説明

熱可塑性樹脂組成物の製造方法および該熱可塑性樹脂組成物からなる部材を含む複合成形体

【課題】成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】高分子ポリオール(a−1)、反応性官能基を有しないブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)を混合含浸させて、これらの混合物を得る工程(A)と;高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)を溶融混練して、これらの反応混合物を得る工程(B)と;前記工程(A)の混合物、前記工程(B)の反応混合物、および反応性官能基を有するブロック共重合体(b−2)を溶融混練する工程(C);とを含み、前記工程(A)における高分子ポリオール(a−1)の使用量が、工程(A)および(B)における高分子ポリオール(a−1)の全使用量に対して、5〜95質量%である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。さらに本発明は、該熱可塑性樹脂組成物からなる部材を含む複合成形体も提供する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンは、力学的特性、耐摩耗性、弾性回復性、耐油性、屈曲性等の諸特性に優れ、しかも溶融成形が可能であることから、従来の合成ゴムやプラスチックの代替材料として、広範な用途で用いられている。しかし熱可塑性ポリウレタンは粘着性が非常に強く、例えば、射出成形等により成形体を製造する場合に、金型からの離型不良、金型内での樹脂の流れ斑による成形体の外観不良(気泡や流れ模様の発生等)、得られた成形体同士の膠着などの問題が生じやすい。また押出成形等によってフィルムやシートを製造する場合は、単独で巻き取ることが困難なため、離型剤や離型紙(離型シート)を併用する必要があり、離型剤や離型紙(離型シート)を用いずに単独で巻き取ると、巻き取ったフィルムやシートの巻き返しが困難または不可能になって使用できなくなるという問題を生じやすい。さらに、熱可塑性ポリウレタンは、耐熱水性や耐候性に劣る。そのため、熱可塑性ポリウレタンは、上記した種々の優れた特性を有しているにも拘わらず、その使用範囲が限定されているのが現状である。
【0003】
一方、芳香族ビニル化合物から形成される重合体ブロックと共役ジエンから形成される重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物(以下「ブロック共重合体」と略称することがある)は、高いゴム弾性を有し、且つ耐熱水性や耐候性に優れ、しかも一般に溶融成形が可能であることから、近年、それらの特性を活かして様々な分野で用いられるようになっている。しかし該ブロック共重合体は、耐摩耗性、力学的特性、耐油性等に劣るという欠点を有しており、やはりその使用範囲が限られているのが現状である。
【0004】
そこで熱可塑性ポリウレタンおよびブロック共重合体の両者の欠点を補い、両者の優れた特性を兼ね備える重合体組成物を得る目的で、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体とをブレンドした重合体組成物が提案されている(例えば特許文献1〜5を参照)。しかしブロック共重合体と熱可塑性ポリウレタンとは相容性に劣るため、両者の優れた特性を充分に引き出すことができず、特に成形性、非粘着性、耐摩耗性および力学的特性の点で充分に満足のゆく重合体組成物が得られていない。
【0005】
熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との相容性を向上させるため、または両者を含有する重合体組成物の溶融接着性などを向上させるために、カルボキシ基またはそれから誘導される基、水酸基等で変性したブロック共重合体を熱可塑性ポリウレタンにブレンドした組成物なども提案されている(例えば特許文献6〜8を参照)。しかしこのような組成物であっても、特に、非粘着性、成形性、耐摩耗性、力学的特性等の点で、未だ満足のいくものではなかった。
【0006】
このような状況の下、熱可塑性ポリウレタンおよびブロック共重合体を含有する従来の重合体組成物の問題点を解決できるものとして、特許文献9は、特定の付加重合系ブロック共重合体(I)、特定のポリウレタン系ブロック共重合体(II)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(III)およびパラフィン系オイル(IV)を含有する熱可塑性重合体組成物を開示している。この熱可塑性重合体組成物は、良好な弾力性、柔軟性、力学的特性、耐油性、成形加工性を有すると共に、種々の材料に対して強固かつ容易に溶融接着することができる。
【0007】
また特許文献10は、まず高分子ポリオールを特定のプロック共重合体に含浸させて高分子ポリオール・ブロック共重合体の混合物を調製し、次いで前記混合物と、有機ジイソシアネート化合物および鎖伸長剤とを用いてポリウレタン形成反応を行う熱可塑性ポリウレタン組成物の製造方法を開示している。この製造方法によって得られる熱可塑性ポリウレタン組成物は、非粘着性で、溶融成形性に優れると共に、耐摩耗性、力学的特性、柔軟性、屈曲性等の性能にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭52−150464号公報
【特許文献2】特開平6−65467号公報
【特許文献3】特開平6−107898号公報
【特許文献4】特開平8−157685号公報
【特許文献5】特開平9−124887号公報
【特許文献6】特開昭63−99257号公報
【特許文献7】特開平3−234755号公報
【特許文献8】特開平7−126474号公報
【特許文献9】特開平11−323073号公報
【特許文献10】特開2000−290339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし上記のような従来技術では、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との相容性は決して充分なものではなく、成形性等に関してさらなる改善の余地があった。その一方、ブロック共重合体をはじめとする各種熱可塑性エラストマーと熱可塑性ポリウレタンとの併用は、ますます広がってきており、それに伴って、成形性等に一層優れた組成物が求められている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との相容性をより一層向上させて、成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明者らは種々検討を重ねてきた。その結果、下記製造方法によって、成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出した。即ち本発明は、
高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)を混合含浸させて、これらの混合物を得る工程(A)と、
高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を溶融混練して、これらの反応混合物を得る工程(B)と、
前記工程(A)の混合物、前記工程(B)の反応混合物およびブロック共重合体(b−2)を溶融混練する工程(C)とを含み、
前記ブロック共重合体(b−1)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなり、且つ高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基(以下「反応性官能基」と略称することがある)を有しない付加重合系ブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体(b−2)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなり、且つ高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基を有する付加重合系ブロック共重合体であり、
前記工程(A)における高分子ポリオール(a−1)の使用量が、工程(A)および(B)における高分子ポリオール(a−1)の全使用量に対して、5〜95質量%である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法(以下「第1形態の製造方法」と略称することがある)を提供する。
【0012】
第1形態の製造方法では、前記工程(C)において、まず前記工程(A)の混合物と前記ブロック共重合体(b−2)とを溶融混練して混合物を得て、次いで前記混合物と前記工程(B)の反応混合物とを溶融混練することが好ましい。
【0013】
第1形態の製造方法では、前記工程(A)におけるブロック共重合体(b−1)の使用量が、前記工程(A)〜(C)におけるブロック共重合体(b−1)の全使用量に対して、50〜100質量%であることが好ましい。
【0014】
第1形態の製造方法では、
上流部供給口、およびこれよりも下流側にある中流部供給口を有する押出機を用い、
前記上流部供給口から高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を押出機に連続的に供給することによって、前記上流部供給口から前記中流部供給口までの間で、これらの反応混合物を得る工程(B)を行い、
前記中流部供給口から、さらに前記工程(A)の混合物および前記ブロック共重合体(b−2)を押出機に連続的に供給することによって、前記中流部供給口よりも下流側で、前記工程(A)の混合物、前記工程(B)の反応混合物および前記ブロック共重合体(b−2)を溶融混練する工程(C)を行う、
ことが好ましい。
【0015】
本発明は、高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)および必要に応じてブロック共重合体(b−2)を混合含浸させて、これらの混合物を得る工程(A)と、
前記工程(A)の混合物、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)、鎖伸長剤(a−3)およびブロック共重合体(b−2)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を溶融混練する工程(D)とを含み、
前記ブロック共重合体(b−1)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなり、且つ高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基を有しない付加重合系ブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体(b−2)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなり、且つ高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基を有する付加重合系ブロック共重合体であり、
前記工程(A)における高分子ポリオール(a−1)の使用量が、工程(A)および(D)における高分子ポリオール(a−1)の全使用量に対して、5〜95質量%である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法(以下「第2形態の製造方法」と略称することがある)も提供する。
【0016】
第2形態の製造方法では、前記工程(A)におけるブロック共重合体(b−1)の使用量が、前記工程(A)および(D)におけるブロック共重合体(b−1)の全使用量に対して、50〜100質量%であることが好ましい。
【0017】
第2形態の製造方法では、押出機の供給口に、前記工程(A)の混合物、前記高分子ポリオール(a−1)、前記有機ジイソシアネート化合物(a−2)、前記鎖伸長剤(a−3)および前記ブロック共重合体(b−2)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を連続的に供給することによって、これらを溶融混練する工程(D)を行うことが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法では、以下のW1とWと2の比率が、W1/W2=100/15〜100/2であることが好ましい。
W1:高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)の合計質量。
W2:ブロック共重合体(b−2)の質量。
【0019】
本発明の製造方法では、以下のW1、W2およびW3の関係が、W3/(W1+W2+W3)=5/100〜60/100であることが好ましい。
W1:高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)の合計質量。
W2:ブロック共重合体(b−2)の質量。
W3:ブロック共重合体(b−1)の質量。
【0020】
本発明の製造方法で用いるブロック共重合体(b−2)において、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基が、水酸基であることが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法では、可塑剤(c)が、炭化水素系油、植物油、リン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、シリコーンオイル、並びに可塑化能を有する液状ポリマーおよびその変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
さらに本発明は、前記製造方法によって得られる熱可塑性樹脂組成物からなる部材と、他の熱可塑性樹脂組成物からなる部材とが接着してなる複合成形体も提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体との相容性をより一層向上させて、成形性に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。この熱可塑性樹脂組成物から、耐摩耗性、引張破断強度、屈曲性、耐ブロッキング性などに優れた成形体、および接着強度に優れた積層成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の製造方法、即ち第1形態の製造方法および第2形態の製造方法は、
(1)高分子ポリオール(a−1)を、工程(A)および(C)、または工程(A)および(D)で分割して使用すること、並びに
(2)反応性官能基を有するブロック共重合体(b−2)を、工程(A)後の工程(C)または工程(D)で使用すること
を共通の特徴とする。このような特徴を有する本発明によれば、成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0025】
以下、本発明の製造方法を順に説明する。まず本発明で用いる高分子ポリオール(a−1)等の原料から説明する。
【0026】
〈高分子ポリオール(a−1)〉
高分子ポリオール(a−1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。高分子ポリオール(a−1)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、共役ジエン系ポリマーポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの中でも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリオレフィンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールがより好ましい。
【0027】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、常法にしたがってポリオール成分とポリカルボン酸成分(ポリカルボン酸、そのエステルや酸無水物等のエステル形成性誘導体など)とを直接エステル化反応させるか、またはエステル交換反応させて得られるポリエステルポリオール;ポリオールを開始剤としてラクトンを開環重合することによって得られるポリエステルポリオール;などを挙げることができる。
【0028】
上記ポリオール成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ポリオール成分としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール,2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノール等の脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族二価アルコールなどの1分子当たり水酸基を2個有するジオールや、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の1分子当たり水酸基を3個以上有するポリオールなど挙げることができる。
【0029】
上述のものの中でも、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール等のメチル基を側鎖に有する炭素数5〜12の分岐脂肪族ジオールが好ましい。前記の分岐脂肪族ジオールの使用量は、全ポリオール成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上である。
【0030】
上記ポリカルボン酸成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ポリカルボン酸成分としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているポリカルボン酸成分を使用することができ、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸等の炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3官能以上のポリカルボン酸;あるいはそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。これらの中でも炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸、特にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸の1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0031】
上記ラクトンの開環重合ではラクトンの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ラクトンとしては、例えば、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等を挙げることができる。
【0032】
上記ポリエーテルポリオールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオールの存在下に、環状エーテルを開環重合して得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等を挙げることができる。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコールおよび/またはポリ(メチルテトラメチレングリコール)が好ましい。
【0033】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート化合物(例えばジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等)との反応により得られるものを挙げることができる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、上述したものが挙げられる。またジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート等を、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート等を、それぞれ挙げることができる。
【0034】
上記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、(1)ポリオール、ポリカルボン酸またはその誘導体、およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られるもの;(2)まずポリエステルポリオールを合成し、次いでこれをカーボネート化合物と反応させて得られるもの;又は(3)まずポリカーボネートポリオールを合成し、次いでこれをポリカルボン酸成分と反応させて得られるもの;などを挙げることができる。
【0035】
上記の共役ジエン系ポリマーポリオールまたはポリオレフィンポリオールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらとしては、例えば、重合開始剤の存在下に、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、またはそれらと他のモノマーをリビング重合した後に、重合活性末端に水酸基含有エポキシ化合物を反応させて得られるポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ブタジエン/イソプレンコポリマーポリオール、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーポリオール、ブタジエン/スチレンコポリマーポリオール等の共役ジエン系ポリマーポリオール、あるいはそれらを水素添加して得られるポリオレフィンポリオールなどを挙げることができる。
【0036】
高分子ポリオール(a−1)の数平均分子量は、好ましくは500以上(より好ましくは600以上、さらに好ましくは800以上)、好ましくは8,000以下(より好ましくは5,000以下)である。好ましい数平均分子量を有する高分子ポリオール(a−1)は、ブロック共重合体(b−1)との親和性に優れていて、ブロック共重合体(b−1)中に良好に含浸し、それによって、ブロック共重合体(b−1)と生成した熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上しやすくなる。そうして非粘着性、溶融接着性、耐摩耗性、力学的特性(例えば引張破断強度および引張破断伸度等)、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に一層優れる熱可塑性樹脂組成物をより確実に得ることができるようになる。なお本明細書でいう高分子ポリオール(a−1)の数平均分子量は、JIS K−1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0037】
また、好ましくは100℃以下(より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは40℃以下、特に好ましくは20℃以下)で液状を呈する高分子ポリオール(a−1)を使用することが推奨される。このような高分子ポリオール(a−1)を使用することによって、工程(A)の混合物の生成が容易となり、ブロック共重合体(b−1)と生成した熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上した熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお「液状」の定義は後述する。
【0038】
高分子ポリオール(a−1)の80℃における粘度は、好ましくは0.001Pa・s以上(より好ましくは以上0.01Pa・s、さらに好ましくは0.1Pa・s以上)、好ましくは10Pa・s以下(より好ましくは5Pa・s以下、さらに好ましくは3Pa・s以下)である。好ましい粘度を有する高分子ポリオール(a−1)を使用すれば、工程(A)の混合物の生成が容易となり、ブロック共重合体(b−1)と生成した熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上した熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお本明細書でいう高分子ポリオール(a−1)の80℃における粘度は、E型粘度計によって測定することができる。
【0039】
高分子ポリオール(a−1)の1分子当たりの水酸基数は、好ましくは2.0以上(より好ましくは2.005以上)、好ましくは2.1以下(より好ましくは2.07以下、さらに好ましくは2.05以下)である。好ましい水酸基数を有する高分子ポリオール(a−1)を使用することによって、後述する工程(B)、工程(C)または工程(D)における熱可塑性ポリウレタンの形成が円滑に行われて、その結果、ブロック共重合体(b−1)と生成した熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上した熱可塑性樹脂組成物が得られやすくなる。そうして非粘着性、溶融接着性、耐摩耗性、力学的特性(例えば引張破断強度および引張破断伸度等)、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に一層優れる熱可塑性樹脂組成物をより確実に得ることができるようになる。なおこのような水酸基数は、1種類の高分子ポリオール(a−1)を使用することによって達成してもよく、複数の高分子ポリオール(a−1)の混合物を用いて達成してもよい。混合物を使用する場合の上記水酸基数は、平均値を用いる。
【0040】
〈有機ジイソシアネート化合物(a−2)〉
有機ジイソシアネート化合物(a−2)としては、熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられているあらゆる有機ジイソシアネート化合物を使用することができる。有機ジイソシアネート化合物(a−2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機ジイソシアネート化合物(a−2)としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらの中で、芳香族ジイソシアネートが好ましく、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0041】
〈鎖伸長剤(a−3)〉
鎖伸長剤(a−3)としては、熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられているあらゆる鎖伸長剤を使用でき、その中でも、イソシアネート基(−NCO)と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、且つ分子量が450以下である低分子化合物が好ましい。鎖伸長剤(a−3)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。鎖伸長剤(a−3)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコール等のジオール類(好ましくは炭素数2〜10の脂肪族ジオール);ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンまたはその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコール等のアミノアルコール類などを挙げることができる。これらの中でも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが好ましく、1,4−ブタンジオールがより好ましい。
【0042】
〈ブロック共重合体(b−1)およびブロック共重合体(b−2)〉
ブロック共重合体(b−1)およびブロック共重合体(b−2)は、いずれも、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなる付加重合系ブロック共重合体である点で共通する(なお本明細書において「芳香族ビニル化合物系重合体ブロック」とは、芳香族ビニル化合物単位を含む重合体ブロックを意味し、「共役ジエン系重合体ブロック」とは、共役ジエン単位を含む重合体ブロックを意味する)。但しブロック共重合体(b−1)は反応性官能基を有さず、ブロック共重合体(b−2)は反応性官能基を有する点で、ブロック共重合体(b−1)とブロック共重合体(b−2)とは相違する。以下では、ブロック共重合体(b−1)およびブロック共重合体(b−2)を、「ブロック共重合体(b)」と総称して、これらの重複する説明を省略することがある。
【0043】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロック中の芳香族ビニル化合物単位は、芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位である。前記芳香族ビニル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、メトキシスチレンなどを挙げることができる。これらの中でも、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンが好ましい。
【0044】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、必要に応じて、芳香族ビニル化合物単位と共に、1種または2種以上の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位の含有量は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの質量に基づいて、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは0である。他の構造単位は、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、メチルビニルエーテルなどに由来するものである。
【0045】
共役ジエン系重合体ブロック中の共役ジエン単位は、共役ジエンから誘導される構造単位である。共役ジエンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを挙げることができる。これらの中でも、1,3−ブタジエンおよび/または2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)が好ましい。
【0046】
共役ジエン系重合体ブロックが2種類以上の共役ジエン単位を含む場合には、それらの結合形態はランダム、テーパー、一部ブロック状のいずれであってもよく、これらが混在していてもよい。
【0047】
共役ジエン系重合体ブロックは、必要に応じて、共役ジエン単位と共に、1種または2種以上の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位の含有量は、共役ジエン系重合体ブロックの質量に基づいて、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは0である。
【0048】
ブロック共重合体(b)における芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとの結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組合わさった結合形態のいずれでもよい。これらの中でも、直鎖状の結合形態が好ましい。芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを「X」で表し、共役ジエン系重合体ブロックを「Y」で表したとき、ブロック共重合体としては、例えば式:(X−Y)m−X、(X−Y)n、またはY−(X−Y)p(式中、m、nおよびpはそれぞれ1以上の整数を示す)で表されるブロック共重合体などを挙げることができる。このようなブロック共重合体の中でも、2個以上の芳香族ビニル化合物系重合体ブロックXと1個以上の共役ジエン系重合体ブロックとが直鎖状に結合したブロック共重合体が好ましく、式:X−Y−Xで表されるトリブロック共重合体がより好ましい。このようなトリブロック共重合体には、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が良好に含浸し、且つこれらがトリブロック共重合体中に良好に保持される。そのためこのようなトリブロック共重合体を、ブロック共重合体(b−1)として使用すれば、熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体(b−1)とが良好に相溶化し、成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0049】
ブロック共重合体(b)中の芳香族ビニル化合物単位の含有量は、全構造単位に基づき、好ましくは5質量%以上(より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上)、好ましくは75質量%以下(より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下)である。好ましい芳香族ビニル化合物単位の含有量を有するブロック共重合体(b−1)を使用すれば、ブロック共重合体(b−1)に高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が良好に含浸し、且つ可塑剤(c)がブロック共重合体(b−1)中で良好に保持される。その結果、ブロック共重合体(b−1)と熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上し、非粘着性、溶融接着性、耐摩耗性、力学的特性(例えば引張破断強度および引張破断伸度等)、屈曲性等の特性に一層優れる熱可塑性樹脂組成物が、より確実に得られるようになる。
【0050】
ブロック共重合体(b)は、好ましくは、上記した芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物である。水素添加物は、共役ジエン系重合体ブロックが有する二重結合の一部だけが水素添加されたものでもよく、その全部が水素添加されたもののでもよい。ブロック共重合体(b)の水素添加率は、水素添加前の共役ジエン系重合体ブロックが有する二重結合の総モル数に基づいて、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。好ましい水素添加率を有するブロック共重合体(b)を使用すれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、耐候性および耐光性を向上させることができる。
【0051】
ブロック共重合体(b−2)は、1種または2種以上の反応性官能基を有する。高分子ポリオール(a−1)および/または鎖伸長剤(c)に対して反応性のある官能基としては、例えばカルボキシ基、カルボニルオキシカルボニル基(−CO−O−CO−)、チオカルボキシ基、およびイソシアネート基(−NCO)等が挙げられる。また有機ジイソシアネート化合物(a−2)に対して反応のある官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、スルファニル基(−SH)、カルボキシ基、カルボニルオキシカルボニル基、およびチオカルボキシ基等が挙げられる。これらの反応性官能基の中で、有機ジイソシアネート化合物(a−2)に対して反応性のある官能基が好ましく、水酸基がより好ましい。有機ジイソシアネート化合物(a−2)に対して反応性のある官能基(特に水酸基)を有するブロック共重合体(b−2)を用いれば、後述する工程(C)または(D)で均一なポリウレタン形成反応を行いやすい。
【0052】
反応性官能基は、ブロック共重合体(b−2)の末端に位置していることが好ましい。反応性官能基を末端に有するブロック共重合体(b−2)を使用すれば、後述する工程(C)または(D)において、ブロック共重合体(b−2)が末端に結合したポリウレタンを形成することができる。ブロック共重合体(b−2)が末端に存在する結果、これと類似する構造を有するブロック共重合体(b−1)と、該熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上し、成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られやすくなる。
【0053】
ブロック共重合体(b−2)1分子が有する反応性官能基の数は、好ましくは0.5〜2の範囲内であることが好ましい。
【0054】
ブロック共重合体(b−1)の数平均分子量は、好ましくは100,000以上(より好ましくは150,000以上)、好ましくは600,000以下(より好ましくは500,000以下)である。好ましい数平均分子量を有するブロック共重合体(b−1)を使用すれば、ブロック共重合体(b−1)に可塑剤(c)および高分子ポリオール(a−1)が良好に含浸し、且つ可塑剤(c)および高分子ポリオール(a−1)がブロック共重合体(b−1)中で良好に保持される。その結果、ブロック共重合体(b−1)と熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上し、成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られやすくなる。
【0055】
ブロック共重合体(b−2)の数平均分子量は、好ましくは10,000以上(より好ましくは30,000以上、さらに好ましくは50,000以上)、好ましくは500,000以下(より好ましくは200,000以下、さらに好ましくは100,000以下)である。好ましい数平均分子量を有するブロック共重合体(b−2)を使用すれば、非粘着性、溶融接着性、耐摩耗性、力学的特性(例えば引張破断強度および引張破断伸度等)、屈曲性等の特性に一層優れる熱可塑性樹脂組成物をより確実に得ることができるようになる。
【0056】
なお本明細書におけるブロック共重合体(b−1)およびブロック共重合体(b−2)の数平均分子量は、標準ポリスチレン換算のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した値である。
【0057】
ブロック共重合体(b−1)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは10g/10分以下、より好ましくは5g/10分以下、さらに好ましくは1g/10分以下である。好ましいMFRを有するブロック共重合体(b−1)には、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が良好に含浸し、且つこれらが良好に保持される。その結果、ブロック共重合体(b−1)と熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上し、成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られやすくなる。
【0058】
ブロック共重合体(b−2)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1g/10分以上(より好ましくは2g/10分以上、さらに好ましくは5g/10分以上)、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは40g/10分以下、さらに好ましくは30g/10分以下である。好ましいMFRを有するブロック共重合体(b−2)を用いた場合、ブロック共重合体(b−2)と有機ジイソシアネート化合物(a−2)等との間で反応が良好に進行するため、熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上し、成形性等に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られやすくなる。
【0059】
なお本明細書におけるブロック共重合体(b−1)およびブロック共重合体(b−2)のメルトフローレート(MFR)は、230℃、2.16kg荷重下の条件で、ASTM D−1238に準拠して測定した値である。
【0060】
〈可塑剤(c)〉
可塑剤(c)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。可塑剤(c)としては、例えば、炭化水素系油(例えば流動パラフィンを含むパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、芳香族系炭化水素油等)、植物油(例えば落花生油、ロジン等)、リン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、シリコーンオイル、並びに可塑化能を有する液状ポリマーおよびその変性物(例えば液状ポリイソプレンまたはその水素添加物、液状ポリブタジエンまたはその水素添加物、液状ポリイソブチレン等)などを挙げることができる。これらの中でもパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、芳香族系炭化水素油等の炭化水素系油が好ましく、パラフィン系炭化水素油がより好ましい。
【0061】
〈ウレタン化反応触媒〉
本発明の製造方法では、必要に応じて、1種または2種以上のウレタン化反応触媒を使用することができる。ウレタン化反応触媒は、例えば、後述する工程(B)、(C)および(D)のうちの少なくとも一つの工程で、溶融混練される他の原料と共に配合するなどして使用することができる。
【0062】
ウレタン化反応触媒としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチルエステル)塩等の有機スズ系化合物;チタン酸;テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンアセチルアセトネート等の有機チタン系化合物;トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン系化合物などが挙げられる。
【0063】
ウレタン化反応触媒を使用する場合、その使用量は、本発明の製造方法で使用される全ての高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)、鎖伸長剤(a−3)、ブロック共重合体(b−1)およびブロック共重合体(b−2)の合計質量に基づいて、好ましくは0.1質量ppm以上(より好ましくは0.5質量ppm以上、さらに好ましくは1質量ppm以上)、好ましくは0.2質量%以下(より好ましくは0.02質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下)である。
【0064】
〈ウレタン化反応触媒の失活剤〉
また、熱可塑性樹脂組成物の製造に際してウレタン化反応触媒を使用する場合、得られた熱可塑性樹脂組成物に対し、1種または2種以上のウレタン化反応触媒の失活剤を添加することが好ましい。前記失活剤としては、例えば、ラウリルホスフェート、オレイルホスフェート、ステアリルホスフェート、ジラウリルホスフェート、ジオレイルホスフェート、ジステアリルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスフェート、フェニルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル等のリン系化合物;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、4,4’−オクチル−2,2’−ビフェノール等のフェノール系化合物などが挙げられる。これらの中でも、リン系化合物が好ましい。
【0065】
失活剤を使用する場合、その使用量は、本発明の製造方法で使用される全ての高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)、鎖伸長剤(a−3)、ブロック共重合体(b−1)およびブロック共重合体(b−2)の合計質量に基づいて、好ましくは1質量ppm以上(より好ましくは5質量ppm以上、さらに好ましくは10質量ppm以上)、好ましくは2質量%以下(より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下)である。
【0066】
失活剤としてリン系化合物を使用する場合、そのリン原子の量が、ウレタン化反応触媒の金属原子1モル当たり、好ましくは0.1モル以上(より好ましくは0.2モル以上、さらに好ましくは0.5モル以上)、好ましくは500モル以下(より好ましくは200モル以下、さらに好ましくは100モル以下)となる量で、リン系化合物を使用することが推奨される。
【0067】
また失活剤としてフェノール系化合物を使用する場合には、そのフェノール性水酸基の量が、ウレタン化反応触媒の金属原子1モル当たり、好ましくは1モル以上(より好ましくは2モル以上、さらに好ましくは5モル以上)、好ましくは5000モル以下(より好ましくは2000モル以下、さらに好ましくは1000モル以下)となる量で、フェノール系化合物を使用することが推奨される。
【0068】
〈その他の添加剤〉
熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、触媒、反応促進剤、補強剤、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐加水分解性向上剤、防かび剤、抗菌剤、安定剤、各種繊維(例えばガラス繊維、ポリエステル繊維等)、無機物(例えばタルク、シリカ等)、各種カップリング剤などのその他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤は、後述する本発明の製造方法の工程のいずれかで他の原料と共に配合することができ、または本発明の製造方法の終了後に、得られた熱可塑性樹脂組成物に添加することもできる。
【0069】
〈熱可塑性樹脂組成物の製造方法〉
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、工程(A)〜(C)を含む第1形態の製造方法と、工程(A)および(D)を含む第2形態の製造方法とを包含する。以下、各工程について順に説明する。
【0070】
〈工程(A)〉
第1形態および第2形態の製造方法における工程(A)では、高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)を混合含浸させて、これらの混合物を得る。なお第2形態の製造方法における工程(A)では、必要に応じてブロック共重合体(b−2)を配合してもよい。
【0071】
工程(A)で使用する高分子ポリオール(a−1):ブロック共重合体(b−1)の質量比は、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは15:85〜60:40、さらに好ましくは50:50〜75:25である。好ましい質量比の範囲内でこれらを使用することによって、高分子ポリオール(a−1)をブロック共重合体(b−1)中により効率的に含浸させることができ、相溶化効果の高い混合物を調製することができる。その結果、その後の工程で生成する熱可塑性ポリウレタンと、ブロック共重合体(b−1)との相溶化が充分に達成され、力学的特性、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0072】
ここで「高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)がブロック共重合体(b−1)中に含浸している」とは、「高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)がブロック共重合体(b−1)中に充分に浸透し、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)単独が液状を呈する温度において、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)による流動性が消失して、液状を呈さない一様な状態になっている」ことをいい、「高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)と、ブロック共重合体(b−1)とが単に混合しただけで、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)単独が液状を呈する温度において、液状の高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)による流動性が残っている」ことや「ブロック共重合体(b−1)が液状の高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)によって濡らされている」ことを含まない。なお本明細書でいう「液状」とは、『危険物の規制に関する規則第69条の2「液状の定義」に準拠して評価した状態』をいう。すなわち、垂直にした試験管(内径30mm、高さ120mmの平底円筒型のガラス製のもの)に、試験管の底からの高さが55mmのところにまで試験サンプルを入れ、該試験管を水平にした場合に、試験管の底からの距離が85mmの部分を該試験サンプルの移動面の先端が通過するまでの時間が90秒以内であるものを「液状」と定義する。高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)がブロック共重合体(b−1)中に含浸していることの確認は、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が室温で液状である場合には、室温条件下に前記の液状確認試験を実施すればよく、また高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が室温で液状でない場合には、液状になる温度条件で前記の液状確認試験を実施すればよい。
【0073】
高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)がブロック共重合体(b−1)中に含浸している場合に、工程(A)の混合物の流動性が消失する理由は明確ではないが、一般的にブロック共重合体がパラフィン系オイル等を吸収する現象と同様であると推測される。即ち高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が、ブロック共重合体(b−1)中のゴム部分(すなわち共役ジエン系重合体ブロックの部分またはそれが水素添加されたブロックの部分)に優先的かつ充分に浸透し、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)が液状を呈する温度で、それが本来有している流動性が消失するものと推測される。
【0074】
本発明の製造方法は、全工程で使用される高分子ポリオール(a−1)のうちの一部を工程(A)で使用することを特徴の一つとし、これによって成形性等に優れる熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。工程(A)における高分子ポリオール(a−1)の使用量は、全工程における高分子ポリオール(a−1)の全使用量に対して、5質量%以上(好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上)、95質量%以下(好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下)である。ここで「全工程」とは、第1形態の製造方法では「工程(A)および(B)」を表し、第2形態の製造方法では「工程(A)および(D)」を表す。
【0075】
本発明の製造方法では、工程(A)で高分子ポリオール(a−1)をブロック共重合体(b−1)中に含浸させることを特徴の一つとする。
なおブロック共重合体(b−1)の一部を、必要に応じて、工程(A)以外の工程{例えば第1形態の製造方法における工程(B)または工程(C)、或いは第2形態の製造方法における工程(D)}で使用してもよい。工程(A)におけるブロック共重合体(b−1)の使用量は、全工程におけるブロック共重合体(b−1)の全使用量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。ここで「全工程」とは、第1形態の製造方法では「工程(A)〜(C)」を表し、第2形態の製造方法では「工程(A)および(D)」を表す。
【0076】
工程(A)における可塑剤(c)の使用量は、工程(A)において使用される高分子ポリオール(a−1)およびブロック共重合体(b−1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上(より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上)、好ましくは200質量部以下(より好ましくは150質量部以下)である。好ましい量で可塑剤(c)を使用すれば、力学的特性、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性、粘着テープなどによる接着性、極性の高い重合体に対する溶融接着性等に優れ、且つJIS A硬度が85以下である熱可塑性樹脂組成物が得られやすい。
【0077】
工程(A)における混合物の調製手段は特に制限されず、例えば、高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)、並びに必要に応じてその他の添加剤を、樹脂材料の混合に通常用いられているような縦型または水平型の混合機を用いて予備混合した後、単軸または二軸の押出機、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の溶融混練装置を用いて、回分式または連続式で一般に150〜250℃で加熱下に溶融混練することで調製することができる。また溶融混練する場合に比べて多少時間はかかるものの、高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)、並びに必要に応じてその他の添加剤を、液状を呈さない含浸混合物が得られるまで非加熱下(例えば室温下)に混合または混練することによって、或いは混合または混練後に静置することによって、工程(A)の混合物を調製してもよい。
【0078】
〈工程(B)〉
第1形態の製造方法の工程(B)では、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)を溶融混練して、これらの反応混合物を得る。工程(B)では、必要に応じてブロック共重合体(b−1)を配合してもよい。
【0079】
工程(B)では、好ましくは、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)を実質的に溶剤の不存在下に溶融混練し、より好ましくは多軸スクリュー型押出機を使用して連続的に溶融混練する。但し工程(B)における溶融混練は、例えば、単軸または二軸の押出機、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の溶融混練装置を用いて行うこともできる。溶融混練の温度は、好ましくは180℃以上(より好ましくは200℃以上)、好ましくは280℃以下(より好ましくは260℃以下)である。
【0080】
第1形態の製造方法では、高分子ポリオール(a−1)の全使用量の一部を工程(A)で使用し、その残りを工程(B)で使用することを特徴の一つとし、これによって高分子ポリオール(a−1)と熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上し、力学的特性、屈曲性等の特性に一層優れる熱可塑性樹脂組成物をより確実に得ることができるようになる。
【0081】
〈工程(C)〉
第1形態の製造方法における工程(C)では、前記工程(A)の混合物、前記工程(B)の反応混合物およびブロック共重合体(b−2)を溶融混練する。
【0082】
第1形態の製造方法は、工程(C)においてブロック共重合体(b−2)を使用することも特徴の一つとする。これによって、ブロック共重合体(b−1)と生成した熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上しやすくなり、非粘着性、溶融接着性、耐摩耗性、力学的特性(例えば引張破断強度および引張破断伸度等)、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に一層優れる熱可塑性樹脂組成物をより確実に得ることができるようになる。
【0083】
工程(C)では、(1)高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)によるポリウレタン形成反応、並びに(2)これらの各原料および/または形成されたポリウレタンと反応性官能基を有するブロック共重合体(b−2)との反応が進行し得る。そのため第1形態の製造方法で得られる熱可塑性樹脂組成物は、(1)高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)から形成される熱可塑性ポリウレタン;および(2)前記熱可塑性ポリウレタンに由来する重合体ブロックとブロック共重合体(b−2)に由来する重合体ブロックとが結合したブロック共重合体;などを含み得る。
【0084】
工程(C)の溶融混練手段に特に制限はなく、例えば、工程(B)で例示した手段を採用することができる。工程(C)における溶融混練の順序は、まず前記工程(A)の混合物と前記ブロック共重合体(b−2)とを溶融混練して混合物を得て、次いで前記混合物と前記工程(B)の反応混合物とを溶融混練することが好ましい。
【0085】
〈工程(D)〉
第2形態の製造方法における工程(D)では、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)、鎖伸長剤(a−3)およびブロック共重合体(b−2)を溶融混練する。工程(D)では、必要に応じてブロック共重合体(b−1)を配合してもよい。このように第2形態の製造方法では、高分子ポリオール(a−1)の全使用量の一部を工程(A)で使用し、その残りを工程(D)で使用することを特徴の一つとする。
【0086】
また第2形態の製造方法は、工程(D)においてブロック共重合体(b−2)を使用することも特徴の一つとする。これによってブロック共重合体(b−1)と生成した熱可塑性ポリウレタンとの相容性がより一層向上しやすくなり、非粘着性、溶融接着性、耐摩耗性、力学的特性(例えば引張破断強度および引張破断伸度等)、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に一層優れる熱可塑性樹脂組成物をより確実に得ることができるようになる。
【0087】
工程(D)では、好ましくは上記の原料を実質的に溶剤の不存在下に溶融混練し、より好ましくは多軸スクリュー型押出機を使用して連続的に溶融混練する。但し工程(D)における溶融混練は、例えば、単軸または二軸の押出機、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の溶融混練装置を用いて行うこともできる。溶融混練の温度は、好ましくは180℃以上(より好ましくは200℃以上)、好ましくは280℃以下(より好ましくは260℃以下)である。
【0088】
工程(D)におけるブロック共重合体(b−2)の使用量は、工程(A)および(D)におけるブロック共重合体(b−2)の全使用量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0089】
第2形態の製造方法における工程(D)では、第1形態の製造方法における工程(C)と同様の反応が進行し得る。そのため第2形態の製造方法で得られる熱可塑性樹脂組成物は、第1形態のものと同様に、(1)高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)から形成される熱可塑性ポリウレタン、および(2)前記熱可塑性ポリウレタンに由来する重合体ブロックと、ブロック共重合体(b−2)に由来する重合体ブロックとが結合したブロック共重合体などを含み得る。
【0090】
〈本発明の製造方法における各原料の使用比率〉
以下、本発明の製造方法(第1および第2形態の製造方法)における各原料の好ましい使用比率を説明する。使用比率の説明におけるW1〜W4は、以下の意味を有する。
W1:高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)の合計質量。
W2:ブロック共重合体(b−2)の質量。
W3:ブロック共重合体(b−1)の質量。
W4:可塑剤(c)の質量。
【0091】
上記W1に対する有機ジイソシアネート化合物(a−2)が有するイソシアネート基に由来する窒素原子の質量割合(窒素原子の質量×100/W1)は、好ましくは1.8質量%以上(より好ましくは2.2質量%以上、さらに好ましくは2.4質量%以上)、好ましくは5.0質量%以下(より好ましくは4.8質量%以下、さらに好ましくは4.6質量%以下)である。窒素原子の質量割合が好ましい範囲となるように有機ジイソシアネート化合物(a−2)等の使用比率を調整することによって、力学的特性、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0092】
上記W1とW2との比率(W1/W2)は、好ましくは100/15以上(より好ましくは100/12以上、さらに好ましくは100/10以上)、好ましくは100/2以下(より好ましくは100/3以下、さらに好ましくは100/4以下)である。好ましいW1/W2となるように、高分子ポリオール(a−1)等の使用比率を調整することによって、力学的特性、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0093】
{高分子ポリオール(a−1)、鎖伸長剤(a−3)およびブロック共重合体(b−2)中に含まれる活性水素原子の総モル数}:{有機ジイソシアネート化合物(a−2)中に含まれるイソシアネート基のモル数}の比率は、好ましくは1:0.9〜1:1.3、より好ましくは1:0.95〜1:1.10である。前記比率が好ましい範囲内になるように、高分子ポリオール(a−1)等の使用比率を調整することによって、力学的特性、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0094】
上記W1〜W3について、W3/(W1+W2+W3)の関係は、好ましくは5/100以上(より好ましくは10/100以上、さらに好ましくは15/100以上、特に好ましくは20/100以上)、好ましくは60/100以下(より好ましくは40/100以下)である。好ましいW3/(W1+W2+W3)となるように、高分子ポリオール(a−1)等の使用比率を調整することによって、力学的特性、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0095】
上記W3とW4との比率(W3/W4)は、好ましくは40/60以上(より好ましくは50/50以上)、好ましくは80/20以下(より好ましくは70/30以下、さらに好ましくは60/40以下)である。好ましいW3/W4となるように、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)の使用比率を調整することによって、力学的特性、屈曲性、低残留歪み性、柔軟性等の特性に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0096】
上記W1、W2、W3およびW4の合計{即ち高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)、鎖伸長剤(a−3)、ブロック共重合体(b−1)、ブロック共重合体(b−2)および可塑剤(c)の合計質量}は、熱可塑性樹脂組成物中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは実質的に100質量%である。
【0097】
〈好ましい実施形態〉
本発明の製造方法は、押出機を用いて実施することが好ましい。まず第1形態の製造方法では、上流部供給口、およびこれよりも下流側にある中流部供給口を有する押出機を用い;前記上流部供給口から高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を押出機に連続的に供給することによって、前記上流部供給口から前記中流部供給口までの間で、これらの反応混合物を得る工程(B)を行い;前記中流部供給口から、さらに前記工程(A)の混合物および前記ブロック共重合体(b−2)を押出機に連続的に供給することによって、前記中流部供給口よりも下流側で、前記工程(A)の混合物、前記工程(B)の反応混合物および前記ブロック共重合体(b−2)を溶融混練する工程(C)を行うことが好ましい。この好ましい第1形態の製造方法における工程(A)は、上述した手段によって行うことができる。
【0098】
次に第2形態の製造方法では、押出機の供給口に、前記工程(A)の混合物、前記高分子ポリオール(a−1)、前記有機ジイソシアネート化合物(a−2)、前記鎖伸長剤(a−3)および前記ブロック共重合体(b−2)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を連続的に供給することによって、これらを溶融混練する工程(D)を行うことが好ましい。この好ましい第2形態の製造方法における工程(A)は、上述した手段によって行うことができる。
【0099】
〈熱可塑性樹脂組成物〉
本発明の製造方法により得られる熱可塑性樹脂組成物(以下「本発明の熱可塑性樹脂組成物」と略称することがある)のJIS A硬度は、好ましくは98以下である。熱可塑性樹脂重合体組成物のJIS A硬度がこれよりも高いと、溶融成形性が不充分となり、成形体の製造が円滑に行われにくくなる。
【0100】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるポリウレタン成分の対数粘度(ηinh)は、好ましくは0.5dl/g以上(より好ましくは0.7dl/g以上、さらに好ましくは0.9dl/g以上、特に好ましくは1.0dl/g以上)、好ましくは2.2以下(より好ましくは2.0dl/g以下、さらに好ましくは1.8dl/g以下、特に好ましくは1.6dl/g以下)である。ポリウレタン成分の対数粘度が0.5dl/g以上であると、組成物の溶融成形性や、得られる成形体の耐摩耗性、力学的特性等が向上する。しかしこの対数粘度が2.2dl/gを超えると、組成物の流動性が低下し、溶融成形性が悪化する場合がある。なお本明細書でいうポリウレタン成分の対数粘度は、以下の実施例において記載する方法で測定した値を意味する。
【0101】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、好ましくは100Pa・s以上(より好ましくは200Pa・s以上、さらに好ましくは300Pa・s以上)、好ましくは6,000Pa・s以下(より好ましくは5,000Pa・s以下、さらに好ましくは4,000Pa・s以下)である。なお本明細書でいう熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、以下の実施例において記載する方法で測定した値を意味する。
【0102】
〈成形体〉
本発明の熱可塑性樹脂組成物をそのまま成形して、各種成形体を製造することができる。また本発明の熱可塑性樹脂組成物を一旦ペレットにした後に、このペレットを成形することによって、各種成形体を製造することができる。
【0103】
成形体を製造するための成形法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、カレンダー成形、プレス成形、注型等が挙げられる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、複雑な形状を有する金型を用いた射出成形により成形体を製造する際に、(1)金型転写性や金型からの成形体の離型が良好であり;且つ(2)金型内での樹脂の流れ斑による成形体表面の不良(気泡や流れ模様の発生)が防止され、成形体同士の膠着がないため;高品質の成形体を生産性よく製造することができる。また本発明の熱可塑性樹脂組成物は、押出成形等によってフィルムやシートを製造する際に、(1)離型剤や離型紙(離型シート)等を用いることなく単独で巻き取ることが可能であり;且つ(2)巻き取ったフィルムやシートは巻き返しが可能であるため;手間がかからず生産性が高く、且つコスト的に有利に、より薄いフィルムやシートを効率よく製造することができる。このフィルムの厚さは、例えば50〜200μmが好ましく(さらに好ましくは50〜150μm)、このシートの厚さは、例えば2000mm〜4000mmであることが好ましい。
【0104】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形、押出成形、その他の成形法によって成形して得られる各種成形体(例えばシート、フィルム等)は、非粘着性で、耐摩耗性、力学的特性(例えば引張破断強度および引張破断伸度等)、屈曲性、耐油性、耐水性、弾性回復性等にも優れ、残留歪みが小さく、適度な柔軟性を有している。さらにこれら各種成形体は、平滑な表面を有し、その表面状態も良好である。これらの特性を活かして、各種成形体を、例えば、コンベアベルト、各種キーボード、ラミネート品、各種容器用のフィルムやシート、ホース、チューブ、自動車部品、機械部品、靴底、時計バンド、パッキング材、制振材等の各種用途に使用することができる。
【0105】
〈複合成形体〉
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した特性に加えて、極性の高い樹脂に対して優れた溶融接着性を有する。そのため本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種の複合成形体の製造に極めて有効である。従って本発明は、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる部材(以下「部材(A)」と略称することがある)と、他の熱可塑性樹脂組成物からなる部材(以下「部材(B)」と略称することがある)とが接着してなる複合成形体も提供する。
【0106】
上記部材(B)中に含まれる他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(「ナイロン」ともいう);ポリカーボネート;アクリル系樹脂;ポリエステル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ塩化ビニル;ポリオキシメチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物;芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエンおよびオレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体;ポリウレタン;などが挙げられる。これらの中でも、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエンおよびオレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体、ポリアミド、ポリカーボネ−ト、アクリル系樹脂が好ましく、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物、共役ジエンおよびオレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体、ポリアミド、ポリカーボネートがより好ましい。
【0107】
上記(B)を構成する他の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物のみでもよく、また1種または2種以上の他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば熱安定剤(例えば、金属セッケン、リン化合物、硫黄化合物、フェノール系化合物、L−アスコルビン酸類、エポキシ化合物等)、光安定剤、可塑剤(例えば、脂肪族ジカルボン酸エステル、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエステル系化合物、リン酸エステル等)、無機微粉末、滑剤(有機滑剤等)、分散剤、染顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。他の熱可塑性樹脂の含有量は、他の熱可塑性樹脂組成物中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量である。
【0108】
本発明の複合成形体の構成としては、例えば、一つの部材(A)と一つの部材(B)とを有する複合成形体;二つの部材(B)の間に部材(A)が介在する複合成形体;二つの部材(A)の間に部材(B)が介在する複合成形体;部材(A)と部材(B)とが交互に接触した複合成形体;などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。また部材(A)および(B)の一方または両方が、層状であってもよい。本発明の複合成形体は、好ましくは、層状部材(A)と層状部材(B)とが積層した積層成形体である。積層成形体の構成としては、例えば、一つの層状部材(A)と一つの層状部材(B)とを有する2層成形体;二つの層状部材(B)の間に層状部材(A)が中間層として存在する3層成形体;二つの層状部材(A)の間に層状部材(B)が中間層として存在する3層成形体;層状部材(A)と層状部材(B)とが交互に4層以上に積層した多層成形体;などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0109】
層状部材(A)と層状部材(B)とが積層した積層成形体において、各層の厚さは特に制限されず、積層成形体の用途等において調整することができる。積層成形体の製造の容易性、層間接着力等の観点から、一枚の層状部材(A)の厚さは、好ましくは1μm以上10mm以下(より好ましくは5mm以下)であり、一枚の層状部材(B)の厚さは、好ましくは10μm以上10mm以下(より好ましくは5mm以下)である。
【0110】
本発明の複合成形体の製造方法は特に制限されず、例えば、部材(B)を本発明の熱可塑性樹脂組成物で溶融被覆する方法;二つ以上の部材(B)の間に本発明の熱可塑性樹脂組成物を溶融下に導入して接着・一体化させる方法;部材(B)を金型内に配置(インサート)した状態で、本発明の熱可塑性樹脂組成物を溶融下に金型内に充填して接着・一体化させる方法;本発明の熱可塑性樹脂組成物{部材(A)の原料}と他の熱可塑性樹脂組成物{部材(B)の原料}とを共押出成形して接着・一体化させる方法;部材(A)と部材(B)とをプレスする方法;部材(A)と部材(B)とを接着剤を用いて接着・一体化させる方法などを挙げることができる。これらの方法で用いる部材(A)および(B)は、それぞれ、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形体を製造する方法と同様の方法によって成形することができる。
【0111】
本発明の複合成形体は、部材(A)や部材(B)の性質に応じて、種々の用途に使用することができる。複合成形体の用途としては、例えば、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル、エアバックカバー等の自動車内装部品;モール等の自動車外装部品;掃除機バンパー、冷蔵庫戸当たり、カメラグリップ、電動工具グリップ、リモコンスイッチ、OA機器の各種キートップ、ハウジング等の家電部品;水中眼鏡等のスポーツ用品;各種カバー;耐摩耗性、密閉性、防音性、防振性等を目的とした各種パッキン付き工業部品;カールコード電線被覆;ベルト;ホース;チューブ;消音ギア;各種電気・電子部品;などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではない。
【0113】
《測定または評価方法》
以下の実施例等において、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度および、当該組成物に含まれるポリウレタン成分の対数粘度、熱可塑性樹脂組成物の射出成形性(金型からの離型状態および成形体の表面状態)および押出成形性(フィルムの製造状態および表面状態)、並びに熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の耐ブロッキング性、硬度、屈曲性、引張破断強度および耐摩耗性、並びに積層成形体における接着強度を、以下の方法によって測定または評価した。
【0114】
(1)溶融粘度
高化式フローテスター(島津製作所製)を使用して、80℃で2時間減圧乾燥(10Torr{1.3×103Pa}以下)した熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を、荷重490.3N(50kgf)、ノズル寸法=直径1mm×長さ10mm、温度200℃の条件下で測定した。
【0115】
(2)対数粘度
熱可塑性ポリウレタン組成物1g当たり200mlのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加えて、室温で24時間撹拌した後、濾過分別してDMF溶液を回収した。不溶部分はさらにDMFを加えて1時間撹拌して濾過分別を行い、この操作を3回繰り返して、回収した濾液を一緒にした。濾液からDMFを留去した後、室温で24時間真空乾燥し、得られた熱可塑性ポリウレタン成分の質量を測定して、熱可塑性ポリウレタン組成物に含まれている熱可塑性ポリウレタン成分のほぼ100%が抽出されていることを確認した。なお熱可塑性ポリウレタン成分のほぼ100%が抽出されていない場合は、「非抽出部分」は「熱可塑性ポリウレタンとブロック共重合体(b−2)との反応物」と判断し、この「非抽出部分」を対数粘度の測定対象から除外した。抽出された熱可塑性ポリウレタン成分を、その濃度が0.5g/dlになるようにDMFに溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて、そのポリウレタン溶液の30℃における流下時間を測定し、下記式によって熱可塑性ポリウレタン成分の対数粘度(ηinh)を求めた。
熱可塑性ポリウレタン成分の対数粘度(ηinh)=[ln(t/t0)]/c
[式中、tは熱可塑性ポリウレタン成分溶液の流下時間(秒)、t0は溶媒(DMF)の流下時間(秒)、およびcは熱可塑性ポリウレタン成分溶液の濃度(g/dl)を表す。]
【0116】
(3)射出成形性
表面を鏡面仕上げした金型を用いて、熱可塑性樹脂組成物を射出成形(シリンダー温度180〜205℃、金型温度35℃)して円板成形体(直径120mm、厚さ2mm)を成形した際の、成形体の金型からの離型状態および成形体の表面状態を観察し、下記基準によって評価した。
[射出成形性の評価基準]
○:成形体が金型から容易に離型し、得られる成形体の表面も平滑である。
△:成形体と金型との密着性が高くて離型に手間がかかり、得られる成形体の表面が若干変形している。
×:成形体と金型との密着性が著しく高くて離型に極めて手間がかかり、得られる成形体の表面に凹凸が発生している。
【0117】
(4)押出成形性
熱可塑性樹脂組成物をT−ダイ型押出成形機(25mmφ、シリンダー温度180〜200℃、ダイス温度200℃)から30℃の冷却ロール上に押し出し、冷却して形成したフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。その巻き取り最中にフィルムの製造状態を観察すると共に、巻き取ったフィルムの表面状態を観察し、下記基準によって評価した。
[押出成形性の評価基準]
○:押出したフィルムに裂けなどの不良現象が生じておらず、平滑な表面を有し、且つ正常に巻き取りが可能である。
△:押出したフィルムに裂けなどの不良現象が多少生じたが、巻き取りが可能である。
×:押出したフィルムに裂けなどの不良減少が生じ、フィルム表面に分散不良などのために凹凸があり、且つ巻き取りが不可能である。
【0118】
(5)耐ブロッキング性
熱可塑性樹脂組成物をT−ダイ型押出成形機(25mmφ、シリンダー温度180〜200℃、ダイス温度200℃)から30℃の冷却ロール上に押し出し、冷却して形成したフィルムを、離型紙を用いずに約2.5m/分の巻き取り速度で巻き取った。その巻き取ったフィルムを室温で24時間放置した後、手で巻き返し、そのときの抵抗を下記基準によって評価した。
[耐ブロッキング性の評価基準]
○:巻き返しが円滑に実施可能。
△:かなりの引張力を要したが、巻き返しが可能。
×:膠着が大きく、巻き返しが不可能。
【0119】
(6)硬度
上記(3)射出成形性の場合と同じ操作を行って円板状成形体(直径120mm、厚さ2mm)を製造し、これを2枚重ね合わせたものを用いて、JIS K−6301に準じて成形体のJIS A硬度を測定した。
【0120】
(7)屈曲性
上記(3)射出成形性の場合と同じ操作を行って円板状成形体(直径120mm、厚さ2mm)を製造し、得られた成形体を25℃で2日間放置した後、180度折り曲げて、その折り曲げ部分を肉眼で観察し、そのときの状態を下記基準によって評価した。
[屈曲性の評価基準]
○:変化がなく、屈曲性が良好。
△:屈曲部に若干白化現象が見られる。
×:表面剥離および/または内部剥離が見られる。
【0121】
(8)引張破断強度
上記(3)射出成形性の場合と同じ操作を行って円板状成形体(直径120mm、厚さ2mm)を製造し、得られた成形体を25℃で2日間放置した後、ダンベル3号形に打ち抜いて試験片を作製し、インストロン社「インストロン5566」を使用して、JIS K−7311に準じて成形体の引張破断強度を測定した。
【0122】
(9)耐摩耗性
上記(3)射出成形性の場合と同じ操作を行って円板状成形体(直径120mm、厚さ2mm)を製造し、得られた成形体を25℃で2日間放置した後、テーバー摩耗試験機(荷重1kg、摩耗輪H−22)を使用して、JIS K−7311に準じて成形体の摩耗量を測定した。
【0123】
(10)積層成形体における接着強度
実施例等で製造した熱可塑性樹脂組成物を中間層(接着層)とする3層成形体から試験片(11mm×100mm)を切り出し、各表面層と接着層(熱可塑性樹脂組成物からなる中間層)との間の界面接着強度を、島津製作所製「オートグラフ測定装置IS−500D」を使用して、室温下、引張速度300mm/分の条件で180度剥離試験によって求めた。
【0124】
《使用した原料》
以下の実施例等で使用した原料に関する略号およびその内容を以下に示す。
【0125】
(1)高分子ポリオール(a−1)
POH−1:3−メチル−1,5−ペンタンジオールおよびアジピン酸を反応させて製造したポリエステルジオール(1分子当たりの水酸基数:2.00、数平均分子量:3,500、20℃で液状、80℃での粘度:1.2Pa・s)
POH−2:3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパンおよびアジピン酸を反応させて製造したポリエステルポリオール(1分子当たりの水酸基数:3.00、数平均分子量:3,000、20℃で液状、80℃での粘度:1.5Pa・s)
POH−3:ポリテトラメチレングリコール(1分子当たりの水酸基数:2.00、数平均分子量:1,000、融点19℃、80℃での粘度:0.5Pa・s)
POH−4:エチレングリコール、プロピレングリコールおよびアジピン酸を反応させて製造したポリエステルジオール(1分子当たりの水酸基数:2.00、数平均分子量:2,000、融点51℃、80℃での粘度:0.4Pa・s)
【0126】
(2)有機ジイソシアネート化合物(a−2)
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0127】
(3)鎖伸長剤(a−3)
BD:1,4−ブタンジオール
【0128】
(4)ブロック共重合体(b−1)
TPS−1:ポリスチレンブロック−ポリイソプレン・ブタジエンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物[スチレン含量:30質量%、数平均分子量:400,000、ポリイソプレン・ブタジエンブロックにおける水素添加率:98%以上、MFR(230℃、2.16kg荷重):流動せず]
TPS−2:ポリスチレンブロック−ブタジエン・エチレンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物[スチレン含量:35質量%、数平均分子量:200,000、ポリブタジエン・エチレンブロックにおける水素添加率:98%以上、MFR(230℃、2.16kg荷重):流動せず]
【0129】
(5)ブロック共重合体(b−2)
SEEPS:片末端水酸基変性型ポリスチレンブロック−ポリイソプレン・ブタジエンブロック−ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体の水素添加物(片末端水酸基変性型SEEPS、株式会社クラレ製「HG−252」)[数平均分子量:54,000、MFR(230℃、2.16kg荷重):26g/10分]
【0130】
(6)可塑剤(c)
PL−1:パラフィン系オイル[パラフィン/ナフテン=70/30(質量比)混合物、動粘性率:4×10-42/秒(40℃)]。
【0131】
(7)積層用樹脂
PC:ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製「ユーピロンS−1000」)
ABS:アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)(日本合成ゴム株式会社製「JSR ABS12」)
NY−6:ナイロン6(宇部興産株式会社製「UBEナイロン1013B」)
PMMA:ポリメチルメタクリレート(株式会社クラレ製「パラペットEB」)
【0132】
《参考例1〜13》
[工程(A):高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)の混合物の調製]
下記表1に示す種類および量の高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)を配合し、シグマ形回転羽根付撹拌槽に入れて、室温下(25℃)で120分間混合して、混合物を調製した。
【0133】
この参考例1〜13で得られた混合物CPD−1〜6およびCPD−8〜12は、いずれも、高分子ポリオール(a−1)および可塑剤(c)がブロック共重合体(b−1)中に充分に含浸していて、高分子ポリオールおよび可塑剤(c)が呈する液状は消失していた。
【0134】
【表1】

【0135】
《実施例1〜3および比較例1〜3》
[熱可塑性樹脂組成物、射出成形体、押出成形体および積層成形体の製造]
工程(A)として、上記参考例1〜3および7の組成に基づき、混合物CPD1〜CPD3およびCPD7を調製した。次に工程(B)として、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)(MDI)および鎖伸長剤(a−3)(BD)を下記表2に示した質量比率になるように配合し、且つこれらの合計供給量が200g/分となるように同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36)の上流部供給口に連続的に供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を行った。これと共に押出機の中流部の供給口から前記工程(A)の混合物およびブロック共重合体(b−2)を下記表2に示した質量比率になるように供給し、前記中流部供給口よりも下流側で工程(C)を行って、熱可塑性樹脂組成物を製造した。生成した熱可塑性樹脂組成物の溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを80℃で4時間除湿乾燥した。得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を表2に示す。
【0136】
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、《測定または評価方法》で記載した成形法によって射出成形体および押出成形体を製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物の射出成形性、並びに射出成形体の屈曲性、硬度、引張破断強度および耐摩耗性;並びに押出成形性および押出成形体の耐ブロッキング性を表2に示す。
【0137】
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、プレス成形機を使用して、200℃で60秒予熱した後、49.0×104Pa(Gauge)(5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持してプレス成形を行って、厚さ500μmの熱可塑性樹脂組成物シートを製造した。次いでNY−6およびPMMAを用い、プレス成形機を使用して、220℃で40秒予熱した後、49.0×104Pa(Gauge)(5kgf/cm2)の加圧下に20秒保持してプレス成形を行って、厚さ1.5mmのNY−6シートおよび厚さ1.5mmのPMMAシートをそれぞれ製造した。次いで前記の熱可塑性樹脂組成物シートを中間層とし、前記のNY−6シートおよびPMMAシートを表面層として重ね合わせて、プレス成形機を使用して、220℃で40秒予熱した後、4.9×104Pa(Gauge)(0.5kgf/cm2)の加圧下に20秒保持し、加熱加圧下に接着・一体化して、NY−6層/熱可塑性樹脂組成物層/PMMA層からなる積層成形体を製造した。この積層成形体の熱可塑性樹脂組成物層とNY−6層との接着強度を表2に示す。
【0138】
【表2】

【0139】
表2に示されるように、高分子ポリオール(a−1)を工程(A)および(B)の両方で使用する実施例1〜3の熱可塑性樹脂組成物は、高分子ポリオール(a−1)を工程(B)でのみ使用する比較例1〜3の熱可塑性樹脂組成物に比べて、射出成形性、引張破断強度、耐摩耗性、押出成形性およびナイロン層との接着強度に優れている。また実施例1〜3の熱可塑性樹脂組成物は、比較例1〜3の熱可塑性樹脂組成物に比べて、屈曲性が同等以上である。なお実施例1〜3の積層成形体では、PMMA層と熱可塑性樹脂組成物層との間の接着力が強固で、180度剥離試験中に基材破壊を起こした。
【0140】
《実施例4〜6および比較例4〜6》
[熱可塑性樹脂組成物、射出成形体、押出成形体および積層成形体の製造]
工程(A)として、上記参考例4〜6および7の組成に基づき、混合物CPD4〜CPD6およびCPD7を調製した。次に工程(D)として、前記工程(A)の混合物、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)(MDI)、鎖伸長剤(a−3)(BD)およびブロック共重合体(b−2)を、下記表3に示した質量比率になるように配合し、且つこれらの合計供給量が200g/分となるように同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36)に連続的に供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を行って、熱可塑性樹脂組成物を製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを80℃で4時間除湿乾燥した。得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を表3に示す。
【0141】
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、《測定または評価方法》で記載した成形法によって射出成形体および押出成形体を製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物の射出成形性、並びに射出成形体の屈曲性、硬度、引張破断強度および耐摩耗性;並びに押出成形性および押出成形体の耐ブロッキング性を表3に示す。
【0142】
実施例1等と同様にして、NY−6層/熱可塑性樹脂組成物層/PMMA層からなる積層成形体を製造した。この積層成形体の熱可塑性樹脂組成物層とNY−6層との接着強度を表3に示す。
【0143】
【表3】

【0144】
表3に示されるように、高分子ポリオール(a−1)を工程(A)および(D)の両方で使用する実施例4〜6の熱可塑性樹脂組成物は、高分子ポリオール(a−1)を工程(D)でのみ使用する比較例4〜6の熱可塑性樹脂組成物に比べて、射出成形性、耐摩耗性、押出成形性およびナイロン層との接着強度に優れている。また実施例4〜6の熱可塑性樹脂組成物は、比較例4〜6の熱可塑性樹脂組成物に比べて、屈曲性、引張破断強度、耐ブロッキング性が同等以上である。
【0145】
《実施例7〜9および比較例7及び8》
[熱可塑性樹脂組成物、射出成形体および積層成形体の製造]
工程(A)として、上記参考例8〜10および13の組成に基づき、混合物CPD8〜CPD10およびCPD13を調製した。次に工程(B)として、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)(MDI)および鎖伸長剤(a−3)(BD)を下記表4に示した質量比率になるように配合し、且つこれらの合計供給量が200g/分となるように同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36)の上流部供給口に連続的に供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を行った。これと共に押出機中流部の供給口から前記工程(A)の混合物およびブロック共重合体(b−2)を供給し、前記中流部供給口よりも下流側で工程(C)を行って、熱可塑性樹脂組成物を製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを80℃で4時間除湿乾燥した。得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を表4に示す。
【0146】
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、《測定または評価方法》で記載した成形法によって射出成形体を製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物の射出成形性および射出成形体の硬度を表4に示す。
【0147】
実施例1等と同様にして、NY−6層/熱可塑性樹脂組成物層/PMMA層からなる積層成形体を製造した。この積層成形体の熱可塑性樹脂組成物層とNY−6層との接着強度を表4に示す。
【0148】
【表4】

【0149】
表4に示されるように、高分子ポリオール(a−1)を工程(A)および(B)の両方で使用する実施例7〜9の熱可塑性樹脂組成物は、高分子ポリオール(a−1)を工程(B)でのみ使用する比較例7〜9の熱可塑性樹脂組成物に比べて、射出成形性およびナイロン層との接着強度に優れている。
【0150】
《実施例10〜12、並びに比較例9および10》
[熱可塑性樹脂組成物、射出成形体および積層成形体の製造]
工程(A)として、上記参考例11、12および8の組成に基づき、混合物CPD11、12、およびCPD8を調製した。次に工程(D)として、前記工程(A)の混合物、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)(MDI)、鎖伸長剤(a−3)(BD)およびブロック共重合体(b−2)を、下記表5に示した質量比率になるように配合し、且つこれらの合計供給量が200g/分となるように同軸方向に回転する二軸スクリュー型押出機(30mmφ、L/D=36)に連続的に供給して、260℃の連続溶融重合でポリウレタン形成反応を行って、熱可塑性樹脂組成物を製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融物をストランド状で水中に連続的に押し出し、次いでペレタイザーで切断し、このペレットを80℃で4時間除湿乾燥した。得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を表5に示す。
【0151】
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、《測定または評価方法》で記載した成形法によって射出成形体を製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物の射出成形性および射出成形体の硬度を表5に示す。
【0152】
実施例1等と同様にして、NY−6層/熱可塑性樹脂組成物層/PMMA層からなる積層成形体を製造した。この積層成形体の熱可塑性樹脂組成物層とNY−6層との接着強度を表5に示す。
【0153】
【表5】

【0154】
表5に示されるように、高分子ポリオール(a−1)を工程(A)および(D)の両方で使用する実施例10〜12の熱可塑性樹脂組成物は、高分子ポリオール(a−1)を工程(D)でのみ使用する比較例9および10の熱可塑性樹脂組成物に比べて、射出成形性およびナイロン層との接着強度に優れている。
【0155】
《実施例13》
[PC層/熱可塑性樹脂組成物層/ABS層からなる積層成形体の製造]
実施例2で得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、プレス成形機を使用して、200℃で60秒予熱した後、49.0×104Pa(Gauge)(5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持してプレス成形を行って、厚さ500μmの熱可塑性樹脂組成物シートを製造した。次いでPCおよびABSを用い、プレス成形機を使用して、210℃で60秒予熱した後、49.0×104Pa(Gauge)(5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持してプレス成形を行って、厚さ1.5mmのPCシートおよび厚さ1.5mmのABSシートをそれぞれ製造した。次いで前記の熱可塑性樹脂組成物シートを中間層とし、前記のPCシートおよびABSシートを表面層として重ね合わせて、プレス成形機を使用して、210℃で90秒予熱した後、4.9×104Pa(Gauge)(0.5kgf/cm2)の加圧下に30秒保持し、加熱加圧下に接着・一体化して、積層成形体を製造した。
【0156】
得られた積層成形体のPC層と熱可塑性樹脂組成物層との間の接着強度は4.0kgf/11mmであり、ABS層と熱可塑性樹脂組成物層との間の接着強度は3.3kgf/11mmであり、いずれも高い値を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)を混合含浸させて、これらの混合物を得る工程(A)と、
高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を溶融混練して、これらの反応混合物を得る工程(B)と、
前記工程(A)の混合物、前記工程(B)の反応混合物およびブロック共重合体(b−2)を溶融混練する工程(C)とを含み、
前記ブロック共重合体(b−1)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなり、且つ高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基を有しない付加重合系ブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体(b−2)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなり、且つ高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基を有する付加重合系ブロック共重合体であり、
前記工程(A)における高分子ポリオール(a−1)の使用量が、工程(A)および(B)における高分子ポリオール(a−1)の全使用量に対して、5〜95質量%である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(C)において、まず前記工程(A)の混合物と前記ブロック共重合体(b−2)とを溶融混練して混合物を得て、次いで前記混合物と前記工程(B)の反応混合物とを溶融混練する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)におけるブロック共重合体(b−1)の使用量が、前記工程(A)〜(C)におけるブロック共重合体(b−1)の全使用量に対して、50〜100質量%である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上流部供給口、およびこれよりも下流側にある中流部供給口を有する押出機を用い、
前記上流部供給口から高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を押出機に連続的に供給することによって、前記上流部供給口から前記中流部供給口までの間で、これらの反応混合物を得る工程(B)を行い、
前記中流部供給口から、さらに前記工程(A)の混合物および前記ブロック共重合体(b−2)を押出機に連続的に供給することによって、前記中流部供給口よりも下流側で、前記工程(A)の混合物、前記工程(B)の反応混合物および前記ブロック共重合体(b−2)を溶融混練する工程(C)を行う、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
高分子ポリオール(a−1)、ブロック共重合体(b−1)および可塑剤(c)、および必要に応じてブロック共重合体(b−2)を混合含浸させて、これらの混合物を得る工程(A)と、
前記工程(A)の混合物、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)、鎖伸長剤(a−3)およびブロック共重合体(b−2)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を溶融混練する工程(D)とを含み、
前記ブロック共重合体(b−1)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなり、且つ高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基を有しない付加重合系ブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体(b−2)は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物からなり、且つ高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基を有する付加重合系ブロック共重合体であり、
前記工程(A)における高分子ポリオール(a−1)の使用量が、工程(A)および(D)における高分子ポリオール(a−1)の全使用量に対して、5〜95質量%である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)におけるブロック共重合体(b−1)の使用量が、前記工程(A)および(D)におけるブロック共重合体(b−1)の全使用量に対して、50〜100質量%である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
押出機の供給口に、前記工程(A)の混合物、前記高分子ポリオール(a−1)、前記有機ジイソシアネート化合物(a−2)、前記鎖伸長剤(a−3)および前記ブロック共重合体(b−2)、および必要に応じてブロック共重合体(b−1)を連続的に供給することによって、これらを溶融混練する工程(D)を行う請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
以下のW1とW2との比率が、W1/W2=100/15〜100/2である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
W1:高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)の合計質量。
W2:ブロック共重合体(b−2)の質量。
【請求項9】
以下のW1、W2およびW3の関係が、W3/(W1+W2+W3)=5/100〜60/100である請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
W1:高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)の合計質量。
W2:ブロック共重合体(b−2)の質量。
W3:ブロック共重合体(b−1)の質量。
【請求項10】
ブロック共重合体(b−2)において、高分子ポリオール(a−1)、有機ジイソシアネート化合物(a−2)および鎖伸長剤(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して反応性のある官能基が、水酸基である請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
可塑剤(c)が、炭化水素系油、植物油、リン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、シリコーンオイル、並びに可塑化能を有する液状ポリマーおよびその変性物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法によって得られる熱可塑性樹脂組成物からなる部材と、他の熱可塑性樹脂組成物からなる部材とが接着してなる複合成形体。

【公開番号】特開2011−190312(P2011−190312A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55954(P2010−55954)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】