説明

熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーのブレンドに基づく透明成形品の製造方法

【課題】散乱が全くないか非常に少ない透明物品を得ることを可能にする、注型の方法を提供する。
【解決手段】本発明は、透明成形品のマトリックスを形成する第1の熱硬化性ポリマー材料と、前記第1の材料中に分散された第2のポリマー材料とのブレンドを含む透明成形品の製造方法に関し、少なくとも以下の工程を含む。
i)前記第2のポリマー材料を、前記第1の熱硬化性ポリマー材料の前駆体である熱硬化性重合性組成物中に溶解させることによって、液体重合性混合物を調製する工程、
ii)工程i)で得られる液体重合性混合物を型に満たす工程、
iii)型中の液体重合性混合物を0℃以下の温度Tに冷却する工程、
iv)前記冷却した液体重合性混合物の重合を0℃以下の温度T'で開始させる工程、
v)前記液体重合性混合物の重合を、硬化したポリマーブレンドが得られるまで継続させる工程、および
vi)前記ポリマーブレンドから形成された成形品を型から取り出す工程。
本発明は、本方法によって得られる、少なくとも1種が熱硬化性ポリマーであるポリマーのブレンドを含む透明成形品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱が全くないかまたは非常に少なく、熱硬化性ポリマー材料と、熱硬化性ポリマー材料の機械的および/または光学的特性を改変するポリマー材料(特に熱可塑性ポリマー材料)とのブレンドから形成され、熱硬化性ポリマー材料が一般にブレンドの主要な相を構成している、透明な物品を得ることを可能にする注型(cast molding)の方法に関する。この方法は、特に光重合によって、熱硬化性組成物を重合および架橋する工程を含み、その条件はマクロ相分離を避けるように最適化されている。本発明は、より詳細には眼科用レンズの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
光学物品、例えば眼科用レンズの製造に一般に用いられる基材には2つのタイプ、すなわち無機ガラスの基材と有機ガラスの基材がある。現在の市場は、無機ガラスに勝る2つの主な利点、すなわち良好な耐衝撃性および軽量性を有する有機ガラスに圧倒的に有利に展開する傾向にある。最も用いられている有機ガラス基材は、ビスフェノールAポリカーボネート、およびジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の重合により得られ、PPG INDUSTRIES社からCR 39(登録商標)の商標名で販売されている基材である(ORMA(登録商標) ESSILORレンズ)。直鎖状または分岐状、脂肪族または芳香族ポリオールの他のアリルカーボネートを用いてもよい。チオ(メタ)アクリルモノマーの重合、チオウレタンモノマーの重合、メチルメタクリレートなどのC1〜C4アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、特に2,2-ビス-[4-(メタクリルオキシ-ジエトキシ)-フェニル]-プロパンなどのポリエトキシル化芳香族ポリ(メタ)アクリレートモノマーの重合によって得られる有機ガラスも挙げることができる。
【0003】
既知の有機基材は全般的に満足できるものであるが、新規な透明基材を得ることを可能にし、良好な耐衝撃性、耐溶剤性などの有用な特性を併せ持つ光学物品をもたらす他のタイプの重合性組成物を得ることが望まれている。ポリマーのブレンドに基づくある種の基材により、これらの目的の達成が可能になる。
【0004】
ポリマーブレンドは、この用語が本発明で用いられる意味において、異なる化学的性質の少なくとも2種類のポリマーの混合物を示す。ポリマーのブレンドには3つの大まかな区分がある。すなわち、(1)1つの熱硬化性ポリマーと別の熱硬化性ポリマーとのブレンド、(2)1つの熱可塑性ポリマーと別の熱可塑性ポリマーとのブレンド、および(3)熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーとのブレンドである。しかし、特に熱可塑性/熱硬化性タイプのブレンドの場合、透明でありかつ散乱が全くないかまたは非常に少ないポリマーのブレンドは、範囲が限定されている。
【特許文献1】米国特許第5,442,022号
【特許文献2】米国特許第5,445,828号
【特許文献3】米国特許第5,702,825号
【特許文献4】米国特許第5,741,831号
【特許文献5】仏国特許第2,699,541号
【特許文献6】国際公開第2005/073314号
【特許文献7】国際公開第2005/014699号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、第1の熱硬化性ポリマー材料と、好ましくは熱可塑性であり、得られる材料の曇りの原因であるマクロ相分離を避けながら熱硬化性ポリマー材料の機械的および/または光学的特性を改変する第2のポリマー材料と、を含むポリマーブレンドから成る物品を得ることを可能にする注型の方法を提供することであり、その結果、得られる成形品は透明であり、かつ散乱が全くないか非常に少ない。
【0006】
透明で散乱が全くないか非常に少ない物品または材料とは、本発明の意味の範囲内で、その物品を通した像を観察すると、コントラストがさほど損なわれていないことが観測されることを意味する。言い換えれば、像と像の観察者との間にこの透明物品を挿入しても、像の質は著しく低下しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって本発明の主題は、成形品のマトリックスを構成する第1の熱硬化性ポリマー材料と、前記第1の熱硬化性ポリマー材料中に分散している第2のポリマー材料(好ましくは熱可塑性ポリマー材料)とのブレンドを含む、透明な成形品の製造方法である。この方法は少なくとも以下の工程を含む。
i)前記第2のポリマー材料を、前記第1の熱硬化性ポリマー材料の前駆体である熱硬化性ポリマー組成物中に可溶化させることにより、液体重合性混合物を調製する工程、
ii)工程i)で得られた液体重合性混合物を型に満たす工程、
iii)型中の液体重合性混合物を0℃以下の温度Tに冷却する工程、
iv)0℃以下の温度T'で、前記冷却された液体重合性混合物の重合を開始させる工程、
v)前記液体重合性混合物の重合を、硬化したポリマーブレンドが得られるまで続ける工程、および
vi)前記ポリマーブレンドから形成された成型品を型からはずす工程。
【0008】
本発明の別の主題は、前記方法により得ることができる透明成形品であり、前記成形品はポリマーの少なくとも1種が熱硬化性ポリマーであるポリマーブレンドを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の方法で製造される透明成形品は、ポリマーのブレンドによって構成される。このポリマーブレンドは、最終物品のマトリックスを形成する第1の熱硬化性ポリマー材料と、前記第1の硬化したポリマー材料中に分散し、好ましくは熱可塑性であり、前記第1のポリマー材料の機械的および/または光学的特性を改変することができる第2のポリマー材料とを含む。
【0010】
第1の材料によって形成される熱硬化相は主要な相であることが好ましい。第1の熱硬化性ポリマー材料は、原則として1種以上の架橋ポリマーを含むが、好ましくは単一の架橋ポリマーを含有する。
【0011】
同様に、第2のポリマー材料は1種以上のポリマーを含むが、好ましくは単一の熱可塑性ポリマーを含む。
【0012】
本発明による透明成形品は、前記第2のポリマー材料が可溶化された熱硬化性重合性組成物(熱硬化性ポリマーの前駆体)を含む液体重合性混合物を重合することによって製造され、前記熱硬化性重合性組成物の硬化により第1の熱硬化材料が形成される。従って第2の材料は、液体重合性混合物の前記熱硬化性重合性組成物中に可溶でなければならない。
【0013】
本発明の方法は、型を満たす工程の最後において液体重合性混合物の温度を0℃以下の温度Tに設定すること、並びに、前記液体重合性混合物の重合の開始および場合によって継続を0℃以下の温度T'(ここで、T'はTと同一または異なっていてよい)にて行うことを特徴とする。この特殊な重合条件は、重合中の第1のポリマー材料と第1の材料中に分散された熱可塑性ポリマーとの間のマクロ相分離の現象を避けることを可能にする。重合性混合物を0℃以下の温度に冷却すると、その粘度が増大し、第2の材料から成る相が第1の材料を構成する成長中の熱硬化性のネットワークから排除されることが有効に回避される。このようにして、熱硬化材料の化学的にゲル状態が、著しいマクロ相分離が起こる前に達成される。
【0014】
組成物の冷却温度Tの値、および液体重合性混合物の重合を開始させる温度T'の値は、独立に、−15℃〜0℃であることが好ましく、−12℃〜−5℃であることがさらに望ましい。温度T'は開始および重合の間に変化してもよいが、指定の範囲内にとどまらなければならない。
【0015】
本出願で用いる「熱硬化性の」または「熱硬化の」という形容詞は、熱を加えることによって硬化可能であるもしくは硬化される系または組成物を意味していない。実際、前述の内容から、重合および架橋による硬化は、0℃以下の温度、すなわち組成物の冷却後に起こるということになる。本出願においてこの用語は、プラスチックの分野において一般的であるように、「熱可塑性の」という用語の反対語として用いられる。言い換えれば、熱硬化性ポリマーは、高温で液体にならない高度に架橋した3次元の高分子ネットワークから形成される、硬質材料である。
【0016】
熱硬化性重合性組成物は、液体重合性混合物の質量の70%〜97%を占めることが好ましい。この熱硬化性重合性組成物は、重合性モノマー、重合性オリゴマー、および重合性プレポリマーから選択される少なくとも1種の重合性材料を含む。
【0017】
本発明の熱硬化性重合性組成物は、重合性脂肪族ポリメタクリレートモノマー、重合性芳香族ポリメタクリレートモノマー、重合性脂肪族ポリアクリレートモノマー、および重合性芳香族ポリアクリレートモノマーから選択される、少なくとも1種のモノマーを含むのが好ましい。
【0018】
本発明で用いることができる脂肪族ポリ(メタ)アクリレートには、その構造中に少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む任意の脂肪族化合物、例えば脂肪族のジ、トリ、テトラ、ペンタ、またはヘキサ(メタ)アクリレート化合物が含まれる。本発明の脂肪族ポリ(メタ)アクリレートの脂肪族基は、限定はしないが、1つ以上の二重結合を含んでいてもよい直鎖状または分岐状のC1〜C10脂肪族基、C1〜C25ポリアルキレングリコール、アルコキシアルキレン、またはヒドロキシアルキレン基であってよい。一般に、本発明で用いることができる脂肪族ポリ(メタ)アクリレートは、二官能性または多官能性の脂肪族アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸との反応によって得られるあらゆる化合物であってよく、前記二官能性または多官能性の脂肪族アルコールはカルボン酸によって、またはエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドによって、所望により修飾されていることができる。脂肪族ポリ(メタ)アクリレートの非限定的な特定例は、エチレンジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、トリメチレンジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、デカメチレンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒドで修飾されたジメチロールプロパントリ(メタアクリレート)、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸で修飾されたジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリトリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリトリトール
オクタ(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物である。
【0019】
本発明で用いることができる芳香族ポリ(メタ)アクリレートとしては、その構造中に少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含むあらゆる芳香族化合物、例えば、芳香族のジ、トリ、テトラ、ペンタ、またはヘキサ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。芳香族ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは、芳香族ジ(メタ)アクリレートから選択され、さらに望ましくは、ポリアルコキシル化芳香族ジメタクリレートおよびポリアルコキシル化芳香族ジアクリレートから選択される。
【0020】
好ましい部類のポリアルコキシル化芳香族ジ(メタ)アクリレートは、式(I)の化合物を含む。
【0021】
【化1】

【0022】
式中、R1は、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表し、R2は、水素原子、C1〜C6アルキル基、または2-ヒドロキシエチル基を表し、n1は0または1であり、m+nの和は1〜10の範囲の整数である。
【0023】
n1が1であるとき、Zは、O、S、Se、NH、C=O、SO、SO2、SeO2、CH2、-CH=CH-、または-C(R)2-を表し、Rは、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表す。本発明によると、R1およびR2は、それぞれ互いに独立に、好ましくはメチル基、エチル基、または水素原子を表す。さらにとりわけ好ましい式(I)の化合物は式(II)で表される。
【0024】
【化2】

【0025】
式中、R1およびR2は、互いに独立に、水素原子またはCH3基を表し、Rは、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表し、m+nの和は2〜8の範囲の整数である。
【0026】
好ましい式(II)の芳香族ポリ(メタ)アクリル化合物は、ビスフェノールAおよびFのポリアルコキシル化ジ(メタ)アクリレート、すなわち、RがHまたはCH3を表す化合物である。これらの中で、これらに限られないが、2,2-ビス[4-(アクリルオキシ-エトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタクリルオキシ-エトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリルオキシ-ジエトキシ)-フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタクリルオキシ-ジエトキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(アクリルオキシ-エトキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(メタクリルオキシ-エトキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(アクリルオキシ-ジエトキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(メタクリルオキシ-ジエトキシ)フェニル]メタンを挙げることができる。
【0027】
好ましい芳香族ポリ(メタ)アクリレートは、テトラエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、すなわち2,2-ビス [4-(メタクリルオキシ-ジエトキシ)フェニル]プロパンである。この化合物は、Akzo-Nobel社によりD121の名称で市販されていて、式(III) で表される(すなわち、R1が-CH3基を表し、R2がHを表し、RがCH3を表し、mおよびnが2に等しい式(II)の化合物である)。
【0028】
【化3】

【0029】
本発明の重合性混合物の重合は、ラジカル型、アニオン型、またはカチオン型であってよく、あるいは、当業者に周知の技術であるシクロオレフィンの存在下での開環によるメタセシスによって行ってもよい。本発明の重合性混合物がエチレン基を有する重合性モノマーを含有する場合、重合の開始および重合は一般に放射線照射下で行う。これは(場合により重合開始剤の存在下での)光重合であってもよく、または電子のビームによる照射(電子ビーム照射)であってもよく、これらは電子ビームのエネルギーが重合に必要なフリーラジカルを生成するのに十分であるので、重合開始剤の存在を必要としない重合のタイプである。本発明の重合性混合物は、これらの方法の組み合わせを用いて重合することもできる。本発明の熱硬化性重合性組成物は、少なくとも1種の重合開始剤、好ましくは少なくとも1種の光開始剤を含むことが好ましい。本発明の重合性混合物は比較的低温で重合するので、重合開始剤を用いるかまたは用いない光重合の方法を用いる方が、他の方法を用いるよりも好ましい。
【0030】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の熱硬化性重合性組成物は、光重合により重合され、少なくとも1種の光開始剤を含み、後者は好ましくは熱硬化性重合性組成物の質量の0.1%〜10%を占める。
【0031】
本発明の目的のために熱硬化性重合性組成物中で用いることができる光開始剤としては、これらに限定されないが、芳香族α-ヒドロキシ-ケトン、α-アミノ-ケトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、モノアシルホスフィンオキシド(MAPO)、ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)、第3級アミン/ジケトン混合物、アルキルベンゾイルエーテル、ベンゾインエーテル、フェニルグリオキシレート、チオキサントン、並びに、カチオン性光開始剤(例えば、トリアリールスルホニウム塩およびアリールヨードニウム塩など)を挙げることができる。
【0032】
特に、Ciba Specialty Chemicals社によりIRGACURE(登録商標)の一般名称で市販されている光開始剤、特に光開始剤IRGACURE(登録商標)184(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)、光開始剤IRGACURE(登録商標)500(1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトンおよびベンゾフェノンの質量で50/50の混合物)、光開始剤IRGACURE(登録商標)651(2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン)、光開始剤IRGACURE(登録商標)819〔ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド〕、光開始剤IRGACURE(登録商標)907〔2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン〕、光開始剤IRGACURE(登録商標)1700 〔ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシドおよびDAROCUR(登録商標)1173の質量で25/75の混合物〕、Ciba Specialty Chemicals社によりDAROCUR(登録商標)の一般名称で市販されている光開始剤、特に、光開始剤DAROCUR(登録商標)1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン)、光開始剤DAROCUR(登録商標)TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド)、光開始剤DAROCUR(登録商標)4265〔DAROCUR(登録商標)1173およびDAROCUR(登録商標)TPOの質量で50/50の混合物〕、Ciba Specialty Chemicals社によりCGI 1850の名称で市販されている光開始剤、BASF社によりLucirin(登録商標)の一般名称で市販されている光開始剤〔IRGACURE(登録商標)184およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシドの質量で50/50の混合物〕、特に光開始剤Lucirin(登録商標)TOP-L (2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル-エチルホスフィネート)、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-アセトフェノン(DEAP、Upjohnより市販されている)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ケトン、2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンを挙げることができる。
【0033】
好ましい光開始剤は、式(IV)のCGI 1850である。
【0034】
【化4】

【0035】
一般に、重合開始剤の質量は、本発明の熱硬化性重合性組成物の質量の0.1〜10%を占める。重合反応は、適切な手段、すなわち可視光、UV放射線照射、または他の任意の手段を用いて開始され、その選択は使用する光開始剤の種類によって異なる。
【0036】
重合開始剤は、単独で、または硬度改変剤(例えば、光増感剤、促進剤(触媒)、または重合阻害剤)と従来の比率で混合して用いることができる。ある種の光開始剤は光増感特性も有し得る。
【0037】
本発明で使用することができる光増感剤および促進剤の非限定的な例は、ITX (2-または4-イソプロピル-チオキサントン)などのチオキサントン類またはCPTX (1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン)などのクロロチオキサントン類、カンファーキノンなどのキノン類、ベンズアントロン類、ミヒラーケトン(4,4'-ビス(ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン)、フルオレノン、トリフェニルアセトフェノン、ジメチル-エタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DMPT (N,N-ジメチル-p-トルイジン)、MHPT (N-[2-ヒドロキシエチル]-N-メチル-p-トルイジン)、ODAB (p-N,N-ジメチルアミノオクチルベンゾエート)、EDAB(Aceto CorporationによりQuantacure(登録商標)EPDの名称で市販されているp-N,N-ジメチルアミノ-エチルベンゾエート)、EDMA (2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン)、またはこれらの混合物である。特に、カンファーキノン/EDABの混合物を用いることができる。
【0038】
本発明で用いることができる重合阻害剤(フリーラジカルの阻害剤)の非限定的な例は、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩、トリス[N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン]のアルミニウム塩、4-メトキシフェノール(MEHQ)、ヒドロキノンおよび置換ヒドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、4-エチル-カテコール、立体障害アミンおよびこれらの混合物である。
【0039】
本発明の熱硬化性重合性組成物は、光学物品用(特に眼科用レンズ)の重合性組成物中において従来用いられているいくつかの他の添加物を、従来の比率で含むこともできる。添加物の例は、これらに限定されないが、着色剤、安定剤(例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、および黄変防止剤など)、香料、防臭剤、離型剤、潤滑剤、接着促進剤、およびカップリング剤である。
【0040】
本発明の目的のために熱硬化性重合性組成物中に用いることができる紫外線吸収剤(紫外線をフィルターにかける系)として、これらに限定されないが、4-アミノ安息香酸(PABA)およびその塩、アントラニル酸およびその塩、サリチル酸およびその塩またはそのエステル(特に、アリールヒドロキシベンゾエート)、4-ヒドロキシ桂皮酸およびその塩、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、およびベンゾチアゾールのスルホン誘導体並びにそれらの塩、ベンゾフェノン(特に、ベンゾフェノンおよび2-ヒドロキシベンゾフェノンのスルホン誘導体)およびそれらの塩、ベンジリデンカンファーのスルホン誘導体およびそれらの塩、第4級アンモニウム基で置換されたベンジリデンカンファーの誘導体およびそれらの塩、カンファースルホン酸のフタリリデン誘導体およびそれらの塩、ベンゾトリアゾール(特に、ベンゾトリアゾールのスルホン誘導体およびそれらの塩)、オキサルアミド、オキサニリド、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
本発明で用いることができるUV吸収剤の非限定的な例は、2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、PBSA(Givaudan-Roure社によりPARSOL(登録商標)HSの名称で市販されている2-フェニル-ベンゾイミダゾール-5-スルホン酸のナトリウム塩)、4-tert-ブチル-4'-メトキシ-ジベンゾイルメタン(Givaudan-Roure社によりPARSOL(登録商標)1789の名称で市販されているもの)、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメートすなわちアボベンゾン(Givaudan-Roure社によりPARSOL(登録商標)MCXの名称で市販されているもの)、オクチルp-メトキシシンナメート、UVINUL(登録商標)MS 40 (2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、BASF)、UVINUL(登録商標)M 40 (2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、BASF)、オクトクリレン(2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート)、2-エチルヘキシル4-ジメチルアミノベンゾエート(オクチルジメチル-PABA)、トリエタノールアミンサリチレート、オクチルサリチレートである。UV光保護特性を有するポリマー、特に、スルホ基または第4級アンモニウム基で置換されたベンジリデンカンファーおよび/またはベンゾトリアゾール基を含むポリマーを使用することもできる。これらは単独で、または他のUV吸収剤と混合して用いることができる。
【0042】
米国特許第5,442,022号、米国特許第5,445,828号、米国特許第5,702,825号、米国特許第5,741,831号、および仏国特許第2,699,541号に記載されるものなどの黄変防止剤を、これらに限定されないが、単独または混合で用いることができる。好ましい黄変防止剤は、3-メチル-ブト-2-エン-1-オール(M-BOL)である。一般に、黄変防止剤の質量は、本発明の熱硬化性重合性組成物の質量の0.5〜4%を占める。
【0043】
本発明の目的のために熱硬化性重合性組成物中に用いることができる酸化防止剤として、これらに限定されないが、立体障害フェノール系酸化防止剤、Ciba Specialty Chemicals社により市販されているIRGANOX(登録商標)245 DW(エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)を挙げることができる。
【0044】
本発明で第1の材料の機械的および/または光学的特性を改変するために用いる第2の材料は、少なくとも1種のポリマーを含み、好ましくは本発明の重合性混合物の質量の3%〜30%を占める。この第2の材料は、上述により定義した熱硬化性重合性組成物中に可溶であり、好ましくは熱可塑性材料である。
【0045】
本発明の方法の好ましい第1の実施形態によると、第2のポリマー材料は、配列ポリマーとも呼ばれる少なくとも1種のブロックコポリマーを含む。
【0046】
本発明に適したブロックコポリマー、特にジブロックおよびトリブロックコポリマーは、当業者によく知られている。好ましくは、本発明の第2の材料は、少なくとも1つのポリスチレンブロックと、少なくとも1つのポリブタジエンブロックと、少なくとも1つのポリ(メチルメタクリレート)ブロックまたはポリ(メチルアクリレート)ブロックとを含む、少なくとも1種のトリブロックコポリマーを含む。特に好ましいトリブロックポリマーは、以下の記載においてSBMコポリマーと呼ぶ、ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PB-b-PMMA)トリブロックコポリマーである。
【0047】
本発明の枠組み内で用いることができるブロックコポリマーは、特に、国際公開第2005/073314号および国際公開第2005/014699号に記載されている。これらのブロックコポリマーのPS、PB、およびPMMA部分の詳細な記載に関しては、これらの文書を特に参照されたい。
【0048】
最後に、本発明の方法によるポリマーブレンドを含む透明成形品の製造においては、ブロックポリマーのポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ブロックがブロックコポリマーの比較的大きな部分を占めることが重要である。本発明の有利な変法によると、PMMAブロックは、好ましくはポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)ブロックコポリマーの重量平均モル質量の50重量%〜80重量%、より好ましくは52重量%〜70重量%を占める。
【0049】
したがって、15000〜200000 g/molの重量平均モル質量を有するSBMトリブロックコポリマーについては、ポリ(メチルメタクリレート)ブロックの重量平均モル質量は好ましくは10,000〜100,000 g/molである。
【0050】
本発明の枠組みの範囲内で、使用するブロックコポリマーは、トリブロックコポリマーとポリスチレン-block-ポリブタジエン型のジブロックコポリマーとの混合物とすることができることが理解される。これらのコポリマーは、特に国際公開第2005/073314号に記載されている。
【0051】
好ましい第2の実施形態によると、第2の材料は、少なくとも1種のポリスルホン(PSU)を含む。本発明で用いることができるポリスルホンは、その主鎖にスルホン基を含む任意のポリマー〔例えば、ポリ(アリーレンスルホン)など〕、例えば、ポリ(フェニレンスルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、またはポリ(エーテルアリールスルホン)であってよい。これらのポリスルホンは、当然、本発明の熱硬化性重合性組成物に可溶でなければならない。本発明のポリスルホンは、典型的には、20000〜60000 g/mol、好ましくは30000〜40000 g/molの範囲の重量平均モル質量を有する。好ましくは、ポリスルホンは、ポリ(エーテルスルホン)またはポリ(エーテルアリールスルホン)である。ポリスルホンのこれらの2つの部類の基本単位は、一般式(VI)で表される。
【0052】
【化5】

【0053】
式中、n1は0または1であり、n2は0〜10の範囲の整数を示し、Zは、O、S、Se、NH、C=O、SO、SO2、SeO2、CH2、-CH=CH-、または-C(R)2-を示し、Rは、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表す。n2が0であるとき、式(VI)の化合物はポリ(エーテルスルホン)である。n2が0でないとき、式(VI)の化合物はポリ(エーテルアリールスルホン)である。好ましい部類のポリスルホンは、式(VII)の繰り返し単位を有するポリ(エーテルアリールスルホン)を含む。
【0054】
【化6】

【0055】
式中、n1は0または1であり、Rは、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表す。式(VII)の化合物として、4,4'-ジヒドロキシビフェニルポリスルホン(n1=0)、ビスフェノールAポリスルホン(n1=1、R=CH3)、およびビスフェノールFポリスルホン(n1=1、R=H)を挙げることができる。本発明において好ましいポリスルホンは、ビスフェノールAポリスルホンであり、その基本単位は式(VIII)で表され、特に、Aldrich社により42,830-2の参照番号で市販されている。
【0056】
【化7】

【0057】
先に指摘したように、第2のポリマー材料は、好ましくは熱可塑性ポリマー材料である。いかなる熱可塑性ポリマーも、使用する熱硬化性重合性組成物に最初に可溶である限りにおいて、本発明の方法において用いることができる。先に定義したポリスルホンおよびブロックコポリマーに加えて、第2の材料は、非限定的に、以下の熱可塑性(コ)ポリマーから選択することができる:ポリ(メタ)メチルアクリレートなどの脂肪族ポリ(メタ)アクリレート類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(アリーレンオキシド)、ポリイミド類、ポリエステル類、ビスフェノールAポリカーボネートなどのポリカーボネート類、ポリ(塩化ビニル)、ナイロンなどのポリアミド類、熱可塑性ポリウレタン、およびこれらの混合物である。先に定義した脂肪族または芳香族ポリ(メタ)アクリレートに加えて、本発明の熱硬化性重合性組成物は、ポリイミドの前駆体、ポリシクロペンタジエンの前駆体、エポキシ樹脂の前駆体、ビス(アリルカーボネート)などのポリカーボネート、およびこれらの混合物を含むことができる。
【0058】
最近の特に好ましい組み合わせでは、第2のポリマー材料としてのポリメチル(メタ)アクリレートと、脂肪族または芳香族ポリ(メタ)アクリレートを含む熱硬化性重合性組成物とを用いる。
【0059】
本発明の方法は、少なくとも6つの工程を含む。第1の工程は、第2のポリマー材料を熱硬化性重合性組成物に可溶化することにより、重合性混合物を準備することから成る。第2のポリマー材料は、好ましくは粉末状または顆粒状で用いる。これを、一般に、徐々に、撹拌しながら熱硬化性重合性組成物に添加する。得られる分散物が周囲温度で均一でない場合には、第2の材料が完全に溶解するまで、分散物をサーモスタット制御の油浴中で撹拌しながら加熱することができる。本発明において周囲温度は、15〜25℃の温度を意味する。この溶解の工程は、およそ80℃の温度で数週間かかることがある。一般に透明で粘性である、得られた重合性混合物を、(場合により熱いうちに)ろ過し、次いで(場合により熱いうちに)撹拌しながら脱気してもよく、その後これを第2の注型工程で用いる。第2の工程は、このようにして得られた重合性混合物を型に満たすことから成る。場合により、前記重合性混合物を型と同様に予熱してもよい。一般に、およそ90℃の温度が十分に好適である。液体重合性混合物を、例えば、外周を粘着テープで貼り合わせた無機ガラスでできた2つの型部品から構成される組立体に注入することができる。第3の工程は、型を満たしている重合性混合物を、例えばそれを冷凍庫内に置くことにより、その粘度を増大させるように、0℃以下の温度Tに冷却することから成る。この温度Tでは、重合性混合物は液体である。組立体は、例えば重合性混合物の温度が重合前に均一であることを確実にするために、冷凍庫内に一晩放置してもよい。しかし、冷凍庫の温度が0℃以下の前記温度Tと同じである必要はない。第4の工程は、好ましくは光開始反応により、前記重合性混合物の重合をそれが0℃以下の温度T'において開始させることから成る。第5の工程は、前記重合性混合物の重合を、好ましくは光重合により、硬化したポリマーのブレンドが得られるまで継続させることから成る。この工程は、例えば、型を冷凍庫から取り出し、型に入った重合性混合物が0℃以下の温度T'である間に、紫外線ランプ下に置くことにより行うことができる。最後に、前記ブレンドを含む成型品を型から取り外し、回収する。
【0060】
本発明の方法に従って得られる透明成形品は、好ましくは、光学物品、すなわち有機ガラスである。これらを、一般に、しかし限定しないが、光学物品として、好ましくは眼科用レンズとして使用することを意図している。これらは、2つの材料各々の有利な特性、特に第1の熱硬化性材料の耐溶剤性と、第2のポリマー材料が熱可塑性材料である場合にはそれがもたらす良好な衝撃強度とを兼ね備える利点を提供しうる。
【0061】
基材が有機ガラスである前記光学物品(例えば眼科用レンズ)の他の特性、例えば耐摩耗性および耐引っかき性、反射防止特性および防汚性などを改善するために、その主要表面の少なくとも一方の上に、1層以上の機能性コーティングを形成させることができる。無機レンズより硬度が低い有機レンズの主な欠点は、引っかきに対する耐性の低さである。したがって、基材の主要表面上に、物品の衝撃強度を高め、基材へのその後のコーティングの接着性をも高めることを目的とする、第一耐衝撃コーティングと呼ばれる第1コーティングを形成させ、次いで、この第一耐衝撃コーティング上に、光学物品表面の機械的応力による損傷に耐える能力を向上させることを目的とする、一般に摩耗防止コーティングまたは耐引っかき性コーティングと呼ばれるハードコーティングを連続して形成させることがもっぱら標準的である。この摩耗防止コーティングを、反射防止コーティングで被覆させ、次いで、反射防止コーティングを、防汚コーティングで被覆する。防汚コーティングの役割は、反射防止層と水または油脂との間の界面張力を(それらの付着を低下させるために)改変することであるが、油脂の浸透および残存を防ぐようにすき間をふさぐことでもある。
【0062】
以下の実施例は、本発明による方法、重合性混合物、および光学物品を、限定的ではなく例示する。
【実施例】
【0063】
以下に示す2つの実施例において、熱硬化性重合性組成物は、「配合物A」と指定する光重合性のアクリル系配合物であり、98質量%の式(III)のジメタクリレート:
【0064】
【化8】

【0065】
と、1.8質量%の3-メチル-ブト-2-エン-1-オール(M-BOL、黄変防止剤)と、0.2質量%のCGI 1850(式(IV)の光開始剤)とを含む(百分率は、熱硬化性重合性組成物の総質量を基準として表す)。
【0066】
[実施例1]:約10質量%の熱可塑性相を含有する、配合物A / SBMブロックコポリマー型の非常に低散乱のポリマーブレンドの調製
この実施例で用いる「第2のポリマー材料」は、SBM型の熱可塑性ブロックコポリマーである。従ってこの実施例で用いるブロックコポリマーは、質量で50%を超えるPMMAブロックの部分を有する、重量平均モル質量が41900g/molのPS-b-PB-b-PMMAである。
【0067】
[手順]
[工程1]:重合性混合物の調製
− ガラス瓶中に、549.37gの配合物Aを秤り入れる。
− 61.55gの上述した粉末状SBMコポリマーを、撹拌しながら、撹拌した状態の配合物Aにゆっくりと添加し、周囲温度にて撹拌しながら分散させる。
− サーモスタット制御の油浴(80℃)を用いて加熱することにより、7日間撹拌しながら、SBMコポリマーを配合物Aに溶解させる。
得られる重合性混合物は、透明で粘稠である(粘度は周囲温度にて約10 Pa・s)。
【0068】
[工程2]:厚さ2 mmの2平面レンズの製造
− 重合性混合物を90℃に加熱し、次いで20ミクロンでろ過する。
− ろ過した重合性混合物を90℃で2時間、撹拌しながら脱気する。
− 約30 mLの重合性混合物を、90℃に予熱しておいたシリンジに取り出す。
− 約30 mLの重合性混合物を、90℃に予熱され、外周を粘着テープで貼り合わせた無機ガラスの2つの型部品から構成される組立体に注入する。
− 組立体を冷凍庫内に置く。組立体を冷凍庫内で-10℃にて一晩放置する(温度は重合性混合物に浸した熱電対により測定する)。
− 冷凍庫から取り出す。
− 紫外線下(ISTオーブン、Feドープランプ、36 mJ/cm2)で4分間重合させる。重合開始時における重合性混合物の温度は0℃である。
− ガラスを組立体から取り出す。
【0069】
[比較実施例C1]
組立体を注型工程後に冷凍庫内に入れず、27℃で開始させて直接紫外線下で重合させる(温度は重合性混合物に浸した熱電対により測定する)以外は、実施例1と同様である。
【0070】
[比較実施例C2]
組立体を注型工程後に冷凍庫内に入れず、50℃で開始させて直接紫外線下で重合させる(温度は重合性混合物に浸した熱電対により測定する)以外は、実施例1と同様である。
【0071】
これらの実施例は、ポリマーブレンドのナノ構造に対する、重合開始時に測定される重合性混合物の温度の影響を例証する。ポリ(メチルメタクリレート)ブロックにより形成される相の偏析は、実施例1(T=0℃)において回避される。実施例1では、ナノ構造を維持し、肉眼で透明で散乱の全くない(または非常に少ない)材料を得ることができる。実施例C1(27℃)およびC2(50℃)の材料は、実施例1のものより散乱が多い。特に、実施例C2の試料は非常に散乱が多い。従って、ブレンドの透明性は、重合性混合物の粘性を増大させることにより最適化することができる。
【0072】
[実施例2]
約5質量%の熱可塑性相を含有する、配合物A/ポリスルホン型の非常に低散乱のブレンドの調製
この実施例で用いる「第2の材料」は、基本単位が下記の式(VIII)で表される、熱可塑性ポリスルホンである。このポリスルホンは、Aldrich社により42,830-2の参照番号で市販されている(モル質量:35000 g/mol)。この熱可塑性ポリマーの利点は、その高い屈折率(n=1.63〜1.67)、ならびに良好な衝撃強度および耐熱性である。
【0073】
【化9】

【0074】
[手順]
[工程1]:重合性混合物の調製
− 357.03 gの配合物Aを、ガラス瓶中に秤り入れる。
− 20gの上述したポリスルホンの顆粒を、配合物Aに添加し、この顆粒を周囲温度にて分散させる。
− 溶解工程:サーモスタット制御の油浴(80℃)中、撹拌しながら、ポリスルホンを3週間可溶化させる。
得られる重合性混合物は、透明で粘稠である(粘度は周囲温度にて明らかに4 Pa・sを超える)。
【0075】
[工程2]:厚さ2 mmの2平面レンズの製造
− 重合性混合物を90℃に加熱し、次いで20ミクロンでろ過する。
− ろ過した重合性混合物を90℃で2時間、撹拌しながら脱気する。
− 約30 mLの重合性混合物を、90℃に予熱したシリンジに取り出す。
− 約30 mLの重合性混合物を、90℃に予熱され、外周を粘着テープで貼り合わせた無機ガラスの2つの型部品から構成される組立体に注入する。
− 組立体を冷凍庫内に置く。この組立体を冷凍庫内で-10℃にて一晩放置する(温度は重合性混合物に浸した熱電対により測定する)。
− 冷凍庫から取り出し、紫外線下(ISTオーブン、Feドープランプ、36 mW/cm2)で10分間重合させる。重合開始時における重合性混合物の温度は-10℃である。
− ガラスを組立体から取り出す。
【0076】
[比較実施例C3]
組立体を注型工程後に冷凍庫内に入れず、50℃で開始させて直接紫外線下で重合させる(温度は重合性混合物に浸した熱電対により測定する)以外は、実施例2と同様である。
【0077】
これらの実施例は、ブレンドの最終的な構造に対する、重合開始時に測定される重合性混合物の温度の影響を例証する。熱硬化性相の重合中に熱可塑性ポリスルホンにより形成される相の偏析は、ナノ構造化を可能にし、肉眼で透明で散乱が全くない(または非常に少ない)材料の製造を可能にする実施例2(T=-10℃)において回避される。
【0078】
しかし、最初に配合物Aに可溶化された熱可塑性物質は、重合開始時の温度が50℃である場合、熱硬化相中に均一に分散した状態に保たれない。実施例C3(50℃)のブレンドは、散乱性を示し、熱可塑性物質が重合中に熱硬化ネットワークから排除されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明成形品のマトリックスを形成する第1の熱硬化性ポリマー材料と、前記第1の材料中に分散された第2のポリマー材料とのブレンドを含む透明成形品の製造方法であって、少なくとも以下の工程、
i)前記第2のポリマー材料を、前記第1の熱硬化性ポリマー材料の前駆体である熱硬化性重合性組成物中に溶解させることによって、液体重合性混合物を調製する工程と、
ii)工程i)で得られる液体重合性混合物を型に満たす工程と、
iii)前記型中の液体重合性混合物を0℃以下の温度Tに冷却する工程と、
iv)冷却した液体重合性混合物の重合を0℃以下の温度T'で開始させる工程と、
v)液体重合性混合物の重合を、硬化したポリマーブレンドが得られるまで継続させる工程と、
vi)前記ポリマーブレンドから形成された成形品を型から取り出す工程と
を含む方法。
【請求項2】
温度TおよびT'が独立に−15℃〜0℃であることを特徴とする、請求項1に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性重合性組成物が、前記重合性混合物の質量の70〜97%を占めること、および、前記第2のポリマー材料が、前記液体重合性混合物の3〜30重量%を占めることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項4】
前記熱硬化性重合性組成物が、重合性モノマー、重合性オリゴマー、および重合性プレポリマーから選択される少なくとも1種の材料を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性重合性組成物が、重合性脂肪族ポリメタクリレートモノマー、重合性芳香族ポリメタクリレートモノマー、重合性脂肪族ポリアクリレートモノマー、および重合性芳香族ポリアクリレートモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーを含むことを特徴とする、請求項4に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項6】
前記モノマーが、ポリアルコキシル化芳香族ジメタクリレートおよびポリアルコキシル化芳香族ジアクリレートから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化性重合性組成物が、式(I):
【化1】

(式中、
R1は、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表し、
R2は、水素原子、またはC1〜C6アルキル基、および2-ヒドロキシエチルから選択される基を表し、
n1は0または1であり、
Zは、O、S、Se、NH、C=O、SO、SO2、SeO2、CH2、-CH=CH-、および-C(R)2-から選択される基を表し、Rは水素原子またはC1〜C6アルキル基を表し、
m+nの和は1〜10の整数を表す)
のモノマーを少なくとも1種含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項8】
前記熱硬化性重合性組成物が、式(II):
【化2】

(式中、R1およびR2は、それぞれ互いに独立に、水素原子またはCH3基を表し、Rは、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表し、m+nの和は、2〜8の整数を表す)
のモノマーを少なくとも1種含むことを特徴とする、請求項7に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項9】
前記モノマーが、式(III):
【化3】

で表されることを特徴とする、請求項8に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項10】
前記熱硬化性重合性組成物が、少なくとも1種の重合開始剤、好ましくは少なくとも1種の光開始剤をさらに含み、前記重合開始剤の質量が、前記熱硬化性重合性組成物の質量の0.1〜10%を占めることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項11】
前記第2のポリマー材料が熱可塑性ポリマー材料であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項12】
前記第2のポリマー材料が、式(VI):
【化4】

(式中、n1は0または1であり、n2は0〜10の整数を表し、Zは、O、S、Se、NH、C=O、SO、SO2、SeO2、CH2、-CH=CH-、および-C(R)2-から選択される基を表し、Rは、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表す)
の繰り返し単位を有する少なくとも1種のポリスルホンを含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項13】
前記ポリスルホンが、式(VII):
【化5】

(式中、n1が0または1であり、Rが水素原子またはC1〜C6アルキル基を表す)
の繰り返し単位を有するポリスルホン、好ましくは式(VIII):
【化6】

の繰り返し単位を有するポリスルホンであることを特徴する、請求項12に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項14】
前記ポリスルホンが、20000〜60000 g/mol、好ましくは30000〜40000 g/molの重量平均モル質量を有することを特徴とする、請求項12または13に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項15】
前記第2のポリマー材料が、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびこれらの混合物、好ましくはトリブロックコポリマーから選択される少なくとも1種のブロックコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項16】
前記第2のポリマー材料が、前記熱硬化性重合性組成物と相溶性であり、かつブロックコポリマーが前記熱硬化性重合性組成物中に分散することを可能にするブロックを少なくとも1つ有するブロックコポリマーを、少なくとも1種含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項17】
前記ブロックコポリマーが、少なくとも1つのポリ(アルキルメタクリレート)ブロックまたは少なくとも1つのポリ(アルキルアクリレート)ブロックを含むことを特徴とする、請求項15または16に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項18】
前記ブロックコポリマーが、少なくとも1つのポリスチレンブロックおよび少なくとも1つのポリブタジエンブロックをさらに有することを特徴とする、請求項17に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項19】
前記ブロックコポリマーが、ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PB-b-PMMA)ブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項15から18のいずれか一項に記載の透明成型品の製造方法。
【請求項20】
前記PMMAブロックが、前記ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリ(メチルメタクリレート)ブロックコポリマーの重量平均モル質量の50重量%〜80重量%、好ましくは52重量%〜70重量%を占めることを特徴とする、請求項19に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項21】
前記ポリ(メチルメタクリレート)ブロックの重量平均モル質量が、10000〜100000 g/molであることを特徴とする、請求項15から20のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項22】
前記重合性混合物を光重合により重合することを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項23】
前記透明成形品が、光学物品、好ましくは眼科用レンズであることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の透明成形品の製造方法。
【請求項24】
ポリマーの少なくとも1種が熱硬化性ポリマーであるポリマーブレンドを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法により得られる透明成形品。

【公開番号】特開2009−57560(P2009−57560A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−220189(P2008−220189)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506062207)エシロール・ランテルナシオナル(カンパニー・ジェネラル・ドプティク) (8)
【Fターム(参考)】