説明

熱分解法により製造された表面変性されたシリカ

BET表面積300±25m2/gを有する一次粒子の凝集物の形で存在しかつ前記凝集物は平均面積4800〜6000nm2を有し、平均円相当径(ECD=Equivalent Circle Diameter)60〜80nmを有し、平均周囲長580〜750nmを有する、熱分解法により製造されたシリカを、公知の方法で表面変性することにより製造された、熱分解法により製造された表面変性されたシリカ。前記シリカは、液状シリコーンゴム系(LSR)のレオロジー制御のための充填剤として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解法により製造された表面変性されたシリカ、その製造方法及びその使用に関する。
【0002】
熱分解法により製造されたシリカから、表面変性により、表面変性された熱分解シリカを製造することは公知である。こうして製造されたシリカは、多くの適応範囲で、例えば液状系のレオロジー制御のために又は液体シリコーンゴム系(LSR)中で使用される。レオロジー制御の他に、この場合、前記液状系中への混和性も極めて重要である。
【0003】
前記の公知の表面変性された熱分解シリカは、液状系中への混和性が不十分であるという欠点を有する。
【0004】
従って、他の重要な特性、例えばレオロジー制御を損なわずに、液状系中への改善された混和性を有する表面変性された熱分解シリカを製造するという課題が生じる。
【0005】
本発明の主題は、オロジー制御を損なわずに液状系中への混和性が改善されることを特徴とする、熱分解法により製造された、表面変性されたシリカである。
【0006】
本発明の他の主題は、BET表面積300±25m2/gを有する一次粒子の凝集物の形で存在しかつ前記凝集物は平均面積4800〜6000nm2を有し、平均円相当径(ECD=Equivalent Circle Diameter)60〜80nmを有し、平均周囲長580〜750nmを有する、熱分解法により製造されたシリカを、公知の方法で表面変性することを特徴とする熱分解法により製造された表面変性されたシリカの製造方法である。
【0007】
この原料として使用される熱分解法により製造されたシリカは、EP 1 686 093 A2から公知である。
【0008】
この表面変性は、前記シリカに場合により水を及び引き続き表面変性剤を吹き付けることにより実施することができる。この吹き付けは、逆の順序で行うこともできる。使用された水は、酸、例えば塩酸で7〜1のpH値にまで酸性化されていてもよい。複数の表面変性剤を使用する場合には、これらを一緒に、しかしながら別個に、順番に又は混合物として適用することができる。
【0009】
前記の単数又は複数の表面変性剤は適当な溶剤中に溶かされていてもよい。前記吹き付けが完了した後、なお5〜30分間後混合することができる。
【0010】
前記混合物を、引き続き20〜400℃の温度で0.1〜6時間の期間にわたり熱処理する。この熱処理は、保護ガス下で、例えば窒素下で行うことができる。
【0011】
前記シリカを表面変性する別の方法は、前記シリカを蒸気の形の表面変性剤で処理し、前記混合物を引き続き50〜800℃の温度で0.1〜6時間の期間にわたり熱処理することにより実施することができる。この熱処理は、保護ガス下で、例えば窒素下で行うことができる。
【0012】
この熱処理は、異なる温度で多段階で行うこともできる。
【0013】
前記の単数又は複数の表面変性剤の適用は、単一成分ノズル、二成分ノズル又は超音波ノズルを用いて行うことができる。
【0014】
この表面変性は、吹き付け装置を備えた加熱可能なミキサー及び乾燥器中で連続的に又はバッチ的に実施することができる。適当な装置は、例えば次のものでることができる:鋤刃ミキサー、円盤乾燥器、流動層乾燥器又は流動床乾燥器。
【0015】
表面変性剤として、次の化合物のグループからなる少なくとも1種の化合物を使用することができる。
【0016】
a) (RO)3Si(Cn2n+1)及び(RO)3Si(Cn2n-1)タイプのオルガノシラン
R=アルキル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、i−プロピル−、ブチル−
n=1〜20
【0017】
b) R′x(RO)ySi(Cn2n+1)及びR′x(RO)ySi(Cn2n-1)タイプのオルガノシラン
R=アルキル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、i−プロピル−、ブチル−
R′=アルキル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、i−プロピル−、ブチル−
R′=シクロアルキル
n=1〜20
x+y=3
x=1、2
y=1、2
【0018】
c) X3Si(Cn2n+1)及びX3Si(Cn2n-1)タイプのハロゲンオルガノシラン
X=Cl、Br
n=1〜20
【0019】
d) X2(R′)Si(Cn2n+1)及びX2(R′)Si(Cn2n-1)タイプのハロゲンオルガノシラン
X=Cl、Br
R′=アルキル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、i−プロピル−、ブチル−
R′=シクロアルキル
n=1〜20
【0020】
e) X(R′)2Si(Cn2n+1)及びX(R′)2Si(Cn2n-1)タイプのハロゲンオルガノシラン
X=Cl、Br
R′=アルキル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、i−プロピル−、ブチル−
R′=シクロアルキル
n=1〜20
【0021】
f) (RO)3Si(CH2m−R′タイプのオルガノシラン
R=アルキル、例えばメチル−、エチル−、プロピル−
m=0、1〜20
R′=メチル−、アリール(例えば−C65、置換されたフェニル基)
−C49、OCF2−CHF−CF3、−C613、−O−CF2−CHF2
−NH2、−N3、−SCN、−CH=CH2、−NH−CH2−CH2−NH2
−N−(CH2−CH2−NH22
−OOC(CH3)C=CH2
−OCH2−CH(O)CH2
−NH−CO−N−CO−(CH25
−NH−COO−CH3、−NH−COO−CH2−CH3、−NH−(CH23Si(OR)3
−Sx−(CH23Si(OR)3
−SH
−NR′R″R″′(R′=アルキル、アリール;R″=H、アルキル、アリール;R″′=H、アルキル、アリール、ベンジル、C24NR″″R″″′、式中、R″″=H、アルキル及びR″″′=H、アルキル)
【0022】
g) (R″)x(RO)ySi(CH2m−R′タイプのオルガノシラン
R″=アルキル x+y=3
=シクロアルキル x=1、2
y=1、2
m=0、1〜20
R′=メチル−、アリール(例えば−C65、置換されたフェニル基)
−C49、−OCF2−CHF−CF3、−C613、−O−CF2−CHF2
−NH2、−N3、−SCN、−CH=CH2、−NH−CH2−CH2−NH2
−N−(CH2−CH2−NH22
−OOC(CH3)C=CH2
−OCH2−CH(O)CH2
−NH−CO−N−CO−(CH25
−NH−COO−CH3、−NH−COO−CH2−CH3
−NH−(CH23Si(OR)3
−Sx−(CH23Si(OR)3
−SH
−NR′R″R″′(R′=アルキル、アリール;R″=H、アルキル、アリール;R″′=H、アルキル、アリール、ベンジル、C24NR″″R″″′、式中、R″″=H、アルキル及びR″″′=H、アルキル)
【0023】
h) X3Si(CH2m−R′タイプのハロゲンオルガノシラン
X=Cl、Br
m=0、1〜20
R′=メチル−、アリール(例えば−C65、置換されたフェニル基)
−C49、−OCF2−CHF−CF3、−C613、−O−CF2−CHF2
−NH2、−N3、−SCN、−CH=CH2、−NH−CH2−CH2−NH2
−N−(CH2−CH2−NH22
−OOC(CH3)C=CH2
−OCH2−CH(O)CH2
−NH−CO−N−CO−(CH25
−NH−COO−CH3、−NH−COO−CH2−CH3
−NH−(CH23Si(OR)3
−Sx−(CH23Si(OR)3
−SH
【0024】
i) (R)X2Si(CH2m−R′タイプのハロゲンオルガノシラン
X=Cl、Br
R=アルキル、例えばメチル−、エチル−、プロピル−
m=0、1〜20
R′=メチル−、アリール(例えば−C65、置換されたフェニル基)
−C49、−OCF2−CHF−CF3、−C613、−O−CF2−CHF2
−NH2、−N3、−SCN、−CH=CH2、−NH−CH2−CH2−NH2
−N−(CH2−CH2−NH22
−OOC(CH3)C=CH2
−OCH2−CH(O)CH2
−NH−CO−N−CO−(CH25
−NH−COO−CH3、−NH−COO−CH2−CH3
−NH−(CH23Si(OR)3
式中、R=メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−であることができ
−Sx−(CH23Si(OR)3
式中、R=メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−であることができ
−SH
【0025】
j) (R)2XSi(CH2m−R′タイプのハロゲンオルガノシラン
X=Cl、Br
R=アルキル
m=0、1〜20
R′=メチル−、アリール(例えば−C65、置換されたフェニル基)
−C49、−OCF2−CHF−CF3、−C613、−O−CF2−CHF2
−NH2、−N3、−SCN、−CH=CH2、−NH−CH2−CH2−NH2
−N−(CH2−CH2−NH22
−OOC(CH3)C=CH2
−OCH2−CH(O)CH2
−NH−CO−N−CO−(CH25
−NH−COO−CH3、−NH−COO−CH2−CH3
−NH−(CH23Si(OR)3
−Sx−(CH23Si(OR)3
−SH
【0026】
k) 次のタイプのシラザン
【化1】

R=アルキル、ビニル、アリール
R′=アルキル、ビニル、アリール
【0027】
l) タイプD3、D4、D5の環状ポリシロキサン、その際、D3、D4及びD5とは、3、4又は5個のタイプ−O−Si(CH3)2−の単位を有する環状ポリシロキサンであると解釈される。
例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン=D4
【化2】

【0028】
(m) 次のタイプのポリシロキサン又はシリコーン油
【化3】

【化4】

R=アルキル、例えばCn2n+1、その際、n=1〜20である、アリール、例えばフェニル基及び置換されたフェニル基、(CH2n−NH2、H
R′=アルキル、例えばCn2n+1、その際、n=1〜20である、アリール、例えばフェニル基及び置換されたフェニル基、(CH2n−NH2、H
R″=アルキル、例えばCn2n+1、その際、n=1〜20である、アリール、例えばフェニル基及び置換されたフェニル基、(CH2n−NH2、H
R″′=アルキル、例えばCn2n+1、その際、n=1〜20である、アリール、例えばフェニル基及び置換されたフェニル基、(CH2n−NH2、H。
【0029】
有利に、表面変性剤として次のシランを使用することができる:
オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン。
【0030】
特に有利に、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルポリシロキサン、オクチルトリメトキシシラン及びオクチルトリエトキシシランを使用することができる。
【0031】
殊に、ヘキサメチルジシラザンを使用することができる。
【0032】
本発明による、熱分解法により製造された表面変性されたシリカは、液状シリコーンゴム(LSR)用の充填剤として使用することができる。
【0033】
本発明の他の主題は、本発明による、熱分解法により製造された表面変性されたシリカを含有する液状シリコーンゴム系(LSR)である。
【0034】
本発明は次の利点を有する:レオロジー制御を損なうことのない液状系中への容易な混和性。
【0035】
実施例
比較シリカの製造
アエロジル(登録商標)300 2kgをミキサー中に装入し、混合しながらまず水0.09kgを吹き付け、引き続きヘキサメチルジシラザン(HMDS)0.36kgを吹き付けた。吹き付けが完了した後、更に15分間後撹拌した。この反応混合物をまず65℃で5時間、引き続き285℃で2時間、窒素雰囲気下で熱処理した。
【0036】
本発明によるシリカの製造−実施例
シリカ2(EP 1 686 093の表4) 2kgをミキサー中に装入し、混合しながらまず水0.09kgを吹き付け、引き続きヘキサメチルジシラザン(HMDS)0.36kgを吹き付けた。吹き付けが完了した後、更に15分間後撹拌した。この反応混合物をまず65℃で5時間、引き続き285℃で2時間、窒素雰囲気下で熱処理した。
【0037】
物理化学的データ
【表1】

【0038】
混和挙動の測定
混和挙動の測定のために、シリカがシリコーンポリマー中に完全に濡れるまでに必要な時間を測定した。
【0039】
シリコーンポリマー(Silopren U 10; GE Bayer)800.0gを、遊星型ディソルバーの撹拌容器中へ秤入れる。
【0040】
シリカ200.0gを連続的にサイトグラスを通して添加し、遊星駆動の50min-1の速度でかつディソルバーの500min-1の速度で混和させた。
【0041】
前記シリカがシリコーンポリマー中で完全に濡れるまでに必要な時間を、混和時間とする。この混和時間はできる限り短いのが好ましい。
【0042】
シリコーンポリマー中の増粘作用の測定
試料の製造:
シリコーンポリマーU10 40gを装入した。
【0043】
まず、シリカ5.00gを30秒で3000min-1で混和する。その後に、更にシリカ5.00gを30秒で3000min-1で混和する。
【0044】
引き続き60秒で3000min-1で分散させる。その後で前記ビーカーを開け、壁部及び蓋部の汚れを掻き落とす。
【0045】
その後、60秒で3000min-1で2回分散させる。この増粘を、Haake社のレオメーターRheoStress 1(測定装置:D=35mmを有する円錐、2゜測定プレートアタッチメントMPC 35)で測定する。
【0046】
混和挙動及び増粘作用−結果
【表2】

【0047】
本発明によるシリカは明らかに改善された混和挙動を示すことを明確に認識できる。つまり、本発明によるシリカは比較シリカよりも短時間に混和でき、増粘作用も、その他の物理化学的データも同等である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状系中で改善された混和性を有することを特徴とする、熱分解法により製造された表面変性されたシリカ。
【請求項2】
BET表面積300±25m2/gを有する一次粒子の凝集物の形で存在しかつ前記凝集物は平均面積4800〜6000nm2を有し、平均円相当径(ECD=Equivalent Circle Diameter)60〜80nmを有し、平均周囲長580〜750nmを有する、熱分解法により製造されたシリカを、公知の方法で表面変性することを特徴とする、請求項1記載の熱分解法により製造された表面変性されたシリカの製造方法。
【請求項3】
表面変性剤としてヘキサメチルジシラザンを使用することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記シリカに、場合により水を吹き付け、引き続き表面変性剤を吹き付けることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記シリカを蒸気の形の表面変性剤で処理し、前記混合物を引き続き50〜800℃の温度で0.1〜6時間の期間にわたり熱処理することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
液状系のレオロジー制御のための、熱分解法により製造された表面変性されたシリカの使用。
【請求項7】
液状シリコーンゴム系(LSR)のレオロジー制御のための、熱分解法により製造された表面変性されたシリカの使用。

【公表番号】特表2010−534618(P2010−534618A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518586(P2010−518586)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058418
【国際公開番号】WO2009/015970
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】