説明

熱可塑性樹脂用帯電防止剤およびその利用

【課題】帯電防止剤を樹脂に混練する際や、帯電防止剤を練り込んだ樹脂組成物を加工する際に高温加熱しても油煙およびそれに伴う問題の発生が少なく、優れた帯電防止性を発現する帯電防止剤、それを用いた熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物(A)と脂肪酸金属塩(B)とを含み、両者の重量配合割合(A)/(B)が99.95/0.05〜35/65の範囲にある。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と上記帯電防止剤とを含む混合物であって、前記帯電防止剤の含有率が0.01〜30重量%である。熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂と上記帯電防止剤とを混合する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂用帯電防止剤およびその利用に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、低発煙性の熱可塑性樹脂用帯電防止剤、それを用いた熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は加工性が良いことから成形品、フィルム、シート等に幅広く使用されている。ポリオレフィン等これらの樹脂類は、一般に絶縁性が高く、この優れた性質を利用して種々の用途に利用されるが、その反面、摩擦等によって静電気が発生しやすく、発生した静電気は蓄積(帯電)し、人体へのショック、空気中の埃等を集めることによる成形品の汚れ、電気機器への電気障害等、種々のトラブルの原因となる。従来、これらのトラブルを防ぐために、樹脂中に帯電防止剤(各種界面活性剤)を練り込み、静電気によるトラブルを防ぐことが行われてきた。この場合、いわゆる練り込み型帯電防止剤では、帯電防止剤が逐次表面に移行(配向)し、表面に導電膜を形成することにより、帯電防止効果を発揮するものと推測される。
【0003】
熱可塑性樹脂中に帯電防止剤を練り込む際や、帯電防止剤を練り込んだ樹脂組成物を加工する際は、一般には、熱可塑性樹脂の軟化点を考慮して150℃以上に加熱した状態で、混練、成形される。このような高温では、帯電防止剤成分の一部が揮発して油煙が発生するので、作業環境の悪化、設備汚染、揮発成分の塊の製品内への混入等の問題があった。
【0004】
このような問題を解消するために、低揮発性の帯電防止剤として、例えば、アルキルアミン誘導体および脂肪酸からなる帯電防止剤が知られている(特開2000−129041号公報参照)。しかしながら、特開2000−129041号公報によると、この帯電防止剤は90℃での使用を意図しているが、150℃以上の高温で低揮発性であることは検証されておらず、事実、150℃以上で混練成形した場合、脂肪酸自体が揮発し易いため油煙の発生は抑制できない。
【特許文献1】特開2000−129041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、帯電防止剤を樹脂に混練する際や、帯電防止剤を練り込んだ樹脂組成物を加工する際に高温加熱しても油煙およびそれに伴う問題の発生が少なく、優れた帯電防止性を発現する帯電防止剤、それを用いた熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物(A)および脂肪酸金属塩(B)を所定の割合で含有する帯電防止剤は、150℃以上の高温での油煙の発生が少ないことを発見し、本発明に到達した。また、この帯電防止剤が脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物のモノ脂肪酸エステル(C)をさらに含有すれば、油煙の発生も少なくなり、帯電防止性がより向上することも見出した。
【0007】
すなわち、本発明にかかる熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物(A)と脂肪酸金属塩(B)とを含み、両者の重量配合割合(A)/(B)が99.95/0.05〜35/65の範囲にある。
【0008】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と上記帯電防止剤とを含む。
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂と上記帯電防止剤とを混合する工程を含む。この製造方法は、前記混合によって得られる混合物を必須成分とする成形材料を成形加工する工程をさらに含んでいてもよい。前記混合および/または成形加工は150℃以上の温度で行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤では、帯電防止剤を樹脂に混練する際や、帯電防止剤を練り込んだ樹脂組成物を加工する際に高温加熱しても油煙およびそれに伴う問題(たとえば、作業環境の悪化、設備や製品の汚染、揮発成分の塊の製品内への混入等)の発生が少なく、優れた帯電防止性を発現する。特に、150℃以上の温度で高温加熱する際に効果が顕著である。
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記帯電防止剤を含有するので、高温加熱しても油煙およびそれに伴う問題の発生が少なく、優れた帯電防止性を有している。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、上記帯電防止剤を使用するので、高温加熱しても油煙およびそれに伴う問題の発生が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔熱可塑性樹脂用帯電防止剤〕
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物(A)と脂肪酸金属塩(B)とを必須成分として含む。以下、簡単のために、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物(A)および脂肪酸金属塩(B)を、それぞれ付加物(A)および金属塩(B)ということがある。
【0012】
付加物(A)は、脂肪族アミンにエチレンオキサイドが付加して得られた生成物であり、脂肪族アミンの種類、エチレンオキサイドの付加モル数等について、特に限定はない。付加物(A)は、帯電防止作用を示す成分である。
付加物(A)としては、下記一般式(1)で示される化合物が好ましい。
【0013】
【化1】

(式中、R1は炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基であり、nおよびmは、n+m=2〜3を満足する数である。)
【0014】
一般式(1)において、R1の炭素数は、好ましくは8〜18、さらに好ましくは12〜18である。R1の炭素数が8より小さいと、揮発性が高くなり、高温に加熱すると油煙およびそれに伴う問題が発生しやすくなる。一方、R1の炭素数が22より大きいと、帯電防止性が低下する。Rはアルキル基が好ましい。
付加物(A)としては、たとえば、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、硬化牛脂脂肪酸由来のアルキルジエタノールアミンなどが挙げられる。付加物(A)は1種または2種以上を組み合わせてもよい。
【0015】
金属塩(B)は脂肪酸の金属塩であり、脂肪酸および金属の種類について、特に限定はない。金属塩(B)は、帯電防止作用を示す成分である付加物(A)の揮発を抑制し、油煙およびそれに伴う問題の発生を少なくする成分である。
金属塩(B)としては、下記一般式(2)で示される化合物が好ましい。
【0016】
【化2】

(式中、Rは炭素数7〜21のアルキル基またはアルケニル基であり、Mは周期表の1族元素、2族元素、12族元素および13族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、xはMの価数を示す。)
【0017】
一般式(2)において、Rの炭素数は、好ましくは7〜17、さらに好ましくは11〜17である。Rの炭素数が7より小さいと、付加物(A)の揮発を抑制する効果が小さく、高温に加熱すると油煙およびそれに伴う問題が発生しやすくなる。一方、Rの炭素数が21より大きいと、帯電防止性が低下する。また、Rはアルキル基が好ましい。
【0018】
一般式(2)において、Mとしては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、亜鉛が好ましく、カルシウム、亜鉛がさらに好ましい。
金属塩(B)としては、たとえば、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウムなどが挙げられる。金属塩(B)は1種または2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤において、付加物(A)および金属塩(B)の重量配合割合(A)/(B)は、99.95/0.05〜35/65の範囲にあり、好ましくは97/3〜55/45の範囲、さらに好ましくは90/10〜70/30の範囲にある。重量配合割合(A)/(B)が99.95/0.05を超えると、高温に加熱すると油煙およびそれに伴う問題が発生しやすくなる。一方、重量配合割合(A)/(B)が35/65未満であると、帯電防止性が低下する。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物のモノ脂肪酸エステル(C)をさらに含むことがある。以下、簡単のために、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物のモノ脂肪酸エステル(C)をモノ脂肪酸エステル(C)ということがある。
モノ脂肪酸エステル(C)は、付加物(A)とともに帯電防止性を高める成分である。高温加熱した際に、金属塩(B)が付加物(A)、モノ脂肪酸エステル(C)の発煙性の高い成分と反応し、より低発煙性の成分に変化することによって、油煙およびそれに伴う問題の発生を抑制し、かつ生成した低発煙性成分が優れた帯電防止性を発現するものと考えられる。
【0021】
モノ脂肪酸エステル(C)は、脂肪族アミンにエチレンオキサイドが付加して得られた生成アルコール1分子と、脂肪酸1分子とが反応して得られたエステルである。
モノ脂肪酸エステル(C)としては、下記一般式(3)で示される化合物が好ましい。
【0022】
【化3】

(式中、R3は炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基、R4は炭素数7〜21のアルキル基またはアルケニル基であり、pおよびqは、p+q=2〜3を満足する数である。)
【0023】
一般式(3)において、Rの炭素数は、好ましくは8〜18、さらに好ましくは12〜18である。Rの炭素数が8より小さいと、揮発性が高くなり、高温に加熱すると油煙およびそれに伴う問題が発生しやすくなる。一方、Rの炭素数が22より大きいと、帯電防止性が低下する。Rはアルキル基が好ましい。
一般式(3)において、Rの炭素数は、好ましくは7〜17、さらに好ましくは11〜17である。Rの炭素数が7より小さいと、揮発性が高くなり、高温に加熱すると油煙およびそれに伴う問題が発生しやすくなる。一方、Rの炭素数が21より大きいと、帯電防止性が低下する。また、Rはアルキル基が好ましい。
【0024】
モノ脂肪酸エステル(C)としては、たとえば、ラウリルジエタノールアミンのモノステアリン酸エステル、ミリスチルジエタノールアミンのモノステアリン酸エステル、オレイルジエタノールアミンのモノステアリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンのモノステアリン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンのモノミリスチン酸エステル、ステアリルジエタノールアミンのモノラウリン酸エステルなどが挙げられる。モノ脂肪酸エステル(C)は1種または2種以上を組み合わせてもよい。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤がモノ脂肪酸エステル(C)をさらに含むことがある場合、付加物(A)およびモノ脂肪酸エステル(C)の重量配合割合(A)/(C)は、好ましくは0.05/99.95以上、さらに好ましくは10/90以上である。
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、上記で説明した各成分以外に、本発明の効果を本質的に変えない限りにおいて、高級アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸アミドのような帯電防止剤や、着色防止のための酸化防止剤等を含有しても良い。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、たとえば、フレーク状、ペレット状等の形態でもよい。
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤の混合方法としては、各成分を溶融混合してもよいし、熱可塑性樹脂との混合や成形加工時に各成分を単に混合してもよい。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤において、対象とする熱可塑性樹脂としては、たとえば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を挙げることができる。
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤およびこの熱可塑性樹脂用帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂組成物では、150℃以上、特に200℃以上の温度下で混合や成形加工しても、低発煙性効果が得られる。
【0028】
〔熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂と本発明の帯電防止剤とを含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる本発明の帯電防止剤の含有率については、特に限定はないが、好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは、0.1〜20重量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形材料の中間原料であるマスターバッチでもよいし、成形に用いられる成形材料でもよいし、フィルム、シート、成形品といった成形加工製品でもよい。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、上記熱可塑性樹脂と本発明の帯電防止剤とを混合する工程を含む。前記混合によって得られる混合物を必須成分とする成形材料を成形加工する工程をさらに含むと好ましい。ここで、混合によって得られる混合物としては、マスターバッチを挙げることができる。以下、熱可塑性樹脂組成物が、マスターバッチの場合、成形材料の場合、成形加工品の場合等にそれぞれ分けて、熱可塑性樹脂組成物の製造方法を説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の帯電防止剤を含有しているので、前記混合および/または成形加工が150℃以上の温度で行われる場合であっても、油煙およびそれに伴う問題の発生が少なく、優れた帯電防止性を発現することができる。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がマスターバッチの場合、このマスターバッチを原料として成形材料を製造する上で、分散の均一性やハンドリング性を向上させる目的から、本発明の帯電防止剤の配合割合は、熱可塑性樹脂に対して好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。本発明の帯電防止剤の配合割合が5重量%未満では、成形材料を製造する場合にマスターバッチが大量に必要となり、コスト高となる。一方、本発明の帯電防止剤の配合割合が30重量%超では、マスターバッチの製造が困難になる。マスターバッチでは、熱可塑性樹脂の形状については、粒体でもよいし、粉体でもよい。
【0031】
マスターバッチは、本発明の効果を損わない限りにおいて、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤や、滑剤、造核剤、顔料、無機充填剤、可塑剤、必要に応じてその他のポリオレフィン熱可塑性樹脂添加剤等を含有してもよい。
【0032】
マスターバッチの製造方法としては、たとえば、通常のプラスチック成形機、すなわちバンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ベント付スクリュー押出成形機、ニーダー等を使用して、熱可塑性樹脂と本発明の帯電防止剤とを必須とする成分を溶融混練し、冷却後、ペレタイズしマスターバッチを作製する方法等を挙げることができる。
上記溶融混練における混練温度は、熱可塑性樹脂の軟化点を考慮して、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が成形材料の場合、本発明の帯電防止剤の配合割合は熱可塑性樹脂に対して、好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。
成形材料は、マスターバッチと同様に、本発明の効果を損わない限りにおいて、他の添加剤等を含有してもよい。
成形材料の製造方法としては、帯電防止剤と熱可塑性樹脂とを単に溶融混練する方法や、上記マスターバッチと熱可塑性樹脂とを溶融混練する方法等を挙げることができる。成形材料の製造方法では、マスターバッチの製造と同様の通常のプラスチック成形機を用いることができる。
【0034】
上記マスターバッチと熱可塑性樹脂とを溶融混練して成形材料を製造する場合、マスターバッチに含まれる樹脂と溶融混練で用いる熱可塑性樹脂とが必ずしも同じ種類の樹脂である必要はないが、両者の分散均一性を向上するため、マスターバッチに含まれる樹脂と熱可塑性樹脂とが相溶性を有していると好ましく、マスターバッチの嵩比重と熱可塑性樹脂の嵩比重とが、略一致しているとさらに好ましい。上記溶融混練における混練温度は、熱可塑性樹脂の軟化点を考慮して、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が成形加工製品の場合、成形加工製品としては、たとえば、インフレーションフィルムや2軸延伸フィルム等のフィルム、シート、射出成形品、ブロー成形品など様々な形状の成形加工品を挙げることができる。
成形加工製品の製造方法としては、上記成形材料を加熱溶融した状態で、射出成形、ブロー成形、押出成形、熱成形(2軸延伸加工等)する方法を挙げることができ、成形材料を成形する同様の方法であってもよい。成形加工製品の製造温度は、熱可塑性樹脂の軟化点を考慮して150℃以上が好ましい。
【0036】
成形材料と成形加工製品の製造は、連続して行なってもよく、たとえば、上記マスターバッチと熱可塑性樹脂を押出成形機で溶融混練しつつ、Tダイ法によりフィルムに加工する方法等がある。
【実施例】
【0037】
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
表1に示した実施例1の配合組成で、それぞれの成分を溶融混合し、ペレット状の帯電防止剤を調製した。
次いで、調製した帯電防止剤をポリプロピレン(ホモポリマー、MFR=2.5g/10min)に対して0.8重量%で混合し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練し、Tダイより押出した。その後、一軸延伸して厚さ30μmのフィルムに成形した。
【0039】
以下の評価方法で発煙性および帯電防止性を評価した。結果を表1に示す。
(発煙性の評価方法)
調製した帯電防止剤をポリプロピレンに対して0.8重量%で混合し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練する際に、押出成形機出口における発煙量をデジタル粉塵計(柴田化学LD−3K2)でカウントする。
【0040】
(帯電防止性の評価方法)
得られたフィルムを40℃で1日保管後、20℃×45%RHの環境下で、表面固有抵抗率を測定する。
〔比較例1〕
実施例1の配合組成を、下記表3に示す配合組成に変更する以外は実施例1と同様にして、ペレット状の帯電防止剤を調製した。次いで、調製した帯電防止剤を使用して、実施例1と同様にして、フィルムに成形し、発煙性および帯電防止性を評価した。結果を表3に示す。
【0041】
〔実施例2〜13および比較例2〜6〕
実施例1の配合組成を、それぞれ、下記表1〜3に示す配合組成に変更する以外は実施例1と同様にして、ペレット状の帯電防止剤を調製した。
次いで、得られた帯電防止剤を、それぞれ、ポリプロピレンの重量に対して、20重量%となるように混合し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練した。冷却後、得られたストランドを、ペレタイザーでカットして、マスターバッチを、それぞれ、作製した。
【0042】
帯電防止剤の含有率が0.8重量%となるように、マスターバッチとポリプロピレンとを、それぞれ、混合し、2軸押出成形機にて230℃で溶融混練し、Tダイより押出した。その後、一軸延伸して厚さ30μmのフィルムに成形した。
それぞれの実施例および比較例について、以下の評価方法で発煙性を評価し、実施例1の評価方法で帯電防止性を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0043】
(発煙性の評価方法)
帯電防止剤の含有率が0.8重量%となるように作製したマスターバッチとポリプロピレンを混合し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練する際に、押出成形機出口における発煙量をデジタル粉塵計(柴田化学LD−3K2)でカウントする。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
実施例1および比較例1、実施例3および比較例2の結果より、本発明の帯電防止剤と熱可塑性樹脂を単に溶融混練しても、本発明の帯電防止剤を含有するマスターバッチと熱可塑性樹脂を溶融混練しても、いずれの場合でも、混練時の発煙が抑制された。
実施例2〜4および比較例2〜3、6の結果より、本発明の帯電防止剤は、熱可塑性樹脂との混練時の発煙が抑制された。比較例3では金属塩(B)の含有量が多いため帯電防止性能が低下し、金属塩(B)ではないステアリン酸を使用した比較例6では発煙を抑制できないことを確認した。
【0048】
実施例5、7〜13および比較例4の結果より、モノ脂肪酸エステル(C)を含有した場合、帯電防止性がより向上し、しかも、混練時の発煙も抑制された。金属塩(B)の種類により効果の大小はあるが、いずれの場合も未添加の比較例4より発煙が低下することが確認できた。
実施例6および比較例5の結果より、本発明の帯電防止剤以外にグリセリンモノステアレートを含有した場合でも、混練時の発煙が抑制されていることが確認できた。
【0049】
以上、上記実施例および比較例の比較から、本発明の帯電防止剤は、熱可塑性樹脂との混練等の高温での加工時における油煙の発生が少なく、かつ優れた帯電防止性を有する成形品が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物(A)と脂肪酸金属塩(B)とを含み、両者の重量配合割合(A)/(B)が99.95/0.05〜35/65の範囲にある、熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
【請求項2】
脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物のモノ脂肪酸エステル(C)をさらに含むことがあり、前記脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物との重量配合割合(A)/(C)が0.05/99.95以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
【請求項3】
前記脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物(A)が下記一般式(1)で示される化合物である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
【化1】

(式中、R1は炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基であり、nおよびmは、n+m=2〜3を満足する数である。)
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩(B)が下記一般式(2)で示される化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
【化2】

(式中、Rは炭素数7〜21のアルキル基またはアルケニル基であり、Mは周期表の1族元素、2族元素、12族元素および13族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、xはMの価数を示す。)
【請求項5】
前記脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物のモノ脂肪酸エステル(C)が下記一般式(3)で示される化合物である、請求項2〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
【化3】

(式中、R3は炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基、R4は炭素数7〜21のアルキル基またはアルケニル基であり、pおよびqは、p+q=2〜3を満足する数である。)
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂と請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止剤とを含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記帯電防止剤の含有率が0.01〜30重量%である、請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂と請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止剤とを混合する工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記混合によって得られる混合物を必須成分とする成形材料を成形加工する工程をさらに含む、請求項9に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記混合および/または成形加工が150℃以上の温度で行われる、請求項9または10に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−222735(P2008−222735A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58539(P2007−58539)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】