説明

熱可塑性樹脂組成物及び成形体

【課題】耐衝撃性が向上し、耐加水分解性及び耐熱分解性の低下が抑制され、更にアウトガスの発生量が少なく、金型汚染が抑制される熱可塑性樹脂組成物及びその成形体を提供する。
【解決手段】アゾ系重合開始剤を用いて乳化重合して得られたポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体のラテックスを噴霧乾燥して得られたポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体粉体及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物。及び、その熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体粉体及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物、並びに成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂(以下、「PC樹脂」という。)は、機械的特性、電気的特性、透明性等に優れる成形物を与えることから、自動車分野、電気・電子機器分野、OA機器分野等、様々な分野で幅広く使用されている。耐衝撃性が要求される用途にPC樹脂を用いる場合には、耐衝撃性向上剤としてビニル重合体粉体を配合することが知られている。
ビニル重合体の製造には、乳化重合法をはじめとする水系分散重合を利用した方法が多く用いられている。ビニル重合体の製造法として乳化重合法を用いた場合には、得られたビニル重合体のラテックスから、ビニル重合体を粉体等の固形分として回収するプロセスが必要となる。
【0003】
上記の回収プロセスとしては、酸や塩等をラテックスに混合して凝固スラリーを得た後に、熱処理、脱水及び乾燥するプロセス(以下、「凝固法」という。)が広く知られている。凝固法は酸や塩等による凝固が可能なラテックスに対しては適用できるが、凝固が困難なラテックス、例えばノニオン系界面活性剤が用いられているものに対しては適用できないという問題があった。
また、凝固法では、粒子径が粗く、且つ粒度分布が広い粉体しか得られないため、剪断応力の低い条件で熱可塑性樹脂と配合した場合には、粉体の分散が充分ではなく、得られる成形体にブツ等の外観不良が生じるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、ラテックスをノズル等から噴霧しながら熱風で乾燥させて粉体を得る方法(以下、「噴霧乾燥法」という。)が広く知られている。噴霧乾燥法は凝固工程を必要としないため、凝固が困難なラテックスであっても粉体として回収できるばかりでなく、粒子径が小さく、且つ粒度分布が狭い粉体を得ることができるため、熱可塑性樹脂と配合した場合の分散が充分であり、得られる成形体の外観が良好となる。
【0005】
しかしながら、重合工程で用いる副原料は、ビニル重合体粉体を熱可塑性樹脂と配合して用いる際に、熱可塑性樹脂の耐加水分解性を低下させる等、好ましくない影響を与える。噴霧乾燥法ではこれら副原料が高濃度でビニル重合体粉体中に残留するため、熱可塑性樹脂の耐加水分解性を低下させ、結果として要求される物性を満たす成形体が得られないという問題が生じる。
例えば、PC樹脂は、微量の酸やアルカリ等のイオン性物質が存在すると加水分解が進行し、耐加水分解性が低下する。噴霧乾燥法で回収したビニル重合体粉体をPC樹脂に配合した成形体では、重合工程で用いた副原料に由来する硫酸塩等により耐加水分解性が低下し、成形体の物性が著しく損なわれるという問題が生じる。
【0006】
特許文献1では、PC樹脂の耐衝撃性を向上させるため、ポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体のラテックスを噴霧乾燥して回収したポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体粉体を、耐衝撃性向上剤としてPC樹脂に配合する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1で提案されているポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体は、副原料として硫酸塩化合物を用いているため、PC樹脂の耐加水分解性を低下させ、耐衝撃性の向上効果としても充分ではない。
【0007】
また、PC樹脂等の熱可塑性樹脂の射出成形時に、熱可塑性樹脂から発生するアウトガスが金型内面に付着し金型汚染を生じさせる場合がある。この金型汚染が発生すると、成形品表面が金型内面の形状を正確に転写しなくなるために、射出成形を中断して金型内面を清浄化することが必要となる。
これは生産性を低下させることとなる。特に大型成形品の連続成形の場合、金型汚染による成形体表面の艶ムラ等を防止するために、頻繁に金型表面の洗浄が行なわれている。そのため、生産性の低下をきたし、改良が望まれている。
特許文献1によって得られる熱可塑性樹脂組成物は、射出成形時に副原料の分解物由来のアウトガスが発生し、金型汚染を発生させるため、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−308997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐衝撃性が向上し、耐加水分解性及び耐熱分解性の低下が抑制され、アウトガスの発生量が少ない熱可塑性樹脂組成物、及びその成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、複合ゴムの存在下でビニル単量体を重合する際にアゾ系重合開始剤を用いたラテックスを噴霧乾燥して回収したビニル重合体粉体を用いることで、PC樹脂等の熱可塑性樹脂の耐衝撃性が向上し、耐加水分解性及び耐熱分解性の低下が抑制された熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出した。更には、アウトガスの発生量が少ないことから、金型汚染の抑制が期待できることを見出した。
PC樹脂は、微量の酸やアルカリ等のイオン性物質が存在すると加水分解が進行して、耐加水分解性が低下することは知られていたが、アゾ系重合開始剤を用いてイオン性物質を低減することで、耐加水分解性の低下の抑制に加えて、耐熱分解性の低下も抑制されることが新たに見出された。更に、アゾ系重合開始剤を用いて重合することで、副原料に由来するアウトガスの発生量が少なく、金型汚染の抑制が期待できることが見出された。
【0011】
即ち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アゾ系重合開始剤を用いて乳化重合して得られたポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体のラテックスを噴霧乾燥して得られたポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体粉体及び熱可塑性樹脂を含有する。
ポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体のラテックスは、ポリオルガノシロキサン及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴムから構成される複合ゴムラテックスの存在下でビニル単量体を重合して得られるラテックスであることが好ましい。
また、本発明の成形体は、上記の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性が向上し、耐加水分解性及び耐熱分解性の低下が抑制された成形体を与えることができる。また、成形加工時に発生するアウトガス量が少なく、金型汚染の抑制が期待できることから、特に大型成形品のロングラン成形が可能となる。
本発明の成形体は、耐衝撃性が向上し、耐加水分解性及び耐熱分解性の低下が抑制されることから、自動車分野、電気・電子機器分野、OA機器分野の他、リサイクル材を用いる用途等で有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリオルガノシロキサン(以下、「POSi」という。)含有ビニル重合体とは、POSiを含有するビニル重合体であれば、特に限定されるものではない。
POSi含有ビニル重合体の中では、POSiの存在下でビニル単量体を重合して得られる重合体、又は、POSi及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴムから構成される複合ゴムの存在下でビニル単量体を重合して得られる重合体であることが好ましく、POSi及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴムから構成される複合ゴムの存在下でビニル単量体を重合して得られる重合体であることがより好ましい。
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」又は「メタクリレート」を、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味する。
【0014】
本発明のPOSiは、ビニル重合性官能基を有することが好ましい。POSiがビニル重合性官能基を有することにより、POSiとポリ(メタ)アクリレートゴムから構成される複合ゴムに、化学的な結合を導入することが可能となる。また、後述するビニル単量体がPOSiに対してグラフト結合することが可能となる。
【0015】
ビニル重合性官能基を有するPOSiは、ジメチルシロキサン、ビニル重合性官能基を有するシロキサン、及び必要に応じてシロキサン系架橋剤を重合することにより得られる。
【0016】
ジメチルシロキサンとしては、例えば、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0017】
ビニル重合性官能基を有するシロキサンは、ビニル重合性官能基を有し、シロキサン結合を介してジメチルシロキサンと結合し得るシロキサン化合物である。ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。
ビニル重合性官能基を有するシロキサンは、POSiの側鎖又は末端にビニル重合性官能基を導入するための成分である。
【0018】
ビニル重合性官能基を有するシロキサンとしては、例えば、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−(メタ)アクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロイルオキシシラン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシラン;γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0019】
シロキサン系架橋剤は、POSiに架橋構造を導入してPOSiゴムとするための成分であり、3官能性又は4官能性のシラン系架橋剤が挙げられる。
シロキサン系架橋剤としては、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0020】
本発明において、POSiの製造法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
まず、ジメチルシロキサン、ビニル重合性官能基を有するシロキサン、及び必要に応じてシロキサン系架橋剤を含有するシロキサン混合物に乳化剤、酸触媒及び水を添加して乳化させ、シロキサンラテックスを得る。次いで、このシロキサンラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化し、微粒子化したシロキサンラテックスを得る。
この後、微粒子化したシロキサンラテックスを、例えば80℃の高温下で重合する。重合後、アルカリ性物質により中和して、POSiのラテックスを得る。
微粒子化したシロキサンラテックスを得る方法としては、POSiの粒子径分布を小さくできることから、ホモジナイザーを使用する方法が好ましい。
【0021】
POSiのラテックスを製造する際に用いる乳化剤は特に制限されないが、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が好ましい。
アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸カルシウムが挙げられる。
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルが挙げられる。
これらの乳化剤は1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0022】
乳化剤の使用量としては、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜30質量部が好ましい。
乳化剤の使用量がシロキサン混合物100質量部に対して0.05質量部以上であれば、シロキサン混合物の乳化分散状態が安定になり、30質量部以下であれば、得られる樹脂組成物の加水分解や、着色を抑制することができる。
【0023】
シロキサン混合物を重合する際に用いる酸触媒としては、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類;硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0024】
酸触媒の使用量としては、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
酸触媒の使用量がシロキサン混合物100質量部に対して0.05質量部以上であれば、シロキサン混合物の重合速度が適切でPOSiの生産性が良好となり、10質量部以下であれば、得られる樹脂組成物の耐加水分解性の低下を抑制することができる。
【0025】
POSiを製造する際の酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物のラテックスに一括で添加する方法、シロキサン混合物のラテックスに一定速度で滴下する方法が挙げられる。
シロキサン混合物の重合の停止は、例えば、反応液を冷却し、更にラテックスに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等のアルカリ性物質を添加して中和することによって行なうことができる。
【0026】
本発明の複合ゴムは、POSi及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴムから構成され、POSiの存在下にアルキル(メタ)アクリレート成分を重合して得られる複合ゴムであることが好ましい。
ポリアルキル(メタ)アクリレートゴムは、架橋構造を有し、ガラス転移温度(以下、「Tg」という。)が0℃以下であることが好ましい。
【0027】
ポリアルキル(メタ)アクリレートゴムは、アルキル(メタ)アクリレート成分を重合して得られる。アルキル(メタ)アクリレート成分は、アルキル(メタ)アクリレート及びアクリル系架橋剤を含有する。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート等のアルキル基の炭素数が6以上のアルキルメタクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートの中では、得られる成形体の耐衝撃性及び光沢が向上することから、n−ブチルアクリレートが好ましい。
これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0029】
アクリル系架橋剤は、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴムに架橋構造を導入するための成分であり、また、後述するビニル単量体がグラフト結合するためのグラフト交叉点としても機能する。
アクリル系架橋剤としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0030】
本発明において、複合ゴムの製造法としては、例えば、POSiのラテックスにアルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、公知のラジカル重合開始剤を使用して重合して、複合ゴムのラテックスを得る方法が挙げられる。
POSiのラテックスにアルキル(メタ)アクリレート成分を添加する方法としては、例えば、POSiのラテックスにアルキル(メタ)アクリレート成分を一括で添加する方法、POSiのラテックスにアルキル(メタ)アクリレート成分を一定速度で滴下する方法が挙げられる。
上記方法の中では、得られる成形体の耐衝撃性が向上することから、POSiのラテックスにアルキル(メタ)アクリレート成分を一括で添加する方法が好ましい。
【0031】
複合ゴムのラテックスを製造する際には、ラテックスを安定化させ、複合ゴムの平均粒子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。
複合ゴムのラテックスを製造する際に用いる乳化剤としては、前述のPOSiのラテックスを製造する際に用いる乳化剤と同様のものが挙げられ、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が好ましい。
【0032】
アルキル(メタ)アクリレート成分の重合に用いる重合開始剤については、後述する。
【0033】
複合ゴム(100質量%)中の、POSi及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴムの質量比率は、POSi1.0〜99.0質量%及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴム1.0〜99.0質量%が好ましい。
POSi及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴムの質量比率は、複合ゴムの製造に用いる、POSiと及びアルキル(メタ)アクリレート成分の質量比率から算出することができる。
【0034】
複合ゴムの存在下で重合するビニル単量体は、グラフト単量体成分であり、グラフト用(メタ)アクリレート、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体である。
本発明において、グラフト単量体成分の少なくとも1部は複合ゴムにグラフト結合してグラフト共重合体を形成していることが好ましい。
【0035】
グラフト用(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0036】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0037】
グラフト単量体成分の重合方法としては、例えば、複合ゴムのラテックスにグラフト単量体成分を添加し、1段又は多段で重合する方法が挙げられる。
多段で重合する場合は、複合ゴムのラテックスの存在下で、グラフト単量体成分を分割添加又は連続添加して重合することが好ましい。このような重合方法により良好な重合安定性が得られ、且つ所望の粒子径及び粒子径分布を有するラテックスを安定に得ることができる。
【0038】
アルキル(メタ)アクリレート成分、及び、グラフト単量体成分の重合に用いる重合開始剤は、アゾ系重合開始剤である。アゾ系重合開始剤を用いることで、POSi含有ビニル重合体の粉体中のイオン性物質を低減できる。
アゾ系重合開始剤は、油溶性アゾ系開始剤と水溶性アゾ系重合開始剤に分けることができる。
【0039】
油溶性アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0040】
水溶性アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオナミジン]水和物、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
水溶性アゾ系開始剤の中では、POSi含有ビニル重合体粉体中のイオン性物質を低減できることから、イオン性の低い水溶性アゾ系開始剤を用いることが好ましい。
【0041】
イオン性の低い水溶性アゾ系開始剤とは、アミド結合又はカルボキシル基を構造中に有することで水溶性を発現するアゾ系開始剤であり、例えば、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオナミジン]水和物、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)が挙げられる。
【0042】
アルキル(メタ)アクリレート成分、及び、グラフト単量体成分の重合では、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、他の重合開始剤を併用することができる。
他の重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメインハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等の有機過酸化物;前記有機過酸化物と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、L−アスコルビン酸、フルクトース、デキストロース、ソルボース、イノシトール等の還元剤と、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を組み合わせたレドックス系重合開始剤が挙げられる。
【0043】
グラフト単量体成分を重合する際には、ラテックスを安定化させ、POSi含有ビニル重合体の平均粒子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。
グラフト単量体成分を重合する際に用いる乳化剤としては、前述のPOSiのラテックスを製造する際に用いる乳化剤と同様のものが挙げられ、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が好ましい。
【0044】
グラフト単量体成分を重合する際に用いる乳化剤の使用量としては、POSi含有ビニル重合体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
乳化剤の使用量がPOSi含有ビニル重合体100質量部に対して0.1質量部以上であれば、POSi含有ビニル重合体の乳化分散状態が安定になり、10質量部以下であれば、得られる成形体の着色を抑制することができる。
【0045】
本発明のPOSi含有ビニル重合体は、乳化重合により製造され、ラテックスの形で得られる。
POSi含有ビニル重合体の質量平均粒子径としては、得られる成形体の耐衝撃性及び表面外観が良好となることから、50〜2,000nmが好ましい。
POSi含有ビニル重合体の平均粒子径が50nm以上であれば、得られる成形体の耐衝撃性が良好となり、2,000nm以下であれば、得られる成形体の耐衝撃性及び表面外観が良好となる。
【0046】
本発明のPOSi含有ビニル重合体粉体は、POSi含有ビニル重合体のラテックスを噴霧乾燥して得られる。
噴霧乾燥は、噴霧乾燥装置中にビニル重合体のラテックスを微小液滴状に噴霧した後に熱風を当てることによる乾燥をいう。
【0047】
噴霧乾燥装置中にビニル重合体のラテックスを微小液滴状に噴霧する方法としては、例えば、回転円盤式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、加圧二流体ノズル式等の方法が挙げられる。
噴霧乾燥装置の容量としては、実験室で使用するような小規模な容量から工業的に使用するような大規模な容量までのいずれであってもよい。
噴霧乾燥装置における乾燥用加熱ガスの供給部の構造、乾燥用加熱ガス及び乾燥粉末の排出部の構造は、目的に応じて適宜選択すればよい。
乾燥用加熱ガスの温度は200℃以下が好ましく、120〜180℃がより好ましい。
【0048】
本発明において、ビニル重合体粉体を得るために用いるビニル重合体のラテックスは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
本発明において、噴霧乾燥時のビニル重合体粉体のブロッキングや嵩比重等の粉体特性を向上させるために、ビニル重合体のラテックスにシリカ等の無機微粒子を添加して噴霧乾燥することができる。また、酸化防止剤等の安定剤を添加することもできる。
【0049】
本発明のPOSi含有ビニル重合体粉体の体積平均粒子径は10〜200μmであることが好ましい。
POSi含有ビニル重合体粉体の体積平均粒子径が10μm以上であれば、樹脂組成物中でのPOSi含有ビニル重合体粉体の分散性が良好となり、200μm以下であれば、樹脂組成物中でのPOSi含有ビニル重合体粉体の分散性が良好となり、得られる成形体の耐衝撃性が向上する。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のPOSi含有ビニル重合体粉体及び熱可塑性樹脂を含む。
熱可塑性樹脂樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体(MS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリル酸エステル・スチレン・アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル・エチレン・プロピレンゴム・スチレン共重合体(AES)等のスチレン(St)系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル(Ac)系樹脂;PC樹脂;ポリアミド(PA)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル(PEs)樹脂;(変性)ポリフェニレンエーテル((m−)PPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリスルフォン(PSO)樹脂、ポリアリレート(PAr)樹脂、ポリフェニレン(PPS)樹脂等のエンジニアリングプラスチックス;熱可塑性ポリウレタン(PU)樹脂;PC/ABS等のPC樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PVC/ABS等のPVC系樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PA/ABS等のPA樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PA樹脂とTPEとのアロイ、PA/PP等のPA樹脂とポリオレフィン系樹脂とのアロイ、PC/PBT等のPC樹脂とPEs樹脂とのアロイ、ポリオレフィン系樹脂/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ、PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂同士のアロイ、PVC/PMMA等のPVC系樹脂とAc系樹脂とのアロイ等のポリマーアロイ;硬質塩化ビニル樹脂、半硬質塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等のPVC系樹脂が挙げられる。
これらの中でも、PEs樹脂、PA樹脂、PU樹脂、POM樹脂、PC樹脂、St系樹脂が好ましい。また、PC/ABS等のPC樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PA/ABS等のPA樹脂とSt系樹脂とのアロイ、PA樹脂とTPEとのアロイ、PA/PP等のPA樹脂とポリオレフィン系樹脂とのアロイ、PC/PBT等のPC樹脂とPEs樹脂とのアロイが好ましい。
【0051】
熱可塑性樹脂組成物の調製方法として、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー等でPOSi含有ビニル重合体粉体並びに熱可塑性樹脂の粉体又は粒状物を混合した後に押出機、ニーダー、ミキサー等で溶融混合する方法、予め溶融させた熱可塑性樹脂に残りのものを逐次混合していく方法が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、各種添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、フェノール系安定剤、燐系安定剤、紫外線吸収剤、アミン系光安定剤等の安定剤;燐系、ブロム系、シリコーン系、有機金属塩系等の難燃剤;耐加水分解性等の各種物性を付与するための改質剤;酸化チタン、タルク等の充填剤;染顔料;可塑剤が挙げられる。
【0052】
熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、熱可塑性樹脂組成物又はPOSi含有ビニル重合体粉体と熱可塑性樹脂の混合物を、射出成形機で成形する方法が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。尚、以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
実施例に示した各種物性の評価は、以下に示す方法により実施した。
【0054】
(1)固形分
POSi、POSi含有ビニル重合体のラテックスを180℃の熱風乾燥機で30分間乾燥し、下記式により固形分を算出した。
固形分[%]=(180℃で30分間乾燥した後の残渣の質量)/(乾燥前のラテックスの質量)×100
【0055】
(2)質量平均粒子径
POSi、POSi含有ビニル重合体のラテックスを脱イオン水で濃度約3%に希釈したものを試料として、粒度分布計(米国MATEC社製、商品名;CHDF2000型)を用いて質量平均粒子径を測定した。
測定はMATEC社が推奨する下記の標準条件で行なった。
カートリッジ:粒子分離用キャピラリー式カートリッジ(商品名;C−202)
キャリア液 :専用キャリア液(商品名;2XGR500)
キャリア液の液性:ほぼ中性
キャリア液の流速:1.4mL/分
キャリア液の圧力:約4,000psi(2,600kPa)
測定温度 :35℃
試料使用量:0.1mL
また、標準粒子径物質としては、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンで、40〜800nmの粒子径の範囲で合計12点の粒子径のものを用いた。
【0056】
(3)アウトガス量の測定
POSi含有ビニル重合体粉体を試料として、ヘッドスペースGC−MS(Agilent社製、商品名;5975)を用いてアウトガス量の定量を行なった。アウトガス量はGC−MSクロマトグラムのピーク面積の合計量で比較した。
測定は下記の条件にて行なった。
カラム:DB−WAX 長さ30m×内径0.25mm(φ)、膜厚0.25μm
40℃/3分 → 230℃/8分 (レート10℃/分)
注入口:230℃ スプリット比20:1 流量1.0L/分
インターフェース:250℃
ヘッドスペース試料加熱条件:180℃/10分
試料量:0.05g
【0057】
(4)メルトフローレート(MFR)
熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間乾燥した後、メルトインデクサー(テクノ・セブン(株)製、商品名;L−243−1531型)を用いて、JIS K7210に準じ、予熱5分の条件で測定した。
【0058】
(5)耐加水分解性
熱可塑性樹脂組成物のペレットをプレッシャークッカー(平山製作所(株)製、商品名;PC304RIII型)を用い、120℃で100%RH条件下に60時間置いて湿熱処理した。次いで、湿熱処理した試料を80℃で12時間乾燥した後、メルトインデクサー(テクノ・セブン(株)製、商品名;L−243−1531型)を用いて、JIS K7210に準じてMFRを測定し、下記式によりΔMFRを算出して耐加水分解性を評価した。ΔMFRの値が小さいものほど、耐加水分解性に優れていることを示す。
ΔMFR[%]={(湿熱処理後のMFR)/(湿熱処理前のMFR)×100}−100
【0059】
(6)耐熱分解性
熱可塑性樹脂組成物のペレットを80℃で12時間乾燥した後、予熱30分の条件で、メルトインデクサー(テクノ・セブン(株)製、商品名;L−243−1531型)を用いて、JIS K 7210に準じてMFRを測定し、下記式によりΔMFRを算出して耐熱分解性を評価した。ΔMFRの値が小さいものほど、耐熱分解性に優れていることを示す。
ΔMFR[%]={(予熱30分後のMFR)/(予熱5分後のMFR)×100}−100
【0060】
(7)シャルピー衝撃強度
熱可塑性樹脂組成物の試験片を用いてJIS K7111に準じてシャルピー衝撃強度を測定した。
【0061】
[製造例1]POSi(S−1)のラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン97.5部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部及びテトラエトキシシラン2.0部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、脱イオン水150部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBSNa)0.67部を溶解した溶液を添加し、ホモミキサーにて10,000rpmで5分間攪拌した。次いで、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通過させて、シロキサンラテックスを得た。
【0062】
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに上記のシロキサンラテックスを投入し、更に触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸0.5部を添加し、シロキサンラテックス組成物を得た。次いで、得られたシロキサンラテックス組成物を80℃に加熱した状態で8時間温度を維持してオルガノシロキサンを重合させた。
重合後、重合物を冷却して、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.0に中和し、POSi(S−1)のラテックスを得た。
POSi(S−1)のラテックスの固形分は35.5%、質量平均粒子径は220nmであった。
【0063】
[製造例2]POSi(S−2)のラテックスの製造
POSi(S−1)のラテックスの製造において、DBSNa0.67部の代わりにポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテル(花王(株)製ノニオン系乳化剤、商品名;エマルゲン4085)1.0部を用いたこと以外は製造例1と同様にして、POSi(S−2)のラテックスを得た。
POSi(S−2)のラテックスの固形分は35.5%、質量平均粒子径は700nmであった。
【0064】
[製造例3]POSi(S−3)のラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98.04部及び、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン1.96部を混合し、オルガノシロキサン混合物100部を得た。これに、脱イオン水313部にDBSNa 0.68部を溶解した溶液を添加し、ホモミキサ−にて10,000rpmで5分間攪拌した。次いで、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通過させて、シロキサンラテックスを得た。
【0065】
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と脱イオン水92部とを投入し、12.4%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、上記のシロキサンラテックスを8時間に亘って滴下し、滴下終了後、2時間温度を維持してオルガノシロキサンを重合させた。
重合後、重合物を冷却して、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.0に中和し、POSi(S−3)ラテックスを得た。
POSi(S−3)のラテックスの固形分は18.7%、質量平均粒子径は80nmであった。
【0066】
[製造例4]POSi含有ビニル重合体(G−1)のラテックスの製造
製造例1で得られたPOSi(S−1)のラテックス84.5部(POSi(S−1)として30.0部)を、冷却管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに投入し、更に脱イオン水57.5部、n−ブチルアクリレート(nBA)39.01部、アリルメタクリレート(AMA)0.99部を添加、混合した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行ない、70℃まで昇温した。液温が70℃となった時点で4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(和光純薬工業(株)製、商品名;V−501)0.07部及び脱イオン水5.0部の混合液を添加し、重合を開始させた。その後、内温70℃で1時間保持し、重合を完了して複合ゴムのラテックスを得た。
【0067】
得られた複合ゴムのラテックスに、V−501 0.006部、エマルゲンA−500(商品名、花王(株)製ノニオン系乳化剤(ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル))2.0部、脱イオン水5.0部を添加し、次いで、アクリロニトリル(AN)9.0部、スチレン(St)21.0部の混合液(グラフト単量体成分)を70℃にて2時間かけて滴下し、その後70℃で1時間保持して重合を完了して、POSi含有ビニル重合体(G−1)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−1)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表中の略語
AIBN :2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
V65 :2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) (和光純薬工業(株)製、商品名)
V501 :4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド) (和光純薬工業(製)、商品名)
VA044:2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩 (和光純薬工業(株)製、商品名)
VA057:2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオナミジン]水和物 (和光純薬工業(株)製、商品名)
CHP :キュメインハイドロパーオキサイド
KPS :過硫酸カリウム
Fe :硫酸第一鉄
EDTA:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩
SFS :ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート
A500:ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル (花王(株)製ノニオン系乳化剤、商品名;エマルゲンA500)
4085:ポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテル (花王(株)製ノニオン系乳化剤、商品名;エマルゲン4085)
SC6103:ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸カルシウム (東邦化学工業(株)製アニオン系乳化剤、商品名;フォスファノールSC−6103)
DBSNa:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0070】
[製造例5〜9]POSi含有ビニル重合体(G−2〜G−6)のラテックスの製造
POSi、重合開始剤、乳化剤として、表1に示すものを用いた。それ以外は製造例4と同様にして、POSi含有ビニル重合体(G−2〜G−6)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−2〜G−6)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0071】
[製造例10]POSi含有ビニル重合体(G−7)のラテックスの製造
製造例1で得られたPOSi(S−1)のラテックス84.5部(POSi(S−1)として30.0部)を、冷却管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに投入し、更に脱イオン水62.5部、nBA 39.01部、AMA 0.99部、AIBN 0.05部を添加、混合した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行ない、70℃まで昇温し、重合を開始させた。その後、内温70℃で1時間保持し、重合を完了して複合ゴムのラテックスを得た。
【0072】
得られた複合ゴムのラテックスに、V−501 0.006部、A−500 2.0部、脱イオン水5.0部を添加し、次いで、AN 9.0部、St 21.0部のグラフト単量体成分を70℃にて2時間かけて滴下し、その後60℃で1時間保持して重合を完了して、POSi含有ビニル重合体(G−7)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−7)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0073】
[製造例11]POSi含有ビニル重合体(G−8)のラテックスの製造
製造例10と同様にして、複合ゴムのラテックスを得た。
得られた複合ゴムのラテックスに、A−500 2.0部、脱イオン水5.0部を添加し、次いで、AIBN 0.006部、AN 9.0部、St 21.0部の混合液(グラフト単量体成分にアゾ系重合開始剤を配合したもの)を70℃にて2時間かけて滴下し、その後60℃で1時間保持して重合を完了して、POSi含有ビニル重合体(G−8)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−8)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0074】
[製造例12]POSi含有ビニル重合体(G−9)のラテックスの製造
POSi含有ビニル重合体(G−8)のラテックスの製造において、AIBNをV65に代えたこと以外は製造例11と同様にして、POSi含有ビニル重合体(G−9)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−9)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0075】
[製造例13]POSi含有ビニル重合体(G−10)のラテックスの製造
製造例1で得られたPOSi(S−1)のラテックス84.5部(POSi(S−1)として30.0部)を、冷却管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに投入し、更に脱イオン水57.5部、nBA 39.01部、AMA 0.99部を添加、混合した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行ない、60℃まで昇温した。液温が60℃となった時点で過硫酸カリウム(KPS)0.07部及び脱イオン水5.0部の混合液を添加し、重合を開始させた。その後、内温60℃で1時間保持し、重合を完了して複合ゴムのラテックスを得た。
【0076】
得られた複合ゴムのラテックスに、DBSNa 0.25部、脱イオン水5.0部を添加し、次いで、AN 9.0部、St 21.0部の混合液(グラフト単量体成分)を70℃にて2時間かけて滴下し、その後70℃で1時間保持して重合を完了して、POSi含有ビニル重合体(G−10)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−10)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0077】
[製造例14]POSi含有ビニル重合体(G−11)のラテックスの製造
DBSNa 0.25部の代わりにA−500 2.0部を用いたこと以外は製造例13と同様にして、POSi含有ビニル重合体(G−11)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−11)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0078】
[製造例15]POSi含有ビニル重合体(G−12)のラテックスの製造
製造例1で得られたPOSi(S−1)のラテックス84.5部(POSi(S−1)として30.0部)を、冷却管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに投入し、更に脱イオン水57.5部、nBA 39.01部、AMA 0.99部、キュメインハイドロパーオキサイド(CHP)0.08部を添加、混合した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行ない、60℃まで昇温した。液温が60℃となった時点で硫酸第1鉄(Fe)0.0005部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)0.0015部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.2部及び脱イオン水5.0部の混合液を添加し、重合を開始させた。その後、内温60℃で1時間保持し、重合を完了して複合ゴムのラテックスを得た。
気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行ない、65℃まで昇温して、重
【0079】
得られた複合ゴムのラテックスに、DBSNa 0.25部、脱イオン水5.0部を添加し、次いで、CHP 0.06部、AN 9.0部、St 21.0部との混合液を70℃にて2時間かけて滴下し、その後70℃で1時間保持して重合を完了して、POSi含有ビニル重合体(G−12)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−12)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0080】
[製造例16]POSi含有ビニル重合体(G−13)のラテックスの製造
DBSNa 0.25部の代わりにA−500 2.0部を用いたこと以外は製造例15と同様にして、POSi含有ビニル重合体(G−13)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−13)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表1に示す。
【0081】
[製造例17]POSi含有ビニル重合体(G−14)のラテックスの製造
製造例3で得られたPOSi(S−3)のラテックス28.1部(POSi(S−3)として5.2部)を、冷却管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに投入した。脱イオン水196部を加えた後、DBSNa 0.4部、nBA 67.7部、AMA 2.1部、V65 0.02部を添加、混合した。
このセパラブルフラスコに窒素合を開始させた。その後、75℃で1時間保持し、重合を完了して複合ゴムのラテックスを得た。
【0082】
得られた複合ゴムのラテックスに、VA057 0.015部と脱イオン水5部を添加し、次いで、メチルメタクリレート(MMA)12.5部を20分間かけて滴下し、30分間この状態を維持した。
その後、VA057 0.015部と脱イオン水5部を添加し、次いで、AN 3.1部、St 9.4部の混合液を25分間かけて滴下し、その後75℃で1時間保持して重合を完了し、POSi含有ビニル重合体(G−14)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−14)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表2に示す。
【0083】
[製造例18]POSi含有ビニル重合体(G−15)のラテックスの製造
製造例3で得られたPOSi(S−3)のラテックス28.1部(POSi(S−3)として5.2部)を、冷却管、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに投入した。脱イオン水206部を加えた後、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(花王(株)製、商品名;エマール20C)0.4部、nBA 67.7部、AMA 2.1部、t−ブチルハイドロパーオキサイド(tBH)0.28部を添加、混合した。
このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行ない、55℃まで昇温した。液温が55℃となった時点でFe 0.0001部、EDTA 0.0003部、SFS 0.3部を脱イオン水3.3部に溶解させた水溶液を添加し、重合を開始させた。その後、75℃で1時間保持し、重合を完了して複合ゴムのラテックスを得た。
【0084】
得られた複合ゴムのラテックスに、tBH 0.06部とMMA 12.5部の混合液を20分間かけて滴下し、30分間この状態を維持した。
その後、tBH 0.06部、AN 3.1部、St 9.4部の混合液を25分間かけて滴下し、その後75℃で1時間保持して重合を完了し、POSi含有ビニル重合体(G−15)のラテックスを得た。
POSi含有ビニル重合体(G−15)の質量平均粒子径、ラテックスの固形分を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
表中の略語
20C:ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム
【0087】
[実施例1]
POSi含有ビニル重合体(G−1)のラテックスを、アトマイザー式噴霧乾燥機(大川原化工機(株)製、商品名;L−8型スプレードライヤー)を用いて、乾燥用加熱ガスの入口温度140℃及び出口温度65℃で噴霧乾燥し、POSi含有ビニル重合体(G−1)の粉体を得た。
次いで、POSi含有ビニル重合体(G−1)の粉体5部及びPC樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名;ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量24,000)95部を、30mmφ二軸押出機(L/D=30)を用いてシリンダー温度280℃及びスクリュー回転数200rpmで溶融混合して熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、この熱可塑性樹脂組成物をペレット状に賦形した。
得られたペレットを80℃で12時間乾燥した後、100t射出成形機(住友重機(株)製、商品名;SE−100DU)に供給し、シリンダー温度280℃及び金型温度80℃で射出成形を行ない、JIS K7152に準じてファミリー金型を用いシャルピー衝撃試験用の試験片(ノッチあり)を得た。ペレット及び試験片を用いた各種評価結果を表3に示す。
【0088】
[実施例2〜8、比較例1〜5]
POSi含有ビニル重合体(G−1)のラテックスの代わりにPOSi含有ビニル重合体(G−2〜G−8)、(G−10〜G−13)のラテックスを用いた。それ以外は実施例1と同様にして、表3に示す配合で、ペレット及び試験片を得た。ペレット及び試験片を用いた各種評価結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
[実施例9]
POSi含有ビニル重合体(G−9)のラテックスを、アトマイザー式噴霧乾燥機(大川原化工機(株)製、商品名;L−8型スプレードライヤー)を用いて、乾燥用加熱ガスの入口温度140℃及び出口温度65℃で噴霧乾燥し、POSi含有ビニル重合体(G−9)の粉体を得た。
次いで、POSi含有ビニル重合体(G−9)の粉体10部及びPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスッチックス(株)製、商品名;ノバデュラン5010R5)90部を、30mmφ二軸押出機(L/D=30)を用いてシリンダー温度260℃及びスクリュー回転数200rpmで溶融混合して熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、この熱可塑性樹脂組成物をペレット状に賦形した。
得られたペレットを80℃で12時間乾燥した後、100t射出成形機(住友重機(株)製、商品名;SE−100DU)に供給し、シリンダー温度260℃及び金型温度80℃で射出成形を行ない、JIS K7152に準じてファミリー金型を用いシャルピー衝撃試験用の試験片(ノッチあり)を得た。ペレット及び試験片を用いた各種評価結果を表4に示す。
【0091】
[比較例6]
POSi含有ビニル重合体(G−9)粉体を用いないこと以外は実施例9と同様にして、ペレット及び試験片を得た。各種評価結果を表4に示す。
【0092】
[実施例10]
実施例9で得られたPOSi含有ビニル重合体(G−9)の粉体10部及びPA樹脂(宇部興産(株)製、商品名;UBEナイロン1015B(ナイロン6))90部を、30mmφ二軸押出機(L/D=30)を用いてシリンダー温度250℃及びスクリュー回転数200rpmで溶融混合して熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、この熱可塑性樹脂組成物をペレット状に賦形した。
得られたペレットを80℃で12時間真空乾燥した後、100t射出成形機(住友重機(株)製、商品名;SE−100DU)に供給し、シリンダー温度250℃及び金型温度80℃で射出成形を行ない、JIS K7152に準じてファミリー金型を用いシャルピー衝撃試験用の試験片(ノッチあり)を得た。ペレット及び試験片を用いた各種評価結果を表4に示す。
【0093】
[比較例7]
POSi含有ビニル重合体(G−9)粉体を用いないこと以外は実施例10と同様にして、ペレット及び試験片を得た。各種評価結果を表4に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
[実施例11、比較例8]
POSi含有ビニル重合体(G−14及びG−15)のラテックスを、アトマイザー式噴霧乾燥機(大川原化工機(株)製、商品名;L−8型スプレードライヤー)を用いて、乾燥用加熱ガスの入口温度140℃及び出口温度65℃で噴霧乾燥し、POSi含有ビニル重合体(G−14及びG−15)の粉体を得た。得られた粉体のアウトガス量を表5に示す。
次いで、POSi含有ビニル重合体(G−14及びG−15)の粉体33.3部及びAS樹脂(UMG ABS社(株)製、商品名;AP−H)66.7部を、30mmφ二軸押出機(L/D=30)を用いてシリンダー温度230℃及びスクリュー回転数200rpmで溶融混合して熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、この熱可塑性樹脂組成物をペレット状に賦形した。
得られたペレットを80℃で12時間乾燥した後、100t射出成形機(住友重機(株)製、商品名;SE−100DU)に供給し、シリンダー温度230℃及び金型温度60℃で射出成形を行ない、JIS K7152に準じてファミリー金型を用いシャルピー衝撃試験用の試験片(ノッチあり)を得た。ペレット及び試験片を用いた各種評価結果を表5に示す。
【0096】
【表5】

【0097】
表3から明らかなように、実施例1〜8の熱可塑性樹脂組成物は、比較例2〜5の熱可塑性樹脂組成物と比較して湿熱処理後のMFRの増加率が小さく、耐加水分解性が良好であることが確認された。更に、300℃で30分予熱後のMFRの増加率も小さく、耐熱分解性も良好であることが確認された。
実施例1〜8の成形体は、比較例1の成形体と比較して、低温でのシャルピー衝撃強度が優れることが確認された。また、比較例2〜5の成形体と比較して、シャルピー衝撃強度が優れることが確認された。
【0098】
比較例2及び3の熱可塑性樹脂組成物は、アゾ系重合開始剤を用いず、過硫酸カリウムを用いたPOSi含有ビニル重合体の粉体を配合したものである。過硫酸カリウムを用いることでPOSi含有ビニル重合体粉体中のイオン性物質の量が多くなり、熱可塑性樹脂組成物の耐加水分解性及び耐熱分解性を低下させることが確認された。また、得られた成形体のシャルピー衝撃強度の向上効果は、充分ではなかった。
比較例4及び5の熱可塑性樹脂組成物は、アゾ系重合開始剤を用いず、レドックス系重合開始剤を用いたPOSi含有ビニル重合体の粉体を配合したものである。レドックス系重合開始剤を用いることでPOSi含有ビニル重合体粉体中のイオン性物質の量が多くなり、熱可塑性樹脂組成物の耐加水分解性及び耐熱分解性を低下させることが確認された。また、得られた成形体のシャルピー衝撃強度の向上効果は、充分ではなかった。
【0099】
表4から明らかなように、実施例9及び10の熱可塑性樹脂組成物は、比較例6及び7の熱可塑性樹脂組成物と比較して、250℃で30分予熱後のMFRの増加率が同程度であり、耐熱分解性を低下させないことが確認された。
実施例9及び10の成形体は、比較例6及び7の成形体と比較して、シャルピー衝撃強度が優れることが確認された。
【0100】
表5から明らかなように、実施例11のPOSi含有ビニル重合体(G−14)粉体は、比較例8のPOSi含有ビニル重合体(G−15)粉体と比較して、アウトガスの発生量が少ないことが確認された。
実施例11の熱可塑性樹脂組成物は、比較例8の熱可塑性樹脂組成物と比較して、240℃で30分予熱後のMFRの増加率が同程度であり、耐熱分解性を低下させないことが確認された。
実施例11の成形体は、比較例8の成形体と比較して、シャルピー衝撃強度が優れることが確認された。
また、実施例11の成形体は、アウトガスの発生量の少ないPOSi含有ビニル重合体(G−14)粉体を配合していることから、比較例8の成形体と比較して、成形加工時に発生するアウトガスの量が少なく、臭気が低減されていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性が向上し、耐加水分解性及び耐熱分解性の低下が抑制された成形体を与えることができる。本発明の成形体は、耐衝撃性が向上し、耐加水分解性及び耐熱分解性の低下が抑制されることから、自動車分野、電気・電子機器分野、OA機器分野の他、リサイクル材を用いる用途等で有用である。
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形加工時に発生するアウトガスの量が抑制されることから、特に大型成形品のロングラン成形が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾ系重合開始剤を用いて乳化重合して得られたポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体のラテックスを噴霧乾燥して得られたポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体粉体及び、
熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオルガノシロキサン含有ビニル重合体のラテックスが、ポリオルガノシロキサン及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴムから構成される複合ゴムラテックスの存在下で、ビニル単量体を重合して得られるラテックスである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体。

【公開番号】特開2011−26586(P2011−26586A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148820(P2010−148820)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】