説明

熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物並びに光学素子

【課題】透明性の向上とともに、温度による屈折率の変化率の低減及び屈折率の向上を図る。
【解決手段】水若しくはアルコール又はそれらの混合液中に無機微粒子を分散させ、得られた無機微粒子分散溶液にシラン系の表面処理剤を添加し反応させることによって表面処理を施した後、その表面処理後の無機微粒子をSP値が10以下である有機溶媒中に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物並びに光学素子に係り、特に、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー及び平板光導波路等として好適に用いられる熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物並びに光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
MO、CD、DVD等の光情報記録媒体(以下、媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや、記録を行なうプレーヤー、レコーダー及びドライブ等の情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置には、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットが具備されており、この光学素子ユニットは、これらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
上述した光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα一オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1参照)等が知られている。
【0004】
プラスチックを材料として適用した光学素子ユニットにおいては、ガラスレンズのような光学的安定性を有する物質であることが求められている。例えば、環状オレフィンのような光学用プラスチック物質は、従来レンズ用プラスチックとして用いられてきたPMMA(Poly Methyl Methacrylate)に比べて吸水率が極めて低く、吸水による屈折率の変化が大幅に改善されている。しかし、光学特性の温度依存性については未だ解決されておらず、屈折率の温度依存性は無機ガラスより一桁以上大きいのが現状である。
【0005】
そこで、上述したような屈折率の温度依存性を減少させる方法として、光学樹脂中に無機微粒子を分散する方法が提案されており、温度による屈折率の変化率(以下、dn/dTと示す。)が0より小さいポリマー状のホスト物質中に、dn/dTが0より大きい無機微粒子を分散させた光学製品が開発されている(例えば、特許文献2〜8参照)。
【0006】
また、一般的に光学用プラスチック物質の屈折率は、1.49〜1.55の範囲内であり、屈折率が比較的高いポリカーボネート樹脂は屈折率が1.59と高いもののアッベ数が30と低く、屈折率と分散特性とのバランスが悪い。このような現状から光学樹脂の用途は限られているのが現状である。
【0007】
そこで、屈折率と分散特性との均衡を図る方法として、光学樹脂中に屈折率およびアッベ数の高い無機徽粒子を分散させることにより、高屈折率かつ高アッベ数の熱可塑性樹脂組成物を提供する方法が開発されている(例えば、特許文献9参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−105131号公報
【特許文献2】特開2002−207101号公報
【特許文献3】特開2002−240901号公報
【特許文献4】特開2002−241560号公報
【特許文献5】特開2002−241569号公報
【特許文献6】特開2002−241592号公報
【特許文献7】特開2002−241612号公報
【特許文献8】特開2002−303701号公報
【特許文献9】特開2001−183501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献2〜9に記載の光学製品及び熱可塑性樹脂組成物の場合、熱可塑性樹脂における無機微粒子に起因した光の散乱を抑制し、高い光線透過率を維持することが大きな課題となっている。このような問題を解決すべく、無機微粒子を光散乱が無視できるような粒径で樹脂中において均一に分散させるためには、無機微粒子の表面を疎水化する必要がある。
しかし、上述した特許文献2〜9には、疎水化の具体的方法が殆ど記載されておらず、記載されていた場合であっても効果が不十分であるため、現状においては、光学樹脂として必要な透明性の実現が図られていないといった問題が生じている。
【0010】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、透明性の向上とともに、屈折率の温度依存性の低減及び屈折率の向上を図ることが可能な熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物並びに光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、
熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法において、
水若しくはアルコール又はそれらの混合液中に無機微粒子を分散させる第1の工程と、
前記第1の工程で得られた無機微粒子分散溶液にシラン系の表面処理剤を添加し、反応させる第2の工程と、
前記第2の工程で得られた表面処理が施された無機微粒子をSP値が10以下である有機溶媒中に分散させる第3の工程とを具備することを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、第1の工程において均一な分散液を作製し、第2工程において当該分散液にシラン系表面処理剤を添加することにより、無機微粒子の表面が均一に疎水化されて、熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。
また、第2工程において疎水化された無機微粒子をSP値が10以下である有機溶媒中に再分散させることにより、最終生成物である熱可塑性樹脂組成物中における無機微粒子の凝集を防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前記第1の工程が、平均粒径が0.1mm以下であるビーズを用いたビーズミル分散によって行われることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、分散媒である水若しくはアルコール又はこれらの混合溶液中において、無機微粒子を1次粒径に近い粒径で分散させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前記無機微粒子の有する屈折率が、1.5以上であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、光学的用途に用いられる熱可塑性樹脂中に分散させた場合であっても、得られる熱可塑性樹脂組成物の有する屈折率の大幅な低減を抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前記シラン系の表面処
理剤が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする。
1−Si(−OR23 ……(1)
ただし、R1は炭素数3〜20の分岐を有していてもよいアルキル基を示し、OR2は加水分解可能な炭素数が同一又は異なるアルコキシ基を示す。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、第3の工程において用いられる有機溶媒において、無機微粒子を均一に分散することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、請求項1から請求項4に記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、光線透過率が高く、温度による屈折率の変化率が小さい熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明に係る光学素子は、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形され、波長588nmにおける光路長3mm当たりの平均光線透過率が70%以上であることを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、無機微粒子の凝集に起因した光の散乱による影響を抑制することにより、光線透過率の向上が図られた光学素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、無機微粒子の分散性の向上を図ることが可能となり、これによって、透明性に優れ、屈折率の温度依存性の低減及び屈折率の向上が図られた熱可塑性樹脂組成物及び光学素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0025】
まず始めに、熱可塑性樹脂組成物について説明する。
本実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に無機微粒子が含有されており、以下、熱可塑性樹脂及び無機微粒子の詳細について、それぞれ説明する。
【0026】
本実施形態における熱可塑性樹脂としては、光学材料として一般的に用いられる透明の熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではないが、光学素子としての加工性の観点から、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂であることが好ましく、環状オレフィンであることが特に好ましい。具体例として、特開2003−73559号公報に記載の化合物を挙げることができ、その好ましい化合物を下記表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
なお、上述した熱可塑性樹脂は、光学材料としての寸法安定性の観点から、吸湿率が0
.2%以下であることが望ましいため、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)AF:デュポン社製)、環状オレフィン樹脂(日本ゼオン製:ZEONEX、三井化学製:APEL、JSR製:アートン、チコナ製:TOPAS)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好適に用いられる。
【0029】
また、上述したような2種以上の樹脂を用いる場合においては、その吸水率は、個々の樹脂における吸水率の平均値と略同一と考えられ、その平均の吸水率が0.2%以下になればよい。
【0030】
次に、無機微粒子について説明する。
本実施形態における無機微粒子としては、酸化物微粒子、硫化物微粒子、セレン化物微粒子、テルル化物微粒子、燐化物、複酸化物微粒子、オキソ酸塩微粒子、複塩微粒子、錯塩微粒子等が挙げられる。より具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム等、これら酸化物との組み合わせで形成されるリン酸塩、硫酸塩等、硫化亜鉛、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、セレン化カドミウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
また、無機微粒子には、半導体結晶組成の微粒子を好適に用いることができる。半導体結晶組成には、特に限定されるものではないが、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光又は蛍光等が生じないものが好ましい。具体的な組成例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム及び錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン又はテルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II,IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化錫(IV)(SnS2)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al23)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga23)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In23)、硫化インジウム(In23)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As23)、セレン化砒素(III)(As2Se3)、テルル化砒素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb23)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2
Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi23)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe34)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta25)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO2、Ti25、Ti23、Ti59等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr24)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr24)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。
【0032】
なお、G.Schmidら、Adv.Mater.、1991年、第4巻、p.494に記載の(BN)75(BF21515や、D.Fenskeら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、1990年、第29巻、p.1452に記載のCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
【0033】
また、本実施形態における無機微粒子は、1種類のみを用いてもよく、複数種類の無機微粒子を併用してもよい。
【0034】
上述した無機微粒子は、平均粒子径が1nm以上、3nm以下であることが好ましく、1nm以上、20nm以下であることがより好ましく、1nm以上、10nm以下であることが特に好ましい。これは、平均粒子径が1nm未満の場合、無機微粒子の分散が困難になり所望の性能が得られないおそれがあることから、1nm以上であることが好ましく、また、平均粒子径が30nmを超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物に濁り等が発生することで透明性が低下し、光線透過率が70%未満となるおそれがあることから、30nm以下であることが好ましい。
ここで、平均粒子径とは、粒子と同体積の球に換算した時の直径のことを示す。
【0035】
また、無機微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状の無機微粒子が好適に用いられる。さらに、粒子径の分布についても、特に限定されるものではないが、本発明の効果を効率よく発現させるために、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
【0036】
さらに、無機微粒子の屈折率は、特に限定されるものではないが、1.5以上であることがこのましく、1.6以上であることがより好ましい。これは、屈折率が1.5以上であれば、一般的な光学樹脂に分散させた場合に得られる樹脂組成物の屈折率の大幅な低下を防止することができ、現在使用されている光学樹脂と同様の用途に使用することが可能であるからである。
【0037】
次に、熱可塑性樹脂組成物の製造方法について説明する。
本実施形態における熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、水若しくはアルコール又はこれらの混合液に無機微粒子を分散させる第1工程と、第1工程で得られた分散溶液にシラン系の表面処理剤を添加し反応させる第2工程と、第2の工程で得られた表面処理が施された無機微粒子をSP値が10以下である有機溶媒中に分散させる第3工程とを具備する。以下、各工程の詳細について、それぞれ説明する。
【0038】
まず始めに、第1工程について説明する。
本実施形態における第1工程においては、表面処理剤を添加する前の無機微粒子を、水若しくはアルコール又はこれらの混合液中に分散させる。このような無機微粒子の分散処理は、ローラタイプミル、ニーダータイプ、ピンミキサータイプ、高圧ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(ビーズミルや、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機等の各種分散機を適宜用いて行うことができるが、ビーズミル分散機が特に好ましく用いられる。
【0039】
なお、ビーズミル分散機を用いた場合には、使用されるビーズのビーズ径が0.1mm以下であることが好ましい。これは、ビーズ径が0.1mm以下である微小ビーズを用いて無機微粒子を分散させることにより、無機微粒子を分散媒中で1次粒子に近い粒径で分散させることが可能となるからである。このような分散機としては、例えば、ウルトラアペックスミル(寿工業製)等が挙げられる。
【0040】
また、無機微粒子を分散させる分散媒として、水及びアルコールの混合溶液が用いられる場合、水とアルコールの割合は、無機微粒子の分散性や、後続の第2工程におけるシラン系の表面処理剤の反応性を考慮して任意に決定することが可能である。
【0041】
なお、アルコールとしては、特に限定されるものではないが、メタノールや、エタノールが好適に用いられる。また、分散媒中には、分散性や、シラン系の表面処理剤の反応性を制御する観点から、アンモニアや、酢酸等のpH調整剤を適宜添加することができる。併せて、分散剤等も適宜使用することができる。
【0042】
また、無機微粒子の質量濃度は、適宜決定することが可能であるが、分散性や、生産効率の観点から、5〜40%の範囲内であることが好ましい。
【0043】
さらに、無機微粒子は、粉末状で市販されている無機微粒子であっても、ゾルゲル法等により合成された無機微粒子であってもよいが、合成された無機微粒子の場合においても脱塩等の処理により凝集等が発生するため、表面処理剤を添加する前の処理工程において十分に分散させる必要がある。
【0044】
次に、第2工程について説明する。
本実施形態における第2工程においては、上述した第1工程において得られた無機微粒子の分散物に対して、シラン系の表面処理剤を添加し反応させることにより、無機微粒子を疎水化するための表面処理が施される。このような無機微粒子の表面処理方法としては、特に限定されるものではないが、上述した第1工程において得られた無機微粒子の分散溶液をディゾルバー等で撹拌しながら、シラン系の表面処理剤を少しずつ滴下し、滴下完了後もそのまま1〜48時間撹拌し続けて停滞させることが好ましい。
【0045】
なお、シラン系の表面処理剤を滴下する場合、シラン系の表面処理剤と一緒に触媒としてのアンモニア水を滴下するか、予め分散媒中にアンモニアが存在することが好ましい。
また、シラン系の表面処理剤を停滞させる時の温度は、特に限定されるものではないが、使用する表面処理剤に合わせて適宜決定することが可能であり、表面処理剤を粒子表面
に均一に反応させることを考慮して、反応が急激に進行しない温度において長時間撹拌しながら反応させる、または低温で長時間反応させた後温度を上昇させて反応を完了させることが好ましい。
【0046】
さらに、第3工程について説明する。
本実施形態における第3工程においては、上述した第2の工程で得られた表面処理が施された無機微粒子をSP値が10以下である有機溶媒中に分散させる。
ここで、SP(Solubility Parameter)値とは、溶解性パラメータを示す。
【0047】
本実施形態における有機溶媒は、SP値が10以下である有機溶媒であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン等のパラフィン系炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロパラフィン系炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系炭化水素、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン等の複素環化合物等から選択することができる。
上述したようなSP値が10以下の有機溶媒中に無機微粒子を分散させることにより、熱可塑性樹脂と分散液との親和性が向上し、分散液を濃縮して熱可塑性樹脂中に混合することが可能となり、あるいは、分散液を乾燥させて溶媒を除去した後に無機微粒子を熱可塑性樹脂中に混合する場合においても、乾燥時の毛管力による凝集が抑制されることにより、熱可塑性樹脂中において凝集のない状態で混合することが可能となる。
【0048】
なお、光学樹脂との親和性の観点から、SP値が8.2〜9.2の範囲内であればより好ましく、中でもシクロヘキサン、キシレン、テトラヒドロフラン等が好ましく用いられる。
【0049】
第2工程において表面処理が施された無機微粒子を、第3工程において有機溶媒中に分散させる方法については、特に限定されるものではなく、有機溶媒の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、水よりも沸点が高い有機溶媒を用いる場合には、第2工程で得られた表面処理が施された無機微粒子の分散液に有機溶媒を添加後、100℃以上で加熱して水及びアルコールを留去する方法等が挙げられ、水と有機溶媒とが分離する場合には、表面処理された無機微粒子が有機溶媒中に分散されることから、水のみを除去する方法等が挙げられる。
【0050】
また、第2工程で得られた分散液中で無機微粒子が沈殿している場合には、上澄みを除去し、水及びアルコールをあらかじめ減らした状態で有機溶媒を添加してもよい。この際、沈殿物を完全に乾燥させると乾燥時に凝集が進み、有機溶媒中に微小粒径のまま分散させることが困難となることから、水及びアルコールが残留している状態で有機溶媒を添加することが好ましい。
【0051】
このようにして得られた無機微粒子が有機溶媒中に分散した分散溶液に対して、10〜100kHzの超音波を照射することが好ましい。これは、超音波の照射により、表面処理剤が反応した後の後処理中に軟凝集した無機微粒子が再分散され、1次粒径に近い状態で有機溶媒中に分散した分散溶液を得ることができるからである。
【0052】
本実施形態におけるシラン系の表面処理剤としては、アルキル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等の有機置換基と、ケイ素原子に直接結合した加水分解基(アルコキシ基、クロル基、アセトキシ基、アルキルアミノ基等)を有するシランカップリング剤等が好ましく用いられ、下記一般式(1)で示される表面処理剤がより好ましく用いられる。
1−Si(−OR23 ……(1)
ただし、R1は炭素数3〜20の分岐を有していてもよいアルキル基を示し、OR2は加
水分解可能な炭素数が同一又は異なるアルコキシ基を示す。
【0053】
シラン系のカップリング剤としては、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
なお、上述した表面処理剤は、1種類のみを用いてもよく、複数種類を併用してもよい。また、表面処理後における微粒子に対する表面処理剤の割合は、特に限定されるものではないが、10〜99%の範囲内であることが好ましく、20〜98%の範囲内であることがより好ましい。
【0055】
上述した方法によって表面処理が施された無機微粒子は、熱可塑性樹脂中に混合され、目的とする熱可塑性樹脂組成物が得られる。
熱可塑性樹脂と、無機微粒子との混合方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を溶融して、上述した第3工程において得られた分散液を添加し均一に混合した後、分散媒を揮発させる方法や、上述した第3工程において得られた分散液から有機溶媒を減圧除去することによって得られる無機微粒子粉末と熱可塑性樹脂とを予め混合し、溶融混練する方法等が挙げられる。これら種々の方法のうち、樹脂における分散性や、生産効率等の観点から、上述した第3工程において得られた分散液から有機溶媒を揮発させて濃縮したものを、溶融混練前及び混練中の熱可塑性樹脂に添加し、混練後に脱揮させる方法が好適に用いられる。
【0056】
なお、作製された熱可塑性樹脂組成物における無機微粒子の含有量は、本発明の効果を発揮することができれば、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂及び無機微粒子の種類によって任意に決定することができる。
ただし、熱可塑性樹脂組成物における無機微粒子の含有量が少なすぎる場合、本発明の目的である屈折率の温度依存性を低減させる効果が小さくなる可能性があることから、熱可塑性樹脂組成物における無機微粒子の含有量は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
また、熱可塑性樹脂組成物における無機微粒子の含有量が多すぎる場合、無機微粒子の熱可塑性樹脂への添加が困難となる、得られる熱可塑性樹脂組成物が硬化することで混練や、成形が困難となる、熱可塑性樹脂組成物の比重が増大する等といった間題が生じる可能性があることから、熱可塑性樹脂組成物における無機微粒子の含有量は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが特に好ましい。
【0057】
また、熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂と無機微粒子との混合の程度は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を効率よく発現させるために、均一に混合されていることが好ましい。
【0058】
上述した樹脂組成物の作製工程においては、各種添加剤を、必要に応じて単独で又は組み合わせて添加してもよい。
この場合、添加剤としては、酸化防止剤、耐光安定剤、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤及び近赤外線吸収剤等の安定剤、滑剤や、可塑剤等の樹脂改良剤、軟質重合体や、
アルコール性化合物等の白濁防止剤、染料や、顔料等の着色剤、その他帯電防止剤や、難燃剤等が挙げられ、可塑剤又は酸化防止剤が添加されていることが好ましい。
また、これら添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0059】
本実施形態における可塑剤としては、可塑剤としては、特に限定されるものではないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等が挙げられる。
【0060】
本実施形態における酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられ、フェノール系酸化防止剤、特に、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性や、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。
【0061】
上述した酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが可能であって、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明の複合熱可塑性材料100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜1質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0062】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが適用可能であり、例えば、特開昭63−179953号公報に記載の2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等や、特開平1−168643号公報に記載のオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のアクリレート系化合物や、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン、すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物や、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(
3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
【0063】
また、リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業において通常使用される物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物や、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
【0064】
さらに、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0065】
本実施形態における耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤等が挙げられるが、本発明においては、レンズの透明性や、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALS)の中でも、テトラヒドロフランを溶媒として用いた液体クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量(以下、Mn)が1,000〜10,000の範囲内であるものが好ましく、2,000〜5,000の範囲内であるものがより好ましく、2,800〜3,800の範囲内であるものが特に好ましい。
これは、Mnが小さすぎると、HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に揮発のため所定量を配合できない、または射出成型等の加熱溶融成型時に発泡やシルバーストリーク等が発生することにより、加工安定性が低下するといった問題が生じるからである。一方、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合には、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。このため、Mnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。
したがって、HALSのMnを上述した範囲内とすることにより、加工安定性、低ガス発生性及び透明性に優れたレンズが得られる。
【0066】
上述したHALSとしては、N,N',N'',N'''−テトラキス−[4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと、1,3,5−トリアジンと、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、1,6−ヘキサンジアミン−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)と、モルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−トリアジン−2,4−
ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]等のピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALSや、コハク酸ジメチルと、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピベリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等のピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
【0067】
なお、上述した高分子量HALSのうち、ジブチルアミンと、1,3,5−トリアジンと、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物や、ポリ[{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]や、コハク酸ジメチルと、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピベリジンエタノールとの重合物等のように、Mnが2000〜5000のHALSが好ましい。
【0068】
熱可塑性樹脂に対するHALSの配合量は、重合体100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、0.02〜15質量部であることがより好ましく、0.05〜10質量部であることが特に好ましい。これは、HALSの配合量が0.01質量部以下であると、耐光性の改良効果が十分に得られず、屋外で長時問使用する場合等に着色が生じるためである。一方、HALSの配合量が20質量部であると、HALSの一部がガスとなって発生するとともに、熱可塑性樹脂に対する分散性が低下して、レンズの透明性が低下するためである。
【0069】
以上のような熱可塑性樹脂組成物を成形することにより、各種成形物を得ることができ、その成形方法としては、特に限定されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成形物を得るためには、溶融成形法が好ましい。溶融成形法としては、市販のプレス成形、市販の押し出し成形、市販の射出成形等が挙げられるが、成形性及び生産性の観点から、射出成形が好ましい。
【0070】
また、成形工程における成形条件は、使用目的又は成形方法により適宜選択されるが、射出成形における樹脂組成物の温度は、成形時に適度な流動性を樹脂に付与して成形品のヒケや、ひずみの発生とともに、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、さらには、成形物の黄変を効果的に防止する観点から、150℃〜400℃の範囲内であることが好ましく、200℃〜350℃の範囲内であることがより好ましく、200℃〜330℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0071】
成形物としては、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、各種光学部品への適用が可能である。
具体的な適用例としては、光学レンズや、光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズ等のレンズ;眼鏡レンズ等の全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等の光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズ等のレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズ等が挙げられる。
また、その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基
板等が挙げられる。
【0072】
上述した成形物の中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズや、レーザ走査系レンズ等の光学素子として好適に用いられ、以下、図1を参照しながら、本実施形態における熱可塑性樹脂組成物によって成形された光学素子が用いられた光ピックアップ装置1について説明する。
ここで、図1は、光ピックアップ装置1の内部構造を示す模式図である。
【0073】
本実施形態における光ピックアップ装置1には、図1に示すように、光源である半導体レーザ発振器2が具備されている。この半導体レーザ発振器2から出射される青色光の光軸上には、半導体レーザ発振器2から離間する方向に向かって、コリメータ3、ビームスプリッタ4、1/4波長板5、絞り6、対物レンズ7が順次配設されている。
また、ビームスプリッタ4と近接した位置であって、上述した青色光の光軸と直交する方向には、2組のレンズからなるセンサーレンズ群8、センサー9が順次配設されている。
【0074】
光学素子である対物レンズ7は、光ディスクDに対向した位置に配置されるものであって、半導体レーザ発振器2から出射された青色光を、光ディスクDの一面上に集光するようになっている。このような対物レンズ7には、2次元アクチュエータ10が具備されており、この2次元アクチュエータ10の動作により、対物レンズ7は、光軸上を移動自在となっている。
【0075】
次に、光ピックアップ装置1の作用について説明する。
本実施形態における光ピックアップ装置1は、光ディスクDへの情報の記録動作時や、光ディスクDに記録された情報の再生動作時に、半導体レーザ発振器2から青色光を出射する。出射された青色光は、図1に示すように、光線L1となって、コリメータ3を透過して無限平行光にコリメートされた後、ビームスプリッタ4を透過して、1/4波長板5を透過する。さらに、絞り6及び対物レンズ7を透過した後、光ディスクDの保護基板D1を介して情報記録面D2に集光スポットを形成する。
【0076】
集光スポットを形成した光は、光ディスクDの情報記録面D2で情報ピットによって変調され、情報記録面D2によって反射される。そして、この反射光は、対物レンズ7及び絞り6を順次透過した後、1/4波長板5によって偏光方向が変更され、ビームスプリッタ4で反射する。その後、センサーレンズ群8を透過して非点収差が与えられ、センサー9で受光されて、最終的には、センサー9によって光電変換されることによって電気的な信号となる。
以後、このような動作が繰り返し行われ、光ディスクDに対する情報の記録動作や、光ディスクDに記録された情報の再生動作が完了する。
【0077】
なお、光ディスクDにおける保護基板D1の厚さ寸法及び情報ピットの大きさにより、対物レンズ7に要求される開口数NAも異なる。本実施形態においては、高密度な光ディスクDであり、その開口数は0.85に設定されている。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、以下の実施例において、「部」とは重量部を示し、「%」とは重量%を示す。
【0079】
まず始めに、水性分散液1の作製方法について説明する。
無機微粒子A(TM−300:大明化学工業製アルミナ粉体、1次粒径7nm、屈折率
:1.69(文献値))10部を、水180部、メタノール2部、28%アンモニア水5部からなる水性媒体X(計187部)中に添加し、この液を超音波分散機(エスエムテー製:UH−600、出力600W、周波数20kHz)を用いて粒径が安定するまで冷却しながら分散させた。
このようにして得られたアルミナの水性分散液を、「水性分散液1」とした。
【0080】
次に、水性分散液2の作製方法について説明する。
無機徽粒子A10部を、上述した水性媒体X(計187部)中に添加した後、この液を平均粒径0.5mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル分散機(アシザワ・ファインテック製:RL−125)により、周速8m/s、ビーズ充填率80%で滞留時間5分の条件で粒径が安定するまで分散させた。
このようにして得られたアルミナの水性分散液を、「水性分散液2」とした。
【0081】
次に、水性分散液3の作製方法について説明する。
無機徽粒子A10部を、上述した水性媒体X(計187部)中に添加した後、この液を平均粒径0.05mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル分散機(寿工業製:UAM−015)により、周速8m/s、ビーズ充填率80%、流量100cc/minの条件で粒径が安定するまで分散させた。
このようにして得られたアルミナの水性分散液を、「水性分散液3」とした。
【0082】
次に、水性分敵液4の作製方法について説明する。
無機微粒子B(日本アエロジル社製:アルミナC(アルミナ粉体)、1次粒径13nm、屈折率:1.69(文献値))を、上述した水性媒体X(計187部)中に添加した後、この液を平均粒径0.05mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル分散機(寿工業製:UAM−015)により、周速8m/s、ビーズ充填率80%、流量100cc/mの条件で粒径が安定するまで分散させた。
このようにして得られたアルミナの水性分散液を、「水性分散液4」とした。
【0083】
次に、有機スラリー1〜4の作製方法について説明する。
上述した方法によって得られた水性分散液1〜4を撹拌し、各水性分散液1〜4にデシルトリメトキシシラン(信越化学工業製:KBM−13)3部を少しずつ添加し撹拌を続け、室温で24時間停滞させて反応させた。
その後、キシレン100部を添加し、110℃に加熱して、水及びメタノールを留去した。このようにして得られたアルミナのキシレン分散液に対して、超音波洗浄器を用いて28kHzの超音波を5分間照射させた。
このようにして得られたアルミナのキシレン分散液を、それぞれ「有機スラリー1〜4」とした。
【0084】
次に、有機スラリー5の作製方法について説明する。
上述した有機スラリー3の作製方法において、最後に超音波を照射しなかった以外は、有機スラリー3と同様の方法によってアルミナのキシレン分散液を作製した。
このようにして得られたアルミナのキシレン分散液を、「有機スラリー5」とした。
【0085】
次に、有機スラリー6の作製方法について説明する。
無機徽粒子A10部、キシレン100部、デシルトリメトキシシラン3部、ピリジン0.1部をナスフラスコに入れて、80℃の温度で10時間還流処理を施した。
このようにして得られたアルミナのキシレン分散液を、「有機スラリー6」とした。
【0086】
次に、樹脂組成物1〜6の作製方法について説明する。
上述した有機スラリー1〜6からキシレンを減圧除去して、濃縮スラリー1〜6を作製
した後、二軸押出機(東洋精機製作所製:ラボプラストミル)を用いて熱可塑性樹脂1(日本ゼオン製:ZEONEX330R)を溶融させ、各濃縮スラリー1〜6をそれぞれ添加、混練させた。この際、濃縮スラリーの添加量は、樹脂組成物に対して無機微粒子が50%となるようにした。さらに、混練しながら適当な温度で脱揮させた後、ストランドダイから押し出して切断し、ペレット化した。
このようにして得られた熱可塑性樹脂組成物を、それぞれ「樹脂組成物1〜6」とした。
【0087】
次に、樹脂組成物7の作製方法について説明する。
無機微粒子A100部をヘンシェルミキサー中で高速撹拌しながら、デシルトリメトキシシラン1部をメタノール4部に溶解したシラン溶液を滴下し、撹拌により均一に分散させた。得られた白色粉末は、二軸押出機を用いて溶融された熱可塑性樹脂1に添加された後、混練した。この際、白色粉末の添加量は、樹脂組成物に対して無機微粒子が50%となるようにした。さらに、混練しながら適当な温度で脱揮させた後、ストランドダイから押し出して切断し、ペレット化した。
このようにして得られた熱可塑性樹脂組成物を、「樹脂組成物7」とした。
【0088】
次に、樹脂組成物8の作製方法について説明する。
水性分散液3を撹拌し、そこにデシルトリメトキシシラン3部を少しずつ添加して、撹拌を続けながら室温で24時間停滞させて反応させた。この液をろ過後120℃で80分間乾燥して白色粉末を得た。得られた白色粉末は、二軸押出機を用いて熱可塑性樹脂1に添加された後、混練した。この際、白色粉末の添加量は、樹脂組成物に対して無機微粒子が50%となるようにした。さらに、混練しながら適当な温度で脱揮させた後、ストランドダイから押し出して切断し、ペレット化した。
このようにして得られた熱可塑性樹脂組成物を、「樹脂組成物8」とした。
【0089】
次に、樹脂組成物9の作製方法について説明する。
無機微粒子C(日本アエロジル杜製:R−974(疎水性シリカ粉体)、1次粒径12nm、屈折率:1.46(文献値))を、二軸押出機を用いて溶融させた熱可塑性樹脂1に添加し、混練させた。ここで、無機微粒子の添加量は、樹脂組成物に対して35%となるようにした。混練後、ストランドダイから押し出してカット、ペレット化した。
このようにして得られた熱可塑性樹脂組成物を、「樹脂組成物9」とした。
【0090】
次に、水性分散液10の作製方法について説明する。
無機微粒子D(日本アエロジル社製:A−200(親水性シリカ粉体)、1次粒径12nm、屈折率:1.46(文献値))10部を用いた以外は、水性分散液3と同様の方法で、シリカの水性分散液を得た。
このようにして得られた分散液を、「水性分散液10」とした。
【0091】
次に、有機スラリー10の作製方法について説明する。
得られた水性分散液10を撹拌し、デシルトリメトキシシラン(信越化学工業製KBM−13)3部を少しずつ添加して、撹拌を続けながら室温で24時間停滞させて反応させた。ここに、キシレン100部を添加して、この液を110℃に加熱して、水およびメタノールを留去した。このようにして得られたシリカのキシレン分散液に対して、超音波洗浄器を用いて、28kHzの超音波を5分間照射した。
このようにして得られたシリカのキシレン分散液を、「有機スラリー10」とした。
【0092】
次に、有機スラリー11の作製方法について説明する。
水性分散液10に対して、デシルトリメトキシシランをメチルトリメトキシシラン(信越化学工業製KBM−13)3部に変更した以外は、有機スラリー10の作製と同様の方
法によって、シリカのキシレン分散液を作製した。
このようにして得られたシリカのキシレン分散液を、「有機スラリー11」とした。
【0093】
次に、樹脂組成物10,11の作製方法について説明する。
有機スラリー10,11からキシレンを減圧除去して濃縮スラリーを作製した。そして、二軸押出機を用いて熱可塑性樹脂を溶融させ、濃縮スラリー液をそれぞれ添加し、混練させた。この際、濃縮スリラーの添加量は、樹脂組成物に対して無機微粒子が35%となるようにした。さらに、混練しながら、適当な温度で脱揮させた後、ストランドダイから押し出して切断し、ペレット化した。
このようにして得られた樹脂組成物を、「樹脂組成物10,11」とした。
【0094】
最後に、各樹脂組成物の評価方法について説明する。
評価項目として、光線透過率、屈折率及びdn/dTの変化率の計3項目が挙げられ、以下、各項目の測定又は算出方法の詳細について、それぞれ説明する。
【0095】
まず始めに、光線透過率の測定方法について説明する。
樹脂組成物1〜11を加熱溶融して、それぞれ厚さ3mmの試験用プレートに成型した。各試験用プレートについて、分光光度計(島津製作所製:UV−3150)を用いて、厚さ方向の波長588nmにおける透過率を測定し、得られた結果を「光線透過率(%)」として、下記表2に示した。
【0096】
次に、屈折率の測定方法及びdn/dTの変化率の算出方法について説明する。
自動屈折計(カルニュー光学工業製:KPR−200)を用いて、各樹脂組成物の温度を20℃に維持し、波長588nmにおける屈折率を測定し、得られた結果を「屈折率(20℃)」として、下記表2に示した。
また、上述した自動屈折計を用いて、各樹脂組成物の温度を10℃から60℃まで変化させ、波長588nmにおける屈折率を測定し、各樹脂組成物におけるdn/dTを算出した。併せて、無機微粒子が添加されていない熱可塑性樹脂1についても、同様の方法により、熱可塑性樹脂1におけるdn/dTを算出した。
これら算出結果に基づいて、下記一般式(2)により、dn/dTの変化率を算出し、「dn/dT変化率(%)」として、下記表2に示した。
【0097】
dn/dTの変化率=(熱可塑性樹脂1におけるdn/dT−各樹脂組成物におけるdn/dT)/(熱可塑性樹脂1におけるdn/dT)×100 ……(2)
【0098】
【表2】

【0099】
その結果、シラン系の表面処理剤による表面処理後の無機微粒子をSP値が10以下である有機溶媒中に分散させた樹脂組成物1,2,3,4,5,10,11は、分散させていない樹脂組成物6,7,8,9と比較すると、光線透過率の値が高いことが確認された。
また、樹脂組成物1,2,3,4,5,10,11は、dn/dTの変化率の値も高く、すなわち、各樹脂組成物におけるdn/dTが小さく、屈折率の温度依存性を小さくする効果が顕著であることが確認された。
【0100】
また、樹脂組成物1,2,3,4,5のうち、平均粒径が0.05mmであるビーズを用いたビーズミル分散によって無機微粒子を水若しくはアルコールに分散させた樹脂組成物3,4,5は、超音波分散によって無機微粒子を分散させた樹脂組成物や、平均粒径が0.5mmであるビーズを用いたビーズミル分散によって無機微粒子を分散させた樹脂組成物2と比較すると、光線透過率の値が高く、dn/dTの変化率の値も高いことが確認された。
また、樹脂組成物3,4,5のうち、SP値が10以下である有機溶媒中に分散させた後に超音波を照射させた樹脂組成物3,4は、超音波を照射させていない樹脂組成物5と比較すると、光線透過率の値が高く、dn/dTの変化率の値も高いことが確認された。
【0101】
さらに、樹脂組成物10,11のうち、シラン系の表面処理剤として上記一般式(1)で表されるデシルトリメトキシシランが用いられた樹脂組成物10は、上記一般式(1)で表されないメチルトリメトキシシランが用いられた樹脂組成物11と比較すると、dn/dTの変化率の値が高いことが確認された。
【0102】
以上のように、本実施形態における熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物並びに光学素子によれば、第1の工程において均一な分散液を作製し、第2工程において当該分散液にシラン系表面処理剤を添加することにより、無機微粒子の表面が均一に疎水化されて、熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。
また、第2工程において疎水化された無機微粒子をSP値が10以下である有機溶媒中に再分散させることにより、最終生成物である熱可塑性樹脂組成物中における無機微粒子の凝集を防止することができる。
そのため、光線透過率及びdn/dTの変化率の値が向上され、透明性の向上とともに、屈折率の温度依存性の低減及び屈折率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る光学素子である対物レンズが具備された光ピックアップ装置の内部構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0104】
7 対物レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法において、
水若しくはアルコール又はそれらの混合液中に無機微粒子を分散させる第1の工程と、
前記第1の工程で得られた無機微粒子分散溶液にシラン系の表面処理剤を添加し、反応させる第2の工程と、
前記第2の工程で得られた表面処理が施された無機微粒子をSP値が10以下である有機溶媒中に分散させる第3の工程とを具備することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、平均粒径が0.1mm以下であるビーズを用いたビーズミル分散によって行われることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記無機微粒子は、当該無機微粒子の有する屈折率が1.5以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記シラン系の表面処理剤は、下記一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
1−Si(−OR23 ……(1)
ただし、R1は炭素数3〜20の分岐を有していてもよいアルキル基を示し、OR2は加水分解可能な炭素数が同一又は異なるアルコキシ基を示す。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形され、波長588nmにおける光路長3mm当たりの平均光線透過率が70%以上であることを特徴とする光学素子。

【図1】
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【公開番号】特開2006−299033(P2006−299033A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120960(P2005−120960)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】