説明

熱回収部の伝熱管群の交換方法及び伝熱管群を交換するための仮設構造体

【課題】熱回収部の内部構造物に掛かる負荷を低減して、手間と工数を掛けずに熱回収部の伝熱管群を交換可能な方法を提供することである。
【解決手段】
伝熱管群30を支持する左右の側面フレーム32の抜き出し側端部に仮設フレーム40を接合して、左右の側面フレーム32と仮設フレーム40と伝熱管群30とからなる一体的な伝熱管群構造体を形成する。仮設フレーム40を持ち上げることで、伝熱管群構造体とその支持梁34との間に摩擦低減用のプレート46、47を取り付けて、伝熱管群構造体をプレート46、47上に載置して熱回収部4から抜き出すことで伝熱管群30の交換を行う。支持梁34上に摩擦低減用プレート46、47を設けることで、伝熱管群30の抜き出し力を大幅に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラなどの排煙処理の付属設備における排ガスの温度を吸収するガス−ガスヒータ(GGH)熱回収部に係わり、特にGGHの伝熱管群(チューブバンドル)の好適な交換方法及び伝熱管群を交換するための仮設構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、石炭焚きボイラから排出される排ガス中には窒素酸化物、硫黄酸化物及び煤煙などが含まれているため、前記石炭焚きボイラの排ガス流路の下流側に排煙処理装置を設置し、排ガス中の前記物質を除去した後、清浄なガスとして大気に放出している。
【0003】
図1には、ボイラからの排ガスを処理する一般的な排煙処理装置の系統図を示す。
ボイラ1から排出される燃焼排ガスは350℃〜400℃で脱硝装置2に導入され、脱硝装置2において脱硝触媒により排ガス中の窒素酸化物(NOx)が除去される。そして、排ガスはエアヒータ(A/H)3において熱交換され、例えば120℃〜160℃程度に減温され、更にガスガスヒータ(GGH)熱回収部4において、例えば60℃〜110℃程度に減温される。
【0004】
そして、乾式の電気集塵機5において大部分のフライアッシュ(石炭を燃焼させた時に発生する微粉末の灰)、ダストなどが除去される。次に、排ガスは湿式脱硫装置6に導入されて、排ガス中の硫黄酸化物(主にSO2)が除去される。そして、湿式脱硫装置6から排出された排ガスは、例えば40℃〜60℃程度まで低下し、水分飽和状態になっていることから、白煙防止のためにガスガスヒータ再加熱部7で110℃程度に加温され、ファンを介して煙突8から大気に排出される。
【0005】
ここで、GGH熱回収部4には、以下の問題が生じる。
GGH熱回収部4は電気集塵機5よりも排ガス流路の上流側であるため、非常に多くのフライアッシュやダストを含む排ガスが通過する。GGH熱回収部4の伝熱管は熱交換効率を高めるためにフィンチューブが使われているため、フィンチューブの目詰まりが生じたり、また局部的に流速が速い箇所ではフライアッシュの衝突による磨耗が進展してフィンチューブの漏洩が発生したりする。
【0006】
フィンチューブの目詰まりに対しては、GGH熱回収部4の上部より多量の鋼球を定期的に落下させたり、又はフィンチューブのバンドル(伝熱管群)間にスートブロワーを設け、定期的に運転することで、フライアッシュ等による目詰まりを防止している。しかしながら、長時間の運転時間では、フライアッシュによる磨耗や鋼球によるバンドルチューブの磨耗などに伴うフィンチューブの漏洩対策が必要となり、この補修としては、交換作業による長時間の運転停止を防止するため、例えばバンドル中の漏洩の危険性のある特定の管を封管したり、又は特定のバンドルを封止するために、バンドルとバンドルとを連絡する連絡菅を封管して運転を継続している。しかしながら、いずれは熱交換の性能を維持するためにはバンドル毎全体の取替えが必要となってくる。
【0007】
図14〜図20には、GGH熱回収部4の組み立て時の構造及びその手順を説明するため、GGH熱回収部4の内部構造を表した斜視図を示す。
まず、下部架台11を組み立てた後、GGH熱回収部4のケーシング26,27,28の柱及び下段の支持梁34を下部架台11上に組み立て、更に側面ケーシング26、後面ケーシング28及び中間仕切りケーシング27を組み立てる。
【0008】
次に、下段のフィンチューブバンドル層23(図3)をクレーン36により地上から持ち上げて下段の支持梁34上に設置し、全ての下段のフィンチューブバンドル層23を設置した後、中間の支持梁34を支持柱33(以下、支持ポストと称する)間に取り付ける。
【0009】
上記作業を中間のフィンチューブバンドル層24、上段のフィンチューブバンドル層25と順次下部より組み立てて、最後にフレーム38(図19)を、ケーシング26,27,28間に梁をトラス構造状に設け、溶接した後、地上で組み立てた入り口ダクト21(図20)を取り付けて、作業は完了する。
【0010】
GGH熱回収部4は、このように据付時において下段のフィンチューブバンドル層23から順次中段のフィンチューブバンドル層24、上段のフィンチューブバンドル層25、入り口ダクト21と下から上へと積み上げていく段積み構造である。したがって、フィンチューブバンドルの交換、取替え時の問題として、損傷したフィンチューブバンドルの抜き出しを行うためには、据付時と逆の方法で入り口ダクト21を撤去し、上段の支持梁34、上段のフィンチューブバンドル層25の抜き出しを行い、損傷したフィンチューブバンドルの部分まで順次取り外して施工しなければならず、フィンチューブバンドルの取替えには非常に手間と工数が掛かり不経済であった。
なお、フィンチューブバンドル層23,24,25間には、メンテナンスを考慮して、人が侵入できるスペースが数十センチずつ設けてある。
【0011】
上記のように、GGH熱回収部4はフィンチューブバンドルを支持梁34上に単純に載せた構造ではあるが、長期の排煙処理装置の運転条件により、フィンチューブバンドルを内装するフレーム(側面フレーム)と支持梁34が錆等で固着した状態になると、フィンチューブバンドルのフレームを抜き出すためにはフレームと支持梁34との接触面の摩擦抵抗以上の大きな引っ張り力を必要とする。通常、フィンチューブバンドルの質量が約40トンでは引っ張り力は20トン以上となる。
【0012】
このような大きな引っ張り力でフィンチューブバンドルの抜き出しを行うためには、GGH熱回収部の外部にジャッキを設定するための構造物の設置や、ジャッキの巨大化などの問題や、またその引っ張り力に対応する内部支持梁への反力によりGGH熱回収部の内部構造物に負荷がかかることによる変形や損傷等の問題がある。特に、引っ張り部分や支持梁の横荷重に対する強度不足が発生するため、実際に行うことは難しい。
【0013】
下記特許文献1には、このような熱回収部の内部構造として、熱交換用の伝熱管のブロック(バンドルと同義)にダクトの天井の一部を結合させることにより、この伝熱管ブロックをダクト内に挿入、配設するだけで、別途天井を設置する手間を省き、作業工程を削減することが開示されている。
【0014】
そして、下記特許文献2には、流動炉内の流動層内に設置される熱交換用の伝熱管群のブロックを管列方向に複数に分割したブロック構造とし、伝熱管群の取り付けの際には各ブロックを対向する水壁から炉内に向かって互いに隣接するように交互に挿入設置することで、伝熱管群の取り付けの効率化を図る構成が開示されている。
この伝熱管群のブロックを取り付ける又は取り外す際には、炉外ではクレーンを使用し、炉内では流動層底部の分散板上で台車を使用して水壁の開口部から伝熱管群を挿入して設置する。
【0015】
また、下記特許文献3には、熱交換用の伝熱管群ではないが、触媒反応装置内の集積触媒ユニットの設置に関し、集積触媒ユニットを組付け用台車に載置してウインチ、ワイヤー等により台車を引いて集積触媒ユニットの組付けを行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−42960号公報
【特許文献2】実開昭63−167001号公報
【特許文献3】特公昭62−29089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1に記載の構成により、伝熱管のブロックをダクトに据え付ける際には作業工程を削減することはできるが、伝熱管のブロックを交換する際には、上述のように据付時と逆の方法で取り外す必要があり、非常に手間と工数が掛かる。
【0018】
また、特許文献2や特許文献3に記載の構成では、台車を使用することで、作業者の負担は軽減されるが、所定の伝熱管群を抜き出すためには、摩擦力に対抗する大きな抜き出し力が必要となる。したがって、上述のように熱回収部の外部に設置する構造物(ジャッキ等)の問題、またその抜き出し力に対応する内部支持梁への反力によって生じる熱回収部の内部構造物への負荷などの問題がある。
【0019】
本発明の課題は、上記問題を解決し、熱回収部の内部構造物に掛かる負荷を低減して、手間と工数を掛けずに熱回収部の伝熱管群を交換可能な方法及び熱回収部の伝熱管群を交換するための仮設構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の上記課題は、熱回収部の伝熱管群を一旦持ち上げることを可能とし、そして伝熱管群の引き抜き時の引っ張り力を大幅に低減するため、摩擦力を低減できるように、伝熱管群の滑り面にスライディングプレートを設置することにより達成できる。
【0021】
すなわち、本発明の上記課題は以下の方法により達成される。
この方法は、まず伝熱管群を支持するフレームに延長用のフレームを接合して延長し、この延長フレームを持ち上げ、延長フレームと伝熱管群の載置部(支持梁など)との間に、摩擦力を低減するためのスライディングプレートを取り付ける。スライディングプレートとして、摩擦軽減用の板を貼り付けて一体化したピース製品を用いても良い。その後、延長フレームを下ろして、伝熱管群(支持フレーム)をスライディングプレート上に載置し、延長フレームと共に伝熱管群を引き抜き、地上に下ろすという工法である。
【0022】
具体的には、本発明の課題は、次の手段により解決することができる。
請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から発生する排ガスから熱回収を行うための熱媒体を通す伝熱管群を備えた熱回収部の前記伝熱管群を抜き出して交換する熱回収部の伝熱管群の交換方法において、略水平に設けた伝熱管群の抜き出し方向に沿って該伝熱管群を支持する支持フレームの伝熱管群の抜き出し側端部に仮設フレームを接合して、前記支持フレームと仮設フレームと伝熱管群とからなる一体的な伝熱管群構造体を形成し、前記仮設フレームを持ち上げて、前記伝熱管群構造体と伝熱管群構造体を載置する載置部との間に、伝熱管群構造体を抜き出す際の摩擦を低減するためのスライディング用のプレートを取り付けて、伝熱管群構造体をスライディング用のプレート上に載置し、前記伝熱管群構造体を熱回収部から抜き出すことで伝熱管群の交換を行う熱回収部の伝熱管群の交換方法である。
【0023】
請求項2記載の発明は、前記載置部が梁の場合に、スライディング用のプレートとして、断面がU字型のフレームの突面部にスライディング部を設けたU字型スライディングプレートを使用し、前記伝熱管群構造体の抜き出し方向に対して伝熱管群構造体の側面視で逆U字型になるようにU字型スライディングプレートを梁に被せて取り付け、前記伝熱管群構造体をU字型スライディングプレート上に載置し、前記伝熱管群構造体を熱回収部から抜き出すことで伝熱管群の交換を行う請求項1記載の熱回収部の伝熱管群の交換方法である。なお、U字型とは、半円状をも含み、角がない丸みを帯びた形状のみならず、角があるコの字型のものや、コの字型の角部が短い辺となっている多角形状のものも含む意である。
【0024】
請求項3記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から発生する排ガスから熱回収を行うための熱媒体を通す伝熱管群を備えた熱回収部の前記伝熱管群を抜き出して交換する熱回収部の伝熱管群の交換用仮設構造体において、略水平に設けた伝熱管群と、該伝熱管群の抜き出し方向に沿って該伝熱管群を支持する支持フレームと、該支持フレームの伝熱管群の抜き出し側端部に接合した仮設フレームとからなる一体的な伝熱管群構造体と、該伝熱管群構造体を載置する載置部と、前記仮設フレームを持ち上げる持ち上げ部材と、該持ち上げ部材により持ち上げられる伝熱管群構造体と前記載置部との間に取り付けられ、前記伝熱管群構造体を載置して該伝熱管群構造体を抜き出す際の摩擦を低減するためのスライディング用のプレートとの組み合わせからなり、前記伝熱管群構造体を熱回収部から抜き出すことで伝熱管群の交換が可能である熱回収部の伝熱管群の交換用仮設構造体である。
【0025】
請求項4記載の発明は、前記載置部は梁であって、前記スライディング用のプレートは断面がU字型のフレームの突面部にスライディング部を設けたU字型スライディングプレートであり、該U字型スライディングプレートが前記伝熱管群構造体の抜き出し方向に対して伝熱管群構造体の側面視で逆U字型になるように梁に被せて取り付けられている請求項3記載の熱回収部の伝熱管群の交換用仮設構造体である。
【0026】
(作用)
熱回収部の伝熱管群を容易に抜き出せるようにするためには、伝熱管群と該伝熱管群が載置される載置部(例えば、伝熱管群と伝熱管群の支持梁(受け梁)との間)の摩擦抵抗を大幅に低減することが必要である。その方法として、伝熱管群とその載置部との接触面にスライディング用のプレート、例えば素材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の摩擦係数の非常に小さいフッ素樹脂などを用いる。
【0027】
このプレートを設置する際に伝熱管群を持ち上げる必要があるが、伝熱管群を支持するフレームに延長用のフレームを接合して、この延長用のフレームをジャッキ等の持ち上げ部材により持ち上げることで、伝熱管群も同時に持ち上げることが可能となる。
【0028】
そして、持ち上げた伝熱管群と載置部との隙間にスライディング用のプレートを挿入し、該スライディング用のプレートを載置部上に取り付ける。そして、伝熱管群をスライディング用のプレート上に載置して熱回収部の構造体から抜き出すことで、任意の伝熱管群を交換できる。このときのフレームの持ち上げ高さはスライディング用のプレートを挿入できる高さであれば良く、各伝熱管群の層間に人が侵入できるだけのスペースを設けておけば、そのスペースを利用して持ち上げることで中層や下層であっても、その上層を移動させることなく持ち上げることが可能である。
すなわち、上層、中層、下層の特定の伝熱管群の交換が、他層の移動なく可能である。
【0029】
伝熱管群を抜き出す際には、延長用のフレームを引くことで、例えば延長用のフレームの先端の金具にワイヤーを接続してウインチにより引くことで容易に行える。そして、その後クレーンで地上に下ろせば良い。この方法により、伝熱管群の抜き出し力を1/10程度に大幅に低減して、伝熱管群を抜き出すことが可能となる。
【0030】
すなわち、請求項1又は請求項3記載の発明によれば、伝熱管群を支持する支持フレームに延長用の仮設フレームを接合することで、一体的な伝熱管群構造体を形成できる。仮設フレームは支持フレームから抜き出し側に突出しているため、仮設フレームを持ち上げることや引っ張ることが容易になり、伝熱管群構造体が抜き出しやすくなる。
【0031】
そして、仮設フレームを持ち上げて、伝熱管群構造体と伝熱管群構造体を載置する載置部との間にスライディング用のプレートを設け、スライディング用のプレート上に伝熱管群構造体を載置することで、伝熱管群構造体を抜き出す際の伝熱管群構造体と載置部間の摩擦力が低減される。
【0032】
請求項2又は請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項3記載の発明の作用に加えて、断面がU字型のフレームの突面部にスライディング部を設けたU字型スライディングプレートを、伝熱管群構造体の抜き出し方向に対し伝熱管群構造体の側面視で逆U字型になるように梁に被せて取り付ける。伝熱管群構造体が引かれても、U字型スライディングプレートのU字型フレーム部分が梁に引っかかるため、U字型スライディングプレートは伝熱管群構造体の抜き出し方向に移動することなく、梁に固定される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、伝熱管群の補修、交換時に熱回収部の内部構造物であるダクト、ケーシング、支持梁などを取り外す必要がないため、短期間で効率的に伝熱管群を交換できる。そして、手間と工数を掛けずに伝熱管群を交換できることで大幅な工期の短縮が実現される。
また、伝熱管群と支持梁などの伝熱管群の載置部との間の摩擦力が低減されるため、熱回収部の内部構造物にあまり負荷をかけずに伝熱管群の交換が容易にできる。
【0034】
具体的には以下の効果を有する。
請求項1又は請求項3記載の発明によれば、伝熱管群を支持する支持フレームに仮設フレームを接合し、この仮設フレームを引っ張ることで、伝熱管群構造体が抜き出しやすくなる。更に、伝熱管群構造体と伝熱管群構造体を載置する載置部との間にスライディング用のプレートを設けることで、伝熱管群構造体と載置部間の摩擦力が低減され、抜き出し力が軽減されると共に、熱回収部の内部構造物に掛かる負荷を低減できる。
【0035】
請求項2又は請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項3記載の発明の効果に加えて、伝熱管群構造体が引かれても、スライディングプレートは伝熱管群構造体の抜き出し方向に移動することなく梁に固定されるため、伝熱管群構造体を抜き出す途中で摩擦力が増すこともなく、確実に伝熱管群構造体を熱回収部の構造体から抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ボイラからの排ガスを処理する排煙処理装置の系統図である。
【図2】本発明の一実施形態のGGH熱回収部の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態のGGH熱回収部の斜視図である。
【図4】1ブロックのチューブバンドルの側面図(一部断面図)である。
【図5】図4のB−B線矢視断面図である。
【図6】図2のGGH熱回収部の矢印S方向から見た場合の図である。
【図7】GGH熱回収部のチューブバンドルを取替える時の説明図である。
【図8】GGH熱回収部のチューブバンドルを取替える時の説明図である。
【図9】GGH熱回収部のチューブバンドルを取替える時の説明図である。
【図10】GGH熱回収部のチューブバンドルを取替える時の説明図である。
【図11】図10のC−C線矢視断面図である。
【図12】GGH熱回収部のチューブバンドルを取替える時の説明図である。
【図13】図12のD−D線矢視断面図である。
【図14】GGH熱回収部の内部構造を表した斜視図である。
【図15】GGH熱回収部の内部構造を表した斜視図である。
【図16】GGH熱回収部の内部構造を表した斜視図である。
【図17】GGH熱回収部の内部構造を表した斜視図である。
【図18】GGH熱回収部の内部構造を表した斜視図である。
【図19】GGH熱回収部の内部構造を表した斜視図である。
【図20】GGH熱回収部の内部構造を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0038】
図1には、ボイラからの排ガスを処理する排煙処理装置の系統図を示し、図2には、GGH熱回収部4の側面図を示す。
ボイラ1から排出される燃焼排ガスは350℃〜400℃で脱硝装置2に導入され、脱硝装置2において脱硝触媒により排ガス中の窒素酸化物(NOx)が除去されて、エアヒータ(A/H)3において熱交換され、例えば120℃〜160℃程度に減温される。更に、排ガスは矢印A1方向(図2)に流れて、入り口ダクト21からガス−ガスヒータ(GGH)熱回収部4に導入されてGGH熱回収部4内のチューブバンドル30を通過する際に、例えば60℃〜110℃程度に減温され、出口ダクト22から矢印A2方向(図6)に排出される。
【0039】
そして、乾式の電気集塵機5において大部分のフライアッシュ、ダストなどが除去される。次に、排ガスは湿式脱硫装置6に導入されて、排ガス中の硫黄酸化物(主にSO2)が除去される。そして、湿式脱硫装置6から排出された排ガスは、例えば40℃〜60℃程度まで低下し、水分飽和状態になっていることから、白煙防止のためにガスガスヒータ再加熱部7で110℃程度に加温され、ファン(図示せず)を介して煙突8から大気に排出される。
【0040】
図3には、GGH熱回収部4の斜視図を示し、図4には、一つのチューブバンドルの側面図(一部断面図)を示し、図5には、図4のB−B線矢視断面図を示す。
更に、図6には、図2のGGH熱回収部4の矢印S方向から見た場合の図を示す。この図6は、GGH熱回収部4のフィンチューブ31からなるチューブバンドル30を取替える時の模擬図である。また、図7から図11には、チューブバンドル30を取替える時の説明図を示す。
【0041】
図7及び図8は、仮設フレーム40a,40bを配置し、更にジャッキ42を配置した場合のチューブバンドル30先端付近(抜き出し側)の斜視図である。図8は図7と同様であるが、ジャッキ42の位置と数を変えた場合の図である。そして、図9には、支持梁34上へのスライディングプレート46の配置図(平面図)を示し、図10には、図9の矢印T方向から見た場合の仮設フレーム40a,40bとスライディングプレート46との配置関係を示す。図11には、図10のC−C線矢視断面図を示す。
【0042】
GGH熱回収部4は電気集塵機5よりも排ガス流路の上流側であるため、非常に多くのフライアッシュやダストを含む排ガスが通過する。GGH熱回収部4の伝熱管は熱交換効率を高めるためにフィンチューブが使われているため、フィンチューブの目詰まりが生じたり、また局部的に流速が速い箇所ではフライアッシュの衝突による磨耗が進展してフィンチューブの漏洩が発生したりする。
【0043】
フィンチューブの目詰まりに対しては、GGH熱回収部4の上部より多量の鋼球を定期的に落下させたり、又はフィンチューブのバンドル(伝熱管群)間にスートブロワーを設け、定期的に運転することで、フライアッシュ等による目詰まりを防止しているが、上述のように、いずれは熱交換の性能を維持するためにはバンドル毎全体の取替えが必要となってくる。
【0044】
GGH熱回収部4の組立方法は、図14から図20に示した通りである。
まず下部架台11を組み立てた後、GGHケーシング26,27,28の柱及び下段支持梁34を下部架台11上に組み立て、更に側面ケーシング26、後面ケーシング28及び中間仕切りケーシング27を組み立てる。
【0045】
次に、下段のフィンチューブバンドル層23をクレーン36により地上から持ち上げて下段の支持梁34上に設置し、全ての下段のフィンチューブバンドル層23を設置した後、中間の支持梁34を支持ポスト33間に取り付ける。例えば、支持梁34と支持ポスト33は断面H型のH型鋼とする。
【0046】
上記作業を中間のフィンチューブバンドル層24、上段のフィンチューブバンドル層25と順次下部より組み立てて、最後にフレーム38(図19)を、ケーシング26,27,28間に梁をトラス構造状に設け、溶接した後、地上で組み立てた入り口ダクト21(図20)を取り付けて、作業は完了する。各フィンチューブバンドルは、各段の支持梁34上に載置された状態となる。
【0047】
この様な構造において、チューブバンドル30の抜き出しを容易に行うための方法を以下に説明する。
チューブバンドル30は、抜き出し方向(長手方向)から見て左右が側面フレーム32,32に、前後(手前側と奥側)が前後フレーム37,37によって支持されている。チューブバンドル30の上下は排ガスが流れるように、開放されている。また、側面フレーム32,32と前後フレーム37,37は平板で一体的に固着しており、平面視で方形状を形成している。したがって、チューブバンドル30は、側面フレーム32,32と前後フレーム37,37からなる支持フレームによって長手方向に亘って支持されている。
【0048】
まず、図7及び図8に示すように、チューブバンドル30を支持している左右の側面フレーム32,32の抜き出し側端部に、延長用の側面仮設フレーム40a,40aの端部を固着させて接合し、側面仮設フレーム40a,40aの先端(接合側とは反対側の左右両端部)に前面仮設フレーム40bを取り付けて一体的な伝熱管群構造体を形成する。各フレームの接合を溶接により行うと、各フレームは溶接部41で強く固着し、強固な構造体となる。
【0049】
また、側面仮設フレーム40aの端部と側面フレーム32の端部を同形状とすれば、より強固に接合でき、溶接の作業性も良い。また、例えば、後述するジャッキ42を一台用いる場合は、図7に示すように前面仮設フレーム40bの左右の長さを左右の側面仮設フレーム40a,40a間(抜き出し幅)と同じ長さとしたり、ジャッキ42を二台用いる場合は、図8に示すように前面仮設フレーム40bの左右の長さを左右の側面仮設フレーム40a,40a間よりも長くしても良い。
【0050】
そして、下部架台11上に仮設受け台35(図6)を、抜き出すチューブバンドル30と略同じ高さ位置に取り付ける。GGH熱回収部4の出口ダクト22付近にGGH熱回収部4の構造体と一体の補強ブレース50を張り出すように設け、補強ブレース50上に仮設受け台35を載置すると良い。この補強ブレース50は、もともとGGH熱回収部4の構造体に取り付けられていても、チューブバンドル30の交換時にGGH熱回収部4の構造体の周囲に取り付けるものでも良い。
【0051】
また、仮設の受け台35はチューブバンドル30と同程度の寸法とし、補強ブレース50上に水平に載置可能とする。また、下段のフィンチューブバンドル層23のみを抜き出すときには、このフィンチューブバンドル層23の高さと等しい受け台高さとすればよい。中間のフィンチューブバンドル層24、上段のフィンチューブバンドル層25を抜き出すときは、同様に受け台高さが中間のフィンチューブバンドル層24、上段のフィンチューブバンドル層25、それぞれの高さに等しいものを設けておけば良い。
【0052】
そして、仮設受け台35上と前面仮設フレーム40bとの間にチューブバンドル30を持ち上げるためのジャッキ42を設置して、チューブバンドル30を所定のレベルまで持ち上げる。本実施例ではジャッキ42を使用する例を示しているが、その他の持ち上げ部材、例えばクレーンやシリンダ(油圧式、電動式、空気圧式等)、滑車などを使用することも可能である。
【0053】
図9から図11には、スライディングプレート46を取り付けた時の図を示している。ジャッキ42により持ち上げたチューブバンドル30と支持梁34との間にスライディングプレート46を挿入して取り付ける。
上下及び左右のチューブバンドル30,30間は人が作業できる程度の隙間があるため、スライディングプレート46は、支持梁34の下方から挿入して支持梁34の上方に被せることで取り付ける。
【0054】
スライディングプレート46を支持梁34に取り付けた後、ジャッキ42を下げると、チューブバンドル30は側面フレーム32を介して支持梁34上のスライディングプレート46上に積載された状態となる。その後、下部架台11上又は地上に設置したウインチ43(図6)と前面仮設フレーム40bに取り付けた受けラグ45との間にワイヤー44(図7,図8)を連結して、ウインチ43の巻き取りによりチューブバンドル30を仮設受け台35まで引き出して、その後クレーン36により地上に降ろして作業は完了する。
【0055】
スライディングプレート46は細長い平板でも良いが、図11に示すように、断面がU字型のフレーム46bの突面部にスライディング部46aを取り付けて一体化したU字型スライディングプレート46を使用しても良い。なお、U字型とは、半円状をも含み、また角がない丸みを帯びた形状のみならず、角があるコの字型のものや、コの字型の角部が短い辺となっている多角形状のものでも良い。
【0056】
そして、スライディング部46aの素材としては、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤やPTFE等の摩擦係数の非常に小さいフッ素樹脂などを用いると良い。PTFEなどのフッ素樹脂は摩擦係数が0.04など低く、しかも耐熱温度が260℃程度あり、好適である。各種フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などがある。また、グラスファイバー、固体潤滑剤、酸化物等の併用によって耐摩耗性も良好となる。
【0057】
チューブバンドル30の抜き出し方向に対して側面視で、すなわち左右方向から見て逆U字型になるように、スライディングプレート46を支持梁34の上方に被せることで、チューブバンドル30を引いても、U字型スライディングプレート46のU字型フレーム46b部分が支持梁34に引っかかるため、U字型スライディングプレート46は抜き出し方向に移動することなく、固定される。
本構成により、チューブバンドル30を抜き出す途中で摩擦力が増すこともなく、確実にチューブバンドル30を熱回収部4の構造体から抜き出すことができる。
【0058】
例えば、図9に示すように、矢印T方向から見て、U字型スライディングプレート46を支持梁34の前後左右に複数箇所設ける。なお、図示例では、平面視で支持梁34の厚さとほぼ同じ長さの正方形状としたU字型スライディングプレート46を各支持梁34に左右二つずつ設けているが(合計18個)、このような形状に限らず、また一つおき又は二つおきの支持梁34に一つ又は複数個設けても良い。
【0059】
本構成により、スライディングプレート46を側面フレーム32やチューブバンドル30の長手方向の長さ程の細長い平板とする場合よりも、小さな部材として、チューブバンドル30を抜き出すことが可能となり、抜き出し作業が簡便になると共に経済的でもある。
【0060】
また、新たなチューブバンドル30の挿入は、以下のように引き抜く場合と逆の方法で実施する。
新しい交換用のチューブバンドル30をクレーン36により地上から仮設受け台35まで吊り上げる。交換用のチューブバンドル30には抜き出すときと同様に、予め溶接等の手段により仮設フレーム40を取り付けておくと良い。支持梁34上には古いチューブバンドル30を抜き出すときに使用したスライディングプレート46が積載されている。
【0061】
そして、新たなチューブバンドル30の前面仮設フレーム40bに取り付けられたウインチ用のフック、受けラグ45にワイヤー44を取り付け、外部よりウインチ43によって引き込み、仮設受け台35上から支持梁34上のスライディングプレート46上に挿入する。挿入後、ジャッキ42によりチューブバンドル30を所定のレベルまで持ち上げた後、スライディングプレート46を抜き取ってジャッキ42を下げれば作業は完了する。仮設フレーム40は、その後、側面フレーム32から切り落とせば良い。仮設フレーム40を側面フレーム32に溶接した場合は、溶接部のリード線を切り落とすことで、簡単に仮設フレーム40を側面フレーム32から分離できる。
【実施例2】
【0062】
図12は、支持梁34上へのスライディングプレートの配置図(平面図)を示し、図13には、図12のD−D線矢視断面図を示す。
この例では、支持梁34と支持梁34との間に補強用のブレース39を設け、平面視で支持梁34に直行する方向に支持梁34と支持梁34とを連結するフレーム48を設けている。フレーム48は側面フレーム32の前後長さとほぼ同じ長さであり、すなわちチューブバンドル30の長手方向の長さとほぼ同じ長さの棒状体(例えば、H型鋼とする)である。スライディングプレート47をフレーム48と同様の細長い平板状として、側面フレーム32とフレーム48との間に挿入して取り付ける。
【0063】
この場合は、実施例1のU字型スライディングプレート46と異なり、側面フレーム32のほぼ全面が平板状スライディングプレート47に接するため、スムーズにチューブバンドル30を抜き出すことができる。また、スライディングプレート46を挿入する際にも、抜き出し側(手前)から出し入れすることができるので、作業性がよい。
【0064】
本構成でもチューブバンドル30の引き出し時の摩擦力の低減が図れるため、容易にチューブバンドル30の抜き出し作業を簡素化できる。そして、実施例1と同様に、チューブバンドル30(側面フレーム32)と支持梁34との間の摩擦力が従来の1/10以下に低減可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、ボイラなどの熱回収部に限らず、伝熱管群を使用する種々の設備に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0066】
1 ボイラ 2 脱硝装置
3 エアヒータ 4 ガスガスヒータ(GGH)熱回収部
5 電気集塵機 6 湿式脱硫装置
7 ガスガスヒータ(GGH)再加熱部
8 煙突 11 下部架台
12 昇圧ファン 21 入り口ダクト
22 出口ダクト 23 下段のフィンチューブバンドル層
24 中間のフィンチューブバンドル層
25 上段のフィンチューブバンドル
26 GGHの側面ケーシング
27 GGHの中間仕切ケーシング
28 GGHの後面ケーシング
30 チューブバンドル(伝熱管群)
31 フィンチューブ 32 側面フレーム
33 支持ポスト(支持柱)
34 支持梁 35 仮設受け台
36 クレーン 37 前後フレーム
38 フレーム 39 ブレース
40 仮設フレーム 40a 側面仮設フレーム
40b 前面仮設フレーム
41 溶接部 42 ジャッキ
43 ウインチ 44 ワイヤー
45 受けラグ 46、47 スライディングプレート
48 フレーム 50 補強ブレース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラを含む燃焼装置から発生する排ガスから熱回収を行うための熱媒体を通す伝熱管群を備えた熱回収部の前記伝熱管群を抜き出して交換する熱回収部の伝熱管群の交換方法において、
略水平に設けた伝熱管群の抜き出し方向に沿って該伝熱管群を支持する支持フレームの伝熱管群の抜き出し側端部に仮設フレームを接合して、前記支持フレームと仮設フレームと伝熱管群とからなる一体的な伝熱管群構造体を形成し、
前記仮設フレームを持ち上げて、前記伝熱管群構造体と伝熱管群構造体を載置する載置部との間に、伝熱管群構造体を抜き出す際の摩擦を低減するためのスライディング用のプレートを取り付けて、伝熱管群構造体をスライディング用のプレート上に載置し、前記伝熱管群構造体を熱回収部から抜き出すことで伝熱管群の交換を行うことを特徴とする熱回収部の伝熱管群の交換方法。
【請求項2】
前記載置部が梁の場合に、スライディング用のプレートとして、断面がU字型のフレームの突面部にスライディング部を設けたU字型スライディングプレートを使用し、前記伝熱管群構造体の抜き出し方向に対して伝熱管群構造体の側面視で逆U字型になるようにU字型スライディングプレートを梁に被せて取り付け、前記伝熱管群構造体をU字型スライディングプレート上に載置し、前記伝熱管群構造体を熱回収部から抜き出すことで伝熱管群の交換を行うことを特徴とする請求項1記載の熱回収部の伝熱管群の交換方法。
【請求項3】
ボイラを含む燃焼装置から発生する排ガスから熱回収を行うための熱媒体を通す伝熱管群を備えた熱回収部の前記伝熱管群を抜き出して交換する熱回収部の伝熱管群の交換用仮設構造体において、
略水平に設けた伝熱管群と、該伝熱管群の抜き出し方向に沿って該伝熱管群を支持する支持フレームと、該支持フレームの伝熱管群の抜き出し側端部に接合した仮設フレームとからなる一体的な伝熱管群構造体と、
該伝熱管群構造体を載置する載置部と、
前記仮設フレームを持ち上げる持ち上げ部材と、
該持ち上げ部材により持ち上げられる伝熱管群構造体と前記載置部との間に取り付けられ、前記伝熱管群構造体を載置して該伝熱管群構造体を抜き出す際の摩擦を低減するためのスライディング用のプレートと
の組み合わせからなり、
前記伝熱管群構造体を熱回収部から抜き出すことで伝熱管群の交換が可能であることを特徴とする熱回収部の伝熱管群の交換用仮設構造体。
【請求項4】
前記載置部は梁であって、前記スライディング用のプレートは断面がU字型のフレームの突面部にスライディング部を設けたU字型スライディングプレートであり、該U字型スライディングプレートが前記伝熱管群構造体の抜き出し方向に対して伝熱管群構造体の側面視で逆U字型になるように梁に被せて取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の熱回収部の伝熱管群の交換用仮設構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−241964(P2012−241964A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111595(P2011−111595)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】