。
評価A:層間剥離が全く起こらない(0%)
評価B:層間剥離が多少起こる(1〜10%)
評価C:層間剥離が起こりやすい(11〜100%)
【0089】
【表2】



【0090】
【表3】



(注)▲7▼’は、上記製造方法▲7▼に準じて、シリコーン樹脂に代えて、マトリックスとしてポリオレフィンを用いた組成物(K−1)を用いて複合シートを製造したことを意味する。
【0091】
[評価]
比較例1および比較例2は、熱軟化性熱伝導性シート層のマトリックスがポリオレフィンである場合であり、(b)熱伝導性シリコーンゴムシート層との複合シートである比較例1においては、比較的熱抵抗が高く、また、前記両層は界面で剥離しやすいものであることが分る。また、(b)層との複合体ではない単層の比較例2のものは、リワーク性およびヒートサイクル試験の結果において良好なものではなかった。
【0092】
また、比較例3および比較例4は、(a)層単独のシートであり、やはりリワーク性およびヒートサイクル試験の結果において良好なものではなかった。
次に、比較例5および比較例6は、(b)層単独のシートであり、リワーク性およびヒートサイクル試験の結果は良好であるが、熱抵抗が高いものであった。このことは、熱伝導性充填剤を含有していても(b)層単独ではアルミニウムプレートとの密着性に劣り、界面熱抵抗が高くなることを示している。
【0093】
【発明の効果】
本発明の熱伝導性複合シートは、熱伝導性が良好であるのみならずリワーク性にも優れており、特に発熱性電子部品等の放熱・冷却のために発熱性電子部品とヒートシンク、回路基板等の放熱部品の間に介装して用いられる放熱構造体用に好適なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリコーン樹脂および熱伝導性充填剤を含有する熱軟化性熱伝導性シート層、並びに
(b)熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性シリコーンゴムシート層
を含む熱伝導性複合シート。
【請求項2】
前記シリコーンゴムシート層の上に、シリコーン樹脂および熱伝導性充填剤を含有する組成物を、層状に成形することを特徴とする請求項1に記載の複合シートの製造方法。
【請求項3】
前記熱伝導性シート層の上に、熱伝導性充填剤を含有する液状硬化性シリコーンゴム組成物を、層状に成形し硬化させることを特徴とする請求項1に記載の複合シートの製造方法。
【請求項4】
前記液状硬化性シリコーンゴム組成物が付加反応硬化型のものであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記熱伝導性シート層と前記シリコーンゴムシート層とを熱圧着することを特徴とする請求項1に記載の複合シートの製造方法。

【公開番号】特開2004−90516(P2004−90516A)
【公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−256564(P2002−256564)
【出願日】平成14年9月2日(2002.9.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】