説明

熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いてなる成形品

【課題】耐衝撃性及び表面硬度に優れ、白もや又は白スジの発生による着色性又は成形品外観の低下が防止された熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】体積平均粒子径215〜335nm及びゲル含量80〜93%のゴム質重合体(a)の存在下、所定比率の芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有するビニル系単量体(b1)を重合した共重合体(A)と、所定共重合比率のスチレン・アクリロニトリル(B)と、ポリメチルメタクリレート樹脂(C)とを含有し、
共重合体(A)のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン、30℃で測定)が0.35〜0.5dl/g、グラフト率が45〜85質量%であり、
(A)/(B)/(C)の割合が3〜70/3〜70/3〜70(質量比)であり、
厚さ2.4mmの樹脂成形品として測定した全光線透過率が70%以上である熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色性、成形品外観、衝撃強度及び表面硬度に優れた透明又は暗色系熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いてなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)に代表されるゴム強化スチレン系樹脂は、成形加工性、機械的強度等に優れていることから、電気・電子機器分野、OA機器分野、車両分野、建材分野など、広範な分野で用いられている。
【0003】
一方、ゴム強化スチレン系樹脂の成形品は表面硬度が十分でなく、成形品表面に傷が付きやすい問題があった。従来、表面硬度を高めて耐傷付き性を付与する手段として、樹脂組成物の一成分としてメチルメタアクリレート系樹脂を配合することが知られている。具体的には、耐傷付き性、意匠性、及び耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物として、ゴム質重合体に芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物をグラフト重合してなるグラフト共重合体と、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を共重合してなる共重合体と、メタクリル酸メチル化合物およびアクリル酸メチル化合物を共重合してなる共重合体とを配合して成る組成物が知られている(例えば、特許文献1及び2)。しかしながら、メチルメタクリレート系樹脂を配合するだけでは、表面硬度は改良されるものの、透明性及び着色性が不十分な場合があり、特に、着色剤を配合して暗色系の成形材料として使用した場合、成形品表面の一部に白もやあるいは白スジと呼ばれる模様が発生し、成形品表面外観又は着色性が損なわれることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−291158号公報
【特許文献2】特開2009−67970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、着色性、成形品外観、耐衝撃性及び表面硬度に優れた透明又は暗色系熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いてなる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の粒子径とゲル含量を有するゴム質重合体に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を特定比率で配合した単量体混合物をグラフト共重合させてなるグラフト共重合体(A)と、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を特定比率で配合した単量体混合物を共重合させてなる共重合体(B)と、特定量の(メタ)アクリル酸エステル化合物を構成単位として含有する共重合体(C)とで熱可塑性樹脂組成物を構成すると、意外にも、上記目的を達成することができ、特に、白もや又は白スジの発生及びそれに起因する着色性又は成形品外観の低下が防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、その第1の局面によれば、体積平均粒子径215〜335nm及びゲル含量80〜93%のゴム質重合体(a)の存在下、芳香族ビニル化合物38〜75質量%、シアン化ビニル化合物15〜22質量%、及び、(メタ)アクリル酸エステル化合物10〜40質量%を含有するビニル系単量体(b1)(ただし、これら単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる共重合体(A)と、
芳香族ビニル化合物64〜84質量%、及び、シアン化ビニル化合物16〜36質量%を含有するビニル系単量体(b2)(ただし、これら単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる共重合体(B)と、
(メタ)アクリル酸エステル化合物70〜100質量%、及び、所望により(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な単量体0〜30質量%を含有するビニル系単量体(b3)(ただし、これら単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる(共)重合体(C)とを含有し、
上記共重合体(A)のアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン、30℃で測定)が0.35〜0.5dl/gであり、且つ、上記共重合体(A)のグラフト率が45〜85質量%であり、
成分(A)/成分(B)/成分(C)の割合が3〜70/3〜70/3〜70(質量比)であり、
厚さ2.4mmの樹脂単独成形品として測定した全光線透過率が70%以上であることを特徴とする透明熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0008】
そして、本発明は、その第2の局面によれば、上記透明熱可塑性樹脂組成物に着色剤を配合してなり、厚さ2.4mmの樹脂成形品として測定したL値が50以下である暗色系熱可塑性樹脂組成物を提供する。
そして、本発明は、その第3の局面によれば、上記透明または暗色系熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定のゴム質重合体に特定組成の単量体混合物をグラフト共重合させてなるMABS樹脂(A)に、特定組成のAS樹脂及び特定組成のMMA樹脂を配合することとしたので、着色性、成形品外観、耐衝撃性及び表面硬度に優れた透明熱可塑性樹脂組成物、特に、白もや又は白スジの発生及びそれに起因する着色性又は成形品外観の低下が防止された熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いてなる成形品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例における落下強度の測定用テストサンプルの作成方法を示す説明図である。
【図2】図2は実施例における落下強度の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
1.共重合体(A)(以下、「成分(A)」ともいう。)
本発明で使用する成分(A)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を必須成分として含有するビニル系単量体(b1)を重合して得られる。
【0012】
1−1. ゴム質重合体(a)
上記ゴム質重合体(a)は、体積平均粒子径が215〜335nm、ゲル含量が80〜93質量%である以外に特に制限はなく、具体例としては、共役ジエン系ゴム質重合体、非共役ジエン系ゴム質重合体等が挙げられる。共役ジエン系ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。非共役ジエン系ゴム質重合体としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−オクテン・非共役ジエン共重合体等のエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム等が挙げられる。これらのうち、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体が好ましく、ブタジエン・スチレン共重合体が特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径は、215〜335nm、好ましくは215〜300nm、より好ましくは215〜285nm、更により好ましくは220〜280nm、特に好ましくは230〜270nmである。体積平均粒子径が215nm未満では、成形品の耐衝撃性が劣る。一方、335nmを超えると、成形品の外観が劣る。
また、ゴム質重合体(a)の粒子径分布は、シャープであることが好ましい。また、成分(a)の粒子径の分布は、単峰性であっても、多峰性であってもよいが、好ましくは単峰性である。
上記ゴム質重合体(a)における粒子径が200nm未満のゴム質重合体、及び、350nmを超えるゴム質重合体の含有量は、何れも、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。粒子径が200nm未満のゴム質重合体の含有量が15質量%を超えると、成形品の耐衝撃性が不十分になる可能性がある。一方、粒子径が350nmを超えるゴム質重合体の含有量が15質量%を超えると、成形品の外観が不十分になる可能性がある。
尚、体積平均粒子径および粒子径分布は、ゴム質重合体(a)の製造時に、単量体の種類及び量、分子量調節剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜選択することにより調整される。また、目的とする体積平均粒子径及び粒子径分布のゴム質重合体は、小粒子径のゴム質重合体を含むゴムラテックスについて、肥大処理を行うことにより得ることもできる。体積平均粒子径および粒子径分布は、肥大処理を行う際の処方、処理時間、処理温度等を適宜選択することにより調整することができる。粒径肥大は、公知の方法、例えばラテックスを一度凍結させてから再溶解する方法、ラテックスに鉱酸、有機酸などを添加して、ラテックスのpHを一時的に低下させる方法、ラテックスに剪断力を加える方法(特開昭54−133588号公報、特開昭59−202211号公報)などによって行うことができる。特にラテックスに、リン酸または無水酢酸を添加する方法が、粒子径の調整が容易であるので、好ましい。ゴム粒子径分布は、必ずしも粒子径分布曲線が単一な山をもついわゆるモノモーダルである必要はなく、例えば2つの山をもつバイモーダル、複数の山をもつマルチモーダルなどであってもよい。マルチモーダルな粒子径分布をもつラテックスは、粒子径の異なる2種以上のゴム質重合体を混合することにより調整してもよい。マルチモーダルな粒子径分布の場合には、ゴムラテックス混合物の体積平均粒子径は215〜335nmである必要がある。
【0014】
ゴム質重合体(a)のゲル含量は、80〜93質量%、好ましくは82〜92質量%、より好ましくは84〜90質量%である。ゲル含量が80質量%未満では、成形品の外観が劣る。一方、ゲル含量が93質量%を超えると、成形品の耐衝撃性が劣る。
上記ゲル含量は、以下に示す方法により求めることができる。まず、ゴム質重合体0.25gをトルエン20mlに投入し、室温で48時間静置した後、200メッシュの金網で濾過し、さらに濾過残渣を60℃で48時間乾燥する。その後、濾過残渣を秤量(質量をWグラムとする。)し、下記式(1)によりゲル含量を求める。
ゲル含量(質量%)=[W(g)/0.25(g)]×100 (1)
尚、ゲル含量は、ゴム質重合体(a)の製造時に、単量体の種類及び量、分子量調節剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜選択することにより調整される。
【0015】
1−2.ビニル系単量体(b1)
上記ビニル系単量体(b1)は、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を必須成分として含有し、所望により、これらの化合物と共重合可能な他のビニル系単量体を含有することができる。当該共重合可能な他のビニル系単量体としては、マレイミド化合物、水酸基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。
【0016】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、トリブロムスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物が好ましく、メチルアクリレート又はメチルメタクリレートがより好ましい。また、これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、共重合体(A)にマレイミド化合物を構成単位として導入するために、無水マレイン酸を(共)重合させた後、イミド化してもよい。マレイミド化合物を使用すると得られる共重合体の耐熱性を向上させることができる。
【0020】
水酸基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、p−アミノスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
カルボキシル基含有不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記ビニル系単量体(b1)における、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、及び、(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量は、上記3種類の化合物の合計を100質量%とした場合、夫々、38〜75質量%、15〜22質量%、及び、10〜40質量%であり、好ましくは、43〜70質量%、15〜22質量%、及び、15〜35質量%、さらに好ましくは、43〜60質量%、15〜22質量%、及び、25〜35質量%、特に好ましくは、46〜59質量%、16〜19質量%、及び、25〜35質量%である。芳香族ビニル化合物の使用量が38質量%未満、または、75質量%を超えると、成形品に白スジが発生し外観が損なわれる。シアン化ビニル化合物の使用量が15質量%未満、または、22質量%を超えると、成形品に白スジが発生し外観が損なわれる。(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量が10質量%未満では、成形品の耐傷付き性が劣り、また、成形品に白スジが発生し外観が損なわれる。一方、(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量が40質量%を超えると、成形品の耐衝撃性(落下強度)が劣り、また、成形品に白スジが発生し外観が損なわれる。
【0027】
上記ビニル系単量体(b1)における、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の合計量は、ビニル系単量体(b1)の全量を100質量%とした場合、通常90〜100質量%、好ましくは95〜100質量%である。上記合計量が90質量%未満になると、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。
また、上記芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能なその他の化合物の含有量は、ビニル系単量体(b1)の全量を100質量%とした場合、通常0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%である。上記含有量が10質量%を超えると、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。
【0028】
1−3.共重合体(A)の製造方法
本発明の共重合体(A)は、上記ゴム質重合体(a)の存在下に上記ビニル系単量体(b1)を重合して得られる。
上記共重合体(A)の製造方法は、特に限定されず、公知の重合法、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等が挙げられる。これらのうち、乳化重合が好ましい。尚、ゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b1)の使用比率(ゴム質重合体(a)/ビニル系単量体(b1))は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは5〜80質量%/20〜95質量%であり、より好ましくは5〜70質量%/30〜95質量%であり、更により好ましくは10〜65質量%/35〜90質量%である。
【0029】
上記共重合体(A)を乳化重合で製造する場合、重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、電解質、水等が用いられる。尚、乳化剤及び連鎖移動剤は、通常使用されるが、状況により使用しない場合もある。
【0030】
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b1)の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.1〜2質量部である。
【0031】
乳化剤としては、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、これらを不均化反応させた不均化ロジン、精製したロジン等のロジン酸(通常、アビエチン酸を主成分とする。)のアルカリ金属塩(ナトリウム塩又はカリウム塩)等のロジン酸塩;高級アルコールの硫酸エステル、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。また、上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b1)の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部である。
【0032】
連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール、ターピノーレン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b1)の全量を100質量部とした場合、通常、0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部である。
【0033】
上記共重合体(A)を乳化重合により製造する場合の重合温度は、通常、30〜95℃、好ましくは40〜90℃である。乳化重合により得られたラテックスからグラフト共重合体(A)を回収するには、通常、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩;硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸等の酸等の凝固剤を添加することにより行われる。その後、凝固した共重合体(A)は、水洗、乾燥することによって、粉体として得られる。
尚、上記共重合体(A)が2種以上の共重合体からなる場合は、各ラテックスから樹脂成分を単離した後、混合してもよいが、他の方法として、例えば各共重合体をラテックスの状態で混合し、得られた混合物を凝固してもよい。
【0034】
また、上記共重合体(A)は、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等により製造することができる。溶液重合の場合、通常、ビニル系単量体を、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の不活性重合溶媒に溶解させ、重合開始剤の存在下に重合してよいし、または、重合開始剤の非存在下に熱重合してもよい。
【0035】
1−4.共重合体(A)の物性
上記のようにして製造された共重合体(A)には、通常、ビニル系単量体(b1)の共重合体がゴム質重合体(a)にグラフトしているグラフト共重合体と、ゴム質重合体(a)にグラフトしていないビニル系単量体(b1)の共重合体とが含まれる。
上記共重合体(A)のグラフト率は、45〜85質量%、さらに好ましくは55〜80質量%、より好ましくは60〜78質量%である。上記グラフト率が45質量%未満では、機械的強度(落下強度)が劣る。一方、上記グラフト率が85質量%を超えると、成形品の表面に白もやが発生し外観を損なう。
なお、上記共重合体(A)のグラフト率は、その製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度及び重合時間等を適宜選択することにより調整することができる。
【0036】
なお、上記グラフト率は、下記式(2)により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100 (2)
上記式中、Sは共重合体(A)1グラムをアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、0℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは共重合体(A)1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
【0037】
上記共重合体(A)のアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、0.35〜0.5dl/gであり、好ましくは0.36〜0.47dl/g、特に好ましくは0.38〜0.45dl/gである。上記極限粘度[η]が0.35dl/g未満では、機械的強度(落下強度)が劣る。一方、上記極限粘度[η]が0.5dl/gを超えると、成形品の表面に白もやが発生し外観を損なう。
【0038】
なお、上記極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記グラフト共重合体(A)の上記可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
上記極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
【0039】
本発明の成分(A)中のゴム質重合体(a)の含有量は、成分(A)全体を100質量%として、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは5〜65質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量がこの範囲にあると、特定のグラフト率及び極限粘度をもつ成分(A)の生産性に優れる。
【0040】
共重合体(A)におけるゴム質重合体(アセトン不溶分)の屈折率とマトリックス樹脂(アセトン可溶成分)の屈折率との差は、透明性と意匠性の観点から、通常0.05以下、好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.02以下である。
【0041】
2.共重合体(B)(以下、「成分(B)」ともいう。)
本発明で使用する成分(B)は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を必須成分として含有するビニル系単量体(b2)を重合して得られる。
【0042】
上記ビニル系単量体(b2)における、芳香族ビニル化合物、及び、シアン化ビニル化合物の含有量は、上記2種類の化合物の合計を100質量%とした場合、夫々、64〜84質量%及び16〜36質量%、好ましくは67〜82質量%及び18〜33質量%、更に好ましくは70〜80質量%及び20〜30質量%、特に好ましくは71〜79質量%及び21〜29質量%である。
芳香族ビニル化合物の使用量が64質量%未満(シアン化ビニル化合物の使用量が36質量%超)の場合は、成形品の表面に白もやが発生し外観を損なう。一方、芳香族ビニル化合物の使用量が84質量%超(シアン化ビニル化合物の使用量が16質量%未満)の場合は、成形品の表面に白スジが発生し外観を損なう。
【0043】
上記ビニル系単量体(b2)における芳香族ビニル化合物、及び、シアン化ビニル化合物としては、共重合体(A)について上記したビニル系単量体(b1)と同様のものを使用することができる。
【0044】
また、上記ビニル系単量体(b2)は、所望により、芳香族ビニル化合物又はシアン化ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系単量体を含有することができる。当該共重合可能な他のビニル系単量体としては、マレイミド化合物、水酸基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらの共重合可能な他のビニル系単量体としては、共重合体(A)について上記したビニル系単量体(b1)と同様ものを使用することができる。
【0045】
上記ビニル系単量体(b2)における、芳香族ビニル化合物、及び、シアン化ビニル化合物の合計量は、ビニル系単量体(b2)の全量を100質量%とした場合、通常90〜100質量%、好ましくは95〜100質量%である。上記合計量が、90質量%未満になると、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。
また、上記芳香族ビニル化合物又はシアン化ビニル化合物と共重合可能な他の化合物の含有量は、ビニル系単量体(b2)の全量を100質量%とした場合、通常0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%である。上記含有量が30質量%を超えると、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。
【0046】
上記共重合体(B)は、ゴム質重合体(a)の非存在下にビニル系単量体(b2)を重合させる以外、上記共重合体(A)と同様の方法で製造することができる。すなわち、公知の乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等により製造することができる。上記共重合体(B)の重合に際して、上記共重合体(A)について上記した重合開始剤等の薬剤と同様のものを用いることができる。上記共重合体(B)の重合は、重合開始剤を用いた方法で行ってもよいし、重合開始剤を用いない熱重合法で行ってもよく、また、これらを組み合わせた方法で行ってもよい。
【0047】
上記共重合体(B)の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、通常0.1〜1.5dl/gであり、好ましくは0.2〜1.0dl/g、より好ましくは0.3〜0.8dl/gである。上記極限粘度[η]が0.1dl/g未満では、樹脂組成物の衝撃強度が不十分になる可能性がある。一方、上記極限粘度[η]が1.5dl/gを超えると、前記樹脂組成物の成形性(流動性)及び外観が不十分になる可能性がある。
【0048】
なお、上記極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記共重合体(B)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
上記極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度及び重合時間等を適宜選択することにより調整することができる。
【0049】
上記共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、通常50,000〜200,000、好ましくは70,000〜180,000、より好ましくは120,000〜170,000である。重量平均分子量が50,000未満の場合は、成形品の靱性が低下する可能性がある。一方、重量平均分子量が200,000を超えると、成形性が低下する可能性がある。重量平均分子量は、例えばテトラヒドロフランを使用したGPC法によって測定することができる。重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、通常、1.2〜5、好ましくは1.2〜4、より好ましくは1.5〜2.5である。この範囲にあると、成形品の外観が十分となり好ましい。
【0050】
3.(共)重合体(C)(以下、「成分(C)」ともいう。)
本発明で使用する(共)重合体(C)は、(メタ)アクリル酸エステル化合物、及び、所望により(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な他の単量体を含有するビニル系単量体(b3)を重合して得られる(共)重合体(C)である。
上記ビニル系単量体(b3)における(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、上記共重合体(A)について上記したものと同様のものを使用することができるが、そのうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物が好ましく、メチルアクリレート又はメチルメタクリレートがより好ましい。
一方、所望により(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、マレイミド化合物、水酸基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられ、このうち、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有不飽和化合物が好ましい。
【0051】
上記ビニル系単量体(b3)における、(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量は、ビニル系単量体(b3)の全量を100質量%とした場合、通常70〜100質量%、好ましくは85〜99.5質量%、さらに好ましくは90〜99.5質量%である。
一方、(メタ)アクリル酸エステル系化合物と共重合可能な他の単量体の使用量は、ビニル系単量体(b3)の全量を100質量%とした場合、通常0〜30質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量が70質量%未満の場合、成形品の表面硬度が不十分になる可能性がある。
(共)重合体(C)は、ビニル系単量体(b3)を使用する以外、上記(B)成分と同様の方法で製造することができる。
【0052】
(共)重合体(C)の重量平均分子量は、通常30,000〜400,000、好ましくは40,000〜200,000、より好ましくは50,000〜150,000である。重量平均分子量が上記範囲にある場合、樹脂組成物は成形加工性に優れ、しかも、得られる成形品は耐衝撃性に優れる。(共)重合体(C)は、全体として上記重量平均分子量を備えればよく、異なる重量平均分子量を有する2種以上の(共)重合体(C)の混合物であってもよい。
【0053】
4.透明熱可塑性樹脂組成物
本発明の透明熱可塑性樹脂組成物は、共重合体(A)と共重合体(B)と(共)重合体(C)とを均一に混合することにより調製される。本発明の透明熱可塑性樹脂組成物の表面硬度は、(共)重合体(C)の増加に伴い向上する傾向にあり、耐衝撃性は共重合体(A)の増加に伴い向上する傾向があり、成形加工性および透明性は共重合体(B)又は(共)重合体(C)の増加に伴い向上する傾向にある。
【0054】
したがって、本発明の透明熱可塑性樹脂組成物において、前記の各成分の配合割合、すなわち、成分(A)/成分(B)/成分(C)(質量比)は、3〜70/3〜70/3〜70、好ましくは10〜60/10〜60/10〜60、更に好ましくは15〜50/15〜50/20〜60である。
本発明の透明熱可塑性樹脂組成物におけるマスメルトフローレート(ISO1133に準拠、220℃、98N)は、通常5〜80g/10min、好ましくは10〜70g/10min、より好ましくは15〜60g/10minである。マスメルトフローレートの値が5g/10min未満では、成形性が不十分となる可能性があり、一方80g/10minを越えると衝撃強度が低下するおそれがある。
また、本発明の透明熱可塑性樹脂組成物におけるゴム質重合体(a)の含有量は、上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量を100質量%として、通常5〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。上記の範囲において、表面硬度と耐衝撃性が良くバランスし、しかも、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0055】
本発明の透明熱可塑性樹脂組成物は、厚さ2.4mmの樹脂単独成形品として測定した全光線透過率が70%以上である。全光線透過率は、好ましくは75%以上であり、更に好ましくは80%以上である。本発明の透明熱可塑性樹脂組成物は、全光線透過率が70%以上であることで、鮮やかな色や深みのある色への着色も可能となり、意匠性に優れる。
なお、この全光線透過率は、樹脂以外の成分、例えば、以下に説明する添加剤や着色剤を含まない樹脂組成物を用いて得られた成形品(本明細書で「樹脂単独成形品」という)についての測定値を意味する。
【0056】
本発明の透明熱可塑性樹脂組成物において、共重合体(A)の特に好ましい例は、ブタジエン・スチレン共重合体の存在下に、スチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートを重合して得られた樹脂(MABS樹脂)であり、共重合体(B)の特に好ましい例は、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)であり、(共)重合体(C)の特に好ましい例は、メチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)である。
【0057】
本発明の透明熱可塑性樹脂組成物には、公知の添加剤、例えば、可塑剤、滑剤(例えば、高級脂肪酸およびその金属塩、高級脂肪酸アミド類など)、熱安定化剤、酸化防止剤(例えば、フェノール系、フォスファイト系、チオジブロプロピオン酸エステル型のチオエーテル等)、耐候剤(例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、蓚酸誘導体、ヒンダードアミン系等)、難燃助剤(例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等)、帯電防止剤(例えば、ポリアミドエラストマー、四級アンモニウム塩系、ピリジン誘導体、脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩共重合体、硫酸エステル塩、多価アルコール部分エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリアルキレングリコール誘導体、ベタイン系、イミダゾリン誘導体など)、抗菌剤、抗カビ剤、摺動性改良剤(例えば、低分子量ポリエチレン等の炭化水素系、高級アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル、脂肪酸と多価アルコールとのフル又は部分エステル、脂肪酸とポリグリコールとのフル又は部分エステル、シリコーン系、フッ素樹脂系など)等をその目的に合わせて任意の割合で配合することができる。これらの添加剤は二種以上を併用してもよい。
【0058】
また、本発明の透明熱可塑性樹脂組成物に、公知の着色剤、例えば、無機顔料、有機顔料、メタリック顔料、染料等を添加して、着色された熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0059】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、酸化亜鉛系顔料、カドミウム系顔料などが挙げられる。
【0060】
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料どのアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料などが挙げられる。
【0061】
メタリック顔料としては、例えば、リン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属をメッキやスパッタリングで被覆したもの等が含まれる。
【0062】
染料としては、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、ペリレン染料、ペリノン染料などが挙げられる。
【0063】
上記着色剤は、固有の色を有するが、特に十分な濃度の色を備え且つ鮮映性に優れた成形品を得る方法として、樹脂組成物に対する着色剤の配合割合を高める方法、成形品の厚さを大きくする方法等がある。
また、上記着色剤は、二種以上を併用してもよい。例えば、黒色に着色したい場合は、赤、緑、黄色などの染料を組み合わせて黒色を発色することにより、より深みのある黒色(漆黒)を発現することができる。
【0064】
5.暗色系熱可塑性樹脂組成物
本発明の透明熱可塑性樹脂組成物は、黒色等の暗色系の色に着色された場合に、特に優れた鮮映性を達成することができる。このような優れた鮮映性は、樹脂組成物を厚さ2.4mmの樹脂成形品として成形し、その色調をLab方式で測定して得られたL値が、50以下の場合に達成することができる。このL値は、好ましくは40以下であり、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下である。本発明の樹脂組成物は、暗色系に着色された場合、意匠性が高められ、特に黒で着色された場合、漆黒性の高い成形品を得ることができる。
【0065】
本発明の樹脂組成物中の着色剤の含有量は、特に制限されない。カーボンブラック等の無機顔料又は有機顔料の場合は、上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部、更に好ましくは0.3〜2質量部である。無機顔料又は有機顔料の含有量が0.1質量部未満の場合は、色調の発現が不十分となる可能性があり、一方、5質量部を超えると、衝撃強度、外観が不十分となる可能性がある。有機染料の場合は、上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.1〜3質量部、好ましくは0.1〜2質量部、更に好ましくは0.2〜1質量部である。上記有機染料の含有量が上記範囲内にあると、深みのある色調を発現することが出来る。有機染料の含有量が0.1質量部未満の場合は色調の発現が不十分となる可能性があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の製造コストが上昇するばかりでなく、成形時にモールドデポジット等で外観不良現象が発生する可能性がある。
【0066】
なお、ここで言う、無機顔料、有機顔料、有機染料の分類は、ポリオレフィン等衛生協議会発行のポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準(第2部ポジティブリスト、2−3色材)第8版に記載されている分類に基づくものであるが、カーボンブラックを含めて使用できる染顔料の種類を限定するものではない。
【0067】
6.熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の透明又は暗色系熱可塑性樹脂組成物は、前記の各成分を溶融混合することにより得られる。溶融混合には、ミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機;単軸押出機、2軸押出機などの連続式混練機が使用される。また、混練の順序は、特に制限されず、例えば成分の全量を一括して混練する方法などが挙げられる。
【0068】
また、共重合体(A)と共重合体(B)を乳化重合により製造した場合、上記共重合体(A)と上記共重合体(B)を含むラテックスの混合物を塩析、凝固、脱水、乾燥して得たパウダーを、(共)重合体(C)及びその他成分とともにヘンシェルミキサー等で混合し、溶融混合してもよい。
【0069】
本発明の樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空成形、プレス成形などが挙げられる。射出成形や射出圧縮成形の場合の金型温度は、特に制限されないが、樹脂注入時の金型キャビティの表面温度として、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上である。このように金型温度を高めた場合、曇りが消えて色調の発現に好ましい傾向が見られる。金型キャビティの表面温度の上限は通常80℃である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中において部及び%は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例及び比較例中の各種測定は、下記の評価方法に従った。
【0071】
評価方法
(1)全光線透過率
射出成形機(日本製鋼社製「J−35AD」)を使用し、シリンダー温度220℃、金型温度50℃にて、5cm×8cmで厚み2.4mmの平板状の樹脂単独成形品(無着色)を射出成形した。次に、Gardner社製ヘーズメータ「haze−gard plus(商品名)」を使用し、ASTM D1003に準じて、得られた平板の全光線透過率を測定した。
【0072】
(2)シャルピー衝撃強さ(C−IMP):
ISO179に準じて、着色した成形品の室温におけるシャルピー衝撃強さ(Edgewise Impact:ノッチ付き)を測定した。測定条件は、
試験片タイプ : Type 1
ノッチタイプ : Type A
加重 : 2J
であった。測定値の単位はKJ/mである。
【0073】
(3)成形品外観
(3−1)白もや
射出成形機(日精樹脂工業社製「FS−120」)を使用し、シリンダー温度220℃、金型温度50℃にて、縦270mm×横205mm×厚み3mmの形状で、270mm×205mmの面の中心にダイレクトゲートを持つ着色した成形品を成形し、ダイレクトゲートから半径5cmのダイレクトゲート周辺部分と成形品表面全体を目視で観察し、以下の基準で評価した。白もやが発生すると、成形品の意匠性が低下する。特に樹脂組成物を暗色系に着色した場合の成形品の意匠性(漆黒性)が低下する。
【0074】
ダイレクトゲート周辺部分
○:ダイレクトゲート周辺部分に白もやが観察されない。
△:ダイレクトゲート周辺部分に白もやが僅かに観察される。
×:ダイレクトゲート周辺部分に白もやが明確に観察される。
【0075】
成形品表面全体
○:成形品表面全体に白もやが観察されない。
△:成形品表面全体に白もやが僅かに観察される。
×:成形品表面全体に白もやが明確に観察される。
【0076】
(3−2)白スジ
(3−1)で用いた平板について以下の基準で評価した。
【0077】
○:白スジが認められない。
×:ダイレクトゲート付近から外周に向かって白スジが認められた。
【0078】
(4)実用衝撃強度(落下強度)
射出成形機(日精樹脂工業社製「FS−120」)を使用し、シリンダー温度220℃、金型温度50℃にて、縦100mm×横75mm×深さ45mm×厚み2mmの箱形の着色した成形品1を成形し、図1(a)に示すように該成形品2個で該成形品の内のり寸法のほぼ2倍の寸法の1kgアルミ製の重り2を挟み、図1(b)に示すように両成形品1の相互に対向して当接する縁部分をガムテープ3で固定して、テストサンプルSを製作した。図2に示すように、床面に敷いた鉄板5の上面に鉛直に立設された高さ120cmの4つのガイドレール4を備える評価装置を用い、上記テストサンプルSを、縦100mm×横75mmの面が、上記鉄板5の上面と衝突する様にガイドレール4に沿って落下させた。まずテストサンプルSの片面を上記鉄板5の上面に衝突させ、次に反対面を該上面に衝突させる手順を1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことで落下強度の評価を行った。評価は以下の基準で行った。
【0079】
○:4サイクル以上割れない。
△:2〜3サイクル以内で割れる。
×:1サイクル以内に割れる。
【0080】
(5)表面硬度(耐傷付き性)
着色した以外上記(1)と同様の平板を作成し、東測精密工業株式会社製往復動摩擦試験器を使用し、綿帆布かなきん3号、垂直荷重1kgで平板の表面を100往復摩擦後、当該表面を目視で観察し、以下の基準で評価した。傷付きは、暗色系に着色した場合により目立ちやすい傾向がある。
【0081】
○:傷が観察されない。
△:傷が僅かに観察される。
×:傷が明確に観察される。
【0082】
(6)光沢
着色した以外上記(1)と同様の平板を作成し、JIS K7105に準じ、デジタル光沢計(型式名「GM−26D」、村上色彩技術研究所社製)を用い、測定角度60度で測定した。
【0083】
(7)L値
着色した以外上記(1)と同様の平板を作成し、紫外可視近赤外分光光度計(型式名「V−670」、日本分光社製)を用い、L値を測定した。
【0084】
評価用樹脂組成物の製造
<共重合体(A)>
<ゴム質重合体(a−1)の調製>
攪拌装置、原料及び助剤添加装置、温度計、加熱装置などを備えた、容量10Lの耐圧容器の内部を窒素で置換後、水180部、1,3−ブタジエン90部、スチレン10部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、過硫酸カリウム0.3部、高級脂肪酸ナトリウム石鹸3部、不均化ロジン酸カリウム0.1部、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.05部、電解質としてピロリン酸ナトリウム1部を仕込み、攪拌しつつ50〜70℃で20時間反応させた後、冷却して反応を終了させ、肥大前ゴム質重合体ラテックスを得た。このときの重合転化率は95%、体積平均粒子径は80nm、ゲル含量は87%であった。
【0085】
次に攪拌装置、原料及び助剤添加装置、温度計、加熱装置などを備えた、容量10Lのガラス製反応器の内部を窒素で置換後、上記肥大前ゴム質重合体ラテックス100部(固形分換算)及び水20部を仕込み、撹拌しながら、内温を40℃まで昇温した。内温が40℃に達した時点で、60部の水に、無水酢酸1.5部をホモジナイザーで分散させた懸濁溶液を反応系に添加した。次いで、反応系を40℃に保持しながら、撹拌を停止して粒径肥大化処理を30分間行った。この粒径肥大化処理の後、47.5部の水に、水酸化カリウム2.5部を溶解した水溶液と、9部の水に、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩1部を溶解した水溶液とを、反応系に添加し、撹拌した。その後、肥大化処理を終了し、ゴム質重合体(a−1)を含むゴム質重合体ラテックスを得た。このときの体積平均粒子径は254nm、粒子径が200nm未満、220〜280nm、350mnm超の粒子の含有量は、夫々、3質量%、66質量%、3質量%であった。
なお、肥大前のゴム質重合体のゲル含量と肥大処理後のゴム質重合体のゲル含量は同じである。
【0086】
<ゴム質重合体(a−2〜8)の調製>
表1又は表2に示す配合とした以外、ゴム質重合体(a−1)と同様に、ゴム質重合体(a−2〜8)を含むゴム質重合体ラテックスを調製した。得られたゴム質重合体のゲル含量、体積平均粒子径、粒子径分布を表1又は2に示した。
【0087】
<共重合体(A−1)の調製>
攪拌装置、原料及び助剤添加装置、温度計、加熱装置などを備えた、容量10Lのガラス製反応器に、上記ゴム質重合体ラテックス30部(ゴム質重合体(a−1)の固形分換算)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.24部、およびイオン交換水150部を仕込み、ついで、スチレン9.3部、アクリロニトリル3.0部、およびメタクリル酸メチル5.3部、t−ドデシルメルカプタン0.2部を仕込んだ。
これら混合物を攪拌しながら48℃まで昇温後、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.014部、硫酸第一鉄・7水和物0.0014部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.072部およびイオン交換水19部よりなる水溶液、ならびにジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.072部を添加し、1時間反応を続けた。
その後、スチレン27.8部、アクリロニトリル8.9部、メタクリル酸メチル15.7部、t−ドデシルメルカプタン0.15部、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.17部からなる単量体混合物、及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0086部、硫酸第一鉄・7水和物0.001部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.043部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、およびイオン交換水32部よりなる水溶液を4時間にわたって連続的に添加し、重合反応を続けた。添加終了後、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を終了した。
その後、反応生成物にSANDWIN−45(東邦化学製、p−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物)0.67部、エチレンジアミン4酢酸二ナトリウム0.5部を添加し、硫酸マグネシウムで凝固した。反応生成物を良く水洗し、脱水した後、80℃で24時間乾燥し、白色粉末の共重合体(A−1)を得た。重合転化率は、97%、グラフト率は70%、極限粘度〔η〕は、0.40dl/gであった。
【0088】
<共重合体(A−2〜24)の調製>
ビニル系単量体を表1又は表2に示す配合とした以外は、共重合体(A−1)と同様に、共重合体(A−2〜24)を調製した。得られた共重合体のグラフト率及び極限粘度を表1及び表2に示した。
【0089】
<共重合体(B)>
<共重合体(B−1)>
公知の溶液重合により得られた、スチレン単位量が76質量%、及び、アクリロニトリル単位量が24質量%である共重合体(B−1)を用いた。極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.6dl/g、GPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量(Mw)は、148,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は1.9であった。
<共重合体(B−2)>
公知の溶液重合により得られた、スチレン単位量が73質量%、及び、アクリロニトリル単位量が27質量%である共重合体(B−2)を用いた。極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.7dl/g、GPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量(Mw)は、169,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.2であった。
<共重合体(B−3)>
公知の溶液重合により得られた、スチレン単位量が85質量%、及び、アクリロニトリル単位量が15質量%である共重合体(B−3)を用いた。極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.54dl/g、GPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量(Mw)は、116,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.2であった。
<共重合体(B−4)>
公知の溶液重合により得られた、スチレン単位量が60質量%、及び、アクリロニトリル単位量が40質量%である共重合体(B−4)を用いた。極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.43dl/g、GPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量(Mw)は、100,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.9であった。
【0090】
<(共)重合体(C)>
次の市販の樹脂を使用した。
(C−1):三菱レイヨン社製「アクリペットMF001」
メタクリル酸メチル/メタクリル酸=89/11(質量比、NMRで測定)、GPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量(Mw)は、88,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.6、MFR(230℃、37.3N)は、14.8g/10minであった。
(C−2):クラレ社製「パラペット G」
メタクリル酸メチル/メタクリル酸=91/9(質量比、NMRで測定)、GPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量(Mw)は、86,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は1.8、MFR(230℃、37.3N)は、8g/10minであった。
【0091】
<添加剤(D)>
(D−1):2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート;スミライザーGS(F)(商品名、住友化学社製酸化防止剤)
(D−2):エチレンビスステアリルアマイド;カオーワックスEB−F(商品名、花王社製滑剤)
【0092】
<着色剤(E)>
(E−1):カーボンブラック;三菱カーボンブラック汎用カラー(RCF)#45(商品名、三菱化学社製)
【0093】
実施例1
表3に示すように、共重合体(A−1)46部、共重合体(B−1)26部、(共)重合体(C−1)10部、(共)重合体(C−2)18部、添加剤(D−1)0.1部、添加剤(D−2)0.5部、着色剤(E−1)1部をヘンシェルミキサーで混合した後、一軸押出機(ナカタニ機械社製「NVC」、L/D=36)を使用して、シリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数120rpm、混練樹脂の吐出速度25kg/hrの条件で混練して評価用樹脂組成物のペレットを得、各特性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0094】
実施例2〜12及び比較例1〜14
表3又は表4に示す組成割合で各成分を配合し、実施例1と同様にして樹脂ペレットを得、評価を行った。評価結果を表3又は表4に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
表3から次のことが明らかである。
本発明の樹脂組成物を用いた実施例1〜12は、落下強度、シャルピー衝撃強さに優れ、白もや、白スジの発生がなく、耐傷付き性にも優れることがわかった。
一方、比較例1は、ゴム質重合体のゲル含量が本発明の範囲外で低かったものであるが、白もやが発生し、成形品外観が悪かった。
比較例2は、ゴム質重合体のゲル含量が本発明の範囲外で高かったものであるが、落下強度が劣った。
比較例3は、ゴム質重合体の体積平均粒子径が本発明の範囲外で小さかったものであるが、落下強度が劣った。
比較例4は、ゴム質重合体の体積平均粒子径が本発明の範囲外で大きかったものであるが、白もやが発生し、成形品外観が悪かった。
比較例5は、共重合体(A)のグラフト率が、本発明の範囲外で低かったものであるが、落下強度が劣った。
比較例6は、共重合体(A)のグラフト率が、本発明の範囲外で高かったものであるが、白もやが発生し、成形品外観が悪かった。
【0100】
比較例7は、共重合体(A)の極限粘度が、本発明の範囲外で低かったものであるが、落下強度が劣った。
比較例8は、共重合体(A)の極限粘度が、本発明の範囲外で高かったものであるが、白もやが発生し、成形品外観が悪かった。
比較例9は、共重合体(A)の調製に用いたビニル系単量体中のアクリロニトリルの含有量が、本発明の範囲外で低かったものであるが、白スジが発生し、成形品外観が悪かった。
比較例10は、共重合体(A)の調整に用いたビニル系単量体中のアクリロニトリルの含有量が、本発明の範囲外で高かったものであるが、白スジが発生し、成形品外観が悪かった。
比較例11は、共重合体(B)のアクリロニトリル(AN)の含有量が、本発明の範囲外で低いものであるが、白スジが発生し、成形品外観が悪かった。
比較例12は、共重合体(B)のアクリロニトリル(AN)の含有量が、本発明の範囲外で高かったものであるが、白スジの観察が行えない程の白もやが発生し、成形品外観が悪かった。
【0101】
比較例13は、共重合体(A)の調製に用いたビニル系単量体中のメチルメタクリレート(MMA)の含有量が、本発明の範囲外で低かったものであるが、白スジが発生し、成形品外観が悪く、また、耐傷付き性も悪かった。
比較例14は、共重合体(A)の調整に用いたビニル系単量体中のメチルメタクリレート(MMA)の含有量が、本発明の範囲外で高かったものであるが、白スジが発生し、成形品外観が悪く、また、落下強度も悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、着色性、成形品外観、衝撃強度及び表面硬度に優れるので、各種分野で成形材料として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径215〜335nm及びゲル含量80〜93%のゴム質重合体(a)の存在下、芳香族ビニル化合物38〜75質量%、シアン化ビニル化合物15〜22質量%、及び、(メタ)アクリル酸エステル化合物10〜40質量%を含有するビニル系単量体(b1)(ただし、これら単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる共重合体(A)と、
芳香族ビニル化合物64〜84質量%、及び、シアン化ビニル化合物16〜36質量%を含有するビニル系単量体(b2)(ただし、これら単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる共重合体(B)と、
(メタ)アクリル酸エステル化合物70〜100質量%、及び、所望により(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な単量体0〜30質量%を含有するビニル系単量体(b3)(ただし、これら単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる(共)重合体(C)とを含有し、
上記共重合体(A)のアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン、30℃で測定)が0.35〜0.5dl/gであり、且つ、上記共重合体(A)のグラフト率が45〜85質量%であり、
成分(A)/成分(B)/成分(C)の割合が3〜70/3〜70/3〜70(質量比)であり、
厚さ2.4mmの樹脂単独成形品として測定した全光線透過率が70%以上であることを特徴とする透明熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
上記ゴム質重合体(a)は、粒子径が200nm未満のゴム質重合体の含有量が15質量%以下で、かつ、粒子径が350nmを超えるゴム質重合体の含有量が15質量%以下である請求項1に記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2の透明熱可塑性樹脂組成物に着色剤を配合してなり、厚さ2.4mmの樹脂成形品として測定したL値が50以下である暗色系熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−251015(P2012−251015A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122434(P2011−122434)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】