熱傷、創傷、および関連皮膚疾患の光力学治療のためのシステムおよび方法
ヒトおよび哺乳動物の皮膚は加齢による老化に関連する様々な変化を受ける。様々な環境因子、疾病状態、および遺伝的障害は、老化皮膚の外観、ならびに老化皮膚に関連する構造的および機能的な変化の両方を加速しうる。太陽からの紫外線照射は、典型的な公知かつ十分に定義された皮膚の老化を加速または悪化させる方法の1つであり、これはしばしば光老化と呼ばれる。酸化ストレス、フリーラジカル、オゾン等の環境毒、および喫煙等の文化的風習または習慣のような他の環境因子が、光老化皮膚の他の考えられる促進因子として公知である。公知および未知の幅広い他の因子が、皮膚の加速されたまたは早すぎる老化の原因となる。本発明は、皮膚ならびに他の生細胞および組織の老化における構造的および機能的影響を、遅延、減少、抑制、またはさらには逆転させるように、電磁照射、特に光を使用して生細胞の活性を光生物調節する方法について考察する。特に、老化皮膚の外観、構造、機能を改善するために記載した方法には、老化皮膚の表現型の遺伝子型マーカーの上方制御および下方制御が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、細胞増殖および遺伝子発現の光力学的調節のための方法および装置に関する。特に、本発明は、日焼け、熱傷、化学熱傷、放射線熱傷、例えば外傷、外科的手術、レーザー、化学的表皮剥離、美容整形、化学兵器または戦争傷害、凍傷、低酸素症、血管不全、打撲傷、慢性潰瘍等の様々な創傷、アレルギー反応または接触皮膚炎、および様々な炎症性疾患の影響の軽減、回復、および/または減少に関する。
【背景技術】
【0002】
背景の説明
加齢による老化、「光老化(photo-aging)」すなわち自然光および人工光源への曝露による皮膚の老化、疾患、および外傷の全ては、ヒトおよび哺乳動物の皮膚において外観の変化、ならびに皮膚の構造および機能に変化をもたらす。全ての生細胞、組織、および器官もまた、加齢による老化、打撲傷、光老化、疾患、および外傷に関連する変化を受けている。ヒトの皮膚は非常に目につきやすい器官なので、これらの状態に関連する変化は容易に明らかかつ目に見える。これらの変化は基礎となる構造的および機能的な変化を反映している。
【0003】
皮膚の老化の最も広く識別できる形は、太陽光への過剰な曝露およびたび重なる慢性的な曝露によって生じる、一般に光老化と言われるものである。より具体的には、紫外線A(UVA)および紫外線B(UVB)の特定の比率が、光老化に関連する主な原因因子であると決定されている。
【0004】
長年、光老化は加齢による老化とは作用の異なる機構によって起こる、および/または加齢による老化とは幾分異なると考えられていた。しかし最近では、光老化および加齢老化は、全く同じでなくとも類似した経路を共有しうることが明らかになっている。
【0005】
太陽輻射は、紫外線(UV)、可視光、および赤外線から構成される。現在の慣習では、UV放射は、UVA(320〜400 nm)、UVB(290〜320 nm)、およびUVC(<290 nm)に分けられる。UVC放射は成層圏でオゾンにより遮断され地表には届かないが、殺菌灯および他の機器によって生成可能である。UVAおよびUVB太陽光は地表に届き、光老化の主な原因であると信じられている。UVA放射はさらに、UVA1およびUVA2に再分される。UVBが光老化の第一作用因子であると信じられてきたが、UVA光中の特定の範囲の波長もまた、光老化に関連する変化の原因であることが現在認められている。
【0006】
急性の環境による傷害には、UV光による日焼け、ならびに他の熱による、化学的、および他の種類の熱傷または熱傷様傷害が含まれる。これらの種類の傷害は、細胞を損傷させるだけでなく、細胞を死なせることもある。損傷細胞は、損傷を修復して正常に戻すか、損傷を不完全に修復して異常なもしくは適切以下に機能する細胞を生じるか、または細胞が死ぬこともある。日焼けの場合、慢性的な太陽光による損傷は損傷細胞および不完全修復細胞を蓄積し、「太陽光瘢痕」と呼ばれることもあるがより一般的には「皺」と考えられているものを生じさせる。すなわち皺は、実際は不完全に修復された細胞損傷の蓄積の結果である。同様に、加齢および光老化に伴って通常起こる茶褐色の「レバー(liver)」または「しみ」も、同じように色素細胞またはメラニン細胞への損傷である。
【0007】
急性のUV損傷または日焼けは、皮膚の上層すなわち表皮で「日焼け細胞」と呼ばれる瀕死の細胞を生じる。日焼け細胞の計数は、これらのケラチン生成細胞への損傷の重傷度を定量化するための古典的科学的方法である。日焼け細胞の数を減少させる治療は、傷害の重傷度を減少させ、または傷害を修復もしくは元に戻すために有効であると考えられている。より一般的には、回復または死亡しうる損傷した細胞は「アポトーシス」細胞と呼ばれ、不可逆的に損傷し死亡するであろう細胞は「壊死」細胞と呼ばれる。壊死細胞を生細胞に変える治療は、死ぬ予定の細胞を「救助」すなわち「蘇生」する治療と考えられる。そのような治療および療法は、急性の日焼けだけでなく、蓄積した慢性的損傷につながる亜急性の日焼けによる損傷の治療においても非常に重要だと考えられる。創傷、熱傷等における瀕死細胞の「救助」能力は、治癒時間、瘢痕化またはその欠如、感染の危険性、および器官または生物体全体の生存にさえ大きな影響を与えると考えられる。これまで、関連する技術は、壊死細胞または壊死が進行段階にある細胞を蘇生または救助するシステムまたは方法を作り出すことに成功していなかった。
【0008】
ヒトの皮膚にUVAおよびUVB光を曝露すると、皮膚での活性酸素種(ROS)の誘導を含む一連の分子事象が引き起こされる。一連の細胞シグナル伝達事象によって、コラーゲン産生が下方制御され、皮膚の構造タンパク質を分解することが公知である様々な酵素が上方制御される。この結果として、コラーゲンが減少し創傷が作られる。UVAまたはUVB(もしくはこれらの組み合わせ)による創傷への皮膚の反応は、皮膚の創傷治癒機構による創傷の修復である。一般的に、これらの創傷修復機構は、多くの人が考えるように不完全なので太陽光瘢痕となる。皮膚がUVAまたはUVBによって長年損傷を受けると慢性的な太陽光瘢痕が生じ、光老化と呼ばれる目に見える表現型の変化によって顕在化する。これはまた太陽光瘢痕の目に見える外面的な証拠であると考えられている。
【0009】
皮膚の光老化は、日焼けに関連する傷害のようなより高レベルの急性傷害によって起こることもある。これは皮膚および関連する細胞機構で炎症過程を誘発する。日焼け反応を起こさないより低レベルの種類のより慢性的な傷害もあるが、これは慢性的光老化の変化を生じさせる。喫煙等の、コラーゲン産生を低下させ、コラーゲン分解酵素を増加させることが公知の他の過程もまた、目に見えて現れ、UVAおよび/またはUVB光による光老化と類似する変化に関連する。これは、長年片方だけが喫煙していた一卵性双生児の写真に著しく見られる。
【0010】
十分な線量でのUVB放射は皮膚の赤みまたは日焼けを生じる。その閾値は一般に最小紅斑量(MED)として表され、一般的に波長290〜300 nmのUVBによって生じる。波長が長くなるにつれ赤みおよび熱傷反応を生じる可能性が著しく低くなり、実際、紅斑および日焼けを生じるのに、波長320 nmは波長340 nmよりも約100倍も強力であり、290〜300 nmよりも約100倍弱い。UVBの総曝露量は光老化による外観に比較的強く関連し、日焼けは悪性メラノーマのような皮膚に悪性の変化を誘発する可能性が比較的高い。対照的に、UVA放射は赤みを生じるが黄褐色化も生じ、この波長は一般にいわゆる日焼けベットで使用されている。UVA放射はより長い波長であり早朝や夕方になるにつれて多くなる。UVB光は一般に夏の日中正午に最も顕著で強烈である。UVA放射もまたある種の日よけおよび日焼け止め剤、ならびに車の窓ガラスを貫通することがある。そのため、より多くの皺、茶色の色素沈着や赤み、および全体的な老化した外観が右顔よりも左顔に見られる場合、その患者は職業上または娯楽的に左ハンドルの車を長時間運転していると考えられる。
【0011】
オーストラリアのような、色白の人々がおり右ハンドルの車が使用されている日照の強い国では、このような変化は一般に右顔に見られる。光老化の様式は、体のどの部分が解剖学的に、より慢性的に太陽光に曝露されるかによって決定される。そのため、顔、首、手の裏、胸の上部、腕の先、足先、ならびに髪型およびその密度に依存して耳および禿げた頭部に、光老化による変化が最も顕在化する。
【0012】
加齢による変化と光老化による変化は、一般に皮膚の細かい線および皺によって顕在化する。粗くちりめん状の皮膚、張りの無い皮膚および皮膚のたるみ、不均一な色素沈着、茶色の斑点状色素、皮膚の色調の欠如、きめおよび輝き、あざおよび黄ばみである。皮膚はいくつかの層から構成され、最も外側の層は角質層(SC)と呼ばれ、次の層は表皮(EPI)、および表皮の下に真皮(DER)がある。外層のSCは主として環境への曝露から皮膚を保護するバリア機能として働き、また皮膚からの水分損失を最小限に留めるのにも役立っている。表皮は真皮と同様に多くの重要かつ多様な役割を果たしている。真皮には皮膚の主要な構造タンパク質が含まれている。これらのタンパク質は、コラーゲン、エラスチン、および基質である。これらは真皮内の線維芽細胞によって産生される。線維芽細胞は、複雑かつ比較的十分に定義された一連の細胞受容体および細胞のシグナル伝達機構によって調節されることで、これらのタンパク質を産生するための活性を制御する。
【0013】
これらの細胞の増殖もまた重要な活性である。例えば、真皮は、血管、神経線維、皮脂腺および汗腺、毛嚢、ならびに多くの他の重要な構成要素も含む。皮膚の細胞には細胞のシグナル伝達を介した極めて複雑な内部情報伝達がある。線維芽細胞はプロコラーゲン線維と呼ばれるものを産生し、次にこの線維は非対称的にコラーゲン線維として集合し、真皮内に束を形成する。デコリンのような他の分子はコラーゲンの機能に影響する。体内のコラーゲン繊維にはコラーゲンI、III等の様々な亜型がある。コラーゲンIは皮膚の約85%を構成し、コラーゲンIIIは約10%を構成する。しかしながら、光老化した皮膚では、コラーゲンIの量が低下するので、コラーゲンIII対Iの比率が変化する。
【0014】
さらに、老化皮膚で重要な役割を果たすマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)と呼ばれる様々な酵素がある。線維芽細胞はまた、損傷した構造ECMの除去ならびにECMの修復および産生による創傷治癒において重要な機能を有している。コラーゲンIは主にMMP-1(コラゲナーゼ)によって分解される。多様なMMP酵素が存在し、これらは皮膚の構造タンパク質の1つまたは複数を分解する。これらの分解MMP酵素が損傷した皮膚の除去(例えば、創傷治癒において)において重要な役割を果たしている一方、正常な皮膚におけるその活性化および量的に増加した合成は、加齢および光による老化の両方で見られる変化への寄与を助長する。同様に、コラーゲンIの産生が低下または減少する場合、これは加齢または光によって老化した皮膚に関連する変化をもたらす。老化しているまたは老年期の線維芽細胞は、コラーゲンIの合成の低下、およびMMP 1合成の増加を呈することがある。同様の変化がUVA/UVBの曝露でも見られる。他の環境作用因子が同様な変化を生じさせることもある。
【0015】
ある種の薬剤、治療法、化学薬品、活性剤が、加齢または光によって老化する皮膚の外観または表現型を回復させることが実証されている。いくつかの局所的な塗布剤は、紫外線を反射または吸収することで物理的または光学的バリアとして働き、皮膚を防御する。UV損傷によって作られるDNA二量体を実際に修復することが示された酵素もある。別の局所的な塗布剤または経口薬剤または全身性薬剤も、皮膚の外観を改善することが示されてきた。古典的かつ公知の薬剤の1つにレチノイドと呼ばれる局所的なビタミンA誘導体がある。多くの研究で、オールトランスレチノイン酸(RA)の使用によって、光老化した皮膚の外観または表現型を改善する能力が証明されてきた。多くの経路がRAおよびレチノール(RO)の作用機構を含む。そのようなRAによる細胞シグナル伝達経路における大部分の作用機構が老化防止効果を生み出すように思われる。
【0016】
現行のいくつかの老化防止治療法の目的の1つは、皮膚のECMおよび真皮中のコラーゲン産生を増加させることである。コラーゲンIが、増加させるのにより望ましいコラーゲンの形であると信じる者もいる。これは、光老化した皮膚は望ましい粘弾性の特性が減少するが、これは1つにはコラーゲンIに対するコラーゲンIIIの比率が増加するためであると考えられていることから支持されている。別の老化防止へのアプローチは、ECMでの分解酵素の活性または産生の減少が、同様に皮膚の外観における老化防止効果をもたらすことを示している。この両者が組み合わさることでさらに有効になる。1つの例えとしては、新しいコラーゲンIの産生と、新たに降り積もる雪の産生がある。新しい降雪の堆積量は、その後溶けていく、降った雪の量および新しく降った雪の量の両方に依存する。したがって、新しいコラーゲンの産生(新しく降った雪)を刺激する老化防止治療が想像できるだろう。より温かい黒いアスファルト部分に接する駐車場の黒いアスファルト部分が、より冷たいコンクリート部分または凍った地面に隣接する場合、この二ヶ所で新しく降った雪の量は等しいが、堆積する雪の量はアスファルトによって融かされるので少なくなる。老化防止治療が、コラーゲンIの産生を刺激するがMMP-1活性は減少させない場合、コラーゲンIの最終的な増加は、MMP-1活性も低下させた場合よりも小さくなると考えられる。
【0017】
歴史的に、老化防止または若返り治療を行うために、ヒトの皮膚の若々しい外観を取り戻すアプローチが数多く存在した。ほとんどの方法は身体自身の創傷治癒機構を誘発させる形式を利用している。より破壊的で外傷的な方法は、表皮角質層およびしばしば真皮の一部を剥離させるために化学薬品を用いるか、またはこれらを機械的に紙やすりもしくは削皮(dermabrating)によって削るか、最近では高エネルギー熱レーザーを用いて皮膚を蒸発または凝固させる。これらの方法には長期の痛みのある創傷期間があり、創傷のケアが必要である。そして患者は一般にその創傷治癒の間、彼らの日々の社会活動や仕事を制限しなければならない。次にその皮膚は、損傷が修復され皮膚中に新しい構造タンパク質が生成される、創傷の治癒および改造の過程を何ヶ月または何年も継続的に受ける。一般にこれらの治療法は、皮膚への調節された参入をもたらすことを試みること、瘢痕化の危険性を最小限にする創傷ケア環境を提供することを意味している。これらの方法は多くの問題を生み、時には皮膚に醜い瘢痕または悲劇的な色素変化をもたらすことさえあり評判は悪い。しかし、適切な実施および創傷ケアによって、多くの人々が著しい、時には劇的な老化防止効果を達成した。別のより穏やかな方法が近年人気となっており、これらには従来の美容整形のリフティング術、および外側の角質層および表皮が皮膚から除去または削られずに様々な方法によって保護および無傷のまま残される、非切除法と呼ばれるより新しい方法が含まれる。非切除法は一般に、事実上熱の、レーザー光、強力パルス光、無線周波、またはマイクロ波の様々な手段によるエネルギー伝達、およびその後の真皮への熱による創傷の作製である。これらの治療の背後にある理論は、この創傷が瘢痕や他の合併症を誘発したり、悪化させたりせずに、望ましい構造タンパク質の最終的な増加をもたらすことである。この治療の結果は時として外傷となるが、非常に様々である。個人毎の創傷治癒修復機構における違い、個々の身体と皮膚の全体的な健康状態、および多くの他の要因がこの変動性に影響する。
【0018】
レチノイン酸、局所的ビタミンC、局所的ビタミンE、および他の抗酸化剤、ならびに他の抗皺用のクリームおよびローション剤のような、老化防止を目的として開発された様々な局所的薬剤が存在する。これらの多くは十分に定義されている。他の局所的な成分および化粧品等は、「Method and Apparatus for the Photomodulation of Living Cells」と題される、本出願人の同時係属中の米国特許出願第09/899,894号(2001年6月29日出願)に開示され、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらに、超音波照射を用いるそのような成分の皮膚への浸透を促進する方法は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,030,374号および米国特許第6,398,753号に記載されている。創傷治療、座瘡減少、および他の皮膚科学的状態へのこのような成分の使用は、本出願人の同時係属中の米国特許出願第09/933,870号(2001年8月22日出願)に記載され、これもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。関連技術についての更なる考察が同時係属中の米国特許出願第10/119,772号(2002年4月11日出願)および60/461,512号(2003年4月10日出願)に記載され、これらもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
危険性、合併症、回復時間、痛み、不快感、創傷ケア、または手術、化学薬品、電磁照射、および他種の治療法に従来から関係する他の副作用を起こすことなく、加齢により老化した、光老化した、または環境により損傷を受けた皮膚、ならびに病気および外傷によって損傷した皮膚の外観を改善することが求められている。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本明細書において具体化され広く記載されるように、本発明は光老化または損傷した皮膚の外観を改善する方法および装置にに向けられている。方法と装置には、光調節等の光力学的手段による皮膚および他の細胞増殖および遺伝子発現の制御が含まれる。
【0021】
本発明の一つの態様は、非限定的に、レーザー(単色およびフィルター付き、狭帯域多色)、LED(狭帯域多色)を含む線源によって放射される単色照射だけでなく、狭帯域および広帯域の多色電磁照射、無線周波、電磁気治療、または非切除熱媒介手術等の望ましくない影響の減少および有益な効果の促進に関する。例えば、LED光調節と他の同様な非LED治療法は、望ましい効果を促進するか、または望ましくない効果を抑制するためにも使用できる。これはMMPを発現させ、コラーゲンのような構造タンパク質を増加させる熱による皮膚への傷害等の手段によって達成されることもある。LED光源はまた、有益な最終効果を得るために上方制御されたMMPを減少させる間にコラーゲンを増加させることもある。一般にこのような手段は、熱治療で典型的に起きる炎症過程を終息させる。
【0022】
本発明の一つの態様は、ヒトの皮膚の光老化した外観または加齢もしくは環境による損傷によって誘導されて老化した外観を、例えばLEDまたは他の電磁照射治療による光調節の適用によって回復させる(美容維持または皮膚の健康)ばかりでなく抑制する方法を目的とする。好ましくは、本発明は皮膚細胞の細胞増殖の調節、および/またはそのような細胞の遺伝子発現の調節を目的とする。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、老化皮膚の異なった表現型を特徴付ける様々な遺伝子型、およびまたそのような表現型のコレクションまたはライブラリーを含むデータベースを目的とする。データベースには、同じ障害をもつ様々な人々、または異なった障害をもつ様々な人々から同定される多くの遺伝子型を含むこともある。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、細胞増殖および/または遺伝子発現に影響するような光照射または電磁照射による光調節を目的とする。様々な種類の電磁照射の例には、超音波、電波、マイクロ波、磁場、老化皮膚の遺伝子型または表現型に変化をもたらす任意の電気刺激、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0025】
本発明の別の態様および有益性は、続く本明細書に一部記載され、および一部本明細書より明らかであり、または本発明の実践から理解されうる。
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書において具体化され広く記載されるように、本発明は細胞増殖および遺伝子発現の調節、特に皮膚の光老化の抑制、ならびに壊死細胞の再生のための方法および装置を目的とする。また、本発明は壊死の各段階における細胞を若返らせるシステムおよび方法を目的とする。
【0027】
皮膚の光老化は、例えばいくらかの例を挙げると、喫煙、太陽光への曝露、および不健康等の環境因子を含む多くの機構によって起こる。これらの事象は皮膚および関連する細胞機構で炎症過程を誘発する。また日焼け反応を起こさないが、慢性的な光老化による変化をもたらす、より慢性的な低レベルの種類の傷害もある。皮膚の加齢による老化、および光老化、および他の環境によって誘導された変化は、多くの場合または場合によって、UVが誘導する皮膚の光老化と全く同じ経路を共有する。これらの経路には、細胞増殖の上方制御および/または下方制御、ならびに多くの異なった種類の遺伝子の発現レベルの変化が含まれる。
【0028】
細胞増殖調節および遺伝子発現調節の組み合わせが、皮膚ならびに他の細胞および組織の光老化の原因であることは驚くべき発見であった。そのため光老化はこれらの同一の過程に影響を与えることによって、回復または少なくとも改善が可能でありうる。従って、本発明の一つの態様は、光老化ならびに皮膚および細胞に関連した他の疾患の表現型および遺伝子型の発現特性を同定して関係づけることを目的とする。いったん同定されれば、相関地図に従い、適切な治療に調整すること目的とした同様な疾患および状態の迅速かつ効率的な同定を可能とするデータベースへ集められる。さらに、いったん同定されれば、治療ならびに適切な介在および防止方法が、光老化の外観および遺伝子型の特性を停止またはさらには逆転させるために使用できる。そのため、本発明は老化に関連する様相を人工的に隠すまたは覆うことを目的とせず、実際に老化関連現象に関連する過程および機構を回復させることを目的とする。
【0029】
さらに本発明の一つの態様は、これらの同じ機構およびツールを、幹細胞(完全未分化細胞)および始原細胞(部分的分化細胞)等の他の細胞への応用することも目的とする。定義された変数に沿ってこれらの細胞の細胞周期、細胞増殖、および/または遺伝子発現の特性を変えることで、分化経路を決定し、疾病の治療および予防、ならびに創傷治癒のために、細胞、組織、および他の細胞構造を生成または再生することが可能である。
【0030】
細胞増殖および遺伝子発現を調節する方法には、望ましい効果を刺激するのに十分な量または線量による電磁放射への曝露が含まれる(例えば、米国特許第6,398,753号、5,837,224号、および6,130,254号;ならびに米国出願第2002/0028185号、 2001/0053347号、 2003/0004556号、 2003/0004499号、 および2002/0123746号を参照。これらは全て参照により具体的および全体的に本明細書に組み入れられる。)。例えば、LEDへの皮膚の曝露は様々な遺伝子産物の発現を刺激または抑制する。これらの同一の方法はこれらの細胞集団において細胞増殖および細胞周期調節の刺激または抑制を引き起こすためにも使用できる。さらに光調節は、特定の経口剤(全身的効果)または局所剤(部分的効果)(例えば、ビタミンA、レチンA、レチノール)と組み合わせて、これらの刺激剤を個々に使用しても望ましい効果が達成できないものに対して使用することもできる。
【0031】
影響を与える事ができる細胞種には、非限定的に、皮膚細胞(光老化の回復)、神経細胞(疾病予防および治療)、幹細胞(組織再構築)、毛嚢細胞(毛髪の成長または抑制)、炎症過程(疾病、感染、または先天的障害に起因)、創傷修復、およびこれらの組み合わせに深く関係する細胞を含む免疫システムの細胞が含まれる。好ましくは可視光(例えば、紫、青、緑、黄、橙、赤)、赤外線照射、紫外線(UVA、UVB、UVA1、UVA2)、またはこれらの任意の組み合わせ等の電磁照射(例えば光調節)に細胞を曝露することによって調節は達成される。好ましい曝露強度および曝露時間は本明細書添付書面に記載されるが、パルス曝露、継続的および断続的曝露も含みうる。
【0032】
遺伝子発現の調節
紫外線光による傷害は、活性酸素種およびキナーゼカスケードと呼ばれる一連の細胞シグナル伝達事象を誘発する。線維芽細胞活性における上方制御および下方制御の通常の最終経路の1つは、MMP-1(コラゲナーゼ1および間質性コラゲナーゼ合成)、MMP-9(ゼラチナーゼB)、およびMMP-3(ストロメリシン1)を含む様々なMMPの産生を上方制御および増加させるAP-1を介する。これらのMMP酵素の産生は結果として、皮膚の真皮において、コラーゲン、エラスチン、およびECMの破壊をもたらす。同時にコラーゲンIおよび他の構造タンパク質の実際の産生は減少または下方制御されうり、そのためこの過程がさらに促進される。
【0033】
生細胞、組織、および器官の老化は、フリーラジカル曝露および酸化ストレスに関連しうる。老化皮膚にこのモデルを当てはめると、UV光老化および他の環境ストレスは酸化ストレスの増加のためと考えられるが、加齢による老化は抗酸化防御機構の低下により生じる。低下した抗酸化防御または増加した酸化ストレスの最終的な結果は、(ROS)またはフリーラジカルの増加した産生である。
【0034】
遺伝子活性の調節
皮膚において増加したROS産生は細胞のシグナル伝達またはシグナル伝達経路を刺激し、遺伝子活性に変化を生じさせる。構造タンパク質の損傷(例えば、UV光によって引き起こされるコラーゲンの損傷、破壊、および断片化)は、タンパク質、構造、および次いで細胞シグナル伝達を変えて遺伝子活性を変えることもある機能を変化させる。増加したROS産生の、他の可能性のある結果は、DNAに変異が生じることであり、これは次いで遺伝子構造を変化させ、したがって細胞の正常な構造および機能を変えることもある。疾病および環境による損傷への応答に限り、ヒトの体質の相違の大部分は、個人間の遺伝子の構成における比較的小さな差異によって左右されることがある。一塩基多型(SNP)は、ヒトおよび他の動物の生物学反応における差異を同定し、潜在的に予見する方法として現在非常に活発に研究されている。例えば、SNPの特徴は、患者が特定の疾病または腫瘍を発症する可能性が高いかまたは低いかという予見を可能としうり、したがって公知の予防的手段をとる事ができる。別の可能性のある適用は、処方薬を与える前に、個体をSNPを使ってスクリーニングして深刻な副作用を起こす可能性のある個体を見極めることであり、したがってその薬の使用を避けることができる。別の潜在的なSNPの新規な使用法は、例えば、皮膚の加齢による老化に関連するSNPのハプロタイプまたはパターンを同定することである。ある人々や家族は、皮膚癌の危険性が低いか、または単純に同じ年代や同じような環境の仲間よりも若く見える。SNPのプロファイルを開発することが可能であり、これは老化皮膚の表現型の変化に関連する共通因子を特徴付ける(個体の、環境作用因子からの増加した酸化ストレスよる老化加速の危険性をより高くするSNPの遺伝子型パターンを定義)。これはより大きな老化防止的恩典をもたらす治療計画を可能にする。
【0035】
TGF-Bは細胞シグナル伝達の主要なサイトカインであり、表皮のケラチノサイトの増殖を抑制し、熱性の線維芽細胞の増殖を刺激する。これはまた、主要なコラーゲン、エラスチンの合成および分泌を誘導し、MMP 1およびMMP 3の発現を抑制する。TGF-Bは、TGF-B1、TBR I、TBR IIと複数あり、この多くは老化皮膚の細胞で下方制御されている。TGF-Bはまた、デセリン(Decerin)と結合することによって老化皮膚における活性が変化し、これがコラーゲンと組み合わされた場合、コラーゲン線維の形成速度の制御だけでなく皮膚のティンセル強度に影響する。c Jun MRNAは、若い皮膚と比較して活性およびヒト皮膚の老化が2倍だが、c-fosは変化がない。MMP 2はAP 1を介して調節されない。ERK活性は老化皮膚で減少するが、JNK活性は老化皮膚で3〜4倍増加する。環境による傷害-損傷は解剖学的にヒトの全身にわたって様々でありうる。これらの方法は、ヒト皮膚の若返りを可能にし、ヒトの老化皮膚においてコラーゲンの分解を防ぎ同時に新しいコラーゲン形成を刺激する段階を含む。
【0036】
増加したMMPは結果としてERK、サイクリンD2、ならびにI型およびIII型のプロコラーゲンのレベルを減少させる。これはc-gen活性を減少させ、ERK活性を増加させるばかりでなく、多くのケラチノサイト刺激する、中心となる遺伝子型、表現型の一部である。
【0037】
日焼け止め、局所的オイルおよび抗酸化剤、局所的オイルおよび光調節ECM刺激およびMMPおよびMMP抑制、ならびに上記の様々な組み合わせおよび混合によるシステムである。c-gen形成の抑制もまたAP-1形成を抑制し、そのためMMPを減少させてケラチノサイトおよび線維芽細胞の増殖を誘導する。
【0038】
ミトコンドリア活性の調節
ミトコンドリアおよびATPの産生機構(例えばチトクローム発現)は電磁照射によって調節可能である。活性化で媒介される酸化還元または受容体型タンパク質チロシンホスファターゼ(RTPT)によって、LED光は細胞表面の受容体を活性化する。SAP(ストレス活性化経路) 対 分裂促進因子活性化経路を比較対照すると、c-Junが増加した場合SAPはMMPを増加させ、プロコラーゲン1および2を減少させる。最初はECM産生によって行わなくてはならばいが、MAP経路がERK誘導サイクリンを活性化して細胞増殖を促進し、そのため、PSATはタンパク質産生を増加または減少させる傾向があるが、MAPSが細胞増殖を増加または減少させる。Ras/MAP/AP-1経路は創傷への応答において重要な役割を担う。FGFR1はプロモーター領域およびIL-1アンタゴニストプロモーター中の部位を含む。また抗酸化化合物はUV曝露後に増加MMPを抑制できないが、抗紅斑日焼け止め効果があり、これらの1つはリコピンある。LED光調節も日焼け活性を減少させるのに使用でき、MMPレベルは約24時間後に最大になる。太陽光シミュレーターの使用によりボランティアの腕の二ヶ所に1つのMED最小紅斑量を発生させ、その1つを毎日2回GW装置で治療し、比色計で赤みの減少を測定する。生検により、UV後GWによりこれらを治療する際に何が起こるのかが示される。チトクロームP-450 のレチノイド分解を抑制するとレチノイドの濃度が増加する。
【0039】
操作上の特別な理論に制約されることを望まないが、本発明は、複数の受容体媒介経路がヒトまたは動物の皮膚において光調節され、これが外観ならびに構造および機能の両方において、より若い、またはより若々しい、または老化していない皮膚に関連する遺伝子型の発現につながることがあるという、驚くべき発見を含む。
【0040】
赤外線-a照射誘導MMP 1を参照する。赤外線はMAPKシグナル伝達経路の上方制御または活性化によってMMP 1を産生することができる。これはERK 1/2の活性化であり、MMP 1遺伝子のプロモーター領域は熱産生無しにIRAによって活性化されるが、TIMP1は増加しない。MMP-8またはエラスターゼは炎症反応で増加し、AP 1も含む。NF-KBが増加した場合、これはIL-1および継続的な炎症を止めるTNFaをさらに活性化する。
【0041】
線維芽細胞の周りにはセンサーマトリックスがあり、マトリックスに接触した際、これらの活性は低下してほとんどコラーゲンを産生しなくなるが、コラーゲンの存在がゼラチン等の産物を分解した際、これらは炎症が続く場合にコラーゲンをより多く産生する傾向がある。コラーゲンは増えるだけでなく、生じる瘢痕がより少なくなる。
【0042】
サイトカインを抑制する局所的化合物は、それらが経路を遮断する場合シグナルMMPは本質的にMMPを遮断するので、間接的なMMP阻害剤である。同じ事がMMP調節でも言える。栄養補助食品に関しては、ビタミンCは安定したコラーゲン分子を集合させるために局所的に適用できる。局所的ビタミンCによりコラーゲンIおよびコラーゲンIIIを刺激できるが、エラスチン、フィブリリン1/2には影響せず、またMMP 1、2、および9にも影響しない。TIMPは増加し、TIMP2は変化しなかった。
【0043】
創傷治癒および治療の調節
ECMのタンパク質分解は、継続的な創傷治癒の間の修復および再生における基本的な特徴である。創傷修復は、麻酔性または損傷した組織、細胞および/または組織の移動、血管新生、新しく合成されたECMの再生、および細胞増殖因子の調節からなる。創傷治癒の間、MMP 1およびMMP 3ならびにMMP 2および9も増加する。MMP-1、3は特に慢性の創傷で増加するが、急性創傷でも増加する。TIMPもまた変化する。MMP 1、3、9は、UVBによって増加し;増加したエラスチンおよびフィブリリンバーシカンによって増加し;結果的に、非機能的なエラスチン線維を形成し、皮膚の弾性を減少させ、老化したまたは光老化した皮膚となる。コラーゲンIが減少し、UVAはMMP 1、2、3の増加した発現を示す。
【0044】
疾病状態の全身性硬皮症皮膚の線維芽細胞は、通常よりも少ないMMP 1およびMMP 3を産生するが、より多いTIMPを産生する。皮膚癌BCCはより多くのMMP 1、2、9、および11を産生する。光老化、打撲、色素沈着低下領域、線維症のより多くの徴候。老化していない皮膚の光老化または加齢もしくは環境による老化を予防する方法および発明には、皮膚中のROSの存在を減らすために光老化局所的抗酸化剤の影響を遅らせるレチノイドが含まれる。環境ストレスには、酸化物、熱、UV光が含まれる。そのためLED光治療法は、ECMタンパク質/コラーゲン刺激剤およびMMP抑制剤の両方である。UVBは線量依存的にAP 1およびNF-KBを誘導し、これらがMMP 2およびMMP 9を誘導する。コラーゲン束の形成が皮膚の強度、反発性、および弾性に関与する。
【0045】
本発明の一つの態様では、1つの主放射波長すなわち狭帯域多色照射、または複数の波長(単色、狭帯域多色、広帯域多色のいずれか、またはこれらの組み合わせ)のいずれかを発生させるために単独または複数の光源が使われる。単独または複数の組み合わせは同時にまたは連続して適用できる。
【0046】
例えば、狭帯域多色電磁照射を照射する装置は、約590 nm(+/-約10 nm)の主放射波長、および850 nm範囲のいくらかの光、および任意で1060 nm範囲の少量の光を照射する。可視光の590 nmと赤外線の850 nmを組み合わせると生物活性があることが発見されている。特別なIRフィルターを、IR/850曲線の形状を非対照的に減衰させると信じられているので、標的の皮膚または組織が曝露される照射のIR成分を減少させるためにさらに加えてもよい。このような装置による治療の例は添付の図面で示され、線維芽細胞に「線量依存的」な効果があると信じられている850 nmについて説明されている。さらに、約1mW/cm2の電力レベルで、光調節は老化防止表現型の影響に対して行われる(当業者は、電力メーターはこれを正確に測定できないため、計測法にはいくらかの変動および/または誤差があり得ることを認識すると思われる。)。一般に、治療が熱傷害を引き起こさないことが求められる場合、約4 J/ cm2未満のエネルギーフルエンスが好ましい。
【0047】
治療に使用される照射のIR照射に対する黄色光の比率は、本システムの全ての性能に影響することがわかっている。それぞれの種類の照射の相対量は重要であり、実際の照射レベルよりも重要であると信じられている(剥離が起こらない条件で)。590 nmでは約4mW/cm2で、および850 nmでは約1 mW/ cm2(すなわち、黄色光:IRの比が4:1)でよい結果が得られることが判明した。考慮すべき他の因子は、システムのIR成分の振幅 対 波長の曲線の形状である。
【0048】
「コード」という用語は、様々な治療計画のパルス方式を示す。これにはパルス長、インターパルスの遅延、およびパルス反復のような様々な因子が含まれる。例えば、治療は250m秒の「オン」時間、100m秒の「オフ」時間(または暗時間)、および100パルスのパルスコードを含んでもよい。これはエミッターの電力出力レベルで25秒間の全エネルギーフルエンス(J/cm2)を作りだす。これはパルス波による治療 対 継続波による治療(継続波治療用の「コード」は1パルスであり、「オン」時間は選択された治療の長さ、「オフ」時間は0秒である。)の比較を可能にする。様々なコード、比率、および電力レベル、ならびに所定の遺伝子への光老化の影響に対する最終的な効果、ならびに他のデータを示す例を、添付のデータ表および図面で示す。
【0049】
本発明は、ヒトまたは哺乳動物の皮膚に対する日焼けおよび他の太陽光に関係した光効果を治療する方法および装置にも関連する。1つのアプローチは、レチンAを太陽光曝露の前に使用することであり、ビタミンC、E、および他の抗酸化剤を局所的に用いて研究が行われている。試みられている他のアプローチは、日焼けの炎症をいくぶん抑えるための、抗酸化剤リコピンの経口使用である。しかしながら、本発明はこのような治療法の大きな改善を示す。
【0050】
皺、太陽光による損傷、および他の太陽光に関係する「太陽光瘢痕」のような光効果について考えてもよい。これらは繰り返しまたは長期にわたって太陽へ曝露したことにより生じた蓄積的な傷害である。人体は創傷回復機構を用いるが不十分であり、そのため本発明の太陽光シミュレーターは、ある意味では他の創傷治癒のためのモデルとなる。本発明は構成成分に分解された太陽光を模倣する治療法を用いている。UVA1部分がいくつかの態様で使用されているが、より発癌性があるUVBならびにUVAおよびUVBの組み合わせもある。例えば、UV、特にUVA1は皮膚のたるみおよび光老化、皮膚のマトリックスおよび構造タンパク質の変化を引き起こし、MMPを上方制御する。UV照射はまた、IL 1、IL 6、およびNF-kBのような炎症経路の上方制御を引き起こす。これらの経路は老化および他の太陽光に関係した皮膚疾患、ならびに喫煙、汚染、薬剤、疾病、熱傷害、他の創傷等の環境による損傷に影響することが公知である。
【0051】
本発明は、コラーゲン、MMP1、MMP1に強く関係するc-Jun、炎症経路におけるIL/インターロイキン、およびチトクロームのような物質に対する太陽光シミュレーターUVA1の影響によって引き起こされる不利で破壊的な方向性から、遺伝子の上方制御/下方制御の方向を逆転させることで、光老化および他の皮膚疾患の影響を抑制または逆転させると信じられる。添付の実施例は治療法の説明のために本システムの使用について記載している。
【0052】
本発明のシステムおよび方法は、透明な覆いを有するように改良した帯具のような様々な損傷包帯剤と組み合わせて使用してもよく、LEDまたは他の光による光調節の望ましいスペクトルは、皮膚または標的組織の損傷した領域に到達する。一つの態様は、光の伝播の周期的な抑制を可能にする「トラップドア」を含む。また、帯具の開放領域または半透明/透明な部分はIRフィルターを含んでもよい。例えば、帯具または創傷包帯剤の一部として開口部を含むことが望ましくない場合、LEDおよび他の光源の大きさにより帯具の中に光源が納まるようにすることも可能である。そのような光源は小さい電池を動力とし、規則正しい間隔で、かつあらかじめ設定した様々なコードに従って治療を自動または手動で光源に行わせるような手段を含みうる(例えば、手当をした化学薬品による火傷には、切り傷や電気的火傷とは異なったコードが必要であることもある。)。また、皮膚または標的組織への光の浸透を促進する様々な局所的な組成物を、包帯剤または帯具に含めるか、または皮膚の患部を帯具または包帯剤によって覆う前に皮膚または標的組織に適用することができる。
【0053】
帯具の中の光源はまた、物質を「放出」または「活性化」させる、または物質の媒体を送達して酸素、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、もしくは他の薬剤等が放出されるように、コードすることができる。このような組成物の組み合わせもまた使用できる。
【0054】
別の応用では、身体の外での血液の治療も可能になる(例えば、体外のフォレシス(phoresis)装置において)。血液は、免疫機構の刺激、疾病の治療等を行うために、LEDまたは他の光またはEMRのアレイ層を流れ、直接的もしくは光活性型の薬剤を用いるかのいずれかによって光調節されるか、またはその両者によって光調節される。
【0055】
本システムおよび方法はまた、単独、または抗酸化目薬、生物工学的に作られたペプチド、および増殖因子との併用で、網膜および他の眼の治療にも使用してもよい。抗酸化目薬には、非限定的に、グルタチオン、ビタミンC、ビタミンE、カタラーゼ、ユビキノン、イデベノン等が含まれる。
【0056】
本発明の別の適用には、神経再生、ホルモン処置(甲状腺疾病が一般的であり、皮膚への甲状腺の近接のために特に考慮される。)が含まれる。また、脂肪減量、セルライト等のための脂肪細胞の光調節も、約850〜950 nmおよび1000〜1100 nmの範囲の光源を使用することで達成されうる。
【0057】
以下の実施例は本発明の態様について説明しているが、本発明の範囲を限定するとみなすべきではない。
【0058】
実施例
本発明の様々な態様についてさらに説明するグラフ、データ表、および実施例、ならびに本発明の方法で調節される遺伝子産物の一覧を本明細書に添付する。付記に本発明を説明する2つの実験の結果を示す。
【0059】
本発明の他の態様および使用は、本明細書に開示される本発明の明細書および実践を考慮することにより当業者にとって明らかである。本明細書に引用した、全ての出版物、米国および国外の特許および特許出願を含む全ての文献は、参照により具体的かつ全体が本明細書に組み入れられる。明細書および実施例は単に例示的なものであるとみなされることが意図される。
【0060】
MGW49 実験2
本研究に参加した、光老化したIII型皮膚を有する健康な50歳の女性ボランティアを週2回、計8回治療した。皮膚生検は治療前と最終治療(590/810 nm LEDパネル(ZZ)+IRフィルター、250m秒オン/100m秒オフ/100パルス)の4ヶ月後に採取した。
【0061】
太陽光シミュレーターは、水フィルターおよびUV反射ダイクロニックミラー付き1000ワットのキセノンアークランプを備える(280〜400 nm)。
UVA1照射シミュレートのためにSchott WG-360フィルターを使用した。残余可視光および赤外線照射の除去するために、中心波長を365 nmとしたI-Lineフィルターを追加し、いかなる残余UVB放射およびUVC放射も除去するためにHoya UV34フィルターを使用した。
全放射度の測定のために、光レジスト放射計(International Light Inc. Newburyport MA)を使用した。
【0062】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
590/810 nm LED(DD) 24時間 老化関連遺伝子マイクロアレイ
【0063】
590/810 nm LED(ZZ) 24時間 老化関連遺伝子マイクロアレイ
【0064】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
解糖経路遺伝子 590/810 nm LED(DD) 24時間
【0065】
解糖経路遺伝子 590/810 nm LED(DD) 4時間
【0066】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD) 250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
インターロイキン 24時間 ヒト線維芽細胞におけるマイクロアレイ結果 590/810 nm LED(DD)
【0067】
インターロイキン 4時間 ヒト線維芽細胞におけるマイクロアレイ結果 590/810 nm LED(DD)
【0068】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
JJ= 623 nm LEDアレイ、250m秒オン/100m秒オフ/100パルス、3.6mW/cm2
ケラチノサイトマーカーのマイクロアレイ結果(ヒト線維芽細胞試料)LED曝露24時間後
【0069】
ケラチノサイトマーカーマイクロアレイ結果(ヒト線維芽細胞試料)LED曝露4時間後
【0070】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)+IRフィルター、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
590/810 nm (DD)+IRフィルターパネル 24時間
【0071】
590/810 nm (DD)曝露から4時間後のヒト線維芽細胞発現
【0072】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
インターロイキン 24時間 ヒト線維芽細胞におけるマイクロアレイ結果 590/810 nm LED(DD)
【0073】
インターロイキン 4時間 ヒト線維芽細胞におけるマイクロアレイ結果 590/810 nm LED(DD)
【0074】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
24時間 マイクロアレイ
590/810 nm LED(DD)
【0075】
590/810 nm LED(ZZ)
【0076】
623 nm LED(JJ)
【0077】
4時間 マイクロアレイ
590/810 nm LED(DD)
【0078】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
590/810 nm LED(DD) 24時間
増殖:
(刺激性の役割)
【0079】
抗酸化関連
【0080】
アポトーシスおよびストレスタンパク質:
(アポトーシスおよびストレスを促進)
(アポトーシスおよびストレスを抑制)
【0081】
代謝:
(タンパク質およびアミノ酸)
(糖)
(脂質)
(エネルギー代謝および呼吸鎖)
【0082】
イオンチャネル、輸送タンパク質、および膜電位:
【0083】
細胞骨格、細胞運動、および細胞外マトリックスタンパク質:
(細胞骨格および運動性)
(細胞外マトリックス)
(移動、凝集、および接着)
【0084】
DNA合成および修復:
【0085】
転写因子:
【0086】
免疫/炎症およびサイトカイン:
【0087】
その他:
(公知の機能)
【0088】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
ヒト線維芽細胞のミトコンドリア遺伝子
590/810 nm LED(DD) 24時間
【0089】
590/810 nm LED(DD) 4時間
【0090】
590/810 nm LED(DD) ヒト線維芽細胞マイクロアレイ 24時間 下方制御
【0091】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
MAPK関連遺伝子
590/810 nm LED(DD) 24時間
【0092】
590/810 nm LED(DD) 4時間
【0093】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
590/810 nm LED(DD) ヒト線維芽細胞マイクロアレイ 24時間 上方制御
【0094】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
24時間プロテインキナーゼ遺伝子発現 590/810 nm LED(DD)
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図2】様々な光曝露条件下の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図3】各エネルギーフルエンスでの培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図4】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるチトクロームc酸化酵素2のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図5】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図6】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図7】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1、コラーゲンI、およびチトクロームc酸化酵素2のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図8】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図9】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図10】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるチトクロームbのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図11】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるチトクロームb酸化酵素IのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図12】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるATPアーゼ6のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図13】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるチトクロームc酸化酵素IIIのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図14】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるp53のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図15】各エネルギーフルエンスにおける狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図16】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図17】様々な光周期管理およびフィルターを用いた狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図18】様々な光周期管理およびフィルターを用いた狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図19】様々な光周期管理およびフィルターを用いた狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図20】様々な光周期管理およびフィルターを用いた狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図21】太陽光シミュレーター電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるRT-PCRによるEGF発現を示すグラフである。
【図22】太陽光シミュレーター電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図23】太陽光シミュレーター電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるc-JunのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図24】太陽光シミュレーター電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図25】(a)は、各波長での様々なチトクロームの比吸光係数を示す。(b)は、波長700nm〜1000 nmでの図25(a)のチトクロームの比吸光係数を示す。
【図26】比吸光係数 対 波長を示す。
【図27】優勢可視光および第二赤外線(IR)ピークを示すLEDの放射またはスペクトル出力、ならびにそれらの相対強度および形状を示す。
【図28】可視光およびIR出力の両方を減少させるが、可視光 対 IRの相対比を変え、IRスペクトル出力曲線の形状を変える場所に選択的赤外線フィルターを用た、同一のLED放射を示す。
【図29】優勢可視光および第二赤外線(IR)ピークを示すLEDの放射またはスペクトル出力、ならびにそれらの相対強度および形状を示す。
【図30】可視光およびIR出力の両方を減らすが、可視光 対 IRの相対比を変え、IRスペクトル出力曲線の形状を変える場所に選択的赤外線フィルターを用た、同一のLED放射を示す。
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、細胞増殖および遺伝子発現の光力学的調節のための方法および装置に関する。特に、本発明は、日焼け、熱傷、化学熱傷、放射線熱傷、例えば外傷、外科的手術、レーザー、化学的表皮剥離、美容整形、化学兵器または戦争傷害、凍傷、低酸素症、血管不全、打撲傷、慢性潰瘍等の様々な創傷、アレルギー反応または接触皮膚炎、および様々な炎症性疾患の影響の軽減、回復、および/または減少に関する。
【背景技術】
【0002】
背景の説明
加齢による老化、「光老化(photo-aging)」すなわち自然光および人工光源への曝露による皮膚の老化、疾患、および外傷の全ては、ヒトおよび哺乳動物の皮膚において外観の変化、ならびに皮膚の構造および機能に変化をもたらす。全ての生細胞、組織、および器官もまた、加齢による老化、打撲傷、光老化、疾患、および外傷に関連する変化を受けている。ヒトの皮膚は非常に目につきやすい器官なので、これらの状態に関連する変化は容易に明らかかつ目に見える。これらの変化は基礎となる構造的および機能的な変化を反映している。
【0003】
皮膚の老化の最も広く識別できる形は、太陽光への過剰な曝露およびたび重なる慢性的な曝露によって生じる、一般に光老化と言われるものである。より具体的には、紫外線A(UVA)および紫外線B(UVB)の特定の比率が、光老化に関連する主な原因因子であると決定されている。
【0004】
長年、光老化は加齢による老化とは作用の異なる機構によって起こる、および/または加齢による老化とは幾分異なると考えられていた。しかし最近では、光老化および加齢老化は、全く同じでなくとも類似した経路を共有しうることが明らかになっている。
【0005】
太陽輻射は、紫外線(UV)、可視光、および赤外線から構成される。現在の慣習では、UV放射は、UVA(320〜400 nm)、UVB(290〜320 nm)、およびUVC(<290 nm)に分けられる。UVC放射は成層圏でオゾンにより遮断され地表には届かないが、殺菌灯および他の機器によって生成可能である。UVAおよびUVB太陽光は地表に届き、光老化の主な原因であると信じられている。UVA放射はさらに、UVA1およびUVA2に再分される。UVBが光老化の第一作用因子であると信じられてきたが、UVA光中の特定の範囲の波長もまた、光老化に関連する変化の原因であることが現在認められている。
【0006】
急性の環境による傷害には、UV光による日焼け、ならびに他の熱による、化学的、および他の種類の熱傷または熱傷様傷害が含まれる。これらの種類の傷害は、細胞を損傷させるだけでなく、細胞を死なせることもある。損傷細胞は、損傷を修復して正常に戻すか、損傷を不完全に修復して異常なもしくは適切以下に機能する細胞を生じるか、または細胞が死ぬこともある。日焼けの場合、慢性的な太陽光による損傷は損傷細胞および不完全修復細胞を蓄積し、「太陽光瘢痕」と呼ばれることもあるがより一般的には「皺」と考えられているものを生じさせる。すなわち皺は、実際は不完全に修復された細胞損傷の蓄積の結果である。同様に、加齢および光老化に伴って通常起こる茶褐色の「レバー(liver)」または「しみ」も、同じように色素細胞またはメラニン細胞への損傷である。
【0007】
急性のUV損傷または日焼けは、皮膚の上層すなわち表皮で「日焼け細胞」と呼ばれる瀕死の細胞を生じる。日焼け細胞の計数は、これらのケラチン生成細胞への損傷の重傷度を定量化するための古典的科学的方法である。日焼け細胞の数を減少させる治療は、傷害の重傷度を減少させ、または傷害を修復もしくは元に戻すために有効であると考えられている。より一般的には、回復または死亡しうる損傷した細胞は「アポトーシス」細胞と呼ばれ、不可逆的に損傷し死亡するであろう細胞は「壊死」細胞と呼ばれる。壊死細胞を生細胞に変える治療は、死ぬ予定の細胞を「救助」すなわち「蘇生」する治療と考えられる。そのような治療および療法は、急性の日焼けだけでなく、蓄積した慢性的損傷につながる亜急性の日焼けによる損傷の治療においても非常に重要だと考えられる。創傷、熱傷等における瀕死細胞の「救助」能力は、治癒時間、瘢痕化またはその欠如、感染の危険性、および器官または生物体全体の生存にさえ大きな影響を与えると考えられる。これまで、関連する技術は、壊死細胞または壊死が進行段階にある細胞を蘇生または救助するシステムまたは方法を作り出すことに成功していなかった。
【0008】
ヒトの皮膚にUVAおよびUVB光を曝露すると、皮膚での活性酸素種(ROS)の誘導を含む一連の分子事象が引き起こされる。一連の細胞シグナル伝達事象によって、コラーゲン産生が下方制御され、皮膚の構造タンパク質を分解することが公知である様々な酵素が上方制御される。この結果として、コラーゲンが減少し創傷が作られる。UVAまたはUVB(もしくはこれらの組み合わせ)による創傷への皮膚の反応は、皮膚の創傷治癒機構による創傷の修復である。一般的に、これらの創傷修復機構は、多くの人が考えるように不完全なので太陽光瘢痕となる。皮膚がUVAまたはUVBによって長年損傷を受けると慢性的な太陽光瘢痕が生じ、光老化と呼ばれる目に見える表現型の変化によって顕在化する。これはまた太陽光瘢痕の目に見える外面的な証拠であると考えられている。
【0009】
皮膚の光老化は、日焼けに関連する傷害のようなより高レベルの急性傷害によって起こることもある。これは皮膚および関連する細胞機構で炎症過程を誘発する。日焼け反応を起こさないより低レベルの種類のより慢性的な傷害もあるが、これは慢性的光老化の変化を生じさせる。喫煙等の、コラーゲン産生を低下させ、コラーゲン分解酵素を増加させることが公知の他の過程もまた、目に見えて現れ、UVAおよび/またはUVB光による光老化と類似する変化に関連する。これは、長年片方だけが喫煙していた一卵性双生児の写真に著しく見られる。
【0010】
十分な線量でのUVB放射は皮膚の赤みまたは日焼けを生じる。その閾値は一般に最小紅斑量(MED)として表され、一般的に波長290〜300 nmのUVBによって生じる。波長が長くなるにつれ赤みおよび熱傷反応を生じる可能性が著しく低くなり、実際、紅斑および日焼けを生じるのに、波長320 nmは波長340 nmよりも約100倍も強力であり、290〜300 nmよりも約100倍弱い。UVBの総曝露量は光老化による外観に比較的強く関連し、日焼けは悪性メラノーマのような皮膚に悪性の変化を誘発する可能性が比較的高い。対照的に、UVA放射は赤みを生じるが黄褐色化も生じ、この波長は一般にいわゆる日焼けベットで使用されている。UVA放射はより長い波長であり早朝や夕方になるにつれて多くなる。UVB光は一般に夏の日中正午に最も顕著で強烈である。UVA放射もまたある種の日よけおよび日焼け止め剤、ならびに車の窓ガラスを貫通することがある。そのため、より多くの皺、茶色の色素沈着や赤み、および全体的な老化した外観が右顔よりも左顔に見られる場合、その患者は職業上または娯楽的に左ハンドルの車を長時間運転していると考えられる。
【0011】
オーストラリアのような、色白の人々がおり右ハンドルの車が使用されている日照の強い国では、このような変化は一般に右顔に見られる。光老化の様式は、体のどの部分が解剖学的に、より慢性的に太陽光に曝露されるかによって決定される。そのため、顔、首、手の裏、胸の上部、腕の先、足先、ならびに髪型およびその密度に依存して耳および禿げた頭部に、光老化による変化が最も顕在化する。
【0012】
加齢による変化と光老化による変化は、一般に皮膚の細かい線および皺によって顕在化する。粗くちりめん状の皮膚、張りの無い皮膚および皮膚のたるみ、不均一な色素沈着、茶色の斑点状色素、皮膚の色調の欠如、きめおよび輝き、あざおよび黄ばみである。皮膚はいくつかの層から構成され、最も外側の層は角質層(SC)と呼ばれ、次の層は表皮(EPI)、および表皮の下に真皮(DER)がある。外層のSCは主として環境への曝露から皮膚を保護するバリア機能として働き、また皮膚からの水分損失を最小限に留めるのにも役立っている。表皮は真皮と同様に多くの重要かつ多様な役割を果たしている。真皮には皮膚の主要な構造タンパク質が含まれている。これらのタンパク質は、コラーゲン、エラスチン、および基質である。これらは真皮内の線維芽細胞によって産生される。線維芽細胞は、複雑かつ比較的十分に定義された一連の細胞受容体および細胞のシグナル伝達機構によって調節されることで、これらのタンパク質を産生するための活性を制御する。
【0013】
これらの細胞の増殖もまた重要な活性である。例えば、真皮は、血管、神経線維、皮脂腺および汗腺、毛嚢、ならびに多くの他の重要な構成要素も含む。皮膚の細胞には細胞のシグナル伝達を介した極めて複雑な内部情報伝達がある。線維芽細胞はプロコラーゲン線維と呼ばれるものを産生し、次にこの線維は非対称的にコラーゲン線維として集合し、真皮内に束を形成する。デコリンのような他の分子はコラーゲンの機能に影響する。体内のコラーゲン繊維にはコラーゲンI、III等の様々な亜型がある。コラーゲンIは皮膚の約85%を構成し、コラーゲンIIIは約10%を構成する。しかしながら、光老化した皮膚では、コラーゲンIの量が低下するので、コラーゲンIII対Iの比率が変化する。
【0014】
さらに、老化皮膚で重要な役割を果たすマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)と呼ばれる様々な酵素がある。線維芽細胞はまた、損傷した構造ECMの除去ならびにECMの修復および産生による創傷治癒において重要な機能を有している。コラーゲンIは主にMMP-1(コラゲナーゼ)によって分解される。多様なMMP酵素が存在し、これらは皮膚の構造タンパク質の1つまたは複数を分解する。これらの分解MMP酵素が損傷した皮膚の除去(例えば、創傷治癒において)において重要な役割を果たしている一方、正常な皮膚におけるその活性化および量的に増加した合成は、加齢および光による老化の両方で見られる変化への寄与を助長する。同様に、コラーゲンIの産生が低下または減少する場合、これは加齢または光によって老化した皮膚に関連する変化をもたらす。老化しているまたは老年期の線維芽細胞は、コラーゲンIの合成の低下、およびMMP 1合成の増加を呈することがある。同様の変化がUVA/UVBの曝露でも見られる。他の環境作用因子が同様な変化を生じさせることもある。
【0015】
ある種の薬剤、治療法、化学薬品、活性剤が、加齢または光によって老化する皮膚の外観または表現型を回復させることが実証されている。いくつかの局所的な塗布剤は、紫外線を反射または吸収することで物理的または光学的バリアとして働き、皮膚を防御する。UV損傷によって作られるDNA二量体を実際に修復することが示された酵素もある。別の局所的な塗布剤または経口薬剤または全身性薬剤も、皮膚の外観を改善することが示されてきた。古典的かつ公知の薬剤の1つにレチノイドと呼ばれる局所的なビタミンA誘導体がある。多くの研究で、オールトランスレチノイン酸(RA)の使用によって、光老化した皮膚の外観または表現型を改善する能力が証明されてきた。多くの経路がRAおよびレチノール(RO)の作用機構を含む。そのようなRAによる細胞シグナル伝達経路における大部分の作用機構が老化防止効果を生み出すように思われる。
【0016】
現行のいくつかの老化防止治療法の目的の1つは、皮膚のECMおよび真皮中のコラーゲン産生を増加させることである。コラーゲンIが、増加させるのにより望ましいコラーゲンの形であると信じる者もいる。これは、光老化した皮膚は望ましい粘弾性の特性が減少するが、これは1つにはコラーゲンIに対するコラーゲンIIIの比率が増加するためであると考えられていることから支持されている。別の老化防止へのアプローチは、ECMでの分解酵素の活性または産生の減少が、同様に皮膚の外観における老化防止効果をもたらすことを示している。この両者が組み合わさることでさらに有効になる。1つの例えとしては、新しいコラーゲンIの産生と、新たに降り積もる雪の産生がある。新しい降雪の堆積量は、その後溶けていく、降った雪の量および新しく降った雪の量の両方に依存する。したがって、新しいコラーゲンの産生(新しく降った雪)を刺激する老化防止治療が想像できるだろう。より温かい黒いアスファルト部分に接する駐車場の黒いアスファルト部分が、より冷たいコンクリート部分または凍った地面に隣接する場合、この二ヶ所で新しく降った雪の量は等しいが、堆積する雪の量はアスファルトによって融かされるので少なくなる。老化防止治療が、コラーゲンIの産生を刺激するがMMP-1活性は減少させない場合、コラーゲンIの最終的な増加は、MMP-1活性も低下させた場合よりも小さくなると考えられる。
【0017】
歴史的に、老化防止または若返り治療を行うために、ヒトの皮膚の若々しい外観を取り戻すアプローチが数多く存在した。ほとんどの方法は身体自身の創傷治癒機構を誘発させる形式を利用している。より破壊的で外傷的な方法は、表皮角質層およびしばしば真皮の一部を剥離させるために化学薬品を用いるか、またはこれらを機械的に紙やすりもしくは削皮(dermabrating)によって削るか、最近では高エネルギー熱レーザーを用いて皮膚を蒸発または凝固させる。これらの方法には長期の痛みのある創傷期間があり、創傷のケアが必要である。そして患者は一般にその創傷治癒の間、彼らの日々の社会活動や仕事を制限しなければならない。次にその皮膚は、損傷が修復され皮膚中に新しい構造タンパク質が生成される、創傷の治癒および改造の過程を何ヶ月または何年も継続的に受ける。一般にこれらの治療法は、皮膚への調節された参入をもたらすことを試みること、瘢痕化の危険性を最小限にする創傷ケア環境を提供することを意味している。これらの方法は多くの問題を生み、時には皮膚に醜い瘢痕または悲劇的な色素変化をもたらすことさえあり評判は悪い。しかし、適切な実施および創傷ケアによって、多くの人々が著しい、時には劇的な老化防止効果を達成した。別のより穏やかな方法が近年人気となっており、これらには従来の美容整形のリフティング術、および外側の角質層および表皮が皮膚から除去または削られずに様々な方法によって保護および無傷のまま残される、非切除法と呼ばれるより新しい方法が含まれる。非切除法は一般に、事実上熱の、レーザー光、強力パルス光、無線周波、またはマイクロ波の様々な手段によるエネルギー伝達、およびその後の真皮への熱による創傷の作製である。これらの治療の背後にある理論は、この創傷が瘢痕や他の合併症を誘発したり、悪化させたりせずに、望ましい構造タンパク質の最終的な増加をもたらすことである。この治療の結果は時として外傷となるが、非常に様々である。個人毎の創傷治癒修復機構における違い、個々の身体と皮膚の全体的な健康状態、および多くの他の要因がこの変動性に影響する。
【0018】
レチノイン酸、局所的ビタミンC、局所的ビタミンE、および他の抗酸化剤、ならびに他の抗皺用のクリームおよびローション剤のような、老化防止を目的として開発された様々な局所的薬剤が存在する。これらの多くは十分に定義されている。他の局所的な成分および化粧品等は、「Method and Apparatus for the Photomodulation of Living Cells」と題される、本出願人の同時係属中の米国特許出願第09/899,894号(2001年6月29日出願)に開示され、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらに、超音波照射を用いるそのような成分の皮膚への浸透を促進する方法は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,030,374号および米国特許第6,398,753号に記載されている。創傷治療、座瘡減少、および他の皮膚科学的状態へのこのような成分の使用は、本出願人の同時係属中の米国特許出願第09/933,870号(2001年8月22日出願)に記載され、これもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。関連技術についての更なる考察が同時係属中の米国特許出願第10/119,772号(2002年4月11日出願)および60/461,512号(2003年4月10日出願)に記載され、これらもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
危険性、合併症、回復時間、痛み、不快感、創傷ケア、または手術、化学薬品、電磁照射、および他種の治療法に従来から関係する他の副作用を起こすことなく、加齢により老化した、光老化した、または環境により損傷を受けた皮膚、ならびに病気および外傷によって損傷した皮膚の外観を改善することが求められている。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本明細書において具体化され広く記載されるように、本発明は光老化または損傷した皮膚の外観を改善する方法および装置にに向けられている。方法と装置には、光調節等の光力学的手段による皮膚および他の細胞増殖および遺伝子発現の制御が含まれる。
【0021】
本発明の一つの態様は、非限定的に、レーザー(単色およびフィルター付き、狭帯域多色)、LED(狭帯域多色)を含む線源によって放射される単色照射だけでなく、狭帯域および広帯域の多色電磁照射、無線周波、電磁気治療、または非切除熱媒介手術等の望ましくない影響の減少および有益な効果の促進に関する。例えば、LED光調節と他の同様な非LED治療法は、望ましい効果を促進するか、または望ましくない効果を抑制するためにも使用できる。これはMMPを発現させ、コラーゲンのような構造タンパク質を増加させる熱による皮膚への傷害等の手段によって達成されることもある。LED光源はまた、有益な最終効果を得るために上方制御されたMMPを減少させる間にコラーゲンを増加させることもある。一般にこのような手段は、熱治療で典型的に起きる炎症過程を終息させる。
【0022】
本発明の一つの態様は、ヒトの皮膚の光老化した外観または加齢もしくは環境による損傷によって誘導されて老化した外観を、例えばLEDまたは他の電磁照射治療による光調節の適用によって回復させる(美容維持または皮膚の健康)ばかりでなく抑制する方法を目的とする。好ましくは、本発明は皮膚細胞の細胞増殖の調節、および/またはそのような細胞の遺伝子発現の調節を目的とする。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、老化皮膚の異なった表現型を特徴付ける様々な遺伝子型、およびまたそのような表現型のコレクションまたはライブラリーを含むデータベースを目的とする。データベースには、同じ障害をもつ様々な人々、または異なった障害をもつ様々な人々から同定される多くの遺伝子型を含むこともある。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、細胞増殖および/または遺伝子発現に影響するような光照射または電磁照射による光調節を目的とする。様々な種類の電磁照射の例には、超音波、電波、マイクロ波、磁場、老化皮膚の遺伝子型または表現型に変化をもたらす任意の電気刺激、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0025】
本発明の別の態様および有益性は、続く本明細書に一部記載され、および一部本明細書より明らかであり、または本発明の実践から理解されうる。
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書において具体化され広く記載されるように、本発明は細胞増殖および遺伝子発現の調節、特に皮膚の光老化の抑制、ならびに壊死細胞の再生のための方法および装置を目的とする。また、本発明は壊死の各段階における細胞を若返らせるシステムおよび方法を目的とする。
【0027】
皮膚の光老化は、例えばいくらかの例を挙げると、喫煙、太陽光への曝露、および不健康等の環境因子を含む多くの機構によって起こる。これらの事象は皮膚および関連する細胞機構で炎症過程を誘発する。また日焼け反応を起こさないが、慢性的な光老化による変化をもたらす、より慢性的な低レベルの種類の傷害もある。皮膚の加齢による老化、および光老化、および他の環境によって誘導された変化は、多くの場合または場合によって、UVが誘導する皮膚の光老化と全く同じ経路を共有する。これらの経路には、細胞増殖の上方制御および/または下方制御、ならびに多くの異なった種類の遺伝子の発現レベルの変化が含まれる。
【0028】
細胞増殖調節および遺伝子発現調節の組み合わせが、皮膚ならびに他の細胞および組織の光老化の原因であることは驚くべき発見であった。そのため光老化はこれらの同一の過程に影響を与えることによって、回復または少なくとも改善が可能でありうる。従って、本発明の一つの態様は、光老化ならびに皮膚および細胞に関連した他の疾患の表現型および遺伝子型の発現特性を同定して関係づけることを目的とする。いったん同定されれば、相関地図に従い、適切な治療に調整すること目的とした同様な疾患および状態の迅速かつ効率的な同定を可能とするデータベースへ集められる。さらに、いったん同定されれば、治療ならびに適切な介在および防止方法が、光老化の外観および遺伝子型の特性を停止またはさらには逆転させるために使用できる。そのため、本発明は老化に関連する様相を人工的に隠すまたは覆うことを目的とせず、実際に老化関連現象に関連する過程および機構を回復させることを目的とする。
【0029】
さらに本発明の一つの態様は、これらの同じ機構およびツールを、幹細胞(完全未分化細胞)および始原細胞(部分的分化細胞)等の他の細胞への応用することも目的とする。定義された変数に沿ってこれらの細胞の細胞周期、細胞増殖、および/または遺伝子発現の特性を変えることで、分化経路を決定し、疾病の治療および予防、ならびに創傷治癒のために、細胞、組織、および他の細胞構造を生成または再生することが可能である。
【0030】
細胞増殖および遺伝子発現を調節する方法には、望ましい効果を刺激するのに十分な量または線量による電磁放射への曝露が含まれる(例えば、米国特許第6,398,753号、5,837,224号、および6,130,254号;ならびに米国出願第2002/0028185号、 2001/0053347号、 2003/0004556号、 2003/0004499号、 および2002/0123746号を参照。これらは全て参照により具体的および全体的に本明細書に組み入れられる。)。例えば、LEDへの皮膚の曝露は様々な遺伝子産物の発現を刺激または抑制する。これらの同一の方法はこれらの細胞集団において細胞増殖および細胞周期調節の刺激または抑制を引き起こすためにも使用できる。さらに光調節は、特定の経口剤(全身的効果)または局所剤(部分的効果)(例えば、ビタミンA、レチンA、レチノール)と組み合わせて、これらの刺激剤を個々に使用しても望ましい効果が達成できないものに対して使用することもできる。
【0031】
影響を与える事ができる細胞種には、非限定的に、皮膚細胞(光老化の回復)、神経細胞(疾病予防および治療)、幹細胞(組織再構築)、毛嚢細胞(毛髪の成長または抑制)、炎症過程(疾病、感染、または先天的障害に起因)、創傷修復、およびこれらの組み合わせに深く関係する細胞を含む免疫システムの細胞が含まれる。好ましくは可視光(例えば、紫、青、緑、黄、橙、赤)、赤外線照射、紫外線(UVA、UVB、UVA1、UVA2)、またはこれらの任意の組み合わせ等の電磁照射(例えば光調節)に細胞を曝露することによって調節は達成される。好ましい曝露強度および曝露時間は本明細書添付書面に記載されるが、パルス曝露、継続的および断続的曝露も含みうる。
【0032】
遺伝子発現の調節
紫外線光による傷害は、活性酸素種およびキナーゼカスケードと呼ばれる一連の細胞シグナル伝達事象を誘発する。線維芽細胞活性における上方制御および下方制御の通常の最終経路の1つは、MMP-1(コラゲナーゼ1および間質性コラゲナーゼ合成)、MMP-9(ゼラチナーゼB)、およびMMP-3(ストロメリシン1)を含む様々なMMPの産生を上方制御および増加させるAP-1を介する。これらのMMP酵素の産生は結果として、皮膚の真皮において、コラーゲン、エラスチン、およびECMの破壊をもたらす。同時にコラーゲンIおよび他の構造タンパク質の実際の産生は減少または下方制御されうり、そのためこの過程がさらに促進される。
【0033】
生細胞、組織、および器官の老化は、フリーラジカル曝露および酸化ストレスに関連しうる。老化皮膚にこのモデルを当てはめると、UV光老化および他の環境ストレスは酸化ストレスの増加のためと考えられるが、加齢による老化は抗酸化防御機構の低下により生じる。低下した抗酸化防御または増加した酸化ストレスの最終的な結果は、(ROS)またはフリーラジカルの増加した産生である。
【0034】
遺伝子活性の調節
皮膚において増加したROS産生は細胞のシグナル伝達またはシグナル伝達経路を刺激し、遺伝子活性に変化を生じさせる。構造タンパク質の損傷(例えば、UV光によって引き起こされるコラーゲンの損傷、破壊、および断片化)は、タンパク質、構造、および次いで細胞シグナル伝達を変えて遺伝子活性を変えることもある機能を変化させる。増加したROS産生の、他の可能性のある結果は、DNAに変異が生じることであり、これは次いで遺伝子構造を変化させ、したがって細胞の正常な構造および機能を変えることもある。疾病および環境による損傷への応答に限り、ヒトの体質の相違の大部分は、個人間の遺伝子の構成における比較的小さな差異によって左右されることがある。一塩基多型(SNP)は、ヒトおよび他の動物の生物学反応における差異を同定し、潜在的に予見する方法として現在非常に活発に研究されている。例えば、SNPの特徴は、患者が特定の疾病または腫瘍を発症する可能性が高いかまたは低いかという予見を可能としうり、したがって公知の予防的手段をとる事ができる。別の可能性のある適用は、処方薬を与える前に、個体をSNPを使ってスクリーニングして深刻な副作用を起こす可能性のある個体を見極めることであり、したがってその薬の使用を避けることができる。別の潜在的なSNPの新規な使用法は、例えば、皮膚の加齢による老化に関連するSNPのハプロタイプまたはパターンを同定することである。ある人々や家族は、皮膚癌の危険性が低いか、または単純に同じ年代や同じような環境の仲間よりも若く見える。SNPのプロファイルを開発することが可能であり、これは老化皮膚の表現型の変化に関連する共通因子を特徴付ける(個体の、環境作用因子からの増加した酸化ストレスよる老化加速の危険性をより高くするSNPの遺伝子型パターンを定義)。これはより大きな老化防止的恩典をもたらす治療計画を可能にする。
【0035】
TGF-Bは細胞シグナル伝達の主要なサイトカインであり、表皮のケラチノサイトの増殖を抑制し、熱性の線維芽細胞の増殖を刺激する。これはまた、主要なコラーゲン、エラスチンの合成および分泌を誘導し、MMP 1およびMMP 3の発現を抑制する。TGF-Bは、TGF-B1、TBR I、TBR IIと複数あり、この多くは老化皮膚の細胞で下方制御されている。TGF-Bはまた、デセリン(Decerin)と結合することによって老化皮膚における活性が変化し、これがコラーゲンと組み合わされた場合、コラーゲン線維の形成速度の制御だけでなく皮膚のティンセル強度に影響する。c Jun MRNAは、若い皮膚と比較して活性およびヒト皮膚の老化が2倍だが、c-fosは変化がない。MMP 2はAP 1を介して調節されない。ERK活性は老化皮膚で減少するが、JNK活性は老化皮膚で3〜4倍増加する。環境による傷害-損傷は解剖学的にヒトの全身にわたって様々でありうる。これらの方法は、ヒト皮膚の若返りを可能にし、ヒトの老化皮膚においてコラーゲンの分解を防ぎ同時に新しいコラーゲン形成を刺激する段階を含む。
【0036】
増加したMMPは結果としてERK、サイクリンD2、ならびにI型およびIII型のプロコラーゲンのレベルを減少させる。これはc-gen活性を減少させ、ERK活性を増加させるばかりでなく、多くのケラチノサイト刺激する、中心となる遺伝子型、表現型の一部である。
【0037】
日焼け止め、局所的オイルおよび抗酸化剤、局所的オイルおよび光調節ECM刺激およびMMPおよびMMP抑制、ならびに上記の様々な組み合わせおよび混合によるシステムである。c-gen形成の抑制もまたAP-1形成を抑制し、そのためMMPを減少させてケラチノサイトおよび線維芽細胞の増殖を誘導する。
【0038】
ミトコンドリア活性の調節
ミトコンドリアおよびATPの産生機構(例えばチトクローム発現)は電磁照射によって調節可能である。活性化で媒介される酸化還元または受容体型タンパク質チロシンホスファターゼ(RTPT)によって、LED光は細胞表面の受容体を活性化する。SAP(ストレス活性化経路) 対 分裂促進因子活性化経路を比較対照すると、c-Junが増加した場合SAPはMMPを増加させ、プロコラーゲン1および2を減少させる。最初はECM産生によって行わなくてはならばいが、MAP経路がERK誘導サイクリンを活性化して細胞増殖を促進し、そのため、PSATはタンパク質産生を増加または減少させる傾向があるが、MAPSが細胞増殖を増加または減少させる。Ras/MAP/AP-1経路は創傷への応答において重要な役割を担う。FGFR1はプロモーター領域およびIL-1アンタゴニストプロモーター中の部位を含む。また抗酸化化合物はUV曝露後に増加MMPを抑制できないが、抗紅斑日焼け止め効果があり、これらの1つはリコピンある。LED光調節も日焼け活性を減少させるのに使用でき、MMPレベルは約24時間後に最大になる。太陽光シミュレーターの使用によりボランティアの腕の二ヶ所に1つのMED最小紅斑量を発生させ、その1つを毎日2回GW装置で治療し、比色計で赤みの減少を測定する。生検により、UV後GWによりこれらを治療する際に何が起こるのかが示される。チトクロームP-450 のレチノイド分解を抑制するとレチノイドの濃度が増加する。
【0039】
操作上の特別な理論に制約されることを望まないが、本発明は、複数の受容体媒介経路がヒトまたは動物の皮膚において光調節され、これが外観ならびに構造および機能の両方において、より若い、またはより若々しい、または老化していない皮膚に関連する遺伝子型の発現につながることがあるという、驚くべき発見を含む。
【0040】
赤外線-a照射誘導MMP 1を参照する。赤外線はMAPKシグナル伝達経路の上方制御または活性化によってMMP 1を産生することができる。これはERK 1/2の活性化であり、MMP 1遺伝子のプロモーター領域は熱産生無しにIRAによって活性化されるが、TIMP1は増加しない。MMP-8またはエラスターゼは炎症反応で増加し、AP 1も含む。NF-KBが増加した場合、これはIL-1および継続的な炎症を止めるTNFaをさらに活性化する。
【0041】
線維芽細胞の周りにはセンサーマトリックスがあり、マトリックスに接触した際、これらの活性は低下してほとんどコラーゲンを産生しなくなるが、コラーゲンの存在がゼラチン等の産物を分解した際、これらは炎症が続く場合にコラーゲンをより多く産生する傾向がある。コラーゲンは増えるだけでなく、生じる瘢痕がより少なくなる。
【0042】
サイトカインを抑制する局所的化合物は、それらが経路を遮断する場合シグナルMMPは本質的にMMPを遮断するので、間接的なMMP阻害剤である。同じ事がMMP調節でも言える。栄養補助食品に関しては、ビタミンCは安定したコラーゲン分子を集合させるために局所的に適用できる。局所的ビタミンCによりコラーゲンIおよびコラーゲンIIIを刺激できるが、エラスチン、フィブリリン1/2には影響せず、またMMP 1、2、および9にも影響しない。TIMPは増加し、TIMP2は変化しなかった。
【0043】
創傷治癒および治療の調節
ECMのタンパク質分解は、継続的な創傷治癒の間の修復および再生における基本的な特徴である。創傷修復は、麻酔性または損傷した組織、細胞および/または組織の移動、血管新生、新しく合成されたECMの再生、および細胞増殖因子の調節からなる。創傷治癒の間、MMP 1およびMMP 3ならびにMMP 2および9も増加する。MMP-1、3は特に慢性の創傷で増加するが、急性創傷でも増加する。TIMPもまた変化する。MMP 1、3、9は、UVBによって増加し;増加したエラスチンおよびフィブリリンバーシカンによって増加し;結果的に、非機能的なエラスチン線維を形成し、皮膚の弾性を減少させ、老化したまたは光老化した皮膚となる。コラーゲンIが減少し、UVAはMMP 1、2、3の増加した発現を示す。
【0044】
疾病状態の全身性硬皮症皮膚の線維芽細胞は、通常よりも少ないMMP 1およびMMP 3を産生するが、より多いTIMPを産生する。皮膚癌BCCはより多くのMMP 1、2、9、および11を産生する。光老化、打撲、色素沈着低下領域、線維症のより多くの徴候。老化していない皮膚の光老化または加齢もしくは環境による老化を予防する方法および発明には、皮膚中のROSの存在を減らすために光老化局所的抗酸化剤の影響を遅らせるレチノイドが含まれる。環境ストレスには、酸化物、熱、UV光が含まれる。そのためLED光治療法は、ECMタンパク質/コラーゲン刺激剤およびMMP抑制剤の両方である。UVBは線量依存的にAP 1およびNF-KBを誘導し、これらがMMP 2およびMMP 9を誘導する。コラーゲン束の形成が皮膚の強度、反発性、および弾性に関与する。
【0045】
本発明の一つの態様では、1つの主放射波長すなわち狭帯域多色照射、または複数の波長(単色、狭帯域多色、広帯域多色のいずれか、またはこれらの組み合わせ)のいずれかを発生させるために単独または複数の光源が使われる。単独または複数の組み合わせは同時にまたは連続して適用できる。
【0046】
例えば、狭帯域多色電磁照射を照射する装置は、約590 nm(+/-約10 nm)の主放射波長、および850 nm範囲のいくらかの光、および任意で1060 nm範囲の少量の光を照射する。可視光の590 nmと赤外線の850 nmを組み合わせると生物活性があることが発見されている。特別なIRフィルターを、IR/850曲線の形状を非対照的に減衰させると信じられているので、標的の皮膚または組織が曝露される照射のIR成分を減少させるためにさらに加えてもよい。このような装置による治療の例は添付の図面で示され、線維芽細胞に「線量依存的」な効果があると信じられている850 nmについて説明されている。さらに、約1mW/cm2の電力レベルで、光調節は老化防止表現型の影響に対して行われる(当業者は、電力メーターはこれを正確に測定できないため、計測法にはいくらかの変動および/または誤差があり得ることを認識すると思われる。)。一般に、治療が熱傷害を引き起こさないことが求められる場合、約4 J/ cm2未満のエネルギーフルエンスが好ましい。
【0047】
治療に使用される照射のIR照射に対する黄色光の比率は、本システムの全ての性能に影響することがわかっている。それぞれの種類の照射の相対量は重要であり、実際の照射レベルよりも重要であると信じられている(剥離が起こらない条件で)。590 nmでは約4mW/cm2で、および850 nmでは約1 mW/ cm2(すなわち、黄色光:IRの比が4:1)でよい結果が得られることが判明した。考慮すべき他の因子は、システムのIR成分の振幅 対 波長の曲線の形状である。
【0048】
「コード」という用語は、様々な治療計画のパルス方式を示す。これにはパルス長、インターパルスの遅延、およびパルス反復のような様々な因子が含まれる。例えば、治療は250m秒の「オン」時間、100m秒の「オフ」時間(または暗時間)、および100パルスのパルスコードを含んでもよい。これはエミッターの電力出力レベルで25秒間の全エネルギーフルエンス(J/cm2)を作りだす。これはパルス波による治療 対 継続波による治療(継続波治療用の「コード」は1パルスであり、「オン」時間は選択された治療の長さ、「オフ」時間は0秒である。)の比較を可能にする。様々なコード、比率、および電力レベル、ならびに所定の遺伝子への光老化の影響に対する最終的な効果、ならびに他のデータを示す例を、添付のデータ表および図面で示す。
【0049】
本発明は、ヒトまたは哺乳動物の皮膚に対する日焼けおよび他の太陽光に関係した光効果を治療する方法および装置にも関連する。1つのアプローチは、レチンAを太陽光曝露の前に使用することであり、ビタミンC、E、および他の抗酸化剤を局所的に用いて研究が行われている。試みられている他のアプローチは、日焼けの炎症をいくぶん抑えるための、抗酸化剤リコピンの経口使用である。しかしながら、本発明はこのような治療法の大きな改善を示す。
【0050】
皺、太陽光による損傷、および他の太陽光に関係する「太陽光瘢痕」のような光効果について考えてもよい。これらは繰り返しまたは長期にわたって太陽へ曝露したことにより生じた蓄積的な傷害である。人体は創傷回復機構を用いるが不十分であり、そのため本発明の太陽光シミュレーターは、ある意味では他の創傷治癒のためのモデルとなる。本発明は構成成分に分解された太陽光を模倣する治療法を用いている。UVA1部分がいくつかの態様で使用されているが、より発癌性があるUVBならびにUVAおよびUVBの組み合わせもある。例えば、UV、特にUVA1は皮膚のたるみおよび光老化、皮膚のマトリックスおよび構造タンパク質の変化を引き起こし、MMPを上方制御する。UV照射はまた、IL 1、IL 6、およびNF-kBのような炎症経路の上方制御を引き起こす。これらの経路は老化および他の太陽光に関係した皮膚疾患、ならびに喫煙、汚染、薬剤、疾病、熱傷害、他の創傷等の環境による損傷に影響することが公知である。
【0051】
本発明は、コラーゲン、MMP1、MMP1に強く関係するc-Jun、炎症経路におけるIL/インターロイキン、およびチトクロームのような物質に対する太陽光シミュレーターUVA1の影響によって引き起こされる不利で破壊的な方向性から、遺伝子の上方制御/下方制御の方向を逆転させることで、光老化および他の皮膚疾患の影響を抑制または逆転させると信じられる。添付の実施例は治療法の説明のために本システムの使用について記載している。
【0052】
本発明のシステムおよび方法は、透明な覆いを有するように改良した帯具のような様々な損傷包帯剤と組み合わせて使用してもよく、LEDまたは他の光による光調節の望ましいスペクトルは、皮膚または標的組織の損傷した領域に到達する。一つの態様は、光の伝播の周期的な抑制を可能にする「トラップドア」を含む。また、帯具の開放領域または半透明/透明な部分はIRフィルターを含んでもよい。例えば、帯具または創傷包帯剤の一部として開口部を含むことが望ましくない場合、LEDおよび他の光源の大きさにより帯具の中に光源が納まるようにすることも可能である。そのような光源は小さい電池を動力とし、規則正しい間隔で、かつあらかじめ設定した様々なコードに従って治療を自動または手動で光源に行わせるような手段を含みうる(例えば、手当をした化学薬品による火傷には、切り傷や電気的火傷とは異なったコードが必要であることもある。)。また、皮膚または標的組織への光の浸透を促進する様々な局所的な組成物を、包帯剤または帯具に含めるか、または皮膚の患部を帯具または包帯剤によって覆う前に皮膚または標的組織に適用することができる。
【0053】
帯具の中の光源はまた、物質を「放出」または「活性化」させる、または物質の媒体を送達して酸素、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、もしくは他の薬剤等が放出されるように、コードすることができる。このような組成物の組み合わせもまた使用できる。
【0054】
別の応用では、身体の外での血液の治療も可能になる(例えば、体外のフォレシス(phoresis)装置において)。血液は、免疫機構の刺激、疾病の治療等を行うために、LEDまたは他の光またはEMRのアレイ層を流れ、直接的もしくは光活性型の薬剤を用いるかのいずれかによって光調節されるか、またはその両者によって光調節される。
【0055】
本システムおよび方法はまた、単独、または抗酸化目薬、生物工学的に作られたペプチド、および増殖因子との併用で、網膜および他の眼の治療にも使用してもよい。抗酸化目薬には、非限定的に、グルタチオン、ビタミンC、ビタミンE、カタラーゼ、ユビキノン、イデベノン等が含まれる。
【0056】
本発明の別の適用には、神経再生、ホルモン処置(甲状腺疾病が一般的であり、皮膚への甲状腺の近接のために特に考慮される。)が含まれる。また、脂肪減量、セルライト等のための脂肪細胞の光調節も、約850〜950 nmおよび1000〜1100 nmの範囲の光源を使用することで達成されうる。
【0057】
以下の実施例は本発明の態様について説明しているが、本発明の範囲を限定するとみなすべきではない。
【0058】
実施例
本発明の様々な態様についてさらに説明するグラフ、データ表、および実施例、ならびに本発明の方法で調節される遺伝子産物の一覧を本明細書に添付する。付記に本発明を説明する2つの実験の結果を示す。
【0059】
本発明の他の態様および使用は、本明細書に開示される本発明の明細書および実践を考慮することにより当業者にとって明らかである。本明細書に引用した、全ての出版物、米国および国外の特許および特許出願を含む全ての文献は、参照により具体的かつ全体が本明細書に組み入れられる。明細書および実施例は単に例示的なものであるとみなされることが意図される。
【0060】
MGW49 実験2
本研究に参加した、光老化したIII型皮膚を有する健康な50歳の女性ボランティアを週2回、計8回治療した。皮膚生検は治療前と最終治療(590/810 nm LEDパネル(ZZ)+IRフィルター、250m秒オン/100m秒オフ/100パルス)の4ヶ月後に採取した。
【0061】
太陽光シミュレーターは、水フィルターおよびUV反射ダイクロニックミラー付き1000ワットのキセノンアークランプを備える(280〜400 nm)。
UVA1照射シミュレートのためにSchott WG-360フィルターを使用した。残余可視光および赤外線照射の除去するために、中心波長を365 nmとしたI-Lineフィルターを追加し、いかなる残余UVB放射およびUVC放射も除去するためにHoya UV34フィルターを使用した。
全放射度の測定のために、光レジスト放射計(International Light Inc. Newburyport MA)を使用した。
【0062】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
590/810 nm LED(DD) 24時間 老化関連遺伝子マイクロアレイ
【0063】
590/810 nm LED(ZZ) 24時間 老化関連遺伝子マイクロアレイ
【0064】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
解糖経路遺伝子 590/810 nm LED(DD) 24時間
【0065】
解糖経路遺伝子 590/810 nm LED(DD) 4時間
【0066】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD) 250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
インターロイキン 24時間 ヒト線維芽細胞におけるマイクロアレイ結果 590/810 nm LED(DD)
【0067】
インターロイキン 4時間 ヒト線維芽細胞におけるマイクロアレイ結果 590/810 nm LED(DD)
【0068】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
JJ= 623 nm LEDアレイ、250m秒オン/100m秒オフ/100パルス、3.6mW/cm2
ケラチノサイトマーカーのマイクロアレイ結果(ヒト線維芽細胞試料)LED曝露24時間後
【0069】
ケラチノサイトマーカーマイクロアレイ結果(ヒト線維芽細胞試料)LED曝露4時間後
【0070】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)+IRフィルター、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
590/810 nm (DD)+IRフィルターパネル 24時間
【0071】
590/810 nm (DD)曝露から4時間後のヒト線維芽細胞発現
【0072】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
インターロイキン 24時間 ヒト線維芽細胞におけるマイクロアレイ結果 590/810 nm LED(DD)
【0073】
インターロイキン 4時間 ヒト線維芽細胞におけるマイクロアレイ結果 590/810 nm LED(DD)
【0074】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
24時間 マイクロアレイ
590/810 nm LED(DD)
【0075】
590/810 nm LED(ZZ)
【0076】
623 nm LED(JJ)
【0077】
4時間 マイクロアレイ
590/810 nm LED(DD)
【0078】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
590/810 nm LED(DD) 24時間
増殖:
(刺激性の役割)
【0079】
抗酸化関連
【0080】
アポトーシスおよびストレスタンパク質:
(アポトーシスおよびストレスを促進)
(アポトーシスおよびストレスを抑制)
【0081】
代謝:
(タンパク質およびアミノ酸)
(糖)
(脂質)
(エネルギー代謝および呼吸鎖)
【0082】
イオンチャネル、輸送タンパク質、および膜電位:
【0083】
細胞骨格、細胞運動、および細胞外マトリックスタンパク質:
(細胞骨格および運動性)
(細胞外マトリックス)
(移動、凝集、および接着)
【0084】
DNA合成および修復:
【0085】
転写因子:
【0086】
免疫/炎症およびサイトカイン:
【0087】
その他:
(公知の機能)
【0088】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
ヒト線維芽細胞のミトコンドリア遺伝子
590/810 nm LED(DD) 24時間
【0089】
590/810 nm LED(DD) 4時間
【0090】
590/810 nm LED(DD) ヒト線維芽細胞マイクロアレイ 24時間 下方制御
【0091】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
MAPK関連遺伝子
590/810 nm LED(DD) 24時間
【0092】
590/810 nm LED(DD) 4時間
【0093】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
590/810 nm LED(DD) ヒト線維芽細胞マイクロアレイ 24時間 上方制御
【0094】
590/810 nm LED(ZZ)または(DD)、3.6mW/cm2での250m秒オン/100m秒オフ/100パルス曝露の全ての結果
24時間プロテインキナーゼ遺伝子発現 590/810 nm LED(DD)
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図2】様々な光曝露条件下の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図3】各エネルギーフルエンスでの培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図4】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるチトクロームc酸化酵素2のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図5】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図6】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図7】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1、コラーゲンI、およびチトクロームc酸化酵素2のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図8】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図9】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図10】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるチトクロームbのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図11】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるチトクロームb酸化酵素IのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図12】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるATPアーゼ6のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図13】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるチトクロームc酸化酵素IIIのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図14】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるp53のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図15】各エネルギーフルエンスにおける狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図16】狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図17】様々な光周期管理およびフィルターを用いた狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図18】様々な光周期管理およびフィルターを用いた狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図19】様々な光周期管理およびフィルターを用いた狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図20】様々な光周期管理およびフィルターを用いた狭帯域多色電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すもう1つのグラフである。
【図21】太陽光シミュレーター電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるRT-PCRによるEGF発現を示すグラフである。
【図22】太陽光シミュレーター電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンIのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図23】太陽光シミュレーター電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるc-JunのRT-PCR発現を示すグラフである。
【図24】太陽光シミュレーター電磁照射曝露後の培養ヒト線維芽細胞におけるMMP-1のRT-PCR発現を示すグラフである。
【図25】(a)は、各波長での様々なチトクロームの比吸光係数を示す。(b)は、波長700nm〜1000 nmでの図25(a)のチトクロームの比吸光係数を示す。
【図26】比吸光係数 対 波長を示す。
【図27】優勢可視光および第二赤外線(IR)ピークを示すLEDの放射またはスペクトル出力、ならびにそれらの相対強度および形状を示す。
【図28】可視光およびIR出力の両方を減少させるが、可視光 対 IRの相対比を変え、IRスペクトル出力曲線の形状を変える場所に選択的赤外線フィルターを用た、同一のLED放射を示す。
【図29】優勢可視光および第二赤外線(IR)ピークを示すLEDの放射またはスペクトル出力、ならびにそれらの相対強度および形状を示す。
【図30】可視光およびIR出力の両方を減らすが、可視光 対 IRの相対比を変え、IRスペクトル出力曲線の形状を変える場所に選択的赤外線フィルターを用た、同一のLED放射を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む装置:
少なくとも1つの光源が黄色光に相当する波長で放射線を放射し、かつ少なくとも1つの光源が赤外線光に相当する放射線を放射する、複数の狭帯域多色電磁照射光源。
【請求項2】
黄色光:赤外線光の強度比が約4:1である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの光源が約590 nmの主放射波長の放射線を放射し、および少なくとも1つの光源が約850 nmの主放射波長の放射線を放射する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
少なくとも1つの光源が約590 nmの主放射波長の放射線を約4mW/cm2のエネルギー出力で放射し、かつ少なくとも1つの光源が約850 nmの主放射波長の放射線を約1mW/cm2のエネルギー出力で放射する、請求項3記載の装置。
【請求項5】
黄色光強度に対する赤外線光強度の比率を変更するために、少なくとも1つの光学的、機械的、または電気的フィルターを含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
以下の段階を含む方法:
少なくとも1つの光源が黄色光に相当する波長で放射線を放射し、かつ少なくとも1つの光源が赤外線光に相当する放射線を放射する、複数の狭帯域多色電磁照射光源で哺乳動物組織を光調節する。
【請求項7】
黄色光:赤外線光の強度比が約4:1である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの光源が約590 nmの主放射波長の放射線を放射し、かつ少なくとも1つの光源が約850 nmの主放射波長の放射線を放射する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの光源が約590 nmの主放射波長の放射線を約4mW/cm2のエネルギー出力で放射し、かつ少なくとも1つの光源が約850 nmの主放射波長の放射線を約1mW/cm2のエネルギー出力で放射する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの光学的、機械的、または電気的なフィルターによって黄色光強度に対する赤外線光強度の比率を変更することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項1】
以下を含む装置:
少なくとも1つの光源が黄色光に相当する波長で放射線を放射し、かつ少なくとも1つの光源が赤外線光に相当する放射線を放射する、複数の狭帯域多色電磁照射光源。
【請求項2】
黄色光:赤外線光の強度比が約4:1である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの光源が約590 nmの主放射波長の放射線を放射し、および少なくとも1つの光源が約850 nmの主放射波長の放射線を放射する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
少なくとも1つの光源が約590 nmの主放射波長の放射線を約4mW/cm2のエネルギー出力で放射し、かつ少なくとも1つの光源が約850 nmの主放射波長の放射線を約1mW/cm2のエネルギー出力で放射する、請求項3記載の装置。
【請求項5】
黄色光強度に対する赤外線光強度の比率を変更するために、少なくとも1つの光学的、機械的、または電気的フィルターを含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
以下の段階を含む方法:
少なくとも1つの光源が黄色光に相当する波長で放射線を放射し、かつ少なくとも1つの光源が赤外線光に相当する放射線を放射する、複数の狭帯域多色電磁照射光源で哺乳動物組織を光調節する。
【請求項7】
黄色光:赤外線光の強度比が約4:1である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの光源が約590 nmの主放射波長の放射線を放射し、かつ少なくとも1つの光源が約850 nmの主放射波長の放射線を放射する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの光源が約590 nmの主放射波長の放射線を約4mW/cm2のエネルギー出力で放射し、かつ少なくとも1つの光源が約850 nmの主放射波長の放射線を約1mW/cm2のエネルギー出力で放射する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの光学的、機械的、または電気的なフィルターによって黄色光強度に対する赤外線光強度の比率を変更することを含む、請求項6記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2007−518452(P2007−518452A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522123(P2006−522123)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024879
【国際公開番号】WO2005/011606
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506014022)ライト バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024879
【国際公開番号】WO2005/011606
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506014022)ライト バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]