説明

熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、および発泡された熱可塑性エラストマー組成物の製造方法

【課題】押出成形において、押出機のダイスの出口周辺に付着する重合体の量が低減され、その結果、優れた外観を有する押出成形品を製造し得る、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【解決手段】(A)エチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、(D)架橋剤0.01〜20重量部と、特定の(E1)第1のプロピレン重合体成分(E2)第2のプロピレン重合体成分を含有し、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の(E)ポリプロピレン樹脂5〜130重量部とを動的に加熱する工程からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、および発泡された熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、特定の共重合体を組み合わせて用いる技術が開示されている。しかしながら、該製造方法で製造された熱可塑性エラストマー組成物は押出し成形に用いた場合、押出し機のダイスの出口周辺に樹脂等が付着する、いわゆる目ヤニが発生し、成型品の外観が不十分である。
【0003】
【特許文献1】特開平9−118795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる現状において、本発明の目的は、押出成形において、押出機のダイスの出口周辺に付着する重合体の量が低減され、その結果、優れた外観を有する押出成形品を製造し得る、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、および発泡された熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は少なくとも、(A)少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、(D)架橋剤0.01〜20重量部と、以下の(E1)第1のプロピレン重合体成分0.05〜25重量%および(E2)第2のプロピレン重合体成分75〜99.95重量%を含有し(両者の合計を100重量%とする)、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の(E)ポリプロピレン樹脂5〜130重量部とを動的に加熱する工程からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である:
(E1)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度5〜10dl/gの第1のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする);
(E2)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度が0.5〜4dl/gの第2のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)。
この製造方法を以下、「製造方法−1」と言う。
【0006】
本発明はまた、以下の工程からなる発泡された熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である:
(1)少なくとも、(A)少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、(D)架橋剤0.01〜20重量部と、以下の(E1)第1のプロピレン重合体成分0.05〜25重量%および(E2)第2のプロピレン重合体成分75〜99.95重量%を含有し(両者の合計を100重量%とする)、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の(E)ポリプロピレン樹脂5〜130重量部とを動的に加熱し、熱可塑性エラストマー組成物を製造する工程;
(E1)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度5〜10dl/gの第1のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(E2)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度が0.5〜4dl/gの第2のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(2)少なくとも、該熱可塑性エラストマー組成物と、成分(F)発泡剤0.5〜20重量部とを溶融混練する工程。
この製造方法を以下、「製造方法−2」と言う。
【0007】
本発明はさらに、以下の工程からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である:
(1)少なくとも、(A)少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(B)プロピレン単位を50〜100重量%含有する、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体5〜130重量部と(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、成分(D)架橋剤0.01〜20重量部とを動的に加熱して、中間生成物を製造する工程;
(2)少なくとも、該中間生成物と、以下の成分(E1)第1のプロピレン重合体成分0.05〜25重量%および成分(E2)第2のプロピレン重合体成分75〜99.95重量%を含有し(両者の合計を100重量%とする)、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の成分(E)ポリプロピレン樹脂1〜50重量部とを溶融混練する工程;
(E1)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度5〜10dl/gの第1のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(E2)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度が0.5〜4dl/gの第2のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)。
この製造方法を以下、「製造方法−3」と言う。
【0008】
本発明はさらにまた、以下の工程からなる発泡された熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である:
(1)少なくとも、(A)少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(B)プロピレン単位を50〜100重量%含有する、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体5〜130重量部と(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、(D)架橋剤0.01〜20重量部とを動的に加熱して、中間生成物を製造する工程;
(2)少なくとも、該中間生成物と、以下の(E1)第1のプロピレン重合体成分0.05〜25重量%および(E2)第2のプロピレン重合体成分75〜99.95重量%を含有し(両者の合計を100重量%とする)、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の(E)ポリプロピレン樹脂1〜50重量部とを溶融混練して、熱可塑性エラストマー組成物を製造する工程;
(E1)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度5〜10dl/gの第1のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(E2)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度が0.5〜4dl/gの第2のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(3)少なくとも、該熱可塑性エラストマー組成物と、(F)発泡剤0.5〜20重量部とを溶融混練する工程。
この製造方法を以下、「製造方法−4」と言う。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、押出成形において、押出機のダイスの出口周辺に付着する重合体の量が低減され、その結果、優れた外観を有する押出成形品を製造し得る、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、および発泡された熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
成分(A)は、少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムである。本発明において、「エチレン単位」のような用語は、重合されたモノマーの単位を意味する。
【0011】
上記α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテン;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、入手容易性の観点から、プロピレンまたは1−ブテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。
【0012】
成分(A)は、エチレン単位および炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位以外の他の単量体単位を含有していてもよい。該単量体として、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン、および2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンのような炭素数4〜8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、および5−ビニル−2−ノルボルネンのような炭素原子数5〜15の非共役ジエン;酢酸ビニルのようなビニルエステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのような不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸およびメタクリル酸のような不飽和カルボン酸;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。非共役ジエンの中では、入手容易性の観点から、5−エチリデン−2−ノルボルネンまたはジシクロペンタジエンが好ましい。
【0013】
成分(A)のエチレン単位の含有量は、通常30〜90重量%、好ましくは40〜80重量%、α−オレフィン単位の含有量は、通常5〜70重量%、好ましくは15〜60重量%、エチレン単位およびα−オレフィン単位以外の他の単量体単位の含有は、通常0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%である(これら単位の合計を100重量%とする)。
【0014】
成分(A)は公知の方法で製造することができる。成分(A)として、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン共重合体、およびエチレン−プロピレン−5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体;ならびにこれらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、エチレン単位の含有量が45〜80重量%、プロピレン単位の含有量が20〜55重量%のエチレン−プロピレン共重合体、またはエチレン単位の含有量が40〜80重量%、プロピレン単位の含有量が15〜55重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量が2〜10重量%のエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体が好ましい。
【0015】
成分(A)のムーニー粘度(ML1+4100℃)は、好ましくは10〜350、より好ましくは30〜300である。該ムーニー粘度が10未満であると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度に劣ることがある。ムーニー粘度が350を超えると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の外観が損なわれることがある。
【0016】
成分(A)の135℃テトラリン中で測定した極限粘度は、好ましくは0.5〜8.0dl/g、更に好ましくは1.0〜6.0dl/gである。極限粘度が0.5dl/g未満であると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度が劣ることがある。極限粘度が8.0dl/gを超えると、製造される熱可塑性エラストマーの外観が損なわれることがある。
【0017】
成分(B)とは、プロピレン単位を50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%含有する、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィン(たとえば、1‐ブテン、1‐ヘキセン、1−ペンテン、1−オクテンおよび4−メチル‐1‐ペンテン)とのランダム共重合体もしくはブロック共重合体を意味する(これらのモノマー単位の合計を100重量%とする)。
【0018】
該共重合体として、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、およびエチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体を例示することができる。成分(B)として、プロピレンの単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体またはプロピレン−1−ブテン共重合体が好ましい。
【0019】
上記ブロック共重合体とは、プロピレンとエチレンとを用いる場合について説明すると、以下のような工程からなる製造方法で製造される重合体を意味する:
(1)プロピレンを単独重合し、ポリプロピレンを生成させる工程;
(2)該ポリプロピレンの存在下に、プロピレンとエチレンとを共重合させる工程。
【0020】
したがって、得られる重合体は実質上、工程(1)で生成されるポリプロピレンと、工程(2)で生成されるプロピレン−エチレン共重合体との混合物である。
【0021】
ここで、工程(1)で製造されるポリプロピレンと、工程(2)で製造されるプロピレン−エチレン共重合体とは、ポリマーの教科書に載っている例えばSSSSSBBBBB(SSSSSはスチレン単位の連鎖、BBBBBはブタジエン単位の連鎖を、それぞれ示す)なるブロック共重合体のように、それらの末端が互いに結合してはいないものの、上記のような段階的に実施される工程からなる方法で製造されるから、該共重合体はポリオレフィンの分野でしばしば、ブロック共重合体と呼ばれている
【0022】
成分(B)は公知の方法で製造することができる。成分(B)の立体構造は特に限定されず、立体構造として、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、およびこれら両構造が混合した構造を例示することができる。中でも、アイソタクチック構造を主たる構造とする成分(B)が好ましい。
【0023】
成分(B)の、JIS K6758にしたがって21.18Nの荷重下230℃で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.5〜50g/10分である。
【0024】
成分(C)として、アロマ系鉱物油、ナフテン系鉱物油、およびパラフィン系鉱物油のような、平均分子量が300〜1500で流動点が0℃以下の、石油の高沸点留分を例示することができる。中でも、パラフィン系鉱物油が好ましい。成分(C)は、成分(A)と組合せて用いてもよい。ゴム分野において、該組合せで得られるゴムは油展ゴムと呼ばれており、該組合せにおける成分(C)は伸展油と呼ばれている。
【0025】
成分(C)と成分(A)とを組合せる公知の方法として、(1)ロールやバンバリーミキサーのような混練装置を用い、両者を機械的に混練する方法、(2)成分(A)の製造工程で得られる成分(A)の溶液に成分(C)を添加し、その後、スチームストリッピングのような方法によって脱溶媒する方法、を例示することができる。
【0026】
成分(D)として、ゴムの架橋に通常用いられている架橋剤を用いることができる。成分(D)として、有機過酸化物、フェノール架橋剤、硫黄、含硫黄化合物、p−キノン、p−キノンジオキシムの誘導体、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物、シラン化合物、およびアミノ樹脂を例示することができる。中でも、有機過酸化物あるいはフェノール樹脂が好ましい。
【0027】
有機過酸化物として、ジクミルペルオキシド、ジ−第3ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(第3ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(第3ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(第3ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロルベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロルベンゾイルペルオキシド、第3ブチルペルオキシベンゾエート、第3ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、および第3ブチルペルオキシドを例示することができる。中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(第3ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましく、分解温度の高い2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3が特に好ましい。
【0028】
成分(D)の量は、成分(A)100重量部あたり、0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、更に好ましくは0.05〜5重量部である。該量が0.01重量部未満であると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の弾性回復性が劣る場合がある。該量が20重量部を超えると、該熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性が劣る場合がある。
【0029】
有機過酸化物は、それによる架橋反応を均一かつ緩和に進行させるために、架橋助剤と組合せてもよい。架橋助剤として、イオウ、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルイソシアヌレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、ジアクリル酸亜鉛、およびジメタアクリル酸亜鉛を例示することができる。中でも、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、またはトリアリルイソシアヌレートが好ましい。N,N’−m−フェニレンビスマレイミドは単独で、架橋剤として用いることもできる。
【0030】
架橋助剤の量は、成分(A)100重量部あたり、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。該量が0.01重量部未満であると、架橋効率が劣る場合がある。該量が10重量部を超えると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性や機械的物性が劣る場合がある。
【0031】
上記のフェノール架橋剤として、ゴム用架橋剤として一般的に使用されている下式で表される化合物を例示することができる(米国特許3287440号公報および同3709840号公報参照):


式中、nは0〜10の整数;XおよびYはそれぞれ独立に水酸基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子であり;Rは炭素数1〜15の飽和炭化水素基である。該化合物は、置換フェノールとアルデヒドとをアルカリ触媒で縮重合させることによって製造することができる。
【0032】
上記のフェノール架橋剤としてまた、アルキルフェノ−ルホルムアルデヒドおよび臭素化アルキルフェノ−ルホルムアルデヒドを例示することができる。
【0033】
フェノール架橋剤は、それによる架橋反応の速度を調節するために、架橋促進剤と組合せてもよい。架橋促進剤として、塩化第一スズおよび塩化第二鉄のような金属ハロゲン化物;ならびに、塩素化ポリプロピレン、臭化ブチルゴムおよびクロロプレンゴムのような有機ハロゲン化物を例示することができる。
【0034】
フェノール架橋剤は、金属酸化物(たとえば、酸化亜鉛)およびステアリン酸のような分散剤と組合せることが好ましい。
【0035】
成分(E1)における「第1のプロピレン重合体成分」とは、少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む重合体成分を意味する(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)。成分(E1)は、好ましくはプロピレンの単独重合体である。炭素原子数4〜12のα−オレフィンとして、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセンおよび1−オクテンを例示することができる。中でも、好ましくは1−ブテンである。
【0036】
成分(E1)の極限粘度は5〜10dl/g、好ましくは6〜10dl/g、より好ましくは7〜10dl/gである。極限粘度が5dl/g未満の場合、製造される熱可塑性エラストマー組成物の外観が損なわれることがある。
【0037】
成分(E2)における「第2のプロピレン重合体成分」とは、少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む重合体成分を意味する(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)。成分(E2)として、プロピレンの単独重合体;プロピレン単位90〜99重量%と、エチレン単位1〜10重量%とからなるプロピレン−エチレンランダム共重合体(両者の合計を100重量%とする);プロピレン単位70〜95重量%と、炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位5〜30重量%とからなるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(両者の合計を100重量%とする);または、プロピレン単位80〜95重量%と、エチレン単位1〜10重量%と、炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位3〜15重量%とからなるプロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(3者の合計を100重量%とする)が好ましい。炭素原子数4〜12のα−オレフィンとして、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、および−オクテンを例示することができる。中でも、好ましくは1−ブテンである。
【0038】
成分(E2)の極限粘度は0.5〜4dl/g、好ましくは1〜3dl/gである。極限粘度が4dl/g以上の場合、製造される熱可塑性エラストマー組成物の流動性が劣り、その結果、その加工性が悪化することがある。
【0039】
成分(E)のQ値(重量平均分子量Mwと、数重量平均分子量Mnとの比、Mw/Mn)は1〜10である。
【0040】
成分(E)の極限粘度は0.5〜4dl/g、好ましくは0.5〜3dl/gである。極限粘度が3dl/g超えると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の弾性回復性が劣る場合がある。
【0041】
成分(E)は公知の方法で製造することができる。該製造方法として、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒のような重合触媒を用いて、(1)ヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびキシレンのような不活性溶剤中で重合する方法;(2)液状のモノマーを重合する方法(バルク重合法);(3)気体のモノマーを重合する方法(気相重合法);および(4)これらの組合せ;を例示することができる。
【0042】
成分(E)の好ましい製造方法は、以下の工程からなる連続的な方法である:
(1)成分(E1)0.05〜25重量%を製造する工程;
(2)成分(E1)の存在下に、成分(E2)75〜99.85重量%を製造する工程;
ただし、成分(E1)と成分(E2)との合計を100重量%とする。
【0043】
成分(F)として、有機系熱分解型発泡剤;無機系熱分解型発泡剤;水;炭化水素系およびフロン系のような溶剤;ならびに、窒素、二酸化炭素、プロパンおよびブタンのような気体を例示することができる。中でも、熱分解型発泡剤が好ましい。
【0044】
熱分解型発泡剤として、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、および亜硝酸アンモニウムのような無機発泡剤;N,N'- ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、およびN,N'- ジニトロソペンタメチレンテトラミンのようなニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、およびバリウムアゾジカルボキシレ−トのようなアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'- オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、およびジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジドのようなスルホニルヒドラジド化合物;ならびに、カルシウムアジド、4,4'- ジフェニルジスルホニルアジド、およびp-トルエンスルホニルアジドのようなアジド化合物、を例示することができる。
【0045】
成分(F)は、発泡助剤と組合せてもよい。発泡助剤として、亜鉛、カルシウム、鉛、鉄、およびバリウムのような金属化合物;クエン酸、サリチル酸、フタル酸、およびステアリン酸のような有機酸;尿素;ならびに、尿素の誘導体を例示することができる。
【0046】
本発明における「動的に加熱する」とは、原料成分を溶融混練することを意味する。溶融混練の装置として、公知の、開放型のミキシングロール;ならびに、非開放型のバンバリーミキサー、押出機、ニーダーおよび連続ミキサー、を例示することができる。中でも、非開放型の装置が好ましい。溶融混練温度は通常150〜250℃であり、溶融混練時間は通常1〜30分間である。
【0047】
熱可塑性エラストマー組成物と成分(F)とを溶融混練する装置としても、上記装置を例示することができる。該溶融混練によって、成分(F)の作用により発泡された熱可塑性エラストマー組成物が製造される。
【0048】
本発明における各成分の量は、成分(A)100重量部あたりの量であるところ、成分(A)が100重量部未満であると、製造される熱可塑性エラストマー組成物が弾性を示さなくなる。成分(A)100重量部を超えると、該熱可塑性エラストマー組成物の流動性が低下し、その結果、外観が不良となる。
【0049】
成分(B)が5重量部未満であると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の流動性が低下し、その結果、熱可塑性エラストマー組成物の外観が不良となることがある。成分(B)が130重量部を超えると、製造される熱可塑性エラストマー組成物が弾性を示さないことがある。
【0050】
成分(C)が5重量部未満であると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の流動性が低下し、外観が不良となる。成分(C)が150重量部を超えると、該熱可塑性エラストマー組成物の粘着性が増し、該組成物へのホコリやゴミの付着、および、該組成物間の互着が起こり易くなる。
【0051】
成分(E)が、製造方法−1および2において5重量部未満であったり、製造方法−3および4において1重量部未満であったりすると、製造される熱可塑性エラストマー組成物の流動性が低下し、その結果、外観が不良となる。成分(E)が、製造方法−1および2において130重量部を超えたり、製造方法−3および4において50重量部を超えたりすると、製造される熱可塑性エラストマー組成物が硬くなり、弾性を示さなくなる。
【0052】
成分(F)の使用量は、成分(A)100重量部あたり、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
【0053】
本発明で用いられる各成分は、たとえば、タルクおよび炭酸カルシウムのような無機フィラー;難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、耐熱・耐光安定剤、老化防止剤、および離型剤のような添加剤;または顔料と組合せてもよい。
【0054】
本発明の製造方法で製造される熱可塑性エラストマー組成物や発泡された熱可塑性エラストマー組成物は、バンパー部品、ルーフモール、サイドモール、ボディパネル、サイドシールド、グラスランチャンネル、インストルメントパネル表皮、ドア表皮、天井表皮、ウェザーストリップ材、ホース、およびステアリングホイールのような自動車部品;電線被覆、コネクター、およびキャッププラグのような電気部品;靴底およびサンダルのような履物;水泳用フィン、水中眼鏡、ゴルフクラブグリップ、および野球バットグリップのようなレジャー用品;ガスケット、土木・建築用の各種ガスケットやシート、防水布、ガーデンホース、ベルト、および工業用パッキンのような工業用雑品、に用いられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0056】
実施例1
製造方法−4の工程(1)
(i)エチレン単位の含有量が66.0重量%、プロピレン単位の含有量が30.0重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量が4.0重量%であるエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2-ノルボルネン共重合体ゴム(成分(A)、これらモノマー単位の合計を100重量%とする)100重量部と、(ii)出光興産株式会社製の商品名がPW−380なる伸展油(成分(C))100重量部とからなる、住友化学株式会社製の商品名がエスプレン670Fでムーニー粘度(ML1+4100℃)が53なる油展ゴム200重量部と、住友化学株式会社製の商品名がノーブレンD101で230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが0.7g/10分、極限粘度が3.0dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(B))35.3重量部と、チバスペシャリティケミカルズ製の商品名がIrganox1010なるペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(酸化防止剤)0.24重量部と、住友化学株式会社製の商品名がスミソーブ300なる2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(耐光安定剤)0.47重量部と、チバスペシャリティケミカルズ製の商品名がTinuvin622なる1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとコハク酸ジメチルとの縮合物(耐光安定剤)0.47重量部と、精工化学株式会社製の商品名がハイクロスM−Pなるトリメチロールプロパントリメタクリレート(架橋助剤)0.71重量部とをバンバリーミキサーにより170〜200℃で10分間溶融混練して、混練物を製造した。該混練物をロールにて厚さ3mmのシートに加工し、次いで該シートをシートペレタイザーでペレットにした。
【0057】
該ペレットと、化薬アクゾ株式会社製の商品名がAPO−40Sなる2,5-ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(成分(D))1.88重量部とをタンブラーミキサーにより室温にて10分間均一混合して、混合物を製造した。該混合物を、2軸押出機を用いて200±10℃で押出し(動的熱処理)、中間生成物を製造した。
【0058】
製造方法−4の工程(2)
該中間生成物と、住友化学株式会社製の商品名がノーブレンEL80F1なる、(i)極限粘度7.9dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E1))10重量%と、(ii)極限粘度1.2dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E2))90重量%(成分(E1)と成分(E2)との合計を100重量%とする)とを含有するQ値(Mw/Mn)が3.8、極限粘度が=1.98dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E))12.5重量部とを、タンブラーミキサーにより室温にて10分間均一混合して、混合物を製造した。該混合物を、単軸押出機を用いて200±10℃で溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。
【0059】
製造方法−4の工程(3)
該熱可塑性エラストマー組成物と、三協化成株式会社製の商品名がセルマイクMB2012であって、そのカタログにはOBSH系発泡剤マスターバッチと記載された発泡剤(成分(F))4.40重量部とをタンブラーミキサーにより室温にて10分間均一混合して、混合物を製造した。該混合物を、30mm径の押出機(シリンダ温度200℃、スクリュ回転数50rpm、ダイス温度190℃)で溶融混練して、発泡された熱可塑性エラストマー組成物のシート(幅25mm、厚さ1mm)を押出成形した。該組成物1kgが押出された時点における、ダイスの出口周辺に付着した重合体の量は54mgであり、該シートは優れた外観(目視)を有していた。表1に、主たる原料成分の種類と使用量(重量部)および評価結果をまとめた。
【0060】
実施例2
成分(E)の量を23.5重量部に変更したこと、成分(F)の量を4.21重量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0061】
比較例1
成分(E)を、住友化学株式会社製の商品名がノーブレンD101なる極限粘度が3.0dl/gのプロピレンの単独重合体に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0062】
比較例2
成分(E)12.5重量部を、住友化学株式会社製の商品名がノーブレンD101なる極限粘度が3.0dl/gのプロピレンの単独重合体23.5重量部に変更したこと、成分(F)の量を4.21重量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
製造方法−3の工程(1)
実施例1の製造方法−4の工程(1)と同様に行い、中間生成物を製造した。
【0064】
製造方法−3の工程(2)
実施例1の製造方法−4の工程(2)と同様に行い、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。
【0065】
該熱可塑性エラストマー組成物を、25mm径の押出機(シリンダ温度210℃、スクリュ回転数50rpm、ダイス温度230℃)でストランドに押出した。ストランド1kgが押出された時点における、ダイスの出口周辺に付着した重合体の量は2.0mgであった。結果を表2に示す。
【0066】
比較例3
成分(E)を用いなかったこと以外は実施例3と同様に行った。結果を表2に示す。
【0067】
実施例4
製造方法−2の工程(1)
(i)エチレン単位の含有量が66.0重量%、プロピレン単位の含有量が30.0重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量が4.0重量%であるエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2-ノルボルネン共重合体ゴム(成分(A)、これらモノマー単位の合計を100重量%とする)100重量部と、(ii)出光興産株式会社製の商品名がPW−380なる伸展油(成分(C))100重量部とからなる、住友化学株式会社製の商品名がエスプレン670Fでムーニー粘度(ML1+4100℃)が53なる油展ゴム200重量部と、住友化学株式会社製の商品名がノーブレンEL80F1なる、(i)極限粘度7.9dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E1))10重量%と、(ii)極限粘度1.2dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E2))90重量%(成分(E1)と成分(E2)との合計を100重量%とする)とを含有するQ値(Mw/Mn)が3.8、極限粘度が=1.98dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E))35.3重量部と、チバスペシャリティケミカルズ製の商品名がIrganox1010なるペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(酸化防止剤)0.24重量部と、住友化学株式会社製の商品名がスミソーブ300なる2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(耐光安定剤)0.47重量部と、チバスペシャリティケミカルズ製の商品名がTinuvin622なる1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとコハク酸ジメチルとの縮合物(耐光安定剤)0.47重量部と、住友化学株式会社製の商品名がスミファインBM(SumifineBM)なるN,N’−m−フェニレンビスマレイミド(架橋助剤)0.94重量部とをバンバリーミキサーにより170〜200℃で10分間溶融混練して、混練物を製造した。該混練物をロールにて厚さ3mmのシートに加工し、次いで該シートをシートペレタイザーでペレットにした。
【0068】
該ペレットと、化薬アクゾ株式会社製の商品名がAPO−40Sなる2,5-ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(成分(D))0.47重量部とをタンブラーミキサーにより室温にて10分間均一混合して、混合物を製造した。該混合物を、2軸押出機を用いて200±10℃で押出し(動的熱処理)、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。
【0069】
製造方法−2の工程(2)
該熱可塑性エラストマー組成物と、三協化成株式会社製の商品名がセルマイクMB3062であって、そのカタログには無機系発泡剤マスターバッチと記載された発泡剤(成分(F))4.42重量部とをタンブラーミキサーにより室温にて10分間均一混合して、混合物を製造した。該混合物を、30mm径の押出機(シリンダ温度200℃、スクリュ回転数50rpm、ダイス温度190℃)で溶融混練して、発泡された熱可塑性エラストマー組成物のシート(幅25mm、厚さ1mm)を押出成形した。該組成物1kgが押出された時点における、ダイスの出口周辺に付着した重合体の量は75mgであり、該シートは優れた外観(目視)を有していた。表3に、主たる原料成分の種類と使用量(重量部)および評価結果をまとめた。
【0070】
比較例4
成分(E)を、住友化学株式会社製の商品名がノーブレンH501Nで230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが3.0g/10分、極限粘度が1.9dl/gのプロピレンの単独重合体に変更したこと以外は実施例4と同様に行った。結果を表3に示す。
【0071】
実施例5
製造方法−1の工程(1)
(i)エチレン単位の含有量が66.0重量%、プロピレン単位の含有量が30.0重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量が4.0重量%であるエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2-ノルボルネン共重合体ゴム(成分(A)、これらモノマー単位の合計を100重量%とする)100重量部と、(ii)出光興産株式会社製の商品名がPW−380なる伸展油(成分(C))100重量部とからなる、住友化学株式会社製の商品名がエスプレン670Fでムーニー粘度(ML1+4100℃)が53なる油展ゴム200重量部と、住友化学株式会社製の商品名がノーブレンEL80F1なる、(i)極限粘度7.9dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E1))10重量%と、(ii)極限粘度1.2dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E2))90重量%(成分(E1)と成分(E2)との合計を100重量%とする)とを含有するQ値(Mw/Mn)が3.8、極限粘度が=1.98dl/gのプロピレンの単独重合体(成分(E))50.0重量部と、チバスペシャリティケミカルズ製の商品名がIrganox1010なるペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(酸化防止剤)0.25重量部と、住友化学株式会社製の商品名がスミソーブ300なる2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(耐光安定剤)0.50重量部と、チバスペシャリティケミカルズ製の商品名がTinuvin622なる1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとコハク酸ジメチルとの縮合物(耐光安定剤)0.50重量部と、住友化学株式会社製の商品名がスミファインBMなるN,N’−m−フェニレンビスマレイミド(架橋助剤)1.0重量部とをバンバリーミキサーにより170〜200℃で10分間溶融混練して、混練物を製造した。該混練物をロールにて厚さ3mmのシートに加工し、次いで該シートをシートペレタイザーでペレットにした。
【0072】
該ペレットと、化薬アクゾ株式会社製の商品名がAPO−40Sなる2,5-ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(成分(D))0.50重量部とをタンブラーミキサーにより室温にて10分間均一混合して、混合物を製造した。該混合物を、2軸押出機を用いて200±10℃で押出し(動的熱処理)、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。
【0073】
該熱可塑性エラストマー組成物を、25mm径の押出機(シリンダ温度210℃、スクリュ回転数50rpm、ダイス温度230℃)でストランドに押出した。ストランド1kgが押出された時点における、ダイスの出口周辺に付着した重合体の量は1.0mgであった。結果を表4に示す。
【0074】
比較例5
成分(E)を、住友化学株式会社製の商品名がノーブレンD101なる極限粘度が3.0dl/gのプロピレンの単独重合体に変更したこと以外は実施例5と同様に行った。結果を表4に示す。


















【0075】
【表1】

【0076】
【表2】
















【0077】
【表3】


【0078】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、(D)架橋剤0.01〜20重量部と、以下の(E1)第1のプロピレン重合体成分0.05〜25重量%および(E2)第2のプロピレン重合体成分75〜99.95重量%を含有し(両者の合計を100重量%とする)、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の(E)ポリプロピレン樹脂5〜130重量部とを動的に加熱する工程からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法:
(E1)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度5〜10dl/gの第1のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする);
(E2)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度が0.5〜4dl/gの第2のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)。
【請求項2】
以下の工程からなる発泡された熱可塑性エラストマー組成物の製造方法:
(1)少なくとも、(A)少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、(D)架橋剤0.01〜20重量部と、以下の(E1)第1のプロピレン重合体成分0.05〜25重量%および(E2)第2のプロピレン重合体成分75〜99.95重量%を含有し(両者の合計を100重量%とする)、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の(E)ポリプロピレン樹脂5〜130重量部とを動的に加熱し、熱可塑性エラストマー組成物を製造する工程;
(E1)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度5〜10dl/gの第1のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(E2)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度が0.5〜4dl/gの第2のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(2)少なくとも、該熱可塑性エラストマー組成物と、成分(F)発泡剤0.5〜20重量部とを溶融混練する工程。
【請求項3】
以下の工程からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法:
(1)少なくとも、(A)少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(B)プロピレン単位を50〜100重量%含有する、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体5〜130重量部と(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、成分(D)架橋剤0.01〜20重量部とを動的に加熱して、中間生成物を製造する工程;
(2)少なくとも、該中間生成物と、以下の成分(E1)第1のプロピレン重合体成分0.05〜25重量%および成分(E2)第2のプロピレン重合体成分75〜99.95重量%を含有し(両者の合計を100重量%とする)、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の成分(E)ポリプロピレン樹脂1〜50重量部とを溶融混練する工程;
(E1)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度5〜10dl/gの第1のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(E2)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度が0.5〜4dl/gの第2のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)。
【請求項4】
以下の工程からなる発泡された熱可塑性エラストマー組成物の製造方法:
(1)少なくとも、(A)少なくともエチレン単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位とを含む、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム100重量部と、(B)プロピレン単位を50〜100重量%含有する、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体5〜130重量部と(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、(C)鉱物油軟化剤5〜150重量部と、(D)架橋剤0.01〜20重量部とを動的に加熱して、中間生成物を製造する工程;
(2)少なくとも、該中間生成物と、以下の(E1)第1のプロピレン重合体成分0.05〜25重量%および(E2)第2のプロピレン重合体成分75〜99.95重量%を含有し(両者の合計を100重量%とする)、極限粘度が0.5〜4dl/gであって分子量分布が1〜10の(E)ポリプロピレン樹脂1〜50重量部とを溶融混練して、熱可塑性エラストマー組成物を製造する工程;
(E1)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度5〜10dl/gの第1のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(E2)少なくともプロピレン単位50〜100重量%と、エチレン単位および/または炭素原子数4〜12のα−オレフィン単位0〜50重量%とを含む、極限粘度が0.5〜4dl/gの第2のプロピレン重合体成分(これらモノマー単位の合計を100重量%とする)、
(3)少なくとも、該熱可塑性エラストマー組成物と、(F)発泡剤0.5〜20重量部とを溶融混練する工程。
【請求項5】
成分(A)が、エチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体である請求項1〜4のうちの一の請求項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項6】
成分(C)がパラフィンオイルである請求項1〜4のうちの一の請求項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項7】
成分(D)が有機過酸化物である請求項1〜4のうちの一の請求項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項8】
成分(E)が、成分(E1)を製造する第一工程と、成分(E1)の存在下に成分(E2)を製造する第二工程を含む製造方法によって製造される請求項1〜4のうちの一の請求項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項9】
成分(E1)および成分(E2)が、プロピレンの単独重合体である請求項1〜4のうちの一の請求項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項10】
成分(B)が、プロピレンの単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体またはプロピレン−1−ブテン共重合体である請求項3または請求項4記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−291166(P2006−291166A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335360(P2005−335360)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】