説明

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品

【課題】
半導体製造工程で製造されるシリコンウエハやフォトマスクの包装容器は容器外からの水分や化学物質等から効果的に防御することに加え、容器自体が水分や化学物質(有機ガス状であることが多い)等の汚染物質を放出しないことなど、
求められる品質が高度化してきており、従来使用されていたポリカーボネート(PC)やポリプロピレン(PP)では対応できなくなっている。解決策としてカーボンブラック配合の複合材料や、含有水分量や不純物の少ない樹脂の使用等が提案されてはいるが、未だ実用化までは至っていない。

【解決手段】
環状オレフィン系樹脂60〜98質量部、オレフィン系および/またはスチレン系エラストマー1〜20質量部、粒子状導電性フィラー1〜20質量部からなる、汚染性に優れ、衝撃にも強い、熱可塑性樹脂組成物ならびに、その成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂、粒子状導電性フィラー、エラストマー、からなる環状オレフィン系樹脂組成物及びその成形品に関する。本発明の環状オレフィン系樹脂組成物を用いた成形品は、導電性と耐衝撃性を兼ね備えており、半導体製造工程で使用される半導体包装材料として優れている。

【背景技術】
【0002】
半導体製造工程で使用される半導体包装材料は、内容物を容器外の水分、ゴミや塵、化学物質等の汚染物質から効果的に防御すること、容器自体が水分や化学物質(有機ガス状であることが多い)等の汚染物質を放出しないこと、更に耐衝撃性に優れていることなどが要求される。

【0003】
ポリカーボネート樹脂は、射出成形が可能であり、寸法精度も良好であり、耐衝撃性に優れることから、機械強度を要求される各種の容器に使用されている。しかしながら、この樹脂は分子内に水酸基やエステル結合を多く有するため、水分や有機物を吸収したり、吸収した水分や有機物を放出しやすい。また、低分子量成分や重合触媒に由来する不純物を含むという問題点を有している。従って、汚染に対する要求品質が厳しさを増している半導体包装材料としての要求に応えられなくなっている。

【0004】
ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂は、耐薬品性や耐溶剤性にすぐれており、様々な容器に使用されている。しかしながら、低分子量成分や重合触媒に由来する不純物を多く含み、これらの不純物を少量ずつ継続的に容器内に放出することから、半導体包装材料の様な汚染に非常に敏感である用途には不適当であった。更に、射出成形時の成形収縮が大きいことも半導体包装材料を収納する容器としては不適当であった。

【0005】
それに対し、環状オレフィン系樹脂は、主鎖に環状のオレフィン骨格を有する非晶質な熱可塑性オレフィン系樹脂であり、透明性、低複屈折性、耐熱性、軽量性、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性に優れ、低誘電率・低誘電損失、環境負荷物質を含まない等の特徴を備えている。また、水分や化学物質等の汚染物質を放出しない汚染性に優れた材料である。そのため、光ディスク、レンズ、導光板といった光学用途をはじめ、プレフィルドシリンジ、輸液の容器や活栓といった医薬関連器材、高周波電子部品、食品包装材料など広範な用途に用いられている。しかしながら、耐衝撃性に劣っているためにその適用範囲が制限されるという問題点を有している

【0006】
このように、半導体包装材料としての要求品質を全て満足する樹脂ならびに樹脂組成物、更には半導体包装容器の提供は未だなされていない現状である。


【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献−1】特開平5−98100
【特許文献−2】特開平5−156100
【特許文献−3】特開平7−118465
【特許文献−4】特開平11−74337
【特許文献−5】特開2010−77236
【特許文献−6】特開2010−138236
【0008】
半導体包装材料としての基本的適性に優れた環状オレフィン系樹脂組成物に関して、先行特許文献1〜6が開示されている。しかしながら、環状オレフィン系樹脂の特性が活かされ、ゴミや塵の付着性も改善され、更に耐衝撃性が改善された先行技術については未だ報告されていない。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
環状オレフィン系樹脂が有する、水分や化学物質等の汚染物質を放出しない汚染性に優れた材料特性を保持したまま、ゴミや塵の付着性が低減され、且つ、半導体製造工程で使用される半導体包装材料として実用可能な耐衝撃性を兼ね備えた樹脂組成物、ならびに、その成形体を提供すること。

【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者らは検討を重ねた結果、(A)環状オレフィン系樹脂、(B)粒子状導電性フィラー、(C)オレフィン系および/またはスチレン系エラストマーからなる樹脂組成物を用いることにより、本発明の課題を達成した。

【0011】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記構成による組成物を提供する。
(1)
(A)環状オレフィン系樹脂60〜98質量部、(B)粒子状導電性フィラー1〜20質量部、(C)オレフィン系および/またはスチレン系エラストマー1〜20質量部、を含む熱可塑性樹脂組成物。

(2)
(A)環状オレフィン系樹脂が環状オレフィンの開環(共)重合体、及び/又は、その水素添加物である(1)記載の熱可塑性樹脂組成物

(3)
(B)粒子状導電性フィラーが、DBP吸油量100ml/100g以上であるカーボンブラックである(1)〜(2)いずれか一項記載の熱可塑性樹脂組成物
(4)
上記(1)〜(3)いずれか一項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。

【発明の効果】
【0012】
以上からなる環状オレフィン系樹脂組成物は、半導体製造工程で使用される実用レベルの品質を備えた半導体包装材料を提供できるものである。

【発明の実施形態】
【0013】
(A)環状オレフィン系樹脂
環状オレフィン系樹脂(A)(A成分という。)とは、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。環状オレフィン系樹脂(A)は、その製造方法から特開平1−168724号公報、特開平1−168725号公報などに開示される環状オレフィンの付加(共)重合体またはその水素添加物(Al)、特開昭60−168708号公報などに開示される環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体またはその水素添加物(A2)、特開平6−136057号公報や、特開平7−258362号公報などに開示される環状オレフィンの開環(共)重合体またはその水素添加物(A3)に分類される。
【0014】
上記環状オレフィンの具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の1環の環状オレフィン
【0015】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−へキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メトキシ−カルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エニル−2−メチルオクタネイト、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミド等の2環の環状オレフィン
【0016】
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5 ]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5 ]ウンデカ−3,8−ジエンまたはこれらの部分水素添加物(またはシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5 ]ウンデカ−3−エン、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン
【0017】
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,1 0 ]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,1 0 ]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,1 0 ]ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12 ,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン
【0018】
8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ−3−エン、テトラシクロ[7.4.13,6 .01,9 .02,7 ]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7 .01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセンともいう)、ペンタシクロ[6.6.1.13,6 .02,7 .09,14 ]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13 ]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7 .13,6 .110,13 ]−4−ペンタデセン、ヘプタ
シクロ[8.7.0.12,9 .14,7 .111,17 .03,8 .012,16 ]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9 .03,8 .14,7 .012,17 .113,16 ]−14−エイコセン、シクロペンタジエンの4量体などの多環の環状オレフィンが挙げられる。
【0019】
これらの環状オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組合わせて用いることができる。

【0020】
また、環状オレフィンと共重合可能なα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のエチレンまたはα−オレフィンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンも、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。

【0021】
環状オレフィンまたは環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法および得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、水素添加は公知の方法に従って行うことができる。

【0022】
上記環状オレフィン系樹脂(A)のなかでも、環状オレフィンの開環(共)重合体、及び/又はその水素添加物(A3)が、樹脂中に低分子成分、触媒残渣や金属などの不純物が少ないことから、半導体製造工程で使用される半導体包装材料として特に好ましい。

【0023】
環状オレフィン系樹脂は、A1:アートン(日本合成ゴム社製)A2:トーパス(独Ticonat社製)、アペル(三井化学社製)、A3:ゼオネックス(日本ゼオン社製)、ゼオノア(日本ゼオン社製)、などの商品名の市販品を入手することができる。

【0024】
環状オレフィン系樹脂の好ましい含有量としては、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、60〜98 質量部である。60質量部未満の場合、熱可塑性樹脂組成物としての低吸水性が損なわれる。また98質量部超では他成分の十分な添加ができず、ゴミや塵の付着性低減、耐衝撃性等の特性を発現出来ない。

【0025】
(B)粒子状導電性フィラー
本発明に用いる粒子状導電性フィラーとしては、カーボンブラック、黒鉛が挙げられる。中でも導電性発現の観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは例えばオイルファーネス法によって製造されるファーネスブラック、アセチレンガスを原料として製造されるアセチレンブラック、閉鎖空間で原料を直燃して製造されるランプブラック、天然ガスの熱分解によって製造されるサーマルブラック、拡散炎をチャンネル鋼の底面に接触させて捕捉するチャンネルブラックなどを挙げることができる。

【0026】
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品であっても、適宜合成したものであってもよいが、導電性、カーボン分散性などの観点から、n−ジブチルフタレート(DBP)給油量が100ml/100g以上 がより好ましい。前記DBP 吸油量が100ml/100gより少ないと、所定の導電性を出す為の添加量が大きくなる為、衝撃強度低下の観点から好ましくない。

【0027】
前記カーボンブラックについて具体的商品を列挙すれば、ケッチェンブラックEC 300J(ライオン社製)、バルカンXC−72(キャボット社製) 、デンカブラック(電気化学工業製)などが挙げられる。しかし、上記商品に限定されるものではない。
尚、カーボンブラックは単独で用いても良く、DBP吸油量の異なる2種類以上を任意の比率で混合して用いることもできる。

【0028】
前記カーボンブラックの含有量としては、前記熱可塑性樹脂組成物100 質量部に対し、1質量部以上20質量部が好ましく、5質量部以上15質量部がより好ましい。1質量部未満では帯電防止効果が十分ではなく、20質量部超では包装材料として使用した際に、耐衝撃性の低下や、対象劇粒子汚染の原因となる恐れが生ずる。

【0029】
(C)オレフィン系および/またはスチレン系エラストマー
エラストマー(C成分)とは、室温で弾性体である天然および合成の高分子重合体材料のことである。エラストマーには、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等があるが、本発明に用いるエラストマーは、オレフィン系エラストマー(C1)、スチレン系エラストマー(C2)が好ましい。C1およびC2から1種もしくは2種以上を選択し使用することもできる。

【0030】
オレフィン系エラストマー(C1)とは、もっぱら炭素および水素原子から構成され、芳香環を持たない、室温で弾性体である天然および合成の重合体材料をいう。工業的には、IDEMITU TPO(出光興産社製)、住友TPE(住友化学社製)、サーリンク(東洋紡績社製)、オレフレックス(日本ポリエチレン社製)、サーモラン(三菱化学社製)などの商品名を挙げられる。

【0031】
スチレン系エラストマー(C2)とは、芳香環をもつ室温で弾性体である天然および合成の重合体材料であり、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体に代表される。工業的には、タフプレン(旭化成社製)、クレイトン(クレイトンポリマージャパン社製)、住友TPE−SB(住友化学社製)、エポフレンド(ダイセル化学工業社製)、ラバロン(三菱化学社製)などの商品名を挙げられる。

【0032】
上記の中でも、オレフィン系エラストマーではタフマー(三井化学社製)やミラストマー(三井化学社製)、スチレン系エラストマーではセプトン(クラレ社製)やタフテック(旭化成社製)などがより好ましい。

【0033】
前記エラストマーの含有量としては、前記熱可塑性樹脂組成物100 質量部に対し、1質量部以上20質量部であり、5質量部以上15質量部が好ましい。1質量部未満では衝撃強度向上効果が十分ではなく、20質量部超では耐熱性(HDT)の低下を招く

【0034】
(D)その他の成分
前記その他の成分としては、例えば、滑剤、染・顔料、種々の安定剤、強化剤、充填剤、などが挙げられる。


【実施例】
【0035】
本発明の環状オレフィン樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物は公知の樹脂混練設備、例えば熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、あるいは押出混練機で溶融混練を行って製造することが出来るが、必要に応じてペレタイザーを使用してペレット状の組成物として得ることができる。
溶融混練時の温度は使用する環状オレフィン系樹脂の種類によって異なるが、通常200〜400℃である。

【0036】
また本発明の熱可塑性樹脂組成物は、そのままでも可能であるが、好ましくは、上記ペレットの形状にしてから射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形等により、成形品を得ることができる。

【0037】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。

【0038】
( 実施例1〜7 及び比較例1〜5 )
下記表1に示す組成の実施例1〜7、及び比較例1〜5の樹脂組成物を常法に従って調製した。なお、表1中における数値は、樹脂組成物100質量部に対する質量部を表す。
尚、表1記載の各成分は以下のものを使用した。

環状オレフィン系樹脂:
日本ゼオン社製「ゼオノア1020R」、
日本ゼオン社製「ゼオノア1420R」

エラストマー:
三井化学社製「ミラストマー M3800N」(オレフィン系エラストマー)、三井化学社製「タフマー A4085S」(オレフィン系エラストマー)、
クラレ社製「セプトン 4033」(スチレン系エラストマー)、
旭化成社製「タフテック H1051」(スチレン系エラストマー)、

エラストマー比較品:
東洋紡績社製ペルプレン P150M(エステル系エラストマー)

粒子状導電性フィラー:
ライオン社製「ケッチェンブラックEC300J」(DBP吸油量:360ml/0.1kg)
電気化学工業社製「デンカブラック」(DBP吸油量:165ml/0.1kg)

【0039】
具体的には、各配合成分を2軸押出機NR−2(ナカタニ機械社製、スクリュー口径=57mm)を用い、前記押出機の元ホッパーより、予めプレブレンドした環状ポリオレフィン樹脂と、エラストマー樹脂等を含む熱可塑性樹脂の混合物を定量フィーダーにて供給し、該熱可塑性樹脂が完全に溶融したところでカーボンブラックを定量フィーダーにより、サイドフィーダを通して強制的に前記押出機に供給、混練して、コンパウンドを得た。次いで、これを冷却後、ペレタイザー(ナカタニ機械社製 GF5)を用いて円柱状ペレット(直径2mm 、長さ2〜4mm)とした。

【0040】
得られたペレットを射出成形機(日精樹脂工業社製 FS120EM25ASE)を用い、導電性及び剥離性評価用の75mm角の平板プレート、及び強度測定用ダンベル試験片(ISO規格 多目的試験片A)を常法により成形した後、下記評価を実施した。

〔シャルピー衝撃強さ〕:強度指標とした。
ISO 171−9に準拠した方法で衝撃強度を測定した。
衝撃強度は、>5.0KJ/mを合格とした。
〔導電性試験〕:帯電防止能(導電性)指標とした。
ASTM D256に準拠した方法で表面抵抗率を測定した。
導電性は、≦1.0×10Ωを合格とした。
〔荷重たわみ温度(HDT)〕:耐熱性指標とした。
ISO 75−1に準拠した方法で荷重たわみ温度を測定した。
荷重たわみ温度は、≧80℃を合格とした。

【0041】
(表1)実施例、比較例



【0042】
表1の結果から、実施例1から7の熱可塑性樹脂組成物は、水分や化学物質等の汚染物質を放出しない汚染性に優れた材料である環状オレフィン系樹脂を使用して、半導体包装材料として実用可能な衝撃強度、帯電防止能、耐熱性を兼ね備える材料であることが判った。これに対し、比較例1はエラストマー成分が無いため、十分な衝撃強度を得られていない。また比較例2は、カーボンの配合量が範囲外の為、十分な衝撃強度を得られていない。比較例3は、エラストマーの配合量が範囲外であり、十分な耐熱性が得られていない。比較例4は、エラストマー種がエステル系であり、このため十分な衝撃向上効果が得られていない。比較例5は、エラストマー、および粒子状導電性フィラーの成分が無いため、帯電防止能の付与や十分な衝撃強度を得られていないことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)環状オレフィン系樹脂60〜98質量部、(B)粒子状導電性フィラー1〜20質量部、(C)オレフィン系および/またはスチレン系エラストマー1〜20質量部、を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

【請求項2】
前記環状オレフィン系樹脂が環状オレフィンの開環(共)重合体、及び/又は、その水素添加物である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物

【請求項3】
前記粒子状導電性フィラーがDBP吸油量100ml/100g以上である
カーボンブラックである請求項1〜2いずれか一項記載の熱可塑性樹脂組成物

【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。





















【公開番号】特開2012−224724(P2012−224724A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92583(P2011−92583)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】