説明

熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法及び製造装置

【課題】溶融混練物中に含まれる揮発成分の結露・落下に起因する発泡シートの汚染発生を防止でき、長尺の発泡シートを歩留まりよく製造することが可能な熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法及び製造装置の提供。
【解決手段】樹脂供給装置内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を前記樹脂供給装置に取り付けているサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体を、プラグの外周面に沿わせて冷却、延伸させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する製造方法において、前記筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給するとともに、該発泡中間体の内側のガスを排気しながら熱可塑性樹脂発泡シートを製造することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法及び製造装置に関し、高品質の熱可塑性樹脂発泡シートを歩留まりよく安定して製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂発泡シート、例えばポリスチレン系樹脂発泡シートは、軽量でありながら強度があり、成形加工性に優れ、安価であるほか、疎水性に富み、衛生的で、保温・断熱性に優れているため、食品包装用トレー、即席麺容器などとして広く使用されている。
熱可塑性樹脂発泡シートは、発泡剤を含む樹脂を押出機内で加熱溶融し混練した発泡剤含有樹脂を、押出機先端に取り付けたサーキュラーダイ(環状ダイス等とも称される)のスリットから押し出して発泡させ、押出して筒状発泡体とし、この筒状発泡体を環状冷却装置の周面に接触させて冷却した後、発泡体を押出方向に沿って切り開いてシートを得る、所謂押出発泡成形法によって製造されている。
熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法に関して、例えば、特許文献1,2に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂を押出機先端に設けられた環状ダイスから低圧域に押出して筒状発泡体とし、この筒状発泡体を環状冷却装置の周面に接触させて冷却した後、発泡体を押出方向に沿って切り開いてシートを得る方法において、環状冷却装置を少なくとも2分割し、ダイスと環状冷却装置の間及び2つの環状冷却装置の間において筒状発泡体の内部の圧を高めて発泡体内面に緊張状態を付与することを特徴とする発泡ポリオレフィン系樹脂シートの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、押出機内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を前記押出機に取り付けているサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体を、同じ中心線上で同心円状に位置する環状冷却マンドレルの円筒状外周面に沿わせて、冷却、延伸させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する製造方法において、前記環状冷却マンドレルとして、そのサーキュラーダイ側先端の周縁部が曲率半径Rが15mm〜80mmの曲面とされているものを用い、かつ、当該環状冷却マンドレルとサーキュラーダイとの位置関係を、前記曲面に対して前記曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線を引いたときの、該仮想接線と中心線とのなす角度θが30°〜75°の範囲となるようにして行うことを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2649564号公報
【特許文献2】特開2003−285363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の通り、従来の押出発泡成形法による熱可塑性樹脂発泡シートの製造において、押出機から熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を押出し発泡させる際には、シート冷却用のプラグ(サイジングプラグ、冷却マンドレル等とも称される)の先端側から冷却エアーを供給して筒状発泡中間体を膨らませたバルーン状態とし、延伸すると共に冷却を行っている。
しかしながら、従来の製造方法では、溶融混練物中に含まれる揮発成分が押出し発泡の際に前記バルーン状態の筒状発泡中間体内に該揮発成分が溜まり、これがプラグの先端や冷却用配管の表面で結露し、この結露液(以下、ドレンと記す。)が筒状発泡中間体やそれを切開した発泡シートの表面に落下し、汚染する場合があった。
熱可塑性樹脂発泡シートの製造設備には、汚染された状態の発泡シートが製品に混じらないように、汚れ検出センサによって製造された発泡シートを監視しており、前述したようにドレンが落下付着し、汚染された発泡シートの通過を阻止するようになっており、汚染された発泡シートが検出されると発泡シート製造設備の運転を止め、汚染部分を切り取らねばならないために、前記ドレンによる汚染が生じると長尺の発泡シートを安定して製造し難くなり、発泡シートの製造歩留まりが悪化するという問題があった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、熱可塑性樹脂発泡シートの製造において、溶融混練物中に含まれる揮発成分の結露・落下に起因する発泡シートの汚染発生を防止でき、長尺の発泡シートを歩留まりよく製造することが可能な熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法及び製造装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するため、本発明は、樹脂供給装置内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を前記樹脂供給装置に取り付けているサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体を、プラグの外周面に沿わせて冷却、延伸させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する製造方法において、前記筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給するとともに、該発泡中間体の内側のガスを排気しながら熱可塑性樹脂発泡シートを製造することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法において、前記発泡中間体の内側の気圧が所定圧力となるように、冷却エアー供給量とガス排気量の一方又は両方を制御することが好ましい。
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法において、前記熱可塑性樹脂発泡シートがポリスチレン系樹脂発泡シートであることが好ましい。
【0011】
また本発明は、先端にサーキュラーダイが取り付けられた樹脂供給装置と、該樹脂供給装置内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物がサーキュラーダイから押出、発泡させて得られた筒状発泡中間体を外周面に沿わせて延伸、冷却を行うプラグとを有する熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置において、前記プラグは、前記筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給する冷却エアー供給手段と、前記発泡中間体の内側のガスを排気するガス排気手段とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置を提供する。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置において、前記冷却エアー供給手段は、一定量の冷却エアーを筒状発泡体の内側に供給するものであり、前記ガス排気手段は、発泡中間体の内側の気圧が所定圧力となるように流量調整可能な流量調整バルブを有することが好ましい。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置において、前記熱可塑性樹脂発泡シートがポリスチレン系樹脂発泡シートであることが好ましい。
【0014】
また本発明は、前記熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法により得られた熱可塑性樹脂発泡シートを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法は、プラグの先端に達するまでの筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給するとともに、該発泡中間体の内側のガスを排気しながら熱可塑性樹脂発泡シートを製造することによって、溶融混練物の押出と共に発生した揮発成分が筒状発泡中間体の内側から効率よく排気され、揮発成分の結露・落下に起因する発泡シートの汚染発生を防止でき、長尺の発泡シートを歩留まりよく製造することができる。
また、プラグの先端に達するまでの筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給するだけの従来方式と比べ、筒状発泡中間体の圧力調整が容易となり、筒状発泡中間体の延伸及び冷却状態が安定し、高品質の長尺シートを製造することができる。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置は、筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給する冷却エアー供給手段と、発泡中間体の内側のガスを排気するガス排気手段とを有するプラグを有する構成としたものなので、溶融混練物の押出と共に発生した揮発成分が筒状発泡中間体の内側から効率よく排気され、揮発成分の結露・落下に起因する発泡シートの汚染発生を防止でき、長尺の発泡シートを歩留まりよく製造することができる。
また、プラグの先端に達するまでの筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給するだけの従来方式と比べ、筒状発泡中間体の圧力調整が容易となり、筒状発泡中間体の延伸及び冷却状態が安定し、高品質の長尺シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置に用いる流量調整バルブの第1例を示す正面図である。
【図3】本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置に用いる流量調整バルブの第2例を示す正面図である。
【図4】本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置に用いる流量調整バルブの第3例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置の一例を示す図である。この製造装置は、先端にサーキュラーダイ2が取り付けられた押出機1(樹脂供給装置)と、該押出機1内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物がサーキュラーダイ2の環状のスリット3から押出、発泡させて得られた筒状発泡中間体4を外周面に沿わせて延伸、冷却を行うプラグ5とを有し、前記プラグ5は、前記筒状発泡中間体4の内側に冷却エアーを供給するポンプ7と冷却エアー供給管路6とからなる冷却エアー供給手段と、前記発泡中間体4の内側のガスを排気するガス排気管路8(ガス排気手段)とを備えて構成されている。
【0019】
前記ガス排気管路8には、該管路のON/OFFを切り替え、或いは該管路からのガス排気量を調整するためのバルブ9が設けられている。
また、プラグ5の後端側側面〜プラグ5の後方のいずれかには、プラグ5を通過して冷却された筒状シートを1箇所又は2箇所で切開し、1枚又は2枚の熱可塑性樹脂発泡シート10にするための図示していないカッターが設けられている。
さらに、カッターの後方側には、切開されて巻取ロール(図示略)に巻き取られるように移動する熱可塑性樹脂発泡シート10の表面(特に、筒状発泡中間体4の内側に当たる面側)の汚れ付着の有無をチェックし、汚れ付着の発見とともにシートの移動を停止するための図示していない汚れ監視機構が設けられている。
【0020】
前記プラグ5は、熱伝導率が高く滑らかな金属表面を有する円筒体を本体とし、該本体内には前記冷却エアー供給管路6及びガス排気管路8が挿入されている他、プラグ5外面を冷却するための図示していない冷却水管路が設けられている。この冷却水管路には、外部から冷却水が循環供給され、プラグ5を所定温度に保温できるようになっている。
【0021】
前記ガス排気管路8は、ガス排気量を調整することによって、プラグ5の前方側にある筒状発泡中間体4内の圧力を適宜調整可能な調整とすることが好ましく、そのために図2〜図4に示したような排ガス量を調整可能な流量調整バルブ11A,11B,11Cを備えていることが好ましい。このような流量調整バルブ11A,11B,11Cを用いて前記排ガス量を調整できれば、プラグ5の前方側にある筒状発泡中間体4内に冷却エアー供給管路6を通して供給するエアー量を一定とし、流量調整バルブ11A,11B,11Cによって筒状発泡中間体4内の圧力を適宜調整することで、簡略なポンプ7を使用でき、圧力調整も容易となる。
【0022】
図2は、流量調整バルブ11Aの第1例を示す図である。本例の流量調整バルブ11Aは、バルブ本体12と、該バルブ本体12のバルブ開度を回転調整するための調整レバー13とを備えて構成されている。この流量調整バルブ11Aは、前記ガス排気管路8の排気側に取り付けられ、調整レバー13を回転させて排気口14からの排ガス量を適宜調整可能である。
【0023】
図3は、流量調整バルブ11Bの第2例を示す図である。本例の流量調整バルブ11Bは、バルブ本体15と、該バルブ本体15のバルブ開度を調整するための調整ハンドル16とを備えて構成されている。この流量調整バルブ11Bは、前記ガス排気管路8の排気側に取り付けられ、調整ハンドル16を回すことによって排気口14からの排ガス量を適宜調整可能である。
【0024】
図4は、流量調整バルブ11Cの第3例を示す図である。本例の流量調整バルブ11Cは、窓18が設けられた本体17と、該窓18の開度を調整可能に設けられたスライド部材19とを備えて構成されている。この流量調整バルブ11Cは、前記ガス排気管路8の排気側に取り付けられ、スライド部材19をスライドさせて窓18の開度を変えることで、窓18からの排ガス量を適宜調整可能である。
【0025】
この製造装置は、筒状発泡中間体4の内側に冷却エアーを供給する冷却エアー供給配管6と、筒状発泡中間体4の内側のガスを排気するガス排気管路8とを有するプラグ5を有する構成としたものなので、溶融混練物の押出と共に発生した揮発成分が筒状発泡中間体の内側から効率よく排気され、ドレンの落下に起因する発泡シートの汚染発生を防止でき、長尺の発泡シートを歩留まりよく製造することができる。
また、プラグ5の先端に達するまでの筒状発泡中間体4の内側に冷却エアーを供給するだけの従来方式と比べ、筒状発泡中間体4の圧力調整が容易となり、筒状発泡中間体4の延伸及び冷却状態が安定し、高品質の長尺シートを製造することができる。
【0026】
次に、本発明の熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法の実施形態を説明する。
以下の製造方法の実施形態では、前述した図1に示す構成の製造装置を用いて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する場合を例示する。
【0027】
この熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法では、押出機1内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物をサーキュラーダイ2を通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体4を、プラグ5の外周面に沿わせて冷却、延伸させ、さらにカッターにより切開して熱可塑性樹脂発泡シート10を製造する際に、筒状発泡中間体4の内側に冷却エアーを供給するとともに、筒状発泡中間体の内側のガスを排気しながら熱可塑性樹脂発泡シート10を製造する。
【0028】
この樹脂材料としては、従来より周知の各種の熱可塑性樹脂を使用でき、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂などが挙げられ、これらの中でもポリスチレン系樹脂が特に好ましい。
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0029】
また、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよく、添加する樹脂としては、例えば、容器用周側枠材及び容器の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。また、原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料を用いることができる。また、使用することができるリサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたもの以外にも、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンターなど)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレットしたものを用いることができる。
【0030】
本発明の方法において使用される押出機1としては、公知のもの、例えば、単軸押出機、二軸押出機が挙げられる。中でも、高圧下での押出安定性や熱劣化が少ないという点で優れている単軸押出機が好ましい。
本発明の方法において使用される発泡剤としては、公知のもの、例えば、分解型発泡剤、気体または揮発性の発泡剤が挙げられる。
【0031】
分解型発泡剤としては、例えば炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、ホウ水素化ナトリウム等の無機系分解型発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびジアゾアミノベンゼンなどのアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタンメチレンテトラミンおよびN,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドおよびp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート、クエン酸などが挙げられる。
【0032】
気体の発泡剤としては、例えば窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、tert−ブタン、ジメチルエーテル等が挙げられる。なお、気体とは常温(20℃)、常圧(1気圧)で気体であることを意味する。揮発性の発泡剤としては、例えばエーテル、石油エーテル、アセトン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、水も発泡剤として使用するこどができる。これらの発泡剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
これらの発泡剤の中でも、n−ブタンおよびi−ブタンが特に好ましい。ポリスチレン系樹脂発泡シート1の気泡サイズを約40μm以下とする場合は、発泡剤として窒素、炭酸ガスあるいは水を使用するのが好ましい。特に、窒素および炭酸ガスは、安価であるという点においても好ましい。発泡剤の添加量は、基材樹脂100質量部に対して、0.25〜5.0質量部程度である。
【0034】
また、本発明の方法において、原料樹脂に気泡調整剤等を添加してもよい。気泡調整剤としては、例えばタルク、シリカ等の無機粉末、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。気泡調整剤の添加量は、原料樹脂100質量部に対して、0.01〜6.0質量部程度である。1
【0035】
また、前記熱可塑性樹脂発泡シート10の製造においては、所望により、原料樹脂に紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0036】
サーキュラーダイ2のスリット3から押し出された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物は、発泡して筒状発泡中間体4となり、これをプラグ5の外周に沿わして移動させながら冷却、延伸する。プラグ5の本体は、冷却水によって冷却してあり、また筒状発泡中間体4の外面側と内面側から冷却エアーを吹き付けて該中間体4を冷却する。
【0037】
このとき、筒状発泡中間体4の内面側には、前記溶融混練物から揮発成分が放出される。この筒状発泡中間体4の内面側に冷却エアーを供給するだけでは、発生した揮発成分が筒状発泡中間体4の内面側に留まり、冷却されて液状化し、ドレンとなって筒状発泡中間体4表面に落下し、汚染部分を生じてしまう。一方、本発明の方法にあっては、筒状発泡中間体4の内側のガスを外部に排気するためのガス排気管路8を設けているので、筒状発泡中間体4の内側のガスが外部に排気されるので、発生した揮発成分が筒状発泡中間体4の内面側に留まり難くなり、ドレンが生じることが無くなる。
【0038】
プラグ5を通過して冷却された筒状発泡シートは、プラグ5の後端側側面〜プラグ5の後方のいずれかに設けられたカッターによって、1箇所又は2箇所で切開され、1枚又は2枚の熱可塑性樹脂発泡シート10とされ、図示していない巻取ロールに巻き取られる。
【0039】
この熱可塑性樹脂発泡シート10の厚みは、特に限定されないが、緩衝材、包装材、食品容器として使用する目的においては、通常0.6〜3.0mmの範囲とすることが好ましく、1.0〜2.5mmの範囲がより好ましい。
なお、この熱可塑性樹脂発泡シート10の厚みは、以下の厚み測定方法によって測定した値をいう。
<厚み測定方法>
発泡シートの長手方向の両端20mmを除いた部分を、長手方向50mm間隔の位置を測定点とした。この測定点をダイヤルシックネスゲージSM−112(テクロック社製)を使用し、厚みを最小単位0.01mmまで測定した。この測定値の平均値(測定箇所数n=9以上)を、容器用周側枠材の厚み[mm]とした。
【0040】
この熱可塑性樹脂発泡シート10の密度は、特に限定されないが、緩衝材、包装材、食品容器として使用する目的においては、通常0.03〜0.3g/cmの範囲とすることが好ましく、0.04〜0.15g/cmの範囲がより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂発泡シート10の密度は、以下の密度測定方法によって測定した値をいう。
<密度測定方法>
50cm以上の試験片を材料の元のセル構造を変えないように切断し、その質量及び体積を測定し、次式により全体密度を算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
ただし、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃・50RH%±5RH%、または27℃±2℃・65RH%±5RH%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
【0041】
この熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法は、プラグ5の先端に達するまでの筒状発泡中間体4の内側に冷却エアーを供給するとともに、該発泡中間体4の内側のガスを排気しながら熱可塑性樹脂発泡シート10を製造することによって、溶融混練物の押出と共に発生した揮発成分が筒状発泡中間体4の内側から効率よく排気され、揮発成分の結露・落下に起因する発泡シートの汚染発生を防止でき、長尺の発泡シートを歩留まりよく製造することができる。
また、プラグ5の先端に達するまでの筒状発泡中間体4の内側に冷却エアーを供給するだけの従来方式と比べ、筒状発泡中間体4の圧力調整が容易となり、筒状発泡中間体4の延伸及び冷却状態が安定し、高品質の長尺シートを製造することができる。
【実施例】
【0042】
〔実施例1〕
ポリスチレン樹脂(製品名:G0002(A&M社製、MI=2.1)100質量部に対し、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=50/50)を3.3質量部、気泡調整剤として粉末タルク0.85質量部相当のマスターバッチ品(電化スチロール社製DSM−1401A)を使用して、これを最高温度260℃に設定された押出機に投入し、押出機内で溶融混練させ、その後樹脂温度153℃に冷却調整して、押出機先端に取り付けた口径170mmのサーキュラーダイのスリット(クリアランス0.45mm)より円筒状に押出した。
押出直後に、サーキュラーダイと筒状発泡シートとプラグの前面で仕切られた空間において、32℃のエアーを、空間の内側から発泡シートの単位面積(m)あたり0.05m/m、空間の外側から0.13m/mの割合で吹き付けた。
また、空間の内側のエアーは、プラグの前面から背面を貫く直径70mmの管によってプラグの背面に排出される。菅の背面側の先端には流量調整バルブが取り付けてあり、バルブを「全開」として行った。その後、円筒状発泡シートの両側面をカッターで切り裂いて上下に分け、下側の発泡シートの上面に対して、カメラを用いた無地表面品質検査装置でドレン付着の有無を確認した。上下の発泡シートをそれぞれロール状に巻き取り、厚み2.1mm、幅1040mm、発泡シート坪量240g/m、発泡倍数9.2倍のポリスチレン系樹脂発泡シートを得た。
24時間にわたって発泡シートを連続生産し、300m巻きの発泡シートのロールを288本得たが、ドレンの検知は0回であった。
【0043】
〔比較例1〕
流量調整バルブを「閉」として行った以外は、実施例1と同様にして発泡シートを製造した。24時間にわたって発泡シートを連続生産したが、ドレンの検知は3回であった。
ドレンを検知した場合には、直ちに発泡シートを切断し、新たな軸に発泡シートを巻き替えるとともに、ドレンが付着した発泡シートのロールは廃棄した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法及び製造装置に関し、高品質の熱可塑性樹脂発泡シートを歩留まりよく安定して製造するための技術に関する。
【符号の説明】
【0045】
1…押出機、2…サーキュラーダイ、3…スリット、4…筒状発泡中間体、5…プラグ、6…冷却エアー供給管路、7…ポンプ、8…ガス排気管路、9…バルブ、10…熱可塑性樹脂発泡シート、11A,11B,11C…流量調整バルブ、12…バルブ本体、13…調整レバー、14…排気口、15…バルブ本体、16…調整ハンドル、17…本体、18…窓、19…スライド部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂供給装置内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を前記樹脂供給装置に取り付けているサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体を、プラグの外周面に沿わせて冷却、延伸させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する製造方法において、
前記筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給するとともに、該発泡中間体の内側のガスを排気しながら熱可塑性樹脂発泡シートを製造することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記発泡中間体の内側の気圧が所定圧力となるように、冷却エアー供給量とガス排気量の一方又は両方を制御することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂発泡シートがポリスチレン系樹脂発泡シートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項4】
先端にサーキュラーダイが取り付けられた樹脂供給装置と、該樹脂供給装置内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物がサーキュラーダイから押出、発泡させて得られた筒状発泡中間体を外周面に沿わせて延伸、冷却を行うプラグとを有する熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置において、
前記プラグは、前記筒状発泡中間体の内側に冷却エアーを供給する冷却エアー供給手段と、前記発泡中間体の内側のガスを排気するガス排気手段とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置。
【請求項5】
前記冷却エアー供給手段は、一定量の冷却エアーを筒状発泡体の内側に供給するものであり、前記ガス排気手段は、発泡中間体の内側の気圧が所定圧力となるように調整可能な流量調整バルブを有することを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂発泡シートがポリスチレン系樹脂発泡シートであることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法により得られた熱可塑性樹脂発泡シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71971(P2013−71971A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210742(P2011−210742)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】